説明

搬送装置の制御装置、それを備えた搬送装置および搬送装置の制御方法

【課題】搬送装置の破損を防止しつつ施設の生産性の向上を図る。
【解決手段】コンベヤ1の制御装置10は、監視ユニット20と、シーケンサ30により実現される駆動切換部31と、を備えている。監視ユニット20は、駆動モータM1の負荷状態を検出するとともに、検出された負荷状態に基づいて駆動モータM1の負荷状態を判定する。駆動切換部31は、監視ユニット20の判定結果に応じて、正側動作および逆側動作の切り換えを駆動モータM1に行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤなどの搬送装置に用いられる制御装置、それを備えた搬送装置および搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粉体などの粒状物の搬送にはコンベヤが用いられている。この種のコンベヤは主に、ケーシングと、ケーシングに回転可能に支持されるチェーンと、チェーンに固定された複数のフライト(搬送部材)と、チェーンを駆動する駆動モータと、から構成されている。フライトは搬送物を掻き取るための搬送面を有している。チェーンが駆動モータなどにより回転駆動されると、チェーンに固定されたフライトがケーシングに沿って移動する。これにより、搬送物がフライトに押されて搬送される。
【0003】
しかし、搬送物中に想定していた性状と異なる物(以下、異物)が混入している場合、あるいは、コンベヤへの供給量が一時的に過多となる場合、駆動モータの負荷が高くなり、駆動モータやその他の部品が破損するおそれがある。
【0004】
そこで、従来のコンベヤには、駆動モータの負荷が高くなった場合にコンベヤを強制的に停止させる保護装置が採用されている。この種の保護装置は、例えば電流値により駆動モータの負荷を監視している。異物の噛み込みなどにより駆動モータの電流値が所定値を超えると、保護装置によりコンベヤは停止する(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開昭59−69309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護装置によりコンベヤが停止すると、例えば、現場に駆けつけた作業員は、コンベヤを手動で再起動する。このとき、異物が噛み込んでいることを考慮して、コンベヤをわずかに逆転させ、異物の噛み込みを解除する。また、供給量が過多である場合は、コンベヤの起動トルクが大きいことを利用して、コンベヤをわずかに動作させるインチングにより再起動を図る。
【0006】
しかし、コンベヤが頻繁に停止する場合、作業員の負担が著しく増大するとともに、コンベヤの総運転時間が短くなる。
【0007】
また、コンベヤが停止してから作業員がコンベヤ周辺に到着するまでには、ある程度の時間が必要とされる。このため、場合によってはコンベヤの停止時間が必要以上に長くなり、上流側機器において搬送物が堆積する。この場合、コンベヤの運転が再開された際に、供給される搬送物の量が一時的に過多になり、搬送状態が不安定となる。場合によっては、コンベヤの過負荷による停止が助長される。
【0008】
一方で、異物の噛み込みによりコンベヤが停止する場合は、コンベヤを停止させる必要がない程度の軽微なものが少なくない。このような場合にまで、作業員の負担が増大したり、あるいは搬送状態が不安定になったりするのは好ましくない。コンベヤの停止回数を減らすために、保護装置の設定値を上げることが考えられるが、コンベヤの破損を考慮すると保護装置の設定値を上げるのは好ましくない。
【0009】
このように、コンベヤなどの搬送装置の破損を防止しつつ、施設の生産性の向上を実現できる搬送装置が求められている。
【0010】
本発明の課題は、搬送装置の破損を防止しつつ施設の生産性の向上を図れる制御装置、それを備えた搬送装置、および搬送装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る制御装置は、搬送物が内部に供給されるケーシングと、ケーシングに対して移動可能な複数の搬送部材と、搬送部材を連結する連結部材と、連結部材を介して搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能な駆動部と、を含む搬送装置に用いられる。この制御装置は、負荷検出部と、負荷判定部と、駆動切換部と、を備えている。負荷検出部は駆動部の負荷状態を検出する。負荷判定部は負荷検出部で検出された負荷状態に基づいて駆動部の負荷状態を判定する。駆動切換部は、負荷判定部の判定結果に応じて、搬送方向正側に対応する正側動作および搬送方向逆側に対応する逆側動作の切り換えを駆動部に行わせる。
【0012】
この制御装置では、駆動部の負荷状態に応じて、駆動切換部により搬送装置の正側動作および逆側動作の切り換えが行われる。このため、例えば、搬送部材を駆動部が搬送方向正側に駆動している場合、異物の噛み込みにより駆動部の負荷が高くなっても、駆動切換部により逆側動作に切り換えられる。この結果、搬送部材が搬送方向逆側に駆動され、異物の噛み込みが解除されやすくなる。このように、この制御装置では、負荷状態に応じて自動的に動作の切り換えが可能であるため、異物の噛み込みを自動的に解除可能となり、過負荷により停止する回数が減少する。このため、搬送装置の破損を防止しつつ、施設の生産性の向上が図れる。
【0013】
第2の発明に係る制御装置は、第1の発明に係る制御装置において、負荷判定部が、負荷状態が予め設定された設定負荷状態に達したこと、または負荷状態が設定負荷状態を超えたこと、を判定する。駆動切換部は、負荷判定部の判定結果に基づいて、正側動作から逆側動作への逆側切換動作を駆動部に行わせ、逆側切換動作後から予め設定された設定動作時間が経過した後に、逆側動作から正側動作への正側切換動作を駆動部に行わせる。
【0014】
第3の発明に係る制御装置は、第2の発明に係る制御装置において、回数計測部と、第1回数判定部と、停止部と、をさらに備えている。回数計測部は負荷判定部により過負荷であると判定された回数を計測する。第1回数判定部は、回数計測部における計測回数が予め設定された第1設定回数に達したこと、または計測回数が第1設定回数を超えたこと、を判定する。停止部は、回数判定部の判定結果に基づいて、駆動部の動作を停止させる。
【0015】
第4の発明に係る制御装置は、第3の発明に係る制御装置において、少なくとも逆側切換動作が開始されてから正側切換動作が完了するまでの間、駆動部が切換動作中であることを示す警報を発する警報部をさらに備えている。
【0016】
第5の発明に係る制御装置は、第3または第4の発明に係る制御装置において、負荷判定部が、正側切換動作の完了後から、予め設定された設定安定時間が経過するまでの間は、負荷状態の判定を停止する。この制御装置は、間隔時間計測部と、間隔時間判定部と、をさらに備えている。間隔時間計測部は、設定安定時間が経過した後に負荷判定部が判定を開始してから、負荷判定部の判定結果が出るまで、の時間を計測する。間隔時間判定部は、間隔時間計測部における計測時間が予め設定された設定間隔時間に達したこと、または計測時間が設定間隔時間を超えたこと、を判定する。回数計測部は、間隔時間判定部の判定結果に基づいて計測回数をリセットする。
【0017】
第6の発明に係る制御装置は、第3または第4の発明に係る制御装置において、間隔時間計測部と、間隔時間判定部と、をさらに備えている。間隔時間計測部は、駆動切換部の正側切換動作の完了後から、負荷判定部の判定結果が出るまで、の時間を計測する。間隔時間判定部は、間隔時間計測部における計測時間が予め設定された設定間隔時間に達したこと、または計測時間が設定間隔時間を超えたこと、を判定する。回数計測部は、間隔時間判定部の判定結果に基づいて計測回数をリセットする。
【0018】
第7の発明に係る制御装置は、第5または第6の発明に係る制御装置において、第2回数判定部と、上流側機器制御部と、をさらに備えている。第2回数判定部は、計測回数が予め設定された第2設定回数に達したこと、または計測回数が第2設定回数を超えたこと、を判定する。上流側機器制御部は、第2回数判定部の判定結果に基づいて、搬送装置の上流側機器へ停止指令を送信する、あるいは上流側機器へ搬送量を減少させる指令を送信する。
【0019】
第8の発明に係る搬送装置は、ケーシングと、搬送部材と、連結部材と、駆動部と、駆動部の動作を制御する第1から第7のいずれかの発明に係る制御装置と、を備えている。ケーシングは搬送物が内部に供給される。搬送部材はケーシングに対して移動可能である。連結部材は搬送部材を連結する。駆動部は連結部材を介して搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能である。
【0020】
この搬送装置では、第1から第7のいずれかの発明に係る制御装置を備えているため、搬送物に異物が混入していても、あるいは供給量が過多になっても、過負荷により停止する回数が減少し、施設の生産性が向上する。
【0021】
第9の発明に係る制御方法は、搬送物が内部に供給されるケーシングと、ケーシングに対して移動可能な複数の搬送部材と、搬送部材を連結する連結部材と、連結部材を介して搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能な駆動部と、を含む搬送装置の制御方法である。この制御方法は、検出工程と、判定工程と、切換工程と、を含む。検出工程では駆動部の負荷状態が検出される。判定工程では、検出工程において検出された負荷状態に基づいて駆動部の負荷状態が判定される。判定工程では駆動部の負荷状態が判定される。切換工程では、監視工程の判定結果に応じて、搬送方向正側に対応する正側動作および搬送方向逆側に対応する逆側動作の切り換えが駆動部において行われる。
【0022】
これにより、搬送装置が過負荷により停止している時間が減少し、施設の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る制御装置、それを備えた搬送装置およびその制御方法では、上記の構成により、異物の混入や供給量の過多などが発生しても、過負荷により停止している時間が減少し、施設の生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
(1)コンベヤの基本構成
図1および図2を用いて本発明に係るコンベヤ1について説明する。図1にコンベヤ1の概略構成図、図2にコンベヤ1の断面図を示す。図2の右側がコンベヤ1の搬送方向正側、図2の左側がコンベヤ1の搬送方向逆側である。なお、図2はコンベヤ1の送り側の断面図のみを示しており、コンベヤ1のリターン側の断面図は省略されている。
【0026】
図1および図2に示すように、コンベヤ1は、搬送物6を一定の方向に順次搬送する装置であり、主に、コンベヤ本体2と、コンベヤ本体を駆動する駆動モータM1と、駆動モータM1の動作を制御する制御装置10と、から構成されている。
【0027】
コンベヤ本体2は、搬送物6が内部に供給されるケーシング5と、ケーシング5に対して移動可能に配置された複数のフライト4と、フライト4を連結する1対のチェーン3と、チェーン3を介してフライト4を正側および逆側に駆動可能な駆動モータM1と、駆動モータM1の動作を制御する制御装置10と、から構成されている。例えば、搬送物6には異物7が混入している。
【0028】
チェーン3は、例えば複数のローラ(図示せず)が回転可能に装着されたローラチェーンである。チェーン3はケーシング5の底板9に固定されたレール(図示せず)により支持および案内されている。ケーシング5に対して回転可能に設けられたシャフト(図示せず)に固定されたスプロケット(図示せず)により、チェーン3は回転可能に支持されている。チェーン3には複数のフライト4が固定されている。シャフトには駆動モータM1が機械的に連結されており、駆動モータM1からシャフトへトルクが入力可能となっている。
【0029】
(2)制御装置の構成
コンベヤ1は、過負荷になった場合に、自動的に過負荷状態を解除することを試みるリトライ機能を有している。このリトライ機能は制御装置10により実現されている。制御装置10は駆動モータM1の負荷状態に応じて駆動モータM1の運転(正転、逆転)および停止を制御する。具体的には図1に示すように、制御装置10は主に、駆動モータM1の負荷状態を監視する監視ユニット20と、駆動モータM1の負荷状態に応じて駆動モータM1の動作を制御するシーケンサ30と、から構成されている。
【0030】
監視ユニット20は、駆動モータM1の電流値Aを検出し、電流値Aが予め設定された設定電流値A1に達したか否かを判定する。例えば、設定電流値A1は、コンベヤ1の通常の負荷運手時における電流値Aの1.2〜1.3倍程度の値に設定されている。監視ユニット20は、電流値Aが設定電流値A1以上になった場合(より詳細には、電流値Aが設定電流値A1以上である状態が一定時間継続された場合)、駆動モータM1が過負荷であると判定し、その判定結果をシーケンサ30へ出力する。これにより、駆動モータM1の負荷状態が監視可能となる。
【0031】
なお、駆動モータM1の起動電流値は駆動モータM1の起動から一定時間経過しないと安定しない。このため、駆動モータM1が起動してから予め設定された設定安定時間TCが経過するまでの間は、監視ユニット20は上記の判定機能をOFF状態とする。
【0032】
シーケンサ30は、監視ユニット20の判定結果に基づいて、駆動モータM1の正側動作および逆側動作を切り換える。シーケンサ30には、CPU41、ROM42およびRAM43などが搭載されており、ROM42に格納されたプログラムがCPU41に読み込まれることで、様々な機能が実現される。また、シーケンサ30は、図示しないローダおよびPCなどにより外部からアクセス可能であり、ローダやPCなどを介してプログラムや各設定値などの変更が可能である。
【0033】
シーケンサ30に格納されたプログラムは、駆動切換部31と、回数計測部32と、回数判定部33と、間隔時間計測部34と、間隔時間判定部35と、停止部36と、警報部37と、上流側機器制御部38と、から構成されている。
【0034】
駆動切換部31は、異物の噛み込みを自動的に解除するために、監視ユニット20からの判定結果を適宜確認し、負荷が高いと判定された場合に駆動モータM1の回転方向を切り換える。具体的には、駆動切換部31は、監視ユニット20での判定結果を認識した後、駆動モータM1の正転動作を逆転動作に切り換える(逆転切換動作)。この逆転切換動作の完了後から、予め設定された設定動作時間TAが経過した後に、駆動切換部31は駆動モータM1の逆転動作を正転動作に切り換える(正転切換動作)。
【0035】
回数計測部32は、駆動切換部31によるリトライが必要以上に繰り返されるのを防止するために、過負荷により駆動モータM1の動作が切り換えられた回数を計測する。具体的には、例えば、回数計測部32は監視ユニット20において過負荷であると判定された回数を計測する。回数判定部33は、回数計測部32で計測された回数Nが、予め設定された第1設定回数N1に達したか否かを判定し、その第1判定結果を格納する。また、回数判定部33は、回数Nが予め設定された第2設定回数N2に達したか否かを判定し、その第2判定結果を格納する。例えば、第1設定回数N1は2回、第2設定回数N2は1回に設定されている。
【0036】
停止部36は、第1判定結果に基づいて駆動モータM1を停止させ、駆動切換部31のリトライ動作の中止を図る。警報部37は、第1判定結果に基づいてコンベヤ1が過負荷により停止した旨の信号を外部に出力する。この警報信号により、例えば現場操作盤(図示せず)に設けられた警報表示ランプが点灯し、コンベヤ1の停止が周囲へ報知される。また、シーケンサ30と通信可能な中央制御システム(図示せず)が設けられている場合、中央制御システムは、この警報信号を受信するとディスプレイにコンベヤ1が過負荷により停止した旨の警報を表示する。
【0037】
また、警報部37は、コンベヤ1がリトライ動作中であることを作業員に報知するために、駆動モータM1が切換動作中であることを示すリトライ表示用の信号を出力する。具体的には、警報部37は、逆側切換動作が開始されてから正側切換動作が完了するまでの間、リトライ信号を出力する。このリトライ信号により、例えば、現場操作盤ではリトライ表示ランプが点灯し、中央制御システムはディスプレイにコンベヤ1がリトライ中である旨を表示する。これにより、作業員がコンベヤ1の過負荷状態を容易に把握することができ、過負荷による停止に備えることが可能となる。
【0038】
上流側機器制御部38は、監視ユニット20における過負荷判定の結果を上流側機器の運転に反映させるために、回数判定部33の判定結果に基づいて、上流側コンベヤ101の搬送量を減少させる旨の信号を、上流側コンベヤ101の制御装置110に送信する。上流側コンベヤ101が搬送量を任意に調節できる機能を有している場合、制御装置110が上流側コンベヤ101の搬送量を減少させ、コンベヤ1の負荷が低減される。上流側コンベヤ101がそのような機能を有していない場合、上流側コンベヤ101の制御装置110へは停止信号が送信され、例えば制御装置110は駆動モータM2を所定の時間だけ停止させる。
【0039】
間隔時間計測部34は、監視ユニット20において検出される過負荷が同じ要因によるものか、あるいは異なる要因によるものか、を判断するために、駆動切換部31の逆側切換動作の完了後から、監視ユニット20の判定結果が出るまで、の間隔時間T2を計測する。間隔時間判定部35は、間隔時間計測部34で計測された時間T2が予め設定された設定間隔時間TBに達したか否かを判定する。時間T2が設定間隔時間TBに達した場合、前回の過負荷状態と、次に起こる過負荷状態とは、異なる要因によるものであると判断できる。このため、前述の回数計測部32は間隔時間判定部35により時間T2が設定間隔時間TBに達した時点で、リトライ動作の回数Nをゼロにリセットする。
【0040】
以上の構成により、コンベヤ1の正側動作および逆側動作が駆動モータM1の電流値Aに応じて自動的に切り換えられ、コンベヤ1のリトライ機能が実現される。リトライ機能により過負荷状態が改善されない場合は、駆動モータM1が停止しコンベヤ1が停止する。
【0041】
(3)コンベヤの動作
図3〜図5を用いてコンベヤ1の動作について説明する。図3および図4にコンベヤ1の動作フロー図、図5にコンベヤ1の動作タイミングチャートを示す。図5(a)は間隔時間T2が設定間隔時間TBよりも長く、途中で回数Nがリセットされコンベヤ1の運転が継続される場合、図5(b)は時間間隔T2が設定間隔時間TBよりも短く、最終的に過負荷によりコンベヤ1が停止する場合、を示している。
【0042】
a)定常運転時
コンベヤ1が運転中である場合、駆動モータM1に電源が供給されており、駆動モータM1が正転している。この場合、駆動モータM1によりチェーン3が回転駆動され、フライト4が搬送方向正側に駆動される。ケーシング5内には上流側コンベヤ101から搬送物6が順次供給されており、搬送物6はフライト4に掻き取られ、搬送方向正側へ搬送される。
【0043】
図3に示すように、コンベヤ1の運転中は、監視ユニット20において電流値Aが検出され電流値Aが設定電流値A1以上か否かが判定される(S1)。駆動モータM1の負荷状態を示す電流値Aは、搬送物6の供給量や摩擦抵抗などに応じて若干変動するものの、搬送物6の供給量の変動が小さく、かつ、異物の噛み込みがない場合(あるいは異物の噛み込みが極めて軽微である場合)は、電流値Aは設定電流値A1未満の範囲で概ね一定状態で推移する。このため、電流値Aは設定電流値A1未満であると監視ユニット20により判定される(S1)。このとき、前回の過負荷状態からどの程度時間が経過しているか判断するために、間隔時間計測部34での間隔時間T2が設定間隔時間TB以上であるか否かが判定される(S2)。間隔時間T2が設定間隔時間TB未満である場合は、前回の過負荷状態は次に起こる過負荷状態と関連性がある可能性が高いと考えられる。このため、計測回数NはリセットされずにステップS1が繰り返される(S2、図5(b))。一方、間隔時間T2が設定間隔時間TB以上である場合は、前回の過負荷状態から長時間が経過しており、前回の過負荷状態は、過負荷状態が一旦改善されていると考えられる。このため、回数計測部32における前回までの計測回数Nはゼロにリセットされる(S2、S3、図5(a))。
【0044】
以上のように、ステップS1〜S3では、コンベヤ1の負荷状態の監視が行われるとともに、前回の過負荷状態からの間隔時間T2の監視が行われる。
【0045】
b)過負荷状態
コンベヤ1の運転中において、例えば図6に示すように、例えばフライト4と底板9との間に異物7が噛み込んだ場合、摩擦抵抗が増大するため駆動モータM1の電流値Aが高くなる。この状態が継続されると、監視ユニット20により一定時間だけ電流値Aが設定電流値A1以上になったと判定され、コンベヤ1が過負荷状態であると判定される(S1)。このとき、まず回数計測部32での計測回数Nが予め設定されたリトライ限度回数NAに達しているか否かが回数判定部33により判定される(S4)。回数Nがリトライ限度回数NAに達している場合(図5(b)ではN=2=NAの場合)、これ以上リトライ動作を繰り返しても過負荷状態が改善されない(より詳細には、例えば、異物の噛み込みが解除されない)と考えられる。このため、回数Nがリトライ限度回数NAに達したことを意味する第1判定結果が回数判定部33に格納される。停止部36において第1判定結果が認識されると、停止部36により駆動モータM1が停止される(S5、図5(b))。また、警報部37により第1判定結果が認識されると、警報部37により警報表示ランプが点灯し、コンベヤ1の過負荷による停止が周囲に報知される(S6、図5(b))。この場合、現場へ駆けつけた作業員により、異物の除去作業などの復旧作業が行われる。
【0046】
一方、回数Nがリトライ限度回数NAに達していない場合、回数Nがさらにカウントされ(S7、図5(a)、図5(b))、現場操作盤や中央制御システムにおいてリトライ動作中であることを示す旨の警報が警報部37により報知される(S8)。その後、リトライ動作として駆動切換部31により駆動モータM1の切換動作が行われる。具体的には、駆動切換部31により、駆動モータM1の停止および逆転が行われ(S9)、動作時間T1の計測が開始される(S10、図5(a)、図5(b))。動作時間T1が設定動作時間TAに達するまで逆転動作が継続され(S11、図5(a)、図5(b))、時間T2が設定動作時間TAに達した時点で、駆動切換部31により駆動モータM1の停止および正転が行われる(S11、S12、図5(a)、図5(b))。このとき、リトライ動作が完了したため、リトライ動作中の表示は解除される(S13)。
【0047】
その後、監視ユニット20により安定時間T3の計測が開始され(S14)、安定時間T3が設定安定時間TCに達すると、間隔時間計測部34により間隔時間T2の計測が開始される(S15、S16)。
【0048】
この後、回数判定部33により回数Nが設定回数NBに達したか否かが判定され(S17)、この判定結果が回数判定部33に格納される。回数Nが設定回数NBに達している場合、上流側コンベヤ101からの供給量を一時的に減少させる必要があると考えられる。このため、上流側機器制御部38がこの判定結果を認識すると、上流側機器制御部38から上流側コンベヤ101の搬送量を一定時間だけ減少させる旨の信号が制御装置110へ送信される(S18)。上流側コンベヤ101が搬送量を任意に調節できる形式である場合、リトライ動作の回数を利用して、上流側コンベヤ101の搬送量を一時的に減少させることができる。これにより、コンベヤ1の負荷が一時的に低くなり、コンベヤ1の停止回数がより減少する。
【0049】
これらの工程が完了すると、再度、監視ユニット20により電流値Aの監視が行われ、以上の工程が繰り返される(S1)。
【0050】
(4)作用効果
このように、このコンベヤ1では、制御装置10により異物の噛み込みなどにより駆動モータM1が過負荷状態になっても、コンベヤ1を完全に停止させる前に、駆動モータM1の正転および逆転が自動的に繰り返される。このため、例えば異物の噛み込みが比較的軽微である場合は、このリトライ機能によりコンベヤ1を停止させることなく異物の噛み込みが自動的に解除される。これにより、過負荷によるコンベヤ1の停止回数が減少し、コンベヤ1の破損を防止しつつ施設の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
また、連続した2つの過負荷状態に関連性があるか否かの判定が間隔時間T2を利用して行われる。このため、このような機能がない場合に比べて、コンベヤ1の停止回数がさらに減少し、施設の生産性をより向上させることが可能となる。
【0052】
さらに、各種設定値は任意に変更可能であるため、搬送物6の性状やコンベヤ1の形式などに応じて、リトライ機能のチューニングが可能となる。
【0053】
(7)その他の実施形態
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【0054】
a)
前述の実施形態では、搬送装置としてフライトコンベヤを例に説明がなされているが、搬送装置の形式等はこれに限定されない。
【0055】
b)
前述の実施形態では、監視ユニット20は電流値Aにより負荷状態を判定しているが、これに限定されない。例えば、駆動モータM1が減速機を有している場合、減速機の減速比により駆動モータM1の負荷が異なるため、電流値により負荷状態を判定できない。この場合、例えば監視ユニット20として駆動モータM1のトルクを検出し、検出したトルクに基づいて負荷状態を判定する構成であってもよい。
【0056】
c)
前述の実施形態では、監視ユニット20の判定機能のON・OFFが安定時間T3を利用して監視ユニット20により行われているが、この機能はこれに限定されない。例えば、監視ユニット20がこのON・OFF機能を有しておらず、ON・OFF機能がシーケンサ30内のプログラムにより実現されてもよい。
【0057】
d)
前述の実施形態では、計測回数Nや計測時間T1〜T3が設定回数および設定時間に達したか否かにより判定を行っているが、判定方法はこれに限定されない。例えば、計測回数Nや計測時間T1〜T3が設定値を超えたか否かにより判定が行われてもよい。
【0058】
e)
前述の実施形態では、リトライ機能がシーケンサ30内のプログラムで実現されているが、リトライ機能を実現するための構成はこれに限定されない。例えば、ハードによりリトライ機能が実現されてもよい。
【0059】
f)
前述の実施形態では、安定時間T3の計測が完了してから、間隔時間計測部34が間隔時間T2の計測を開始しているが、これに限定されない。例えば、間隔時間計測部34が間隔時間T2の計測を駆動モータM1の停止および正転後(S11)に開始してもよい。この場合、安定時間T3の計測機能の有無に関わらず、上記と同様の効果を得ることができる。
【0060】
g)
前述の実施形態では、チャタリング防止用の細かなタイマ設定は割愛されているが、これらのタイマ設定がなされている場合も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】コンベヤの概略構成図
【図2】コンベヤの断面概略図
【図3】コンベヤの動作フロー図の一例
【図4】コンベヤの動作フロー図の一例
【図5】コンベヤの動作タイミングチャートの一例
【図6】異物噛み込み時のコンベヤの状態図
【符号の説明】
【0062】
100 コンベヤ(搬送装置)
1 ケーシング
3 チェーン
4 フライト(搬送部材)
6 搬送物
9 底板
10 制御装置
20 監視ユニット(負荷検出部、負荷判定部)
30 シーケンサ
31 駆動切換部
32 回数計測部
33 回数判定部(第1回数判定部、第2回数判定部)
34 間隔時間計測部
35 間隔時間判定部
36 停止部
37 警報部
38 上流側機器制御部
T1 動作時間
T2 間隔時間
T3 安定時間
TA 設定動作時間
TB 設定間隔時間
TC 設定安定時間
N 回数
NA リトライ限度回数(第1設定回数)
NB 設定回数(第2設定回数)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が内部に供給されるケーシングと、前記ケーシングに対して移動可能な複数の搬送部材と、前記搬送部材を連結する連結部材と、前記連結部材を介して前記搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能な駆動部と、を含む搬送装置に用いられる制御装置であって、
前記駆動部の負荷状態を検出する負荷検出部と、
前記負荷検出部で検出された負荷状態に基づいて前記駆動部の負荷状態を判定する負荷判定部と、
前記負荷判定部の判定結果に応じて、前記搬送方向正側に対応する正側動作および前記搬送方向負側に対応する逆側動作の切り換えを、前記駆動部に行わせる駆動切換部と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記負荷判定部は、前記負荷状態が予め設定された設定負荷状態に達したこと、または前記負荷状態が前記設定負荷状態を超えたこと、を判定し、
前記駆動切換部は、前記負荷判定部の判定結果に基づいて、前記正側動作から前記逆側動作への逆側切換動作を前記駆動部に行わせ、前記逆側切換動作後から予め設定された設定動作時間が経過した後に、前記逆側動作から前記正側動作への正側切換動作を前記駆動部に行わせる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記負荷判定部により過負荷であると判定された回数を計測する回数計測部と、
前記回数計測部における計測回数が予め設定された第1設定回数に達したこと、または前記計測回数が前記第1設定回数を超えたこと、を判定する第1回数判定部と、
前記回数判定部の判定結果に基づいて、前記駆動部の動作を停止させる停止部と、
をさらに備えた請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
少なくとも前記逆側切換動作が開始されてから前記正側切換動作が完了するまでの間、前記駆動部が切換動作中であることを示す警報を発する警報部をさらに備えた、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記負荷判定部は、前記正側切換動作の完了後から、予め設定された設定安定時間が経過するまでの間は、前記負荷状態の判定を停止し、
前記設定安定時間が経過した後に前記負荷判定部が判定を開始してから、前記負荷判定部の判定結果が出るまで、の時間を計測する間隔時間計測部と、
前記間隔時間計測部における計測時間が予め設定された設定間隔時間に達したこと、または前記計測時間が前記設定間隔時間を超えたこと、を判定する間隔時間判定部と、をさらに備え、
前記回数計測部は、前記間隔時間判定部の判定結果に基づいて、前記計測回数をリセットする、
請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記駆動切換部の前記正側切換動作の完了後から、前記負荷判定部の判定結果が出るまで、の時間を計測する間隔時間計測部と、
前記間隔時間計測部における計測時間が予め設定された設定間隔時間に達したこと、または前記計測時間が前記設定間隔時間を超えたこと、を判定する間隔時間判定部と、をさらに備え、
前記回数計測部は、前記間隔時間判定部の判定結果に基づいて、前記計測回数をリセットする、
請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記計測回数が予め設定された第2設定回数に達したこと、または前記計測回数が前記第2設定回数を超えたこと、を判定する第2回数判定部と、
前記第2回数判定部の判定結果に基づいて、前記搬送装置の上流側機器へ停止指令を送信する、あるいは前記上流側機器へ搬送量を減少させる指令を送信する上流側機器制御部と、
をさらに備えた請求項5または6に記載の制御装置。
【請求項8】
搬送物が内部に供給されるケーシングと、
前記ケーシングに対して移動可能な複数の搬送部材と、
前記搬送部材を連結する連結部材と、
前記連結部材を介して前記搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能な駆動部と、
前記駆動部の動作を制御する請求項1から7のいずれかに記載の制御装置と、
を備えた搬送装置。
【請求項9】
搬送物が内部に供給されるケーシングと、前記ケーシングに対して移動可能な複数の搬送部材と、前記搬送部材を連結する連結部材と、前記連結部材を介して前記搬送部材を搬送方向正側および逆側に駆動可能な駆動部と、を含む搬送装置の制御方法であって、
前記駆動部の負荷状態が検出される検出工程と、
前記検出工程において検出された負荷状態に基づいて前記駆動部の負荷状態が判定される判定工程と、
前記判定工程の判定結果に応じて、前記搬送方向正側に対応する正側動作および搬送方向逆側に対応する逆側動作の切り換えが前記駆動部において行われる切換工程と、
を含む制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−143676(P2008−143676A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334615(P2006−334615)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】