説明

携帯用作業機

【課題】所望の切込み深さを得ることができる携帯用作業機を提供する。
【解決手段】
携帯用作業機において、保護カバー7は、外周側にロッド11、ローラ10(第1のガイド部)、及び固定用のノブボルト12を有して構成される切り込み深さ調整装置17を備えている。保護カバー7の外周側には、回転刃3に沿った円弧状の凹部15が形成されており、凹部15の内側にはロッド11が嵌め込まれている。ロッド11は凹部15同様に円弧状に形成されるとともに、凹部15の幅より若干細く形成され、凹部15内を円弧状にスライド移動可能に構成されている。また、保護カバー7にはローラ10と回転軸14を挟んで反対側の周縁部には支点となるローラ9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用作業機、特にコンクリート等の切断に用いられる携帯用のエンジンカッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術におけるエンジンカッタ101(携帯用作業機)について図5に本体の外観図を示す。エンジンカッタ101はハウジング108の内部にエンジン102を保持し、ハウジング108の後方に形成されたリアハンドル104に設けられたスロットルレバー105を引くことにより、エンジン102のスロットルが調節され、エンジン102の回転数が上昇し、エンジン102のクラッチ(図示せず)が繋がることで、エンジン102の動力を本体先端の回転刃103を回転させる。図6に上述のエンジンカッタ101の使用時の状態を示す。エンジン102の動力により本体の先端に取り付けられた回転刃103が回転することで、被切断物Wを切断する。このような例は特許文献1によっても示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−190311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で述べたような携帯式のエンジンカッタにおいては、切断時に立ち上る粉塵により、本体先端は見えづらくなり、切込み深さDは作業者の感覚で判断されるため、取り扱いを習熟していない作業者では切込み深さDを正確に判断できない可能性があった。この問題の対処としては、深さ調節機構を備えた手押し式の移動台を用意し、本体を搭載して作業を行うのが一般的であるが、この方法の場合、高価な移動台を用意する必要があり、また手持ち不可能な移動台を用いるため、垂直壁に対する切断作業には適用不可能という問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エンジンカッタ単体で、作業者の習熟度合いに関わらず、一定の切込み深さを得ることが出来、かつ垂直壁の切込み深さ調節にも対応した携帯式エンジンカッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる携帯用作業機は、ハウジングと、前記ハウジングに支持された駆動源と、前記ハウジングの前方側で、前記駆動源により駆動される回転刃と、前記回転刃の一部を覆うと共に、被削材と当接する第1のガイド部を有する保護カバーと、前記ハウジングの前方側上方に設けられたフロントハンドルと、前記ハウジングの後方側に設けられるリアハンドルと、を備え、前記第1のガイド部は、前記保護カバーの開口側から突出量可変に設けられる第1のガイド部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記第1のガイド部は、前記回転刃の回転軸より前方側に設けられていてもよい。
【0008】
また、前記第1のガイド部は、回転可能に設けられた第1の車輪部を備えるていてもよい。
【0009】
また、前記第1のガイド部は、回転刃の回転軸を中心とした略円弧状の軌道上を移動可能に設けられていてもよい。
【0010】
また、前後方向において前記回転刃の回転中心と前記リアハンドルとの間に設けられ、前記被削材と当接可能な第2のガイド部を備えていてもよい。
【0011】
また、前記第2のガイド部は、回転可能に設けられた第2の車輪部を備えていてもよい。
【0012】
また、前記保護カバーは、前記回転刃の前記第1のガイド部からの突出量を表示する表示部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保護カバーに深さ調整機構を取り付けたことにより、所望の切込み深さを得ることができる携帯用作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンカッタを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエンジンカッタの切り込み深さ調整機構の拡大図である。
【図3】図2の状態から切り込み深さが深くなるよう調整した状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエンジンカッタの使用状態を示す図である。
【図5】従来式のエンジンカッタを示す図である。
【図6】従来式のエンジンカッタの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。図1に示すように、携帯用作業機(以下、エンジンカッタ)1は、2サイクルエンジン(駆動源)2を支持する本体ハウジング8(ハウジング)を備える。本体ハウジング8は、エンジン2の出力を調整するスロットルレバー5が配置されたリアハンドル4と、フロントハンドル6を備える。また、本体ハウジング8は、リアハンドル4の延出方向である後方側(図の左方向)と逆方向の前方側(図の右方向)に延び、本体ハウジング8と離れた側の端部に円板状の回転刃3が回転可能に取付けられた図示しないアームを備える。アームの両端部には、回転刃3の回転軸14に取付けられた回転刃側プーリと、エンジン側プーリとがそれぞれベルトが巻き掛けられた状態で回転可能に支持され、回転刃3にエンジン2の動力を伝達する。エンジンカッタ1の保護カバー7には、保護カバー7の側面円周上を回動可能な深さ調整ロッド7が取付けられている。尚、本明細書では作業者がエンジンカッタ1を保持した際を基準に、図中に示す方向を前後、上下左右方向と定義して説明する。
【0016】
保護カバー7は、例えばマグネシウム等の高強度材からなり、略半円状に形成され、回転刃3のハウジング8側、即ちフロントハンドル6及びリアハンドル4側を把持する作業者側を覆うと共に、他方側に開口を有し、回転刃3を露出させている。また、保護カバー7は回転刃3に沿って回動可能に支持されており、作業状態に合わせて移動させることが可能となっている。本発明の実施形態において、保護カバー7は、外周側にロッド11、ローラ10(第1のガイド部)、及び固定用のノブボルト12を有して構成される切り込み深さ調整装置17を備えている。図2に切り込み深さ調整機構の拡大図を示す。
【0017】
保護カバー7の外周側には、回転刃3に沿った円弧状の凹部15が形成されており、凹部15の内側にはロッド11が嵌め込まれている。ロッド11は凹部15同様に円弧状に形成されるとともに、凹部15の幅より若干細く形成され、凹部15内を円弧状にスライド移動可能に構成されている。ロッド11は円柱若しくは板状に形成されている。切り込み深さ調整装置17には、凹部15上を跨ってボルト保持部材16がロッド11を挟むように設けられ、ボルト保持部材16には貫通孔の内周にネジ溝が形成された図示しないネジ孔が設けられ、ボルト保持部材16のネジ孔にはノブボルト12の図示しないボルト部が螺合している。ノブボルト12は、ボルト保持部材16のネジ孔に締めこむことで、ボルト部が凹部15側に入り込む方向に移動するとともに、ボルト部の端面によりロッド11を押し付けることが可能となっている。ロッド11は、ノブボルト12が緩んだ状態でのみ凹部15の溝部に沿って移動可能に設けられており、これにより突出量を調整可能となっている。また、ロッド11には目盛り13が刻まれ、保護カバー7に設けられた目印と合わせて切り込み深さの調整度合いを目視にて確認できるようになっている。作業者は所望の突出量であることを目盛り13により確認したところで、ノブボルト12を締め付けることによりロッド11が押し付けられ、位置固定可能に構成されている。
【0018】
ロッド11の保護カバー7から突出した側の端部には、ローラ10が回転可能に設けられている。ローラ10は、回転刃3の回転軸14と平行な回転軸を有し、被切断材に押し付けた状態で前後方向に移動可能となっている。ローラ10はロッド11の先端に設けられているため、ロッドが移動することにより、ローラ10が回転軸14を中心とした円弧状に移動する。尚、ロッドは回転刃3の回転軸14より前方側に設けられ、回転刃3の外周に沿って後方側に向かって突出する。これにより、回転刃3が露出する範囲のうち切断作業時において使用頻度の高い下方側の領域を保ったまま、切り込み深さの調整を行うことが可能となっている。このため、切り込み深さ調整時のエンジンカッタ1の作業状態への影響を抑えることができ、保護カバー7全体を回動させての調整頻度を抑制できる。
【0019】
図3は、図2の状態に対してローラ10の保護カバー7からの突出量Pを小さくした、即ち切り込み深さDが深くなるように調整した状態を示す図である。尚、保護カバー7には更にロッド11が設けられる側と回転軸14を挟んで反対側の外周部に支点となるローラ9(第2のガイド部)が設けられている。ローラ9は、ローラ10と同様、回転軸14と平行な軸線を有して回転可能に設けられ、ローラ9とローラ10とを同時に被切断物Wに当接させた状態で前後方向に移動可能に構成されている。これにより、作業者が調整する切り込み深さDは、保護カバー7の開口の両端側に設けられたローラ9とローラ10を結んだ線からの回転刃3の突出量となる。作業者は、図2の状態において、ノブボルト12を一旦緩め、ロッド11を図面時計回りに移動させた後に、保護カバー7の目印とロッドの目盛り13を所望の位置に合わせ(所望の深さDに合わせ)、ノブボルト12を再度締め付けることにより、図3の作業状態に調整することができる。
【0020】
図4は、作業状態を示す図である。作業者はリアハンドル4とフロントハンドル6を把持してエンジンカッタ1を持った状態で、深さ調整ロッド11の先端および保護カバー7の下端設けられた二点のローラ9,10を被切断物Wの水平面に押し付けることで、ロッド7の保護カバーからの突出量Pに応じた一定の切込み深さDを得ることが出来る。また、垂直壁の切断作業においても同様に、被切断物Wの垂直面にローラ9,10を押し付けることで一定の切込み深さDを得ることが出来る。このようなエンジンカッタ1を用いての作業の一例として、作業者は、フロントハンドル6に近い側のローラ9を先に被切断物Wに押し付け、ローラ9を支点として、エンジンカッタ1を前方側に回転させ、回転刃3を徐々に被切断物Wに切り込ませる。エンジンカッタ1を前方側に傾倒させると、ローラ10が被切断物Wに当接する。この状態で、エンジンカッタ1を前後に移動(図4では後方側に移動)することにより、所定の切り込み深さを保ったまま切断作業を行うことが可能となる。また、このように支点9を中心として作業を行うことで、重量のあるエンジンカッタ1の作業性を更に向上させることができる。
【0021】
以上のように構成することにより、保護カバー7の深さ調整機構を調節することで、所望の切込み深さを得ることができる携帯用作業機1を提供することができる。また、ローラ10は、回転刃3の回転軸14より前方側に設けられているため、回転刃3の下側の範囲を常に使用することができ、作業状態への影響を抑制することが可能である。また、ロッド11及びローラ10が、回転刃3の回転軸14を中心とした略円弧状の軌道上を移動可能に設けられていることから、保護カバー7及び回転刃3の外周から突出することが無く、取り回しの際に邪魔になることが無いと共に、本体が大型化することを抑制することができる。また、回転刃3の回転軸14とリアハンドル4との間に設けられ、被削材Wと当接可能なローラ9を備えていることにより切り込み開始時に支点として働くことで、作業性を向上させることが可能となる。また、ローラ9は、回転可能に設けられていることで、支点として本体を回動させる際の操作がスムーズになる。また、ローラ9及びローラ10は回転可能に設けられていることから、切断作業中にも被切断物W上を押し付けながら移動することが可能となり、切断作業時の労力を大幅に低減できると共に、ローラ9,10に沿って移動が支持されるため、切り曲がり等を抑制することが可能となる。尚、ローラ9は保護カバー7のローラ10の反対側に設けられており、保護カバー7がどのような回動位置にある場合であっても、ローラ10と協動することで切り込み深さを調整することが可能である。また、回転刃3による切り込み深さ、即ちローラ9とローラ10とを結ぶ線からの回転刃3の突出量Dを表示するため、保護カバー7とロッド11の目盛り13からなる表示部を備えているため、作業者が所望の切り込み深さに調節することが容易となる。また、表示部は回転刃3の側面に備えられていることから、作業時に現在の状況を認識することが容易となる。
【0022】
なお、本発明の携帯用作業機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0023】
例えば、上記の切込み深さDを数値で管理するため、ロッド11に目盛り13を設けた構成としたが、保護カバー側に設けてもよい。また、表示部における深さの値は、取り付けられる回転刃3の径によって幾つかのパターンが設けられていてもよい。また、保護カバーからの突出量Pが表示されていてもよい。また、本明細書で説明したエンジンカッタ1は、2サイクルエンジンを搭載した構成であったが、4サイクルエンジンでもよく、又は電動機を備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 エンジンカッタ
2 エンジン
3 回転刃
4 リアハンドル
6 フロントハンドル
7 保護カバー
8 ハウジング
9 ローラ
10 ローラ
11 ロッド
12 ノブボルト
13 切込み深さ目盛り
W 被切断物
P 突出量
D 切込み深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに支持された駆動源と、
前記ハウジングの前方側で、前記駆動源により駆動される回転刃と、
前記回転刃の一部を覆う保護カバーと、
前記ハウジングの前方側上方に設けられたフロントハンドルと、
前記ハウジングの後方側に設けられるリアハンドルと、
前記保護カバーの開口側から突出量可変に設けられる第1のガイド部と、を備えることを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記第1のガイド部は、前記回転刃の回転軸より前方側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記第1のガイド部は、回転可能に設けられた第1の車輪部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記第1のガイド部は、前記回転刃の回転軸を中心とした略円弧状の軌道上を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記回転刃の回転軸と前記リアハンドルとの間に設けられ、前記被削材と当接可能な第2のガイド部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載のエンジン作業機。
【請求項6】
前記第2のガイド部は、回転可能に設けられた第2の車輪部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載のエンジン作業機。
【請求項7】
前記保護カバーは、前記第1のガイド部の調整によって変化する回転刃の切り込み深さの最大値を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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