説明

搬送装置及び真空処理装置

【課題】螺旋状磁石を冷却して減磁を防ぐことができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置Tの磁気ネジ駆動機構9は、表面に螺旋状に着磁された螺旋状磁石11aを有し、ハウジングに軸支された螺旋状磁石軸11を、モータに連結された駆動軸13によって回転させるものであり、螺旋状磁石軸11はケース23内に格納されてチャンバ内の雰囲気とは隔離された状態で配置されている。ケース23内に冷媒を導入することで螺旋状磁石11aを効果的に冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び真空処理装置に係り、特に、オイルシール構造を備える搬送装置及びこのような搬送装置を備える真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜工程などの半導体製造プロセスにおいては、被成膜面へのゴミの付着を防ぐ必要があるため、真空容器内に存在するゴミの低減が求められている。ゴミは真空容器内においても様々な原因で発生し、例えば、基板ホルダーに付着した成膜材料の膜剥がれや、基板と他の部材との接触による磨耗が原因となることが知られている。特に、基板の搬送機構を備える真空処理装置においては、搬送装置を構成する部材同士が接触する構造を有するため、磨耗や削食を原因とするゴミの発生を一層低減することができる搬送機構が望まれている。
【0003】
ゴミの発生を低減するためには非接触伝達方式の搬送機構を用いることが望ましい。非接触伝達方式の搬送機構としては従来から種々の方式が提案されている。その中で比較的に構造が簡単な方式として磁気結合を利用した方式(以下「磁気搬送装置」という)が知られている。磁気搬送装置については、着磁部が螺旋状に形成された磁気ネジと、キャリア側の永久磁石の磁極を組み合わせた直線搬送機構が提案されている(例えば、特許文献1乃至5参照)。
【0004】
従来技術の例として特許文献2に示された技術について説明する。特許文献2に示された技術は、複数の処理チャンバを直列に接続してなるインライン式真空処理装置に用いられる磁気搬送装置であり、ロードロックチャンバ、処理チャンバ、アンロードロックチャンバがゲートバルブを介して連結され、それらの各チャンバを貫通して磁気搬送装置が配設されている。磁気搬送装置によってキャリアに保持された基板をチャンバ間で移送できるように構成されている。
【0005】
磁気搬送機構として磁気ネジ駆動機構が用いられている。各キャリアの下端部にはキャリア側磁石(永久磁石)が設けられており、キャリア側磁石の下方のチャンバ側には磁気ネジが配置されている。磁気ネジに形成された螺旋状の磁極は、キャリア側磁石と磁気結合するため、磁気ネジの回転に従ってキャリアを水平方向に搬送することができる。各チャンバはゲートバルブによって仕切られているためチャンバごとに磁気ネジ駆動機構が備えられている。
【0006】
通常運転時においては、磁気ネジ駆動機構はケース内に収められ、真空容器内の成膜領域とは隔離される構造が採用されている。しかし、メンテナンス時には、磁気ネジなどが配設された磁気ネジ駆動機構のある領域と成膜領域が連結されることがあるため磁気ネジ駆動機構内のゴミは可能な限り低減される必要がある。
【0007】
特許文献2に用いられている磁気ネジ駆動機構について説明する。磁気ネジ駆動機構は、不図示のモータからの回転力を磁気ネジ側に伝達するための機構であり、一対の傘歯車を有する動力 伝達部を主要な構成要素としている。磁気ネジ駆動機構とキャリアが非接触になり、代わりに ガイドを設けることで、直進のガイドとなる。磁気ネジ駆動機構を用いることにより非接触で キャリアを駆動することで、キャリアが移動中に接触するガイドを自重受け用ベアリングや 案内用ベアリングに限ることができ、ゴミの発生を大幅に低減することができる。
【0008】
しかし、このような磁気ネジ駆動機構でも動力伝達部の傘歯車の磨耗は避けることができず、傘歯車の磨耗によりキャリア移動の不安定化や磁極の位相ズレが生じるおそれがあった。このため、動力伝達部の傘歯車の摺動部分に潤滑剤を塗布することにより磨耗を軽減する対策を行うとともに、オイルシールを用いて潤滑剤を動力伝達部内に封止することで潤滑材を封じ込める構造とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,377,816号公報
【特許文献2】特開平10−159934号公報
【特許文献3】特開2001−206548号公報
【特許文献4】特開2008−297092号公報
【特許文献5】特開平08−274142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、磁気ネジ駆動機構が設置されているチャンバには、加熱ヒータが設置されているものが知られている。このようなチャンバでは磁気ネジ駆動機構の温度が上昇しやすく、磁気ネジの螺旋状磁石部は温度上昇により減磁して、キャリアに設置されている磁石との磁気結合力が弱まることがある。キャリア側磁石と磁気ネジは、引き合う磁力が減少するため、キャリア移動の不安定化と、磁極の位相ズレが起こる可能性が高くなる。
【0011】
また、磁気ネジ駆動機構に設置されているオイルシールは、オイルシール(リップ部)と摺接する 軸との摩擦により摺動熱が発生する。使用環境の温度が上昇することでオイルシールの長寿命化が妨げられるため螺旋状磁石と同じく冷却されることが望ましい。
【0012】
磁気ネジ駆動機構は、周囲が真空状態であるため、真空断熱状態となっている。そのため、 チャンバに設置されている加熱ヒータとオイルシールの摺動熱は、大半が磁気ネジ駆動機構を 接続しているチャンバ隔壁との熱伝導で放熱する。しかしながら、磁気ネジ駆動機構は真空雰囲気と大気圧雰囲気を隔てるためのOリングを介してチャンバに接しているため熱伝導率が高い金属同士の接触面は小さいため効率的な冷却が行えない。
【0013】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、磁気ネジの螺旋状磁石とオイルシールを冷却できる搬送装置及び真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る搬送装置は、基板を保持してチャンバ内を移動できるキャリアと、前記キャリアに設けられた永久磁石と、前記チャンバに設けられ、前記永久磁石と磁気結合を形成する螺旋状磁石と、螺旋状磁石を回転する駆動部とを備える搬送装置であって、駆動部は、螺旋状磁石を有する螺旋状磁石軸と、螺旋状磁石軸に回転力を伝達する駆動軸と、螺旋状磁石軸及び駆動軸を回転可能に支持するハウジングと、螺旋状磁石軸が内側に配置されるとともに内側の空間がチャンバ内の雰囲気と隔てられている管状のケースと、螺旋状磁石の外周面とケースの内周面との隙間に冷媒を導入する冷却部と、を備えることを特徴とする。また、本発明に係る真空処理装置は、上述の搬送装置によって、基板を保持したキャリアを所定の真空処理が行われるチャンバに搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を用いることによって、搬送装置若しくは真空処理装置に備えられている螺旋状磁石の冷却を行うことができる。さらに、オイルシール冷却を行うことができる。螺旋状磁石及びオイルシールを効率的に冷却できるため螺旋状磁石の減磁を抑えることができ、また、オイルシールの劣化を抑えることができる。そのため、搬送装置若しくは真空処理装置の螺旋状磁石及びオイルシールの使用期間を延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るインライン式真空処理装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る搬送機構の模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る搬送機構のA−A断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る冷却導入口を設けた磁気ネジ駆動機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0018】
図1乃至4は本発明の一実施形態に係るインライン式真空処理装置についての図であり、図1はインライン式真空処理装置の概略断面図、図2は搬送機構の模式図、図3は図2のA−A断面図、図4は図3のB−B断面図である。なお、本実施形態においては搬送装置を備える真空処理装置の一例としてインライン式真空処理装置に設けられた搬送装置について説明する。また、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0019】
図1に示したインライン式真空処理装置S(以下、真空処理装置Sとする)は、真空中においてハードディスク用基板に対して成膜処理を行うための成膜装置であり、ロードロックチャンバLC、処理チャンバPC(PC1,PC2,PC3)、アンロードチャンバULがゲートバルブGVを介して連結されている。各ゲートバルブGVを開操作することでこれらのチャンバ(PC1,PC2,PC3)の内部空間が連結できるように構成されている。また、それぞれのチャンバ(LC,PC,UL)には、隣り合うチャンバ間で基板4を搬送可能な磁気搬送装置としての搬送装置Tが備えられている。
【0020】
搬送装置Tは、基板4を保持して移動可能なキャリア5と、それぞれのチャンバ(LC,PC,UL)側に設けられた駆動部としての磁気ネジ駆動機構9と案内ガイドを主要な構成要素としている。磁気ネジ駆動機構9は、螺旋状磁石軸11と、螺旋状磁石軸に回転力を伝える駆動軸13と、駆動軸13に動力を供給する動力源としてのモータ(不図示)と、後述する冷却装置としてのケース内冷却装置とを有して構成されている。
【0021】
案内ガイドはベアリングを介してチャンバ側に取り付けられたローラーであり、キャリア5の自重を受けるためのガイド(自重受け用ベアリング15)とキャリア5の側面を搬送方向に沿って案内する案内用ベアリング(不図示)とがある。キャリア5が移動中に接触する部分を案内ガイドに限ることでパーティクルを低減できる。各キャリア5の下端部には、所定の間隔で交互に逆の磁極が現われるように構成された永久磁石であるキャリア側磁石部5aが設けられている。そして、キャリア側磁石部5aの下方に位置する磁気ネジ駆動機構9には螺旋状磁石軸11が配置されている。
【0022】
ここで、図4に基づいて磁気ネジ駆動機構9を説明する。上述のように磁気ネジ駆動機構9は、螺旋状磁石軸11、駆動軸13、モータ(不図示)とを備えて構成されており、駆動軸13を介してモータの回転力を螺旋状磁石軸11に伝達する機構である。また、螺旋状磁石軸11と駆動軸13は軸方向が直交するように配設されており、これらの連結部には一対の傘歯車21,22によって回転力を伝達する動力伝達部が構成されている。冷却部としてのケース内冷却装置は、磁気ネジ駆動機構9の所定の構成部材を冷却するための装置であるため後述する。
【0023】
螺旋状磁石軸11と駆動軸13の連結部は略箱状のハウジング17に回転可能に支持されており、傘歯車21,22はハウジング17の内部に配置されている。なお、駆動軸13は、処理チャンバPCの真空シール面(図3中では符号PC)を貫通して配設されており、大気雰囲気側(外側)で接続されたモータからの回転を処理チャンバPC内(ハウジング17の内部)に導入する。
【0024】
螺旋状磁石軸11には、その表面に螺旋状に着磁された螺旋状磁石11aが形成されており、一方、キャリア5側に備えられたキャリア側磁石部5aの磁極の間隔は螺旋状磁石軸11の螺旋状磁石11aと同じピッチに形成されている。このため、キャリア側磁石部5aと螺旋状磁石軸11の螺旋状磁石11aは所定距離を保ちながら磁気結合(磁気カップリング)を形成することができる。
【0025】
螺旋状磁石軸11の螺旋状磁石11aは螺旋状であるため、螺旋状磁石軸11の回転とともにキャリア側磁石部5aと磁気結合する位置を軸方向に徐々に変化させることができる。従って、螺旋状磁石軸11の回転に同期してキャリア側磁石部5a、すなわち、キャリア5を螺旋状磁石軸11の軸方向に搬送することができる。また、螺旋状磁石軸11の螺旋状磁石11aはハウジング17の左右側に2分割されており、分割された螺旋状磁石11aの間の部分に傘歯車21が設けられている。また、円筒状のケース23によって螺旋状磁石11aの外周側は覆われており、真空側と隔離されている。ケース23の端部はハウジング17に気密に接続されている。
【0026】
動力伝達部は、傘歯車21,22が固着された螺旋状磁石軸11及び駆動軸13と、それらを所定位置に支持するハウジング17とを主要な構成要素としている。螺旋状磁石軸11と駆動軸13は、直交に配置されるとともにベアリング24を介してハウジング17によってそれぞれ回転可能に支持されている。また、螺旋状磁石軸11及び駆動軸13のそれぞれにはカラー19が取り付けられている。
【0027】
カラー19は、円筒状のステンレス部材であり、螺旋状磁石軸11若しくは駆動軸13が内側に挿通された状態で取り付けられている。ハウジング17には、それぞれのカラー19の外周側に摺接するオイルシール20が取り付けられている。一方、それぞれのカラー19の内側には、カラー19の内面側と螺旋状磁石軸若しくは駆動軸との隙間を塞ぐためのOリング26が取り付けられている。オイルシール20とOリング26によって、傘歯車21,22が配置されたハウジング17の内側に注入された潤滑剤Grをハウジング17内に封止している。カラー19は、それらの軸(11,13)を支持するベアリング24よりもハウジング17の外側に配置されているため、ベアリング24にも潤滑剤Grを供給することができる。
【0028】
螺旋状磁石軸11及び駆動軸13との隙間に配置されたOリングは1つでもよいが、好ましくは2つである。一方、カラー19の外周側の表面がオイルシール20と摺接することになり、このカラー19の摺接部分が摺動により発熱する。それぞれのカラー19は螺旋状磁石軸11若しくは駆動軸13と一体に回転するため、本明細書中では単に螺旋状磁石軸11若しくは駆動軸13という場合であっても、それらの軸にはカラー19が取り付けられているものとする。
【0029】
なお、カラー19を使用せず、オイルシール20が駆動軸13(又は螺旋状磁石軸11)に直接摺接する構造を採用してもよいが、このような構造でもオイルシール19と駆動軸13(又は螺旋状磁石軸11)との摺接部分で発熱することになる。そのため、カラー19を用いない場合でも本発明を適用できることはもちろんである。オイルシール20と摺接する部分は摩擦や熱などの影響で他の場所よりも削食されやすいため、カラー19を用いた場合は、駆動軸13(又は螺旋状磁石軸11)を継続して使用し、カラー19だけを交換することでメンテナンスコストを抑えることができる。
【0030】
円筒状のケース23はシール材(Oリング)23aを介してハウジング17に接続されて内部空間の気密を保持している。そのため、ケース23内の螺旋状磁石11aは処理チャンバPC内の真空雰囲気から隔離されている。ケース23内は大気圧雰囲気とされている。処理チャンバPC側に固定されたハウジング17にケース23は固着されており、一方、螺旋状磁石11aは螺旋状磁石軸11とともに回転するため、ケース23の内面(内周面)と螺旋状磁石11aの外周面は所定の隙間25を有している。
【0031】
ハウジング17は、ステンレス(SUS304)から構成されており、上述のように、ベアリング24を介して駆動軸13及び螺旋状磁石軸11を支持するとともに、傘歯車21,22の潤滑を行う潤滑材Grを内部に封止するためのオイルシール20が支持される部材である。また、ハウジング17には、一端部側で隙間25と連通されている連通路18が形成されている。後述するが、連通路18の他端部側は排出口32に繋がっている。
【0032】
ここで、ケース内冷却装置(冷却部)について説明する。ケース内冷却装置は、磁気ネジ駆動機構9内に冷媒を流通させて螺旋状磁石11aとオイルシール20を冷却する装置であり、磁気ネジ駆動機構9内に冷媒を供給するための不図示のポンプ、ポンプに電力を供給する不図示の電源、磁気ネジ駆動機構9内に形成されている冷媒の流通経路とを備えている。ケース内冷却装置を構成するポンプと電源は処理チャンバPCの外部(大気雰囲気)に設置されており、公知のものを適宜使用することができる。
【0033】
流通経路は、ケース23内に冷媒を導入する導入口31、ケース23の内面と螺旋状磁石11aの外周面は所定の隙間25、ハウジング17内の連通路18、ハウジング17から冷媒を排出する排出口32とを備えて構成さている。また、導入口31とポンプとの間には公知のベローズ管などから構成される管状部材が取り付けられることがある。同様に、排出口32にも管状部材を取り付けられる構成でもよい。
【0034】
本実施形態では冷媒として大気を使用している。また、図3に示すように、駆動軸13を支持するハウジング17の一部が処理チャンバPCの壁を貫通して配置されているため、排出口32は処理チャンバPCの外側の大気雰囲気に通じている。すなわち、ポンプから供給された冷媒は、導入口31から隙間25に導入され、連通路18を通過した後に排出口32から大気中に排出される。
【0035】
隙間25では冷媒が螺旋状磁石11aの表面に直接接触することで、螺旋状磁石11aを効果的に冷却することができる。また、連通路18を冷媒が通過することでハウジング17を介してオイルシール20を冷却することができる。すなわち、オイルシール20はステンレス製のハウジング17に固定されているためハウジング17を冷却すると、冷媒で冷却されたハウジング17によってオイルシール20を冷却することができる。
【0036】
本実施形形態における連通路18はハウジング17内に形成されているが、ハウジング17は熱伝導の高い材質で構成さていることから、ハウジング17の外周面に沿って冷媒を流通させればハウジング17及びオイルシール20を冷却することができる。すなわち、ハウジング17の外周表面との間に連通路を形成する部材を配置し、その連通路に冷媒を流通する構成であっても本実施形態と同様の効果を発揮することができる。この場合、ハウジング17と連通路を形成する部材は接した状態で保持されるため、本実施形態のハウジング17と同様の構成である。
【0037】
本実施形態において冷媒は圧縮空気を用いているが、螺旋状磁石11aとオイルシール20を周囲からの加熱と摺動による発熱とから冷却できる媒体であれば、圧縮空気、水などの液体、気体などの種類は問わず冷媒として用いることができる。本実施形態で用いられる圧縮空気は、大気中からポンプにより採取されるものとし、採取される際の空気の温度は周囲の雰囲気温度に等しい。
【0038】
また、冷媒を循環させる場合は、排出口32から排出された冷媒をポンプに戻すように流通経路を構成する必要がある。この場合、例えば排出口32と導入口31の間の位置に、冷媒を冷却する温度調節装置(冷凍装置)を取り付けると好適である。もちろん、ハウジング17の連通路18に冷媒を先に導入し、ケース23側から排出する流れであってもよいことはもちろんである。
【0039】
オイルシール20は40℃以下、螺旋状磁石11aは40℃以下に保持することが望ましいため、温度調節装置は、冷媒をオイルシール20と螺旋状磁石11aの温度をこれらの所定温度以下に保持できる程度に冷却するものである。もちろん、ハウジング17や螺旋状磁石11aの温度測定値を参照して温度調節装置の出力が調整される構成とされてもよい。ケース内冷却装置による冷却能力は、冷媒の温度と流量と種類(熱容量)を変化させることで調整できるため、温度調節装置とポンプの出力が同時に調整される構成としてもよい。なお、上記の所定温度は一例であり、オイルシール20と螺旋状磁石11aの冷却目標温度は適宜設定できることはもちろんである。
【0040】
また、排出口32と導入口31をいずれもケース23に備える構造にすると、螺旋状磁石11aのみを効果的に冷却する構成にすることができる。ペルチエ素子などを用いた別機構でハウジング17を冷却する場合などは螺旋状磁石11aのみを冷却すればよいので、隙間25にのみ冷媒を流通させる構成であっても適用することができる。
【0041】
処理チャンバPCの内部は真空雰囲気である場合には、ケース24の周囲が真空による断熱状態になるため、ケース24内部の螺旋状磁石11aを冷媒で直接冷却できる本発明の構成は効率的に螺旋状磁石11aの冷却を行うことができる。
【0042】
また、オイルシール20は、エラストマー素材から構成されており、潤滑材Grを封止するためにハウジング17に固定される部材であることから冷却が困難な部材である。そのため、オイルシール20との接触面が大きく、且つ良好な熱伝導を有するハウジング17を冷却することで、間接的にオイルシール20を冷却する本発明の構成は、オイルシール20の冷却手段として極めて有効である。
【0043】
すなわち、本発明のような構造を採用することで、螺旋状磁石11a及びオイルシール20を効率的に冷却できるため螺旋状磁石11aの減磁を防止することができ、また、オイルシール20の劣化を抑えることができる。そのため、搬送装置T若しくは真空処理装置Sの螺旋状磁石11a及びオイルシール20の使用期間を延長できる。従って、真空処理装置Sのメンテナンス間隔を延長し、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
S インライン式真空処理装置
LC ロードロックチャンバ
UL アンロードロックチャンバ
PC,PC1,PC2,PC3 処理チャンバ
GV ゲートバルブ
T 搬送装置
Gr 潤滑剤
a 摺接部分
4 基板
5 キャリア
5a キャリア側磁石部5a(永久磁石)
9 磁気ネジ駆動機構(駆動部)
11 螺旋状磁石軸
11a 螺旋状磁石
13 駆動軸
15 自重受け用ベアリング
17 ハウジング
18 連通路
19 カラー
20 オイルシール
21,22 傘歯車
23 ケース
25 隙間
24 ベアリング
23a,26 Oリング
31 導入口
32 排出口
101 磁気ネジ駆動機構
102 傘歯車機構
103 動力伝達部
105 オイルシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持してチャンバ内を移動できるキャリアと、前記キャリアに設けられた永久磁石と、前記チャンバに設けられ、前記永久磁石と磁気結合を形成する螺旋状磁石と、前記螺旋状磁石を回転する駆動部とを備える搬送装置であって、
前記駆動部は、
前記螺旋状磁石を有する螺旋状磁石軸と、
前記螺旋状磁石軸に回転力を伝達する駆動軸と、
前記螺旋状磁石軸及び前記駆動軸を回転可能に支持するハウジングと、
前記螺旋状磁石軸が内側に配置されるとともに内側の空間が前記チャンバ内の雰囲気と隔てられている管状のケースと、
前記螺旋状磁石の外周面と前記ケースの内周面との隙間に冷媒を導入する冷却部と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記駆動軸若しくは前記螺旋状磁石軸の表面に摺接するように前記ハウジングに取り付けられ、潤滑材を前記ハウジング内に封止するオイルシールと、
前記ハウジング内に形成され、一端で前記隙間と気密に連通している連通路とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記隙間は大気雰囲気に保持されるとともに、前記連通路の他端は前記チャンバの外側の大気雰囲気に接続されており、
前記隙間に導入された冷媒は、前記連通路内を一端から他端に向かって流通した後に前記チャンバの外側に排出されることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された搬送装置によって、基板を保持した前記キャリアが所定の真空処理が行われるチャンバに搬送されることを特徴とする真空処理装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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