説明

携帯型入力装置および携帯型入力装置における入力方法

【課題】キーボタンやスイッチ等の部品点数を抑えた簡単な構成でキー入力が行えるようにする。
【解決手段】リモートコントローラ1は、保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる角速度を検出する角速度検出手段21と、角速度検出手段21が検出した角速度に基づいて指示された特定の場所を判定する操作判定手段30と、操作判定手段30の判定結果に基づいて外部機器へ制御命令を送信する制御命令送信手段91とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型入力装置に関し、特に利用者が筐体の特定の場所を指示することにより入力する携帯型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術や微細化技術の進歩により、小型化された持ち運び可能なハンディ機器が増えてきている。携帯電話はその代表であり日常生活の必需品として既に広く普及している。携帯電話はその普及とともに機能が多様化してきており、スケジュール、電子メール、ゲーム、音楽プレーヤ、ワンセグ放送受信など通話以外の目的で利用者が携帯電話を使用する機会が増えている。このため、利用者は電話番号を入力する操作以外にも文字入力、メニュー選択、ゲームのコントロールなど様々な目的で携帯電話への操作入力を行う必要性が高まった。
【0003】
現在、携帯電話への操作入力の方法としてたとえば特許文献1に開示されるテンキーを用いた入力方法が広く用いられている。テンキー方式は利用者が携帯電話の筐体上に配列する10数個のボタンを順次押下することにより、数字入力以外にも文字入力、メニュー選択やゲームコントロールを行うことができる。このため、携帯電話が有する機能が多様化したとしても、利用者はテンキー操作のみで携帯電話の機能を使いこなすことができる。したがって、携帯電話に新しい機能が追加されるごとに新たな入力手段が追加され、携帯電話の筐体の薄型化/小型化が阻害される、といった事態を避けることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−274880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された携帯無線機のように筐体面にキーを配置する場合、キーボタンが筐体サイズに占める割合が大きく、また、筐体内部にスイッチ類が必要となってくるため、筐体の薄型化/小型化には限界があった。
【0006】
一方、キーの個数を減らして部品点数を減らせば筐体を薄型化/小型化することは可能であるが、キー配列が利用者が普段慣れ親しんでいるキー配列とは異なるものとなってしまい、利用者が入力操作に違和感を感じてしまうといったことになりかねない。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、利用者の指の動きから入力を予測することで、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことのできる携帯型入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の携帯型入力装置は、保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる変位を検出する変位検出手段と、変位検出手段によって検出された変位に基づいて、特定の場所を判定し、判定結果を出力する操作判定手段とを備えた構成を有する。
【0009】
上記構成によれば、利用者が筐体を保持している手の指を筐体上の特定の場所を押下するために移動する動作を筐体の変位によって検出し、特定の場所を判定することができるので、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができる。
【0010】
また、本発明の携帯型入力装置は、筐体のあらかじめ定められた基準位置が指示されたことを検出する基準位置検出手段をさらに備え、操作判定手段が基準位置検出手段の検出結果と、基準位置が指示された後に変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、特定の場所を判定するよう構成される。
【0011】
上記構成によれば、筐体の基準位置が指示された際の筐体の変位状態を起点とし、その後の筐体の変位に基づいて利用者が押下しようとしている特定の場所を判定することができるので、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができるとともに、指の連続移動による変位検出の誤差累積を抑えることができ、より正確に特定の場所を判定することができる。
【0012】
また、本発明の携帯型入力装置は、基準位置が指示されたことを基準位置検出手段が検出すると、基準位置が指示される以前の判定結果が無効であると操作判定手段が判定するよう構成される。
【0013】
上記構成によれば、操作判定手段による判定結果が利用者の意思と異なる場合、すなわち操作判定手段による判定結果が無効である場合にのみ変位検出の累積誤差を適宜リセットすることができるので、基準位置の指示が必要最小限で済み、効率よい操作入力が可能となる。
【0014】
また、本発明の携帯型入力装置は、変位検出手段によって検出された変位と、変位と特定の場所とが対応付けられたテーブルとに基づいて、操作判定手段が特定の場所を判定するよう構成される。
【0015】
上記構成によれば、テーブルを変更することにより、筐体の保持方法の違い、手や指の形状の違い、操作の癖の違いなどによる判定のばらつきを吸収することができるので、利用シーンごとに柔軟に適合可能な携帯型入力装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の携帯型入力装置における入力方法は、保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる変位を検出する第1のステップと、第1のステップにおいて検出された変位に基づいて特定の場所を判定する第2のステップと、判定結果を出力する第3のステップとから成る手順を有する。
【0017】
上記手順によれば、利用者が筐体を保持しながら筐体上の特定の場所を押下するために指を移動する動作を筐体の変位によって検出し、特定の場所を判定することができるので、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、利用者が筐体を保持ながら筐体上の特定の場所を押下するために指を移動する動作を筐体の変位に基づいて特定の場所を判定することにより、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができる携帯型入力装置を提供することが可能となり、携帯機器のさらなる薄型化/小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の構成要素には同一符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の概略構成図である。図1において、リモートコントローラ1は携帯型入力装置10および機能実行手段90を備える。また、携帯型入力装置10は変位検出手段20、操作判定手段30を備える。
【0021】
変位検出手段20は、リモートコントローラ1が利用者によって保持された状態で利用者がリモートコントローラ1の筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる変位を検出し、変位検出結果200を出力する。操作判定手段30は、変位検出手段20が出力した変位検出結果200に基づいて利用者が指示する筐体の特定の場所を判定し、第1の判定結果300を出力する。機能実行手段90は、操作判定手段30が出力した第1の判定結果300に基づいて利用者が指示した機能を実行する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1をさらに詳しく示した構成図である。図2においてリモートコントローラ1は、図1における変位検出手段20および機能実行手段90として、それぞれ角速度検出手段21、制御命令送信手段91を備える。
【0023】
角速度検出手段21は、リモートコントローラ1が利用者によって保持された状態で利用者がリモートコントローラ1の筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる角速度を検出し、角速度検出結果210を出力する。制御命令送信手段91は、第1の判定結果300に基づいてリモートコントローラ1の制御対象となる外部機器を制御する制御命令を外部機器へ送信する。
【0024】
角速度検出手段21は、力学的な慣性や光学的な干渉などを利用して角速度を検出する角速度センサ等で構成される。操作判定手段30は、角速度検出結果を演算するCPU(Central Processing Unit)、角速度検出結果や演算結果を蓄積するメモリ等で構成される。制御命令送信手段91は、赤外線LED(Light Emitting Diode)や赤外線LEDの発光を制御するIC(Integrated Circuit)等で構成される。
【0025】
図3は本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の外観図である。図3(a)はリモートコントローラ1の操作面100を手前に向けたときの外観図、図3(b)はリモートコントローラ1の操作面100の裏側から見た外観図である。図3に示すとおり、リモートコントローラ1の筐体の表面には、第1の特定の場所81および第2の特定の場所82が利用者に認識できるよう第1の目印810および第2の目印820がそれぞれ描かれている。第1の目印810は、外部機器へ制御命令「上」を出力する際に利用者が指示すべき場所を提示し、第2の目印820は、外部機器へ制御命令「下」を出力する際に利用者が指示すべき場所を提示している。
【0026】
角速度検出手段21は、リモートコントローラ1の筐体内部に備えられ、リモートコントローラ1の筐体の変位から生じる角速度を検出できるようになっている。また、制御命令送信手段91は、リモートコントローラ1の上面101に備えられ、利用者の指示に基づく制御命令を外部機器へ向かって送信できるようになっている。
【0027】
図3からわかるとおり、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1には、利用者の指示を検出するためのキーボタンやスイッチ等は備えられていない。
【0028】
図4は本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の操作例を説明する図である。図4において利用者はリモートコントローラ1を右手で保持し、指80を上下に移動することにより、特定の場所81、82を指示している。
【0029】
図4(a)は、利用者がリモートコントローラ1を右手で保持したまま操作を行っていない状態を示している。指80は第1の特定の場所81、第2の特定の場所82のいずれも指示していない。図4(b)は、指80が第1の特定の場所81を指示しようとしている状態を示している。リモートコントローラ1の筐体は操作面100側から見てやや反時計回りに回転していることがわかる。一方、図4(c)は図4(b)とは逆に、指80が第2の特定の場所82を指示しようとしている状態を示している。リモートコントローラ1の筐体は操作面100側から見てやや時計回りに回転していることがわかる。
【0030】
このように、利用者がリモートコントローラ1を保持している手の指で筐体の特定の場所を指示しようとするとき、利用者の手が無意識に指の移動を補うよう(もしくは指の移動につられて)リモートコントローラ1の筐体を変位させていることがわかる。また、利用者が筐体のどの場所を指示しようとしたかに依存して、利用者の手による筐体の変位のしかたが異なっていることがわかる。本発明では、上述のように、利用者が筐体の特定の場所を指で指示する際に発生する手の変形や移動に起因する筐体の変位を検出し、その検出結果に基づいて、利用者が筐体のどの場所を指示しようとしているかを判定するのである。
【0031】
図5は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の筐体の変位をさらに詳しく説明する図である。本明細書では、図5(a)が示すとおり、リモートコントローラ1の操作面100に対して垂直な軸をz軸、z軸に直交する軸のうち筐体の上面101に対して垂直な軸をy軸、y軸およびz軸に直交する軸をx軸とする。また、図5(b)が示すとおりz軸周りの角速度をωz、x軸周りの角速度をωxとする。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の操作判定手段30の処理フローである。まず、操作判定手段30は角速度検出手段21が検出した角速度検出結果210を取得する(ステップS105)。次に、操作判定手段30はステップS105で取得した角速度検出結果210に基づいて、筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうかを判定する(ステップS107)。さらに、操作判定手段30はステップS107において特定の場所への指示であると判定されたかどうかにより処理を分岐する(ステップS108)。ステップS107において特定の場所への指示であると判定された場合(ステップS108、YES)、操作判定手段30はステップS109へ処理を進め、ステップS107において特定の場所への指示でないと判定された場合(ステップS108、NO)、操作判定手段30はステップS105へ処理を進める。最後に、操作判定手段30はステップS107で判定された特定の場所を第1の判定結果300として出力する(ステップS109)。
【0033】
図7は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の操作判定手段30の処理フローのうち、筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうかを判定する手順(図6、ステップS107)をさらに詳しく説明する処理フローである。なお、図7の処理フロー中、tは角速度検出手段21が加速度を最後に検出した時刻を、Tは角速度検出手段21が角速度を検出する周期を表すものとする。
【0034】
まず、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体が所定以上の速さで変位しているかどうかによって処理を分岐する(ステップS1071)。すなわち、操作判定手段30は、角速度検出結果210に含まれる角速度(ωz(t)、ωx(t))の絶対値をとり、絶対値が所定の角速度値(ωzh、ωxh)の絶対値以上であるかを調べる。いずれかの角速度の絶対値が所定の角速度の絶対値以上であれば(ステップS1071、YES)、操作判定手段30はステップS1072へ処理を進め、いずれの角速度の絶対値も所定の角速度の絶対値未満であれば(ステップS1071、NO)、操作判定手段30は特定の場所への指示ではないと判断して図6のステップS108へ処理を進める。
【0035】
次に、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体が所定以上の速さで変位し始めた直後であるかどうかによって処理を分岐する(ステップS1072)。すなわち、操作判定手段30は、角速度検出結果210に含まれる1サンプル前の角速度(ωz(t−T)、ωx(t−T))の絶対値がいずれも所定の角速度(ωzh、ωxh)の絶対値未満であるかどうかを調べる。いずれの角速度の絶対値も所定の角速度の絶対値未満であれば(ステップS1072、YES)、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体が所定以上の速さで変位し始めた直後であると判断してステップS1073へ処理を進め、1サンプル前の角速度の絶対値のいずれかが所定の角速度の絶対値以上であれば(ステップS1072、NO)、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体の所定以上の速さでの変位が継続中であると判断してステップS1074へ処理を進める。ステップS1072においてリモートコントローラ1の筐体が所定以上の速さで変位し始めた直後であると判断された場合(ステップ1072、YES)、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体が所定の変位を開始してからの変位角を計算するため変位角の値(θx、θz)を初期化する(ステップS1073)。
【0036】
ステップS1074において、操作判定手段30は角速度検出手段210に含まれる角速度(ωz(t)、ωx(t))および周期Tを用いてリモートコントローラ1の筐体の変位角の値(θx、θz)を更新する。
【0037】
ステップS1075〜ステップS1076において、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体の変位角に基づいて筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうかを判断する。まず、操作判定手段30は変位角θzと所定の変位角θzhとを比較し、リモートコントローラ1の筐体が操作面100から見て反時計回りに変位したかどうかを判断する。また、操作判定手段30は変位角θxと所定の変位角θxhとを比較し、リモートコントローラ1の筐体の上側が操作面100から見て奥に倒れる方向へ変位したかどうかを判断する(ステップS1075)。ステップS1075の判断がYESであれば、操作判定手段30は筐体の変位が第1の特定の場所81の指示によるものであると判定する(ステップS1077)。
【0038】
ステップS1075において判断がNOであった場合、操作判定手段30は変位角θzと所定の変位角θzhとを比較し、リモートコントローラ1の筐体が操作面100から見て時計回りに変位したかどうかを判断する。また、操作判定手段30は変位角θxと所定の変位角θxhとを比較し、リモートコントローラ1の筐体の上側が操作面100から見て手前に倒れる方向へ変位したかどうかを判断する(ステップS1076)。ステップS1076の判断がYESであれば、操作判定手段30は筐体の変位が第2の特定の場所82の指示によるものであると判定する(ステップS1078)。ステップS1076の判断がNOの場合、操作判定手段30は筐体の変位が利用者の指示によるものではないと判断し、図6のステップS108へ処理を進める。
【0039】
以上説明したとおり、操作判定手段30はリモートコントローラ1の筐体が所定以上の速度を保ったまま所定以上変位したかどうかに基づいて筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうかを判定している。また、操作判定手段30は特定の場所が複数ある場合にリモートコントローラ1の筐体が変位する方向に基づいて筐体の変位がいずれの場所への指示によるものかを判定している。
【0040】
図8は、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の角速度検出手段21が出力する角速度検出結果210の例を示す図である。図8(a)は、図4(a)に示す、利用者が操作をしていない状態から、利用者が第1の特定の場所81を指示して図4(b)に示す状態となるまでに角速度検出手段21が検出した角速度ωzおよび角速度ωxの時間推移を表している。また図8(b)は、図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態となるまでのリモートコントローラ1の変位角θzおよび変位角θxの時間推移を表している。ここで、変位角θzおよび変位角θxは、図6(a)に示すωzおよびωxに基づいて図7に示す処理フローのステップS1074において算出される値を示している。以下、図6、図7、図8を中心にして本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の動作を説明する。
【0041】
まず、図8に示す時刻t0において角速度検出手段21がリモートコントローラ1の筐体の角速度を検出して角度検出結果210を出力し、操作判定手段30が角度検出結果210を取得する(図6、ステップS105)。次に、操作判定手段30は筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうか判定を行う(ステップS107)。取得した角速度ωz(t)および角速度ωx(t)の絶対値がいずれも所定の角速度(ωzh、ωxh)の絶対値より小さいことから図7のステップS1071の判断はNOとなり、操作判定手段30は図6のステップS108へ処理を進める。筐体の変位が指示によるものであるとは判定されていないのでステップS108の判断はNOとなり、操作判定手段30は第1の操作判定結果300として何も出力せずにステップS105へ処理を進める。
【0042】
図8に示す時刻t1において角速度検出手段21が検出した角速度ωzの絶対値が所定の角速度ωzhに達すると、図7のステップS1071の判断がYESとなるので操作判定手段30はステップS1072へ処理を進める。1サンプル前の角速度ωz(t−T)の絶対値および1サンプル前の角速度ωx(t−T)の絶対値はともに所定の角速度(ωzh、ωxh)の絶対値より小さいのでステップS1072の判断はYESとなり、操作判定手段30はステップS1073へと処理を進め、変位角θxおよび変移角θzの値を初期化する。
【0043】
図8に示す時刻t1以降、操作判定手段30は図6および図7に示す処理を繰り返すが、リモートコントローラ1の変位が所定の変位に達するまで、すなわち変位角θzが所定の変移角θzh以上かつ変位角θxが所定の変移角θxh以下となる時刻t3(図8(b))までは図7のステップS1075およびステップS1076の判断はともにNOとなるので、操作判定手段30は筐体の変位が特定の場所への指示によるものであるとは判定せず(図6ステップS108、NO)、ステップS109で第1の判定結果300を出力することはない。
【0044】
図8(b)に示す時刻t3に達すると、リモートコントローラ1の筐体の変位が所定の変位に達し、図7のステップS1075の判断がYESとなるので操作判定手段30は第1の特定の場所81(図5)を利用者が指示しようとしていると判定し(図7のステップS1077)、図6のステップS108の判断はYESとなるのでステップS109において第1の特定の場所81に対応する「指示=上」を第1の判定結果300として出力する。
【0045】
図8(b)に示す時刻t3から図8(a)に示す時刻t4までの間は、利用者が第1の特定の場所81(図5)を指示しようとして指を移動する動作の最中であり、リモートコントローラ1の筐体の変位が所定以上の速さで増加し続けている期間である。この期間(時刻t3〜時刻t4)には、図7のステップS1075の判断がYESであるので操作判定手段30は図6の処理を繰り返すごとに「指示=上」を判定結果300として繰り返し出力し続ける。その後、利用者が第1の特定の場所81を指示するための動作を完了し(図4(b))、角速度ωzが所定の角速度ωzhを下回ると(図8(a)の時刻t4)、図7のステップS1071の判断がNOとなり図6のステップS108の判断がNOとなるので操作判定手段30は「指示=上」の出力を停止する。
【0046】
続いて、図2の制御命令送信手段91は、第1の判定結果300に含まれる「指示=上」が停止したことを検出すると、利用者が第1の特定の場所81の指示が完了したと判断し、外部機器に対して制御命令「上」を送信する。
【0047】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1は、保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる角速度を検出して角速度検出結果210を出力し、操作判定手段30が角速度検出結果210に含まれる角速度に基づいて特定の場所を判定し、判定結果300を出力するよう構成している。
【0048】
上記構成により、利用者が筐体を保持している手の指を筐体上の特定の場所を押下するために移動する動作を筐体の角速度によって検出し、特定の場所を判定することができるので、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができる。
【0049】
また、上記構成により、操作入力の際に利用者が指示する場所にキーボタンやスイッチ等の部品を設置する必要がないため、たとえば電池カバーやLED(Light Emitting Diode)やマイクロホン等、操作入力とは無関係な他の部品が配置された場所を操作入力用に利用することができるので、筐体の表面をより有効に活用できるという効果もある。
【0050】
また、上記構成により、利用者が筐体を保持している手の指を筐体上の特定の場所を押下するために移動する動作に伴って無意識に生じる筐体の変位に基づいて利用者の操作を判定することができるので、利用者が特殊な操作を新たに覚える必要がなく、利用者が慣れ親しんでいる従来のキーやボタンを操作するのと同じ感覚で操作入力を行うことができる。
【0051】
また、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1は、筐体が変位する速さが所定の速さに達しない場合には筐体の変位が特定の場所への指示によるものではないと判定している(図7、ステップS1071)。上記手順により、利用者の操作以外の原因によるリモートコントローラ1の筐体の微小な変位や変位検出手段が出力するノイズ等の影響を抑え、正確な操作判定が可能となる。
【0052】
なお、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の制御命令送信手段91、すなわち機能実行手段90は、特定の場所への指示が完了した時点(図8(a)の時刻t4)で外部機器へ制御命令を送信するという動作を行うようにしているが、これに限るものではなく、操作判定手段30が筐体の変位が特定の場所への指示によるものであると判定したこと(図8(b)の時刻t3)、あるいは操作判定手段30が筐体の変位が特定の場所への指示によるものであると判定してから所定の時間が経過したことをトリガーとして制御命令送信手段91、すなわち機能実行手段90が動作を行うようにしてもよい。このようにすれば、利用者の操作が完了する以前に機器の動作を開始させたり準備させたりすることができるので、機器のレスポンスが向上する等の効果がある。
【0053】
なお、本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラ1の操作判定手段30は、利用者が第1の特定の場所81または第2の特定の場所82へ指を移動する指示であるかを判定した(図7のステップS1075、ステップS1076)が、これに限るものではなく、利用者が上記特定の場所へ移動した指をもとの場所へ戻す指示であるかどうかをさらに判定するようにしてもよい。このようにすれば、特定の場所の押下に加えて押下終了を検出することができるので、たとえば特定の場所の押下を継続している時間を測定することにより長押しの判定が可能となり、利便性がさらに向上する。
【0054】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の概略構成図である。図9において、携帯型入力装置10は図1に示す携帯型入力装置の構成に加えて基準位置検出手段40、判定結果蓄積手段50、判定テーブル保持手段60、および判定結果提示手段70を備える。また、操作判定手段30は、基準位置検出手段40の出力である基準位置検出結果400、判定結果蓄積手段50の出力である第2の判定結果500に基づいて利用者が指示する筐体の特定の場所を判定するよう構成されている。さらに、操作判定手段30は、判定テーブル保持手段60が保持する判定テーブル600を参照して利用者が指示する筐体の特定の場所を判定するよう構成されている。
【0055】
基準位置検出手段40は、携帯電話端末2の筐体のあらかじめ定められた基準位置が指示されたことを検出し、基準位置検出結果400を出力する。判定結果蓄積手段50は、第1の判定結果300に基づいて操作判定手段30による判定結果を一時的に蓄積し、蓄積した判定結果を操作判定手段30による次回以降の判定のために第2の判定結果500として出力する。判定テーブル保持手段60は、携帯電話端末2の筐体の変位と筐体の特定の場所とが対応付けられた判定テーブル600を保持する。判定結果提示手段70は、第1の判定結果300に基づき、利用者が指示したと操作判定手段30が判定した特定の場所を表す情報を利用者に提示する。
【0056】
図10は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2をさらに詳しく示した構成図である。図10において携帯電話端末2は、図9における変位検出手段20として加速度検出手段22を備える。また、図10において携帯電話端末2は、図9の機能実行手段90として通信手段92を備える。さらに、図10において携帯電話端末2は、図9の判定結果提示手段70として発光制御手段79、第1のLED71、第2のLED72、第3のLED73を備える。さらに、図10において携帯電話端末2は、変位パターン蓄積手段31を備える。
【0057】
加速度検出手段22は、携帯電話端末2が利用者によって保持された状態で利用者が携帯電話端末2の筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる加速度を検出し、加速度検出結果220を出力する。通信手段92は、第1の判定結果300に基づいて電話回線との通信処理を実行する。変位パターン蓄積手段31は、携帯電話端末2の筐体の変位の時間的変化を表す変位パターン310を生成して保持する。変位パターン310は操作判定手段30が加速度検出結果220に基づいて生成する。発光制御手段79は、利用者によって指示のあった特定の場所が利用者に認知可能となるよう、第1の判定結果300に基づいて第1のLED71、第2のLED72、第3のLED73のいずれかを発光させる制御を行う。
【0058】
加速度検出手段22は、力学的性質、電気的性質、光学的性質などを利用して加速度を検出する3軸加速度センサ等で構成される。基準位置検出手段40は、筐体の基準位置が指示されたことを検出できるよう設けられたボタン等で構成される。判定結果蓄積手段50、判定テーブル保持手段60、変位パターン蓄積手段31は、メモリ等で構成される。
【0059】
第1のLED71、第2のLED72、第3のLED73は、可視光を放つLED(Light Emitting Diode)等で構成される。発光制御手段79は、LEDを駆動するドライバソフト等で構成される。
【0060】
なお本明細書では、加速度検出手段22が3軸加速度センサ等で検出された加速度から重力加速度の成分を除去したあとの加速度を加速度検出結果220として出力するものとして説明する。
【0061】
図11は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の外観図である。図11に示す携帯電話端末2は、以降の説明を簡単にするため筐体下側の部分を省略して描いてある。図11に示すとおり、携帯電話端末2の筐体の操作面100には基準位置検出手段40が備えられている。基準位置検出手段40の表面にはマーク「CLR」が描かれている。マーク「CLR」は、基準位置検出手段40が操作判定手段30による以前の判定結果が誤りであり入力が無効であることを指示するための操作子であることを表している。
【0062】
また、携帯電話端末2の操作面100には第1の特定の場所81、第2の特定の場所82、第3の特定の場所83のそれぞれに対応する位置に第1のLED71、第2のLED72、第3のLED73が備えられている。一方、携帯電話端末2の上部筐体には通信手段92のうち電話番号等を表示するための液晶ディスプレイが備えられている。さらに携帯電話端末2の上部筐体の内部には加速度検出手段22が備えられている。
【0063】
図12は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の変位パターン310の構造を説明する図である。図12に示すとおり、変位パターン310はセル3100〜セル3103までN個のセルからなる配列で表現されている。ここでa(t)(セル3100)は時刻tにおいて加速度検出手段22が検出した加速度の値(ベクトル値)である。また、a(t−T)(セル3101)は時刻tより周期Tだけ過去において加速度検出手段22が検出した加速度の値である。同様にセル3102〜セル3103は周期Tずつ異なる時刻において加速度検出手段22が検出した加速度の値である。
【0064】
すなわち、変位パターン310は、携帯電話端末2の変位によって生じた加速度のうち、周期Tごとにサンプリングした直近N個の値(ベクトル)を時系列で表したもの、言いかえれば、携帯電話端末2の変位によって生じた加速度の直近の時間変化を表したものである。本明細書では、時刻tにおける変位パターン310をα(t)と表すものとする。なお、上記Nは携帯電話端末2の変位によって生じる加速度の時間変化が利用者の指示ごとに判別可能となるよう、すなわち変位時間N×Tが充分大きな値になるよう決定される。
【0065】
図13は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の判定テーブル保持手段60が保持する判定テーブル600の内容を説明する図である。図13において、判定テーブル600はレコードR6000〜レコードR6004の5個のレコードからなる。また、判定テーブル600を構成する各レコードはフィールドF6000〜フィールドF6003の4個のフィールドからなる。判定テーブル600のフィールドF6000の「基準位置」「1」「2」「3」は、利用者による前回の操作(以後、C(n−1)と記載する)を表す。
【0066】
ここで「基準位置」は、利用者が基準位置検出手段40を指示したことを表す。また、「1」は利用者が第1の特定の場所81を指示したことを表す。同様に「2」「3」はそれぞれ第2の特定の場所82、第3の特定の場所83を利用者が指示したことを表す。
【0067】
また、判定テーブル600のレコードR6000の「1」「2」「3」は、利用者による今回の操作(以後、C(n)と記載する)を表す。
【0068】
判定テーブル600のレコードR6001〜レコードR6004のフィールドF6001〜フィールドF6003の範囲には、携帯電話端末2の筐体の特定の場所もしくは基準位置を利用者が指示したあと、続いて同一もしくは異なる特定の場所を利用者が指示したときの変位パターン310の標準的なパターン(以下「標準変位パターン」と記載する)が格納されている。例えば、レコードR6002のフィールドF6002に格納されているβ(1,2)は、利用者が第1の特定の場所81を指示(「指示=1」)したあと、続いて第2の特定の場所82を指示(「指示=2」)した場合の標準変位パターンである。個々の標準変位パターンは、図12に示す変位パターン310と同様のデータ形式で判定テーブル600に格納されている。
【0069】
図14は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の操作判定手段30の処理フローである。まず、操作判定手段30は基準位置検出結果400を取得し、基準位置が指示されたことを基準位置検出手段40が検出したかどうかを調べる(ステップS201)。次に、操作判定手段30はステップS201の結果に基づいて処理を分岐する(ステップS202)。基準位置検出手段40が基準位置への指示を検出した場合(ステップS202、YES)、操作判定手段30はステップS203へ処理を進め、基準位置検出手段40が基準位置への指示を検出しなかった場合(ステップS202、NO)、操作判定手段30はステップS205へ処理を進める。
【0070】
基準位置検出手段40が基準位置への指示を検出した場合(ステップS202、YES)、操作判定手段30は前回の判定結果が無効であると判定し、「基準位置」を判定結果とする(ステップS203)。続いて、操作判定手段30は変位パターン310の内容をクリアすることにより携帯電話端末2の筐体の変位検出状態を初期化(ステップS204)した後、ステップS209の処理へ進む。
【0071】
一方、ステップS205において、操作判定手段30は加速度検出結果220を取得し、加速度検出結果220に含まれる加速度の値a(t)を変位パターン蓄積手段310に格納することにより変位パターン310を更新する(ステップ206)。続いて、操作判定手段30は携帯電話端末2の筐体の変位が特定の場所への指示によるものかどうかを判定し(ステップS207)、特定の場所への指示によるものであると判定した場合(ステップS208、YES)はステップS209へ処理を進め、特定の場所への指示でないと判定した場合(ステップS208、NO)はステップS201へ処理を進める。
【0072】
ステップS209において、操作判定手段30は判定結果(「1」「2」「3」「基準位置」のいずれか)を第1の判定結果300として出力する(ステップS209)。
【0073】
ステップS209で操作判定手段30が第1の判定結果300を出力すると、判定結果蓄積手段50は出力された第1の判定結果300を蓄積する。また、発光制御手段79は第1の判定結果300に基づき判定結果に対応する場所に備えられたLED(第1のLED71、第2のLED72、第3のLED73のいずれか)が所定時間点灯するようLEDを制御することにより操作判定手段30が判定した特定の場所を認知可能に提示する。
【0074】
また、ステップS209において操作判定手段30が判定結果を第1の判定結果300として出力すると、通信手段92は第1の判定結果300を取得し、判定結果が「1」「2」「3」のいずれかの場合には図11の通信手段92の画面に判定結果に対応する数字を発呼先電話番号の入力結果として表示する。一方、第1の判定結果300に含まれる判定結果が「基準位置」である場合は、通信手段92は直前の数値入力が無効であると判断し、通信手段92の画面に表示している電話番号の最後尾の数字を消去する。
【0075】
図15は、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2の操作判定手段30の処理フローのうち、筐体の変位が特定の場所への指示によるものであるかを判定する手順(図14、ステップS207)をさらに詳しく示した処理フローである。まず、操作判定手段30は変位パターン蓄積手段31から最新の変位パターン310(α(t))を取得し(ステップS2071)、前回の判定結果C(n−1)を参照するために判定結果蓄積手段50から第2の判定結果500を取得する(ステップS2072)。
【0076】
次に、操作判定手段30は判定テーブル保持手段60が保持する判定テーブル600に格納されている標準変位パターンβ(C(n−1),k)(ただしk=1,2,3)とα(t)との尤度Lkを計算する(ステップS2073)。そして、操作判定手段30は尤度Lkの最大値が所定の尤度Loを上回っているかを調べる(ステップS2074)。尤度Lkの最大値が所定の尤度Loを上回っていれば(ステップS2074、YES)、操作判定手段30はLkが最大となったkを今回の判定結果C(n)とする(ステップS2075)。
【0077】
すなわち操作判定手段30は、利用者による前回の指示(C(n−1))と、利用者による前回の指示の後に発生した携帯電話端末2の筐体の変位(α(t))に基づいて今回の指示を判定している。このとき、操作判定手段30は、携帯電話端末2の筐体の変位(α(t))がどの標準変位パターン(β)に似ているかを判断することによって、今回の指示がいずれの特定の場所に対する指示であるかを判定している。
【0078】
なお、データ系列同士の尤度を計算する方法は、音声認識等、パターン認識に関連する技術分野において既に提案され公知となっている(たとえばDPマッチング法)ので本明細書では説明を省略する。
【0079】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、操作判定手段30が変位検出手段20によって検出された変位と以前の判定結果とに基づいて特定の場所を判定している。
【0080】
上記構成により、利用者が複数の特定の場所を順次連続的に指示する場合でも利用者が指示する特定の場所を判定することができる。
【0081】
また、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、基準位置検出手段40と、基準位置検出手段40が指示された後に変位検出手段20によって検出された変位とに基づいて利用者が指示する特定の場所を判定する操作判定手段30とを有する。
【0082】
上記構成により、基準位置が指示された場合に操作判定手段30は以前に検出した筐体の変位パターンをリセットして(図14、ステップS204)新たに基準位置が指示された状態を起点として筐体の変位を検出し指示を判定できるので、利用者が複数の特定の場所を順次連続的に指示する際に変位検出の誤差が累積し続けるのを防止でき、利用者の指示をより正確に判定できる。
【0083】
また、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、基準位置検出手段40が指示されると操作判定手段30は以前の判定結果が無効であると判定する。
【0084】
上記構成により、操作判定手段30による判定結果が利用者の意思と異なる場合に1回の指示で以前の判定結果を無効化できると同時に変位検出の誤差をリセットすることができるので、効率よい操作入力が可能となる。
【0085】
また、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、変位検出手段20によって検出された変位パターンと、変位パターンと特定の場所とが対応付けられた判定テーブル600とに基づいて操作判定手段30が特定の場所を判定する。
【0086】
上記構成により、判定テーブル600を変更することにより、筐体の保持方法の違い、手や指の形状の違い、操作の癖の違いなどによる判定のばらつきを吸収することができるので、携帯電話端末を利用シーンごとに柔軟に適合させることができる。
【0087】
また、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、操作判定手段30による判定結果を提示する判定結果提示手段70を備える。
【0088】
上記構成により、利用者が指示による筐体の変位を操作判定手段30がどう判定したかを利用者にフィードバックすることができるので、操作が誤って判定されているのではないかという利用者の不安を減少させることができる。また、どのように操作すれば正確に判定されるかを利用者が短時間に学習できるという効果もある。
【0089】
また、本発明の実施の形態2における携帯電話端末2は、図11に示すとおり、基準位置検出手段40を起点としてそれぞれの特定の場所を終点とするベクトルの方向が特定の場所ごとに大きく異なるよう基準位置検出手段40が配置されている。たとえば、基準位置検出手段40から第1の特定の場所81へ向かうベクトルと、基準位置検出手段40から第3の特定の場所83へ向かうベクトルとは90度以上異なる方向を向いている。
【0090】
上記配置により、利用者が指を基準位置から特定の場所へ移動するときに筐体に生じる変位パターンが特定の場所ごとに互いに大きく異なるので、操作判定手段30が特定の場所を判定する際の誤りが少なくなり、利用者の指示をより正確に判定できる。
【0091】
なお、本発明の実施の形態において変位検出手段は筐体の角速度もしくは加速度を検出するものとしたが、筐体の変位を示すパラメータを検出するものであればどのようなものでもよく、たとえば変位の速度、変位の距離、角加速度を検出するようにしてもよい。
【0092】
なお、本発明の実施の形態において変位検出手段として角速度センサ、加速度センサを用いる例を説明したが、これに限るものではなく、たとえばイメージセンサで筐体の外部のイメージを取得することによって筐体の変位を検出するようにしてもよいし、ストラップなど筐体に付属する別筐体との間の相対的な変位を検出するようにしてもよいし、筐体外部へ音波や電磁波を放出してその反射波に基づいて筐体の変位を検出するようにしてもよいし、筐体と筐体外部の物体との静電容量に基づいて筐体の変位を検出するようにしてもよい。
【0093】
なお、本発明の実施の形態において特定の場所は筐体の同一面上に配置されているものとしたが、これに限るものではなく、互いに異なる面上に特定の場所を複数配置するようにしてもよい。
【0094】
なお、本発明の実施の形態において操作判定手段は変位検出手段による検出結果に基づいて常に判定処理を行うようにしたが、特定の場所が指示されてから所定時間経過した後は操作判定手段の判定処理を休止するようにしてもよい。このように構成することにより、操作入力以外による筐体の変位を操作入力であると誤認識する不具合が防げる。このとき、基準位置の指示をトリガーとして操作判定手段の判定処理の休止状態が解除されるようにすれば、操作入力の最初に変位検出の起点となる基準位置を利用者が必ず指示することになるので、操作判定手段が操作入力開始後の利用者の指示を正確に判定することができる。
【0095】
なお、本発明の実施の形態2において基準位置検出手段はボタン等で構成するものとしたが、基準位置が指示されたことが検出できるものであれば、機械的手段、電気的手段、静電的手段、光学的手段をはじめ、どのような手段を用いて検出するものであってもよい。また、基準位置検出手段は特定の場所と筐体の同一面上にあるものとして説明したが、これに限るものではなく、特定の場所と異なる筐体面上に配置してもよい。このとき、基準位置検出手段は特定の場所を指示する指と同一の指で容易に指示できる位置に配置すれば、利用者が別の指で基準位置を指示することによって操作判定手段が特定の場所の判定を誤るといった事態を避けることができるので、本発明を好適に実施できる。
【0096】
なお、本発明の実施の形態2において操作判定手段は基準位置が指示された場合に以前の判定結果を無効と判定するものとしたが、特定の場所が指示されてから所定時間以上経過した後に基準位置が指示された場合は以前の判定結果を無効と判定しないようにしてもよい。このように構成することにより、たとえば利用者が操作を一旦中断した後、操作を再開しようと基準位置を指示した場合に操作判定手段が以前の判定結果が無効であると誤って判定してしまう不具合が防げる。
【0097】
なお、本発明の実施の形態2において操作判定手段は、以前の判定結果が無効であると判定した場合に、基準位置が指示されたことを表す「基準位置」を判定結果として出力するようにしたが、基準位置が指示された場合とは別のシンボルを出力するようにしてもよい。
【0098】
なお、本発明の実施の形態2において判定結果提示手段は特定の場所に対応する場所を点灯させることにより判定結果を提示するものとしたが、指示された特定の場所が認識できる方法で提示すればどのような方法であってもよく、たとえば特定の場所の識別子を筐体上の所定の場所に表示するようにしてもよいし、どの特定の場所が指示されたかを筐体上の所定の場所に矢印等で表示するようにしてもよい。このように構成すれば、特定の場所ごとに判定結果を提示するための部品を配置する必要がないので筐体のさらなる小型化が可能となる。また、光以外の手段、たとえば振動や音声で判定結果を提示することによって利用者が操作位置を注視しなくても判定結果を認識できるようにしてもよい。
【0099】
なお、本発明の実施の形態2において判定テーブルの切替方法については具体的な説明を省略したが、たとえば利用者がどのように筐体を保持しているかを筐体に備えた光学センサや接触センサ等のセンサで検出した結果に基づいて判定テーブルを切り替えるようにしてもよい。また、基準位置検出手段を筐体上の異なる2箇所以上に配置し、いずれの基準位置検出手段が指示されたかに基づいて利用者が筐体をどのように保持しているかを判定し、判定テーブルを切り替えるようにしてもよい。このように構成すれば、利用者は筐体を持ち替えるごとに手動で判定テーブルを切り替える煩わしさから解放される。また、筐体の変位の特徴から利用者が筐体をどのように保持しているかを判定する方法も考えられる。
【0100】
なお、本発明の実施の形態において操作判定手段は予め定められた筐体の変位の条件、または筐体の変位と標準的な変位との尤度に基づいて特定の場所を判定するとしたが、これに限るものではなく、ニューラルネットワーク等(たとえば多層パーセプトロン)を用いて筐体の変位から特定の場所を判定するようにしてもよい。さらに、利用者による基準位置の指示(判定結果が誤りであることを表す指示)を負の強化信号として用いることにより、筐体の変位と特定の場所との対応を学習させるようにしてもよい。
【0101】
なお、本発明の実施の形態ではリモートコントローラおよび携帯電話端末に本発明を適用した例を説明したが、これに限るものではなく、利用者が保持した状態で筐体の特定の場所を指示することで操作入力を行う電子機器であればどのようなものでもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の携帯型入力装置は、キーボタンやスイッチ等の部品を省いた簡単な構成で操作入力を行うことができるという効果を有し、利用者が保持した状態で入力を行う入力装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラの概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラの詳細構成図
【図3】本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラの外観図
【図4】本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラの操作を説明するための図
【図5】本発明の実施の形態1におけるリモートコントローラの動作を説明するための図
【図6】本発明の実施の形態1における操作判定手段の処理手順を表す第1のフローチャート
【図7】本発明の実施の形態1における操作判定手段の処理手順を表す第2のフローチャート
【図8】本発明の実施の形態1における操作判定手段の動作例を説明するための図
【図9】本発明の実施の形態2における携帯電話端末の概略構成図
【図10】本発明の実施の形態2における携帯電話端末の詳細構成図
【図11】本発明の実施の形態2における携帯電話端末の外観図
【図12】本発明の実施の形態2における変位パターンの内容を説明する図
【図13】本発明の実施の形態2における判定テーブルの内容を説明する図
【図14】本発明の実施の形態2における操作判定手段の処理手順を表す第1のフローチャート
【図15】本発明の実施の形態2における操作判定手段の処理手順を表す第2のフローチャート
【符号の説明】
【0104】
1 リモートコントローラ
10 携帯型入力装置
100 操作面
101 上面
2 携帯電話端末
20 変位検出手段
200 変位検出結果
21 角速度検出手段
210 角速度検出結果
22 加速度検出手段
220 加速度検出結果
30 操作判定手段
300 第1の判定結果
31 変位パターン蓄積手段
310 変位パターン
3100,3101,3102,3103 セル
40 基準位置検出手段
400 基準位置検出結果
50 判定結果蓄積手段
500 第2の判定結果
60 判定テーブル保持手段
600 判定テーブル
70 判定結果提示手段
71 第1のLED
72 第2のLED
73 第3のLED
79 発光制御手段
80 指
81 第1の特定の場所
810 第1の目印
82 第2の特定の場所
820 第2の目印
83 第3の特定の場所
90 機能実行手段
91 制御命令送信手段
92 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者によって保持される携帯型入力装置において、
保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段によって検出された変位に基づいて、前記特定の場所を判定し、判定結果を出力する操作判定手段と、を有する携帯型入力装置。
【請求項2】
筐体のあらかじめ定められた基準位置が指示されたことを検出する基準位置検出手段をさらに備え、
前記操作判定手段は、前記基準位置検出手段の検出結果と、前記基準位置が指示された後に前記変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、前記特定の場所を判定する請求項1記載の携帯型入力装置。
【請求項3】
前記操作判定手段は、前記基準位置が指示されたことを前記基準位置検出手段が検出すると、前記基準位置が指示される以前の判定結果が無効であると判定する請求項2記載の携帯型入力装置。
【請求項4】
前記操作判定手段は、前記変位検出手段によって検出された変位と、変位と特定の場所とが対応付けられたテーブルとに基づいて、前記特定の場所を判定する請求項1記載の携帯型入力装置。
【請求項5】
利用者によって保持される携帯型入力装置において、
保持される筐体の特定の場所を指示するときに筐体に生じる変位を検出する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて検出された変位に基づいて、前記特定の場所を判定する第2のステップと、
前記判定結果を出力する第3のステップと、を有する携帯型入力装置における入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−97551(P2010−97551A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269760(P2008−269760)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】