説明

携帯可能食品

【課題】直接素手でつかんで食しても手を汚すことがなく、また携帯時の向きや振動によっても不都合を生じにくい、携帯性に優れた携帯可能食品を提供する。
【解決手段】最中の皮またはウェハースに米飯を含むフィリングを包んだ。好ましくは前記最中の皮またはウェハースには、2mm以上の凹凸を設ける、または、2mm以上の高さの突起部を設けることができる。好ましくは、前記最中の皮又はウェハースには、携帯可能食品の厚みが3分の2以下となるような溝構造を設けることが出来る。さらに好ましくはフィリングを炊き込みご飯とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯可能食品に関する。より詳細には、直接素手でつかんで食しても手指を汚すことがなく、また携帯時の向きや振動によっても不都合を生じにくい、携帯性に優れた携帯可能食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりさまざまな携帯可能な食品が供されてきた。米飯や各種食材を弁当箱に詰めたいわゆる弁当はその典型例であり、特色あるさまざまなものが各地で提供されている。しかしながら、一般に弁当を食するには箸等の道具を要する。これの理由としては、弁当には多くの場合米飯が含まれるため、これを素手でつかむと手指が汚れる等の不便があることを挙げられる。弁当のような携帯可能食品を食する場面では、必ずしも手指を洗える設備があるとは限らず、手指が汚れることが好ましくないことが少なくないからである。
【0003】
しかし、現代社会においては是非はともかく、交通機関による移動中や、時には仕事中などに食事をとらざるを得ない場面は珍しいものではない。従って、箸等の道具を使用せずに直接素手で食することが可能でかつ手指を汚すことのない携帯可能食品が望まれている。
【0004】
また、手指を汚さないこと以外の点についても、米飯を含む弁当の携帯性は必ずしも十分ではないと本願発明者は考えた。ここで携帯性とは、携帯時もしくは輸送時の向きや振動によって不都合が生じない性質を指している。いわゆる弁当では、輸送時に上下が逆転する状態になったり振動が加わるといった事態は普通に想定される。この場合に、内容物がこぼれてしまったり、弁当箱の中で内容物が片寄ってしまうといった不都合を生じ易く、この点で携帯性が十分とは言い難いと考えたのである。弁当箱として密閉に近い状態に閉じることができる容器を使用すると内容物がこぼれるといった事態はある程度防止可能であるが、内容物の片寄りを防止することは容易ではない。なお、内容物の片寄りは食する上では本質的には問題ではないが、外観上好ましいものではなく、商品としての携帯可能食品にとっては大きな問題と考えなければならない。
【0005】
携帯性に優れた携帯可能食品、つまり、直接素手でつかんで食しても手を汚すことがなく、また携帯時の向きや振動によっても不都合を生じにくい携帯可能食品として、成型した米飯を海苔等で包んだいわゆる握り飯を挙げることができる。握り飯は海苔等で包まれていれば、素手でつかんで食しても比較的手指が汚れにくく、携帯性も比較的良好である。しかし、あまり大きな具材を使用すると成型が困難になり、また使用している米飯の性質によっては食している際に形が崩れてしまうといった不都合も生じやすい。例えば、焼き飯のように粘りの少ない米飯を主な構成物とする握り飯を作ることは不可能とはいえないものの、携帯性に優れる握り飯本来の性質を備えたものを得ることは容易ではない。つまり、食事としてのバリエーションの確保に難があるのである。
【0006】
一方、類似の携帯可能食品として、パンで各種具材を挟み込んだいわゆるサンドイッチ類があげられる。これも、素手でつかんで食しても比較的手指が汚れにくく、しかも携帯性も兼ね備えている。しかし、少なくとも日本国内においては携帯可能食品においても米飯への要求は強い。つまり、米飯を主とし、素手で食しても手指が汚れることのない携帯可能食品が求められているのである。
【0007】
ところで、以上では食事の一環として食される携帯可能食品の状況について説明したが、菓子類もしくはこれに類する食品については状況が異なる。例えば、特開2005−192437公報の請求項9には最中の皮に納豆等を包んだ菓子に関する発明が開示されている。また、特開2003−159005公報の図2等には、最中の皮に漬物を包んだ食品に関する発明が開示されている。これらは、納豆のように糸を引くような性質の食品や漬物のように水分が多い食品のように、素手でつかむと手指が汚れやすい食品を素手で容易につかめるように工夫した発明である。
【特許文献1】特開2005−192437公開特許公報
【特許文献2】特開2003−159005公開特許公報
【0008】
しかし、米飯を含む食品についてはこのような例は無い。そこで、本願発明の発明者は、上記の発明を参考に、最中の皮を利用して素手で直接つかんでも手が汚れず、食事の一環として食することが可能で、しかも携帯性に優れた携帯可能食品を提供しようと考えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上説明したとおり、本発明が解決しようとする課題は、素手で直接つかんでも手指が汚れない、食事の一環として食することの可能な米飯を含む携帯可能食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明においては、米飯を含むフィリングを、最中の皮またはウェハース(以下、「外皮」という)に包んだことを特徴とする、携帯可能食品としている。
【0011】
ここで、最中の皮とは、通常はもち米を主原料とした軽くて歯ざわりが良いことを特徴とする薄いウェハース状の食品である。通常、もち米の粉に水を入れてこねたものを数ミリメートル程度の厚みに薄く延ばし、専用の焼き型で両面同時に焼いて製造される。しかし、本発明においては前記説明のような本来の最中の皮で無ければならないわけではなく、うるち米等を主原料として製造した類似の食品であってもよい。つまり、本発明における最中の皮とは主に米類を原料として製造された、いわゆる最中の皮のように軽くて歯ざわりがよい、薄いウェハース状の食品を指している。
【0012】
一方、ウェハースは、小麦を主原料としているが、やはり軽くて歯ざわりが良いことを特徴とする薄い食品である。ウェハースにはしばしば砂糖を添加するなどして甘みが付与されるが、本発明においては、特に甘みを付与していないウェハースが好ましい。さまざまな風味のフィリングと組み合わせた際に違和感を生じないからである。
【0013】
本発明ではフィリングに米飯を含むものとしていることを特徴としている。米飯とは、うるち米またはもち米もしくはこれらを混合したものを調理したものを指す。多くの日本人にとって、米飯を含むことは、本発明に係る携帯可能食品を食事の一環として食することに対する抵抗感を少なくする。これにより、消費者の購買意欲を惹起させるという効果が得られる。
【0014】
また、本発明においては、フィリングに雑穀や玄米を含むことを特徴とする、携帯可能食品としても良い。
【0015】
つまり、本発明においてフィリングには米飯を含むが、必ずしも米のみを原料とする必要性はない。米飯に加えて麦や雑穀を含むフィリングとしても良いし、米飯に穀物以外の食品を加えたり風味を添加しても良い。また、玄米を加えることも出来る。このようにすることで、本発明に係る携帯可能食品の食事としてのバリエーションを増やすことができ、また、雑穀類や玄米はミネラル類やビタミン類等の栄養を豊富に含むとされており、消費者にますます購買意欲を起こさせることができるからである。また、雑穀や玄米の場合などでは粘りが少なく成形性に劣る(つまり「ぱらぱら」の状態になり易い)場合やむしろそのような食感が好まれる場合があり、いわゆる弁当の形態では携帯可能食品として食しにくい場合がある。しかし、本発明では後述するとおり、フィリングが外皮に包まれることで、成形性に劣るフィリングであっても食しやすい携帯可能食品が得られるという顕著な効果が得られる。
【0016】
なお、フィリングに米飯を含んでいるため、通常は外皮にはもち米を主たる原料とする最中の皮を使用するとフィリングの風味を損ねない点で好ましい。しかし、例えばフィリングに麦を混合した場合などは外皮として小麦を主原料とするウェハースを使用した方が風味上むしろ好ましい場合もあるので、外皮の種類はフィリングに応じて選択すればよい。
【0017】
外皮は保水量が極めて低く乾燥した食品であるため、これでフィリングを包んだ携帯可能食品とすることにより、素手でつかんでも手指が汚れることが無い。また、外皮は歯ざわりが良いため食した際には全く気にならないが、比較的硬く形状が安定した食品である。従って、フィリング自体は不定形であっても、これを外皮で包んだ携帯可能食品は手指でつかんだ際の形状が極めて安定しており、素手でつかんで食するのに非常に都合が良いものとなる。
【0018】
つまり、フィリングを外皮で包む構成とすることで、比較的硬くしっかりとした形状を保ち、素手で直接つかむことが容易でかつ手指が汚れない携帯可能食品が得られるのである。
【0019】
(2)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースの厚みが4mm以上であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0020】
通常、外皮、すなわち最中の皮やウェハースの厚みは3mmもしくはこれよりも薄く作られることが多い。外皮の歯ざわりの良さは、厚みが薄い方がより顕著となり、特に菓子類において好ましい結果が得られるからである。
【0021】
しかし、本発明ではフィリングに米飯を含むものを使用する。また、食事としてのバリエーションを確保するために米飯に加えてフィリングにはさまざまな食材が加えられる。当然、フィリングに含まれる水分が多少多い場合も想定され、このような場合にはフィリングの水分によって外皮が多少湿った状態になる。外皮は湿ると軟化して強度が低下するが、あまり外皮の強度が低下すると手指でつかんだ際の形状が不安定となり、素手でつかんで食するのに不都合を生じる恐れがある。
【0022】
そこで、本発明においては外皮の厚みを菓子類の場合よりも厚めに設定して外皮が多少湿った場合でもなお、素手でつかんで食するのに不都合が生じないようにすることが好ましい。なお、外皮のように薄い板状のものの曲がり難さ、すなわち剛性は厚みの概ね3乗に比例する。従って、通常3mm程度の厚みの外皮を4mm程度に厚くすることで、3倍以上の剛性が得られ、外皮が多少湿った状態になっても必要な形状安定性を保つことができる。むろん、フィリングの種類や携帯可能食品の大きさなどによって外皮の厚みを薄めにする、あるいはさらに厚くすることができることは言うまでも無い。
【0023】
(3)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースの投影形状は、長辺と短辺の長さ比が2:1以上の略長方形であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0024】
本発明は素手で直接つかんで食することを想定した携帯可能食品であり、片手でつかんで容易に食せる形状であることが好ましい。そうすると投影形状が正方形に近い形状では、長い辺が発生するために食しにくい場合が生じ、また、フィリングが外皮からこぼれ落ちるというような不都合を生じやすい。また、携帯可能食品の長手方向に垂直な断面の面積は全体としての強度に大きな影響を与え、これは小さければ小さいほど強度が大きくなる。しかし、投影形状が正方形に近い形状では、最小断面面積が大きくなりがちであるのでフィリングの水分で外皮が湿って軟化した場合に形状が不安定になり易い点も懸案点である。
【0025】
そこで、本発明では投影形状を細長い略長方形形状とすることで、素手で直接つかんで食しやすくすると共に、前記断面面積を小さくすることでフィリングの水分で外皮が湿って軟化したとしても形状が不安定になりにくいという効果を得ている。具体的には、長辺と短辺の長さ比を2:1以上としている。もちろん、長辺と短辺の比をさらに大きくして実質的には棒形状とすることも可能である。
【0026】
(4)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースの投影形状は、長軸と短軸の長さ比が2:1以上の略楕円形であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0027】
本発明に係る携帯可能食品は片手でつかんで容易に食せる形状であることが好ましく、すでに説明した通り正方形に近い投影形状を有するよりは、細長い略長方形の投影形状を有するほうが好ましい。これと同様の理由により、円形に近い投影形状を有するよりは、細長い略楕円形の投影形状を有する方が好ましい。
【0028】
略長方形形状ではなく、略楕円形状を選択する理由は、最中の形状は伝統的にほぼ円形の投影形状とされることが多く、角ばった投影形状よりは角の無い略楕円形状の投影形状の方が消費者にとって違和感が少ないということがあげられる。
【0029】
また、本発明に係る携帯可能食品のフィリングは米飯を含むことを特徴としているので、フィリングにはほとんど流動性がない。従って、外皮の投影形状が長方形に近いなど角ばった形状であると、頂点付近の部分にフィリングを詰めることが難しくなる。外皮の投影形状が正方形に近い場合にはこれはさほど問題にはならないが、外皮の投影形状を細長い略長方形形状とした場合には相対的に頂点付近の領域の割合が視覚上大きくなるため、問題になりえる。外皮の内部にあまり大きなフィリングの詰まっていない空間があると、一般に消費者は不満を抱くと想像されるからである。
【0030】
ここで、外皮の投影形状を頂点の無い略楕円形状とすると、米飯を含む流動性の無いフィリングであっても、容易に全体に詰めることができる。この効果は特に携帯可能食品の大きさが小さい場合により顕著である。
【0031】
なお、素手で直接つかんで食しやすくする以外に、携帯可能食品の前記断面面積を小さくすることで形状が不安定になりにくいという効果を得ている点でも、投影形状を略長方形形状とする場合と同様である。略楕円形状の具体的な形状としては、長軸と短軸の長さ比を2:1以上とする。もちろん、長軸と短軸の比をさらに大きくすることも可能である。
【0032】
(5)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースには、2mm以上の凹凸が設けられていることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0033】
通常、菓子類として流通している最中では餡の水分によって最中の皮が湿って軟化してしまうことを極力避けるため、餡の糖分を増やし、水分を減らすなどの工夫によって少しでも最中の皮をが湿りにくくしようとしている。本発明に係る携帯可能食品でも、フィリングの水分を減らすなどの工夫によって外皮を湿りにくくする工夫は可能である。しかし、食事としてのバリエーションを増やすためにさまざまなフィリングを使用する可能性がある以上、これだけでは十分とは言えない。
【0034】
そこで、本発明に係る携帯可能食品では外皮を平坦とせず、少なくとも2mm以上の凹凸を有するようにすることが好ましい。ここに凹凸を有する状態とは、例えば外皮の一部を波板状に屈曲させた状態である。あるいは、外皮が略半球状に盛り上がったりへこんだりを繰り返している、あるいは外皮に格子状に互い違いに盛り上がった領域とくぼんだ領域が繰り返し設けられている等によって構成するとよい。
【0035】
このような構成とすると、本発明に係る携帯可能食品のフィリングは米飯を含む流動性にとぼしいものであるから、外皮にフィリングを詰めた際にフィリングと外皮は、主に外皮の凸部のみで接触する。その他の領域、つまり凹部は浮いた状態となって接触しないこととなる。フィリングの水分は接触箇所から外皮へ移行して外皮を湿らせるのであるが、接触面積が少なければ水分の移行は限定的であり、従って外皮の湿りを相当程度防止することができるのである。
【0036】
このような効果を十分に得るためには、外皮に設ける凹凸の高さ、つまり凹部と凸部の高さの差を少なくとも2mm以上確保することが望ましい。この高さの差が小さすぎると、凹部にも容易にフィリングが接触してしまい、前記の効果が得られなくなってしまうからである。
【0037】
また、外皮に凹凸を設けることは薄くシート状に延ばした外皮の生地を凹凸を設けた焼型にはさんで焼くことで容易に達成されるため、生産性も高く、安価な携帯可能食品の供給に寄与することができる。
【0038】
なお、外皮に凹凸を設けるとは、前記最中の皮またはウェハースに、2mm以上の高さの突起部を設けることを含むものとする。
【0039】
すでに説明したとおり、フィリングの水分が外皮に移行して湿ってしまうことを抑制するために外皮を波板状に成形することができるが、外皮に突起部を設けても同様の効果が得られる。例えば、外皮の内側に設ける凹凸として、円柱状または半球状の突起を多数設けることができる。
【0040】
さらに、外皮に設ける凹凸として、線状の突起部を設けてもよい。線状の突起部は、外皮の面状領域においてちょうど天井梁のように働くため、これを設けることで外皮の剛性は非常に高くなる。よって、多少水分の多いフィリングを使用した場合にも、外皮が湿りにくいという効果に加えて携帯可能食品として必要な強度が維持されるという効果が得られる。なお、線状の突起部を格子状となるように配すれば、外皮の剛性はますます高まり、より好ましい結果が得られる。
【0041】
なお、上記のような効果を十分に得るためには、突起部にある程度の高さが必要であり、これを少なくとも2mm以上とすることが望ましい。この高さの差が小さすぎると、フィリングが容易に外皮の内側全体に接触してしまい、フィリングの水分によって湿りやすくなってしまう他、線状の突起部を設けた際の外皮の剛性向上効果がほとんど得られなくなってしまうからである。
【0042】
(6)本発明においては、前記外皮には、携帯可能食品の厚みが3分の2以下になるような深さの溝が設けられていることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0043】
本発明に係る携帯可能食品は直接手指でつかんで食すことを意図している。ここで、該携帯可能食品を片手でつかんでかじりとることも可能であるが、両手でつかんで一口の大きさに該携帯可能食品を割って食することも想定される。
【0044】
外皮は最中の皮またはウェハースであり、乾燥して薄いものであるから手指で簡単に割ることが可能である。しかし、手指で携帯可能食品を割った場合、外皮を所望の位置で割ることが可能であるとは限らない。予想外に外皮が細かく割れてしまったり、あるいは携帯可能食品の表と裏で外皮が異なる形状で割れたりしてしまうことは十分に想定され、内部のフィリングが零れ落ちてしまうことが懸念される。
【0045】
そこで、携帯可能食品の表面に略V字状の溝が形成されるように外皮に溝構造を設けると良いのである。このような溝構造を設けることで、手指で携帯可能食品を割ろうとした場合、安定して溝部分で割れることになり、外皮が細かく割れてしまったりすることが回避できるからである。なお、この溝構造の深さは、当該部分の携帯可能食品の厚みが3分の2以下になるような深さであることが好ましい。この程度の溝構造の深さとすることで、携帯可能食品を折り曲げた際に確実に溝構造部分で割ることが出来るからである。
【0046】
この際、携帯可能食品の一面にあたる外皮にのみ溝構造を設けていれば、他面に当たる外皮は平面形状やその他の形状でも良い。携帯可能食品のもっとも薄くなっている部分がもっとも割れやすくなるので、溝構造は携帯可能食品の一面から構成されていれば目的は達するからである。
【0047】
しかし、携帯可能食品の両面のそれぞれ対応する位置から溝構造を設けると、外皮に設ける溝構造の深さが浅くても両面からの溝構造が対向するため、携帯可能食品に十分薄い部分を作ることが出来る。外皮に極端に深い溝構造を作ることは容易ではない。従って、携帯可能食品の両面のそれぞれ対応する位置から溝構造を設ける構造がより好ましい。また、溝構造を複数設け、携帯可能食品を一口大に割れる構造とすることが好ましい。また、溝構造を平行に設けるだけでなく、格子状に設けても良い。これは、比較的大きい形態可能食品を短冊状に割り、さらにこれを一口大に割って食する場合に好適である。
【0048】
(7)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースの表面には、ゴマが配されることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0049】
ゴマは独特の風味を有し、きわめて栄養価が高い食品とされるので、外皮にゴマを配すことで携帯可能食品に好ましい風味や栄養を付与することができることは言うまでも無い。
【0050】
加えて、本発明に係る携帯可能食品の外皮の内側にゴマを配すると、ゴマが油分を多く含むために水分を含みにくく、フィリングの水分が外皮に移行することを抑制する効果が得られる。つまり、外皮とフィリングの間にゴマの層を作ることで外皮が湿ることを防止でき、ゴマの良好な風味や栄養を付与するのみならず、携帯可能食品に必要な強度を維持する効果が得られるのである。
【0051】
(8)本発明においては、前記フィリングはあらかじめ成形加工され、その後前記最中の皮またはウェハースに該フィリングが包まれることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0052】
すでに説明した通り、外皮は乾燥して薄いものであるので、これにフィリングを詰める際に不自然な力が加わると、外皮が容易に割れてしまう。このため、外皮にフィリングを詰める作業は相当の注意を要し、大量に生産する際の作業性に問題がある。また、米飯を含む不定形のフィリングを外皮に詰めると、外皮に前記したような凹凸を設けたとしても、外皮内側の形状に沿ってフィリングが隙間無く充填され、外皮とフィリングの接触面積が大きくなる。これでは、フィリングから外皮へ水分が移行し易くなってしまい、携帯可能食品の強度が低下するといった課題を生じてしまう。
【0053】
そこで、木製や樹脂製もしくは金属製の型によってフィリングを成形加工し、成形後のフィリングを外皮で包むようにすることが好ましいのである。ここで、成形型は外皮の内部形状に近い形状ではあるが、外皮に設けた凹凸に対応する凹凸は設けないこととすることが好ましい。なぜなら、成形後のフィリング表面がほぼ平坦となるので、外皮に包んだ際に外皮の凸部のみでフィリングを支持することになり、フィリングから外皮への水分の移行が限定的になるからである。また、型は強靭な材料で製作できるのでフィリングを型に詰め込む際に型が破壊することは無く、大量生産時の作業性も良好となる効果が得られる。
【0054】
(9)本発明においては、前記フィリングは炊き込みご飯であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0055】
炊き込みご飯とは、さまざまな具材を米と共に炊き上げたものであるが、日本国内の各地でさまざまな炊き込みご飯類が知られており、しかも季節感のあるものが多いなど、携帯可能食品の食事としてのバリエーションを確保するために極めて都合の良いフィリングである。
【0056】
また、食材の中には通常水分が多く必ずしも本発明に係る携帯可能食品の具材には適さないものも少なくないが、炊き込みご飯の具材になるものであれば余分な水分は米飯が吸収するので零れ出すような事故も発生しない。
【0057】
なお、本発明に係る携帯可能食品のフィリングとして使用する炊き込みご飯は、やや水分を少なく硬めに炊き上げたものとし、炊き上がった後に十分に水蒸気を逃がしつつ常温になるまで冷却したものとすることが好ましい。炊き上がり直後の炊き込みご飯からは大量の水蒸気が放出されるので、この状態で外皮に詰めると外皮が水蒸気でたちまち湿ってしまうからである。また、わずかでも硬めに炊き上げられた炊き込みご飯は水分を放出しにくく、接触による外皮への水分の移行を発生しにくい。また、具材から水分が放出されたとしてもこれを吸収する効果に優れるからである。
【0058】
なお、炊き込みご飯とは、通常はうるち米やもち米またはこれらを混合したものと各種具材をともに炊き上げたものであるが、本発明に係る携帯可能食品についての炊き込みご飯には、うるち米やもち米またはこれらを混合したものを炊き上げたものに各種具材を混合したものや、あるいは雑穀類を混合したものであっても良い。要は、米飯と他の食材を混合したものを炊き込みご飯と称しているのである。
【0059】
(10)本発明においては、前記フィリングはすし飯であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0060】
すし飯とは、炊き上げた米飯を調味液と混合して水蒸気を逃がしながら常温まで冷却したものである。また、この際またはこの後、ゴマや佃煮類といった具材と混合されることもある。
【0061】
すし飯は、通常やや硬めに水分を少なく炊き上げられるもので、そもそも本発明に係る携帯可能食品のフィリングとして適している。加えて、すし飯には食酢を含む調味液が混合されることが通常であるので、食酢の作用によって常温で保存されても腐敗しにくいという特徴が得られる。これは、常温で携帯されることが多い携帯可能食品として非常に好ましい特徴である。
【0062】
(11)本発明においては、前記フィリングは焼き飯であることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0063】
焼き飯とは炊き上げた米飯を油脂類とともに炒めたもので、しばしば他の具材と共に炒められる。従って、さまざまな特色ある具材を使用することで携帯可能食品の食事としてのバリエーションを確保するために都合が良いフィリングである。
【0064】
また、焼き飯は油脂類と共に炒められるので水分量が少なく、しかも油脂の膜によってフィリングの周囲が覆われている状態になるので、外皮への水分の移行が非常に起こりにくく、本発明にかかる携帯可能食品のフィリングとしてこの意味でも優れている。また、粘りが少なく成形性が低いほうが焼き飯としては好まれる場合があるが、このような好ましい焼き飯は握り飯などの携帯可能食品に成形することが難しい場合がある。しかし、本発明に係る携帯可能食品では外皮で形状を保持するためなんら不都合は生じない。
【0065】
(12)本発明においては、前記最中の皮またはウェハースにわさび又は梅又は抹茶の風味が付与されていることを特徴とする、携帯可能食品とすることが好ましい。
【0066】
外皮は、基本的にはもち米や小麦といった穀物の粉を水で練って薄く延ばして焼き上げるといった製法であるので、これにさまざまな風味を付与できる余地がある。このような用途に使用できるものとして、ゴマや海苔等さまざまな食材があり、いずれも本発明に係る携帯可能食品のバラエティを豊かにする目的で使用可能である。
【0067】
このようなもののなかで、わさび又は梅又は抹茶は特に優れた特徴を有する。わさびは特有の風味が食欲を増進する作用を有する他、強い殺菌作用が認められており、この風味を付与した外皮を使用した本発明に係る携帯可能食品は、常温で保存されても腐敗・変質が発生しにくいという顕著な特徴が得られる。これは常温で携帯されることが多い携帯可能食品として非常に好ましい特徴である。また、梅干(梅肉)を添加するとさわやかな風味はもちろん、鮮やかな赤系色となり、これも消費者の購買意欲を惹起すると考えられる。加えて、わさびほどではないにせよ、殺菌作用が期待でき、わさびの場合と同様に腐敗・変質が発生しにくい。抹茶についても同様である。
【発明の効果】
【0068】
以上説明したとおり、本発明は素手で直接つかんでも手指が汚れない、食事の一環として食することの可能な米飯を含む携帯可能食品を提供することを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、図面を用いて本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0070】
図1は、本発明に係る携帯可能食品の一実施例を示す説明図である。携帯可能食品(1)は、投影形状が長辺と短辺の長さの比が3:2の略長方形形状であり、外皮(2)は厚みが約4mmの最中の皮としている。外皮(2)は上半分と下半分をあわせることで内部にフィリングを詰めることのできる空間を構成しているが、これは従来から和菓子として食されている最中と同様の構成である。
【0071】
図2は、携帯可能食品(1)のA−A’部の断面図である。外皮(2)で作られた空間にはフィリング(3)が詰められている。フィリングは、いわゆる炊き込みご飯としているが、この炊き込みご飯はやや水分を少なく硬めに炊き上げ、かつ炊き上がった跡に十分に水蒸気を逃がしつつ常温になるまで冷却した上で外皮に詰めている。
【0072】
以上のような構成にすることで、直接素手でつかんで食しても手指を汚すことが無く、携帯性に優れた携帯可能食品となる。また、フィリングが炊き込みご飯であり、食事の一環として抵抗無く消費者に受け入れられる携帯可能食品となっている。また、上記のような外皮の厚みと投影形状によって十分な強度が確保されており、形状が安定していると同時に、最小断面面積が比較的小さく、片手でつかむ場合でも食しやすい。
【0073】
さらにフィリングを上記のような炊き込みご飯にすることでフィリングから外皮への水分の移行が抑制され、外皮本来の歯ざわりの良い軽い食感が持続するとともに湿りによる強度低下が発生しにくい。また、炊き込みご飯はさまざまな具材を選択可能であり、携帯可能食品の食事としてのバリエーションを確保することが容易であるとともに、具材のもつ水分が米飯に吸収されるために外皮への水分の移行が抑制される利点がある。
【0074】
なお、フィリングとして、炊き上げた米飯を油脂類とともに炒めた、いわゆる焼き飯を使用することも好ましい実施形態である。米飯を油脂類とともに炒めることで水分量が少なくなっており、しかも油脂の膜によって周囲が覆われている状態になるのでますますフィリングから外皮への水分の移行が発生しにくくなるからである。
【実施例2】
【0075】
図3は、本発明に係る携帯可能食品(1)の別の一実施例を説明するA−A’部の断面図である。この実施例では、外皮(2)に凸部(4)と凹部(5)からなる凹凸が設けられている。
【0076】
外皮(2)に凹凸が設けられていると、本発明においてはフィリング(3)は米飯を主とする流動性の低いものであることから、フィリング(3)をつめた際に外皮(2)との接触は主に凸部(4)のみとなり、凹部(5)ではフィリング(3)とほとんど接触しなくなる。フィリング(3)の米飯は、炊き上げた後に十分に水蒸気を逃がしつつ常温になるまで冷却したものを使用するので、外皮(2)と接触していない限り水分が移行することはほとんど無い。従って、凹凸によって外皮(2)とフィリング(3)の接触面積が非常に少なくなっている本実施形態では、ますます外皮(2)が湿りにくく、前記説明した本発明に係る携帯可能食品の特徴が顕著なものとなる。
【0077】
なお、外皮(2)の凸部(4)と凹部(5)は、薄くシート状に延ばした外皮の生地を凹部・凸部を設けた焼型にはさんで焼くのみで実現できるため生産性も高く、安価な携帯可能食品の供給が可能である。なお、フィリング(3)は外皮(2)に直接詰め込むのではなく、あらかじめ木製等の型で成形した後に外皮(2)にはさむように詰めている。このようにすることで、フィリング(3)の表面が比較的平坦となり、外皮(2)の凸部(4)のみでフィリング(3)が支持され、これの水分が外皮(2)に移行することを相当程度防止できる。
【実施例3】
【0078】
図4は、本発明に係る携帯可能食品(1)の別の一実施例を説明するA−A’部の断面図である。この実施例では、外皮(2)に突起部(6)が設けられている。
【0079】
本実施形態の効果は、先の実施例の凹凸とほぼ同じものである。すなわち、凹凸によって外皮(2)とフィリング(3)の接触面積が非常に少なくなるので、ますます外皮(2)が湿りにくく、前記説明した本発明に係る携帯可能食品の特徴を顕著なものとしている。加えて、突起部(6)は携帯可能食品(1)の外部からは視認されないため、外観上は和菓子のひとつとして従来より食されている最中とほぼ同じものとなる。これによって、凹凸が外部から視認されることによる需要者の違和感が無くなるという効果が得られる。
【実施例4】
【0080】
図5は、本発明に係る携帯可能食品(1)の別の一実施例を説明するA−A’部の断面図である。この実施例では、外皮(2)にゴマ(7)を配合している。
【0081】
外皮(2)にゴマ(7)を配合することで、外皮(2)の表面、すなわち携帯可能食品(1)の内側にもゴマが配されることになる。ゴマは独特の風味を有し、きわめて栄養価が高いために携帯可能食品に好ましい風味や栄養を付与することができるが、加えて油分を多く含むために水分を含みにくい性質を有する。つまり、フィリング(2)とゴマ(7)が接触しても水分の移行が発生しにくく、このため、外皮(2)が湿りにくく、前記説明した本発明に係る携帯可能食品の特徴が顕著なものとなるのである。
【0082】
また、ゴマ(7)は本実施形態では外皮(2)に配合したが、外皮(2)の表面に付着させても良いことはいうまでも無い。ゴマの層がフィリング(3)の水分の外皮(2)への移行を抑制する点でなんら異ならない効果が得られるからである。
【実施例5】
【0083】
図6は、本発明に係る携帯可能食品(1)の別の一実施例を示す説明図である。この実施例では、携帯可能食品(1)の外皮(2)の長辺に3本、短辺に1本の溝構造(8)が設けられている。携帯可能食品(1)を一口大等に分割して食す場合、溝構造(8)に沿って容易に手で割ることが可能であり、この実施例では容易に8分割することができる。
【0084】
図7は図6に示す本発明に係る携帯可能食品(1)を説明するA−A’部の断面図である。図から明らかなように、この実施例では溝構造(8)の設けられている位置では携帯可能食品(1)の厚みが3分の1程度になっている。このようにすることで、携帯可能食品(1)を手指で折り曲げた場合に確実に溝構造(8)の設けられている位置で割ることが出来る。なお、溝構造(8)の深さは必ずしもこれほど深い必要は無く、携帯可能食品(1)の厚みが3分の2程度以下になる深さがあれば実用上は十分である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明は直接素手でつかんで食しても手を汚すことがなく、また携帯時の向きや振動によっても不都合を生じにくい、携帯性に優れた携帯可能食品を提供するものであり、産業上の価値はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施方法を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施方法を示した断面図である。
【図3】本発明の一実施方法を示した断面図である。
【図4】本発明の一実施方法を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施方法を示した断面図である。
【図6】本発明の一実施方法を示した説明図である。
【図7】本発明の一実施方法を示した断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 携帯可能食品
2 外皮
3 フィリング
4 凸部
5 凹部
6 突起部
7 ゴマ
8 溝構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米飯を含むフィリングを、最中の皮またはウェハースによって包んだことを特徴とする、携帯可能食品。
【請求項2】
前記最中の皮またはウェハースの厚みが4mm以上であることを特徴とする、請求項1記載の携帯可能食品。
【請求項3】
前記最中の皮またはウェハースの投影形状は、長辺と短辺の長さ比が2:1以上の略長方形であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の携帯可能食品。
【請求項4】
前記最中の皮またはウェハースの投影形状は、長軸と短軸の長さ比が2:1以上の略楕円形であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の携帯可能食品。
【請求項5】
前記最中の皮またはウェハースには、2mm以上の凹凸が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項6】
前記最中の皮またはウェハースには、携帯可能食品の厚みが3分の2以下になるような深さの溝が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項7】
前記最中の皮またはウェハースの表面には、ゴマが配されることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項8】
前記フィリングはあらかじめ成形加工され、その後前記最中の皮またはウェハースに該フィリングが包まれることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項9】
前記フィリングは炊き込みご飯であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項10】
前記フィリングはすし飯であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項11】
前記フィリングは焼き飯であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。
【請求項12】
前記最中の皮またはウェハースにわさび又は梅又は抹茶の風味が付与されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか1の請求項に記載の携帯可能食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−278944(P2009−278944A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136137(P2008−136137)
【出願日】平成20年5月25日(2008.5.25)
【出願人】(504072244)株式会社吉野 (2)
【Fターム(参考)】