説明

搬送装置

【課題】リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12と蓋コンベヤ2の搬送チェーン22との間に熱膨張や永久伸び等の差が生じても、蓋21を各リテーナ11上に安定に被せた状態で物品を搬送することができる搬送装置10を提供すること。
【解決手段】蓋コンベヤ2の蓋同士の配設間隔P2をリテーナコンベヤ1のリテーナ同士の配設間隔P1よりも大きくし、上流側蓋コンベヤスプロケット4U及び下流側蓋コンベヤスプロケット4Dによる搬送チェーン22の単位時間当りの送り長を、駆動モータ5に連結された駆動スプロケット51による搬送チェーン12の単位時間当りの送り長よりも比率P2/P1と同じ比率で大きくすることによって、コンベヤ接近区間Rにおいて、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも弛ませるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送装置、例えば、麺類等をリテーナ内に収容し蓋を被せた状態で油揚げ用の油槽内へ搬送するのに好適な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の搬送装置として、物品を収容可能な複数のリテーナが無端状の搬送チェーンに等間隔に配設されて成るリテーナコンベヤと、リテーナ上に載置可能な複数の蓋が無端状の搬送チェーンに等間隔に配設されて成る蓋コンベヤとを備え、リテーナコンベヤの搬送往路と蓋コンベヤの搬送往路とを接近させたコンベヤ接近区間において、物品を収容したリテーナ上に蓋を被せた状態で該物品を搬送する搬送装置が知られている(例えば、下記特許文献参照)。
【特許文献1】特開昭56−18826号公報
【特許文献2】特開昭54−110372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の搬送装置は、リテーナコンベヤと蓋コンベヤとをそれぞれ別個のモータによって駆動していたため、両コンベヤを長時間に亘って完全に同期させることが困難であり、また、両コンベヤの搬送チェーンの熱膨張や永久伸び等の経時劣化によって、リテーナと蓋との位置ずれが大きくなり、蓋をリテーナ上にうまく被せることができなかったり、或いは、リテーナ上に被せた蓋が搬送路の蛇行等によってリテーナと位置ずれを起こし、製品の仕上がりに不具合が生じたり、機械的トラブルが発生するなどの難点があった。
【0004】
本発明は、従来の搬送装置に上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、たとえ長時間稼動させても、蓋をリテーナ上の所定位置から位置ずれすることなく安定に被せた状態で物品を搬送することができる搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、物品をリテーナ内に収容し該リテーナ上に蓋を被せた状態で該物品を搬送する搬送装置であって、
前記物品を収容可能な複数の前記リテーナが無端状の搬送チェーンに等間隔に配設されたリテーナコンベヤと、前記リテーナ上に載置可能な複数の前記蓋が無端状の搬送チェーンに等間隔に配設された蓋コンベヤと、前記リテーナコンベヤの搬送往路の上流側に設けられ、該リテーナコンベヤの搬送チェーンを案内する上流側リテーナコンベヤスプロケットと、前記蓋コンベヤの搬送往路の上流側に設けられ、該蓋コンベヤの搬送チェーンを案内し、該蓋コンベヤの搬送チェーンと前記リテーナコンベヤの搬送チェーンとを接近させて前記リテーナ上に前記蓋を被せる上流側蓋コンベヤスプロケットと、前記リテーナコンベヤの搬送往路の下流側に設けられ、該リテーナコンベヤの搬送チェーンを案内する下流側リテーナコンベヤスプロケットと、前記蓋コンベヤの搬送往路の下流側に設けられ、該蓋コンベヤの搬送チェーンを案内し、該蓋コンベヤの搬送チェーンと前記リテーナコンベヤの搬送チェーンとを離反させて前記リテーナ上から前記蓋を外す下流側蓋コンベヤスプロケットと、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合する駆動スプロケットを介して該リテーナコンベヤを駆動する駆動モータと、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合して従動回転する前記上流側リテーナコンベヤスプロケットの回転力を前記上流側蓋コンベヤスプロケットへ伝達し、該上流側蓋コンベヤスプロケットを介して前記蓋コンベヤを駆動する上流側伝達駆動手段と、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合して従動回転する前記下流側リテーナコンベヤスプロケットの回転力を前記下流側蓋コンベヤスプロケットへ伝達し、該下流側蓋コンベヤスプロケットを介して前記蓋コンベヤを駆動する下流側伝達駆動手段と、を備え、
前記蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2が、前記リテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1よりも大きくされ、前記上流側蓋コンベヤスプロケット及び前記下流側蓋コンベヤスプロケットによる前記蓋コンベヤの搬送チェーンの単位時間当りの送り長が、前記駆動スプロケットによる前記リテーナコンベヤの搬送チェーンの単位時間当りの送り長よりも、前記リテーナ同士の配設間隔P1に対する前記蓋同士の配設間隔P2の比率(P2/P1)と同じ比率で大きくされており、
前記上流側蓋コンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとの間において、前記蓋コンベヤの搬送チェーンを前記リテーナコンベヤの搬送チェーンよりも弛ませた状態で、前記リテーナ上に前記蓋を被せて前記物品を搬送することを特徴としている。
【0006】
また、本発明は、前記リテーナに係合突起が設けられ、前記蓋に該係合突起を係合可能な係合孔が設けられているか、または、前記リテーナに係合孔が設けられ、前記蓋に該係合孔に係合可能な係合突起が設けられていることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、前記蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2が、前記リテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1よりも、1<P2/P1≦1.01の範囲の比率で大きくされているのが好ましい。
【0008】
また、本発明は、前記蓋コンベヤの搬送チェーンのリンク長が、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンのリンク長よりも、前記比率P2/P1と同じ比率で大きくされているのが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記上流側リテーナコンベヤスプロケットと前記上流側蓋コンベヤスプロケットとが同一形状に形成され、前記上流側伝達駆動手段が、該上流側リテーナコンベヤスプロケットと該上流側蓋コンベヤスプロケットとを同心に固定する共通回転軸から構成されており、
前記下流側リテーナコンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとが同一形状に形成され、前記下流側伝達駆動手段が、該下流側リテーナコンベヤスプロケットと該下流側蓋コンベヤスプロケットとを同心に固定する共通回転軸から構成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記上流側蓋コンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとの間において前記蓋を前記リテーナ上に被せたとき、前記蓋コンベヤの搬送チェーンの該蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡と、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンの該リテーナが取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡とを、装置側面視で一致させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る搬送装置によれば、上流側伝達駆動手段及び下流側伝達駆動手段を設けているので、駆動モータの動力によって、リテーナコンベヤだけでなく蓋コンベヤをも駆動することができ、駆動モータの経時変化によって両コンベヤの同期が損なわれることもなく、長時間に亘って各リテーナ上に蓋を安定に載置した状態で物品を搬送することができる。
【0012】
しかも、コンベヤ接近区間において、蓋コンベヤの搬送チェーンをリテーナコンベヤの搬送チェーンよりも弛ませることができるので、たとえ各搬送チェーンに熱膨張や永久伸び等の差が発生しても、搬送チェーンの弛み部分でその差を吸収することができ、蓋を各リテーナ上の所定位置から位置ずれすることなく安定に載置して物品を搬送することができる。
【0013】
また、リテーナに係合突起を設けるとともに、蓋にこの係合突起を係合可能な係合孔を設ければ、各リテーナ上に蓋をより確実に被せ、位置固定することができ、また、コンベヤ接近区間において搬送走行路が傾斜していても、各リテーナ上に蓋をより安定に載置することができる。
【0014】
また、蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2をリテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1よりも、1<P2/P1≦1.01の範囲の比率で大きくすれば、コンベヤ接近区間より搬送上流側におけるリテーナと蓋との位置ずれを小さくすることができ、蓋をリテーナ上により確実に被せることができる。
【0015】
更にまた、各搬送チェーンのリンク長を変えることによって、配設間隔P2を配設間隔P1よりも所定の比率で大きくし、そして、上流側リテーナコンベヤスプロケットと上流側蓋コンベヤスプロケットとを同一形状に形成し、かつ、上流側伝達駆動手段を両スプロケットの共通回転軸から構成すれば、蓋コンベヤの搬送チェーンをリテーナコンベヤの搬送チェーンよりも上記比率分大きく送ることを、常時正確に、極めて簡素な駆動機構で実現することができる。
【0016】
更にまた、コンベヤ接近区間で、蓋コンベヤの搬送チェーンの蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡と、リテーナコンベヤの搬送チェーンのリテーナが取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡とを、装置側面視で一致させれば、コンベヤ接近区間において、搬送走行路の搬送方向が上下方向に変化しても、これによって蓋がリテーナに対して位置ずれすることがなく物品を搬送することができる。したがって、蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2とリテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1との差、P2−P1がわずかであっても、コンベヤ接近区間における蓋コンベヤの搬送チェーンの弛みを一定に維持したまま、蓋がリテーナに対して位置ずれすることなく搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態の搬送装置10は主として、図1に示すように、物品を収容可能な複数のリテーナ11を備えたリテーナコンベヤ1と、リテーナ11上に載置可能な複数の蓋21を備えた蓋コンベヤ2と、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12をそれぞれ案内する上流側リテーナコンベヤスプロケット3U及び下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をそれぞれ案内する上流側蓋コンベヤスプロケット4U及び下流側蓋コンベヤスプロケット4Dと、リテーナコンベヤ1を駆動スプロケット51を介して駆動する駆動モータ5と、蓋コンベヤ2を上流側蓋コンベヤスプロケット4U及び下流側蓋コンベヤスプロケット4Dを介して駆動する上流側伝達駆動手段6U及び下流側伝達駆動手段6Dと、から構成されている。以下、各構成部について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0018】
リテーナコンベヤ1は、図1に示すように、物品を収容可能な複数のリテーナ11が無端状の搬送チェーン12に等間隔に配設されて構成されている。搬送チェーン12は、駆動モータ5と連動する駆動スプロケット51と、ウェイト式テンション装置13が設けられた従動スプロケット14との間に巻き掛けられており、駆動モータ5によって駆動され、搬送チェーン12の上側走行路を搬送往路、下側走行路を搬送復路として、反時計回りに循環走行する。これら搬送チェーン12、駆動スプロケット51、及び従動スプロケット14は、リテーナコンベヤ1の幅方向に隔てて二つずつ対を成して設けられており、各リテーナ11は、二条の搬送チェーン12の間に架け渡されている。
【0019】
各リテーナ11は、図3及び図6に示すように、その両端に取付部111を備え、この取付部111が搬送チェーン12のアタッチメント121にボルト固定されている。各リテーナ11は、搬送チェーン12のリンク124に対して同じ位置に固定されている。また、この取付部111には、先端が略円錐形状を成すピン状の係合突起112が突設されている。また、搬送チェーン12は、そのローラ122が装置フレーム7に配設された案内レール71上を転動することによって、案内レール71に沿って走行移動し、サイドローラ123によって幅方向の位置が規制される。
【0020】
蓋コンベヤ2は、図1に示すように、上記リテーナ11上に載置可能な複数の蓋21が無端状の搬送チェーン22に等間隔に配設されて構成されている。搬送チェーン22は、ウェイト式テンション装置23が設けられた一の従動スプロケット24と、他の従動スプロケット25との間に巻き掛けられており、後述する上流側伝達駆動手段6U及び下流側伝達駆動手段6Dにより駆動され、搬送チェーン22の下側走行路を搬送往路、上側走行路を搬送復路として、時計回りに循環走行する。これら搬送チェーン22、及び従動スプロケット24・25もまた、蓋コンベヤ2の幅方向に隔てて二つずつ対を成して設けられており、各蓋21は、二条の搬送チェーン22の間に架け渡されている。
【0021】
各蓋21は、図3及び図6に示すように、その両端に取付部211を備え、この取付部211が搬送チェーン22のアタッチメント221にボルト固定されている。各蓋21は、搬送チェーン22のリンク222に対して同じ位置に固定されている。また、この取付部211には、上記係合突起112を係合可能な係合孔212が開設されており、図5及び図6に示すように、蓋21をリテーナ11上に被せたとき、係合突起112が係合孔212内に挿入されて係合される。
【0022】
上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uは、図1に示すように、リテーナコンベヤ1の搬送往路の上流側に設けられ、上流側で搬送チェーン12を案内する。一方、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uは、蓋コンベヤ2の搬送往路の上流側に設けられ、上流側で搬送チェーン22を案内する。本実施形態では、図1及び図4に示すように、これら上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとが同一形状に形成され、それぞれのピッチ円が装置側面視(搬送方向に平行な鉛直投影面上)で一致するように配設されている。このことで、図1に示すように、搬送往路の上流側において、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12と蓋コンベヤ2の搬送チェーン22とを接近させて、各リテーナ11上に蓋21を被せてゆくようにしている。
【0023】
また、本実施形態の搬送装置10は、図5に示すように、リテーナ11上に蓋21を被せたとき、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22における蓋21が取り付けられたリンク222のローラ軸223の軸心位置と、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12におけるリテーナ11が取り付けられたリンク124のローラ軸125の軸心位置とが、搬送方向に垂直な投影面上(図5の紙面上)で一致するように構成されている。即ち、図2に示すように、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の蓋21が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡と、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリテーナ11が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡とを、リテーナ11上に蓋21を被せた接近区間において、装置側面視(搬送方向に平行な鉛直投影面上)で一致させている。
【0024】
下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dは、図1に示すように、リテーナコンベヤ1の搬送往路の下流側に設けられ、下流側で搬送チェーン12を案内する。一方、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dは、蓋コンベヤ2の搬送往路の下流側に設けられ、下流側で搬送チェーン22を案内する。これら下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとについても同一形状に形成され、それぞれのピッチ円が装置側面視(搬送方向に平行な鉛直投影面上)で一致するように配設されている。このことで、搬送往路の下流側において、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12と蓋コンベヤ2の搬送チェーン22とを離反させ、各リテーナ11上から蓋21を外してゆくようにしている。
【0025】
駆動モータ5は、図1に示すように、リテーナコンベヤ1の搬送往路の最下流部に配設された駆動スプロケット51に連結されており、この駆動スプロケット51を介してリテーナコンベヤ1を駆動する。
【0026】
上流側伝達駆動手段6Uは、図1に示すように、蓋コンベヤ2の搬送往路の上流側に設けられ、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uを介して蓋コンベヤ2を上流側で駆動する。図4に示すように、本実施形態の上流側伝達駆動手段6Uは、上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとを同心同位相で固定する共通回転軸61Uから構成されている。このことで、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12に噛合して従動回転する上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uの回転力が、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uへ伝達され、この上流側蓋コンベヤスプロケット4Uを介して蓋コンベヤ2が駆動される。つまり、図1に示すように、上記駆動モータ5の動力が、駆動スプロケット51、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12、上流側リテーナコンベヤスプロケット3U、上流側伝達駆動手段6Uである共通回転軸61U、上流側蓋コンベヤスプロケット4U、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の順に伝達され、蓋コンベヤ2がその搬送往路の上流側で駆動される。
【0027】
下流側伝達駆動手段6Dは、図1に示すように、蓋コンベヤ2の搬送往路の下流側に設けられ、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dを介して蓋コンベヤ2を下流側で駆動する。本実施形態の下流側伝達駆動手段6Dは、下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとを同心同位相で固定する共通回転軸61Dから構成されている。このことで、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12に噛合して従動回転する下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dの回転力が、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dへ伝達され、この下流側蓋コンベヤスプロケット4Dを介して蓋コンベヤ2が駆動される。つまり、図1に示すように、駆動モータ5の動力が、駆動スプロケット51、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12、下流側リテーナコンベヤスプロケット3D、下流側伝達駆動手段6Dである共通回転軸61D、下流側蓋コンベヤスプロケット4D、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の順に伝達され、蓋コンベヤ2が搬送往路の下流側で駆動される。
【0028】
こうして本実施形態の搬送装置10は、図1に示すように、上流側リテーナコンベヤスプロケット3U(上流側蓋コンベヤスプロケット4U)と、下流側リテーナコンベヤスプロケット3D(下流側蓋コンベヤスプロケット4D)との間において、リテーナコンベヤ1の搬送往路の搬送チェーン12と蓋コンベヤ2の搬送往路の搬送チェーン22とを接近させ、このコンベヤ接近区間Rにおいて、各リテーナ11上に蓋21を被せた状態で、各リテーナ11内の物品を搬送するのである。なお、各リテーナ11内への物品の投入は、リテーナコンベヤ1の従動スプロケット14と上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uとの間に配設される不図示の投入装置によって行われる。そして、各リテーナ11内からの物品の回収は、リテーナコンベヤ1の駆動スプロケット51の回転に伴う各リテーナ11の反転動作、または下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dの下流側に配設される搬出装置によって行われる。本実施形態の搬送装置10は、例えば、麺類等をリテーナ11内に収容し蓋21を被せた状態で油揚げ用の油槽内へ搬送する搬送装置として好適に利用することができる。
【0029】
また、搬送装置10は、図1及び図2に示すように、蓋コンベヤ2の複数の蓋21同士の配設間隔P2が、リテーナコンベヤ1の複数のリテーナ11同士の配設間隔P1よりも、P2/P1=1.002の比率で大きくされている。本実施形態では、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22のリンク長(ピッチ長)を、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリンク長(ピッチ長)よりも、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率で大きくしている。なお、図1及び図2では、配設間隔P2を誇張して表している。
【0030】
このように蓋コンベヤ2の搬送チェーン22のリンク長を、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリンク長よりも、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率でわずかに大きくしている程度なので、上述したように上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとが同一形状に形成されていても、上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uの歯溝に対してリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12が噛み合う深さと、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uの歯溝に対して蓋コンベヤ2の搬送チェーン22が噛み合う深さとを異ならせることができ、上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとが同軸同大のスプロケットであるにもかかわらず、上記駆動モータ5によって駆動されるリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの走行長よりも、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uによる搬送チェーン22の単位時間当りの送り長を、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率で大きくすることができる。つまり、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uによる蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の単位時間当りの送り長を、駆動スプロケット51によるリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの送り長よりも、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率で大きくすることができる。
【0031】
同様に、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22のリンク長を、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリンク長よりも、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率でわずかに大きくしている程度なので、上述したように下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとが同一形状に形成されていても、下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dの歯溝に対してリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12が噛み合う深さと、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dの歯溝に対して蓋コンベヤ2の搬送チェーン22が噛み合う深さとを異ならせることができ、下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとが同軸同大のスプロケットであるにもかかわらず、上記駆動モータ5によって駆動されるリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの走行長よりも、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dによる搬送チェーン22の単位時間当りの送り長を、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率で大きくすることができる。つまり、下流側蓋コンベヤスプロケット4Dによる蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の単位時間当りの送り長を、駆動スプロケット51によるリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの送り長よりも、上記比率P2/P1=1.002と同じ比率で大きくすることができる。
【0032】
こうして搬送装置10は、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uおよび下流側蓋コンベヤスプロケット4Dが、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも1.002倍大きく送るので、上流側蓋コンベヤスプロケット4Uと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとの間のコンベヤ接近区間Rにおいて、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも弛(たる)ませた状態で各リテーナ11上に蓋12を被せて各リテーナ11内の物品を搬送するのである。
【0033】
つまり、本実施形態の搬送装置10は、上流側蓋コンベヤスプロケット4U(上流側リテーナコンベヤスプロケット3U)よりも搬送往路の上流側においては、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の単位時間当りの走行長(走行速度)が、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの走行長(走行速度)よりも1.002倍大きいのに対し、コンベヤ接近区間Rにおいては、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の単位時間当りの走行長がリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの走行長と同じになっている。そして、下流側蓋コンベヤスプロケット4D(下流側リテーナコンベヤスプロケット3D)よりも搬送往路の下流側および搬送復路においては、再び、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の単位時間当りの走行長が、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の単位時間当りの走行長よりも1.002倍大きくなっている。
【0034】
以上に説明したように本実施形態の搬送装置10においては、上流側伝達駆動手段6U及び下流側伝達駆動手段6Dを設けているので、駆動モータ5の動力によって、リテーナコンベヤ1だけでなく蓋コンベヤ2をも駆動することができ、駆動モータ5の経時変化によって両コンベヤの同期が損なわれることもなく、長時間に亘って各リテーナ11上に蓋21を安定に載置した状態で物品を搬送することができる。
【0035】
しかも、本実施形態の搬送装置10によれば、コンベヤ接近区間Rにおいて、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも弛ませることができるので、たとえ各搬送チェーン12、22に熱膨張や永久伸び等の差が発生しても、搬送チェーン12の弛み部分でその差を吸収することができ、蓋21を各リテーナ11上の所定位置から位置ずれすることなく安定に載置して物品を搬送することができる。
【0036】
また、本実施形態の搬送装置10においては、蓋コンベヤ2の蓋同士の配設間隔P2がリテーナコンベヤ1のリテーナ同士の配設間隔P1よりもP2/P1=1.002の比率で、わずかに大きくされている程度なので、上流側蓋コンベヤスプロケット4U(上流側リテーナコンベヤスプロケット3U)よりも搬送往路の上流側において、リテーナ11と蓋21との位置ずれG(図2参照)を小さくすることができ、蓋21をリテーナ11上により確実に被せることができる。なお、この蓋同士の配設間隔P2は、リテーナ同士の配設間隔P1よりも、1<P2/P1≦1.01の範囲の比率で大きくされていることが好ましい。比率P2/P1が、1.01より大きいと、上記位置ずれGが大きくなるため、リテーナ11と蓋21とを前もって大まかに位置合わせする前工程が必要となる。
【0037】
また、リテーナ11に係合突起112が設けられ、蓋21に係合突起112を係合可能な係合孔212が設けられているので、各リテーナ11上に蓋21をより確実に被せ、位置固定することができ、また、コンベヤ接近区間Rにおいて、たとえ搬送往路が傾斜していても、各リテーナ11上に蓋21をより安定に載置することができる。さらに、各搬送チェーンが蛇行してもこの係合によって蓋21がリテーナ11に対して位置ずれすることがない。
【0038】
また、本実施形態の搬送装置10においては、各搬送チェーン12・22のリンク長を変えることによって、配設間隔P2を配設間隔P1よりも所定の比率で大きくしており、そして、上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとを同一形状に形成し、かつ、上流側伝達駆動手段6Uを両スプロケットの共通回転軸61Uから構成しているので、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも上記比率分大きく送ることを、常時正確に、極めて簡素な駆動機構で実現することができる。このことで故障等の少ない搬送装置10を提供し得る。
【0039】
また、本実施形態の搬送装置10においては、コンベヤ接近区間Rで、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の蓋21が取り付けられたリンク222のローラ軸223の走行軌跡と、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリテーナ11が取り付けられたリンク124のローラ軸125の走行軌跡とを、装置側面視で一致させているので、コンベヤ接近区間Rにおいて、搬送走行路が上下方向に蛇行してその搬送方向が変化しても、この蛇行によって蓋21がリテーナ11に対して位置ずれすることなく、蓋コンベア2の搬送チェーン22が一定の弛みを維持したまま搬送することができる。
【0040】
以上、本実施形態の搬送装置10について説明したが、本発明はその他の形態でも実施することができる。
【0041】
例えば、上記実施形態では、蓋コンベヤ2を上流側で駆動する上流側伝達駆動手段6Uを、上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとの共通回転軸61Uにより構成しているが、本発明は決してこれに限定されるものではなく、例えば、図7に示す上流側伝達駆動手段8Uのように構成しても良い。この上流側伝達駆動手段8Uは、上流側リテーナコンベヤスプロケット31Uに同心に設けられた回転体81Uと、上流側蓋コンベヤスプロケット41Uに同心に設けられた回転体82Uと、これら回転体81Uと回転体82Uとの間に掛けられたタイミングベルト等の動力伝達手段83Uと、から構成されている。この上流側伝達駆動手段8Uは、上流側リテーナコンベヤスプロケット31Uの回転力を、同一角速度で上流側蓋コンベヤスプロケット41Uへ伝達するものであるが、上流側蓋コンベヤスプロケット41Uのピッチ円の径を、上流側リテーナコンベヤスプロケット31Uのピッチ円の径よりも、比率P2/P1と同じ比率で大きくしているので、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも比率P2/P1分大きく送ることができる。なお、蓋コンベヤ2を下流側で駆動する下流側伝達駆動手段を同様に構成しても勿論良い。
【0042】
また、図8に示す上流側伝達駆動手段9Uのように構成しても良い。この上流側伝達駆動手段9Uは、上流側リテーナコンベヤスプロケット32Uに同心に設けられた歯車91Uと、上流側蓋コンベヤスプロケット42Uに同心に設けられ、歯車91Uと噛合する歯車92Uと、から構成されている。すなわち、この上流側伝達駆動手段9Uによって、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12に噛合して従動回転する上流側リテーナコンベヤスプロケット32Uの回転力が、歯車91U、歯車92U、上流側蓋コンベヤスプロケット42U、搬送チェーン22の順に伝達され、蓋コンベヤ2が駆動される。この実施変形例において、上流側リテーナコンベヤスプロケット32Uのピッチ円の径と、上流側蓋コンベヤスプロケット42Uのピッチ円の径とは同一であるが、歯車91Uのピッチ円の径が、歯車92Uのピッチ円の径よりも比率P2/P1と同じ比率で大きくされているので、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12より比率P2/P1分大きく送ることができる。なお、蓋コンベヤ2を下流側で駆動する下流側伝達駆動手段を同様に構成しても良い。
【0043】
また、図8に示すように、上流側リテーナコンベヤスプロケット32Uをリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の搬送往路の下方に設け、上流側蓋コンベヤスプロケット42Uを蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の搬送往路の上方に設けるようにしても良い。更にまた、上流側リテーナコンベヤスプロケット及び上流側蓋コンベヤスプロケットを共に、各搬送チェーンの搬送往路の下方に設けるようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、図2に示すように上流側リテーナコンベヤスプロケット3Uと上流側蓋コンベヤスプロケット4Uとが、同じ位置で、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の動力を蓋コンベヤ2の搬送チェーン22へ伝達するとともに、リテーナ11に蓋21を被せて送り出す動作を行なっている。また、下流側リテーナコンベヤスプロケット3Dと下流側蓋コンベヤスプロケット4Dとについても同様に同じ位置で、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の動力を蓋コンベヤ2の搬送チェーン22へ伝達するとともに、リテーナ11から蓋21を離脱させて送り出す動作を行なっている。しかしながら、本発明に係る搬送装置は、必ずしもリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12の動力を蓋コンベヤ2の搬送チェーン22へ伝達するために搬送チェーン12の動力を拾う位置と、リテーナ11上に蓋21を被せる位置とを、搬送方向において一致させる必要はない。
【0045】
例えば、図9に示す実施変形例のように、上流側リテーナコンベヤスプロケット33Uにより搬送チェーン12の動力を拾う位置と、上流側蓋コンベヤスプロケット43Uによりリテーナ11上に蓋21を被せる位置とを搬送方向にずらしても良い。この実施変形例の上流側伝達駆動手段10Uは、上流側リテーナコンベヤスプロケット33Uに同心に設けられた回転体101Uと、上流側蓋コンベヤスプロケット43Uに同心に設けられた回転体102Uと、これら回転体101Uと回転体102Uとの間にクロスさせて掛けられたタイミングベルト等の動力伝達手段103Uと、から構成されている。すなわち、この上流側伝達駆動手段10Uによって、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12に噛合して従動回転する上流側リテーナコンベヤスプロケット33Uの回転力が、回転体101U、動力伝達手段103U、回転体102U、上流側蓋コンベヤスプロケット43U、搬送チェーン22の順に伝達され、蓋コンベヤ2が駆動される。この実施変形例において、上流側リテーナコンベヤスプロケット33Uのピッチ円の径と、上流側蓋コンベヤスプロケット43Uのピッチ円の径とは同一であるが、回転体101Uの径が回転体102Uの径よりも比率P2/P1と同じ比率で大きくされているので、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22をリテーナコンベヤ1の搬送チェーン12よりも比率P2/P1分大きく送ることができる。なお、蓋コンベヤ2を下流側で駆動する下流側伝達駆動手段を同様に構成しても良い。
【0046】
なお、図7〜図9に示す実施変形例の場合、上流側リテーナコンベヤスプロケットから上流側蓋コンベヤスプロケットへの動力の伝達は、両スプロケット間に配設されるタイミングベルトや歯車を備えた伝達駆動手段8U、9U、10Uを用いて行なわれる。したがって、これら伝達駆動手段8U、9U、10Uを用いる場合、両スプロケットの回転速度や径を独立して変更することができ、両スプロケットによる搬送チェーンの送り長を適宜、簡単に調整することができる。
【0047】
また、本実施形態の搬送装置10では、コンベヤ接近区間Rにおいて、蓋コンベヤ2の搬送チェーン22の蓋21が取り付けられたリンク222のローラ軸223の走行軌跡と、リテーナコンベヤ1の搬送チェーン12のリテーナ11が取り付けられたリンク124のローラ軸125の走行軌跡とを装置側面視で一致させ、これによって、コンベヤ接近区間Rにおいて、搬送走行路が上下方向に蛇行しても、蓋21がリテーナ11に対して位置ずれすることなく、蓋コンベア2の搬送チェーン22が一定の弛みを維持したまま搬送するようにしている。しかし、蓋コンベアの搬送チェーンを一定の弛みを維持したままで搬送させる必要がない場合、前記両コンベアのリンクのローラ軸223・125の走行軌跡を一致させなくてもよい。すなわち、両コンベアのリンクのローラ軸の走行軌跡が一定の間隔を有して上下に平行して走る場合、搬送走行路の上下に伴ってローラ軸の走行軌跡が円弧状の軌跡を描く箇所においては、外側に位置する円弧状の軌跡は内側の軌跡よりも、その回転半径の違いによって長い距離を走行することになる。従って、円弧状の外側の軌跡を走行軌跡とするコンベアは、内側を走行軌跡とするコンベアより遅れることとなる。
【0048】
そこで、蓋コンベアの搬送チェーンの蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡が、リテーナコンベアのそれよりも円弧状の内側を通る場合、すなわち、蓋コンベアの搬送チェーンの蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡の方がリテーナコンベアのそれよりも曲線の回転半径が小さい場合を考えると、蓋の進行がリテーナよりも進むこととなるので、リテーナ上に蓋が被さった状態で、蓋コンベアの搬送チェーンが走行中にさらに弛みを増して搬送されることになる。従って、この場合コンベヤ接近区間Rにおいて搬送方向が変化すると、蓋コンベアの搬送チェーンの弛みは増すものの、接近区間Rにおいて、蓋はリテーナに対して位置ずれを起さずに搬送することが可能である。
【0049】
一方、前記とは逆に、蓋コンベアの搬送チェーンの蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡が、リテーナコンベアのそれよりも円弧状の外側を通る場合、すなわち、蓋コンベアの搬送チェーンの蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡の方がリテーナコンベアのそれよりも曲線の回転半径が大きい場合には、蓋の進行がリテーナよりも遅れることとなるので、蓋とリテーナが位置ずれしてしまう可能性がある。しかし、この場合でも、リテーナに蓋を被せる際における蓋コンベアの搬送チェーンの送り出しスピードを速くして、蓋コンベアの搬送チェーンの弛みを大きくすれば、この弛み(蓋同士の配設間隔P2とリテーナ同士の配設間隔P1の差)によって、蓋コンベヤの進行の遅れを吸収することができ、走行中に蓋コンベアの搬送チェーンの弛みは減るものの、接近区間Rにおいて、蓋はリテーナに対して位置ずれを起さずに搬送することが可能である。
【0050】
また、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。例えば、上記実施形態では、リテーナコンベヤ1の駆動を、駆動モータ5の動力を搬送往路の最下流部に配置した駆動スプロケット51に伝えて行なっているが、この駆動スプロケットを搬送往路の上流部の例えば従動スプロケット14やその他の位置に配置してリテーナコンベヤ1を駆動しても良い。また、上記実施形態では、テンション装置13、23を各コンベヤの搬送往路の上流側に配置しているが、このテンション装置を、各コンベヤの搬送往路の下流側の例えば駆動スプロケット51や従動スプロケット25に配置しても良く、搬送往路の上流側及び下流側の両方に配置しても良く、さらには場合によって配置しなくても良い。また、上記実施形態では、リテーナ11に被せた蓋21の位置が走行中にずれないようにリテーナ11に係合突起112を設け、これを蓋21に設けた係合孔212に係合させる構造を例示しているが、蓋が自重で位置ずれしない場合等には必ずしも必要ではなく、また上記実施形態とは逆に、係合突起を蓋に設け、リテーナに係合孔を設けても良く、また、突起と孔以外の係合手段、例えばリテーナに蓋自体が嵌合する構造等によるものであっても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、蓋同士の配設間隔P2をリテーナ同士の配設間隔P1よりも大きくするために、蓋同士の配設間隔P2内の搬送チェーン22のリンク数とリテーナ同士の配設間隔P1内の搬送チェーン12のリンク数とを同数にし、各搬送チェーン12・22のリンク長(ピッチ長)を変えるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、各搬送チェーン12・22のリンク長(ピッチ長)を同一にし、蓋同士の配設間隔P2内の搬送チェーン22のリンク数を、リテーナ同士の配設間隔P1内の搬送チェーン12のリンク数よりも多くしても良い。この場合、同種の搬送チェーンを使用することができる。
【0052】
また、本発明の搬送装置の適用例として、上記実施形態では、即席麺を油揚げ用の油槽内へ搬送する装置(フライコンベヤ)を記載しているが、本発明の搬送装置は、例えば、各種加工食品を茹で槽内へ搬送する装置や、食品または食品以外の物品を殺菌槽や洗浄槽内に浸漬させるための搬送装置等としても適用することができる。この場合、コンベヤ接近区間Rに、油槽または茹で槽あるいは殺菌槽や洗浄槽を配置し、リテーナ11を閉蓋した状態でこれらの槽を通過させる。したがって、このような用途に適用する場合、リテーナ11または蓋21のいずれか、またはその両方は、通液性を備えていることが必要である。
【0053】
なお、本発明の搬送装置を、即席油揚げ麺の油槽内への搬送装置(フライコンベヤ)として用いる場合、上記実施形態の搬送装置10であれば、コンベヤ接近区間Rにおいて、リテーナ11に蓋21が被せられ、蓋21が位置ずれせずに搬送され、その間に油揚げされることになる。即席麺は油揚げによって乾燥され、形状固定されることとなるが、この搬送装置10によれば、搬送中、油揚げ中に蓋21の位置がずれないため、蓋21の内面形状を反映した即席麺の乾燥麺塊を得ることができる。すなわち、蓋21にリテーナ11内方側に突出する突出部を設けておけば、その突出部に対応する形状の窪みを有する即席麺塊を製造することができる。
【0054】
以上、本発明の搬送装置について説明したが、本発明は、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の搬送装置の全体概略側面図である。
【図2】本実施形態の搬送装置の要部拡大側面図である。
【図3】図2中のA−A線の部分断面図である。
【図4】図2中のB−B線の部分断面図である。
【図5】図2中のC−C線の部分断面図である。
【図6】本実施形態の搬送装置のリテーナ上に蓋を被せた状態の部分平面図である。
【図7】本発明に係る実施変形例の搬送装置の要部拡大側面図である。
【図8】本発明に係る他の実施変形例の搬送装置の要部拡大側面図である。
【図9】本発明に係る更に他の実施変形例の搬送装置の要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 搬送装置
1 リテーナコンベヤ
11 リテーナ
112 係合突起
12 搬送チェーン
2 蓋コンベヤ
21 蓋
212 係合孔
22 搬送チェーン
3U、31U、32U、33U 上流側リテーナコンベヤスプロケット
3D 下流側リテーナコンベヤスプロケット
4U、41U、42U、43U 上流側蓋コンベヤスプロケット
4D 下流側蓋コンベヤスプロケット
5 駆動モータ
51 駆動スプロケット
6U、8U、9U、10U 上流側伝達駆動手段
61U 共通回転軸
6D 下流側伝達駆動手段
61D 共通回転軸
P1 リテーナ同士の配設間隔
P2 蓋同士の配設間隔
R コンベヤ接近区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品をリテーナ内に収容し該リテーナ上に蓋を被せた状態で該物品を搬送する搬送装置であって、
前記物品を収容可能な複数の前記リテーナが無端状の搬送チェーンに等間隔に配設されたリテーナコンベヤと、
前記リテーナ上に載置可能な複数の前記蓋が無端状の搬送チェーンに等間隔に配設された蓋コンベヤと、
前記リテーナコンベヤの搬送往路の上流側に設けられ、該リテーナコンベヤの搬送チェーンを案内する上流側リテーナコンベヤスプロケットと、
前記蓋コンベヤの搬送往路の上流側に設けられ、該蓋コンベヤの搬送チェーンを案内し、該蓋コンベヤの搬送チェーンと前記リテーナコンベヤの搬送チェーンとを接近させて前記リテーナ上に前記蓋を被せる上流側蓋コンベヤスプロケットと、
前記リテーナコンベヤの搬送往路の下流側に設けられ、該リテーナコンベヤの搬送チェーンを案内する下流側リテーナコンベヤスプロケットと、
前記蓋コンベヤの搬送往路の下流側に設けられ、該蓋コンベヤの搬送チェーンを案内し、該蓋コンベヤの搬送チェーンと前記リテーナコンベヤの搬送チェーンとを離反させて前記リテーナ上から前記蓋を外す下流側蓋コンベヤスプロケットと、
前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合する駆動スプロケットを介して該リテーナコンベヤを駆動する駆動モータと、
前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合して従動回転する前記上流側リテーナコンベヤスプロケットの回転力を前記上流側蓋コンベヤスプロケットへ伝達し、該上流側蓋コンベヤスプロケットを介して前記蓋コンベヤを駆動する上流側伝達駆動手段と、
前記リテーナコンベヤの搬送チェーンに噛合して従動回転する前記下流側リテーナコンベヤスプロケットの回転力を前記下流側蓋コンベヤスプロケットへ伝達し、該下流側蓋コンベヤスプロケットを介して前記蓋コンベヤを駆動する下流側伝達駆動手段と、
を備え、
前記蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2が、前記リテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1よりも大きくされ、
前記上流側蓋コンベヤスプロケット及び前記下流側蓋コンベヤスプロケットによる前記蓋コンベヤの搬送チェーンの単位時間当りの送り長が、前記駆動スプロケットによる前記リテーナコンベヤの搬送チェーンの単位時間当りの送り長よりも、前記リテーナ同士の配設間隔P1に対する前記蓋同士の配設間隔P2の比率(P2/P1)と同じ比率で大きくされており、
前記上流側蓋コンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとの間において、前記蓋コンベヤの搬送チェーンを前記リテーナコンベヤの搬送チェーンよりも弛ませた状態で、前記リテーナ上に前記蓋を被せて前記物品を搬送することを特徴とした搬送装置。
【請求項2】
前記リテーナに係合突起が設けられ、前記蓋に該係合突起を係合可能な係合孔が設けられているか、または、前記リテーナに係合孔が設けられ、前記蓋に該係合孔に係合可能な係合突起が設けられている、請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記蓋コンベヤの蓋同士の配設間隔P2が、前記リテーナコンベヤのリテーナ同士の配設間隔P1よりも、1<P2/P1≦1.01の範囲の比率で大きくされている請求項1または請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記蓋コンベヤの搬送チェーンのリンク長が、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンのリンク長よりも、前記比率P2/P1と同じ比率で大きくされている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記上流側リテーナコンベヤスプロケットと前記上流側蓋コンベヤスプロケットとが同一形状に形成され、
前記上流側伝達駆動手段が、該上流側リテーナコンベヤスプロケットと該上流側蓋コンベヤスプロケットとを同心に固定する共通回転軸から構成されており、
前記下流側リテーナコンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとが同一形状に形成され、
前記下流側伝達駆動手段が、該下流側リテーナコンベヤスプロケットと該下流側蓋コンベヤスプロケットとを同心に固定する共通回転軸から構成されている請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記上流側蓋コンベヤスプロケットと前記下流側蓋コンベヤスプロケットとの間において前記蓋を前記リテーナ上に被せたとき、前記蓋コンベヤの搬送チェーンの該蓋が取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡と、前記リテーナコンベヤの搬送チェーンの該リテーナが取り付けられたリンクのローラ軸の走行軌跡とを、装置側面視で一致させた請求項1〜請求項5のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−249111(P2009−249111A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98835(P2008−98835)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】