説明

携帯型通信装置用アンテナ

携帯型通信装置と共に用いられるアンテナ配置について述べられる。一実施例において、アンテナ(50)は、中実円筒構造(60)の外表面状の規則的な配列に等間隔に装着された4つのモノポール素子(52〜58)を備えている。円筒(60)は高誘電定数を有し、導電性グランド面(62)から延びている。モノポール素子(52〜58)はスイッチング素子(64〜70及び76)により1又は2以上が動作状態となり、他は共に接地または開回路状態にされて実質的に透明とされた寄生的導波器・反射器として働くように切替え可能である。シールドされた単一モノポールアンテナ(10)についても述べられる。

【発明の詳細な説明】
携帯型通信装置用アンテナ技術分野 本発明は携帯型通信装置用のアンテナ配置に関する。本発明の実施例は、特に、物理的に小型のアンテナ、指向性アンテナ、及び電子的に操縦可能なアンテナに関する。
携帯型、すなわち、手持ち型の通信装置は、セルラー型移動電話、ポケットベル、及び双方向無線(ウォーキートーキー)を含むものとする。本発明を具現化するアンテナは、他に、地上探索レーダやボーリング穴断層撮影機のような地球物理的な装置や、移動車の衝突防止レーダのような他のレーダ装置などに用いられる。
従来技術の説明 アンテナは電磁エネルギーの送信機及び受信機のいずれの用途にも幅広く用いられている。これら用途の多くにおいては、アンテナの指向性を最大化することが望ましい。従来の技術においては、指向性の最大化は反射器スクリーン(例えば、放物椀型アンテナ、コーナー反射器)、反射素子(例えば、カーテンアレイ、八木寄生素子)、遅波構造(例えば、八木アンテナ)、及び、複アンテナアレイなどの技術により実現されてきた。
例えば、移動セルラー型遠距離通信においては、電力消費の低減、従って、バッテリー負荷の低減のために、移動受話器のアンテナの指向性を向上することが望まれる。指向性が向上されれば、移動セルラー電話のセルの範囲を拡大し、隣接するセル間の干渉を低減する上で有利である。
現在、移動セルラー電話のユーザに対する安全性についても懸念がある。人体の組織は、高周波に対しても電気伝導性が非常に高い。
このため、このような装置を長期間使い続けると、ユーザの頭部の非常に近くに位置するアンテナのために、アンテナの周囲に集中して頭を貫く電磁場の強度が非常に高くなって脳組織が損傷されることにより、脳腫瘍の原因となることが示唆されている。IEEEは、アンテナにより受信・放射される電磁放射への最大露出量の推奨値に関する技術標準C95.3号を発行している。指向性アンテナはユーザに向けられる放射を最小化することになり、この点において最も望ましい。
シールドも露出を減少する確立された技術である。しかし、シールドがアンテナに近接しているため、アンテナに悪影響を及ぼすという短所がある。基本的原則として、シールドはアンテナから波長の4分の1だけ離間されなければならない。
地球物理学装置などの他の用途においては、2つの信号が同一のアンテナに、略等しい電界強度及び略180°の位相差で入射した場合、マルチパス干渉により、非常に深いフェーディングが生ずる。操縦可能指向性アンテナはかかるフェーディングを最小化することができる。
指向性及び操縦可能性の問題を考慮したアンテナ構造の例は、Robert Milneの米国特許第4,700,197号に開示されている。
電子通信装置はより小型化され続けているため、大きさも重要な問題である。
アンテナの小型化は指向性の向上とある程度相反する。自由空間では、放射素子間あるいは反射器間の距離は、ほぼ大気中での1自由空間波長分である。これは、指向性が要求される場合、アンテナが2つ以上の方向で比較的大型になることを意味する。大型アンテナの設置もまた、外観上及び機械的安定性の理由で望ましくない。
発明の開示 本発明は、その一側面において、指向性を有すると共に小型でもあるアンテナに関する。
従って、本発明は、誘導体構造に担持され、離間された平行な、アンテナ素子アレイであって、アンテナ素子はそれぞれ対応するスイッチ手段に電気的に接続されたアンテナ素子アレイを備え、1又は2以上のアンテナ素子を選択的に動作させる各スイッチ手段により操作可能な小型指向性アンテナ配置を開示している。
好ましくは、非動作状態の放射素子は各スイッチング手段により接地されるか、あるいは、開回路状態とされる。被駆動素子はモノポールであってもダイポールであってもよい。作動中のモノポール素子は、共振してアンテナインピーダンスの無効成分がほぼゼロとなるような物理的な大きさにすることができる。
好ましくは、アンテナは、誘電体構造の端部に垂直に装着されるように配置された接地面を更に備えている。
好ましくは、誘電体構造は、規則的に形成され、最も好ましくは、円筒形である。被駆動素子は規則的なアレイに配置され得る。
好ましくは、比誘電率εγは大きい。εγ=10とすると、大きさは大幅に減少されるが、εγ=100とすれば、更に有利である。
放射素子はスイッチ手段により送信手段に結合され得る。スイッチ手段は制御手段により切替可能に制御されて、1又は2以上の放射素子が受信信号強度が最大となる方向に応じて選択的に動作状態とされる。
本発明は、携帯型通信装置のユーザを電磁放射への過剰な露出から保護するアンテナ構造にも関する。
従って、本発明は、更に、通信装置のアンテナ用シールド構造を開示している。この構造は、導電性シート、誘電材料のシート、及び、アンテナ素子がこの順で配置されたサンドイッチ配置を備え、通信装置の使用中に、導電性シートがアンテナ素子よりもユーザの頭部に接近するよう通信装置上に配置される。
好ましくは、シールド構造は平面であり、誘電体シートの厚みはλ/(2√εγ)未満である。ここで、εγは誘電体シートの比誘電定数であり、λはアンテナ素子により受信または送信される電磁放射の波長である。
本発明は、更に、指向性アンテナに関しており、従って、細長状誘電材料の長手軸により担持され、該長手軸に対して平行に、かつ偏心して配置されたアンテナ配置を開示している。
他の側面では、本発明は指向性を有する物理的に小型のアンテナに関しており、従って、更に、誘電体構造により担持され、互いに平行に離間されたアンテナ素子のアレイを備え、1又は2以上のアンテナ素子が作動し、他のアンテナ素子は非動作で接地される、小型指向性アンテナ配置を開示している。
本発明は、指向性の向上を実現するために、誘電体構造により担持され、離間された平行なアンテナ素子アレイを備えたアンテナ配置を切り換える切替え方法であって、 1又は2以上の放射素子を対応するスイッチ手段により選択的に接続して作動させ;
放射素子の各選択的接続に対する受信信号強度を測定し;
最大受信信号強度に対応する1又は2以上の放射素子の選択的接続を維持する、各段階を備える、切替え方法を開示している。
好ましくは、本方法は、選択的接続、測定、及び維持の各段階を周期的に繰り返す段階を更に備える。
本発明の実施例は、従来のアンテナに比してより効率的なアンテナを提供する。なぜなら、アンテナが結合される電子機器(例えば、セルラー電話)の電力消費が低減されるからである。電力消費の低減は、ユーザの頭部による吸収の減少、指向性の向上による信号強度の増大、干渉偏波の減少、及び、ユーザの頭部位置によるアンテナインピーダンス変化の最小化により実現されている。
このアンテナによれば、動作範囲が拡大され、マルチパスフェーディングの条件下での性能が向上される。更に、ユーザの頭部により吸収される電磁エネルギーは従来に比して低いレベルにあるので、健康上の点においても有利である 他の利点は、本アンテナを携帯型通信装置の従来のアンテナと直接置き換えることができることである。一例においては、物理的により小型の、指向性が向上されたアンテナをセルラー電話の現存のアンテナと置き換えることができる。従って、電話ケースを更に小型化することができ、ユーザにとって携帯性がより向上する。
図面の簡単な説明 本発明の実施例は添付された図面を参照して説明される。
図1a、図1b、及び図1cはシールドアンテナ構造を備えたセルラー電話を示す図である。
図2は寄生素子を備えた指向性アレイアンテナの斜視図である。
図3はスイッチング電子回路が接続された指向性アレイアンテナの斜視図である。
図4は図3に示すアンテナの限定された構成の極座標パターンを示す図である。
図5は図3に示すアンテナの変形例の極座標パターンを示す図である。
図6は図3に示すアンテナの特定のスイッチ配置の極座標パターンを示す図である。
図7は図3に示すアンテナのもう一つのスイッチ配置に対する極座標パターンを示す図である。
図8は地上探索レーダに関する更なる実施例を示す図である。
本発明を実施する最善の方式 実施例は移動セルラー遠距離通信に関して説明される。しかし、本発明は、上述の如く、電磁的地球物理学、レーダ装置等の一般の無線通信にも同様に適用可能であることを理解されたい。
携帯型通信装置に関わるアンテナの送受信性能に対するユーザの頭部の影響を減少させる方法の一つは、アンテナを頭部からシールドすることである。しかしながら、従来の配置では、アンテナの効率を劣化させることなくシールドとして機能する導電性シートをアンテナから4分の1波長以下の距離に設置することができなかった。
図1a、図1b、及び図1cは移動電話用のシールドされたアンテナ配置を示す。このアンテナ配置によれば、従来の配置とは対照的に、シールドを物理的にアンテナに接近させることができる。
このアンテナ配置は、図1cの断面部分図に最も良く示す如く、複合体すなわちサンドイッチ構造12として構成されている。構造12は伝導シート22、高誘電率低損失材料の中間層24、及び、モノポールアンテナ14を備えている。
導電性シート22は典型的には薄い銅シートから構成され、一方、誘電材料24は典型的にはアルミナから構成され、その比誘電定数εγは10・ε0に比して大きい。
導電性シート22は移動電話10のユーザ側に最も近接して設けられ、マイクロフォン16、スピーカ18、及びユーザ操作部20を備え、従って、ユーザの頭部をシールドする側面となっている。
誘電材料24の効果は、導電性背部板22を、アンテナの効率に悪影響を及ぼすことなく、アンテナ12に物理的に近接させることを可能とすることである。
比誘電定数が10・ε0に比して大きな材料を用い、誘電材料24の厚みをλ/(2√εγ)に比して小さくなるように選択することにより、「イメージ」アンテナは導電性シート22から離れる方向で、放射アンテナ14と一致する。従って、構造12は、電磁放射がアンテナ14の近傍のユーザの頭部を通過するのを遮断する効果を有しており、更に有利なことには、反射された放射が付加的に作用して送受信信号を最大化させる。
構造12は機械的に、移動電話10の上部に折り畳まれるように配置されてもよいし、あるいは、電話10の本体内にスライド式に収縮されてもよい。シールド構造は平面以外の形状に設けられてもよく、例えば、半円柱状に湾曲されてもよい。
図2は、セルラー移動電話等での公知のアンテナ構成に直接置き換えることが可能なアンテナ配置30を示す。アンテナ30は誘電体円筒40の外表面上に等間隔に離間されて装着された、4個の1/4波長モノポール素子32〜38を有している。最も一般的には、円筒40は中実体である。
円筒以外の形状も用いることができることに注意されたい。同様に、素子32〜38を規則的に配置する必要もない。実際上、唯一必要なのは誘電体構造が連続的なことである。素子32〜38は誘電体円筒40内に埋め込まれてもよいし、あるいは、中空円筒の内周面に装着されてもよい。重要なのは、各素子と誘電体円筒との間に空気間隙が存在しないことである。
モノポール素子のうちの素子32のみが電磁放射の送受信用の動作状態とされ、他の3つの素子34〜48は非動作・寄生状態とされて、共にグランドに接続される。アンテナ配置30は動作素子32に一致した径方向外側方向の高度の指向性を示す。3つの寄生素子は、シールドを構成すると共に、入射RF信号に対する反射器・導波器として機能することになる。これら性能の利点を支える科学的原理を、図3に示すアンテナ構成に関して後述する。
アンテナ30は上述の如く移動セルラー電話での使用に適しており、従来の移動電話のケース内に完全に組み込まれることが可能である。これは、アンテナの物理的な大きさが(従来技術に比して)減少され、また、従来のアンテナ構成に直接置き換えることが可能とされることによるものである。
セルラー電話において大きさは設計上の重要な問題である。長い単ワイヤアンテナ(例えば、端部給電ダイポールアンテナや3/4波長ダイポールアンテナ)は、RFエネルギーをユーザの頭部による吸収が減少されるように分布させる。このアンテナはより大きな有効開口によって、より効率的にもなっている。しかしながら、アンテナが長くなるほど、携帯性や機械的安定性の点からは望ましくないものとなる。図2に示すアンテナは上記した公知のより大型のアンテナと同様の性能特性を実現しているが、更に、物理的に小型であるという利点をも有している。
図3に示すアンテナ配置50は中実の誘電体円筒60の外周面に4個の等間隔に離間して装着された1/4波長モノポール素子62〜68を有している。モノポール62〜68もまた、誘電体円筒の表面に埋め込まれてもよい。あるいは、誘電体構造が中空円筒として形成され、モノポール素子がその内周面上に装着されてもよいが、かかる配置では、比誘電定数が1.0である空気の中心部により全体の誘電定数が減少されるために、指向性が低下する。
円筒60は高誘電定数及び低損失正接を有するアルミナ等の材料から構成される。アルミナの比誘電定数εγは10・ε0よりも大きい。
モノポール52〜58は正方形の頂点を形成し、すなわち、規則的に配置され、円形の導電性グランド面62から垂直に向けられている。モノポール52〜58はグランド面62の中心の近傍に位置している。グランド面はアンテナ50の動作に対して重要ではないが、グランド面が存在することによりモノポール素子の長さが減少されている。
誘電体材料に埋め込まれた導体は、材料の誘電定数の平方根に比例した係数で減少された電気的長さを有している。比誘電定数がεγである無限誘電半空間の表面上に位置する胴体に対して、実効誘電定数εeffは次式で与えられる: εeff=(1+εγ)/2 導体が誘電体円筒の表面上に円筒の軸に対して平行に配置され、更に、それと平行に他の電導性素子が存在するならば、実効誘電定数はさらに変更される。実効誘電定数に影響を与える要因には、円筒の半径、及び、付加的素子の数及び近接の度合いが含まれる。
比誘電定数εγが100に等しい場合、円筒の直径が自由空間波長の0.5倍よりも大きければ、モノポール52〜58の長さを物理的におよそ7分の1に減少させることができる。例えば、1GHzで動作するアンテナに対して、自由大気中の1/4波長モノポールの物理的波長は約7.5cmである。しかし、モノポールがεγ=100の誘電体表面に配置されていれば、モノポールの大きさを約1.1cmに低減することができる。
モノポール52〜58の各々はソリッドステートスイッチ64〜70に接続されている。これらのスイッチは電子制御装置74及び電子制御装置74と共に各モノポールを切り換える1対4デコーダ72により制御される。モノポールのうちの1つ52は動作状態に切り換えられ、他のモノポール54〜58は、それぞれに対応するスイッチ66〜70及び主スイッチ76により、共にグランドに接続されている。これが、実際に図2に示す構成である。主スイッチ76は、非動作状態のモノポールがグランドに接続されることなく互いに短絡された状態となる第2のスイッチ状態を有している。この構成においては、非動作状態のモノポール54〜58は寄生反射素子として機能し、アンテナ50は指向性を示すことになる。
指向性はいくつかの理由により実現されている。誘電体円筒の中心からある距離だけ離間されて配置された導体は(シリンダ内に配置されていればなおさら)
、非対称な照射パターンを有している。更に、共振長さに近い寸法の、動作素子から1波長の距離以内に配置された非動作導体は反射器として機能し、アンテナの放射パターンに影響すると共にアンテナの共振長さを減少させる。
モノポールアンテナの長さを適切に変化させることにより、アンテナ50の入力インピーダンス及び指向性を制御することができる。例えば、1つの素子が動作し、他の素子が接地される2素子アンテナの最小共振長さの(すなわち、アンテナのリアクタンスがゼロの場合の)H平面極座標パターンは8の字型に似ているため、誘電体円筒の半径は小さくされている。アンテナ長さがこの値よりもわずかに大きくされると、前後比(指向性)は大幅に向上される。
もう一つの構成(図示せず)では、非動作モノポール54〜58は開回路状態におかれる。これにより、非動作モノポールのアンテナへの寄与は除去される(すなわち、非動作モノポールは透明になる)。この構成では、モノポール54〜58がグランドに短絡された場合に比して(あるいは、単に互いに短絡された場合に比しても)、アンテナの指向性は低下するが、それでも、誘電材料のみによって大きな指向性は得られる。
誘電体円筒60はまた、実効電気的分離距離を増加させる。これは、動作エレメントを、グランドに短絡されるとアンテナの電力伝達性能を劣化させる隣接非動作エレメントから分離する点で有利である。従って、動作モノポール52と、直径に関して反対に位置する非動作モノポール56との間の実効電気的分離距離は d/(εγ)0.5で与えられる。ここで、dは誘電体円筒60の直径に等しい。動作モノポール52と他の非動作モノポール54、58との間の実効電気的分離距離は d/(2εγ)0.5で与えられる。
誘電体円筒60は、モノポールの実効電気的長さを減少させる効果をも有している。これは、任意の動作周波数に対してアンテナの機械的寸法が従来の場合に比して小さいことを意味する。電気的長さ、従って、電気的分離は、機械的寸法が示唆する値よりも大きい。動作周波数が1GHz付近の場合、モノポール及び誘電体円筒の寸法は典型的には、それぞれ、長さ1.5cm及び直径2cmである。
図3に示すアンテナ50は電子的に操作可能であるという能力をも有している。モノポール52〜58のうちのどれを動作させるかを選択することにより、指向性アンテナの可能な4方向が得られる。
アンテナ50の操作可能性は移動体セルラー遠距離通信において、現在の放送セルに対するアンテナの最適な指向方向を実現するのに使用される。電子制御装置74は各モノポール52〜58を順に動作させる。そして、送受信動作中は、より適切な方向が存在するか否かが決定するためにもう一つの走査シーケンスがしばらく後に実行されるまで、最大受信信号強度をもたらすスイッチング状態が維持される。これにより、電池寿命が保持されると共に、送受信の品質が最大に維持されるという利点が得られる。また、これにより移動電話のユーザの高エネルギーの電磁放射への露出も低減される。
モノポール52〜58の順次のスイッチングはアナログ・セルラー電話通信では非常に高速に行なわれ、デジタル電話方式では通常のスイッチング動作の一部となり得る。すなわち、スイッチングは十分高速に行なわれ、移動電話での音声又はデータ通信の使用中にスイッチングが認識されることはない。
いくつかのアンテナ配置に対する理論的及び実験的結果の例について以下説明する。
配置A 図4は、偏心絶縁モノポールアンテナの実験的極座標プロットを示す。これは、高誘電定数を有する材料に偏心されて埋め込まれた1個の導体を備える配置である。この配置は、例えば、図2のアンテナから3つの接地された寄生導体34〜38を省くことにより構成される。半径軸はdB単位で示されており、周方向は角度単位として示されている。
RF信号周波数は1.6GHzであり、誘電体円筒の直径は25.4mm、長さは45mmである。また、比誘電定数は3.7である。
明らかなように、アンテナの前後比(指向性)は約10dBである。
配置B この配置は図2に示す構造の上に単純化されたアンテナを用いたものである。
このアンテナは、直径12mmのアルミナ誘電体円筒(εγ=10)の径方向反対側に配設された2つのモノポール素子(一方は動作状態、他方はグランドへの接続状態)を備えている。各モノポールの第1の共振に対する長さは17mmである。
図5は、このアンテナの1.9GHzでの理論的及び実験的極座標パターンを共に示す。径方向の軸の単位はdBである。理論値のプロットは実線で示され、一方、実験値のプロットは白丸で示されている。この周波数では、アンテナの前後比は7.3dBである。
配置C 4素子アンテナを数値電磁コード(NEC)を用いてモデル化することができる。図6は、図2に示す構造と同様の(すなわち、1個の動作モノポールとグランドに短絡された3個の非動作モノポールを備える)4素子円筒アンテナ構造の、周波数の関数として得られた理論的NEC極座標パターンを示す。円筒の直径は12mm、モノポール素子の長さは17mm、比誘電定数εγは10である。
アンテナは1.6GHzで共振し、極座標パターンは8の字型であることに注意されたい。この周波数よりも高い周波数では、アンテナの前後比(指向性)は大きくなる。この効果は誘電定数の増加あるいはアンテナの直径の増加によっても得ることができる。
配置D 図7は、図6に関して述べたのと同じ寸法を有する4素子アンテナの周波数2.0GHzにおける実験データを示す。図7の結果は、ほぼ、図6に示す理論値のプロットに一致している。
地上探索レーダに関するもう一つの用途においては、レーダトランシーバは、アンテナの位置よりも下方の180°の円弧内に存在する物体からのエコーを受信するために全方向性アンテナを用いている。トラバース測量が実行される際、各物体は側方散乱によるエコーに特有の頭部波と共に現れる。
アンテナ構成の他の実施例は、特に、図8に示す地上探索レーダでの使用に適している。アンテナ90には、誘電体円筒100の上に配置・固定された4つのダイポール素子92〜98が組み込まれている。本例では、導電性グランド面は不要である。
地上探索レーダによる調査を実行する際には、アンテナ90の2つの指向方位が用いられる。これは、被駆動ダイポール素子92、96の間の切替を制御することにより実現される。スイッチングは、ブラックボックスとして示された電子制御装置102により制御される。電子制御装置102は、被駆動ダイポール素子の給電口に配設された2つの半導体スイッチング素子94、96を制御する。
動作中には、被駆動ダイポール92、96のいずれか一方が交互にスイッチされ、他方は開回路状態か、あるいは、グランドへの短絡状態に保たれる。前述の如く、非動作ダイポール素子94、98は寄生反射器として機能する。
地上探索レーダによる測定を実行する際、アンテナ90の2つの方向を切り換えることにより、側方散乱の影響を数学的な処理により最小化できる。この結果、本技術の有用性が向上され、特に、特有の頭部波の出現を低減することにより受信されるエコー像の明瞭度が向上される。
当業者にとっては本発明の基本的な概念から逸脱することのない多くの変更や修正は明らかであろう。
例えば、アンテナの素子数は4に限定されるものではない。モノポール素子やダイポール素子の他の規則的あるいは不規則的な配置は、誘電体構造と密接に関連付けられて案出される。

【特許請求の範囲】
1. 誘導体構造に担持された離間した平行なアンテナ素子の配列からなり、該アンテナ素子は各々のスイッチング手段に電気的に接続され、アンテナ素子配列は1又は2以上の前記アンテナ素子を選択的に動作させるよう前記各スイッチング手段により操作可能な小型指向性アンテナ配置。
2. 非動作状態の前記アンテナ素子は各々のスイッチ手段により電気的に接地されるか、あるいは、開回路状態とされる請求項1記載のアンテナ配置。
3. 前記誘電体構造は円筒であり、前記アンテナ素子は前記円筒の長手軸方向に平行に延びる外周面に装着された請求項2記載のアンテナ配置。
4. 前記スイッチング手段は制御手段により1または2以上の前記アンテナ素子を最強受信信号強度の方向に応じて動作状態とするように選択的に制御される請求項1記載のアンテナ配置。
5. 誘導体構造に担持された、離間された平行なアンテナ素子配列を備え、該アンテナ素子の1又は2以上は動作状態とされ、他のアンテナ素子は非動作状態とされて共にグランドに接続される小型指向性アンテナ配置。
6. 携帯型通信装置のアンテナ用シールド構造であって、順に、導電性シート、誘電材料シート、及び、アンテナ素子が配置されたサンドイッチ配置を備えると共に、前記通信装置の使用中に、前記導電性シートが前記アンテナ素子よりもユーザの頭部に接近するように前記通信装置上に配置されたシールド構造。
7. 前記誘電体シートの厚みはλ/(2√εγ)に比して小さく、εγは前記誘電体シートの比誘電定数であり、λは前記アンテナ素子により受信または送信される電磁放射の波長である請求項6記載のシールド構造。
8. 細長状誘電材料の長手軸により担持された、該長手軸に対して平行に、かつ、該長手軸に関して偏心するように配置された細長状アンテナ素子を備えた指向性アンテナ配置。
9. 誘電体構造に担持された、離間された平行なアンテナ素子配列を備えたアンテナ配置のスイッチング方法であって: 1又は2以上の放射素子をそれぞれ対応するスイッチング手段により動作状態となるように接続し;
放射素子の各選択的接続に対する受信信号強度を測定し;
前記受信信号強度が最大となる前記1又は2以上の放射素子の前記選択的接続を維持する;各段階からなるスイッチング方法。
10. 選択的接続、測定、及び、維持の前記各段階を周期的に繰り返す段階を更に備えた請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表平10−502220
【公表日】平成10年(1998)2月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−500010
【出願日】平成6年(1994)5月20日
【国際出願番号】PCT/AU94/00261
【国際公開番号】WO94/28595
【国際公開日】平成6年(1994)12月8日
【出願人】
【氏名又は名称】グリフィス・ユニヴァーシティー