説明

携帯型4サイクルエンジン及びこの携帯型4サイクルエンジンを搭載した携帯型作業機

【課題】オイル量の点検や潤滑オイルの注入、補充等にかかる作業サービスの容易化を図ることのできる携帯型4サイクルエンジンを提供する。
【解決手段】半透明の補強材入り耐熱性合成樹脂、例えば、グラスファイバー入りポリアミド6によって形成されたオイル補給パイプ40を後方に傾けた状態でオイルパン13に装着する。さらに、このオイル補給パイプ40の外面部に、オイルパン13に貯留された潤滑オイルEOの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする薄肉部40e、上側リブ40f、下側リブ40gを形成する。さらに、オイル補給パイプ40の内面部に、上限の段部40h、下限の段部40iを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刈払機等の携帯型作業機に搭載される携帯型4サイクルエンジンに関し、さらに詳しくは、携帯型4サイクルエンジンの潤滑用オイル(エンジンオイル)の補給口に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、刈払機等の携帯型作業機に搭載される携帯型4サイクルエンジンは、様々な姿勢で使用されるため、潤滑オイルのオイル量が過不足であったり過多であったりすると潤滑不良となりエンジン不調を招いてしまう。そのため、ユーザは、オイル量を厳密、且つこまめに点検管理する必要がある。
図14(a),(b)に示されるように、従来、このような携帯型4サイクルエンジン1にあっては、軽量、小型化を図るため、シリンダ2下部に位置するクランクケース3或いはオイルパン4に直接、潤滑オイルの補給口(注入口)5が設けられている。そして、この補給口5には、オイルパン4内のオイル量(貯留量)を計測するため、先端部に上限レベルと下限レベルとが示されたオイルレベルゲージ(図示せず)を有するディップスティック6が挿着されるようになっている。
そして、オイル量を点検する場合には、補給口5からディップスティック6を引き抜き、オイルレベルケージに付着したオイルレベルによってオイル量を点検し、オイル量が不足している場合には、図14(b)に示されるように、補給口5からオイラ(給油器)7を用いて潤滑オイルを補充するように構成されていた。
【0003】
しかしながら、上記した従来の携帯型4サイクルエンジンにあっては、図14(a),(b)に示されるように、クランクケース3或いはオイルパン4に隣接してマフラ8が側方に突出するように取り廻されている。このため、マフラ6によってディップスティック6(オイルレベルゲージ)が差し込み難い、補給口5から内部を覗き難くい、潤滑オイルの注入がし難い等の作業サービスの面で問題があった。そして、これらの問題のため、オイル量を厳密、且つこまめに点検管理するのに時間や手間がかかってしまうという問題が発生する。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、補給口(補充通路)を適宜延長することが提案されているが、この特許文献1に記載のものは、補給口を開けないとオイル量の確認ができなかったり、オイルレベルゲージが別途必要となったりして、オイル量の点検管理に煩わしさが残ってしまうというものである。
また、オイルパン等にガラス製の点検窓を設けることによって、オイル量を直接視認できるような構成にすることも考えられるが、携帯型作業機に搭載される4サイクルエンジンにあっては、コストの増大や作業環境に起因する耐久性の面で採用できないという問題があった。
また、ガラス製に代えて透明な合成樹脂製の点検窓では、潤滑オイルの油温が約100℃程度まで上昇した際の耐熱性が得られにくく、作業環境に起因する耐久性の面で採用できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−138811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、オイル量が過多、過不足でない標準レベルにあるかどうかの点検や潤滑オイルの補給(注入、補充)にかかる作業サービスの容易化を図ることのできる携帯型4サイクルエンジン及びこの携帯型4サイクルエンジンを搭載した携帯型作業機を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため第1の発明は、エンジン下部に潤滑オイルを貯留するためのオイルパンを備えた携帯型4サイクルエンジンにおいて、
前記オイルパンに潤滑オイルを注入するためのオイル補給パイプが取り付けられていると共に、前記オイル補給パイプの素材は補強材入り耐熱性合成樹脂製で且つ半透明であって、標準レベル内にあっては、そのパイプ内面部が前記オイルパンに貯留された潤滑オイルにより浸され、且つ前記オイル補給パイプの補給口から視認可能な前記パイプ内面部に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す第1の段部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、オイルパンに装着されたオイル補給パイプは、補強材入り耐熱性合成樹脂で形成され半透明である。さらに、このオイル補給パイプの内面部は、オイルパンに貯留された標準レベル内の潤滑オイルにより浸されると共に、オイル補給パイプの補給口から視認可能な位置には、オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す第1の段部が形成されている。これにより、周囲の明かりがオイル補給パイプを透過してパイプ内部を明るく照らし出すので、直接貯留量を確認しながら潤滑オイルの補給(注入、補充)作業を行うことが可能となる。しかも、第1の段部は透明でないので、潤滑オイルの適量が容易に分かり、潤滑オイルの補給作業を正確且つ容易に、しかも一度で済ませることが可能となる。その結果、潤滑オイルの補給作業の煩わしさを低減することができると共に、貯留量を厳密に管理することが可能となるので、潤滑不良による駆動部分の不具合を大幅に低減することができるようになる。また、オイル補給パイプは軽量であるため、重量増加を防ぐことができる。
【0009】
上記目的を達成するため第2の発明は、エンジン下部に潤滑オイルを貯留するためのオイルパンを備えた携帯型4サイクルエンジンにおいて、
前記オイルパンに潤滑オイルを注入するためのオイル補給パイプが取り付けられていると共に、前記オイル補給パイプの素材は補強材入り耐熱性合成樹脂製で且つ半透明であって、標準レベル内にあっては、そのパイプ内面部が前記オイルパンに貯留された潤滑オイルにより浸され、且つ前記オイル補給パイプの容易に視認可能な部分に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする薄肉部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明によれば、オイルパンに装着されたオイル補給パイプは、補強材入り耐熱性合成樹脂で形成され半透明である。さらに、このオイル補給パイプの内面部は、オイルパンに貯留された標準レベル内の潤滑オイルにより浸されると共に、オイル補給パイプの容易に視認可能な部分には、オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする薄肉部が形成されている。これにより、周囲の明かりがオイル補給パイプを透過してパイプ内部を明るく照らし出し、薄肉部によって潤滑オイルの油面位置がパイプ外側から明確に分かり、貯留量が標準レベルにあるかどうか容易に分かるので、潤滑オイルの補給作業を正確且つ容易に一度で済ませることが可能となり、オイルキャップを外さずに残量点検が可能となる。その結果、潤滑オイルの補給作業の煩わしさを低減することができると共に、貯留量を厳密に管理することが可能となるので、潤滑不良による駆動部分の不具合を大幅に低減することができるようになる。また、オイル補給パイプは軽量であるため、重量増加を防ぐことができる。
【0011】
上記目的を達成するため第3の発明は、第2の発明の構成に加えて、前記オイル補給パイプの薄肉部に隣接する位置に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の位置にあることを示す第2の段部が前記オイル補給パイプの外側に向かって形成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明によれば、オイル補給パイプの薄肉部に隣接する位置に形成された第2の段部によって、オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲内にあるかないかが示される。これにより、第2の発明の作用効果に加えて、潤滑オイルの貯留量がより鮮明となるので、貯留量をより厳密に管理することが可能となり、潤滑不良による駆動部分の不具合発生の低減化を図ることができるようになる。
又、第2の段部により薄肉部の防護効果を高めることができるようになるので、作業中にオイル補給パイプを壁等に当てても、薄肉部が直接接触しづらくなり、オイル補給パイプの破損を防ぐことが可能となる。
【0013】
上記目的を達成するため第4の発明は、第3の発明の構成に加えて、前記オイル補給パイプの補給口から視認可能な前記パイプ内面部に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す第3の段部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明によれば、オイルキャップを外すことでオイル補給パイプの内面部に形成された第3の段部によって、オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲内にあるかないかを容易に確認できる。これにより、第3の発明の作用効果に加えて、補給作業中の潤滑オイルの貯留状態がより一層明確に分かるようになるので、補給作業の煩わしさを低減できると共に貯留量をより厳密に管理することが可能となり、潤滑不良による駆動部分の不具合を大幅に低減することができるようになる。
【0015】
上記目的を達成するため第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明の構成に加えて、前記携帯型4サイクルエンジンが携帯型作業機に搭載された状態にあっては、前記オイル補給パイプは、前記オイル補給パイプの管部の軸は真っ直ぐに延びており、前記オイルパンとの取付面は、その取付面を含む平面が前記オイル補給パイプの補給口の外形部分を横断するように取り付けられていると共に、前記エンジンの出力軸がほぼ水平となる前記携帯型作業機の通常の作業休止状態にあっては、前記オイル補給パイプは、前記管部が鉛直方向に対して前記エンジンの出力部側とは異なる方向に傾斜するように前記オイルパンに取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明によれば、携帯型4サイクルエンジンが携帯型作業機に搭載された状態にあっては、オイル補給パイプの管部の軸は真っ直ぐに延びていると共に、オイルパンとの取付面は、その取付面を含む平面がオイル補給パイプのオイル補給部における外形部分を横断するようにオイルパンに取り付けられている。さらに、オイル補給パイプは、エンジンの出力軸がほぼ水平となる携帯型作業機の通常の作業休止状態にあっては、管部が鉛直方向に対してエンジンの出力部側とは異なる方向に傾斜するようにオイルパンに取り付けられている。これにより、第1乃至第4のいずれか1つの発明の作用効果に加えて、オイル補給作業をさらに容易化することができる。また、携帯型作業機を出力軸に対し左右側方向に振り回したり、回転させるような携帯型作業機特有の作業を行っても、オイル補給パイプに流入した潤滑オイルは前後方向に移動することはなく、しかも、オイル補給パイプの側面方向の突出を抑えてあるので、潤滑オイルの横揺れを最小限に抑えることが可能となるので、違和感ない作業を維持することが可能となる。
【0017】
上記目的を達成するため第6の発明によれば、第5の発明の構成に加えて、前記携帯型4サイクルエンジンは、通常の作業状態において作業部が斜め下方に向かい、前記オイル補給パイプは、前記エンジンの出力部とは反対の側の前記オイルパンの端部に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
第6の発明によれば、携帯型4サイクルエンジンは、通常の作業状態において作業部が斜め下方に向かい、エンジンの出力部とは反対側のオイルパンの端部にオイル補給パイプが取り付けられる。これにより、第5の発明の作用効果に加えて、このタイプの携帯型作業機の通常の作業状態にあっては、エンジン下部の作業部側に寄った潤滑オイルはオイル補給パイプに流入し難くなるので、潤滑オイルの側面方向の揺れを抑えることができるようになり、作業性をより高めることが可能となる。
【0019】
上記目的を達成するため第7の発明によれば、第1乃至第6の発明の構成に加えて、前記オイル補給パイプは、グラスファイバー入りポリアミド6を用いて形成されていることを特徴とする。
【0020】
第7の発明によれば、オイル補給パイプは、グラスファイバー入りポリアミド6によって形成されている。これにより、第1乃至第6の発明の作用効果に加えて、オイル補給パイプを軽量且つローコストに構成することができる。また、オイルパンに貯留された潤滑オイルに対して耐熱性、耐油性及び耐衝撃性も確保されるので、携帯型作業機に搭載される携帯型4サイクルエンジンに用いられても、十分に使用に耐えることが可能となる。
【0021】
上記目的を達成するため第8の発明は、携帯型作業機に第1乃至第7のいずれか1つの発明の構成を備えた携帯型4サイクルエンジンを搭載したことを特徴とする。
【0022】
第8の発明によれば、携帯型作業機には、第1乃至第7の何れか1つに記載されるオイル補給パイプを備えた携帯型4サイクルエンジンが搭載されている。これにより、第1乃至第7の何れか1つの発明の作用効果に加えて、作業姿勢に拘わらずエンジン性能が安定し、且つオイル量の点検や潤滑オイルの補充等に手間がかからない作業サービス性の良い携帯型作業機を提供することができるようになる。
【0023】
上記目的を達成するため第9の発明は、第8の発明に記載の携帯型作業機は刈払機であることを特徴とする。
【0024】
第9の発明によれば、様々な向きで使用される刈払機であっても、作業姿勢に拘わらずエンジン性能が安定し、且つオイル量の点検や潤滑オイルの補充等に手間がかからない作業サービス性の良い刈払機を提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の携帯型4サイクルエンジンによれば、オイルパンに装着されたオイル補給パイプは、補強材入り耐熱性合成樹脂で形成され半透明である。さらに、このオイル補給パイプの外面部には、オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする第1〜第3の段部や薄肉部等が形成されている。これにより、第1〜第3の段部や薄肉部によって潤滑オイルの貯留量が容易に確認できるようになるので、潤滑オイルの補給作業を正確且つ容易に、しかも一度で済ませることが可能となる。その結果、オイル量の点検や潤滑オイルの補充等にかかる作業サービスの容易化を図ることのできる携帯型4サイクルエンジンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された携帯型4サイクルエンジンの外観を示した背面図、図2は、同例における携帯型4サイクルエンジンの外観を示した側面図、図3は、同例における携帯型4サイクルエンジンの内部構造を示した断面図、図4は、同例における携帯型4サイクルエンジンのオイル溜室内部構造を示した断面図、図5は、図2中のB−B矢視断面図、図6は、同例におけるオイル補給パイプの取付状態を示した側面図、図7(a)は、同例におけるオイル補給パイプの外観図、(b)は、(a)中のD矢視図、(c)は、(b)中のE矢視図、(d)は、(c)中のF−F矢視断面図、(e)は、(c)中のG−G矢視断面図である。
【0027】
本発明は、刈払機等の携帯型作業機に搭載される携帯型4サイクルエンジン(以下、4サイクルエンジンという)に適用されるものであって、図1〜3に示されるように、4サイクルエンジン10は、エンジン本体部11、このエンジン本体部11の下方側に、燃料を貯留する燃料タンク12、潤滑オイルを貯留するオイルパン13、エンジン始動用のリコイルスタータ14を備えていると共に、エンジン本体11の上方側に、吸入空気を濾過するエアクリーナ15、燃料と吸入空気とを混合するキャブレタ16、エンジンから排出される高温の燃焼ガスを冷却、消音して大気に放出するマフラ17を備えて構成されている。
【0028】
エンジン本体11の駆動原理は従来と同様であり、燃料タンク12から送られたガソリン等の燃料はキャブレタ16で気化されたのち、図3に示されるように、給気ポート(図示せず)を通じて燃焼室18に送られる。燃焼室18に送り込まれた燃料混合気は、点火プラグ19により着火されて燃焼し、その際の燃焼ガスの燃焼圧力がピストン20に伝わってクランク軸21を回転駆動させる。燃焼室18内の燃焼ガスは、図示しない排気ポートを通じてマフラ17により消音、冷却されたのち排気ガスとして大気中に放出される。燃焼室18、吸気ポート及び排気ポートは、吸気バルブ22と排気バルブ23とにより交互に連通される。
【0029】
また、クランク軸21の回転に従動する図示しないカムギヤと一体の動弁カムの回転は、図示しないカムフォロワを介してプッシュロッド24を往復駆動し、このプッシュロッド24の往復運動はロッカーアーム35を駆動し、吸気バルブ22及び排気バルブ23を開閉駆動させる。なお、カムギヤは、クランク軸21が2回転する間に1回転するようになっており、吸気バルブ22及び排気バルブ23は、クランク軸21が2回転する間に1回の開閉動作を交互に行う。
【0030】
クランク軸21を回転可能に支承するクランクケース26下部には、潤滑オイルEOを貯留するオイルパン13が備えられており、このクランクケース26とオイルパン13によりオイル溜室27が形成される。このオイル溜室27はクランクケース26とオイルパン13の間に入れてオイル溜室27を密封するガスケット39によって上下仕切られていると共に、オイル溜室27には、室内に貯留された潤滑オイルEOを吸入する可撓性(例えば、ゴム製)の吸入チューブ29が配設されている。この吸入チューブ29の下端部に位置する吸入口29a側には錘30が取り付けられており、4サイクルエンジン10が通常の作業状態におけるいかなる傾斜状態にあっても、オイルパン13内に常に適量溜まった潤滑オイルEOの油面下に吸入口29aを位置させるようになっている。
【0031】
一方、吸入チューブ29の上端部は摺接通路31に接続されている。この摺接通路31は、クランク軸21に摺接している。クランク軸21内部には、クランク室28と連通する通路32が設けられており、通路32と摺接通路31とはクランク軸21の回転に応じて連通するようになっている。このように構成することで、クランク室28内が負圧になる間のみオイル溜室27とクランク室28とが吸入チューブ29を介して連通し、オイル溜室27内の潤滑オイルEOがクランク室28へ送られ、クランク室28内でピストン20、クランク軸21等の駆動部品を潤滑する。
【0032】
クランク室28内に送られた潤滑オイルEOは、オイルミスト化された状態でクランク室28内の正圧化に伴いカムギヤ室33に送られる。カムギヤ室33には、前述したカムギヤ、カムフォロワ及びプッシュロッド等が備えられており、これらはオイルミストにより潤滑される。さらに、カムギヤ室33とロッカー室34とは連通されており、ロッカー室34内に配置されたロッカーアーム35、吸気バルブ22及び排気バルブ23等もオイルミストにより潤滑される。
また、ロッカー室34とクランク28室とは、図示しない一方向弁を介して接続されており、ロッカー室34の圧力がクランク室28の圧力よりも高くなることでクランク室28と連通し、オイルミストはクランク室28に戻されるようになっている。
【0033】
図4に示されるように、クランク室28はオイル溜室27と仕切られているが、その一部にリード弁36が備えられており、このリード弁36がクランク室28内の正圧化に伴い開弁することで、クランク室28内でミスト化しきれずに液化したまま溜まる潤滑オイルEOがオイル回収通路37を介してオイル溜室27に戻されるようになっている。このように、オイル溜室27に貯留される潤滑オイルEOは循環して各種の駆動部品を潤滑するようになっている。
なお、潤滑オイルEOは、駆動部品を繰り返し潤滑するうちに、僅かずつ劣化し消費される。
【0034】
さらに、オイル溜室27とクランク室28とは、クランク室28内の圧力を調整するための一方向弁(図示せず)を有した圧力調整通路38を介して接続されている。そして、この圧力調整通路38がオイルパン13に貯留される液状の潤滑オイルEOを吸入しないように、潤滑オイルEOの油面よりも上方に圧力調整通路38の開口38aが設けられている。
【0035】
図5に示されるように、オイルパン13とクランクケース26とは、仕切部材としてのガスケット39を介して接続されることによりオイル溜室27を形成していると共に、このオイル溜室27は、ガスケット39により上室27aとオイルパン13側の下室27bに仕切られている。なお、このガスケット39の詳細については後述する。
【0036】
さらに、このオイルパン13は、アルミニウム製とされ、そのオイルパン13の図1中における右側面部には、筒状のオイル補給パイプ40がオイルパン13内部と連通するように接続された状態で図示しないネジ等により一体的に結合固定されている。このオイル補給パイプ40は、耐熱性で透明或いは半透明の合成樹脂に補強材としてガラス繊維の入ったもの、例えばグラスファイバ入りポリサルフォンやグラスファイバ入りポリアミド等を用いるのが好ましいが、これに限定されるものではなく、本実施例では、補強材入りで半透明で耐熱化、ローコストに構成するため、グラスファイバ入りポリアミド6を用いている。
そして、オイルパン13におけるオイル補給パイプ40の接続部の下側には、図2,5に示されるように、エンジン本体11から潤滑オイルEOを排出するためのドレン孔41が備えられており、通常はボルト42により閉栓されている。
【0037】
ここで、オイル補給パイプ40について説明する。
4サイクルエンジン10の図2,3中における前面側には、エンジン出力部43が設けられており、このエンジン出力部43からエンジン出力軸44がクランク軸21と同軸上に延びるようになっている。一方、後面側には、リコイルスタータ14がクランク軸21と同軸上となるように配設されている。そして、図1に示されるように、リコイルスタータ14から眺めて、左側面にはエアクリーナ15、キャブレタ16が備えられ、その下方側に設けられた燃料タンク12の給油口には燃料キャップ45が冠着されている。また、右側面にはマフラ17が備えられ、その下方側にオイル補給パイプ40が備えられている。
【0038】
4サイクルエンジン10をそのクランク軸21が水平となる様に配置した状態において、オイル補給パイプ40の管部40aは、図1に示されるように、後面視では鉛直方向に延びるように形成されていると共に、図2に示されるように、右側面視では鉛直方向に対し後面側に傾斜(後傾)するように形成されている。さらに、オイル補給パイプ40の補給口40bは、遮蔽物が何もない斜め後方に向かって開口するように形成されている。
このようにオイル補給パイプ40を後傾させ、且つ遮蔽物が何もない斜め後方に向かって補給口40bを開口させたことで、補給口40bの位置がオイルパン13の上部に備えられたマフラ17等の構成部品から遠ざかるようになり、マフラ17等に邪魔されずに補給口40bに取り付けられるオイルキャップ46(図1,2に図示)の開閉が容易化される。従って、補給口40bからの潤滑オイルEOの補給(補充、注入)も容易化されると共に、補給口40bから内側を容易に視認できるようになる。また、オイル補給パイプ40は、グラスファイバー入りポリアミド6等の合成樹脂によって形成されているので、軽量且つ十分な強度が得られ、そのうえ、約100℃の油温となる潤滑オイルEOに対する耐熱性も十分に得られる。
なお、補強材はグラスファイバーにのみ限定されるものではなく、使用する合成樹脂を補強し、耐熱性も同等以上であって、合成樹脂と混ぜることで半透明であれば良い。
【0039】
なお、このオイル補給パイプ40は、図5に示されるように、オイルパン13との接続部40cにおいて、オイル補給パイプ40内部の最下部がオイルパン13の底面13aと同じ高さか或いはそれよりも上側にあるように設定するのが好ましい。これにより、潤滑オイルEOの補給時にオイル補給パイプ40により注入される潤滑オイルEOは常にオイルパン13に流入し、潤滑オイルEOの補給(注入、補充)を円滑に行うことができるようになる。
【0040】
これを踏まえて、本実施形態にあっては、図5に示されるように、オイル補給パイプ40内部の最下部がオイルパン13の底面13aと同じ高さとなるように構成されている。さらに、オイルパン13に貯留される潤滑オイルEOの量が、オイルパン13の底面13aの位置に相当する量から標準レベルの上限ULまでの範囲で、潤滑オイルEOの油面がオイル補給パイプ40の接続開口部40c1によって遮られることがないように構成されている。さらには、標準レベルの下限LLは、オイルパン13の底面13aと標準レベルの上限ULとの間となるように構成されている。これにより、オイル補給パイプ40には、潤滑オイルEOが少なくとも標準レベルの下限LLから上限ULの範囲で浸されることとなり、潤滑オイルEOの補給の際に潤滑オイルEOの油量が接続部開口40c1で遮られることがないので、潤滑オイルEOを標準レベルの上限ULまで円滑に補給することが可能となる。
【0041】
さらに、このオイル補給パイプ40には、作業サービスをさらに向上させる目的で細部の構成にさらに手が加えられている。
すなわち、オイル補給パイプ40は、図6,7に示されるように、補給口40bより真っ直ぐに延びた管部40aが形成されている。さらに、この管部40a下部には、ほぼ直角に屈曲した接続部40cが一体的に形成されており、その端部に接続開口部40c1が開口形成されている。さらに、この接続部開口40c1近傍には、オイルパン13と接続する際のシール性を高めるためのOリング47を装着するためのOリング装着溝40c2が形成されている。さらに、このOリング装着溝40c2に隣接してオイルパン13との取付面40c3が形成されている。この取付面40c3は、その取付け面40c3を含む平面40c4が、オイル補給パイプ40のオイル補給部40dにおける外形部分を横断するように構成されている(図7(b)参照)。これにより、オイル補給パイプ40のオイルパン13の右側面側への突出量を少なく抑えることができるようになっている。
【0042】
さらに、図2、図7(a),(b),(d),(e)に示されるように、オイル補給パイプ40をオイルパン13に装着した状態で右側面側の正面から直視できる位置で、オイル補給パイプ40の接続部開口40c1付近の管部40aには、薄肉部40eが一体的に形成されている。この薄肉部40eは、オイル補給パイプ40の外面を平坦にすることで、図7(d)に示されるように、管部40aの内径部分とで構成されるオイル補給パイプ40の厚みが周囲と比べて約1/2程度に薄肉化されている。この薄肉部40eの内側部分は、標準レベルにおいて常に潤滑オイルEOにより浸されている。さらに、この薄肉部40eに隣接する位置における標準レベルの上限UL及び下限LLの箇所には、それぞれオイル補給パイプ40と一体的に形成された第2の段部としての上側リブ40f及び下側リブ40gが外側に向けて凸状に形成されている。
【0043】
上述したオイル補給パイプ40によれば、半透明のグラスファイバー入りポリアミド6等の合成樹脂により形成されているので、潤滑オイルEOの貯留状態をオイル補給パイプ40の外側から目視で視認することが可能となる。これに加えて、右側面側の正面から直視できる位置の管部40aに、標準レベルにおいて常に潤滑オイルEOにより浸される箇所に薄肉部40eを設けたので、薄肉部40eを通して潤滑オイルEOの貯留状態をより鮮明に確認することが可能となる。さらには、薄肉部40eに隣接する位置に上限リブ40f及び下限リブ40gを設けたので、潤滑オイルEOの貯留状態が標準レベルの上限ULと下限LLとの範囲で容易に確認することができるようになると共に、薄肉部40eへの接触に対する防護効果を同時に得ることが可能となる。
【0044】
さらに、図7(e)に示されるように、オイル補給パイプ40の内面部には、標準レベルの上限ULと下限LLとが分かるように、第1或いは第3の段部としての上限の段部40h及び下限の段部40iが一体的に設けられている。これは、図6に示されるように、補給時のオイル補給パイプ40は鉛直方向に対し傾斜しており、標準レベルの上限UL或いは下限LLにおいて、上限の段部40h及び下限の段部40iの一部にかかるように構成されている。これにより、オイル補給パイプ40は、半透明のグラスファイバー入りポリアミド6で形成されているので、周囲の明かりが透過してオイル補給パイプ40の内部を明るくすることができ、さらに、上限の段部40h及び下限の段部40iは、オイルキャップ46を外せば補給口40bの外側から容易に覗き見ることが可能となる。従って、直接貯留量を確認しながらオイル補給作業が可能となるので、正確な貯留量を確保するための補給作業を一度で済ませることが可能となる。
【0045】
次に、オイル溜室27を上室27aと下室27bとに仕切るガスケット39について図8,9を用いて説明する。
図8は、図4中のC−C矢視断面図、図9は、図1中のA−A矢視断面図である。
【0046】
図8,9に示されるように、ガスケット39の四隅には、挿通孔39aが開口形成されており、これらの挿通孔39aにオイルパン13とクランクケース26とを締結するための図示しないボルト軸部が挿通する。また、エンジン出力部43側(前面側)には、オイル回収通路37を挟んで左右一対のオイル戻し孔39bが開口形成されている。また、ガスケット39の中心付近には、クランク室28からのオイル回収通路37を貫通するための貫通孔39cが開口形成されていると共に、その後面側には吸入チューブ29を貫通するための貫通孔39dが開口形成されている。さらに、図8に示されるように、圧力調整通路38は、クランク室28のオイル回収通路37近傍に設けられている。ところで、このガスケット39によりオイル溜室27は上室27aと下室27bとに仕切られるが、オイル戻し孔39bの部分でのみ上室27aと下室27bとが連通するようになっている。
【0047】
このように、潤滑オイルEOの溜まる下室27bと圧力調整通路38が連通する上室27aとはガスケット39によって仕切られているので、圧力調整通路38に液化した状態の潤滑オイルEOがかぶることなく、スムーズな潤滑オイルEOの潤滑が可能となる。また、携帯型4サイクルエンジン10が通常の使用状態から大きく姿勢変化したとしても、ガスケット39により潤滑オイルEOの油面の揺れが抑えられるため、吸入チューブ29が潤滑オイルEOに浸らなくなるような事態が防止され、油面の揺れによるエンジン振動を防止することができるようになる。これらの結果、エンジン性能や作業性等をより向上させることができる。
【0048】
本発明が適用された4サイクルエンジン10は、特に、携帯型作業機の1つである刈払機に搭載するとその効果が最大限に発揮される。そこで、4サイクルエンジン10を刈払機に搭載した実施形態について図10,11を用いて説明する。図10は、本発明が適用された4サイクルエンジンを搭載した刈払機の全体構造を示した側面図、図11は、同例における刈払機を用いた通常の作業状態を示した図である。
【0049】
図10に示されるように、この刈払機50にあっては、4サイクルエンジン10の出力部43側には、エンジン出力軸44の同一軸心上となるように中空状のパイプ部材51が接合した状態で結合固定されていると共に、このパイプ部材51の内部にはエンジン出力軸44に連なった駆動力伝達軸(図示せず)が回転可能に収納されている。駆動力伝達軸は、パイプ部材51の先端部に回転可能に取り付けられたカッター刃52に回転動力を伝達し、作業者はパイプ部材51の中間部に装着された操作ハンドル53を持って刈払い作業を行う。
【0050】
刈払い作業を行う場合には、図11に示されるように、通常、作業者は操作ハンドル53を持ち、カッター刃52側を下方に傾斜させた状態で左右側方に振り回して、地表に生えている雑草の刈払いを行う。また、雑草等の生え具合や地表の形状に応じて、パイプ部材51を回動中心として操作ハンドル53を回動させるように操作する。
【0051】
また、刈払機50の通常使用における標準の作業休止状態は、エンジン出力軸44がほぼ水平となる状態であり、この状態で燃料や潤滑オイルEOの補充等が行われる。
【0052】
オイル補給パイプ40は、4サイクルエンジン10の側面に取り付けられている。このオイル補給パイプ40は、図7(b)に示されるように、オイル補給パイプ40の取付面40c3を含む平面40c4がオイル補給パイプ40のオイル補給部40dにおける外形部分を横断するように構成されており、オイル補給パイプ40による側方への張り出しが少なく抑えられている。これにより、左右側方に移動して作業を行う頻度の高い刈払機50であっても、オイル補給パイプ40の接続による潤滑オイルEOの横揺れを最小限に抑えることが可能となる。
【0053】
また、オイル補給パイプ40は、その管部40aが鉛直方向に対し後傾するように取り付けられているので、通常の作業休止状態における潤滑オイルEOの補充作業を容易化することができる。さらにまた、図11に示されるような通常の作業状態で、管部40aがほぼ鉛直に向くようにオイル補給パイプ40が取り付けられることで、側面方向の移動によりオイル補給パイプ40に流入した潤滑オイルEOが機体前後方向に移動しないので、違和感ない補充作業が可能となる。
【0054】
さらには、ガスケット39によりオイル溜室27が上室27aと下室27bとに仕切られ、且つ前面側に設けられたオイル戻し孔39bの部分でのみ連通しており、上室27aに跳ね上がった液状の潤滑オイルEOは、通常の作業状態ではオイル戻し孔39bから下室27bに容易に戻されるようになっている。そのため、カッター刃52を上方に持ち上げて刈払い作業を行うような場合、つまり4サイクルエンジン10のエンジン出力部43側が上向きに傾斜するような状態であっても、ガスケット39の後面側は完全に仕切られているので、後面側に位置する圧力調節通路38は、液状の潤滑オイルEOにより浸されることはなく、スムーズな潤滑オイルEOの循環が可能となる。これにより、作業姿勢を問わない安定した刈払い作業を行うことが可能となる。
【0055】
なお、オイル補給パイプ40の取付位置は、上述した構成のみに限定されるものではなく、図12に示されるように、オイル補給パイプ40の取付位置をさらに後方に下げることが可能である。
図12は、取付位置をさらに後方に下げたオイル補給パイプの側面図である。
【0056】
図12に示されるように、オイル補給パイプ40の取付位置をさらに後側に下げた4サイクルエンジン100を刈払機50に搭載することによって、取付位置変更前のものよりもより高い効果が得られるようになる。すなわち、刈払機50の通常の作業状態において、潤滑オイルEOは、オイル溜室27の前面側に寄ってしまうため、オイルパン13の後側に最大限下げて、目一杯後方寄りとなるように取り付られたオイル補給パイプ40は潤滑オイルEOに浸りにくくなる。従って、左右側方への移動を何度も繰り返しても、オイル補給パイプ40への潤滑オイルEOの流入が抑えられるので、左右側方に向かった潤滑オイルEOの揺れを抑制することができ、その結果、エンジン性能、つまり作業性をより一層高めることが可能となる。
【0057】
さらには、オイル補給パイプ40は、上述した構成にのみ限定されるものではなく、例えば、オイル補給パイプ40に外力が加わった際、薄肉部40eを保護する目的で、オイル補給パイプ40に補剛部材を設けることが可能である。
図13は、補剛部材により防護された薄肉部を有するオイル補給パイプ40の斜視図である。
【0058】
図13に示されるように、オイル補給パイプ40の薄肉部40eの周囲には、上側の段40h或いは下側の段40iと同じ高さか、或いはそれ以上の高さとなるような補剛部材としての凸状のリブ部40jが一体的に設けられている。このようなリブ部40jを薄肉部40eの周囲に配設することによって、薄肉部40eに何かが接触した際の外力を始めにリブ部40jに受容させることによって、外力が直接薄肉部40eに作用するのを回避する。これにより、薄肉部40eの防護効果を高めることができて、オイル補給パイプ40の耐衝撃性をより向上させることができるようになる。
【0059】
上述説明したように本発明によれば、オイルパン13に装着されたオイル補給パイプ40の素材は、補強材入り耐熱性合成樹脂で且つ半透明に形成されている。さらに、このオイル補給パイプ40の内面部は、オイルパン13に貯留された標準レベル内の潤滑オイルEOにより浸されると共に、オイル補給パイプ40の補給口40bから視認可能な位置には、オイルパン13に貯留された潤滑オイルEOの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す上限の段部40h及び下限の段部40iが形成されている。これにより、周囲の明かりがオイル補給パイプ40を透過してパイプ内部を明るく照らし出すので、直接貯留量を確認しながら潤滑オイルEOの補給作業を行うことが可能となる。しかも、透明でない上限の段部40h及び下限の段部40iによって潤滑オイルEOの適量が容易に分かるので、潤滑オイルEOの補給作業を正確且つ容易に、しかも一度で済ませることが可能となる。その結果、潤滑オイルEOの補給作業の煩わしさを低減することができると共に、貯留量を厳密に管理することが可能となるので、潤滑不良による駆動部分の不具合を大幅に低減することができるようになる。また、オイル補給パイプ40は軽量であるため、重量増加を防ぐことができる。
【0060】
また、本発明によれば、オイル補給パイプ40の容易に視認可能な部分には、オイルパン13に貯留された潤滑オイルEOの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする薄肉部40eが形成されている。これにより、周囲の明かりがオイル補給パイプ40を透過してパイプ内部を明るく照らし出し、薄肉部40eによって潤滑オイルEOの油面位置がパイプ外側から明確に分かり、貯留量が標準レベルにあるかどうか容易に分かるので、潤滑オイルEOの補給作業を正確且つ容易に一度で済ませることが可能となり、オイルキャップ46を外さずに残量点検が可能となる。その結果、潤滑オイルEOの補給作業の煩わしさを低減することができると共に、貯留量を厳密に管理することが可能となるので、潤滑不良による駆動部分の不具合を大幅に低減することができるようになる。また、オイル補給パイプは軽量であるため、重量増加を防ぐことができる。
【0061】
さらにまた、本発明によれば、オイル補給パイプ40の薄肉部40eに隣接する位置に形成された上側リブ40f及び下側リブ40gによって、オイルパン13に貯留された潤滑オイルEOの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲内にあるかないかが示される。これにより、潤滑オイルEOの貯留量がより鮮明となるので、貯留量をより厳密に管理することが可能となり、潤滑不良による駆動部分の不具合発生の低減化を図ることができるようになる。又、上側リブ40f及び下側リブ40gにより薄肉部40eの防護効果を高めることができるようになるので、作業中にオイル補給パイプ40を壁等に当てても、薄肉部40eが直接接触しづらくなり、オイル補給パイプ40の破損を防ぐことが可能となる。
【0062】
さらにまた、本発明によれば、携帯型4サイクルエンジン10が刈払機50に搭載された状態にあっては、オイル補給パイプ40の管部40aの軸は真っ直ぐに延びていると共に、オイルパン40との取付面40c3は、その取付面40c3を含む平面40c4がオイル補給パイプ40のオイル補給部40dにおける外形部分を横断するようにオイルパン13に取り付けられている。さらに、オイル補給パイプ40は、エンジン出力軸44がほぼ水平となる刈払機50の通常の作業休止状態にあっては、管部40aが鉛直方向に対してエンジン出力部43側とは異なる方向に傾斜するようにオイルパン13に取り付けられている。これにより、オイル補給パイプ40の側面方向の突出を抑えることができるので、オイル補給作業をさらに容易化することができる。また、刈払機50を左右側方向に振り回したり、回転させるような刈払機特有の作業をおこなっても、オイル補給パイプ40に流入した潤滑オイルEOは前後方向に移動することはなく、しかもオイル補給パイプ40によって潤滑オイルEOの横揺れを最小限に抑えることが可能となるので、違和感ない作業を維持することが可能となる。
【0063】
さらにまた、本発明によれば、オイル補給パイプ40は、エンジン出力部43とは反対側のオイルパン13の端部に取り付けられている。これにより、刈払機50の通常の作業状態にあっては、エンジン11下部のクランクケース26内において作業部側に寄った潤滑オイルEOはオイル補給パイプ40に流入し難くなるので、潤滑オイルEOの側面方向の揺れを抑えることができるようになり、作業性をより高めることが可能となる。
【0064】
さらにまた、本発明によれば、オイル補給パイプ40は、グラスファイバー入りポリアミド6によって形成されている。これにより、オイル補給パイプ40を軽量且つローコストに構成することができる。また、オイルパン13に貯留された潤滑オイルEOに対して耐熱性、耐油性及び耐衝撃性も確保されるので、刈払機50に搭載される携帯型4サイクルエンジン10に用いられても、十分に使用に耐えることが可能となる。
【0065】
また、本発明によれば、刈払機50には、オイル補給パイプ40を備えた携帯型4サイクルエンジン10が搭載されている。これにより、様々な向きで使用される刈払機50であっても、作業姿勢に拘わらずエンジン性能が安定し、且つオイル量の点検や潤滑オイルの補充等に手間がかからないメンテナンス性の良い刈払機50を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明が適用された携帯型4サイクルエンジンの外観を示した背面図である。
【図2】同例における携帯型4サイクルエンジンの外観を示した側面図である。
【図3】同例における携帯型4サイクルエンジンの内部構造を示した断面図である。
【図4】同例における携帯型4サイクルエンジンのオイル溜室内部構造を示した断面図である。
【図5】図2中のB−B矢視断面図である。
【図6】同例におけるオイル補給パイプの取付状態を示した側面図である。
【図7】(a)は、同例におけるオイル補給パイプの外観図、(b)は、(a)中のD矢視図、(c)は、(b)中のE矢視図、(d)は、(c)中のF−F矢視断面図、(e)は、(c)中のG−G矢視断面図である。
【図8】図4中のC−C矢視断面図である。
【図9】図1中のA−A矢視断面図である。
【図10】本発明が適用された4サイクルエンジンを搭載した刈払機の全体構造を示した側面図である。
【図11】同例における刈払機を用いた作業状態を示した図である。
【図12】取付位置をさらに後方に下げたオイル補給パイプの側面図である。
【図13】補剛部材により防護された薄肉部を有するオイル補給パイプの斜視図である。
【図14】(a)は、従来の携帯型4サイクルエンジンの斜視図、(b)は、従来の携帯型4サイクルエンジンにおける潤滑オイルの補給状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10,100 携帯型4サイクルエンジン
11 エンジン本体
13 オイルパン
26 クランクケース
27 オイル溜室
27a 上室
27b 下室
28 クランク室
39 ガスケット
39a 挿通孔
39b オイル戻し孔
39c 貫通孔
39d 貫通孔
40 オイル補給パイプ
40a 管部
40b 補給口
40c 接続部
40c1 接続開口部
40c2 Oリング装着溝
40c3 取付面
40d オイル補給部
40e 薄肉部
40f 上側リブ(第2の段部)
40g 下側リブ(第2の段部)
40h 上側の段部(第1、第3の段部)
40i 下側の段部(第1、第3の段部)
40j リブ部
43 エンジン出力部
44 エンジン出力軸
50 刈払機(携帯型作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン下部に潤滑オイルを貯留するためのオイルパンを備えた携帯型4サイクルエンジンにおいて、
前記オイルパンに潤滑オイルを注入するためのオイル補給パイプが取り付けられていると共に、前記オイル補給パイプの素材は補強材入り耐熱性合成樹脂製で且つ半透明であって、標準レベル内にあっては、そのパイプ内面部が前記オイルパンに貯留された潤滑オイルにより浸され、且つ前記オイル補給パイプの補給口から視認可能な前記パイプ内面部に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す第1の段部が形成されていることを特徴とする携帯型4サイクルエンジン。
【請求項2】
エンジン下部に潤滑オイルを貯留するためのオイルパンを備えた携帯型4サイクルエンジンにおいて、
前記オイルパンに潤滑オイルを注入するためのオイル補給パイプが取り付けられていると共に、前記オイル補給パイプの素材は補強材入り耐熱性合成樹脂製で且つ半透明であって、標準レベル内にあっては、そのパイプ内面部が前記オイルパンに貯留された潤滑オイルにより浸され、且つ前記オイル補給パイプの容易に視認可能な部分に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを視認可能とする薄肉部が形成されていることを特徴とする携帯型4サイクルエンジン。
【請求項3】
前記オイル補給パイプの薄肉部に隣接する位置に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の位置にあることを示す第2の段部が前記オイル補給パイプの外側に向かって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項4】
前記オイル補給パイプの補給口から視認可能な前記パイプ内面部に、前記オイルパンに貯留された潤滑オイルの貯留量が標準レベルの上限及び下限の範囲にあることを示す第3の段部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項5】
前記携帯型4サイクルエンジンが携帯型作業機に搭載された状態にあっては、前記オイル補給パイプは、前記オイル補給パイプの管部の軸は真っ直ぐに延びており、前記オイルパンとの取付面は、その取付面を含む平面が前記オイル補給パイプの補給口の外形部分を横断するように取り付けられていると共に、前記エンジンの出力軸がほぼ水平となる前記携帯型作業機の通常の作業休止状態にあっては、前記オイル補給パイプは、前記管部が鉛直方向に対して前記エンジンの出力部側とは異なる方向に傾斜するように前記オイルパンに取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項6】
前記携帯型4サイクルエンジンは、通常の作業状態において作業部が斜め下方に向かい、前記オイル補給パイプは、前記エンジンの出力部とは反対の側の前記オイルパンの端部に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項7】
前記オイル補給パイプは、グラスファイバー入りポリアミド6を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の携帯型4サイクルエンジン。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の携帯型4サイクルエンジンを搭載したことを特徴とする携帯型作業機。
【請求項9】
刈払機であることを特徴とする請求項8に記載の携帯型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−224824(P2007−224824A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47172(P2006−47172)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000237215)富士ロビン株式会社 (27)
【Fターム(参考)】