説明

携帯型薬液ポンプ

【課題】携帯に優れた携帯型薬液ポンプを提供すること。
【解決手段】携帯型薬液ポンプ5は、外筒2と、外筒2内で摺動し得るガスケット3と、ガスケット3を移動操作するプランジャ4とを有し、薬液200の最大充填量が5〜20mLであるシリンジ1を装填して用いられるものである。この携帯型薬液ポンプ1は、外筒2を保持する保持体6と、保持体6に移動可能に設置され、その移動によりプランジャ4を先端方向に向かって押圧する押圧部材7と、外筒2の側方に隣接して配置され、押圧部材7をプランジャ4ごと先端方向に付勢し、その付勢力が一定の定荷重バネである渦巻きバネ8と、保持体6で外筒2を保持した状態で、シリンジ1ごと保持体6と押圧部材7と渦巻きバネ8とを収納するケース9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型薬液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を投与する際には、薬液が予め充填されたシリンジと、シリンジが装着されるポンプ装置とを備えるシリンジポンプを使用する(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のポンプ装置は、シリンジの外筒を保持するフレームと、フレームに設置され、シリンジのプランジャを押圧する押圧機構とを有している。この押圧機構は、圧縮コイルバネを有し、当該圧縮コイルバネの付勢力により、プランジャを押圧するよう構成されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のポンプ装置は、押圧機構の圧縮コイルバネがプランジャの基端側に配置されており、このような構成では、当該ポンプ装置の全長が長くなってしまう。このため、特許文献1に記載のポンプ装置を例えば衣服のポケットに収納して携帯しようとした場合、当該ポンプ装置がポケットからはみ出してしまい、携帯しづらいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−514255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、携帯に優れた携帯型薬液ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 先端部に口部を有する外筒と、該外筒内で摺動し得るガスケットと、該ガスケットに連結され、前記ガスケットを移動操作するプランジャとを有し、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間に充填可能な薬液の最大充填量が5〜20mLであるシリンジを装填して用いられる携帯型薬液ポンプであって、
前記外筒を保持する保持体と、
前記保持体に移動可能に設置され、当該移動により前記プランジャを先端方向に向かって押圧する押圧部材と、
前記外筒の側方に隣接して配置され、前記押圧部材を前記プランジャごと先端方向に付勢する渦巻きバネと、
前記保持体で前記外筒を保持した状態で、前記シリンジと前記押圧部材と前記渦巻きバネとを収納するケースとを備えることを特徴とする携帯型薬液ポンプ。
【0007】
(2) 前記渦巻きバネは、その外端部が前記押圧部材に連結され、その内端部が前記保持体に対し回転軸を介して回転可能に支持されている上記(1)に記載の携帯型薬液ポンプ。
【0008】
(3) 前記保持体は、前記プランジャを摺動可能に支持する支持部を有する上記(1)または(2)に記載の携帯型薬液ポンプ。
【0009】
(4) 前記ケースは、開閉可能な一対の半体で構成されたケース本体と、該ケース本体が閉じた状態で施錠可能な施錠部とを有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の携帯型薬液ポンプ。
【0010】
(5) 前記押圧部材が前記プランジャを先端方向に向かって押圧した際、前記口部から吐出される前記薬液の吐出速度は、0.05〜1mL/時間である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の携帯型薬液ポンプ。
【0011】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記渦巻きバネは、前記押圧部材が前記渦巻きバネの付勢力に抗して基端方向に移動した際に伸びた状態となって、該伸びた状態から元の状態へ復元しようとする復元力が生じ、該復元力により、前記押圧部材を先端方向に移動させて前記プランジャを押圧するよう構成されているのが好ましい。
【0012】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記渦巻きバネの前記伸びた状態を維持するロック手段を備えるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記保持体は、長尺な板状をなすものであり、その長手方向に沿って前記シリンジが配置されるのが好ましい。
【0014】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記保持体は、その長手方向の途中で、前記外筒の少なくとも基端部を保持するよう構成されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記ケースには、前記シリンジを視認可能な窓部が設けられているのが好ましい。
【0016】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記窓部には、前記プランジャの基端の位置を示す目盛りが付されているのが好ましい。
【0017】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記押圧部材は、前記プランジャの基端に当接する当接面を有するのが好ましい。
【0018】
また、本発明の携帯型薬液ポンプでは、前記押圧部材が移動する際、該押圧部材を案内するガイド手段を備えるのが好ましい。
【0019】
また、ポンプセットは、
本発明の携帯型薬液ポンプと、
前記携帯型薬液ポンプに装填され、先端部に口部を有する外筒と、該外筒内で摺動し得るガスケットと、該ガスケットに連結され、前記ガスケットを移動操作するプランジャとを有し、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間に充填可能な薬液の最大充填量が5〜20mLであるシリンジとを備える。
また、前記ポンプセットでは、前記薬液は、オピオイドであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、渦巻きバネがシリンジの外筒の側方に隣接して配置されている。ここで、仮に押圧部材を付勢する付勢部材としてのコイルバネを用い、当該コイルバネがシリンジ1の基端側に配置された場合を考えてみる。この場合、コイルバネの分だけ、ポンプの全長が長くなってしまう。このように全長が長いポンプを例えば衣服のポケットに収納して携帯しようとすると、当該ポンプがポケットからはみ出してしまい、携帯しづらくなる。これに対し、本発明では、押圧部材を付勢する渦巻きバネがシリンジの外筒の側方に配置されていることにより、ポンプの全長が長くなるのを防止または抑制することができる。これにより、ポンプが小型化され、携帯に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の携帯型薬液ポンプの第1実施形態を示す分解平面図である。
【図2】本発明の携帯型薬液ポンプの第1実施形態を示す組立平面図である。
【図3】本発明の携帯型薬液ポンプの使用状態を示す平面図である。
【図4】図1中のA−A線断面図である。
【図5】図1中のB−B線断面図である。
【図6】図2中の矢印C方向から見た図(部分横断面図)である。
【図7】本発明の携帯型薬液ポンプの第2実施形態を示す平面図である。
【図8】図7中のD−D線断面図である。
【図9】本発明の携帯型薬液ポンプに接続される流量調整装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の携帯型薬液ポンプを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の携帯型薬液ポンプの第1実施形態を示す分解平面図、図2は、本発明の携帯型薬液ポンプの第1実施形態を示す組立平面図、図3は、本発明の携帯型薬液ポンプの使用状態を示す平面図、図4は、図1中のA−A線断面図、図5は、図1中のB−B線断面図、図6は、図2中の矢印C方向から見た図(部分横断面図)、図9は、本発明の携帯型薬液ポンプに接続される流量調整装置の平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図3、図5および図9中(図7についても同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言い、図4〜図6中(図8についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0024】
図1〜図3に示すように、ポンプセット10は、シリンジ1と、携帯型薬液ポンプ(以下単に「ポンプ」と言う)5とを備え、薬液200の投与に用いられるものである。以下、各部の構成について説明する。
【0025】
シリンジ1は、外筒2と、外筒2内にその長手方向に沿って摺動可能に設置されたガスケット3と、ガスケット3を移動操作するプランジャ4とを備えている。そして、外筒2とガスケット3とで囲まれた空間24内には、予め薬液200が充填されている。なお、このシリンジ1は、比較的サイズが小さいもの、すなわち、充填可能な薬液200の最大充填量が5〜20mL、好ましくは5〜10mL、より好ましくは10mLのものである。
【0026】
外筒2は、筒状をなす外筒本体21を有している。外筒本体21の先端部には、外径および内径が縮径した縮径部で構成された口部22が形成されている。この口部22から薬液200が吐出される。
【0027】
また、外筒本体21の基端には、板状をなすフランジ25が突出形成されている。
また、外筒本体21の外周部には、薬液200の液量を示す目盛り26が付されている。
【0028】
ガスケット3は、円柱状または円板状をなす弾性体で構成されている。そして、ガスケット3の外周面が外筒本体21の内周面に対し密着しつつ摺動することで、気密性(液密性)を確実に保持することができる。
【0029】
プランジャ4は、長尺な本体部42を有している。本体部42の先端部は、ガスケット3と例えば螺合により連結されている。また、本体部42の横断面形状は、十文字状をなしている。本体部42の基端には、円板状のフランジ41が突出形成されている。薬液200を排出する際には、フランジ41を先端方向に向かって押圧することにより、ガスケット3が薬液200を口部22から押し出し、その排出を容易に行うことができる。
【0030】
なお、外筒2およびプランジャ4の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような各種樹脂材料が挙げられる。
【0031】
また、ガスケット3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
また、薬液200としては、特に限定されないが、例えば、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、オピオイド(麻薬)、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、抗生物質注射液、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、蛋白製剤、抑吐剤、抗ホルモン剤、精神安定剤のような各種薬液が挙げられる。そして、これらの薬剤の中で、特に、オピオイドの投与にポンプセット10を好適に用いることができる。これについては、後述する。
【0033】
図3に示すように、シリンジ1の口部22には、チューブセット20が接続されている。チューブセット20は、耐脂溶性薬品を有するチューブ30と、チューブ30の基端部に設置されたコネクタ40と、チューブ30の長手方向の途中に設置されたフィルタ50と、フィルタ50よりも先端側に設置された流量調整装置60とを有している。
【0034】
コネクタ40は、筒状をなし、シリンジ1の口部22に液密に嵌合することができる。このコネクタ40を介して、チューブ30がシリンジ1内と連通する。
【0035】
チューブ30は、その中空部が薬液200が通過する流路として機能するものである。また、チューブ30の基端部は、患者に予め留置された留置針に接続可能に構成されている。チューブ30内を流下した薬液200は、前記留置針を介して、患者に投与される。
【0036】
フィルタ50は、気体は通過するが液体は通過しない、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成された疎水膜501を有するものである。このフィルタ50を介して、チューブ30内の空気を排出することができる。
【0037】
図9に示すように、流量調整装置60は、装置本体605と、装置本体605に並べて配置された可撓性を有する第1チューブ603aおよび第2チューブ603bと、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bのうちの一方のチューブを圧閉する圧閉部606を有する操作ダイヤル602と、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bの各先端部がそれぞれ接続されたY字コネクタ604aと、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bの各基端部がそれぞれ接続されたY字コネクタ604bとを備えている。また、第1チューブ603aの基端側の部分には、オリフィス601aを形成するチップ607aが液密に嵌入され、第2チューブ603bの基端側の部分には、オリフィス601bを形成するチップ607bが液密に嵌入されている。チップ607a、607bは、それぞれ、細管で構成されている。そして、チップ607a、607bは、互いに管路径が異なり、その大きさに応じた管路抵抗によって薬液200の流量を微量に制御するものである。
【0038】
このような構成の流量調整装置60では、操作ダイヤル602を操作することにより、第1チューブ603aおよび第2チューブ603bのうちの一方を開放し、他方を圧閉部606で閉塞することができる。そして、開放した一方のチューブをシリンジ1からの薬液200が通過し、その際、当該チューブに嵌入されたチップによって、薬液200の流量の大小を切り換える、すなわち、調整することができる。
【0039】
また、オリフィス601a、601bの内径は、特に限定されないが、例えば、12.5〜125μmであるのが好ましく、25〜65μmであるのがより好ましい。また、オリフィス601の長さは、特に限定されないが、例えば、3〜30mmであるのが好ましく、10〜20mmであるのがより好ましい。
【0040】
図1〜図3に示すように、ポンプ5は、シリンジ1を装填して用いられるものであり、外筒2を保持する保持体6と、保持体6に移動可能に設置された押圧部材7と、押圧部材7を先端方向に付勢する渦巻きバネ8と、これらを一括して収納するケース9とを備えている。なお、ポンプ5は、使用者の衣服のポケットに入れたり、使用者の首から吊り下げたりすることで携帯される。
【0041】
保持体6は、ポンプ5の本体を構成する長尺な板状をなす本体ベース61を有する。本体ベース61は、その中心軸を境界として、シリンジ1が主に配置されるシリンジ配置部611と、シリンジ1の作動を担う機能を有する部材が主に配置される機能部材配置部612とに分けることができる。
【0042】
シリンジ配置部611上には、その長手方向の途中、すなわち、ほぼ中央部に保持部64が設けられている。この保持部64は、シリンジ1を保持する部分であり、本体ベース61から立設した2枚の壁部641、642で構成されている。壁部641と壁部642とは、離間して配置されており、これらの間にシリンジ1の外筒2のフランジ25が挟持される。また、壁部641には、円弧状に湾曲した凹部643が形成されており、この凹部643に外筒2の外筒本体21のフランジ25近傍の部分が嵌合する。
【0043】
このような構成の保持部64により、シリンジ1が保持体6の長手方向に沿って配置され、外筒2の基端部を保持、固定することができる。これにより、プランジャ4を先端方向に向かって押圧した際、外筒2が不用意に移動するのが確実に防止され、よって、その押圧操作を安定して行なうことができる。
【0044】
機能部材配置部612の先端側の部分には、渦巻きバネ8を保持するボビン14と、ボビン14を回転可能支持する回転軸13とが配置されている。
【0045】
ボビン14は、渦巻きバネ8の内端部81が連結され、当該渦巻きバネ8を巻き付けることができる。このボビン14は、内径が9.8〜10.2mm、外径が25〜44mm、高さが25〜35mmであるものが好ましい。
回転軸13は、ボビン14を挿通する円柱状をなす部材で構成されている。
【0046】
また、機能部材配置部612の基端側の部分には、移動する押圧部材7を案内するガイド手段11と、押圧部材7の移動を禁止するロック手段12とが配置されている。
【0047】
このようにシリンジ1の作動を担うものが集約されて機能部材配置部612に配置されていることにより、ポンプ5が過剰に大きくなるのを防止して、ポンプ5の小型化を図ることができる。これにより、ポンプセット10が携帯し易いものとなる。
【0048】
図3に示すように、押圧部材7は、保持体6上を移動することができる。そして、この移動により、プランジャ4を先端方向に向かって押圧することができる。押圧部材7は、平面視で「L」字状をなし、保持体6の幅方向に延在する押圧部71と、その幅方向と直交する方向、すなわち、保持体6の長手方向に延在する支持部72とを有している。
【0049】
押圧部71は、その先端側を向いた面がプランジャ4の基端、すなわち、フランジ41に当接する当接面711となる。押圧部材7が先端方向に向かって移動すると、当接面711がプランジャ4のフランジ41に当接して、そのまま当該プランジャ4を押し進めることができる。これにより、ガスケット3が外筒2内で摺動して、外筒2の口部22から薬液200が排出される。
【0050】
図4に示すように、支持部72には、上下方向にそれぞれ突出した突出部721が形成されている。また、移動する押圧部材7を案内するガイド手段11は、押圧部材7の支持部72を支持するレール部111を有している。レール部111は、押圧部材7の移動方向、すなわち、保持体6の長手方向に沿って延在する板状をなす部材であり、その一方の面114に支持部72の各突出部721が挿入される溝113が形成されている。押圧部材7は、支持部72が溝113内を円滑に移動することができる。この移動により、プランジャ4が安定して押し進められ、よって、外筒2の口部22から薬液200が確実に排出される。なお、押圧部材7の移動量は、シリンジ1の大きさにもよるが、例えば、10mLのシリンジ1の場合、80〜120mmとなる。
【0051】
また、図1、図3に示すように、ガイド手段11は、レール部111を保持体6に対して固定する2つの固定部112とを有している。これら2つの固定部112は、互いに離間して、レール部111の長手方向に沿って配置されている。また、図4に示すように、各固定部112は、それぞれ、「L」字状をなす部材で構成され、レール部111の一方の面114と反対側の他方の面115と保持体6の機能部材配置部612の上面613とに固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、ネジ止めによる方法等が挙げられる。
【0052】
押圧部材7の移動を禁止するロック手段12は、保持体6の基端部に配置された規制部材121と、規制部材121を上方に付勢するコイルバネ122とを有している(例えば図5参照)。
【0053】
図1に示すように、規制部材121は、平面視で「L」字状をなし、保持体6の長手方向に延在する部分に凹部で構成された係合部123が形成されている。この係合部123に、押圧部材7の押圧部71が係合することができる。そして、押圧部材7が規制部材121に係合した図5(a)に示す状態から、当該規制部材121をコイルバネ122の付勢力に抗して押圧すると、規制部材121が下方に向かって移動した図5(b)に示す状態となる。このとき押圧部材7と規制部材121との係合が解除され、よって、押圧部材7が先端方向に向かって移動することができる。
【0054】
なお、ロック手段12は、規制部材121が下方に位置した図5(b)に示す状態を維持可能に構成されている。これにより、規制部材121に対する下方への押圧力を解除しても、当該規制部材121がコイルバネ122の付勢力により上昇して、移動中の押圧部材7と干渉してしまうのを確実に防止することができる。このような維持構成としては、特に限定されないが、例えば、下方に位置した規制部材121が係合する係合部を保持体6に設ける構成が挙げられる。
【0055】
また、保持体6、押圧部材7、レール部111、固定部112および規制部材121の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前述した外筒2の構成材料のような各種樹脂材料、アルミニウムやアルミニウム合金のような各種金属材料等を用いることができる。コイルバネ122の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、後述する渦巻きバネ8と同様の構成材料を用いることができる。
【0056】
図3に示すように、渦巻きバネ8は、押圧部材7をシリンジ1のプランジャ4ごと先端方向に付勢するものである。この渦巻きバネ8は、長尺状をなす、すなわち、帯状をなす弾性体を渦巻き状に巻回してなるゼンマイである。渦巻きバネ8の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼のような各種金属材料等を用いることができる。
【0057】
渦巻きバネ8は、ボビン14、回転軸13とともにシリンジ1の外筒2の側方に隣接して配置されている。また、渦巻きバネ8は、内端部81がボビン14に連結され、外端部82が押圧部材7の支持部72に連結されている。そして、このように設置された渦巻きバネ8では、内端部81が保持体6に対し回転軸13回りに回転することができ、外端部82側を基端方向に引き伸ばすことができる。これにより、渦巻きバネ8の付勢力に抗して押圧部材7を例えば指で基端方向に移動すると、渦巻きバネ8の内端部81と外端部82とが離間するため、当該渦巻きバネ8が伸びた状態となる(図1参照)。このとき、渦巻きバネ8には、伸びた状態から元の状態へ復元しようとする復元力が生じる。この復元力により、押圧部材7を先端方向に移動させてプランジャ4が押圧されることとなる(図3参照)。
【0058】
また、前述したように、渦巻きバネ8がボビン14、回転軸13とともにシリンジ1の外筒2の側方に隣接して配置されている。ここで、仮に押圧部材7を付勢する付勢部材としてのコイルバネを用い、当該コイルバネがシリンジ1の基端側に配置された場合を考えてみる。この場合、コイルバネの分だけ、ポンプ5の全長Lが長くなってしまう。このように全長Lが長いポンプ5を例えば衣服のポケットに収納して携帯しようとすると、当該ポンプ5がポケットからはみ出してしまい、携帯しづらくなる。これに対し、本発明では、押圧部材7を付勢する付勢部材としての渦巻きバネ8がシリンジ1の外筒2の側方に配置されている。このような配置により、ポンプ5の全長Lが長くなるのを防止または抑制することができ、よって、ポンプ5が小型化される。
【0059】
本発明では、シリンジ1の大きさや渦巻きバネ8の大きさにもよるが、ポンプ5の全長Lを好ましくは200mm以下とすることができ、より好ましくは140〜180mmとすることができる。また、ポンプ5の幅wを100mm以下とすることができ、より好ましくは50〜90mmとすることができる。また、ポンプ5の厚さtを50mm以下とすることができ、より好ましくは30〜45mmとすることができる。このような大きさのポンプ5は、携帯し易いものとなる。
【0060】
ケース9は、保持体6でシリンジ1の外筒2を保持した状態で、当該シリンジ1ごと保持体6、押圧部材7および渦巻きバネ8を収納するものである。図6に示すように、ケース9は、ケース本体91と、ヒンジ92と、施錠部93とを有している。
【0061】
ケース本体91は、開閉可能な一対の半体、すなわち、底体911と蓋体912とで構成されている。そして、閉じた状態の底体911と蓋体912とで、シリンジ1、保持体6、押圧部材7および渦巻きバネ8をまとめて収納する収納空間913が形成される。また、この閉じた状態では、底体911と蓋体912との間でシリンジ1が挟持されて、固定される。これにより、ポンプ5の使用中や携帯中にシリンジ1が位置ズレを起こすのが防止される。
【0062】
また、閉じた状態のケース本体91により、例えば、シリンジ1が手指に触れて、プランジャ4が不本意に過剰に先端方向に押圧されるのを防止することができる。
【0063】
図2に示すように、蓋体912には、シリンジ1の全体を視認可能な窓部914が設けられている。窓部914は、図示の構成では透明性を有するガラス製または樹脂製の部材で構成されているが、これに限定されず、例えば、蓋体912を貫通して形成されたスリットで構成されていてもよい。このような窓部914が設けられていることにより、シリンジ1中の薬液200の残量を確認することができたり、プランジャ4が確実に移動していること、すなわち、プランジャ4が停止していないかどうかを確認することができる。
【0064】
また、図2、図3に示すように、窓部914には、プランジャ4のフランジ41の位置を示す目盛り915が付されているのが好ましい。目盛り915は、薬液投与開始から終了までの所要時間を示すものであり、図示の構成では、12時間の所要時間を1時間ごとに区切ったものとなっている。そして、薬液投与中にプランジャ4のフランジ41の位置を目盛り915で確認することにより、あとどれくらいで薬液投与が終了するのかを把握することができる。
【0065】
なお、底体911および蓋体912(窓部914を除く)の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した外筒2の構成材料のような各種樹脂材料、アルミニウムやアルミニウム合金のような各種金属材料等を用いることができる。
【0066】
底体911と蓋体912とは、ヒンジ92を介して連結されている。ヒンジ92は、ケース本体91の長手方向に離間して2つ配置されている(図2参照)。このヒンジ92により、蓋体912を底体911に対し回動させることができ、よって、蓋体912の開閉操作を容易に行なうことができる(図6参照)。
【0067】
また、ケース本体91のヒンジ92と反対側の部分には、施錠部93が配置されている。この施錠部93は、ケース本体91が閉じた状態で施錠可能なものである。これにより、ポンプセット10の使用予定者以外の人が当該ポンプセット10を使ってしまうのを確実に防止することができる。施錠部93の構成としては、特に限定されないが、例えば、鍵と当該鍵が挿入される鍵穴を有する部材とを備えた構成のもの、複数の数字が付されたダイヤルを備え、数字を順に合わせるよう構成されたもの等が挙げられる。
【0068】
次に、ポンプセット10の使用方法について、主に図1〜図3を参照しつつ説明する。
まず、図1に示すように、シリンジ1と、ケース9が開いた状態のポンプ5とを用意する。
【0069】
シリンジ1には、予め薬液200としてオピオイドが充填されている。例えば10mLのオピオイドの投与は、通常、120時間以内で行われるのが好ましく、12〜96時間で行われるのがより好ましい。なお、本実施形態では、投与時間は12時間となっている(図2参照)。
【0070】
また、ポンプ5では、渦巻きバネ8が伸びた状態となっており、押圧部材7に先端方向へ移動するための付勢力が作用しているが、当該押圧部材7の移動はロック手段12により規制されている。このようにロック手段12は、渦巻きバネ8の伸びた状態を維持するとともに、押圧部材7の移動も規制することができる。
【0071】
そして、このような状態のポンプ5にシリンジ1を装填する(図2参照)。このときシリンジ1にはチューブセット20が既に接続されていてもよいし、シリンジ1を装填してから、当該シリンジ1にチューブセット20を接続してもよい。
【0072】
次に、前述したようにロック手段12の押圧部材7に対する規制を解除すると、図3に示すように、渦巻きバネ8は、自身の復元力により、内端部81側の部分が巻回し、その巻回した分だけ押圧部材7を先端方向に移動させることができる。この押圧部材7の移動により、ガスケット3がプランジャ4を介して先端方向に押圧されて、外筒2の口部22から薬液200を排出することができる。これにより、薬液200の投与が行なわれる。
【0073】
次に、ケース9を閉状態とし、施錠部93を施錠する。
ところで、オピオイドである薬液200を投与する際には、外筒2の口部22から吐出される薬液200の吐出速度が一定となるように、その投与を行なうのが好ましい。そこで、ポンプ5では、吐出速度が一定となるのを確保するために、プランジャ4を移動させる駆動源として、渦巻きバネ8が用いられている。渦巻きバネ8は、別名「定荷重バネ」と呼ばれており、コイルバネに比べて、伸びた状態から元の状態へ復元する間のいずれの状態でも付勢力がほぼ一定となる。従って、このように付勢力が一定、すなわち、付勢力に経時的な変化がない渦巻きバネ8でプランジャ4を押圧すれば、当然に、外筒2の口部22から吐出される薬液200の吐出速度も確実に一定となる。
【0074】
なお、薬液200の吐出速度は、特に限定されないが、例えば、0.05〜1mL/時間であるのが好ましく、0.1〜0.5mL/時間であるのがより好ましい。吐出速度をこのような大きさに設定する方法としては、特に限定されないが、例えば、シリンジ1の内部圧力が好ましくは20〜70kPa、より好ましくは40〜60kPaとなるように、渦巻きバネ8の構成材料やサイズ、チューブ30のサイズ、流量調整装置60のオリフィス601のサイズ等の諸条件を適宜選択する方法が挙げられる。
【0075】
<第2実施形態>
図7は、本発明の携帯型薬液ポンプの第2実施形態を示す平面図、図8は、図7中のD−D線断面図である。
【0076】
以下、これらの図を参照して本発明の携帯型薬液ポンプの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、保持体の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0077】
図7に示すように、保持体6のシリンジ配置部611上には、保持部64の基端側に隣接して支持部65が配置されている。図8に示すように、支持部65には、シリンジ1のプランジャ4の本体部42の横断面形状に対応した十文字状の溝651が形成されている。この溝651にプランジャ4の本体部42を挿入することができる。そして、プランジャ4が移動する際に、本体部42が支持部65に摺動可能に支持され、よって、その移動が安定して行なわれる。これにより、薬液200の投与をより高精度に行なうことができる。
【0078】
なお、溝651の内面には、プランジャ4の本体部42との摩擦を低減する摩擦低減処理が施されていてもよい。この摩擦低減処理としては、特に限定されないが、例えば、溝651の内面にフッ素樹脂を塗布し、当該フッ素樹脂で構成された層を形成することが挙げられる。
【0079】
以上、本発明の携帯型薬液ポンプを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、携帯型薬液ポンプを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0080】
また、ケースは、ケース本体が底体と蓋体とで構成されたものに限定されず、ケース本体が蓋体で構成されたものであってもよい。この場合、保持体が底体としての機能を有することとなる。
【0081】
また、シリンジに接続されるチューブセットは、チューブの途中から分岐した分岐チューブと、分岐チューブの下流側に設けられたリザーバと、チューブの途中まで流下した薬液を分岐チューブに流入させる切換部とをさらに有していてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 ポンプセット
1 シリンジ
2 外筒
21 外筒本体
22 口部
24 空間
25 フランジ
26 目盛り
3 ガスケット
4 プランジャ
41 フランジ
42 本体部
5 携帯型薬液ポンプ(ポンプ)
6 保持体
61 本体ベース
611 シリンジ配置部
612 機能部材配置部
613 上面
64 保持部
641、642 壁部
643 凹部
65 支持部
651 溝
7 押圧部材
71 押圧部
711 当接面
72 支持部
721 突出部
8 渦巻きバネ
81 内端部
82 外端部
9 ケース
91 ケース本体
911 底体
912 蓋体
913 収納空間
914 窓部
915 目盛り
92 ヒンジ
93 施錠部
11 ガイド手段
111 レール部
112 固定部
113 溝
114 一方の面
115 他方の面
12 ロック手段
121 規制部材
122 コイルバネ
123 係合部
13 回転軸
14 ボビン
20 チューブセット
30 チューブ
40 コネクタ
50 フィルタ
501 疎水膜
60 流量調整装置
601a、601b オリフィス
602 操作ダイヤル
603a 第1チューブ
603b 第2チューブ
604a、604b Y字コネクタ
605 装置本体
606 圧閉部
607a、607b チップ
200 薬液
L 全長
t 厚さ
w 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に口部を有する外筒と、該外筒内で摺動し得るガスケットと、該ガスケットに連結され、前記ガスケットを移動操作するプランジャとを有し、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間に充填可能な薬液の最大充填量が5〜20mLであるシリンジを装填して用いられる携帯型薬液ポンプであって、
前記外筒を保持する保持体と、
前記保持体に移動可能に設置され、当該移動により前記プランジャを先端方向に向かって押圧する押圧部材と、
前記外筒の側方に隣接して配置され、前記押圧部材を前記プランジャごと先端方向に付勢する渦巻きバネと、
前記保持体で前記外筒を保持した状態で、前記シリンジと前記押圧部材と前記渦巻きバネとを収納するケースとを備えることを特徴とする携帯型薬液ポンプ。
【請求項2】
前記渦巻きバネは、その外端部が前記押圧部材に連結され、その内端部が前記保持体に対し回転軸を介して回転可能に支持されている請求項1に記載の携帯型薬液ポンプ。
【請求項3】
前記保持体は、前記プランジャを摺動可能に支持する支持部を有する請求項1または2に記載の携帯型薬液ポンプ。
【請求項4】
前記ケースは、開閉可能な一対の半体で構成されたケース本体と、該ケース本体が閉じた状態で施錠可能な施錠部とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯型薬液ポンプ。
【請求項5】
前記押圧部材が前記プランジャを先端方向に向かって押圧した際、前記口部から吐出される前記薬液の吐出速度は、0.05〜1mL/時間である請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型薬液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−250867(P2011−250867A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125006(P2010−125006)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】