説明

携帯型地上デジタル放送受信機及びその受信方法

【課題】 携帯型デイジタル放送受信機は、バッテリーの消費の低減のため、電源オフのとき、受信機内の未使用機能の電源を完全に落とす処理がなされる。一方、電源投入時、まず受信したデータを解析して初期化データを入手し、次段のブロックの初期化を行うため、データパスにおける前のブロックの初期化が終わって正常動作となるまで後ブロックの初期化用データが得られず、装置全体としての起動時間が長くなるという課題があった。
【解決手段】 地上デジタル放送を受信した際に入手した、特に復調部103と音声複合部105、映像複合部107に対する初期化パラメータを蓄積する不揮発性記憶部112を設ける。次回の電源投入時には、放送されているデータに含まれるパラメータを入手する前に、不揮発性記憶部112に記憶している前回受信時のパラメータを利用して初期設定手段114aが初期化を実施することで、システム全体の起動処理を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、起動時間を短縮する機能を具備した携帯型地上デジタル放送受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像・音声等の放送メディアをデジタル化し、マルチメディアとして柔軟に扱うことが一般化している。それに伴い、これまでにアナログ技術で製品化されてきた様々な機器がデジタル化され、「デジタル家電」として、従来のアナログ機器をリプレースする大きな市場を作り出している。
【0003】
中でも、地上デジタルテレビジョン放送の受信機は、全世帯のほぼ100%に普及している地上アナログテレビをリプレースするものと見られている。
【0004】
地上デジタルテレビジョン放送では複数の階層で伝送を行うことが可能であり、その一つの階層を利用して、携帯型地上デジタル放送受信機を用いた携帯受信・移動受信が行われることになっている。例えば、携帯電話機と一体化したテレビ受信機などが想定されており、外出先で気軽にテレビを楽しむことができる。
【0005】
このような携帯型地上デジタル放送受信機も含め、携帯型の機器では、一般的にバッテリー駆動を行う。限られたバッテリー容量に対して、消費電流を減らして駆動時間をできるだけ長くすることや、充電回数をできるだけ減らすことを目的とし、機器の中で現在使用していない機能ブロックの電源を完全に落とす処理が一般的に実装されている。
【0006】
例えば、地上デジタル放送受信機能を有する携帯電話の場合、通常の電話待ち受け時間をできるだけ長くするために、テレビ視聴時以外は地上デジタル放送受信に関連する機能ブロックの電源をすべて落とす制御が考えられる。
【0007】
ところで、マルチメディアを扱うデジタル家電では、同様な目的で利用されてきたアナログ機器と比較して、一般的に装置の初期起動が遅くなる傾向がある。その理由は、マルチメディアとしてデジタル化されているデータが伝送効率や保存効率を考慮するために圧縮されていたり、複数種のデータを多重するために付加情報が追加されていたり、データの並び替えなどが行われていることがほとんどであり、アナログデータと異なり、その一部分を切り取っただけではデータの内容が確認できないためである。このようなデータをもとのデータへ復元するためには、ある程度のデータ量を蓄積し、復元するための鍵となる情報を準備する必要がある。
【0008】
また、デジタル家電は、ユーザーインタフェースが高度であり利便性が高くなっている反面、一般的にシステムが複雑となる傾向があり、システム全体を制御するソフトウェアの規模が大きくなるデメリットがある。その結果、ある機能を起動させるまでに経由しなければならない処理ステップ数が多くなり、機能を有効化するまでの時間がかかってしまうという問題もある。
【0009】
殊に携帯型の機器の場合、前述のように未使用機能ブロックの電源を落とす制御が行われるため、目的の機能が最終的に利用できるようになるまでには非常に長い時間がかかってしまう。
【0010】
このような状態に対して、ユーザーの立場から見ると、起動にかかる時間の絶対値そのものが長いことも問題であるが、これまでに利用してきたアナログ機器の起動時間とのギャップが、もっとも不満に思える部分であると考えられる。
【0011】
このようなデジタル機器特有の問題を解決することを目的として、例えばデジタル放送の受信機の場合、映像信号における復元情報をかつての情報を元に予測し、画像信号が復元できない時間を短縮する方法が示されている。(例えば、特許文献1参照)
【0012】
【特許文献1】特開2001−69414号公報(第9頁、第1図)
【0013】
しかし、特許文献1における従来の起動時間短縮方法では、単に一つの機能ブロック(映像信号復号処理)のみの起動時間を短縮することが主眼であり、ユーザーが体感するはずであるシステム全体としての起動時間全体を効率化するには不十分であるといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の携帯型地上デジタル放送受信機は、以上に説明したように、起動後、目的の機能が最終的に利用できるようになるまでには非常に長い時間がかかってしまうという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置全体としての起動時間を短縮した携帯型地上デジタル放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の携帯型地上デジタル放送受信機は、受信したデジタル放送波を復調して復調信号を出力する復調部と、前記復調信号から受信した制御パラメータに基づいて前記復調信号を音声デジタル信号と映像デジタル信号に分離する分離部と、前記分離部から出力された音声デジタル信号から得た制御パラメータに基づいて前記音声デジタル信号を音声信号に復号する音声復号部と、前記分離部から出力された映像デジタル信号から得た制御パラメータに基づいて映像信号に復号する映像復号部と、前記復調部と分離部と音声復号部と映像復号部に電源を供給する電源部とを有する地上デジタル放送受信手段、
前記分離部、又は前記音声復号部、又は前記映像復号部の制御パラメータであって、前記地上デジタル放送受信手段により得られた最新のものを記憶する不揮発性記憶手段、
前記電源部の電源投入時に前記不揮発性記憶手段に記憶した前記制御パラメータを読み出して前記復調部と分離部と音声復号部と映像復号部とに初期設定する初期設定手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の携帯型地上デジタル放送受信機によれば、前回の電源切断前の正常受信時に入手したパラメータを保存しておき、今回の起動時にそれを適切な手順にて再利用することにより、起動時間を短縮されている。その結果、バッテリー駆動装置で一般的に行われている未使用機能ブロックの電源断制御を行った場合においても機能の再起動が短時間で行うことが可能になる。結果として、装置利用時の利便性を保ったままバッテリーの駆動時間を延ばすことが可能となり、ユーザの利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における、携帯型地上デジタル放送受信機1の構成を示すブロック図である。
携帯型地上デジタル放送受信機1は、地上デジタル放送波を受信するためのアンテナ101と、アンテナ101が受信した信号の周波数を変換し所定のバンド幅で選択的に増幅する受信部102と、受信部102が出力した信号を復調してデータ列化したデジタル信号を出力する復調部103と、復調部103が出力したデジタル信号を音声デジタル信号、画像デジタル信号、その他の制御デジタル信号などに分離する分離部104を備えている。
【0018】
更に、前記各デジタル信号から音声信号を得る音声復号部105と、音声信号を音波として出力する音声出力部106と、前記各デジタル信号から映像信号を得る映像復号部107と、文字放送データやチャンネル表示などの文字データを提示するための提示表示部108と、映像信号により画像を表示する映像・画像出力部109と、前記各部間の信号の授受を行うためのシステムバス110と、図示しないユーザがテレビ放送を見るための操作を入力するキーなどを含む操作部111と、後述する制御パラメータを、電源断後も記憶し次回の電源投入時に記憶を再生する不揮発性記憶部112と、通常の制御を行っている時に用いる主記憶部113と、以上に説明した各種の制御を実行する制御・演算部114とを備えている。
【0019】
次に、携帯型地上デジタル放送受信機1の動作について説明する。図1において、携帯型地上デジタル放送受信機1は、制御・演算部114により全体が制御されている。携帯型地上デジタル放送受信機1を構成する上記説明の各処理部は、システムバス110を経由して制御・演算部114と接続され制御されている。ここで、便宜上システムバス110を共通化して記載しているが、もちろんすべての処理部が同一のシステムバスを利用する必要はなく、複数のシステムバスが存在していても同様に動作させることができる。また、システムバス110の物理的な形態は、パラレルバス/シリアルバスのどちらであるかは
本発明における本質的な問題ではないため、図1においては単一の線で表現するものとする。また、便宜上、制御・演算部114を1つのブロックとして表現しているが、物理的には複数のプロセッサが存在し、相互連携を採りながら全体の制御を行っている構成であってもかまわない。
【0020】
受信部102では、アンテナ101より入力されたUHF帯の地上デジタル放送波を、復調部103で処理が行える周波数帯へダウンコンバートする。復調部103は、受信部102によってダウンコンバートされたOFDM(Orthogonal Frequency Division Modulation:直交周波数分割多重)信号に対し、OFDM復調処理を行うことによってTS(TransportStream)へ変換し、分離部104への出力を行う。復調されたデータ列であるTSは、映像信号・音声信号・データ放送用データ、制御パラメータ(後述)など、複数のメディアがパケット多重された形式となっている(図示せず)。
【0021】
分離部104では、復調部103によって復調されたTSをメディア種別(ここで言うメディア種別とは音声、映像、データ放送用画像、制御パラメータ、などの信号である)ごとにパケットを分離し、それぞれのメディアに該当する処理部への受け渡しを行う。即ち、音声に関するパケットは音声復号部105へ転送され、復号処理が行なわれた後、音声出力部106により音声が再生される。同様に、映像に関するパケットは映像復号部107へ転送され、復号処理が行なわれた後、提示・表示部108においてデータ放送による静止画像との画面合成が行なわれ、最終的に映像・画像出力部109にて表示される。
制御パラメータについては次に説明するように処理される。
【0022】
即ち、携帯型地上デジタル放送受信機を制御するための制御パラメータとデータ放送用のデータに関しては、システムバス110を経由して、主記億部113や制御・演算部114に転送される。データ放送用のパケットは、カルーセル伝送と呼ばれる繰り返し伝送方式により、TS内部に周期的に同一内容が多重されているため、一定時間のパケットを蓄積し、結合・解析を行う事によって、どの時点で放送の受信を開始したとしても同じ情報を受け取ることが可能である。そこで、制御・演算部114が受信パケットをチェックし、カルーセル1周期分のデータ量が正常に受信されたことを確認した後、有意なデータに変換する。変換したデータには、提示表示部108において映像データと画面合成させ、映像・画像表示部109に表示することができる情報のように利用者の目に見える情報だけではなく、様々な情報を含めることが可能となっている。図1の分離部104、音声復号部105、映像復号部107などはデジタル信号を処理する上での諸設定条件を設定されることによって正常な処理を行うことができる。この設定条件を制御パラメータと言う。
【0023】
本発明の動作を説明する前に、まず、携帯型地上デジタル放送受信機1を動作させるための、一般的な起動手順を図3のフローチャートに示す。このフローは制御・演算部114において実行される。ここで、理解を助けるために、あらかじめ視聴を行う放送局は決定しているものとする。地上デジタルテレビジョン放送の場合、物理チャンネル番号と放送局とは一対一対応をしているため、この段階で受信部102への設定パラメータ(この場合は受信周波数)は確定している。
【0024】
まずS101の処理にて、すべての機能ブロックに対して起動開始指示を実施する。受信部102、復調部103に関しては、処理S102において、視聴を行う放送局に関するパラメータの設定を行い、受信動作を開始する。
次に、制御・演算部114は復調部103の同期が確立しているか否かを確認する(S106)。そしてOKならS504で分離部の起動を開始する。即ち、復調部から送られてくるTSデータを解析して分離部へ初期化パラメータを設定する(S505)。このステップS505は解析動作を含んでいるために他のステップに対して5乃至10倍の処理時間を必要とする。そして分離開始がOKなら、次に映像・音声復号部の起動を開始する(S507)。即ち、分離部から送られてくるESデータを解析して映像・音声復号部へ初期化パラメータを設定する(S508)。このステップS508も解析動作を含んでいるために他のステップに対して5乃至10倍の処理時間を必要とする。そして復号部の初期化が確認された(S109)後、映像音声の出力を開始する(S110)。
【0025】
このように、地上デジタル放送では、分離部104、復号部105、107の各機能ブロックを放送内容に合わせて動作させるようにするために、必要なパラメータはすべてその機能ブロックが受信するデータに含まれて受信する仕組みとなっている。すなわち、基本的には前段の機能ブロックから正しいデータが到達するまでは初期化が行えず、しかも前段の処理には解析動作が含まれているために、起動にはある程度の長い時間がかかってしまう。
しかし、携帯受信向けの地上デジタル放送の場合、固定受信向け放送と比較して自由度が限られている。例えば放送の伝送帯域が狭いことによる制約や、小形化を優先した受信端末の機能的な制約によるものである。その結果、パラメータそのものの数は複数存在するが、実際の放送によって運用(利用)されるパラメータが、固定受信向け放送と比較して限定されている。このことは、すなわち同一パラメータを利用する機会が多くなることを意味する。実際、常に固定パラメータで運用を続けることも多い。
したがって、従来の制御・演算部114の処理(図3)を、図2のフローチャートのように起動手順を改めることにより、システム全体の起動時間を短縮する。
【0026】
即ち、図2は図1の動作を示すフローであり、まずS101の処理にて、すべての機能ブロックに対して起動開始指示を実施する。もちろん、時間的にすべて厳密に同時刻である必要はなく、例えば制御・演算部114がクロック信号の速度で順を追って処理を行えば良い。受信部102、復調部103に関しては、処理S102において、視聴を行う放送局に関するパラメータの設定を行い、通常通りの受信動作を開始する。
【0027】
次に、制御・演算部114は、S103の処理において不揮発性記憶部112より前回正常受信時の制御パラメータを読み出す(不揮発性記憶部112に記憶させる処理に付いては後述する)。ここで読み出す制御パラメータは、通常は各機能ブロック(分離部、音声/映像復号部)が現在受信中のデータを解析して、あるいは受信データから取り出して得られる結果と同種のものである。厳密には、現時点で放送されている制御パラメータとは異なる可能性があるが動作実績のある値であり、機能ブロックそのものに対してエラーを発生させる恐れのある値ではない。
【0028】
制御・演算部114の内部の初期設定手段114aは、S103の処理で得られた前回正常受信時の制御パラメータを元に、処理S104、S105において分離部104、音声復号部105、映像復号部107に対する初期化パラメータを設定する。図3の一般的な処理手順と異なり、この時点では、復調部103は必ずしも同期が確立していなくとも良い。
【0029】
各機能ブロック(分離部、音声/映像復号部)への初期化処理が完了した後、処理S106において復調部103の同期確認を行う。この際、復調部103の初期化から同期確認までの時間に別の処理を実施しているため、図3における一般的な処理手順と異なり、同期確立までの確認ループ回数が減る(S503でNGとなって再確認を繰り返す回数よりも、S106でNGとなって再確認を繰り返す回数の方が少ないという意味)ことが期待される。
【0030】
ステップS106で復調部103の同期確立が確認できた後、処理S107にて、分離部104が正しく分離動作を開始しているかどうか確認を行う。復調部103においては、自身の同期が確立していさえすれば、制御・演算部114がその状態を確認していなくとも正しいデータを分離部104へ出力することが可能である。したがって、処理S103において読み出した前回パラメータが現時点でのパラメータと一致した場合、制御・演算部114の初期設定手段114aが処理S107を開始した時点ではすでに分離部104は正常動作をしているため、素早く次の処理へ進むことが可能となる。現在のパラメータとの差異が検出された場合(ステップS107でNG)のみ、S108の処理によって一般的な手法と同様に、受信した新たな制御パラメータを用いて初期化手続きを再実行することで、次の処理へ進むことが可能となる。なおこのとき新たな制御パラメータをステップS90で不揮発性記憶部112へ記憶する。このようにして不揮発性記憶部112には常に最新の制御パラメータが記憶されている。
【0031】
その後も同様に、処理S109にて、音声復号部105および映像復号部107が正しく復号動作を開始しているかどうか確認を行う。分離部104においては、初期化されたパラメータが実際に得られているデータと整合がとれてさえおれば、制御・演算部114がその状態を確認していなくとも正しいデータを音声復号部105、映像復号部107へ出力することが可能である。したがって、処理S109において読み出した前回の制御パラメータが現時点での制御パラメータと一致した場合、制御・演算部が処理S109を開始した時点ではすでに音声復号部105および映像復号部107は正常動作をしているため、素早く次の処理へ進むことが可能となる。現在のパラメータとの差異が検出された場合(S109でNG)のみ、S110の処理によって一般的な手法と同様に、受信した新たな制御パラメータを用いて初期化手続きを再実行することで、次の処理へ進むことが可能となる。なおこのとき新たな制御パラメータをステップS91で不揮発性記憶部112へ記憶する。このようにして不揮発性記憶部112には常に最新の制御パラメータが記憶されている。以上の説明では、分離部用制御パラメータと復号部用制御バラメータとを区別せずに、説明したが、もちろん両者は異なっており、不揮発性記憶部にはそれぞれが区別して記憶されていることは言うまでもない。
なお、図2のステップS504、ステップS107、ステップS108、はこの発明に言う分離手順である。図2のステップS507、ステップS109、ステップS110、はこの発明に言う音声復号手順と映像復号手順である。ステップS90とS91はこの発明に言う記憶手順である。図2のステップS103、ステップS104、ステップS105、はこの発明に言う初期設定手順である。
【0032】
以上、図2のフローに示した手法により、一連の起動手順において前回正常受信時に記憶した制御パラメータを、次回の起動時に読み出して各機能ブロックの初期化処理を先行実施することにより、図3の一般的な処理のようにシーケンシャルに起動を行う方法と比較して、効果的にシステム全体を制御し、起動時間全体を短縮できる利点がある。この短縮効果について説明するため図4に時間比較タイムチャートを示す。図4では図2のフローの処理時間経過を202で、図3のフローの処理時間経過を203で示している。又タイムチャート上に示した符号は図2,図3のフローの対応するステップを示している。図2のフローは図3のフローに比してステップS103と104と105の3つのステップSが増えているが、ステップS505と508が減少しており、しかも減少したステップは解析動作を含むステップであるため時間短縮効果が現れる。
もし現在受信を行っているパラメータが前回正常受信時のパラメータと異なっていた場合でも、一般的な処理と同様にデータを解析し、パラメータを設定し直せば良いだけで、時間短縮効果は得られないが、携帯型地上デジタル放送受信機1全体が起動できなくなるという問題は発生しない。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1においては、前回正常受信時のパラメータを用いることによりシステム全体の起動時間を短縮した。しかし、もし、今回の受信開始が前回最後の受信から日数が経過している場合、同じ日の再受信や数日前に受信していた場合と比較するとパラメータが変更されている可能性が大きくなってしまう。同じ日の場合においても、時間差が大きくなるほどパラメータが変更されている可能性が高まる。そこで、もし視聴を行う予定が予めわかっている場合(例えば受信予約設定をしているなど)、受信開始時刻の直前に正常パラメータを入手することにより、実施の形態1の場合と比較してより精度の高い初期化設定を行うことが可能となる。
【0034】
例えばテレビ放送を視聴する場合、あらかじめ目的の番組が決まっており、その番組が何時から始まるかが既知であることが多い。そこで、利用者は携帯型地上デジタル放送受信機1に対してあらかじめ視聴予定の番組を予約しておく。携帯型地上デジタル放送受信機1は、予定時刻が近づいた時点(例えば5分前)において、図2に示す一連の起動処理を自動的に行い、記憶している制御パラメータによる受信開始の後に、現在の正常パラメータを入手(変わっていた場合)しておく。その結果を不揮発性記憶部112に保存した後、いったん各機能ブロックの処理を停止する。
【0035】
その後、実際に番組を視聴する時間になった際に、制御・演算部114は実施の形態1と同様に、図2のフローチャートに従い各機能ブロックの起動を開始する。この際、不揮発性記憶部112に保存されている前回正常受信時のパラメータは、先ほど直前に入手したばかりのものである。よって、パラメータの保存時期を限定しない場合と比較すると信憑性が大きく増すこととなり、結果として図2の処理S108、処理S110によるリカバリー処理を実施する機会が減り、システム全体が素早く起動することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明によれば、前回正常受信時に入手したパラメータを保存しておき、それを適切な手順にて再利用することにより、携帯型地上デジタル放送受信機1の起動時間を短縮させることが可能になる。その結果、バッテリー駆動装置で一般的に行われている未使用機能ブロックの電源断制御を行った場合においても機能の再起動がスムーズに行うことが可能になる。結果として、装置利用時の利便性を保ったままバッテリーの駆動時間を確保することが可能となり、製品の付加価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による実施の形態1および2における、携帯型地上デジタル放送受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の携帯型地上デジタル放送受信機の起動手順を示すフローチャートである。
【図3】携帯型地上デジタル放送受信機を動作させるための一般的な起動手順を示すフローチャートである。
【図4】図2のフローの時間短縮効果を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯型地上デジタル放送受信機、 101 アンテナ部、
102 受信部、 103 復調部、 104 分離部、
105 音声復号部、 106 音声出力部、 107 映像復号部、
108 提示表示部、 109 映像・画像出力部、
110 システムバス、 111 操作部、 112 不揮発性記憶部、
113 主記憶部、 114 制御・演算部 114a 初期設定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したディジタル放送波を復調してデータ列化した復調信号を出力する復調部と、前記復調信号から抽出した制御パラメータに基づいて前記復調信号を音声デイジタル信号と映像デイジタル信号に分離する分離部と、前記分離部から出力された制御パラメータに基づいて前記音声ディジタル信号を音声信号に復号する音声復号部と、前記分離部から出力された制御パラメータに基づいて映像信号に復号する映像復号部と、前記復調部と分離部と音声復号部と映像復号部に電源を供給する電源部とを有する地上デジタル放送受信手段、
前記分離部、又は前記音声復号部、又は前記映像復号部の制御パラメータであって、前記地上デジタル放送受信手段により得られた最新のものを記憶する不揮発性記憶手段、
前記電源部の電源投入時に前記不揮発性記憶手段に記憶した前記制御パラメータを読み出して前記分離部と音声復号部と映像復号部とに初期設定する初期設定手段とを備えたことを特徴とする携帯型地上デジタル放送受信機。
【請求項2】
任意の受信開始時刻と任意の放送チャンネル番号とを設定する予約手段、
前記受信開始時刻に到達する所定時間前に前記携帯型地上ディジタル放送受信機の前記電源を自動的に投入する事前起動手段を備え、前記受信時刻前に前記初期設定手段が前記分離部と音声復号部と映像復号部とを初期設定することを特徴とする請求項1に記載の携帯型地上デジタル放送受信機。
【請求項3】
前記所定時間は10秒以上3分以下であることを特徴とする請求項2に記載の携帯型地上デジタル放送受信機。
【請求項4】
受信したディジタル放送波を復調してデータ列化した復調信号を出力する復調手順と、
前記復調信号から抽出した制御パラメータに基づいて前記復調信号を音声デイジタル信号と映像デイジタル信号に自動的に分離する分離手順と、
前記分離部から出力された制御パラメータに基づいて前記音声ディジタル信号を音声信号に自動的に復号する音声復号手順と、
前記分離部から出力された制御パラメータに基づいて映像信号に自動的に復号する映像復号手順と、
前記分離部と音声復号部と映像復号部に供給する電源を制御する電源制御手順とを含む地上デジタル放送受信機の受信手順において、
前記分離部、又は前記音声復号部、又は前記映像復号部の制御パラメータの内、最新のものを不揮発性記憶手段に自動的に記憶する記憶手順と、
前記電源制御手順による電源投入時に前記不揮発性記憶手段に記憶した前記制御パラメータを読み出して前記分離部と音声復号部と映像復号部とに自動的に初期設定する初期設定手順とを含むことを特徴とする携帯型地上デジタル放送受信機の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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