説明

携帯型注入ポンプにおける閉塞を検出する方法および装置

【課題】流体の制御送達のために改良されたポンプ、貯槽、および貯槽ピストンを提供する。
【解決手段】モータは、その動作に応答してプランジャ滑動部を前送りするように構成される、駆動ねじのような駆動部材に動作可能に接続されている。プランジャ滑動部はピストンに着脱可能に接続されている。薬物注入ポンプの中の閉塞を自動的に検出する方法、システム、および製造品を提供する。注入ポンプへの電流を測定する。1つまたは複数の変数の測定に基づいて、注入ポンプは、システムの中に閉塞が存在するかどうかを検出する。閉塞を検出する方法は動的でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に患者への制御された薬物送達に使用されるような注入ポンプのの改良に関する。さらに具体的には、本発明は、注入ポンプシステムの流体送達通路中の流体圧力および閉塞を検出する際のエラーを検出するように改良された方法および装置に関する。
【0002】
本願は、2003年10月22日に出願された米国特許出願第10/691,187号の優先権を主張する一部継続出願であり、2000年10月27日に出願された米国特許出願第09/698,783号の優先権を主張する一部継続出願であり、1999年10月28日に出願された米国特許出願第09/429,352号の優先権を主張するものであるとともに、1998年10月29日に出願された米国特許仮出願第60/106,237号の優先権を主張するものであり、これらの全ては引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
インシュリンのような処方薬物を患者に送達または投与する際に使用する注入ポンプ装置およびシステムが、医療技術では比較的よく知られている。1つの形態では、このような装置は、注入管系および関連するカテーテルまたは注入セットを介して患者に投与する処方薬物を担持する注射器または貯槽を収納するように構成された比較的コンパクトなポンプ筐体を備えている。
【0004】
注入ポンプは、薬物を使用者に投与するために貯槽ピストンをモータ駆動式に前送りする親ねじ組立体を経由して接続された小型駆動モータを具備している。プログラム可能な制御装置は、長時間にわたって厳密に制御されかつ精確な薬物の送達を実現するために、持続的にまたは定期的な間隔で駆動モータを動作させることができる。このような注入ポンプはインシュリンおよび他の薬物を投与するのに使用される。その典型的なポンプ構成が、引用により本明細書に組み込まれる米国特許第4,562,751号、同第4,678,408号、同第4,685,903号、同第5,080,653号、および同第5,097,122号に図示されかつ記載されている。
【0005】
上で説明した一般的な種類の注入ポンプは、長時間にわたる薬物または他の流体の精確な送達に関して多大な利点および利益を与えてきた。注入ポンプは、極めてコンパクトであるばかりでなく耐水性でもあるように構成可能であるため、例えば、ベルトクリップなどを使って使用者が携帯できるように構成してもよい。その結果として、いくつかの場合ではウォータースポーツを行うことも可能であることを含めて、使用者の可動性または生活様式を大きく制約することもなく、重要な薬物を、精確かつ自動的な様態で使用者に送達可能となる。
【0006】
これらのポンプは、モータに接続された親ねじを使用する駆動システムを多くの場合組み込んでいる。モータは、直流、ステッパ、またはソレノイドなど様々であることが可能である。これらの駆動システムは、注射器または貯槽ピストンを軸方向へ変位させ、それによって薬物を使用者に投与する。電動式駆動装置は、従来から知られた手段によって所定量の薬物を送達するように電子制御可能であるので有効である。
【0007】
これらのポンプシステムの動作では、実質的に貯槽中の全流体の投与が完了したとき、貯槽ピストンが完全に前送りされる。これに対応して、モータ親ねじの軸方向変位も典型的に完全に変位される。流体を充填した新たな貯槽を挿入するためには、親ねじをその元の位置に戻すことが必要である。したがって、親ねじを巻き戻しまたははリセットしなければならない。
【0008】
直流モータおよびステッパモータは、ソレノイドモータよりも、駆動システムの電子的な巻き戻しが可能な速度で典型的に動作させやすい点で有効である。一方で、ソレノイド型の駆動システムは、多くの場合手動でリセットしなければならず、その結果ポンプ筐体の耐水性構造をより難しいものにしている。
【0009】
親ねじ駆動システムは、一般にモータ外部にあるいくつかの歯車を使用する。図1は、従来から知られているそのような親ねじの配置を示す。モータ101は、駆動ナット103と係合されたねじ山を有する親ねじ102を駆動する。したがって、親ねじ102の回転力は駆動ナット103に伝達され、この回転力はナットを軸方向dへ移動させる。駆動ナット103は、掛止アーム110によって貯槽ピストン104に固着されるので、このピストンも同様に、方向dに平行な軸方向d'へ強制されることによって、流体を貯槽105から注入セット106の中へ投与する。親ねじ102は、横方向に支持する軸受に取り付けられる。親ねじ102は、この軸受を貫通して閉塞検出器と接触する。1つの知られた検出器は「オン/オフ」圧力リミットスイッチを使用する。
【0010】
もし注入セット106の管系に閉塞が発生すれば、ピストン104が前進しようとするときに、背圧が貯槽105中で増大する。増大した背圧を押し返すピストン104の力は、検出器を押しやるように親ねじ102の軸方向の力をもたらす。検出器が圧力リミットスイッチであれば、圧力リミットスイッチの設定点を超える軸方向の力は、このスイッチを閉ざすことによって、電気リード線を介して電気信号がシステムの電子機器に出力される。次いで、これによってシステム警報を出力することができる。この組立体全体は、耐水性筐体107中に収容することができる。
【0011】
図2は、同様に従来から知られている異なる駆動装置および親ねじの配置を示している。この配置では、モータ201(または歯車箱が取り付けられたモータ)が、歯車202の組を駆動する駆動軸201aを有している。その場合に、トルクは歯車202から親ねじ203に伝達される。親ねじ203のねじ山は、プランジャ滑動部204中のねじ山(図示せず)と係合されている。したがって、親ねじ203のトルクは滑動部204に伝達され、このトルクは、滑動部をモータ201の駆動軸201aに平行な軸方向d'へ移動させる。滑動部204は貯槽ピストン205と接触しており、このピストンも同様に軸方向d'へ移動するように強制されることによって、流体を貯槽206から注入セット207中へ投与する。親ねじ203は、横方向に支持する軸受209に取り付けられている。親ねじ203は、この軸受を貫通して閉塞検出器と接触することができる。先と同様に、検出器が圧力リミットスイッチであれば、圧力リミットスイッチの設定点を超える軸方向の力がスイッチを閉ざすことによって、電気リード線を介して電気信号がシステムの電子機器に出力される。次いで、これによってシステム警報を出力することができる。この組立体は、耐水性筐体208中に収容することができる。
【0012】
先に留意したように、これらの親ねじ駆動システムは、モータの外部にある歯車を使用する。これらの歯車は、貯槽のピストンを駆動するのに使用される雄ねじ山を有する親ねじと組み合っている。この外部配置は、ポンプ全体のサイズを増大させるのに十分な容積を占有する。しかも、歯車および親ねじのような駆動構成要素の数が増加するとき、固有の機械的非効率性を克服するのに要するトルクも増大しうる。したがって、十分なトルクを有するモータも、結果的に多くの場合電力の増大を必要とする。
【0013】
さらに別の知られた駆動装置が図3Aおよび3Bに図示されている。貯槽301が、ユニットの筐体302中に収まっている。駆動モータ306の軸(見えていない)の上で回転駆動ねじ305によって駆動されるとき、貯槽301中の流体を押し退けるための実質的に円形のピストンヘッド304を有する細長い部材から構成されるピストン部材303も示されている。
【0014】
図3Bにより明確に示されているように、貯槽301、ピストンヘッド304、およびピストン部材303は、筐体302(図3A)中に配置される一体型ユニットを備えている。円形ピストンヘッド304は、ピストン部材303が軸方向へ移動すると、貯槽中の流体を押し退ける。ピストン部材303の後方部分は、図3Bに示したように円筒の長軸の切片のような形をしており、その後方部分が駆動ねじ305と係合する位置へ挿入されるように雌ねじ山が切られている。駆動ねじ305は、ピストン部材303の雌ねじ山と係合する直径のねじ山付きねじ歯車である。したがって、モータ306は、ピストンヘッド304を軸方向dへ変位させるために、ピストン部材303のねじ山に係合する駆動ねじ305を回転させる。
【0015】
図3Aのインライン駆動システムは、物理的によりコンパクトなサイズのポンプを実現するが、この構成に関連する問題が存在する。貯槽、ピストンヘッドおよびねじ山付きピストン部材は、一体型ユニットを構成している。したがって、薬物が枯渇したとき、このユニットを交換しなければならない。これは、その構造を占める構成要素の数によっては比較的に高価な使い捨て部品を要する。
【0016】
しかも、図3Aの駆動ねじ305およびピストンヘッド304は、耐水性ではない。貯槽、ピストンヘッド、およびねじ山付きピストン部材は着脱可能であるので、駆動ねじ305は、大気に曝されている。少しでも水分が駆動ねじ305と接触することがあれば、性能に影響するかまたは駆動不良をもたらす腐食または汚染の原因となる恐れがある。
【0017】
図3Aの構成は、ピストンヘッド304の位置検出に関連する問題をさらに惹起する。ピストン部材303は、駆動ねじ305から切り離すことができる。しかし、別の貯槽組立体が挿入されるとき、ピストンヘッド304が完全に後退した位置にあるか、もしくはどこか中間位置にあるかをシステムは検知できない。したがって、貯槽301中の薬物の欠乏程度を判定するために、ピストンヘッド304の位置を電子的に検出する手段を提供することに関する難問が呈示される。
【0018】
ポンプの構造が耐水性であることによって、動作上の問題が惹起される。使用者が、飛行機で移動するときに生じる恐れがあるように、様々な高度から移動するとき、または使用者が、ポンプを変化する大気圧に曝す他の活動に従事するとき、気密/耐水性ポンプ筐体内部と大気との間に差圧が生じる。もし筐体中の圧力が外部大気圧を超えれば、その結果生じる力が、貯槽ピストンを内方へ駆動させることによって、不要な薬物を送達してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特表平03−504208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、広範な大気圧および他の動作条件において使用者の安全な活動を保証するように改良された、コンパクトで、なおかつ耐水性のある駆動システムを構成することを目的とする。さらに、このような駆動システムで使用できるように改良された薬物貯槽ピストンを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
薬物流体を投与する改良装置を提供する。これは、流体を収容するように構成された貯槽と、貯槽のサイズを変更しかつ出口を介して流体を貯槽から放出するように構成された可動ピストンとを備えている。本発明のある態様では、貯槽およびピストンは、直線駆動部材を有するポンプ駆動システムで使用するように構成されており、ピストンは直線駆動部材に解放可能に接続することができる。
【0022】
前記ピストンは、貯槽内部に滑動自在に取り付けられ、かつその内部に流体密障壁の少なくとも一部を形成するように構成された第1部材を備えている。第1部材は、外部近位側面および外部遠位側面を有している。外部近位側面は、流体に接触するように構成され、第1剛性を有する材料から作製されている。第2部材は、第1側面および第2側面を有している。第2部材の少なくとも一部は、第1部材内部に配置されている。第2部材の第1側面は、第1部材の外部近位側面に隣接し、第1剛性よりも大きい剛性を有する材料から作製されている。
【0023】
代替の実施構成では、第2部材の第1側面は、第1部材の外部近位側面と概ね平行な離間関係にある。
【0024】
さらに他の実施構成では、第1部材の外部近位側面は、エラストマー材料から作製されるとともに、第2部材の第1側面は、ステンレス鋼またはプラスチックから作製されている。
【0025】
さらに他の実施構成では、第2部材は、実質的に第1部材内部に収容される。
【0026】
さらに他の実施構成では、第2部材は、第1部材の外部近位側面を通過して延びるとともに、貯槽内部で流体密障壁を完成するために流体と接触するように構成される。
【0027】
さらに他の実施構成では、アクチュエータを貯槽ピストンに接続する方法を提供する。電力が、プランジャ滑動部に動作可能に接続されたポンプモータに供給される。電力は、プランジャ滑動部が、貯槽ピストン空洞中に完全に挿入された位置以外の位置にあるときに供給される。プランジャ滑動部に対する軸方向の力に対応する第1値が測定される。プランジャ滑動部がピストン空洞に完全に挿入されたとき、第1値が、プランジャ滑動部に対する軸方向の力に対応する第2値を超えているかどうかが判定される。第1値が第2値を超えていると判定された後に、ポンプモータへの電力が遮断される。
【0028】
本発明のさらに他の実施構成では、注入ポンプ中の力センサにかかわる不調を検出する方法、システム、および製造品を記載する。好ましい実施形態では、モータへの電流測定値が採取される。この電流測定値に基づいて、注入ポンプは、プランジャ滑動部が貯槽中に着座したことを検出するとともに、貯槽内にプランジャ滑動部が着座していることを示す値を力センサが別個に記録するのを失敗したときに、力センサにかかわる問題を検出する。特定の実施形態では、注入ポンプは、電流測定値に基づいて平均電流を計算し、この平均電流を閾電流と比較し、かつ平均電流が閾電流を超えたときにプランジャ滑動部が貯槽中に着座したことを検出することによって、プランジャ滑動部が貯槽中に着座したことを検出する。
【0029】
他の実施構成では、エンコーダが、プランジャ滑動部の移動をエンコーダ計数として測定し、注入ポンプは、予め設定されたエンコーダ計数閾値の超過後に、力センサが、貯槽中にプランジャ滑動部が着座していることを別個に認識するのを失敗したときに、力センサにかかわるエラーを信号で知らせる。さらに他の実施例では、電流測定値によって示されたプランジャ滑動部が貯槽中に着座してからの時間も測定され、予め設定された時間閾の超過後に、力センサが、貯槽中にプランジャ滑動部が着座していることを別個に認識するのを失敗したときに、力センサにかかわるエラーを信号で知らせる。
【0030】
他の実施構成では、ポンプシステムの少なくとも2つの値を使用して閉塞が検出される。例えば、これらの変数には、力、駆動電流、駆動電圧、モータ駆動時間、モータ惰性回転時間(motor coast time)、送達パルスエネルギー、モータ駆動計数、モータ惰性回転計数(motor coast count)、およびデルタエンコーダ計数を含んでもよい。さらに他の実施例では、1つまたは複数の値に基づいて閉塞を検出するアルゴリズムが動的であり、これらの値を定期的に計算するとともに、各パルスの送達全体にわたって継続的に計算してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の親ねじ駆動機構の側平面図である。
【図2】別の従来の親ねじ駆動機構の側平面図である。
【図3A】別の従来の親ねじ駆動機構の斜視図である。
【図3B】図3Aの親ねじ駆動機構から引き出された、ピストンおよび駆動部材を備える使い捨て貯槽の細部を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、後退位置にある駆動機構の側平面破断図である。
【図5】筐体から外した、図4のインライン駆動機構の斜視図である。
【図6】後退位置にある、図4の駆動機構の破断斜視図である。
【図7A】繰出し位置にある、図4の駆動機構の側平面破断図である。
【図7B】繰出し位置にある、図4の駆動機構の破断斜視図である。
【図8】図4に示した駆動機構に使用する回転防止装置の破断斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る分割(入れ子式)親ねじの断面図である。
【図10A】図4の駆動機構に使用する通気口の異なる実施形態の断面図である。
【図10B】図4の駆動機構に使用する通気口の異なる実施形態の断面図である。
【図10C】図4の駆動機構に使用する通気口の異なる実施形態の断面図である。
【図11】貯槽およびプランジャ滑動部組立体の部分断面図である。
【図12】貯槽および貯槽コネクタの部分断面図である。
【図13a】プランジャ滑動部の力の変化図である。
【図13b】プランジャ滑動部の力の変化図である。
【図14】貯槽、ピストン、およびインサートの組立分解図である。
【図15a】貯槽ピストンの斜視図である。
【図15b】図15aの貯槽ピストンの立面図である。
【図15c】図15bの線15c-15cに沿ったピストンの断面図である。
【図16a】ピストンインサートの斜視図である。
【図16b】図16aのピストンインサートの上平面図である。
【図16c】図16bの線16c-16cに沿ったインサートの断面図である。
【図17】貯槽、貯槽ピストン、およびインサートの断面図である。
【図18】本発明の代替実施形態に係るピストンおよびピストンインサートの断面図である。
【図19】本発明の実施形態に係る、閉塞を検出する論理を例示する図である。
【図20】印加された力の関数として、力に敏感な抵抗器に掛かる測定電圧を示すグラフである。
【図21】本発明の実施形態に係る力センサを組み込む、注入ポンプ駆動システム、感知システム、および流体収容組立体を示す分解組立下部/前部斜視図である。
【図22】本発明の実施形態に係るセンサを備える注入ポンプ駆動システムを例示し、いくつかのトルク力を示す図である。
【図23a】本発明の別の実施形態に係る駆動システムの部分におけるセンサの斜視図である。
【図23b】図23aのセンサおよびポンプ駆動システムの後面図である。
【図24】本発明の実施形態に係る、力センサにおける機能不全を検出するアルゴリズを例示する図である。
【図25】本発明の実施形態に係る、力センサにおける機能不全を検出するアルゴリズを例示する図である。
【図26】送達パルスの関数として示された、本発明の実施形態に係る測定された力、50で除した駆動計数、および多変数値を示すグラフである。
【図27】本発明の実施形態に係る、閉塞を検出するアルゴリズを例示する図である。
【図28】本発明の実施形態における、時間にわたって単一送達パルスに関して測定された力である。
【図29】本発明の実施形態に係る、閉塞を検出するアルゴリズを例示する図である。
【図30】本発明の実施形態における、送達に対する力および傾きを示すグラフである。
【図31】本発明の実施形態における、時間に対する力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の記載では添付の図面を参照するが、それらの図面は以下の記載の一部を構成し、かつ本発明のいくつかの実施形態を例示するものである。他の実施形態も利用可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく構造上および動作上の変更が実施可能であることが理解される。
【0033】
例示目的で図面に示したように、本発明のいくつかの態様は、薬物または他の流体用の注入ポンプのための駆動機構に関する。好ましい実施形態では、切離し可能なカプラが、薬物、薬剤、ビタミン、ワクチン、ホルモン、水などのような流体を投与するために、インライン駆動装置を貯槽のプランジャまたはピストンに接続する。しかし、本発明の他の実施形態では、コンパクトで精確な駆動機構を必要とする他の装置でも使用可能である。本発明の詳細が、1999年10月29日に出願された同時係属の米国特許出願第09/429,352号、すなわち、すでに交付済みの米国特許第6,248,093号、および1998年10月29日に出願された米国特許仮出願第60/106,237号でさらに提供されており、両者の全体は引用により本明細書に組み込まれている。
【0034】
さらに、貯槽ピストンは、流体背圧に対抗するより大きな剛性を与え、よってシステムコンプライアンスを低減する特徴構造を含んでいる。このピストンは、貯槽ピストンとインライン駆動装置との間で切離し可能であるが、依然として確実な接続を可能にするねじ山付き装着特徴構造をさらに含んでいる。
【0035】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る注入ポンプ駆動機構の側平面、破断図を示す。この図では、電源420および電子制御回路422用の下方区間402を内蔵する筐体401が、モータ403(例えば、ソレノイド、ステッパ、または直流モータ)のような駆動装置と、雄ねじ山付き駆動歯車またはねじ404のような第1駆動部材と、雌ねじ山付きプランジャ歯車または滑動部405のような第2駆動部材と、着脱可能なバイアルまたは貯槽406とを収容している。貯槽406は、水密および気密封止体を形成するOリングもしくは一体隆起リッジを有するプランジャまたはピストン組立体407を含んでいる。貯槽406は、この貯槽406と注入セット管系(図示せず)との間の境界面としての役割も果たすコネクタ431で筐体401中へ固定されている。1つの実施形態では、貯槽ピストン組立体407は、切離し可能なカプラによって、プランジャ滑動部405のような直線駆動部材に接続されている。例示した実施形態では、カプラは、プランジャ滑動部405によって担持された雄部分426を受け入れる雌部分424を含んでいる。雌部分424は、ピストン組立体407の端面428に位置決めされ、プランジャ滑動部405の端部430から延びる雄ねじのねじ山に係合するねじ山付き空洞を含んでいる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、使い捨ての予め充填された貯槽に関するが、代替実施形態では、再充填可能なカートリッジ、注射器などを使用してもよい。カートリッジは、インシュリン(または他の薬剤もしくは流体)を予め充填可能であり、ポンプ中へ挿入可能である。別法として、使用者が、注射器−ピストンに付いたアダプタハンドルを使用してカートリッジを充填してもよい。充填後、このハンドルを取り外すことによって(ハンドルをねじ戻すことなどによって)、カートリッジをポンプ中に配置可能にする。
【0037】
再び図4を参照すると、前記モータ403の駆動軸432が歯車箱501中で回転するとき、駆動ねじ404は、所定量の薬物または液体を送達するために、貯槽ピストン組立体407に対して軸方向の変位を実現するようにプランジャ滑動部405を直接駆動する。直流またはステッパモータを使用する場合には、モータは、貯槽が空になるときにまたは使用者がプログラムしたときなどに、急速に巻き戻されうる。Oリング封止体409のような封止装置がプランジャ滑動部405と接触しているため、貯槽406を保持する空洞とモータ403との間の耐水性障壁を維持しながら、この滑動部の軸方向移動を可能にする。これは、流体および他の異物が駆動装置に侵入するのを防止する。
【0038】
回転防止キー410は、前記プランジャ滑動部405に取り付けられ、かつ筐体401中に軸方向へ配置された溝(図示せず)内部に嵌るようにサイズ決めされている。この配置は、Oリング封止体409の摩擦だけでは十分な回転防止にならない場合に、別様であれば、モータ403によって生成されたトルクに起因する恐れがあるモータおよびプランジャ滑動部の回転を防止する役目をする。
【0039】
前記モータ403は、直流モータまたはステッパモータのような従来のモータであり、システムコンプライアンス取付け412によって筐体401中にジャーナル取付けされている。システムコンプライアンス取付けは、モータの始動を補助する際に有用である。ステッパモータのようないくつかの種類のモータは、回転子の初期休止位置がモータ筐体に対していくつかの配向にあるとき、回転子の動作を開始するために多大なトルクを必要としうる。剛性に取付けされるモータは、必要な始動トルクを発生させるのに十分な動力を有していない恐れがある。システムコンプライアンス取付けを含むと、モータ筐体が、高いモータトルクに応答してわずかに回転することを可能にする。これは、回転子の動作を開始するのにより小さいトルクで済むように、回転子と筐体との間の配向を変更する。コンプライアンス取付けは、ゴム引き取付けブラケットを含みうる。別法として、この取付けは、心棒軸受およびリーフばねまたは他の知られたコンプライアンス取付けを使用して行うことができる。
【0040】
図5は、筐体外側の図4のインライン駆動機構の斜視図を示す。前記プランジャ滑動部405(雌ねじ山を図示せず)は円筒形に形作られ、その一端に装着されたカプラのねじ形状雄部分426を有している。回転防止キー410が滑動部405の対向端に取り付けられている。駆動ねじ404は、図4に示したようにプランジャ滑動部405の雌ねじ山内部に嵌りかつそれに係合するような直径である。従来の歯車箱501が駆動ねじ404をモータ403の駆動軸432に接続している。
【0041】
図4および図6は、前記プランジャ滑動部405が後退位置にある注入ポンプ組立体を示す。薬物または他の流体が充填される貯槽406は、貯槽またはバイアルを受け入れるようにサイズ決めされた貯槽空洞601中へ挿入されている。プランジャ滑動部405は、後退位置で、歯車箱501(図6では見えない)を密閉し、他方で駆動ねじ404(図6では見えない)はプランジャ滑動部405内部で密閉された状態に留まっているが、カプラに近接して配置されている。
【0042】
前記モータ403は、システム電子機器と共にモータの回転数を監視できるエンコーダ(図示せず)を任意に含むことができる。次いで、このエンコーダを使用して、プランジャ滑動部405の位置を精確に判定することが可能であるため、貯槽406から投与された流体の量に関する情報を提供する。
【0043】
図7Aおよび図7Bは、プランジャ滑動部405が完全に繰り出された位置にある注入ポンプ組立体を示している。前記プランジャ滑動部405は、この位置で、歯車箱501から引き出されており、貯槽ピストン組立体407の背後で貯槽406中へ前送りされている。したがって、プランジャ滑動部405は、貯槽ピストン組立体407およびプランジャ滑動部405が、図示したように完全に繰り出された位置にあるとき、貯槽ピストン組立体407が液体の全部ではないにしてもほとんどを貯槽406から押し出してしまうように、貯槽406の筐体内部に嵌るようにサイズ決めされている。以下でさらに詳細に説明するように、一旦貯槽ピストン組立体407が、その移動通路の終端に到達し、貯槽が空になったことを示すと、貯槽406は、ねじ山付き貯槽ピストン組立体407(図7Bに示さず)がカプラの雄部分426から分離するように、捩ることによって取り外されうる。
【0044】
1つの実施形態では、モータ駆動軸432、歯車箱501、駆動ねじ404、およびプランジャ滑動部405は、全てが貯槽ピストン組立体407の移動軸440(図4)内部の中心に同軸で位置決めされている。代替実施形態のいくつかでは、これらの構成要素の1つまたは複数が移動軸440の中心から外れているが、貯槽406の全長に達する長さを有する移動軸と位置合わせされた状態に留まりうる。
【0045】
図8は、回転防止装置の破断斜視図である。回転防止キー410は、180°離間される2つの長方形タブ436を有するリングまたはカラー442から構成されている。図8ではタブが1つのみ見えている。キー410のリング部分442は、モータに最も近接するプランジャ滑動部405の端部を包囲しかつその端部に取り付けられている。筐体401中に2つの回転防止スロット434が配置され、図8ではそれらの1つのみが見えている。回転防止スロット434は、キー410の長方形タブを受け入れるようにサイズ決めされている。先に説明したように、プランジャ滑動部405がモータトルクに応答して軸方向へ移動するとき、スロット434は、キー410も同様に軸方向へ移動することを可能にする。しかし、スロット434およびキー410のタブ436は、別様であればモータによって生成されたトルクに起因する恐れがあるプランジャ滑動部405のいかなる捩れも防止する。
【0046】
図9は、ポンプ駆動機構に使用するための分割親ねじ(またはプランジャ滑動部)の構成を例示している。分割親ねじまたは入れ子型親ねじの使用は、駆動機構用の一層小型な筐体の使用を可能にする。多部分から形成された入れ子型親ねじは、ポンプが、インラインにおいてもまたは歯車駆動式駆動機構においても、駆動機構の寸法を最小化することを可能にする。
【0047】
内部軸901は、駆動モータ(図示せず)に接続される歯車906によって回転する。次に、それは内部分904のねじ山と係合することによって中間駆動部分902を繰り出す。中間部分902は、それが流体を送達するために繰り出されるとき、それと一緒に外部分903を前方に方向dへ運ぶ。中間部分902が完全に繰り出されるとき、内部分904は中間部分902上の止め905と係合し、中間部分と内部分との間のねじ山でその中間部分を圧力によって固定する。次いで、固定された中間部分902は、外部分903に対して回転し、中間部分902と外部分903との間のねじ山が、外部分903を方向dへその完全な長さまで繰り出す。
【0048】
多部分の使用は2つまたは3つの部分に限定されるものではなく、それ以上が使用可能である。3つの部分の使用は、駆動機構の後退した親ねじ部分の長さを半分に短縮する。代替実施形態では、外部分がモータに接続されてもよく、内部分は浮動部分でよい。好ましい実施形態では、Oリング907を使用して各部分を相互に対して封止し、かつ耐水性および完全性を維持するために筐体と封止体を形成している。
【0049】
先に留意したように、これらのポンプが耐水性であるように構成されていることが、動作上の問題を惹起しうる。使用者が、ポンプを変化する大気圧に曝す活動に従事するとき、差圧が気密/耐水性筐体内部と大気との間に生じうる。もし筐体中の圧力が外部大気圧を超えれば、その結果生じる力が貯槽ピストンを内向きに駆動させることによって、薬物を不要に送達する恐れがある。他方で、もし外部大気圧が筐体中の圧力を超えれば、ポンプモータは、貯槽ピストンを前送りするためにより強力に働かねばならない。
【0050】
この問題に対処するために、湿気の侵入を防止する通気口が設けられている。図7Bを参照すると、通気口605を経由して、筐体401を通り抜けて貯槽空洞601中へ至る通気が実現される。通気口は、逃がし弁(図示せず)によって密閉されるかまたは疎水性材料によって覆うことができる。疎水性材料は、空気が材料を通過するのを許容するが、他方では水または他の液体が通過するのを阻み、よって耐水性通気を可能にする。1つの実施形態では、アリゾナ州Flagstaff市所在のW.I. Gore & Associates社、ジョージア州Fairburn市所在のPorex Technologies社、またはロードアイランド州Saunderstown所在のDeWAL Industries社のような供給元からのGore-Tex(登録商標)、PTFE、HDPE、およびUHMW重合体のような疎水性材料を使用している。他の疎水性材料も同様に使用可能であることは明らかである。
【0051】
これらの材料は、選択の幾何学形状でシート形態または成形(プレスおよび焼結)された状態で入手可能である。図10A〜10Cを参照すると、この材料を筐体401に取り付ける好ましい方法は、球形1001(図10A)または円筒1002(図10B)中へ疎水性材料を成形しそれを予め成形されたプラスチック筐体中の空洞中へ押し込むことを含んでいる。別法として、この材料から、転移接着剤または熱接着材料1004を備えるラベル1003(図10C)が作製可能であり、このラベルが通気口605を覆って貼付されるようになっている。別法として、ラベルは筐体に超音波溶接される。どちらの方法も、空気は自由に通過できるが、水は通過できない。
【0052】
代替実施形態(図示せず)では、通気口が、貯槽406を筐体401に固定し、かつ貯槽406を注入セット管系(図示せず)に固定および接続する役目もするコネクタ431中に配置可能である。引用によりその全体が本明細書に組み込まれている1999年10月28日に出願された同時係属出願第09/428,818号にさらに詳細に記載されているように、コネクタおよび注入セットとは、貯槽の出口を薬物注入ポンプの使用者に接続する管系および装置を指す。
【0053】
筐体401ではなく、このコネクタの箇所に通気口および疎水性材料を配置する利点は、注入セットが使い捨てであり、頻繁に各薬物の新たな貯槽またはバイアルと交換されることである。したがって、新たな疎水性材料が頻繁に使用に供される。これは、疎水性材料を筐体401中に配置することに比べて通気を向上させる。この筐体の箇所における材料は、それほど頻繁には交換されないため、通気を損なう恐れがある汚れまたは油の堆積を蒙る。しかし、さらに代替実施形態では、疎水性材料を含む通気口が、ポンプ筐体および注入セットのコネクタ部分の両方の中に配置される。
【0054】
通気口の位置にかかわらず、通気口が疎水性材料の上に汚れ、油などが堆積することによって目詰まり状態になる恐れが依然として存在する。本発明のいくつかの実施形態の別の特徴構造では、これらの場合に、内部ポンプ筐体圧力が大気圧を超えるとき、切離し可能なカプラが、薬物の偶発的な送達を防止する役目を果たすことができる。図11を参照すると、カプラは、貯槽ピストン組立体407の外面内部の空洞中に形成されたねじ山を含んでいる。ねじ山付き空洞424は雄部分426のねじ山と係合し、次いでその雄部分のねじ山はプランジャ滑動部405の端部430に取り付けられる。
【0055】
このねじ山係合は、耐水性、気密性の筐体401(図11に図示せず)に作用する大気圧差の影響が偶発的な流体送達を引き起こすことを低減または防止する。雄部分426のねじ山は、貯槽ピストン組立体407がプランジャ滑動部405から分離するのを抑止または防止する役目を果たし、次に、プランジャ滑動部405は、駆動ねじ404(図11に図示せず)の雄ねじ山がこの滑動部の雌ねじ山と係合することによって、駆動ねじ404に固定されている。その結果として、カプラは、大気圧差によって引き起こされる貯槽ピストン組立体407の移動を防ぐ。
【0056】
貯槽406が取り外されるべきとき、それはカプラ雄部分426から捩って外される。その場合に、システム電子機器は、プランジャ滑動部405が完全に後退した位置(図4および6)に駆動されるように、駆動モータ403を迅速に巻き戻させることが好ましい。しかし、新たな貯槽406は、流体が充填されていない場合がある。したがって、貯槽ピストン組立体407は、貯槽出口から最も遠い位置に配置されない場合がある。もし貯槽ピストン組立体407がこのような中間位置にあれば、貯槽を最初に配置すると、貯槽ピストン組立体407中でカプラの雄部分426のねじ山(それは完全に後退した位置にある)をカプラの雌部分424のねじ山と係合させることは不可能である。
【0057】
いくつかの実施形態の別の特徴構造によれば、例示の実施形態では、貯槽をポンプ筐体中に挿入すると、プランジャ滑動部405を前送りする。プランジャ滑動部405は、それが貯槽ピストン組立体407と接触し、かつ貯槽ピストン組立体407中でカプラのカプラ雄部分426のねじ山が雌部分424のねじ山と係合するまで前進する。例示の実施形態では、ねじ山がこのような様態で係合しているとき、これらは捻りによって係合しているのではない。むしろ、これらは相互の上方に掛止している。
【0058】
好ましい実施形態では、図11に例示したように、カプラ雄部分426のねじ山は、5条、40の1インチ当たりねじ山(「TPI」)ピッチまたは輪郭を有し、他方でカプラ雌部分424のねじ山は、2条、40TPIピッチまたは輪郭を有している。したがって、これらの異なるねじ山輪郭は、通常の歯対歯のねじ山係合を許容しない。むしろ、食違いねじ山係合が存在する。
【0059】
この意図的な食違いねじ立ての目的は、プランジャ滑動部405が貯槽ピストン組立体407中に着座するとき、ねじ山を係合させるために必要な力を低減することである。さらに、カプラ雌部分424の2条、40TPIねじ山は、ねじ山にある程度のコンプライアンスを与えるために、ゴム材料から作製されることが好ましい。他方で、雄カプラ部分426の5条、40TPIねじ山は、比較的硬質のプラスチックから作製されることが好ましい。他のねじ山配置および輪郭が使用可能であり、同様の効果をもたらす。
【0060】
他方で、ねじ山干渉が同じ程度であれば(すなわち、雄特徴構造の外径が雌特徴構造の外径よりも大きければ)、これらのねじが同じ数の条を有する共通のねじ山ピッチを有していたら、雄特徴構造を挿入するのに必要とされる力は、拍動的になる。図13aを参照すると、各ねじ山の歯が次の歯に係合するとき、挿入力は、ねじ山歯が次の歯の谷間の中へ通る点に比べて高くなる。しかし、好ましい実施形態の食違いねじ山配置では、ねじ山のすべてが同時に互いに乗り上げるわけではない。むしろ、これらのねじ山は、食違いねじ山輪郭により、個々に相互の上方に掛止する。この配置は、プランジャ滑動部が軸方向へ移動するとき、ねじ山に係合するのに必要とされる力の低減をもたらすが、依然として貯槽は手による捻り動作によって容易に取外し可能である。
【0061】
共通のねじ山ピッチを利用する利点は、貯槽ピストン組立体407がプランジャ滑動部405から軸方向へ分離することを防ぐという最大の能力を与えることであるが、欠点が存在する。ねじ山を係合させる際に、ピークの力が高く、プランジャ滑動部405が貯槽ピストン組立体407の空洞中に着座するために前進するときに流体の過剰な送達をもたらす恐れがある。引用によりその全体が本明細書に組み込まれている1999年10月28日に出願された同時係属の米国特許出願第09/428,411号、すなわち、すでに交付済みの米国特許第6,362,591号にさらに詳細に記載されているように、ポンプは、貯槽内部の圧力の指標として軸方向の力を使用する閉塞検出システムを有しうる。そのような場合に、これらの高い力の状態時に偽の警報が生成される恐れがある。
【0062】
したがって、図13aに示したものよりも好ましくは平坦な挿入力のグラフを有することが望ましい。これを実現するために、好ましい本発明の食違いねじ立て構成では、貯槽ピストン組立体407の端部にある雌部分424の比較的軟質のゴム歯をカプラの比較的硬質のプラスチック歯の周囲に掛止するかまたはさっと通し、同じ程度のねじ山干渉では、かなりより低めの挿入力をもたらす(図13b参照)。これは、必ずしもねじ山歯のすべてが同時に相互に乗り上げるわけではないことによる。さらに、ねじ山の断面形状が傾斜している。これは、プランジャ滑動部が貯槽ピストン中に挿入されているときに、ねじ山が相互に乗り上げることをより容易にする。しかし、ねじ山輪郭の平坦な対向縁は、プランジャ滑動部が貯槽ピストンから分離されるのを遙かにより困難にする。
【0063】
プランジャ滑動部が貯槽ピストン中に完全に挿入されるとき、滑動部はピストンの空洞中で底に達する。この時点で、貯槽中の流体の流体負荷の存在ばかりでなくピストンの静的および動的摩擦が、プランジャ滑動部に対して作用する。図13bは、流体を有する貯槽中でプランジャ滑動部がピストンに対接して底に達したこと、ならびにその結果生じたピストンおよびプランジャ滑動部に作用する軸方向力の増大を示している。静的および動的摩擦と組み合わさったこの流体負荷は、ピストンねじ山を係合させるのに必要とされる力よりも遙かに高いので、このような格差を有利に利用することができる。
【0064】
2000年10月26日に出願された米国特許仮出願第60/243,392号(整理番号0059-0391-PROV)、すなわち、後に2001年3月27日に正規の米国特許出願第09/819,208号として出願され、すでに交付済みの米国特許第6,485,465号、もしくは1999年10月28日に出願された米国特許出願第09/428,411号、すなわち、すでに交付済みの米国特許第6,362,591号(これらのすべては引用によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている)で記載された流体圧力および閉塞検出システム、または図1および2を参照して示されかつ記載された圧力スイッチ検出器のような知られた検出器を使用して、プランジャ滑動部がピストンに対接して底に達したことに関連する流体背圧を検出することができる。組み込まれた引用文献のいくつかの節が、図19〜23(aおよびb)を参照して、流体力センサおよび閉塞検出システムのエラー検出に関して以下で論じられるが、それは、プランジャ滑動部がピストンに対接して底に達したことに関連する流体背圧に関するものである。
【0065】
このような圧力スイッチまたは閉塞検出システムの高圧トリガ点は、図13bに示した比較的平坦な食違いねじ山の力を上回る点に設定可能である。別法として、このような背圧力の傾斜またはグラフが監視可能である。適切な制限値に到達するとき、ポンプシステム電子機器は、ポンプモータを停止する信号を送信することができる。したがって、ポンプ駆動システムは、プランジャ滑動部が底に達した時点を自動的に検出し、かつポンプモータがプランジャ滑動部の前進を停止させることが可能である。
【0066】
図11および12を参照すると、カプラ雄部分426の5条、40TPI(0.125インチリード)ねじ山輪郭は、コネクタ431の好ましい実施形態上のねじ山リードを考慮して選択されている。コネクタ431は、2条、8TPI(0.250インチリード)輪郭を有するねじ山433(図7B)で、ポンプ筐体中に固定されている。したがって、コネクタ上の0.250インチリードは、0.125インチである貯槽ピストン組立体407のリードの2倍である。これは、貯槽をポンプ筐体から取り外す間に流体の偶発的な送達を防止するか、または別法として、ポンプ筐体から取り外す間に、貯槽ピストン組立体407が貯槽406から分離するのを防止するように選択されている。コネクタ431がポンプから切り離されるとき、コネクタ431ばかりでなく貯槽406も0.250インチリードで移動する。ねじ山付きカプラのリードは0.125インチであるので、プランジャ滑動部405は、ねじ山付きカプラの0.125インチリードと注入セット1103の0.250インチリードとの間のどこかで切り離れる。したがって、貯槽ピストン組立体407がポンプから取り外される速度は、貯槽406/コネクタ431の半分の取外し速度までと同じである。こうして、貯槽406中に存在しうる薬物はいずれも使用者に送達されることはない。さらに、貯槽ピストン組立体407の長さは、それがポンプから取り外される間に常に貯槽406に装着された状態に留まるのに十分である。好ましい実施形態では、コネクタ431とは異なる雄ねじ山リードを有するカプラ雄部分426を有するプランジャ滑動部405が記載されるが、これは必ずしも必要ではない。ねじ山リードは、記載されたものと同じでもよいし、またはそれ以外の刻みで増加してもよい。
【0067】
好ましい実施形態の貯槽ピストン組立体407上のカプラ雌部分424の2条ねじ山輪郭は、別の利点を与える。これらの貯槽のいくつかの型は、使用者によって充填されるように構成可能である。このような場合では、ハンドル(図示せず)を備える直線駆動部材は、使用者が貯槽ピストン組立体407を後退させて貯槽を充填するために、貯槽ピストン組立体407のねじ山付き部分の中へねじ込まれる必要がある。ハンドルの完全な挿入に必要な回転数は、貯槽ピストン組立体407を完全に係合させるためにハンドルねじ山輪郭が移動する距離ばかりでなく、ねじ山リードにも依存する。
【0068】
例えば、1条、40TPI(0.025インチリード)のねじ山は、0.10インチねじ山係合を移動させるために4回の完全回転を必要とする。しかし、2条、40TPI(0.050インチリード)のねじ山は、0.10インチねじ山係合を移動させるために2回の完全回転のみで済む。したがって、2条ねじ山の追加的な利点は、1条ねじ山(同じピッチであれば)に比べて、完全にハンドルを着座させるために半分の数の回転で済むことである。
【0069】
図示されていない代替実施形態では、プランジャ滑動部405の端部は、プランジャ滑動部405が貯槽ピストン組立体407から偶発的に分離することを防ぐために、貯槽ピストン組立体407中の対応する構成と係合するデタントまたは稜線を含みうる。他の実施形態では、プランジャ滑動部405が、摩擦嵌めに打ち勝つことによって挿入され、かつ取り外される。好ましくは、摩擦嵌めは、空気圧の変化によるプランジャ滑動部405に対する貯槽ピストン組立体407の移動を防ぐのに十分な確実さであるが、一旦流体が使い切られると貯槽406およびその貯槽ピストン組立体407をプランジャ滑動部405から容易に取外し可能にするのに十分な低さである。他の実施形態では、デタントまたは稜線は、一旦駆動機構が前方に移動されると(または繰り出されると)、貯槽ピストン組立体407を把持するようにばね押しまたは駆動されうるが、駆動機構が最後尾(または後退)位置にあるとき、スイッチまたはカムによって後退させられる。ばね動作は、コレットで使用されるものと同様でよい。本発明の他の実施形態では、ねじ山付きカプラは、それが手で筐体中へ配置されているとき、貯槽を捩るかまたは回転することによって貯槽ピストンのねじ山付き空洞と係合可能である。
【0070】
先に述べたように、いくつかのポンプシステムは、駆動列に対する軸方向の力を貯槽内部の圧力の指標として利用する閉塞検出システムを有しうる。しかし、このような閉塞検出システムが直面する1つの問題は、貯槽流体背圧に関連するシステムコンプライアンスである。先に述べたように、増大した背圧に起因するピストン組立体に対する力は、ゴムのような比較的柔軟な材料から作製されるピストンを変形する恐れがある。もし閉塞が流体システム中で発生すれば、この変形は、流体背圧が増大する速度を低減しうる。次に、それは閉塞、すなわち、望ましくない状況の検出にシステムが要する時間量を増加させうる。
【0071】
この問題に対処するために、硬質プラスチック、ステンレス鋼、または他の好ましくは比較的剛性の材料から作製されるインサート1201が、貯槽ピストン組立体407の上部分の中に配置されている(図12)。例示した実施形態のインサート1201は、剛性をゴム製の貯槽ピストン組立体407に与えている。これは、貯槽に関連する望ましくないコンプライアンスを軽減する。
【0072】
図14は、業界標準の貯槽406と、ピストン部材1404およびインサート1201を備えるピストン組立体407とを示している。貯槽406の一端が、首1402までテーパが付く概ね円錐形状の端部分1401を有している。スエージ1403が首に固着され、それによって流体密の封止体を形成している。インサート1201はピストン部材1404の空洞424中に配置され、次に、このピストン部材は貯槽406の対向端の中に配置されている。
【0073】
図15aおよび15bは、インサート1201(図14)を受け入れるように構成されているピストン部材1404を示している。ピストン部材1404は、貯槽1401内部に滑動可能に取り付けられ、かつその内部で流体密の障壁を形成するようにさらに構成されている。ピストン部材1404内部は、概ね円筒形の側壁1502と、貯槽406(図14)の円錐形状の端部分1401に共形となるように適合される概ね円錐形の凸形状を有する外部近位側面1501とを含んでいる。この幾何学的形状は、ピストン組立体407が完全に前送りされる後で、貯槽406中に残る流体の残留容積を低減する。ピストン部材の側壁1502は、貯槽側壁内部と摩擦嵌めを形成し、それによって耐流体性の封止体を形成する複数の稜線1503を有している。
【0074】
図15cを参照すると、ピストン部材1404は、外部近位側面1501に対向する外部遠位側面1505を有し、次に、この外部近位側面は貯槽中に存在しうる任意の流体に接触するように構成されている。外部遠位側面1505は、ねじ山付き空洞424中に通じる開口部1506を有している。空洞424は、外部遠位側面1505から空洞424中へ延びる第1チャンバ1508と、第1チャンバ1508からピストン部材1404の外部近位側面1501に隣接して配置される内部近位壁1510まで達する第2チャンバ1509とを備えている。
【0075】
第1チャンバ1508は、外部遠位側面1505から空洞424中へ軸方向に延びる概ね円筒形状の第1壁1511によって画定されている。第1壁1511は、例えば、先に記載したようなプランジャ滑動部405の雄部分426のねじ山(図11)のような任意の直線アクチュエータ部材と接続するように適合される、壁上に形成されたねじ山1504を含んでいる。第2チャンバ1509は、概ね円筒形状の第1壁1511から空洞424中へ軸方向に延びる概ね円筒形状の第2壁1512によって、かつ内部近位壁1510によって画定されている。概ね円筒形状の第2壁1512は、概ね円筒形状の第1壁1511の半径よりも大きい半径を有している。棚部1513は、概ね円筒形状の第1壁1511から概ね円筒形状の第2壁1512まで延びている。内部近位壁1510は、第2チャンバ1509の端部を形成し、その形状は概ね凹状円錐形である。したがって、内部近位壁1510と外部近位側面1501との間にある第1部材の当該部分の厚さは、概ね均一である。
【0076】
図16a〜16cを参照すると、インサート1201は、平面的な後壁1602と、概ね円筒形の側壁1603と、球形状の端部分1604で終わる円錐面部分1601とを有する中実部材である。1つの実施形態では、平面後壁1602は、直径が0.33インチであり、円筒形側壁1603は長さが約0.054インチであり、円錐面部分1601は長さが約0.128インチであり、かつ球形状の端部分1604は約0.095インチの曲率半径を有している。
【0077】
面部分1601および端部分1604は内部近位壁1510と嵌め合うように構成され、後壁1602はピストン部材1404の棚部1513に対接して着座するように構成されている(図15c)。挿入されるとき、インサート面部分1601および外部近位側面1501は、概ね平行な離間関係にある。インサート1201は、ステンレス鋼もしくは比較的剛性のプラスチック、またはピストン部材1404の外部近位側面1501の剛特性よりも大きい剛特性を有することが好ましい他の任意の材料から作製されうる比較的非圧縮性の部材である。しかし、硬質プラスチック材料が選択される場合に、それは、好ましくはオートクレーブの高温に耐えうるプラスチックの等級であるべきである。
【0078】
図17は、組み立てられたときに、ピストン部材1404およびインサート1201を有する貯槽406を示している。先に述べたように、棚部1513は、インサート1201の平面後部1602を支持し、それを定位置に固定している。ピストン部材1404は、ゴムまたは他の比較的柔軟な材料から作製されるので、それは組立時にインサート1201が開口部1506中へ挿入され、第1チャンバ1508を通過し、次いで第2チャンバ1509中に位置決めされることを可能にするために十分に撓みうる。インサート1201の円錐面部分1601は、ピストン部材1404の内部近位壁1510と嵌め合い、よって流体1701と直接的に接触するゴムの厚さの低減を可能にする。ゴムまたは他の柔軟材料の厚さが低減すると、別様であればピストン部材1404の外部近位側面1501に作用する流体1701の背圧によって生じる恐れがあるコンプライアンスを最小化する。
【0079】
図14〜17に図示したインサート部材1201は、ピストン部材1404から着脱可能であるが、本発明の代替実施形態では、開口部または開放空洞が存在せず、かつインサート部材が着脱可能ではないような様態で密閉されるピストン組立体を含んでいることは明らかである。
【0080】
上で説明した実施形態のインサート部材は、貯槽中の流体に接触するように構成されていない。しかし、図18は、インサート部材の一部が貯槽流体に接触するように構成されるさらに他の代替実施形態を示している。ピストン組立体1801は、ピストン部材1802およびインサート1803を備えている。ピストン部材1802は、貯槽(図18に図示せず)内部に滑動自在に取り付けられ、貯槽内部で流体密の障壁の一部を形成するようにさらに構成されている。ピストン部材1802は、外部近位側面1804および外部遠位側面1805を有している。外部近位側面1804は、貯槽流体に接触するように適合され、ゴムのような弾性材料から作製されている。
【0081】
インサート1803は、ピストン部材1802内部に実質的に収納され、ピストン部材1802よりも大きい剛性を有する、ステンレス鋼または硬質プラスチックのような材料から作製される面1806を有している。インサート面1806は、露出部分1807および密封部分1808を有している。露出部分1807は貯槽内部の流体に接触するように構成され、他方では密封部分1808がピストン部材1802の外部近位側面1804によって密封または被覆されている。したがって、インサート1803は、ピストン部材1802の外部近位側面を通過して延び、貯槽内部で流体密の障壁を完成するために流体と接触するように構成されている。よって、このような様態にあるインサート1803の配置は、システムコンプライアンスを低減するために必要な剛性をピストン組立体1801に与えている。
【0082】
上で説明したピストン部材およびインサートは円錐幾何学形状を含んでいるが、他の幾何学形状でもよいことは明らかである。例えば、図11に示した代替実施形態では、インサート1102は比較的平坦な面を有する円板形状を有している。これも、システムコンプライアンスを低減するために必要な剛性をピストン組立体407に与えうる。
【0083】
さらに他の実施形態(図示せず)では、インサート部材は、ピストン組立体空洞内部に嵌るように構成される、プランジャ滑動部組立体の雄部分の一体型部分である。滑動部組立体の雄部分(すなわち、インサート部材)は、空洞内部の内部近位壁に接するようにさらに構成されているため、貯槽流体と接触するピストン組立体の当該部分の剛性を増大させる。
【0084】
図4〜18の構成では、プランジャ滑動部405の信頼性は高いが、解放可能に駆動ねじ404に接続される配置をもたらすことが分かる。貯槽406を交換するべき時機が来ると、それは、プランジャ/駆動ねじ配置に影響を与えることなく、カプラの雄端部から切離し可能である。さらに1つの実施形態では、プランジャ滑動部405は、雌ねじ山を有する中空円筒として形作られている。したがって、それは駆動ねじ404を完全に包囲しかつそれに係合している。プランジャ滑動部405が比較的後退した位置にあるとき、それは、モータ403を駆動ねじ404に接続する任意の歯車を密封することによって、極めてコンパクトな構成を実現している。疎水性材料で覆われた通気口ばかりでなく、ねじ山付きカプラも、薬物の偶発的な送達を伴うことなく、ポンプを変化する大気圧に曝すことを許容する冗長手段となっている。貯槽ピストン組立体407は、ピストン組立体407の剛性を増大し、よって流体システムのコンプライアンスを低減するインサート部材1201を含んでいる。
【0085】
本発明の別の態様では、上で論じた駆動システムは、閉塞検出システムおよび他のエラー検出システムの改良を可能にする。引用により組み込まれている1999年10月28日に出願された米国特許出願第09/428,411号、すなわち、すでに交付済みの米国特許6,362,591号から関連する本文は、以下のように閉塞検出方式を記載する。
【0086】
閉塞検出器は、電圧、電流、稼働時間、または回転もしくは直線変位のような1つまたは複数のモータパラメータの監視によって、増大した貯槽圧力を間接的に測定する。ブラシ型直流モータによって生成されたトルクは、定常状態では、モータに供給された電流に正比例することが従来から知られている。したがって、ねじ式駆動システムでは、軸方向負荷が貯槽内部の増大した流体圧力により増大するとき、システムを駆動するためにより多くのモータトルクが必要とされる。もし閉塞が存在すれば、貯槽内部の圧力は、所定の閾値を超過することになる。したがって、負荷を駆動するために必要な電流は、所定の電流閾値を超過し、さらなる送達を中止するように電子機器にフラグが立てられる。さらに、可聴、触覚的、およびまたは表示警報が典型的に起動される。
【0087】
しかし、閉塞が依然として存在し、かつ高い圧力状態が貯槽中に依然として存在する場合には、この警報を解除するときに慎重を期さなければならない。モータは、貯槽内部の圧力の指標を入手するために動作しなければならないので、システム内部では、益々高い圧力が潜在的に生成されうる。モータが動作していなければ、電流は流れず、モータ本体に対するトルクは無視可能である。したがって、閉塞が、例えば、管系が挟まれることによって貯槽から遠位で存在するとき、測定された特性は、各モータの繰出増分時にのみ閉塞を示すことになる。
【0088】
実際に閉塞が除去されていなかったとき、使用者が警報を解除し、再び薬物の送達を試みる場合に、追加的な圧力が流体システム内部に生成されることになる。圧力(またはモータ電流)が設定点を超えるとき、システムが警報し続けるようにプログラムされるものと想定すると、警報は継続して行われることになる。したがって、使用者は、いくつかの場合では、閉塞の源を特定および矯正する前に警報の解除を試みる恐れがある。
【0089】
閉塞が最終的に除去されるとき、送達されるべき用量よりも大きい1回分の薬物用量の送達をもたらしうる過剰な圧力が、システム中に発生している恐れがある。本明細書に開示された改良型閉塞検出システムは、それぞれの閉塞警報に続いてポンプをある所定量だけ巻き戻させることによって、これを防止する。ポンプを、例えば、1送達パルスだけ巻き戻すことによって、閉塞が依然として存在すれば、閉塞警報が起動する。しかし、プログラムされたものと同じ最大圧力で警報を起動することになり、この値を超える圧力では起動しない。
【0090】
双方向である駆動システムでは、電流測定値はシステム摩耗の指標としても使用可能である。製品の寿命にわたって、システムを駆動するために要するトルクが、動的構成要素およびそれらの境界面の摩耗によって経時変化することが予想される。双方向システムを巻き戻すために要するトルクは、駆動システムの摩擦要因によるものであるので、巻き戻すための電流は記録可能であり、かつこのトルクに比例する。
【0091】
システムが摩耗するにつれて、トルク、したがって巻き戻すための電流が変化する。巻戻し電流を記憶することによって、これを使用してシステムを較正することができる。平均基準巻戻し電流は、流体を有する注射器のような他の外力が存在しないときに、駆動システムを前送りするのに要するトルク(または電流)である駆動力基準を調節するために量定および使用されうる。別法は、システムを巻き戻し、次いでその直後にシステムをある距離だけ順方向に駆動しかつそれを記録する(その後、システムは再び巻き戻される)ことによって順方向または駆動基準電流を入手する。両方法を使用する利点は、較正が自動的かつ使用者に明解でありうることである。
【0092】
図19は、検出器の1つの実施形態における論理を例示しているが、そこではシステム閉塞を検出するためにモータ電流が測定される。制御は、システムがポンプ駆動システムを完全に巻き戻すことが必要であるかどうかを判定するブロック501'から始まる。駆動システムのこのような巻戻しを必要とする条件を以下に論じる。システムが巻き戻されるべきでなければ、薬物の増分を送達するべき時間であるかどうかの判定が行われる(ブロック502)。この判定は、使用者ごとの治療状況に特有であるプログラミング、すなわち、投与されている薬物の種類などの関数である。薬物を送達するべき時間でなければ、プログラムは、追加的な時間の経過または他の制御指令の受取りのために開始までループする。
【0093】
しかし、薬物の増分を送達するべき時間であれば、制御はブロック503に移行し、そこで電力をポンプモータに印加することによって、薬物を貯槽から投与する。次に、貯槽から送達された薬物量が測定される(ブロック504)。これは、(1)エンコーダ計数、(2)ポンプ動作回数、(3)貯槽プランジャの位置決め、速度、または加速、(4)ポンプ駆動列上の任意の可動構成要素の位置、または(5)液体の量もしくは体積流量を測定することを含めて、いくつかの様態で直接的にまたは間接的に実現可能である。
【0094】
次いで、送達された薬物量が十分であるかどうかに関して判定が行われる(ブロック505)。十分であれば、制御は、ポンプが停止されかつプログラムが開始にループするブロック506に移行する。他方で、ポンプが稼働し続けているが、プログラムされた投与量がまだ送達されていなければ、ポンプモータ電流が測定される(ブロック507)。閉塞がシステム中に存在すれば、貯槽流体圧力の増大が生じる可能性が高い。次に、これは、モータがこの流体圧力に対抗して貯槽プランジャを前送りしようとするとき、より大きなモータトルクおよび電流を引き起こしうる。したがって、測定されたモータ電流が、閉塞状況が存在しなかったときに確立されうる既知の平均基準モータ電流よりも大きな何らかの量であれば、閉塞状況が生じた可能性が高いと判定される。
【0095】
この電流測定は閉塞状況を示すことができるばかりでなく、特にエンコーダが追加される場合に、このモータ電流は、フィードバックを駆動システム特徴、性能、および機能に供給することができる。例えば、モータの回転不能を引き起こす歯車箱の不具合が存在すれば、測定された電流は高くなり(所定の閾設定値を超えて)、かつエンコーダは増分しない。これは、駆動システムの不具合の指標である。インライン駆動システムでは、歯車箱、ねじ、または滑動部境界面の不具合が、この条件によって示される。
【0096】
図19を参照すると、ブロック508では、平均基準電流の値が、ブロック520によって表されたメモリ中の格納場所から取り出される。この値は、現時点で測定された電流と比較され、現在の電流が平均基準よりもある一定量超過するかどうかの判定が行われる。超過していなければ、ポンプは稼働し続け、制御は、薬物送達量が再び測定されるブロック504にループする。他方では、現在の電流が平均基準よりも選択された量だけ超過すれば、ポンプモータは停止され、可聴、触覚的、および/または視覚的な警報表示が与えられる(ブロック509,510)。
【0097】
制御は、システムが警報を解除するために監視されるブロック511に移行する。警報が解除されていなければ、制御は、警報が表示され続けるブロック510にループする。警報が使用者によって解除されたら、制御は、駆動システムが増分量だけ巻き戻されるブロック512に移行する。この巻戻しは、貯槽流体背圧を低減する役目を果たし、次いでそれは、もし使用者が閉塞を首尾良く解除する前に連続閉塞警報を経験する場合には、薬物の過剰な1回用量の送達を阻止または防止する。
【0098】
次いで、制御は、警報フラグが格納されるブロック513に移行する。過剰な数の警報が最近存在していたかどうかの判定が行われる(ブロック514)。存在していなかったら、制御は、上で説明した過程が繰り返される開始(ブロック501)にループする。他方では、過剰な数の警報が最近存在していたら、制御は、エラーまたはリセットメッセージを使用者に表示するブロック515に移行する。このメッセージは、過剰な数の警報の原因を特定するために、使用者が製造業者または何らかの認定された修理施設に連絡するように勧告するために典型的に使用される。このエラーメッセージは、エラーが解消されるまで表示され続け(ブロック516)、解消された時点で制御は開始(ブロック501)にループし、本過程が繰り返される。
【0099】
ブロック501'に戻ると、駆動システムの完全な巻戻しが必要とされうる時点が存在する。1つの場合は、ポンプ筐体中の薬物貯槽が空である時点であり、新たな貯槽が挿入されねばならない。したがって、駆動システムの巻戻しが望ましい(使用者の指令によってまたは別様に)と判定されたとき、制御は、電力をポンプモータに印加するブロック517に移行する。モータが巻戻し方向へ稼働しているとき、ポンプモータ電流が測定される(ブロック518)。別法は、システムを順方向に多少の距離の間だけ駆動し(可能性として巻戻しの直後に)、かつそれを記録することによって(その後でシステムは再び巻き戻される必要がありうる)、順方向または駆動基準電流を入手するものである。モータが逆方向(または巻戻し後の順方向)へ稼働中であるので、典型的には、ポンプモータが対抗して駆動している流体圧力はほとんど、または一切存在しない。したがって、この段階の最中に測定された電流は、閉塞を検出する際に比較するための基準として使用可能である。
【0100】
制御はブロック519に移行し、そこで先の平均基準電流値がメモリ中の格納場所(ブロック520)から取り出され、かつ更新された平均基準電流が計算される。次いで、この更新された値は格納場所の中に置かれ(ブロック520)、それは、次の電流測定および比較のためにブロック508で使用可能になる。
【0101】
平均基準電流を繰り返し更新する価値は、変化する駆動列摩擦力に対して較正を行うことにある。多くのポンプ構成の親ねじ機構は、封止体、駆動ナット、親ねじ/モータ接続部、および軸受を含んでいる。これらの構成要素のすべては摩擦特性を有している。これらの特性は、経時的に変化することが知られており、したがって、貯槽プランジャを前送りするために要するモータトルクおよび電流は変化する可能性が高い。したがって、これはより精確な基準を提供するものであり、その基準を対照にして電流が閉塞検出のために測定されうる。
【0102】
以上の説明はモータ電流の測定を伴ったが、異なる流体背圧と共に変化する他のモータパラメータも測定可能であり、同様の効果を有する。このようなパラメータには、モータ電圧、直線変位、回転変位、トルク、回転子速度などが含まれうる。
【0103】
例えば、閉塞検出器の1つの代替実施形態では、モータの直線または回転変位を検出できるモータ位置エンコーダの使用を伴う。例えば、エンコーダが回転モータの1モータ回転当たりに360計数の分解能を有すれば、各モータ回転によって、センサは360エンコーダ信号パルスを供給することになる。ポンプシステムが薬物の所望増分を送達するために1完全モータ回転を必要とするように構成されていれば、モータは、360エンコーダ計数が受け取られるときに停止するように制御されうる。直線モータの直線変位は、適切な直線エンコーダまたはセンサによって同様に検出可能である。
【0104】
モータは慣性を有するので、それに供給された電力は、モータの遅速および停止には実際の停止位置の前で除去しなければならない。遅速または減速は、(1)単に印加および摩擦トルクにモータを減速させるだけの惰性回転、または(2)例えば、モータのリード線を短絡するかまたは電位を逆方向へ印加することによって達成されうる動的制動を含めて、いくつかの様態で実現可能である。
【0105】
印加トルクは合計回転計数に影響を与える。したがって、印加トルクが変化するとき、望ましい360計数からの誤差も変化する。目標エンコーダ計数からのずれに対処するために、フィードバックループが提供され、それによって、モータ電圧もしくは電流、または電力がモータに供給されている時間のようなモータに対する入力電力パラメータが調節されうる。
【0106】
1つの実施形態では、モータが、各サイクルに関して過去のエンコーダ計数の結果に基づいて制御される。したがって、例えば、360エンコーダ計数が望ましいが、350のみが測定される場合、後続の入力モータパラメータは、動作中のエンコーダ平均が360計数に維持されるように調節可能である。モータシステムが定電流源または固定電源電圧で駆動される直流モータに使用される場合には、次のポンプサイクルに関して望ましいエンコーダ計数を維持するために調整されるべきモータ入力パラメータは、電力投入時間である。
【0107】
例えば、モータは、回転変位の半分(すなわち、360計数中の180)が電力投入時間によるものであり、他方の半分が特定の通常負荷(トルク)下におけるモータの惰性回転によるものであるように駆動可能である。もし負荷が増大すれば、惰性回転が減少し、それによって一定の電力入力に関して測定された合計エンコーダ計数を低減させる。例えば、システムは360計数の目標値ではなく350計数を測定しうる。したがって、薬物送達精度を維持するために、次のポンプサイクル時の以後のモータ増分は、動作平均がポンプサイクル全体に関して360に維持されるように、電力投入時間に関して180エンコーダ計数を超えて増加されうる。
【0108】
閉塞検出器のさらに別の実施形態では、トルクを量定するためにエンコーダ計数を使用する。この実施形態では、トルクはエンコーダ計数および1つまたは複数のモータ入力電力パラメータの関数である。モータ負荷トルクは、既知の送達されたエネルギー量に関して格納されたエンコーダ計数を評価することによって量定される。検出器システムは、既知のエネルギー量(すなわち、モータオン時間の電力倍)を供給し、入手されたエンコーダ計数の数によってモータ変位を記録する。ルックアップテーブルまたは計算値を使用して、システムは、供給されたエネルギー量に関してエンコーダパルスの記録された数から結果的に得られる対応トルクを量定する。
【0109】
例えば、モータがある一定時間量の間稼働していたら、これは360のエンコーダ計数をもたらしうる。その後、モータは同じ電圧および電流条件下で同じ時間量の間稼働しうるが、350のエンコーダ計数をもたらしうる。したがって、システムは、エンコーダ計数の減少によって反映されたトルクの増大に遭遇したことになる。それによって、エンコーダ計数および入力電力パラメータに対するトルクのルックアップテーブルまたは計算された値の生成が可能であり、かつモータトルクを測定するために使用可能である。
【0110】
要約すると、好ましい実施形態では、薬物注入ポンプシステムにおける閉塞または駆動システムの不具合を自動的に検出する方法および装置を開示する。注入ポンプへの電流は、基準平均電流に対して測定されかつ比較される。電流が閾量を超えれば、警報が起動される。別法として、ポンプモータのエンコーダパルスがポンプサイクル中に測定される。パルスの数が正常値域に対応しなければ、警報が起動される。別法として、システムトルク値が、ポンプサイクル中にポンプモータのエンコーダパルスの測定値から量定される。システムトルク値が最大閾値を超えれば、警報が起動される。好ましい実施形態では、警報が起動された後で、ポンプモータは、システム中の流体圧力を解放するために増分距離にわたって逆に駆動される。別法として、ポンプモータは逆転されない。
【0111】
本発明の別の態様では、上で論じた駆動システムは、圧力感知、閉塞検出、および他のエラー検出システムの改良を可能にする。引用によって組み込まれた、すでに米国特許第6,485,465号として交付済みの2001年3月27日に出願された米国特許出願第09/819,208号から関連する本文は、以下のように圧力感知システムおよび閉塞検出システムを記載する。
【0112】
好ましい実施形態では、プログラム可能な制御装置が電源からモータまでの電力を調節する。モータは、流体が充満した貯槽内側のストッパと接続された滑動部を変位するために駆動列を作動させる。滑動部は、流体を貯槽から流体通路(管系および注入セットを含む)に沿って押し出して、使用者の体内に注入する。好ましい実施形態では、圧力感知システムを使用して、貯槽から使用者の体に至る流体の送達を減速し、妨ぎ、または別様に損なう流体通路中の閉塞を検出する。代替実施形態では、圧力感知システムを使用して、貯槽が空である時点、滑動部がストッパと適切に着座する時点、流体用量が送達された時点、注入ポンプが衝撃もしくは振動を受ける時点、注入装置が保守を必要とする時点などを検出する。他の代替実施形態では、貯槽は注射器、バイアル、カートリッジ、バッグなどでありうる。
【0113】
一般に、閉塞が流体通路内部で生じるとき、流体圧力は、モータおよび駆動列によって流体に印加された力により増大する。電力が供給されて滑動部がさらに貯槽中へ駆動されるとき、貯槽中の流体圧力は増大する。実際に、力がモータから滑動部に伝達されるとき、駆動列全体に対する負荷が増大し、滑動部は、流体を圧迫するストッパによって移動が制約される。適切に位置決めされたセンサは、駆動列内部の1つまたは複数の構成要素に印加された力の変動を測定することができる。このセンサは、測定値を使用して閉塞を検出しかつ使用者に警告できるように、少なくとも3つの出力レベルを供給する。
【0114】
好ましい実施形態では、センサは力に敏感な抵抗器であり、センサに印加された力が変化するときに、その抵抗は変化する。代替実施形態では、センサは、容量センサ、圧電抵抗センサ、圧電センサ、磁気センサ、光センサ、電位差計、超微細加工センサ、リニア変換器、エンコーダ、歪みゲージなどであり、これらは圧縮力、剪断力、張力、変位、距離、回転、トルク、力、圧力などを測定することができる。好ましい実施形態では、センサは、測定されるべき物理的パラメータに応答して出力信号を供給することができる。そしてセンサ出力信号の値域および分解能は、測定値域全体にわたって少なくとも3つの出力レベル(3つの異なる状態、値、量、信号、大きさ、周波数、段階など)を供給する。例えば、センサは、測定されたパラメータが最小レベルにあるとき、低い値またはゼロ値を生成し、測定されたパラメータが比較的に高いレベルにあるとき、高い値または最大値を生成し、かつ測定されたパラメータが最小レベルと比較的高いレベルとの間にあるとき、低い値と高い値との間の中間値を生成しうる。好ましい実施形態では、センサは、4つ以上の出力レベルを供給し、標本抽出的、連続的、または概連続的な様態で、抵抗の変化ごとに対応する信号を供給する。センサは、2つのみの出力値を有し、したがって、「オン」および「オフ」または「高」および「低」のような、2つの出力レベルを示しうるに過ぎないスイッチとは区別される。
【0115】
本発明の好ましい実施形態では、力に敏感な抵抗器をセンサとして使用するが、それは、センサに印加された力が変化するときに抵抗を変化させる。電子機器システムは、センサ全体にわたって一定の電源電圧を維持する。センサからの出力信号は、センサの抵抗物質を通過する信号電流である。センサ抵抗は力と共に変化し、かつセンサ全体にわたって電源電圧が一定であるので、信号電流は力と共に変化する。信号電流は、電子機器システムによって信号電圧に変換される。信号電圧は、駆動列構成要素に印加された力または貯槽中の流体圧力の測定値として使用される。代替実施形態では、一定の電源電流が使用され、かつセンサ全体にわたって信号電圧は力(流体圧力)と共に変化する。他の代替実施形態では、流体通路中の閉塞を検出するために、他の電子機器システムおよび/または他のセンサを使用して、流体圧力または力を電子機器システムによって使用される測定値に変換する。
【0116】
好ましい実施形態では、センサを取り付けるための構成および方法は、貯槽に対する滑動部の偶発的な移動を十分に制限し、構成要素間の空間を最小限にし、センサがわずかな力の変化を直ちに検出するのに十分に剛性であり、センサ範囲が閉塞、着座、およびプライミング検出には不十分である箇所にセンサを予め組み込むことを回避し、早期の閉塞検出に十分な分解能を与え、センサシステムおよび駆動列構成要素の寸法許容誤差の積重ねを補償し、位置合わせ不良、偏位、寸法不整合などを補償するのに十分な駆動システムの構成要素の移動を可能にし、駆動システムの動作に要する電力を増大する恐れのある不必要な摩擦の追加を回避し、かつ衝撃および振動損傷からセンサを保護しなければならない。
【0117】
一般に、一旦注入セットがプライミングされかつ使用者の体内に挿入されると、滑動部は、モータによって駆動されない限り、貯槽に対する出入りが許容されてはならない。モータによって駆動されることなく貯槽内部への滑動部の移動を可能にする緩んだ構成で、モータおよび/または駆動列構成要素が組み立てられる場合、注入ポンプが振動または衝突すると、流体は偶発的に送達される恐れがある。したがって、センサおよび/またはセンサの装着に関連する構成要素は、力が感知されている駆動列構成要素に対して一般に緊密に位置決めされることによって、注入ポンプが衝撃または振動を受けたときに駆動列構成要素が移動するのを防止する。
【0118】
好ましい実施形態では、センサは、ポンプモータが動作中に負荷を受けると直ちに、駆動列構成要素が負荷をセンサに印加するように位置決めされる。センサと負荷を印加する駆動列構成要素との間の空間を最小限にすると、負荷変動に対するセンサの感度が向上する。負荷のわずかな変化を使用して傾向を検出することが可能であるため、流体送達が完全に停止される前に閉塞が生じていることを早期に警告する。
【0119】
好ましい実施形態では、センサおよび関連電子機器は、0.5ポンド(0.23kg)と5.0ポンド(2.3kg)との間の力を測定することが企図されており、0.05ポンド以下の望ましい分解能を有している。しかも、センサを具備する注入ポンプは、企図されたセンサ測定値域よりも遙かに高い力がセンサに印加されることになる衝撃レベルにも耐えるべきである。代替実施形態では、センサ値域はゼロから10ポンド(4.5kg)である。他の代替実施形態では、センサ値域および/または分解能は、送達されている流体の濃度、貯槽の直径、流体通路の直径、駆動列の動作に要する力、センサ雑音のレベル、センサ測定値から傾向を検出するために適用されたアルゴリズムなどに応じて、より大きいかまたはより小さくてもよい。
【0120】
好ましい実施形態では、センサおよび関連電子機器は、1つまたは複数の駆動列構成要素によってセンサに印加された力に応答して、比較的直線的な電圧出力を供給する。0.5ポンドから4.0ポンドの値域にわたる力に応答するセンサ(およびその関連電子機器)から測定された電圧の実施例が、図20のデータ点3201〜3208として示されている。
【0121】
好ましい実施形態では、各センサが、図20に示したように、既知の力の特定の値域全体にわたって較正点を収集することによって較正される。それぞれの既知の力に関する測定電圧出力が、較正ルックアップテーブル中に格納される。次いで、ポンプ動作中に、電圧出力が較正点に比較され、かつ線形補間を使用して電圧出力を測定された力に変換する。好ましくは、8つの較正点を使用して較正ルックアップテーブルを生成する。別法として、センサ線形性、雑音、ドリフト率、分解能、要求センサ精度などに応じて、より多くのまたはより少ない較正点が使用される。他の代替実施形態では、カーブフィッティング、補間を伴わないルックアップテーブル、補外、1点または2点較正などのような、他の較正方法が使用される。他の代替実施形態では、印加された力に応答する電圧出力が実質的に非線形である。他の代替実施形態では、較正が使用されない。
【0122】
好ましい実施形態では、センサ測定値が、駆動システムに流体を送出するように指令する前と、駆動システムが流体の送達を停止した直後とに採取される。代替実施形態では、センサデータは、特定のサンプリングレート、例えば、10Hz、3Hz、毎10秒に1回、毎1分に1回、毎5分に1回などで継続的に収集される。他の代替実施形態では、センサデータが、駆動システムに流体を送達するように指令する直前のみに収集される。さらに他の代替実施形態では、センサデータが流体送達中に収集される。
【0123】
好ましい実施形態では、流体通路中の閉塞を示すために、2つの方法、すなわち、最大測定閾値方法および傾き閾値方法を使用する。どちらの方法も別個に閉塞を示すことができる。閉塞が示されると、流体送達指令が停止され、注入ポンプが使用者に警報を発する。警報は、音、1つまたは複数の合成音声、振動、表示記号もしくはメッセージ、ビデオ、光、伝達信号、ブライユ点字出力などを含んでもよく、それらに限定されない。警報に応答して、使用者は、例えば、注入セット、管系、管系コネクタ、貯槽、ストッパなどを含めて、流体通路中の1つまたは複数の構成要素の交換を選択することができる。使用者が閉塞警報に応答する必要があるものには他に、注入ポンプの自己検査の実行、センサの再較正、警報の無視、注入ポンプの交換、注入ポンプの修理出しなどが含まれる。代替実施形態では、閉塞が検出されたとき、流体送達の試みは続行され、かつ警報が使用者または他の個人に提供される。
【0124】
最大測定閾値方法を使用するとき、測定された力が閾値を超えるときに閉塞が示される。好ましい実施形態では、2.00ポンド(0.91kg)の閾値が、流体の送達前にセンサによって測定された力の値と比較される。測定された力が2.00ポンド(0.91kg)以上の大きさであれば、流体の送達が許容される前に1つまたは複数の確認測定値が採取される。4つの連続的な力測定値が2.00ポンド(0.91kg)を超えると、閉塞が示される。代替実施形態では、センサの信号対雑音レベル、電子装置の信号対雑音レベル、測定ドリフト、温度および/または湿度に対する感度、流体の送達に要する力、1回の最大許容用量、衝撃および/または振動に対するセンサの脆弱性などに応じて、より高いまたはより低い閾値が使用可能であり、かつより多くのまたはより少ない確認読取り値が収集可能である。他の代替実施形態では、最大測定閾値方法が使用されない。さらに他の代替実施形態では、流体の送達が、閾値を超える1つまたは複数の測定値に関しては許容されるが、所定数の連続的な測定値が閾値を超えると、流体の送達は許容されずかつ閉塞が示される。
【0125】
先に述べたように、2つのみの別個の出力レベルしか提供できないスイッチではなく、ある一定の範囲の出力レベルを提供するセンサの使用は、出力における傾向を検出するためにアルゴリズムの使用を可能にすることによって、最大測定閾値に到達する前に閉塞を示すことを可能にする。好ましい実施形態では、早期の閉塞検出を行うために、傾き閾値方法を使用して傾向を評価する。傾き閾値方法を使用するとき、一連のデータ点が、流体の送達に要する力が増大中であることを示すと、閉塞が示される。一連の連続的なデータ点を通過する線に関して傾きが計算される。この線の傾きが傾き閾値を超えた場合、圧力が流体通路中で増大しており、したがって閉塞が発生した恐れがある。何も流体通路を妨害していないとき、各送達の前にセンサによって測定された力は、比較的一定のままであり、平均的な傾きは概ね平坦である。
【0126】
図21で分かるように、特定の実施形態では、センサ706を使用して、滑動部711が適切にストッパ714と着座したことを検出する。ストッパ714を収容する貯槽715が、注入ポンプ701中に配置される前に、貯槽715に流体が充填される。ストッパ714は、滑動部711上の雄ねじ山712を把持するように構成された柔軟な雌ねじ山713を有している。ストッパ714および滑動部711は、雌ねじ山713を雄ねじ山712と係合させるために相互に対して回転する必要はない。実際に、特定の実施形態では、雌ねじ山713および雄ねじ山712は、滑動部711およびストッパ714が一緒に押し込まれるとき、いくつかのねじ山が他のねじ山と食い違うように、異なるねじ山ピッチを有している。一旦貯槽715が注入ポンプ701中に配置されると、モータ705が、滑動部711を貯槽715中へ移動させてストッパ714に係合するように駆動される。滑動部711のねじ山712が最初にストッパのねじ山713に接触するとき、センサ706は力の増大を検出する。この力は、より多くのねじ山が相互に接触するとき増大し続ける。滑動部711がストッパ714と適切に着座するとき、センサ706によって測定された力は、雌ねじ山713を雄ねじ山712と係合させるために要する力よりも高いレベルまで増大する。この着座動作中に、センサ706によって感知された力が着座閾値を超えれば、モータ705は、さらなる指令が出されるまで停止される。着座閾値は、一般に約1.5ポンド(0.68kg)である。代替実施形態では、滑動部をストッパと嵌め合わせるために要する力、流体を貯槽から押し出すために要する力、モータの速度、センサ精度および分解能などに応じて、より高いかまたはより低い着座閾値が使用されうる。いくつかの実施形態では、滑動部がストッパに押し当たるだけであり、ストッパによって把持されないので、滑動部をストッパと嵌め合わせるために力を必要としない。
【0127】
さらに他の特定の実施形態では、他の力の閾値が他の目的に使用される。例えば、プライミング中に、約4ポンド(2kg)の閾値が使用される。代替実施形態では、注入ポンプを損傷している恐れがある衝撃負荷を検出するために、約4ポンドよりも大きい力が使用される。
【0128】
力に敏感な抵抗器および容量センサの使用を上で記載したが、本明細書に開示された実施形態では、企図された用途の範囲全体にわたって出力信号の少なくとも3つの異なるレベルを提供できる任意の種類のセンサを含んでいることは自明である。センサは、駆動列構成要素に印加された力、駆動列構成要素の位置の変化、駆動列構成要素に印加されたトルクなどを測定するために駆動列の様々な実施形態の内部に位置決めされうる。
【0129】
例えば、代替実施形態では、圧電センサを使用して、変化する電圧を駆動列構成要素に印加された変化する力の関数として生成する。特定の代替実施形態では、圧電センサは、偏光セラミックまたは、ペンシルベニア州Valley Forge所在のAmp Incorporated社から入手可能であるKynar(登録商標)のようなポリフッ化ビニリデン(PVDF)材料から作製されている。
【0130】
先に説明した実施形態では、一般に流体圧力または駆動列に沿って軸方向に加えられた力を測定する。しかし、本発明の代替実施形態では、貯槽内部の流体圧力の指標として駆動システム構成要素に印加されたトルクを測定する。
【0131】
図22に示されている他の特定の実施形態では、モータ2301(すなわち歯車箱が装着されているモータ)が、歯車の組2303を駆動するために係合された駆動軸2302を有している。モータ2301は、動力で駆動軸2302を方向dへ回転させるトルクを生成する。駆動軸2302はトルクを親ねじ2304に伝達するために歯車2303を回転させて、親ねじ2304を方向d'へ回転させる。親ねじ2304は支持するために軸受2305に取り付けられている。親ねじ2304のねじ山は滑動部2306中のねじ山(図示せず)と係合されている。滑動部2306は、この滑動部2306の回転を防止するが、それが親ねじ2304の長さに沿って並進することを可能にするように、筐体(図示せず)中のスロット(図示せず)と係合されている。したがって、親ねじ2304のトルクd'は滑動部2306に伝達されて、滑動部2306をモータ2301の駆動軸2302に概ね平行な軸方向へ移動させる。滑動部2306は貯槽2308の内側でストッパ2307と接触している。滑動部2306が前進すると、ストッパ2307は、貯槽2308の内側で軸方向へ移動するように強制され、流体を貯槽2308から押し出し、管系2309を介して注入セット2310中に押し入れる。
【0132】
もし閉塞が発生すれば、ストッパ2307は前進するように強制され、貯槽2308中の圧力が増大する。流体を圧迫するストッパ2307の力は、モータ2301に作用する反作用トルクd"をもたらす。特定の実施形態では、センサを使用して、モータ2301に印加されたトルクd"を測定し、かつセンサ測定値を使用して貯槽2308中の圧力を推定する。
【0133】
図23(aおよびb)に示された他の特定の実施形態では、モータ2401が、モータケース2402、近位軸受2403、遠位軸受2404、モータ軸2408、および歯車2405を有している。モータ2401は、梁2406によって筐体(図示せず)または他の固定点に固着されている。梁2406の一端がモータケース2402の繋止点2410に固着され、梁2406の他端が筐体(図示せず)の筐体繋止点2409に固着されている。歪みゲージセンサ2407が梁2406の上に取り付けられている。
【0134】
モータ軸2408の各端部は、軸方向に支持するが、モータ軸2408およびモータ2401の回転を許容する軸受2403および2404上に取り付けられている。梁2406は、モータ駆動トルクdと大きさが等しくかつ方向が反対である方向d'へ反モーメントを供給する。モータ2401によって生成されたトルクが増大するとき、梁2406中の反作用モーメントd"が増大し、それによって梁2406内部の歪みを増大させかつ梁2406を撓ませる。梁2406の上に取り付けられた歪みゲージセンサ2407を使用して梁2406の撓みを測定する。電子機器システム(図示せず)は、貯槽(図示せず)中の流体圧力または駆動列(図示せず)に作用する力を推定するために、歪みゲージセンサ測定値を変換する。
【0135】
この測定方法は、貯槽内部の圧力(および摩擦の積重ね)に関する情報ばかりでなく、駆動列に関する情報も提供する。例えば、歯車、軸受、または親ねじ境界面の中のような駆動列内部に不具合が存在すれば、歪みゲージセンサ2407で測定されたトルクが、その不具合を検出することになる。他の実施形態では、歪みゲージ2407を使用して、モータの駆動および流体の送達を確認する。正常な流体送達時には、モータが駆動されている間に測定モーメントが短時間で増大し、次いで流体が貯槽から流出して、圧力、したがってモーメントを解放すると減少する。電子機器システムは、モータ起動時に測定モーメントが増大し、かつモータにもはや電力が供給されなくなると、モーメントが休止状態まで再び減少することを確認するようにプログラムされる。
【0136】
組み込まれた引用文献(すなわち、すでに交付済みの米国特許第6,362,591号、すなわち、1999年10月28日に出願された米国特許出願第09/428,411号、および米国特許第6,485,465号としてすでに交付済みの2001年3月27日に出願された米国特許出願第09/819,208号)からの以上の引用は、流体を注入ポンプの貯槽から送達するために要する力の変化を検出できるセンサを使用して、着装携行式ポンプにおける閉塞検出および流体圧力感知システムを記載した。記載した回路はセンサに対する力の変化を検出し、その変化を使用して、滑動部が貯槽中で適切に着座する時点を示すか、または流体を注入ポンプから送達する間に閉塞が生じる時点を検出する。同じ回路はまた、流体を使用者に送達するために駆動システムによって使用される電流を測定できることも記載した。さらに、閉塞検出を補助しかつモータトルクを測定するためにモータの直線または回転変位を検出するために使用可能であるモータ位置エンコーダを記載した。
【0137】
本発明の他の実施形態によれば、上で記載した同じ回路を使用して、力センサが機能不全である時点を検出するために電流測定値を使用することによって、力センサの不具合を検出することができる。力センサは、広義では、1つまたは複数のセンサ自体と、センサからのデータを解釈するための回路と、センサを支持するための物理的構造とを含んでいる。センサからの不正確な読取り値を引き起こす力センサシステムにおける問題はいずれも、力センサにかかわる問題として識別される。利得増幅器を増やし、かつ高い周波数雑音を低減するためにより低い周波数のフィルタを使用するという点での回路のわずかな変更が、力センサの機能不全を検出するためにモータに送達された標本電流値にとって効果的であることが判明した。力感知システムは、水による損傷、または注入ポンプケース中の亀裂に限らず、これらを含む多様な理由で機能不全になりうる。力感知システムの不具合を検出する決定的な時点は、貯槽内部におけるストッパとの滑動部の着座時(すなわち、注入ポンプ内部に貯槽を装填した後で最初にモータが駆動される時点)である。先に記載したように、電子機器回路は、滑動部が適切にストッパ中に着座したことを判定するために、センサ出力レベルを処理して滑動部がストッパに係合するときの力の増大を検出する。しかし、力センサシステム(または一般に「力センサ」)が故障していれば、電子機器システムは、滑動部がストッパ中に着座したことを検出することはなく、滑動部は、潜在的にそれが移動の終点に到達するまで前進し続けることが可能であり、ストッパは、事実上すべての流体を貯槽から押し出してしまう。これは、使用者がポンプにつながっていれば破滅的な結果を有する恐れがあり、ポンプは貯槽からすべての流体(例えば、インシュリン)を使用者の体内に投与してしまう。この過剰投与は、使用者に致命的な害または深刻な損傷を十分与えうる。
【0138】
本発明の好ましい実施形態によれば、モータを駆動する電流測定値と力センサ用の検査基準としてモータ位置エンコーダとを使用して力センサの機能不全を検出するために、図24および25に図示されたソフトウェアアルゴリズムが使用される。図24および25に記載されたソフトウェアアルゴリズムは、プランジャ滑動部が貯槽中でストッパと着座するために前方に移動する時点ごとに注入ポンプ制御装置によって実行される。力センサが設定値よりも大きい力の増大を検出する(すなわち、ストッパにおけるプランジャ滑動部の着座を検出する)任意の時点で、図24および25のソフトウェアアルゴリズムは、ソフトウェア論理の実行時に停止される。換言すれば、図24および25の論理は、力センサが設定閾値よりも大きい力を検出する前にのみ適用される(すなわち、決してストッパとの着座を検出するものではない)。
【0139】
図24のブロック3000から開始すると、モータを駆動するために使用される電流、力センサに加えられた力、およびプランジャ滑動部の移動を判定するためのモータ位置エンコーダ計数が、プランジャ滑動部の着座過程時に(すなわち、プランジャ滑動部がストッパ中に挿入されるときに)測定される。ブロック3010で、ソフトウェアは、平均電流の値を戻すためにモータに送達された平均電流を計算する。好ましい実施形態では、高-低平均電流(HLAC)が使用される。HLACは、5つの最近の値から最高および最低電流値を捨て、次いで、残る3つの電流値を平均することによって計算される。HLAC計算の実施例が図25に示されている。しかし、代替実施形態では、5つよりも多いかもしくは少ない最近の電流値を使用すること、および/またはより少ないかもしくはより多い電流値を捨てることを含めて、平均電流を計算する他の方法が使用されてもよい。
【0140】
図25に示したように、高-低平均電流計算の実施例は、それが図24のブロック3010からHLACを計算するように指令を受け取るとき、ブロック3200から始まる。好ましい実施形態によれば、駆動モータへの電流は、モータがオフにされるまでサンプリングされる。典型的なサンプリングレートは、70ミリ秒毎に1回である。モータを稼働するために使用された合計電流は、電流値として円形バッファ中に格納される。電流はより少ないかまたはより多い頻度でサンプリングされうる。電流バッファ中の最近の5つの電流値(すなわち、電流[0]、電流[1]、電流[2]、電流[3]、および電流[4])を使用して平均電流を求める。ブロック3210で、計算に使用された最初のパラメータは、現在の電流値に設定される高値および低値を除いて、すべてがゼロに設定される(すなわち、高=電流[現在]、低=電流[現在]、計数=0、平均電流=0、および総和=0)。
【0141】
ブロック3220で、論理は、5つの電流値が計算で使用するために利用可能であることを確認する(すなわち、計数>4?)。先に述べたように、電流の数は、代替実施形態では5つよりも大きいかまたは小さいように変更可能である。最初に、円形バッファ中には利用可能な5つよりも少ない電流値が存在し(すなわち、計数≦4)、したがって、計数が4以下であるので、論理はブロック3230に進む。ブロック3230で、全電流値が、電流値の総和を生成するために合算され、電流計数における電流は、論理がブロック3230に到達する度ごとに総和に加算される。論理の第1実行では、第1電流値(すなわち、電流[0])が自動的に総和に加算される。論理はブロック3240に進み、そこでソフトウェアが最近の5つの電流値の最高値を識別する。同様に、ブロック3260の論理は最近の5つの電流値の最低値を識別する。論理の第1実行では、パラメータ計数、高、低がブロック3210でゼロに設定された。したがって、ブロック3240で、電流[0](すなわち、電流[計数])は電流[0](すなわち、電流[高])よりも大きくなく、したがって論理はブロック3260に進む。同様に、ブロック3260で、電流[0](すなわち、電流[計数])は電流[0](すなわち、電流[低])よりも小さくなく、したがって論理はブロック3280に進む。次いで、ブロック3280で、計数は1だけ増やされる。
【0142】
ブロック3220で計数が1に設定されると、論理は再びブロック3230に進む。ブロック3230で、計数[1]の値がブロック3230で総和に加算され、論理はブロック3240に進む。ブロック3240で、論理は、電流[計数]が既存の電流[高]よりも大きいかどうかを判定する。電流[計数]が既存の電流[高]よりも大きければ、ブロック3250で、パラメータ高が計数に等しく設定され、電流[計数]が最高電流であることを標識する。次いで、論理は、ブロック3280で計数を1だけ増やし、ブロック3220に戻る。したがって、例えば、電流[1]が電流[0]よりも高ければ、パラメータ高は1に設定され、電流[1]が、受け取られた最高の電流を有することを標識する。他方で、電流[計数]が電流[高]よりも低ければ、論理はブロック3260に進む。ブロック3260で、論理は、電流[計数]が既存の電流[低]よりも小さいかどうかを判定する。したがって、電流[計数]が既存の電流[低]よりも小さければ、ブロック3270で、パラメータ低は計数に等しく設定され、電流[計数]が最低電流であることを標識する。次いで、論理はブロック3280で計数を1だけ増やし、ブロック3220に戻る。したがって、例えば、電流[1]が電流[0]よりも低ければ、パラメータ低は1に設定され、電流[1]は、受け取られた最低電流として標識される。ブロック3240,3250,3260,および3270の論理のさらなる反復が、平均電流を計算するために使用される5つの電流の中から高いおよび低い電流を識別することになる。
【0143】
一旦5つの電流が測定され、高いおよび低い電流を判定するために比較されると、3220の論理は、ブロック3290で平均電流を計算する。ブロック3290で、5つの電流値のすべてを合算した総和は、電流[高]および電流[低]を取り去り、残る総和を3で除算する。ブロック3300で、平均電流計算は図24のブロック3010に戻され、図24の論理で平均電流として使用される。
【0144】
図24を再び参照すると、平均電流がブロック3020で電流閾値と比較される。電流閾値よりも大きい平均電流の値が、故障力センサソフトウェアアルゴリズムを起動する。電流閾値は、インシュリンポンプが使用者に支給される前のポンプの事前試験に基づいて、インシュリンポンプごとに最初に割当て可能な固有の値である。判定すべき個々の装置の試験をいずれも必要としない閾値の組がすべての装置に存在することも可能である。電流閾値は、プランジャ滑動部が貯槽内部に着座するときに使用された電流を示すために使用される。各インシュリンポンプは、インシュリンポンプ内部で使用された原材料が、異なる電流閾値をもたらすわずかに異なった物理的特徴を有するので、わずかに異なる値を有することになる。好ましい実施形態では、ソフトウェアアルゴリズムが適切に機能することを保証するように、電流閾値を導出するために以下の試験が実行される。この試験は、ポンプが着座を実行するときに、一定の3ポンドの力をポンプ滑動部に印加するが、その場合に力および電流の両方が測定される。電流値は、先に論じたアルゴリズと同様の高-低平均電流アルゴリズムを使用して処理され、第1および最後の20測定値が捨てられる。代替実施形態では、第1および最後の測定値のより大きいかまたはより小さい数が捨てられうる。これらの標本は、システムが、最初の標本では定常状態に達しておらず、最後の標本では減衰しており、電流および力の値を不安定にするシステムに対処するために捨てられる。電流値は、それがアプリケーションコードにおける場合と同じ率で(すなわち、70〜90ミリ秒毎に)標本抽出される。次いで、これらの値は平均され、かつアプリケーションコード用に格納される。力測定値も測定されかつ平均されるが、データが除去されたりまたは高-低平均が使用されたりすることはない。平均力は、3ポンドに比較され、それが2.4と3.6ポンドとの範囲内になければ、エラーのフラグが立てられ、ポンプは、力の較正が正確でなかったことを示す。別法として、平均力が3ポンドよりも大きいかまたは小さい力に比較可能であり、その標準誤差は、平均力が比較される力から0.6ポンド大きいかまたは小さい値の範囲にわたりうる。これが生じると、電流閾値は無効と見なされて格納されず、かつポンプは不合格となる。力の値に関してエラーが存在しなければ、電流閾値および平均力はポンプに格納される。さらに他の実施形態では、電流閾値および平均力の両方の値はまた、使用者の駆動キーを使用して試験の完了後に表示されうる。さらには、他のさらなる実施形態では、使用者が、インシュリンポンプ内部にプログラムされた同じ試験を使用して、定期的に電流閾値を再較正することができる。
【0145】
図24のブロック3020に戻ると、平均電流が平均閾値よりも大きくなければ、論理は、滑動部がまだ貯槽中に着座していないことを識別し、ブロック3030に進む。ブロック3030で、エンコーダ計数(EC)がリセットされる。エンコーダ計数は、滑動部の移動を測定するためにモータ位置エンコーダによって記録された計数である。好ましい実施形態では、エンコーダは、モータおよび親ねじの回転を記録することができる。例えば、好ましい実施形態では、直流モータの1回転当たりに256計数が存在し、かつ親ねじ1回転当たりにモータの約221回転が存在する。図24のアルゴリズムでは、エンコーダ計数は、親ねじ回転数の直流モータ回転数倍に基づいている。しかし、他の実施形態では、エンコーダは、モータの回転数のみを計数し、1回転当たりの計数の数は、注入ポンプ機構または計数方法に基づいて変化しうる。他の実施形態では、エンコーダ計数の使用は、ソフトウェア計算から割愛されうる。
【0146】
一旦エンコーダ計数がリセットされると、論理はブロック3040に進む。ブロック3040で、パラメータ、エンコーダ計数差、時間差がゼロに設定される。エンコーダ計数差および時間差は、プランジャ滑動部が着座時にまだ貯槽に係合していないことを示すためにゼロに設定され、論理はブロック3010に戻って繰り返すように設定される。特に、論理がブロック3070に進むとき、エンコーダ計数差は、それがエンコーダ計数閾値よりも大きいかどうかを確認するために比較される。好ましい実施形態では、エンコーダ計数閾値が60,000に設定される。60,000は、一旦プランジャ滑動部が貯槽中に着座すると、RU-100インシュリンの10単位が貯槽から押し出される場合の計数の近似値である。代替実施形態では、特に異なる種類のインシュリン、薬物、流体、または薬剤の使用に関して、エンコーダ計数閾値レベルは異なるレベルに設定可能である。しかし、エンコーダ計数差がゼロに設定されるこの場合では、エンコーダ計数差がエンコーダ計数閾値よりも小さいので、論理はブロック3080に進む。ブロック3080で、時間差が時間閾値に比較される。好ましい実施形態では、時間閾値は3秒に設定される。時間閾値は、モータが駆動された時間に基づいてプランジャ滑動部の前進量を推定するための、エンコーダ計数閾値に対するバックアップである。この場合に、時間差はゼロに設定され、したがって、論理は、力センサに関してエラーが検出されなかったことを示すために、ブロック3100に進む。ブロック3100から、論理は、最近の平均電流を判定するためにブロック3010に再びループする。
【0147】
一旦、平均電流がブロック3020で電流閾値を超過すると、論理は、貯槽中でプランジャ滑動部の着座が行われたことを認識する。論理は、最終検査で平均電流が電流閾値を超えたかどうかを判定するためにブロック3050に進む。ブロック3050の論理は、プランジャ滑動部の着座が丁度行われたかどうか、またはプランジャ滑動部が既に着座済みであるかどうかを判定するために電流を使用する。プランジャ滑動部が丁度着座を完了したら(すなわち、これがブロック3050で平均電流が電流閾値を超えた最初の時点であれば)、論理は、パラメータEC差および時間差がゼロに設定されるブロック3040に進む。次いで、論理は、上で記載したように、力センサに関するエラーを示すことなく、ブロック3010に再びループする。他方では、ブロック3050の論理が、既に先ほど着座が行われたと判定すれば、論理はブロック3060に進む。
【0148】
ブロック3060で、パラメータエンコーダ計数差および時間差が計算される。エンコーダ計数差は、ポンプが最初にプランジャ滑動部の着座を検出したので、追加的なエンコーダ計数の数(すなわち、平均電流は電流閾値を超えて上昇しかつ電流閾値を超えた状態にあるので、エンコーダ計数の数)を求める。さらに、時間差は、ポンプが最初にプランジャ滑動部の着座を検出したので、経過した時間量(すなわち、平均電流は電流閾値を超えて上昇しかつ電流閾値を超えた状態にあるので、時間)を求める。次いで、計算されたパラメータは、ブロック3070でエンコーダ計数閾値にかつブロック3080で時間差閾値に比較される。ブロック3070におけるエンコーダ計数閾値またはブロック3080における時間差閾値を超えれば、力センサにかかわる不具合が検出され、ブロック3090で報告が行われる。当然、上で記載したように、力センサが貯槽中におけるプランジャ滑動部の適切な着座を信号で知らせる図24のアルゴリズム時の任意の時点で力の増大を検出すれば、力センサにエラーは検出されない。
【0149】
したがって、図24のソフトウェアアルゴリズムは、より高い力が検出されるべきであることを電流の使用量が示しても、力センサが力の増大(すなわち、プランジャ滑動部の着座を示すために各注入ポンプ中で予め設定された低い力値よりも大きい力)を報告しないとき、力センサに関するエラーを判定するように構成されている。したがって、次の2つのシナリオが既存のアルゴリズムに関して生じる。第1シナリオは、着座時に、力が力センサで1.4ポンドを超えて上昇し、他方では着座が行われる前の平均電流が電流閾値未満に留まっていたか、または電流が平均電流を超えているが、1.4ポンドの力に到達する前のエンコーダ計数の必要な数に関してではないときの適切なセンサの場合である。この第1の場合では、ポンプはプランジャ滑動部を貯槽中に着座させ、エラーのフラグを立てない。第2の場合では、プランジャ滑動部の着座時に、平均電流が電流閾値に到達して電流閾値を超えた状態に留まり、他方ではエンコーダ計数の特定の数に到達する前に、力が決して低力値よりも大きくならない。この場合には、力センサは、一旦ポンプがエンコーダ計数の特定の数に到達すると、故障したものとして検出される。
【0150】
代替実施形態では、図24のアルゴリズムは、着座が行われたことを明確に示すために、力の読取り値が低力値を超えて上昇するが、力閾値(すなわち、プランジャ滑動部が貯槽中に着座したことを示すために注入ポンプに関して予め設定された値)を超えて上昇しないように、センサ性能が故障し始めている時点(すなわち、限界センサ)を検出するように変更可能である。他の代替実施形態は、着座時に平均電流がその閾値に到達するが、次いで閾値未満に再び低下する場合に対処するために、アルゴリズムを変更することができる。平均電流が閾値未満に低下するごとに、エンコーダ計数閾値が再起動される。しかし、これが3回以上発生すると、3回目の発生時に、エンコーダ計数閾値は再設定されるべきはなく、ポンプは、特定のエンコーダ計数閾値に関してのみ着座を続行するべきである。これらのソフトウェアアルゴリズムはまた、巻戻しが存在しない限り、たとえ使用者が着座過程を停止し、次いで再始動させても、ポンプが3回閾値に到達したかどうかを認識しないように、使用者が随意にプランジャ滑動部の着座を開始および停止できることを考慮することも可能である。
【0151】
他の実施形態では、注入ポンプはまた、注入ポンプの様々な段階的機能にまつわるデータを記録するためにデータ格納機能も実行する。したがって、着座が行われる度に、データ格納機能は、検出された力および電流を記録し、この情報を長期トレースバッファに格納する。さらに、電流平均が電流閾値に到達することがあれば、力および電流の以後の測定値もそれぞれ、ポンプが着座するかまたはエラーのフラグを立てるまで長期トレースバッファに格納されるべきである。さらに、電流閾値を超過しかつ警報のフラグが立てられるか、バイアルの終点に到達するか、力閾値を超過するか、またはポンプがプランジャ滑動部を貯槽中に着座させる度ごとに、これらのデータ点が記録され、トレースが、このデータを分析するために、収集されたデータ点から作成されうる。
【0152】
他の実施形態では、多変数を使用して閉塞または妨害を検出する。2つ以上の変数の使用によって、システムは、1つのみの変数を使用することに起因しうる問題をいずれも回避する。例えば、力のみが閉塞の検出に使用される場合、故障した力センサは、偽の閉塞を検出させたり、または実際の閉塞を見過ごさせたりする恐れがある。これは、患者に送達されるべき薬物投与の欠損用量または過剰に大きい量をもたらす恐れがある。同じ潜在的な問題が、任意の1つのパラメータをシステムの閉塞検出の基本として使用することによって起こりうる。
【0153】
2つ以上の変数を使用して閉塞を判定すると、閉塞を認識しかつ/または閉塞検出の精度を高めるための時間を短縮することができる。偽の警報の数を最小限にするばかりでなく、閉塞を知らせる時間も短縮するシステムを有することが好ましい。閉塞を知らせる時間を短縮することによって、欠損用量の回数を減らすことが可能である。
【0154】
多変数による閉塞検出方式で使用可能な多くの変数が存在する。このような変数の実施例には、モータの力、駆動電流、駆動電圧、駆動時間、モータの惰性回転時間、送達パルスのエネルギー、ならびに駆動計数、惰性回転計数、およびデルタエンコーダ計数のような閉ループ送達アルゴリズムからの変数のような、システム、ポンプ、および/またはモータの特性および/またはパラメータがある。これらの変数のすべてが、上で記載した回路から測定可能であるが、所望であれば、これらのまたは追加的な変数のいずれかを測定するために回路を追加することも可能である。
【0155】
一般に、力は以上の実施形態で説明されている力センサから測定される。モータに印加された電流量であり、力に敏感な抵抗器から測定されうるモータの駆動電流も以上の実施形態で記載されている。駆動電圧は、モータに印加された電圧の尺度であり、例えば、モータ巻線間の電圧を測定する、力に敏感な抵抗器からも測定可能である。モータの駆動時間は、モータの電源がオンである(すなわち、電力がモータに供給される)間の、例えば、秒またはミリ秒単位の時間である。モータの惰性回転時間は、送達パルスの終わりまで、モータの電源がオフになった後に、モータが惰性回転または動作し続ける、例えば、秒またはミリ秒単位の時間である。送達パルスのエネルギーは、駆動電圧と駆動電流との積であり、それは計算装置によって計算可能である。
【0156】
駆動計数および惰性回転計数は、それぞれが上で記載したエンコーダ計数である。駆動計数は、モータの電源がオンである時間が増加するにつれて増加し、惰性回転計数は、モータの電源がオフになった後でモータが惰性回転する時間が増加するにつれて増加する。駆動計数および惰性回転計数は共に、デルタエンコーダ計数、すなわち、送達パルスからのエンコーダ計数の変化に等しい。
【0157】
上で説明した2つ以上の変数は、多くの異なる様態で組合せ可能である。例えば、これらは相互乗算または合算されうる。3つ以上の変数が使用可能であれば、変数のいくつかは、他の変数の乗算と併せて加算されうる。例えば、1つまたは複数の変数が、それらを加算する前に重みつけ係数によって乗算されうる。1つまたは複数の変数の変化率は、変数の大きさを冪乗することによって増大されうる。例えば、F=測定された力であれば、測定された力の大きさをFXだけ増大させることが可能であり、その場合にX=所望の冪数である。変数の大きさを冪乗することは、変数の相互乗算および/または合算と併せて利用されうる。
【0158】
変数を組み合わせるとき、平均化された値を使用することによって、または高い読取り値および低い読取り値を除外した後で平均化された値を使用することによってデータをフィルタに掛けることも有用でありうる。例えば、1つのデータ点が、近くで採取された平均データ点の値域外にかけ離れていれば、そのデータ点を捨てることが有用でありうる。使用可能なデータをフィルタに掛ける追加的な実施例は、最大または最小値にあるデータを切り取り、値間の変化率を制限し、かつ傾向を計算し、その傾向が一貫していれば、より少ない値を使用するものである。
【0159】
正規化因子も、様々な変数が相互に併せて使用されうるように、それらの変数の大きさを同様のレベルにするために使用可能である。例えば、1つの実施形態では、非閉塞稼働力が約0.5ポンドであり、閉塞力が約2.0ポンドであり、非閉塞駆動計数がおよそ47であり、かつ閉塞駆動計数がおよそ100である。これらの値は、使用者に支給される前にポンプの事前試験に基づいて個々のポンプに関して決定可能であるか、またはいくつかのポンプ構成に関する平均値が決定可能である。さらに、各変数に対する閉塞検出の依存を変更することが可能である。例えば、閉塞検出を力および電流に等しく依存させることが所望されうる。しかし、力が閉塞のより適切な指標である場合には、閉塞検出を力により多く依存させることが所望されうる。
【0160】
多変数閉塞検出方式の1つの実施形態では、可変駆動計数および力が共に閉塞の検出に使用される。閉塞によって圧力が増大すると、滑動部を前方に移動させるために要する力が増大する。増大した圧力は、力センサによる増大した力の読取り値をもたらす。増大した力はまた、各送達パルスに関する目標エンコーダ計数に到達するのに必要な駆動計数の増大をもたらす。駆動計数および力の乗算またはこれらの変数の加算は、閉塞指標の大きさを増大させる。
【0161】
図26は、単一変数閉塞検出方式と多変数閉塞検出方式との間の大きさの差を例示するグラフを示している。閉塞2601は、40と60送達パルスとの間で始まる。このグラフは、単一変数に基づく2つの異なる方式に関するデータを示している。一連の第1データ2602は単一変数、すなわち、力に基づいており、それは力センサによって測定される。力に基づくこの単一変数方式では、閉塞は2つの変数の大きさ2603で最大閾値方法を使用して識別された。一連の第2データ2604も単一変数、すなわち、50の正規化因子によって除算された駆動計数に基づいている。一連の第3データ2605は、これらの変数、すなわち、力および正規化された駆動計数の両方に基づいており、これらは相互に乗算され、次いでこれらの2つの変数の積にオフセットが加算される。この特定の一連のデータ点を生成するために使用された方程式は、F=測定された力であり、かつDC=駆動計数であれば、多変数値=(F*(DC/50))+0.25であった。この方程式では、正規化因子は50であり、オフセットは0.25であった。正規化因子またはオフセットは、適切な精度で閉塞を検出するために有用であると識別された任意の好ましい値でよい。
【0162】
このグラフは、閉塞2601前に、多変数値列2605の大きさが単一変数力読取り値2602の大きさと同様であることを示す。これは、方程式の正規化およびオフセットの結果である。ポンプが閉塞の開始2601後にインシュリンを送達し続けるとき、多変数値列2605は、単一変数力読取り値2602の大きさのほぼ2倍の大きさに達する。したがって、閉塞は、多変数方式では遙かに早く識別されうる。多変数方式を用いると、閉塞を示す閾値も、閉塞が検出される前に経過した時間量を増やすことなく引上げ可能であり、それは、閉塞が実際に発生したというより高い確信を与えうる。
【0163】
多変数方式は、単一変数閉塞検出に使用されたアルゴリズムに組込み可能である。また、新たなアルゴリズムが、特に多変数閉塞検出に使用するために生成されうる。例示すると、使用可能ないくつかのアルゴリズムは、傾き閾値方法および最大閾値方法である。別法として、変数の分散は、システムに関する一般的な値域の外側にある値を探すことによって監視されうる。値が通常値域からのある一定の分散よりも多ければ、それは、閉塞または他の問題がシステムで発生したことを示すことができる。
【0164】
図27は、多変数方式を使用する実施形態の論理の流れ図を例示している。論理は2701から始まる。システムは、2702で第1ポンプ値を測定し、2703で第2ポンプ値を測定する。これらのブロックは、連続してまたは並行して生じうる。これらが連続して生じれば、値は同時にまたは異なる時間に測定されうるが、これらが同じ送達パルス時に測定されることが好ましい。次いで、システムは測定されたポンプ値に基づいて閉塞を検出する(2704)。閉塞は、上で記載したように、かつ下で記載する動的システムの使用によって検出されうる。閉塞が存在しなければ、システムは、正常に注入を続行する(2706)。閉塞が検出される場合には、システムは閉塞を知らせる(2705)。システムは、閉塞を使用者に知らせるために警報を発することができる。
【0165】
1つまたは複数の変数の傾きを使用して、同様に閉塞の検出を加速することが可能である。これは、1つの変数または多変数の変化率である。正常送達時では、傾きは、規則的な変化率を伴わずに一定であるべきである。閉塞の発生後、例えば、力または駆動計数は、圧力が増大するときに増大する。正常送達時には、これらの変数に多くのわずかな変化は存在しうるが、閉塞後には、変化率はかなり定常的でかつ正に留まる。好ましい実施形態では、力の変化率が、連続して10送達の間、正であり、次いで閉塞が識別されることになる。それはまた、システムが高まっていることを検証するために閾値で設定可能である。変化率は、10連続送達の間、正である必要があり、力は1ポンドよりも大きくなければならない。送達時に採取された力の測定値4001のグラフが図30に示されている。点4003から形成された線は、力の傾きを示す。図30に示された実施例では、閉塞が4005で生じる。10個連続の正の傾きの値の後で、システムは閉塞を検出するようにプログラムされ(4007)、かつ警報が起動される。
【0166】
閉塞を判定する別の方式は、反曲点または傾きの変化率を探すものである。これは、一定の力または他の変数から新たな変化率への変化でありうる。例えば、図31は、経時的に採取された力測定値4021を示す。線4023によって示された一定の力が、線4025によって示された新たな変化率に変化する。警報4027が、この変化によって起動される。
【0167】
本発明の他の実施形態では、1つの変数または多変数のどちらかを使用することによって、閉塞検出が動的に実行される。以上に記載したシステムには、送達パルスに関して言及された変数に分散を引き起こす多くの変数が存在する。これらのいくつかは、貯槽と駆動列との間の位置合わせ不良、プランジャまたはストッパと駆動列との間の位置合わせ不良、Oリングのコンプライアンス、およびセンサに関連する雑音の結果である。これらの変数により、偽の閉塞検出が行われないことを保証するために、これらを補償するように閉塞検出閾値が設定される。その結果として、これらのシステムは一般に、閉塞が検出される前により多くの送達パルスを可能にする。例えば、力読取り値を使用する最大閾値検出方法は、システム警報が起動される前に、閉塞発生後に60の追加的な送達パルスが試みられることを許容しうる。動的な閉塞検出方法が使用される場合には、過剰な送達パルスの数は、3つの追加的なパルス程度の低さの非常に小さい数まで低減されうる。
【0168】
本明細書で先に説明した閉塞検出方法では、一般に1つのみの測定値が1送達パルスごとに採取される。この測定は、送達前、送達中、または送達後に行われうる。閉塞検出の動的な方法は、各送達パルス時に収集された多測定値を採取する。測定値は、所定の頻度で、所望通りに頻繁にもしくはまれに定期的に採取されうるか、または測定値は、送達パルスに対して特定の時間に採取されうる。例えば、測定値は、数秒ごとに、または毎秒もしくは部分秒ごとに1回であっても採取可能である。送達パルス全体にわたって継続的に測定値を採取することも可能である。
【0169】
実施例として力の測定値を使用すると、一般に力は送達パルス直後に大量に増加する。送達パルスの後、力は、定常状態の力が実現されるまで減少する。閉塞が存在すれば、定常状態の力は、閉塞が存在していない場合よりも高くなるか、または閉塞が存在するとき、定常状態の力は、閉塞が存在しないときよりもピーク力のより大きな割合になるか、または閉塞が存在すれば、ピーク力の後のある時点における力が、閉塞が存在しない場合よりもピーク力に比べてより大きな割合になる。この例示が図28に示されている。図28のグラフは、送達パルス時の時間の関数として力を示している。太線2801は、非閉塞システムにおける力を示している。破線2802は、閉塞システムにおける力を示している。システムは閉塞されるので、力はより遅い速度で減少する。送達時に採取された多測定値を使用すると、測定値のピーク値2804を求めることが可能である。以下でさらに詳細に論じるように、このグラフはまた、閉塞システムのピーク後の値2806および非閉塞システムのピーク後の値2805を示している。ピーク前の値2803も示されている。
【0170】
多くの種類の変数またはパラメータを使用するいくつかの方式で、上記の原理を使用して閉塞を動的に検出することが可能である。以下の分析は力測定値の使用を記載するが、閉塞の動的検出は、多変数を含めて、以上に記載した変数のいずれかを使用して同様に検出されてもよいことは自明である。
【0171】
簡素なアルゴリズムが、2つの測定値またはデータ点を使用することができる。例えば、力は、ピーク値2804で、かつピーク値2805またはピーク値2806の後のある時点で測定可能である。このアルゴリズムでは、ピーク2804とピーク後の値2805または2806との間の差が計算され、次いで差閾値と比較される。差閾値は、すべてのポンプに関して予め決定されうるか、使用者に支給される前にポンプの事前試験に基づいて個々のポンプに関して決定されるか、新たな貯槽がポンプに装填されかつポンプがプライミングされる度ごとにポンプに関して決定されるか(例えば、システムはポンプのプライミングの後で最初の3つの送達パルスの平均的な差を計算し、かつその平均的な差の割合を差閾値として使用する)、または継続的に決定されうる(例えば、システムは、数パルス以前から計算された連続的な送達パルスのある一定の数の平均差を採取可能であり、例えば、3つの連続的な送達パルスの平均差が、電流送達パルス前の6つのパルスに関して計算され、かつその平均差を差閾値として使用可能である)。この差が、その閾値に対して一致または超過すれば、警報が起動される。したがって、非閉塞力の変動が閉塞警報を起動することはない。例えば、非閉塞力を変化させうるいくつかの変数には、プランジャと貯槽との間の位置合わせ不良、貯槽内部の輪郭むら、ストッパと貯槽との間の変化する摩擦、より速いかまたはより遅い送達速度、より大きいかまたはより小さい送達量などが含まれる。
【0172】
別法として、この差が閾値のある一定の割合、例えば、閾値の90%に対して一致または超過すれば、警報が起動されうる。すべての差または過去の差のある一定の数の記録を保持することも可能である。システムは、連続的なパルスのある一定の数、例えば、3つが、閾値(または閾値のある割合)に等しいかまたはそれよりも高い差を生成するまで待機可能であり、次いで、警報を起動する。さらに、システムにおける変数に対処するために、連続的なパルスのある一定の数、例えば3つにわたって平均差が採取され、かつ差閾値と比較されうる。平均差が差閾値(または閾値のある割合)に等しいかまたはそれよりも高ければ、警報が起動される。
【0173】
さらに、各パルスにわたるピークの変化に対処するために、合計の力をピーク値2804と所定の定常状態値との間の差として計算し、次いでピーク値2804とピーク後の値2805との間の差を合計の力のパーセント値として計算することが可能である。この割合が所定の閾値未満であれば、警報が起動される。しかし、この方法の欠点は、それが各パルスの後に力が同様のまたは同一の定常状態値に戻るものと想定することである。
【0174】
したがって、力が決してゼロに戻らず、かつ同一のまたは同様の定常状態値に戻ることができないことに対処するために、ピーク値前に採取される第3値2803も図28に示されている。この第3値2803は、ピーク値2804およびピーク後の値2805に追加して使用される。このピーク前の値2803を使用してピーク値2804を正規化することができる。ピーク値2804とピーク前の値2803との間の差が合計力値として計算されうる。次いで、ピーク値2804とピーク後の値2805またはピーク後の値2806との間の差は、求められたばかりの合計力値の割合として測定される。この割合が所定の閾値未満であれば、警報が起動される。
【0175】
また、減衰がピーク値2804の後に始まるとき、変数(例えば、力)の減衰率を計算することが可能である。減衰率はピーク2804直後および減衰終了付近では同じであるので、ピーク2804後の何らかの所定時間に始まり、減衰の終了前の何らかの所定の時間に終わる測定値を採取することが好ましい。次いで、傾きが一連の測定値を通過する線に関して計算され、かつ傾き閾値と比較されうる。上で記載した差閾値と同様に、傾き閾値は、すべてのポンプに関して予め決定されるか、使用者に支給される前にポンプの事前試験に基づいて個々のポンプに関して決定されるか、新たな貯槽がポンプ中に装填され、かつポンプがプライミングされる度ごとにポンプに関して決定されるか、または継続的に決定されうる。線の傾きが、傾き閾値に等しいかまたはそれよりも大きければ、警報が起動される。別法として、傾きが、傾き閾値のある一定の割合、例えば、閾値の90%に対して一致または超過すれば、警報が起動される。他の動的閉塞検出システムに関して上で論じたように、平均傾き値を計算し、かつ計算された平均傾き値を傾き閾値(閾値のある一定の割合)と比較することも可能である。平均傾き値が、傾き閾値または傾き閾値の何らかの他の所定の割合(例えば、90%)よりも大きいかまたはそれに等しければ、力は正常に減衰していないと見なすことができる。したがって、閉塞が示されうる。
【0176】
他の実施形態では、変数(例えば、力)の多測定値が、上で記載したように各送達パルス時に採取可能であり、曲線が測定値またはデータ点に当てはめられてもよい。次いで、曲線下の面積の積分が取られうる。この積分がある一定の閾値を超えれば、閉塞が示されうる。さらに他の代替実施形態では、実際の測定値ではなく微分値のような上述の変数を使用し、測定値の導関数を計算し、傾きを計算するために点の値域全体にわたる点のサブセットを使用し、曲線当てはめ方程式を使用し、円滑化、切取り、または他のフィルタリング技法を用いることなどによって、閉塞が生じたかどうかを判定するために他のアルゴリズムを使用することができる。
【0177】
高い流速(例えば、大量送達に関するような、短時間における送達パルスの高い数)では、閉塞の検出損ないのような不具合の可能性がより高いので、これらの高い流速では他の閉塞検出方法を使用することが推奨されうる。高い流速では、システムがパルスの合間に定常状態に戻るための十分な時間が存在しえないので、この不具合が発生する恐れがある。すべての時点で閉塞検出の向上を可能にするために、動的閉塞方法は、以上に説明した他の閉塞検出方法(例えば、最大測定閾値、傾き閾値など)と併せて使用可能である。
【0178】
図29は、動的閉塞検出方式を使用する実施形態の論理の流れ図を図示している。論理は2901から始まる。システムは、好ましくは1つの送達パルスにわたって定期的に、2902で一連のポンプ値を測定する。システムは、2903で一連のポンプ値のピーク値を求める。システムはまた、2904でピーク値よりも後の第2値を求める。第2値は、ピーク後の所定の時点またはピーク値の後で採取された所定数の測定値でありうる。別法として、それはまた、次の送達パルスの前に採取されたかまたは送達パルスの開始後に採取された、所定の時点または所定の数の測定値でありうる。次いで、システムは閉塞を検出する(2905)。閉塞は、上で記載したアルゴリズムを使用して検出可能である。閉塞が存在しなければ、システムは正常通りに注入を続行する(2907)。閉塞が検出される場合には、システムは閉塞を知らせる(2906)。システムは、使用者に閉塞を知らせるために警報を出力することができる。
【0179】
以上の説明は本発明の特定の実施形態に関するものであるが、本発明の趣旨から逸脱することなく、多くの変更が実施可能であることは自明である。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲および趣旨の範囲内に入ることになるこのような変更を網羅することを企図するものである。「X、Y、およびZ」のように、後ろにリストが続く「からなる群から選択された」という文言は、特許請求の範囲で使用されるとき、そのリストのすべての部材が存在しなければならないか、またはそのリストの各部材の少なくとも1つが存在しなければならないことを意味しようと企図するものではない。リストの部材の1つ、いくつか、またはすべてが存在する場合を網羅することが企図されている。例えば、リストが「X、Y、およびZ」である場合に、特許請求の範囲は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、XおよびY、XおよびZ、YおよびZ、ならびにX、Y、およびZを包含する実施形態を網羅することになる。本発明の開示された実施形態は、すべての態様において例示的であって、限定的であると考えられるべきではなく、本発明の範囲は、以上の記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示されており、かつ特許請求の範囲の均等物の意味および範囲の中に入るすべての変更は、特許請求の範囲の中に包含されることが企図されている。
【0180】
インシュリンの送達の減少を検出するために個々にまたは組み合わせて使用可能な本システム構成に固有の1つまたは複数のパラメータをポンプに監視させることを可能にするために複数の方法を記載した。これらの方法の1つまたはこれらの方法の複数は、潜在的な閉塞に関してシステムを監視する複数の方法を提供する冗長用にポンプソフトウェアに実装されうる。さらに、1つまたは複数のこれらの方法は、プログラム可能なポンプユーザインターフェースを通じてソフトウェアの選択を介して使用者によって使用可能になる。
【0181】
各画定された閉塞測定方法は、偽の警報を出力することなく、インシュリン送達の減少をもたらす真の閉塞に関してシステムを監視する際に様々な効果を有しうる。この場合には、変数に対するより高い感度のせいでより多くの偽の警報を生成する恐れがある、よりアグレッシブな測定技法は、ソフトウェアプログラム可能なインターフェースを介して使用者によって使用不能にされうる。これは、使用者が、選択された方法によって閉塞に対するシステムの感度を調節することを可能にする。実施例として、2つの方法が、ユーザセレクタブルとしてポンプソフトウェアに実装されうる。第1方法は、それが第2方法、すなわち、閉塞警報を示す前に第1方法よりも多い送達欠損をもたらす力値を使う簡素な力閾値である方法よりもインシュリン送達の欠損がより少ない状態で閉塞を検出するように、画定されたパラメータを用いる傾き方法でありうる。本方法は、「高い感度」および「低い感度」のような異なる説明によって列挙されうる。使用者は、「高い感度」を選択して両方の方法を使用可能することも、または「低い感度」を選択して1つのみの方法、例えば、簡素な閾値方法を使用可能にすることもできる。さらに、本システムは、使用者に3つ以上の選択を与える2つまたはそれ以上の異なる方法を実施することも可能である。さらに、閉塞を検出する感度に影響する2つ以上のパラメータを使って同じ測定方法が実施可能であり、それによってより高い感度を有する選択パラメータは、偽情報を発する可能性がより高くなるが、真の閉塞をより迅速に検出できる利点がある。例えば、本システムは、引用により本明細書に組み込まれた米国特許第6,362,591号で記載されたように、閉塞を検出する簡素な力閾値方法を含みうる。ポンプは、例えば、1.0ポンド、2.0ポンド、および3.0ポンドの予めプログラムされた閾トリガ力値を有することが可能であり、使用者は、これらの力値のいずれかを選択することが可能である。選択された力値が低ければ低いほど、それだけポンプは閉塞による圧力増大に対してより敏感になり、それによって所定の送達速度において、より短い時間のうちに閉塞警報を生成する。感度設定が高ければ高いほど、それだけ高い割合で偽の警報をもたらすことになる。別法として、使用者が3.0ポンドを選択する場合に、所与の送達速度において真の閉塞に関する閉塞警報を生成するための時間が増えるという代償を払えば、偽の警報を発する可能性がより低くなる。別法として、使用者に1.0ポンド、2.0ポンド、および3.0ポンドの選択を与える代わりに、使用者に「低い」、「中位の」、および「高い」感度の選択を与えることが可能である。この実施例では3つの異なる選択可能な力値を記載したが、本システムは、選択可能な力値の任意の数、例えば、2つ、4つ、または5つの力値を使ってプログラムされうる。さらに、この実施例は、簡素な力閾値方法を説明した。本出願に記載の考察された閉塞感知方法は、いずれも同様の様態で実施可能である。
【0182】
以上の説明は本発明の特定の実施形態に言及するが、本発明の趣旨から逸脱することなく多くの変更が実施可能であることは自明である。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲および趣旨の中に入ることになるこのような変更を網羅することが企図されている。
【0183】
したがって、ここに開示された実施形態は、すべての態様において例示的であって、限定的であると考えられるべきではなく、本発明の範囲は、以上の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示されており、したがって特許請求の範囲の均等物の意味および範囲の中に入るすべての変更は、特許請求の範囲の中に包含されることが企図されている。
【符号の説明】
【0184】
101,201,403,705,2301,2401 モータ
102,203,2304 親ねじ
103 駆動ナット
104 ピストン
105,206,301,715,2308 貯槽
106,207,2310 注入セット
107,208,302,401 筐体
110 掛止アーム
201a,432,2302 駆動軸
202,906,2405 歯車
204 プランジャ滑動部
205 貯槽ピストン
209,2305 軸受
303,1404,1802 ピストン部材
304 ピストンヘッド
305 回転駆動ねじ
306 駆動モータ
402 下方区間
404 駆動ねじ(第1駆動部材)
405 プランジャ滑動部(第2駆動部材)
406 バイアルまたは貯槽
407 プランジャまたはピストン組立体
409 Oリング封止体
410 回転防止キー
412 システムコンプライアンス取付け
420 電源
422 電子制御回路
424 雌部分
426 雄部分
428 ピストン組立体の端面
430 プランジャ滑動部の端部
431 コネクタ
433 コネクタのねじ山
434 回転防止スロット
436 長方形タブ
440 貯槽ピストン組立体の移動軸
442 リング(カラー)
701 注入ポンプ
706 センサ
711,2306 滑動部
712 雄ねじ山
713 雌ねじ山
714,2307 ストッパ
2303 歯車の組
2309 管系
2402 モータケース
2403,2404 近位軸受
2406 梁
2407 歪みゲージセンサ
2408 モータ軸
2409 筐体繋止点
2410 繋止点
2701,2901 開始ブロック
2702 第1ポンプ値を測定するブロック
2703 第2ポンプ値を測定するブロック
2704,2905 閉塞を検出するブロック
2705,2906 閉塞を示すブロック
2706,2907 注入を継続するブロック
2902 一連のポンプ値を測定するブロック
2903 一連のポンプ値のピーク値を決定するブロック
2904 ピーク値よりも後の第2値を決定するブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽からユーザの体内に流体を注入するために、前記貯槽に結合した1つまたは複数の駆動列構成要素とモータとを備える駆動機構を有する注入ポンプ内の閉塞を検出する方法であって、
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する第1パラメータを測定する段階を含み、前記第1パラメータは、力またはモータ駆動計数のいずれかであり、
前記方法は、
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する別の第2パラメータを測定する段階を含み、前記第2パラメータは、駆動電流、駆動電圧、モータ駆動時間、モータ惰性回転時間、送達パルスエネルギー、モータ惰性回転計数、およびデルタエンコーダ計数のうちの1つであり、
前記方法は、
第1の組み合わせ値を生成するように、前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせる段階と、
前記第1の組み合わせ値を使用することによって、閉塞が発生したかどうかを判定する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせる段階は、前記第1パラメータを前記第2パラメータに加算する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせる段階は、前記第1パラメータを前記第2パラメータで乗算する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせる段階は、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうち少なくとも1つを指数関数的に増加させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうち1つまたは複数を正規化因子で乗算する段階と、
オフセット値を加算する段階とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閉塞が発生したかどうかを判定する段階は、前記第1の組み合わせ値が閾値を超えた場合に、閉塞が発生したことを示す段階を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する先行する第1パラメータおよび先行する第2パラメータを取り出す段階と、
第2の組み合わせ値を生成するように、前記先行する第1パラメータを前記先行する第2パラメータと組み合わせる段階とを含み、
前記第1の組み合わせ値を使用することによって、閉塞が発生したかどうかを判定する段階は、前記第1の組み合わせ値および前記第2の組み合わせ値を使用して線の傾きを計算する段階と、前記傾きが傾き閾値を超えた場合に閉塞が発生したことを示す段階とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の先行する第1パラメータ、および1つまたは複数の先行する第2パラメータを取り出す段階と、
1つまたは複数の先行する組み合わせ値を生成するように、前記1つまたは複数の先行する第1パラメータを前記1つまたは複数の先行する第2パラメータと組み合わせる段階と、
前記1つまたは複数の先行する組み合わせ値から先行する組み合わせ値の平均を計算する段階と、
前記第1の組み合わせ値が前記先行する組み合わせ値の平均とは異なる所定量よりも大きいかどうかを判定することによって、閉塞が発生したかどうかを判定する段階とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の組み合わせ値を使用することによって、閉塞が発生したかどうかを判定する段階は、
前記第1の組み合わせ値を使用して、閉塞が発生したかどうかについて第1の計算を行う段階と、
前記第1の計算とは別に、第2の組み合わせ値を使用して、閉塞が発生したかどうかについての第2計算を行う段階と、前記第2の組み合わせ値は、前記第1の組み合わせ値と同じまたは異なり、
前記第1の計算および第2の計算のいずれかまたは両方が、閉塞が発生したことを示した場合、閉塞が発生したと判定する段階とを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
貯槽からユーザの体内に流体を注入する注入ポンプであって、
筐体と、
前記筐体内に収容された1つまたは複数の駆動構成要素およびモータを備えるとともに、前記貯槽から流体通路を通して前記ユーザの体内に流体を送達するように、前記貯槽と動作可能に結合された駆動機構と、
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する第1パラメータと、前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する別の第2パラメータとを測定するように構成された1つまたは複数の電子構成要素と、
前記筐体内に収容され、かつ前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせて組み合わせ値を生成し、前記組み合わせ値を使用して、前記注入ポンプの流体通路内で閉塞が発生したかどうかを判定するように構成されたプロセッサとを備え、
前記第1パラメータは、力またはモータ駆動計数のいずれかであり、前記第2パラメータは、駆動電流、駆動電圧、モータ駆動時間、モータ惰性回転時間、送達パルスエネルギー、モータ惰性回転計数、およびデルタエンコーダ計数のうちの1つであることを特徴とする注入ポンプ。
【請求項11】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータを前記第2パラメータに加算することを含むことを特徴とする請求項10に記載の注入ポンプ。
【請求項12】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータを前記第2パラメータで乗算することを含むことを特徴とする請求項10に記載の注入ポンプ。
【請求項13】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうちの少なくとも1つを指数関数的に増加させることを含むことを特徴とする請求項10に記載の注入ポンプ。
【請求項14】
前記プロセッサは、最大測定閾値方法、傾き閾値方法、分散監視方法、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された閉塞検出方法を使用することによって、閉塞が発生したかどうかを判定するようにさらに構成されることを特徴とする請求項10に記載の注入ポンプ。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうち1つまたは複数を正規化因子で乗算して、オフセット値を加算するようにさらに構成されることを特徴とする請求項10に記載の注入ポンプ。
【請求項16】
1つまたは複数の駆動列構成要素とモータとを備える駆動機構を有する注入ポンプ内の閉塞を検出する閉塞検出システムであって、
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する第1パラメータを測定する手段を備え、前記第1パラメータは、力またはモータ駆動計数のいずれかであり、
前記閉塞検出システムは、
前記駆動列構成要素の1つまたは前記モータに関連する第2パラメータを測定する手段を備え、前記第2パラメータは、駆動電流、駆動電圧、モータ駆動時間、モータ惰性回転時間、送達パルスエネルギー、モータ惰性回転計数、およびデルタエンコーダ計数のうちの1つであり、
前記閉塞検出システムは、
組み合わせ値を生成するように、前記第1パラメータを前記第2パラメータと組み合わせる手段と、
前記組み合わせ値を使用することによって、前記注入ポンプ内で閉塞が発生したかどうかを判定する手段とを備えることを特徴とする閉塞検出システム。
【請求項17】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータを前記第2パラメータに加算することを含むことを特徴とする請求項16に記載の閉塞検出システム。
【請求項18】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータを前記第2パラメータで乗算することを含むことを特徴とする請求項16に記載の閉塞検出システム。
【請求項19】
前記組み合わせ値の生成は、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうちの少なくとも1つを指数関数的に増加させることを含むことを特徴とする請求項16に記載の閉塞検出システム。
【請求項20】
前記組み合わせる手段は、前記第1パラメータおよび前記第2パラメータのうち1つまたは複数を正規化因子で乗算して、オフセット値を加算するように構成されることを特徴とする請求項16に記載の閉塞検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13a】
image rotate

【図13b】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15a】
image rotate

【図15b】
image rotate

【図15c】
image rotate

【図16a】
image rotate

【図16b】
image rotate

【図16c】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23a】
image rotate

【図23b】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2012−205929(P2012−205929A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165574(P2012−165574)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2012−32581(P2012−32581)の分割
【原出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507028398)メドトロニック・ミニメッド・インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】