説明

搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置

【課題】被搬送物を設定された複数の特定角度に切り換えることができる搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置を提供する。
【解決手段】搬送用走行体1に回転自在に支承された被搬送物支持具の回転盤15に駆動ピン嵌合部22Aが設けられ、この駆動ピン嵌合部22Aに嵌合する駆動ピン46Aが設けられた駆動用回転体46を軸支する可動台42が、フローティングシステム52によって支持され且つ駆動用回転体46を備えた支持台部51を有し、このフローティングシステム52により、駆動ピン46Aが、少なくとも駆動用回転体46の回転軸心方向に対して直角の二次元平面に沿った任意の方向に支持台部51と共に遊動可能に構成され、このフローティングシステム52は、駆動ピン46Aが駆動ピン嵌合部22Aに嵌合した状態で支持台部51を現在位置で固定するロック機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体が支持する被搬送物を搬送途中に回転させて姿勢を変更することができるタイプの搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなタイプの搬送装置として、搬送用走行体に被搬送物支持具が回転軸心の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具を回転不能にロックするロック手段が設けられ、このロック手段によるロックを解除するロック解除用被操作具が搬送用走行体側に設けられた搬送装置が、例えば特許文献1などによって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−240462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1などによって知られている従来のこの種の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置では、被搬送物支持具を所定角度だけ回転させる駆動手段として、搬送用走行体の走行経路脇に配設された固定ピンを使用するものであって、被搬送物支持具と連動する回転盤と前記固定ピンとの間の搬送用走行体の走行に伴う相対移動により、前記回転盤を介して被搬送物支持具を所定角度回転させるものであるから、被搬送物支持具の回転角度が例えば90度間隔などに決まってしまい、任意に設定した角度だけ回転させることができなかった。このような問題点を解決するために、所定位置で停止した搬送用走行体の被搬送物支持具を、走行経路脇に配設したモーター駆動の駆動手段により予め設定された角度だけ強制的に回転駆動させることが考えられるが、このような駆動手段を備えた実用的な搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置は、従来提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、搬送用走行体(1)に被搬送物支持具(12)が回転軸心(14a)の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具(12)を回転不能にロックするロック手段(26)が設けられ、このロック手段(26)によるロックを解除するロック解除用被操作具(28)が搬送用走行体(1)側に設けられ、搬送用走行体(1)の停止位置には、前記ロック解除用被操作具(28)に対してロック解除操作を行うロック解除操作手段(37)と被搬送物支持具(12)の回転駆動手段(38)とが併設され、回転駆動手段(38)は、定位置で停止した搬送用走行体(1)の被搬送物支持具(12)の回転軸心(14a)と平行な方向に出退移動自在な可動台(42)と、この可動台(42)上に前記回転軸心(14a)と略同心状の軸心の周りで回転自在に軸支された駆動用回転体(46)を備え、この駆動用回転体(46)には、その偏心位置から突設された駆動ピン(46A,46B)が設けられ、被搬送物支持具(12)側には、前記可動台(42)の進出移動により前記駆動ピン(46A,46B)が嵌合することのできる駆動ピン嵌合部(22A,22B)が設けられた搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置において、前記可動台(42)は、フローティングシステム(52)によって支持され且つ前記駆動用回転体(46)を備えた支持台部(51)を有し、このフローティングシステム(52)により、前記駆動ピン(46A,46B)が、少なくとも前記駆動用回転体(46)の回転軸心方向に対して直角の二次元平面に沿った任意の方向に前記支持台部(51)と共に遊動可能に構成され、このフローティングシステム(52)は、前記駆動ピン(46A,46B)が駆動ピン嵌合部(22A,22B)に嵌合した状態で前記支持台部(51)を現在位置で固定するロック機能を備えた構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記可動台(42)は、据付け架台(41)上に被搬送物支持具(12)の回転軸心(14a)と平行な方向に出退移動自在に支持された基台部(49)と、この基台部(49)上に支持された中間台部(50)と、この中間台部(51)上に支持されて前記駆動用回転体(46)を備える支持台部(51)とから構成し、前記フローティングシステム(52)は、前記基台部(49)と中間台部(50)との間に介装されて当該中間台部(50)の前記駆動用回転体(46)の回転軸心と平行なX,Y二次元平面上の任意の方向への遊動を許容するX,Y方向フローティングユニット(53)と、前記中間台部(50)と前記支持台部(51)との間に介装されて当該支持台部(51)の前記X,Y二次元平面に対する直角Z方向の遊動を許容するZ方向フローティングユニット(54)を備えた構成とすることができる。
【0007】
さらに具体的には、請求項3に記載のように、前記X,Y方向フローティングユニット(53)は、流体圧による加圧により基台部(49)に対する現在位置で中間台部(50)をロックするロック機能を備えたものとし、前記Z方向フローティングユニット(54)は、支持台部(51)をZ方向両側からバネ(60,62)により挟持して当該支持台部(51)をZ方向遊動範囲の中間定位置で保持するものとし、このZ方向フローティングユニット(54)とは別に、流体圧による加圧により中間台部(50)に対する現在位置で支持台部(51)をロックするZ方向ロック手段(55)を組み合わせて構成することができる。この場合、請求項4に記載のように、少なくとも前記支持台部(51)が可動台後退限位置に復帰したときに、この支持台部(51)の位置を矯正して定位置に位置決めする位置決め手段(70)を設けることができる。
【0008】
又、請求項5に記載のように、前記ロック解除操作手段(37)は、前記可動台(42)を構成する支持台部(51)上に設けるのが望ましい。更に、請求項6に記載のように、前記可動台(42)を出退移動させる出退駆動手段は、据付け架台(41)上に前記可動台(42)の出退移動方向と平行な向きに支持され且つピストンロッド(63a)が前記可動台(42)を構成する支持台部(51)に連結されたシリンダーユニット(66)から構成し、このシリンダーユニット(66)のピストンロッド(66a)と前記支持台部(51)との連結には、前記可動台(42)の出退移動方向に対して直角の二次元平面に沿った前記支持台部(51)の遊動を許容する自在連結手段(68)を使用することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明の搬送装置では、回転駆動手段の駆動用回転体の回転軸心と被搬送物支持具の回転軸心と同心状になる所定位置で搬送用走行体を停止させた状態において、回転駆動手段の可動台を所要量だけ被搬送物支持具側に進出移動させて、回転駆動手段側の駆動用回転体の駆動ピンを被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部に嵌合させるのであるが、被搬送物支持具の現在角度(姿勢)が前以って判明しているときには、その被搬送物支持具の現在角度に合わせて駆動用回転体(駆動ピン)を回転させた状態で待機させておく必要がある。勿論、回転駆動手段側に被搬送物支持具の現在角度(駆動ピン嵌合部の現在角度)を検出する手段を設けておき、この検出手段により検出した被搬送物支持具の現在角度に合わせて駆動用回転体(駆動ピン)を回転させる。このように、駆動ピンの角度と被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部の角度とを合わせた状態で、可動台を所要量だけ被搬送物支持具側に進出移動させて、駆動用回転体の駆動ピンを被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部に嵌合させる。この後、駆動用回転体を所定の方向に所定角度だけ回転駆動することにより、駆動ピンと駆動ピン嵌合部とを介して被搬送物支持具を所定の方向に所定角度だけ回転させて、被搬送物支持具の姿勢を希望の姿勢に切り換えることができる。
【0010】
上記のように使用できる本発明の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置によれば、駆動ピンの先端を尖端状に形成するか又は駆動ピン嵌合部の開口をラッパ状に拡径するかの少なくとも何れか一方の構成を採用しておきさえすれば、可動台を進出移動させて駆動ピンを駆動ピン嵌合部に嵌合させるとき、駆動ピンの先端が駆動ピン嵌合部の開口のエリア内に対面している限り、両者が完全に同心状に対面していなくとも、駆動ピンが、その進出方向に対して直角の二次元平面に沿った任意の方向に移動できるので、この駆動ピンの移動を伴って当該駆動ピンを確実に被搬送物支持具側の駆動ピン嵌合部に嵌合させることができる。しかも、駆動ピンのみではなく、当該駆動ピンを備えた駆動用回転体やこれを駆動する駆動手段(減速機付きモーターなど)を支持する可動台の支持台部そのものをフローティングシステムにより遊動可能に支持させる構成であるから、実施が容易であり、駆動ピンを強力に回転駆動させることが容易である。更に、一旦駆動ピンが駆動ピン嵌合部に嵌合したならば、そのときの現在位置で前記支持台部をロックできるので、駆動時の反力で支持台部側が揺れ動く恐れがなくなり、この点でも駆動ピンを強力に回転駆動させることができる。
【0011】
尚、請求項2に記載の構成によれば、1つの支持台部のみから可動台を構成する場合よりも、許容遊動方向ごとに分けられた複数の台構造体、即ち、基台部、中間台部、及び支持台部に分けて可動台を構成することができるので、支持構造やフローティングシステムの実施が容易になる。特に、請求項3に記載の構成によれば、X,Y方向フローティングユニットとして従来周知の市販のロック機能付きフローティングユニットをそのまま活用し、Z方向フローティングユニットだけをバネを利用して構成すると共に、シリンダーユニットを利用した簡単な構造のZ方向ロック手段を組み合わせれば良いので、本発明を一層容易且つ安価に実施することができる。
【0012】
尚、請求項3に記載の構成によれば、支持台部を後退限位置まで後退移動させて、次の搬送用走行体の到着に備えるとき、Z方向に関してはZ方向ロック手段を開放すれば駆動ピンは初期位置に自動復帰するが、X,Y方向フローティングユニットからロックのための流体圧を開放しても、駆動ピンはX,Y二次元平面上の初期位置に自動復帰しない(勿論、強力な自動調心機構を内蔵したタイプのものを使用すれば、駆動ピンをX,Y二次元平面上の初期位置に自動復帰させることができる)。この場合、駆動ピンがX,Y二次元平面上の初期位置に復帰していないことが原因で、次の姿勢切換えに際して、駆動ピンを駆動ピン嵌合部に嵌合させることができなくなる恐れが生じる。しかしながら、請求項4に記載の構成によれば、このような問題点を解消できる。
【0013】
又、請求項5に記載の構成によれば、駆動ピンが駆動ピン嵌合部の位置に応じて自動的に位置が矯正されるとき、ロック解除操作手段の位置も駆動ピン嵌合部の位置に応じて自動的に矯正されることになるので、搬送用走行体側のロック手段に付属のロック解除用被操作具を前記ロック解除操作手段により確実に操作してロック解除することができる。
【0014】
更に、請求項2に記載の構成を採用する場合、前記可動台を出退移動させる出退駆動手段として基台部を出退移動させるシリンダーユニットを使用することもできるが、この場合、シリンダーユニットにより可動台(基台部)を出退駆動するときに、駆動用回転体やその駆動手段を搭載した支持台部は、フローティングシステムの影響を受けて不測に遊動する恐れがあるが、請求項6に記載の構成によれば、このような恐れが解消し、駆動用回転体やその駆動手段を搭載した支持台部を確実に出退駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例の全体を、搬送用走行体の走行経路方向から見た立面図である。
【図2】A図は被搬送物姿勢切換え装置の正面図、B図は被搬送物姿勢切換え装置の正面に対面する搬送用走行体の側面図である。
【図3】被搬送物姿勢切換え装置の可動台のZ方向フローティングユニットを示す要部の正面図である。
【図4】被搬送物姿勢切換え装置の可動台のX,Y方向フローティングユニットとZ方向フローティングユニットを示す要部の拡大正面図である。
【図5】被搬送物姿勢切換え装置の支持台部上の構成を示す横断平面図である。
【図6】被搬送物姿勢切換え装置の支持台部と中間台部との中間位置での横断平面図である。
【図7】被搬送物姿勢切換え装置の可動台の出退駆動手段の構成を示す要部の縦断側面図である。
【図8】被搬送物姿勢切換え装置の支持台部の位置決め手段を示す要部の縦断側面図である。
【図9】被搬送物姿勢切換え装置の動作前の状態を示す要部の側面図である。
【図10】A図〜C図はロック解除操作手段の各段階での状態を示す要部の一部横断平面図である。
【図11】被搬送物姿勢切換え装置の動作の第一段階を示す要部の側面図である。
【図12】被搬送物姿勢切換え装置の動作の第二段階を示す要部の一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、この実施例で使用される搬送用走行体1は、走行経路に沿って架設されたガイドレール2に前後一対の車輪3を介して移動自在に支持され、この搬送用走行体1の走行経路の下側に沿って架設された駆動/解除切換え自在なトロリーコンベヤ4によって駆動される。即ち、駆動/解除切換え自在なトロリーコンベヤ4は従来周知のものであって、ガイドレール5に支持され且つ前記搬送用走行体1に連結されたトロリー6の被動用ドッグ7に、駆動チエン8側のプッシャー9が係合することにより、トロリー6を介して搬送用走行体1を前進駆動させる。駆動チエン8は、ガイドレール10にトロリー8aを介して移動自在に支持され、前記プッシャー9は、前記トロリー8aによって支持されたチエンリンクから突設されている。
【0017】
尚、従来周知のように、前記被動用ドッグ7は、駆動チエン8側のプッシャー9に対して係脱自在なもので、搬送用走行体1の停止位置に併設された出退自在なカムによりプッシャー9から切り離されることにより、搬送用走行体1を所定位置に停止させることができる。そして、前記カムを被動用ドッグ7から離脱移動させて被動用ドッグ7を元の作用姿勢に復帰させることにより、当該被動用ドッグ7を後続のプッシャー9と係合させて、停止していた搬送用走行体1を再び推進駆動させることができる。
【0018】
図1及び図2に示すように、搬送用走行体1から垂直に起立するように立設された支柱11の上端に被搬送物Wを支持する被搬送物支持具12が設けられている。この被搬送物支持具12は、支柱11の上端に取り付けられた軸受け13によって搬送用走行体1の走行方向に対して左右水平横向きに支承された回転軸14と、軸受け13に接近させて回転軸14の一端に取り付けられた回転盤15と、軸受け13から長く延出する回転軸14の他端に取り付けられた被搬送物取付け枠16によって構成されている。尚、被搬送物取付け枠16の回転軸14のある側とは反対側に、前記回転軸14と同心状にガイドローラー17が軸支され、回転軸14を支承する軸受け13には上向きに上側支柱18が突設され、この上側支柱18の上端に垂直支軸によりガイドローラー19が軸支されている。従って、搬送用走行体1の走行経路中の必要な経路区間には、前記ガイドローラー17を支持案内する支持用ガイドレール20や、前記ガイドローラー19に嵌合する振れ止め用ガイドレール21を架設することができる。
【0019】
前記回転盤15は、回転軸14と同心状の円形板からなるもので、回転中心に対して対称に一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bが設けられ、これら一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bを通る直径方向仮想線上で片側の駆動ピン嵌合部22Bより外側に被検出部23が突設されている。駆動ピン嵌合部22A,22Bは、図9などに示されるように、回転盤15に取り付けられた筒状体24の、回転軸14と平行な貫通孔部によって構成され、被検出部23は、回転盤14に固着された円柱体(材質は併用される被搬送物姿勢切換え装置側のセンサーの検出様式に応じたものが使用される)から構成されている。
【0020】
被搬送物支持具12の被搬送物取付け枠16は、回転軸14の軸心14aの周りに回転することにより、予め設定された特定角度ごとの複数の姿勢に切り換えられるものであるが、この実施例では、図2Bに示すように、例えば、一対の駆動ピン嵌合部22A,22B及び被検出部23がこの順番に垂直上下方向に並ぶ正立姿勢を中心にして、左右に40度回転した正40度傾斜姿勢と逆40度傾斜姿勢、更に正立姿勢を中心にして左右に90度回転した正90度倒伏姿勢と逆90度倒伏姿勢に切り換えられる。この特定角度ごとの複数の姿勢は一例であって、被搬送物に対する作業内容などに応じて任意に設定できるものである。
【0021】
図2Bに示すように、被搬送物支持具12の回転盤15には、被搬送物取り付け枠16が前記正立姿勢にあるとき、前記のように垂直上下方向に並ぶ一対の駆動ピン嵌合部22A,22B及び被検出部23と同一列上で、最上位の駆動ピン嵌合部22Aよりも上側の位置に正立姿勢ロック用の被係止部25aが設けられ、この被係止部25aを中心にして円周方向の左右両側に、被搬送物取付け枠16が正立姿勢以外の前記各姿勢にあるときに、前記被係止部25aのあった位置に位置するように、正40度傾斜姿勢ロック用の被係止部25b、逆40度傾斜姿勢ロック用の被係止部25c、正90度倒伏姿勢ロック用の被係止部25d、及び逆90度倒伏姿勢ロック用の被係止部25eがそれぞれ設けられている。これら各被係止部25a〜25eは、回転盤15に設けられた貫通孔で構成することもできるが、この実施例では、回転盤15の周縁の切込み凹部によって構成している。
【0022】
又、搬送用走行体1には、上記各被係止部25a〜25eを利用して前記被搬送物支持具12を各姿勢でロックするロック手段26が設けられている。このロック手段26は、被搬送物取り付け枠16が前記各姿勢にあるときに回転盤15の回転軸心14aを通る垂直線上に位置する各被係止部25aに〜25eに対して択一的に嵌合離脱自在なロックピン27と、このロックピン27と連動するロック解除用被操作具28とから構成されている。図9及び図10に示すように、ロックピン27は、回転盤15を軸支する軸受け13から回転盤15と平行に上向きに固着突設された支持板29に固着された筒状体30内に、回転軸14の軸心14aと平行にスライド自在に支持されている。
【0023】
ロック解除用被操作具28は、ロックピン27と平行にスライドするスライドピン31により構成されている。このスライドピン31は、ロックピン27が取り付けられている支持板29に、ロックピン27を支持する筒状体30の真上位置で取り付けられた筒状体32にスライド自在に貫通支持され、このスライドピン31の後端部とロックピン27の後端部とが上下方向の連結部材33により連結一体化されている。スライドピン31の先端には、搬送用走行体1の走行方向と平行向きに貫通する貫通孔で構成された係合部34を備えたブロック材35が取り付けられ、このブロック材35と支持板29との間で筒状体32に遊嵌するように圧縮コイルバネ36が介装され、この圧縮コイルバネ36の付勢力により、スライドピン31とロックピン27とを前方に進出させてロックピン27を、その先端が回転盤15側の被係止部25a〜25eの一つに嵌合するロック位置に付勢保持している。
【0024】
上記構成の搬送用走行体1によれば、被搬送物支持具12の被搬送物取付け枠16に取り付けられた被搬送物Wの姿勢は、被搬送物支持具12の回転盤15の周辺に所要角度間隔で設けられた5つの被係止部25a〜25eに対してロック手段26のロックピン27を択一的に嵌合させることにより、先に述べた5つの姿勢の内の一つでロックされる。この被搬送物Wの姿勢を他の姿勢に切り換えるときは、ロック手段26のロック解除用被操作具28(スライドピン31)を圧縮コイルバネ36の付勢力に抗して押し操作してロックピン27を後退移動させ、当該ロックピン27を回転盤15側の被係止部25a〜25eから離脱させて、回転盤15に対するロックを解除する。この状態で回転盤15を所定の方向に所定角度回転させて、一体に回転する被搬送物取付け枠16に取り付けられている被搬送物Wの姿勢を目的の姿勢に変更したならば、ロック解除用被操作具28のスライドピン31に対する押し操作力を解除して、ロックピン27を圧縮コイルバネ36の付勢力で回転盤15側へ復帰移動させ、そのときロックピン27に対向している回転盤15側の被係止部25a〜25eの一つにロックピン27を嵌合させることにより、回転盤15を介して被搬送物支持具12(被搬送物取付け枠16)を回転不能にロックすれば良い。
【0025】
上記のように被搬送物支持具12を介して被搬送物Wを所定の姿勢で保持している搬送用走行体1を駆動チエン8のプッシャー9で推進させることにより、当該被搬送物Wを搬送用走行体1の走行経路(ガイドレール2)に沿って搬送することになるが、この搬送用走行体1の走行経路中に設定された被搬送物姿勢切換え地点では、先に説明したような方法により搬送用走行体1が所定位置に自動停止される。そしてこの搬送用走行体1の停止位置(被搬送物姿勢切換え地点)には、図1に示すように、ロック解除操作手段37と回転駆動手段38、及び動作確認用検出手段39を備えた被搬送物姿勢切換え装置40が、据付け架台41を介して床面上に設置されている。
【0026】
回転駆動手段38は、据付け架台41上に支持された可動台42、この可動台42上に搭載された減速機付きモーター43、可動台42上に設置された軸受け44によって支承され且つ前記減速機付きモーター43によって駆動される駆動軸45、及びこの駆動軸45の先端に取り付けられた駆動用回転体46から構成されている。この駆動用回転体46には、被搬送物支持具12側の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに同時に嵌合可能な、直径方向一対の駆動ピン46A,46Bが突設されている。前記可動台42は、図2A、及び図3〜図6に示すように、据付け架台41上に敷設されたスライドガイドレール47とこれに嵌合するスライドブロック48とを介して、前記搬送用走行体1の被搬送物支持具12(回転盤15)の回転軸心14aと平行に出退移動自在に支持された基台部49、この基台部49上に支持された中間台部50、及びこの中間台部50上に支持された支持台部51から構成されている。前記減速機付きモーター43と軸受け44は、停止位置(被搬送物姿勢切換え地点)に停止した搬送用走行体1の被搬送物支持具12(回転盤15)の回転軸心、即ち、回転軸14の軸心14aと駆動軸45とが略同心状に位置すると共に、駆動用回転体46が前記被搬送物支持具12の回転盤15に隣り合うように、支持台部51上に設置されている。
【0027】
上記構成の可動台42は、フローティングシステム52を備えている。このフローティングシステム52は、基台部49と中間台部50との間に介装されて当該中間台部50の駆動用回転体46の回転軸心と平行なX,Y二次元平面(図示の実施例では水平面)上の任意の方向への遊動を許容するX,Y方向フローティングユニット53と、中間台部50と支持台部51との間に介装されて当該支持台部51の前記X,Y二次元平面に対する直角Z方向(図示の実施例では上下鉛直方向)の遊動を許容するZ方向フローティングユニット54と、中間台部50と支持台部51との間に介装されたZ方向ロック手段55から構成されている。X,Y方向フローティングユニット53は、基台部49上の四隅4個所に配設されるもので、その機能は、基台部49に対し中間台部50がX,Y二次元平面(図示の実施例では水平面)上で任意の方向へ滑動するのを一定範囲内で許容するものであって、その滑動許容範囲内の中心位置に支持側(中間台部50)をマグネットと渦巻きコイルバネとで自動調心できる機能と、流体圧(空気圧)による加圧により、基台部49に対し中間台部50をそのときの現在位置でロックするロック機能を備えている。このようなX,Y方向フローティングユニット53としては、例えば株式会社エイテック製の商品名「センターリングユニット」などが利用できる。
【0028】
Z方向フローティングユニット54は、中間台部50上の四隅4個所で各X,Y方向フローティングユニット53の真上に位置するように配設されたもので、図4に示すように、中間台部50上に設置された台座部56からZ方向(上下鉛直方向)に固着立設されたスライドガイドロッド57、支持板58を介して支持台部51に取り付けられ且つ前記スライドガイドロッド57が相対スライド自在に貫通するスライドガイド59、このスライドガイド59と台座部56との間に介装された支持用圧縮コイルバネ60、及びスライドガイドロッド57の上端に取り付けられたバネ受け座61とその下側の前記スライドガイド59との間に介装された押え用圧縮コイルバネ62から構成されている。而して、4つのZ方向フローティングユニット54における各支持用圧縮コイルバネ60が支持台部51の四隅を略一定高さで支持するのであるが、支持台部51に下向きに負荷が掛かると、支持用圧縮コイルバネ60の付勢力に抗して支持台部51が支持レベルよりも下方に一定範囲内で降下することができ、逆に支持台部51に上向きの外力が作用すると、押え用圧縮コイルバネ62の下向きの付勢力に抗して支持台部51が支持レベルよりも上方に一体範囲内で上昇することができる。
【0029】
Z方向ロック手段55は、図5に示すように、支持台部51の両側辺で前後に位置するZ方向フローティングユニット54の中間に位置するように、中間台部50と支持台部51との間に左右一対介装されている。これらZ方向ロック手段55は、図3に示すように、中間台部50の上にZ方向(上下鉛直方向)向きに設置されたシリンダーユニット63から上向きに突出するピストンロッド63aと、支持台部51に取り付けられて横側方に突出する連結板64とを、自在連結具65により連結したものであり、シリンダーユニット63がフリーな状況では、中間台部50に対する支持台部51の昇降運動は許容されるが、シリンダーユニット63に対し上下両方向に流体圧(空気圧)を供給して加圧することにより、中間台部50に対するそのときの現在位置(高さ)で支持台部51をロックすることができるものである。
【0030】
図6及び図7に示すように、可動台42を出退移動させる出退駆動手段として、支持台部51を出退駆動するシリンダーユニット66が設けられている。このシリンダーユニット66は、据付け架台41の後端部上に取り付けられたブラケット67に取り付けられ、そのピストンロッド66aは、支持台部51の後端部下側に、支持台部51の出退移動方向に対して直角の二次元平面に沿った当該支持台部51の遊動を許容する自在連結手段68を介して連結されている。具体的は、支持台部51の後端部下側に取り付けられた垂直な連結板68aには、大径の貫通丸孔68bがピストンロッド66aの軸心方向(可動台42の出退移動方向)に貫通して設けられ、この貫通丸孔68bより十分に小径で当該貫通丸孔68bを貫通する連結軸68cと、連結板68aの両側で当該連結板68aの厚さより若干広い間隔を保って連結軸68cを連結する一対の締結板68d,68eを備えた自在連結手段68が、自在連結具69を介してピストンロッド66aに連結されている。この自在連結手段68の存在により、シリンダーユニット66のピストンロッド66aの出退運動を支持台部51に伝達することはできるが、前記連結軸68cと連結板68aの貫通丸孔68bとの間の環状空間の範囲内での支持台部51の遊動、即ち、支持台部51の出退移動方向に対して直角の二次元平面に沿った遊動が許容される。
【0031】
更に、図6及び図8に示すように、支持台部51が後退限位置に戻ったときに、当該支持台部51を位置決めする位置決め手段70が設けられている。この位置決め手段70は、前記シリンダーユニット66を取り付けるために据付け架台41に取り付けられたブラケット67に、シリンダーユニット66の左右両側に振り分け状に取り付けられた左右一対のVブロック71a,71bと、支持台部51の後端部下側に取り付けられた左右一対の下向き嵌合体72a,72bとから構成されている。下向き嵌合体72a,72bは、支持台部51に固定された垂直支軸73に自転可能に遊嵌させた筒状回転体74から構成されたもので、支持台部51がシリンダーユニット66により後退限位置まで引き戻されたとき、下向き嵌合体72a,72bの筒状回転体74が据付け架台41側のVブロック71a,71bの平面形状がV形の凹部に嵌合することにより、支持台部51が定位置に位置決めされる。
【0032】
ロック解除操作手段37は、可動台42の支持台部51上に前記軸受け44を跨ぐように取り付けられた門形架台75の上に設置されている。このロック解除操作手段37は、図9及び図10に示すように、可動台42の移動方向と直交する横方向(搬送用走行体1の走行方向)に往復移動自在に門形架台75上に設けられた横動台76と、この横動台76上に前記可動台42の移動方向と同一方向に往復移動自在に設けられた出退移動体77と、この出退移動体77に横向きに突設された係合ピン78を備えている。前記横動台76は、門形架台75上に据え付けられたガイド付きシリンダーユニット79の一対のガイドロッド79a,79bとピストンロッド79cによって支持されると共に水平横方向に往復駆動される。前記出退移動体77は、前記横動台76上にスライドブロック80とスライドガイドレール81とを介して往復移動自在に支持されると共に、前端部上側には、この出退移動体77の移動方向と平行な垂直板82が固着突設され、この垂直板82の後端と横動台76との間に介装されたシリンダーユニット83により駆動される。前記係合ピン78は、出退移動体77上の垂直板82の先端部一側面から突設されている。
【0033】
動作確認用検出手段39は、図2A及び図5に示すように、ロック解除操作手段37を支持する門形架台75に取り付けられて駆動用回転体46の回転領域の下半部に沿って位置する半円形の取付け板84の取り付けられたセンサー85a〜85eによって構成されている。これら各センサー85a〜85eは、図11に示すように、可動台42が進出移動して駆動ピン46A,46Bが被搬送物支持具12側の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合したとき、当該回転盤15側の被検出部23が、そのときの被搬送物支持具12の姿勢(角度)に応じて、センサー85a〜85eの一つに隣接することにより、当該被検出部23を検出するものである。
【0034】
以下、使用方法及び作用について説明すると、被搬送物姿勢切換え装置40に向かって走行する搬送用走行体1の被搬送物支持具12は、先に説明した予め設定された特定角度でロック手段26によって固定されている。例えば、被搬送物支持具12が正立姿勢にあるときは、ロック手段26のロックピン27は、図2Bに示すように、回転盤15の被係止部25a〜25eの内、正立姿勢ロック用の被係止部25aに嵌合し、この回転盤15と回転軸14を介して被搬送物取付け枠16を正立姿勢でロックしている。この搬送用走行体1の被搬送物支持具12の姿勢情報は、被搬送物姿勢切換え装置40の制御装置に対し予め与えられている。而して、当該搬送用走行体1が被搬送物姿勢切換え装置40に隣接する定位置で停止したならば、この停止位置に併設されたクランプ手段86を作動させて搬送用走行体1の支柱11を固定することができる。又、必要に応じて、被搬送物取付け枠16の遊端側のガイドローラー17が支持用ガイドレール20で支持されると共にクランプ手段87でクランプされて位置決めされ、ガイドローラー19が振れ止め用ガイドレール21に嵌合して振れ止めされるように構成することができる。回転駆動手段38の可動台42は後退限位置で待機しているが、このとき、ロック解除操作手段37の横動台76は、図10Aに示すように、出退移動体77を前進移動させても、係合ピン78が搬送用走行体1側のロック解除用被操作具28のスライドピン31と干渉しない横方向進出限位置(ガイド付きシリンダーユニット79のピストンロッド79cの進出限位置)で待機すると共に、出退移動体77は後退限位置で待機している。
【0035】
搬送用走行体1が被搬送物姿勢切換え装置40に隣接する定位置で停止した後、回転駆動手段38における可動台42の出退駆動手段であるシリンダーユニット66を作動させて、可動台42を後退限位置から進出限位置まで進出移動させる。具体的には、シリンダーユニット66により自在連結手段68を介して可動台42の支持台部51を前進方向に押圧移動させると、Z方向フローティングユニット54とX,Y方向フローティングユニット53を介して支持台部51に連結されている中間台部50と基台部49が支持台部51と一体になって据付け架台41上のスライドガイドレール47に案内されて進出方向に移動することになる。
【0036】
このとき、回転駆動手段38の駆動用回転体46は、前以って与えられる搬送用走行体1の被搬送物支持具12の姿勢情報に従って、可動台42が進出駆動される前に減速機付きモーター43により回転駆動され、駆動ピン46A,46Bが、到着する搬送用走行体1側の回転盤15における駆動ピン嵌合部22A,22Bの位相と一致する位相にセットされている。例えば、上記のように被搬送物支持具12が正立姿勢にあって、ロック手段26のロックピン27が回転盤15の正立姿勢ロック用の被係止部25aに嵌合しているときは、駆動ピン嵌合部22A,22及び被検出部23が垂直に並んでいるので、駆動用回転体46側の駆動ピン46A,46Bも垂直に並ぶ状態にセットされている。
【0037】
従って、可動台42の進出移動により、一体に進出移動する駆動用回転体46の一対の駆動ピン46A,46Bが、図11に示すように、搬送用走行体1側の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合することになる。そして可動台42が進出限位置に達したとき、図示のように、可動台42と一体に進出移動している動作確認用検出手段39のセンサー85a〜85eの内、被搬送物支持具12の姿勢に対応する1つのセンサー、例えば上記のように被搬送物支持具12が正立姿勢にあるときは、中央真下のセンサー85aが回転盤15側の被検出部23に最接近し、当該センサー85aのみが被検出部23を検出することになる。このセンサー85aが回転盤15側の被検出部23を検出することにより、駆動用回転体46の一対の駆動ピン46A,46Bが搬送用走行体1側の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合したことを確認できる。仮に、被搬送物支持具12の姿勢がこの被搬送物姿勢切換え装置40に到着する前に何らかの原因で変化した場合は、駆動用回転体46の一対の駆動ピン46A,46Bが搬送用走行体1側の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合しないまま可動台42が進出限位置に達するので、動作確認用検出手段39のセンサー85aは回転盤15側の被検出部23から周方向にずれた位置にあって、被検出部23の検出作用が行なわれないので、異常であると判定して非常停止をかけるなどの対策を講じることができる。
【0038】
尚、上記構成から、被搬送物支持具12が正立姿勢ではなく、正40度傾斜姿勢、逆40度傾斜姿勢、正90度倒伏姿勢、及び逆90度倒伏姿勢の内の一姿勢でロック手段26によりロックされているときは、動作確認用検出手段39のセンサー85b〜85eの内、各姿勢に対応する1つのセンサー、即ち、正40度傾斜姿勢のときはセンサー85b、逆40度傾斜姿勢のときはセンサー85c、正90度倒伏姿勢のときはセンサー85d、そして逆90度倒伏姿勢のときはセンサー85eが、それぞれ回転盤15側の被検出部23を検出することになることは容易に理解できる。
【0039】
又、上記のように、被搬送物姿勢切換え装置40に対応する定位置で停止した搬送用走行体1は、クランプ手段86,87で定位置に位置決めすることはできるが、この位置決め状態においても、回転盤15側の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bと回転駆動手段38側の一対の駆動ピン46A,46Bとを完全に同心状に対向させることには無理があって、駆動ピン嵌合部22A,22Bと駆動ピン46A,46Bとの間に多少の芯ずれが生じることは避けられない。しかしながら、この駆動ピン46A,46Bを備えた可動台42の支持台部51が、X,Y方向フローティングユニット53とZ方向フローティングユニット54を備えたフローティングシステム52によって基台部49に支持されていて、駆動ピン46A,46Bは、X,Y方向フローティングユニット53の水平方向自動調心力、Z方向フローティングユニット54の支持用圧縮コイルバネ60の上向き支持力、押え用圧縮コイルバネ62の下向き押え力などの、駆動ピン46A,46Bを一定位置に保持する保持力を超える外力を受けたとき、その進出移動方向(可動台42の前進方向)に対して直角の二次元平面に沿って一定範囲内で自在に遊動できる。
【0040】
従って、駆動ピン嵌合部22A,22Bと駆動ピン46A,46Bとの間の芯ずれ量が許容範囲内である場合、即ち、駆動ピン46A,46Bの先端が円錐状に形成された尖端である場合、その尖端が駆動ピン嵌合部22A,22Bの開口エリア内に対向しているときは、この駆動ピン46A,46Bの尖端が駆動ピン嵌合部22A,22B内に進入するのに従って、当該駆動ピン嵌合部22A,22Bが、その進出移動方向に対して直角の二次元平面に沿った略平行運動を伴って駆動ピン嵌合部22A,22Bに対し自動調心されながら嵌合することになり、結果として、前記芯ずれが自動的に矯正されて、駆動ピン46A,46Bは駆動ピン嵌合部22A,22B内に円滑確実に嵌合することができる。この芯ずれ量吸収のための支持台部51の進出移動方向に対して直角の二次元平面に沿った遊動は、この支持台部51を出退駆動するシリンダーユニット66と当該支持台部51とを連結する自在連結手段68のシリンダーユニット66側の連結軸68cに対して支持台部51側の連結板68aが、その貫通丸孔68bの範囲内で前記二次元平面に沿って相対移動することにより吸収され、据付け架台41側に取り付けられているシリンダーユニット66には影響しないが、当該シリンダーユニット66の出退駆動力は確実に支持台部51に伝達される。
【0041】
上記のように可動台42を進出限位置まで進出移動させて駆動用回転体46側の一対の駆動ピン46A,46Bを搬送用走行体1側(被搬送物支持具12側)の回転盤15の一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合させる第一段階が終了した時点では、可動台42(支持台部51)と一体に進出移動するロック解除操作手段37の係合ピン78は、図10A,Bの仮想線と図11に示すように、搬送用走行体1側のロック手段26に併設されるロック解除用被操作具28(スライドピン31)の先端の係合部34(ブロック材35の貫通孔)の真横で、当該係合部34と略同心状になる位置P1に達している。
【0042】
上記第一段階が終了した時点では、駆動ピン46A,46Bを備えた可動台42の支持台部51は、先に説明したように、フローティングシステム52によって支持されていて位置が固定されていないので、このフローティングシステム52が備えるロック機能を働かせる。即ち、X,Y方向フローティングユニット53に対しては、流体圧による加圧により、それ自体が有するロック機能を作動させて、基台部49に対する現在位置で中間台部50を基台部49に固定する。又、Z方向フローティングユニット54それ自体にはロック機能がないので、追加したZ方向ロック手段55のシリンダーユニット63に対して流体圧を上下両方向向きに供給してピストンロッド63aを固定し、当該ピストンロッド63aに連結されている支持台部51を中間台部50に対する現在高さで固定する。この結果、支持台部51は、基台部49に対するX,Y二次元平面(図示例では水平面)上での遊動も、中間台部50に対するZ方向(図示例では上下方向)の遊動もできない状態になり、基台部49、中間台部50、及び支持台部51の三者が一体化される。勿論、このように一体化された可動台42(支持台部51)の進出方向の位置、即ち、ガイドレール47に沿った方向の位置は、自在連結手段68を介して連結されているシリンダーユニット66により確実に維持される。
上記第一段階の終了後に第二段階を実行する。即ち、ロック解除操作手段37の横動台76をガイド付きシリンダーユニット79によって進出限位置から後退限位置まで横動させ、図10Bに示すように、係合ピン78を、搬送用走行体1側のロック解除用被操作具28(スライドピン31)の先端の係合部34(ブロック材35の貫通孔)に横から嵌合させ、続いて、横動台76に対して出退移動体77をシリンダーユニット83により進出移動させて、係合ピン78を前記位置P1から図10C及び図12に示す位置P2まで進出移動させる。この結果、係合ピン78と係合部34とを介して出退移動体77に連結された状態のロック解除用被操作具28(スライドピン31)が圧縮コイルバネ36の付勢力に抗して押し操作され、当該スライドピン31と連結部材33を介して一体化されているロックピン27が、図10C及び図12に示すように、回転盤15側の被係止部25a〜25e(図示例では正立姿勢に対応する被係止部25a)から離脱する位置まで後退移動する。従って、ロック手段26のロックピン27による回転盤15のロックが解除され、被搬送物支持具12が回転軸14の軸心14aの周りに回転自在な状態になる。
【0043】
上記第二段階が終了したならば、回転駆動手段38の減速機付きモーター43を稼働させて駆動用回転体46を所定の方向に所定角度回転させ、直径方向一対の駆動ピン46A,46Bとこれらが嵌合する駆動ピン嵌合部22A,22Bを介して、回転盤15、回転軸14、及び被搬送物取付け枠16からなる被搬送物支持具12を回転軸14の軸心14aの周りに所定の方向に所定角度回転させ、被搬送物取付け枠16に取り付けられている被搬送物Wの現在特定角度(図示例では正立姿勢)を希望する特定角度の姿勢(正40度傾斜姿勢、逆40度傾斜姿勢、正90度倒伏姿勢、及び逆90度倒伏姿勢の内の一つの姿勢)に切り換えることができる。この駆動用回転体46を所定の方向に所定角度だけ回転させる第三段階が終了したとき、回転盤15側の被係止部25a〜25eの一つがロック手段26のロックピン27と略同心状に位置している。この第三段階での一対の駆動ピン46A,46Bによる被搬送物支持具12の回転駆動時には、先に説明したように、第一段階の終了時点で実行したフローティングシステム52が備えるロック機能の作動によって可動台42をロックしているので、駆動ピン46A,46Bによる被搬送物支持具12の回転駆動時に可動台42側が揺れ動いたり振動することはなく、確実に回転駆動作用を遂行できる。
【0044】
上記第三段階が終了すれば、次に第四段階として、ロック解除操作手段37の横動台76に対して出退移動体77をシリンダーユニット83により後退移動させて、係合ピン78を前記位置P2からP1まで後退させると、この係合ピン78の後退移動に伴って、ロック解除用被操作具28(スライドピン31)が圧縮コイルバネ36の付勢力によって前進移動し、このスライドピン31と一体化されているロックピン27を元のロック位置まで復帰させて、そのとき対向している回転盤15側の被係止部25a〜25eの一つに嵌合させ、回転盤15を回転不能にロックすることができる。このとき、何らかの原因で回転盤15側の被係止部25a〜25eがロックピン27から横側方にずれていて、復帰移動するロックピン27の先端が回転盤15に当接し、それ以上の係合ピン78の後退移動ができなくなると、横動台76に対する出退移動体77の後退駆動完了までに割り当てられた設定時間が経過しても当該出退移動体77が後退限位置に戻らない異常事態の検出に基づき、非常停止をかけるなどの処置を講ずることができる。横動台76に対して出退移動体77が後退限位置まで後退すれば、続いてガイド付きシリンダーユニット79により横動台76を進出限位置まで進出移動させ、係合ピン78をロック解除用被操作具28(スライドピン31)の係合部34から横側方に退出させる。
【0045】
上記第四段階の終了の後、可動台42をシリンダーユニット43によりホームポジションである後退限位置まで後退復帰させることにより、駆動用回転体46の駆動ピン46A,46Bを回転盤15側の駆動ピン嵌合部22A,22Bから退出させる。この最終第五段階の終了により、被搬送物支持具12(被搬送物取付け枠16)に取り付けられている被搬送物Wの姿勢の切換えが完了すると共に、ロック手段26により被搬送物支持具12(被搬送物取付け枠16)がその姿勢にロックされるので、クランプ手段86,87の開放の後、搬送用走行体1を走行開始させることができる。
【0046】
尚、可動台42を後退限位置まで後退復帰させるときには、回転駆動手段38により被搬送物支持具12を回転駆動するのに先立って実行したフローティングシステム52のロックを解除することにより、駆動ピン46A,46Bが遊動自在な状態になるので、回転盤15側の駆動ピン嵌合部22A,22Bからの抜出を円滑に行なわせ易い。このフローティングシステム52のロックの解除は、X,Y方向フローティングユニット53とZ方向ロック手段55のシリンダーユニット63に対する流体圧による加圧を解除することにより行なわれ、この結果、中間台部50に対して支持台部51は、Z方向フローティングユニット54によって初期レベルまで自動復帰し、基台部49に対して中間台部50は、X,Y方向フローティングユニット53が備える自動調心機能により初期位置に自動復帰することになるが、中間台部50には、支持台部51より上の全ての荷重が作用しているので、X,Y方向フローティングユニット53が備える自動調心機能が確実に機能しない場合も考えられる。勿論、X,Y方向フローティングユニット53として自動調心機能を持たないものが採用される場合もある。
【0047】
上記のような場合、基台部49に対して中間台部50が初期の定位置に復帰しないままで次の姿勢切換え作用を実行したとき、基台部49に対する中間台部50、延いては支持台部51の位置によっては、次の姿勢切換え作用に際して、駆動ピン46A,46Bを駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合させる作用に支障を来す恐れが考えられる。而るに、上記実施例によれば、可動台42が後退限位置に復帰したとき、図6及び図8に示すように、位置決め手段70における支持台部51側の左右一対の下向き嵌合体72a,72bが据付け架台41側の左右一対のVブロック71a,71bに嵌合して、支持台部51の位置が水平X,Y方向に関する初期の定位置に確実に矯正されて保持されるので、姿勢切換え作用開始時の一対の駆動ピン46A,46Bを常に定位置から進出移動を開始させ、上記のような不都合の生じるのを回避できる。
【0048】
尚、ロック解除操作手段37として、ロックピン27に連動するロック解除用被操作具28を押し引き駆動する構成のものを示したが、単にロックピン27に連動するロック解除用被操作具28を押し操作するプッシャータイプのものとし、ロックピン27のロック位置への復帰はバネ力のみで行なわせるものであっても良い。又、搬送用走行体1側の被搬送物支持具12が、搬送用走行体1の走行方向に対して直角向きの水平回転軸芯14aの周りに回転するものを示したが、搬送物支持具12の回転軸芯14aは、傾斜していても良いし、場合によっては垂直に起立するものであっても良い。これらの場合、姿勢切換え装置における回転駆動手段38の駆動用回転体46の回転軸心や可動台42の出退移動方向も、搬送物支持具12の回転軸芯14aと平行になるように傾斜又は垂直向きとなるように構成される。
【0049】
更に、図示の実施例では、フローティングシステム52に使用するX,Yフローティングユニット53として、中間台部50が駆動用回転体46の回転軸心と平行なX,Y二次元平面(図示の実施例では水平面)上での任意の方向に遊動するのを許容するタイプのものを使用したが、駆動用回転体46の回転軸心方向に対して直角方向(図示の実施例では左右水平方向)においてのみ、中間台部50の遊動を許容する構造のものであっても良い。即ち、フローティングシステム52は、前記駆動ピン46A,46Bが、少なくとも前記駆動用回転体46の回転軸心方向に対して直角の二次元平面(図示の実施例では垂直面)に沿った任意の方向に前記支持台部51と共に遊動可能にするものであれば良い。
【0050】
駆動用回転体46に直径方向一対の駆動ピン46A,46Bを設ける場合、図2に示すように、これら駆動ピン46A,46Bが嵌合する一対の駆動ピン嵌合部22A,22Bは、同一内径の被嵌合孔を有する同一の筒状体24から構成し、一方の駆動ピン46Aは、対応する駆動ピン嵌合部22Aに大きなガタつきなく嵌合できる外径の円柱体から構成し、他方の駆動ピン46Bは、駆動用回転体46の回転方向の幅は前記駆動ピン46Aの外径と略等しいが駆動用回転体46の半径方向の幅は少し小さくした、断面菱形状の柱状体から構成することができる。勿論、両駆動ピン46A,46Bは円錐形の先端(尖端)を有する。この構成によれば、駆動ピン嵌合部22A,22Bに駆動ピン46A,46Bを嵌合させるときの駆動用回転体46の半径方向の遊びが大きくなり、容易に嵌合させることができるのもかかわらず、駆動ピン嵌合部22A,22Bに嵌合した動ピン46A,46Bにより被搬送物支持具12(回転盤15)をガタつきなく強力に回転駆動することができる。
【0051】
駆動用回転体46に設ける駆動ピンの本数は2本に限定されない。1本でも良いし、3本以上であっても良い。又、回転盤15にその回転軸心と同心状に設けたガイド孔に対して嵌合する芯出し用軸を駆動用回転体46側に突設することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の搬送装置は、自動車のドアなどの比較的大型の部品を、作業行程に応じてその姿勢を変える必要のある例えば塗装ラインにおいて搬送する手段として、有効に活用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 搬送用走行体
6 駆動チエン
11 支柱
12 被搬送物支持具
13 軸受け
14 回転軸
14a 回転軸心
15 回転盤
16 被搬送物取付け枠
22A,22B 駆動ピン嵌合部
23 被検出部
25a〜25e ロック用被係止部
26 ロック手段
27 ロックピン
28 ロック解除用被操作具
31 スライドピン
33 連結部材
34 係合部
36 圧縮コイルバネ
37 ロック解除操作手段
38 回転駆動手段
39 動作確認用検出手段
41 据付け架台
42 可動台
43 減速機付きモーター
45 駆動軸
46 駆動用回転体
46A,46B 駆動ピン
49 基台部(可動台)
50 中間台部(可動台)
51 支持台部(可動台)
52 フローティングシステム
53 X,Y方向フローティングユニット
54 Z方向フローティングユニット
55 Z方向ロック手段
57 スライドガイドロッド
60 支持用圧縮コイルバネ
62 押え用圧縮コイルバネ
63 シリンダーユニット
65 自在連結具
66 シリンダーユニット
68 自在連結手段
69 自在連結具
70 位置決め手段
71a,71b Vブロック
72a,72b 下向き嵌合体
75 門形架台
76 横動台
77 出退移動体
78 係合ピン
79 ガイド付きシリンダーユニット
83 シリンダーユニット
85a〜85e センサー動作確認用検出手段
86,87 クランプ手段
W 被搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体に被搬送物支持具が回転軸心の周りに回転自在に支承されると共に、設定された複数の特定ロック角度で被搬送物支持具を回転不能にロックするロック手段が設けられ、このロック手段によるロックを解除するロック解除用被操作具が搬送用走行体側に設けられ、搬送用走行体の停止位置には、前記ロック解除用被操作具に対してロック解除操作を行うロック解除操作手段と被搬送物支持具の回転駆動手段とが併設され、回転駆動手段は、定位置で停止した搬送用走行体の被搬送物支持具の回転軸心と平行な方向に出退移動自在な可動台と、この可動台上に前記回転軸心と略同心状の軸心の周りで回転自在に軸支された駆動用回転体を備え、この駆動用回転体には、その偏心位置から突設された駆動ピンが設けられ、被搬送物支持具側には、前記可動台の進出移動により前記駆動ピンが嵌合することのできる駆動ピン嵌合部が設けられた搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置において、前記可動台は、フローティングシステムを介して支持され且つ前記駆動用回転体を備えた支持台部を有し、このフローティングシステムにより、前記駆動ピンが、少なくとも前記駆動用回転体の回転軸心方向に対して直角の二次元平面に沿った任意の方向に前記支持台部と共に遊動可能に構成され、このフローティングシステムは、前記駆動ピンが駆動ピン嵌合部に嵌合した状態で前記支持台部を現在位置で固定するロック機能を備えている、搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。
【請求項2】
前記可動台は、据付け架台上に被搬送物支持具の回転軸心と平行な方向に出退移動自在に支持された基台部と、この基台部上に支持された中間台部と、この中間台部上に支持されて前記駆動用回転体を備える支持台部とから構成され、前記フローティングシステムは、前記基台部と中間台部との間に介装されて当該中間台部の前記駆動用回転体の回転軸心と平行なX,Y二次元平面上での任意の方向の遊動を許容するX,Y方向フローティングユニット、及び前記中間台部と前記支持台部との間に介装されて当該支持台部の前記X,Y方向に対する直角Z方向の遊動を許容するZ方向フローティングユニットを備えている、請求項1に記載の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。
【請求項3】
前記X,Y方向フローティングユニットは、流体圧による加圧により基台部に対する現在位置で中間台部をロックするロック機能を備え、前記Z方向フローティングユニットは、支持台部をZ方向両側からバネにより挟持して当該支持台部をZ方向遊動範囲の中間定位置で保持するものであって、このZ方向フローティングユニットとは別に、流体圧による加圧により中間台部に対する現在位置で支持台部をロックするZ方向ロック手段が組み合わせられている、請求項2に記載の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。
【請求項4】
少なくとも前記支持台部が可動台後退限位置に復帰したときに、この支持台部の位置を矯正して定位置に位置決めする位置決め手段が設けられている、請求項3に記載の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。
【請求項5】
前記ロック解除操作手段は、前記可動台を構成する支持台部上に設けられている、請求項2〜4の何れか1項に記載の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。
【請求項6】
前記可動台を出退移動させる出退駆動手段は、前記据付け架台上に前記可動台の出退移動方向と平行な向きに支持され且つピストンロッドが前記可動台を構成する支持台部に連結されたシリンダーユニットから構成され、このシリンダーユニットのピストンロッドと前記支持台部との連結には、前記可動台の出退移動方向に対して直角の二次元平面に沿った前記支持台部の遊動を許容する自在連結手段が使用されている、請求項2〜5の何れか1項に記載の搬送装置の被搬送物姿勢切換え装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate