説明

携帯用切断機の取付装置

【課題】この発明は、円柱形状体の被加工物にでも直接に、簡易に、かつ強固に取り付けることができる携帯用切断機の取付装置を得る。
【解決手段】携帯用切断機20の取付腕25を第1軸4周りに回動自在に支持する支持部3が上部側に設けられたベースフレーム2と、支持部3から第1軸4の軸心方向に所定距離離れて、ベースフレーム2から第1軸4の軸心方向と直交する方向に延設され、上部側に凸状の断面円弧状の固定側把持部7が延設方向の略中央部に形成された固定側取付板6と、一端側がベースフレーム2の固定側取付板6の延設基部の下部に第1軸4と平行な第2軸12周りに回動自在に取り付けられ、固定側把持部7側に凹状の断面円弧状に形成されて第2軸12周りの回動により固定側把持部7との間に形成される開口面積を縮小/拡大する可動側把持部11を有する可動側取付板9と、可動側取付板9を固定側取付板6に固定する固定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯用切断機を被加工物に取り付けるための携帯用切断機の取付装置に関し、特に円柱形状体の被加工物に携帯用切断機を取り付けるための携帯用切断機の取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯用切断機には、被加工物をベースフレームのベット上に固定するためのバイス装置が装備されている。このバイス装置は、ベット上に固定バイスとブラケット部材とを配置して、ブラケット部材に挿通する送りシャフトの一端部に係着され、ベット上を前進して被加工物を固定バイスにより挟持固定する可動バイスと、を備え、ブラケット部材は、ベット上に固定配置されるベースブラケットと、揺動ピンによってベースブラケットに揺動自在に支承された揺動ブロックと、からなる。揺動ブロックには、送りシャフトが貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔の天部部位に形成された円弧形状周縁部、および貫通孔の底部部位に、送りシャフトに刻設された螺子部と歯合する螺子部が刻設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された従来の携帯用切断機では、まず、バイス装置のベースフレームを固定構造体上に載置し、被加工物を固定バイスと可動バイスとの間に配置し、送りシャフトを回転させて可動バイスを固定バイス側に移動させて、被加工物を固定バイスと可動バイスとで挟持固定していた。そして、ベースフレームの一端に軸受部を介して回動自在に取り付けられている携帯用切断機を軸受部の軸心周りに回動させて、固定バイスと可動バイスとで挟持固定されている被加工物を切断していた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−15518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の携帯用切断機においては、バイス装置が安定して据え付けられる固定構造体が必要であり、例えばエレベータやエスカレータの解体工事における電動機の駆動軸やプランジャなどの大径の円筒形状体を切断する用途には適用できなかった。そこで、作業者が、手動にてのこぎりで回転機の軸やプランジャなどを切断しなければならず、作業負荷が著しく大きくなるとともに、作業時間が長くなるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、円柱形状体の被加工物にでも直接に、簡易に、かつ強固に取り付けることができ、固定構造体が無くとも、携帯用切断機を用いて被加工物を簡易に切断できるようにする携帯用切断機の取付装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、携帯用切断機の端部を第1軸周りに回動自在に支持する支持部が上部側に設けられたベースフレームと、上記支持部から上記第1軸の軸心方向に所定距離離れて、上記ベースフレームから上記第1軸の軸心方向と直交する方向に延設され、上部側に凸状の断面円弧状の固定側把持部が延設方向の略中央部に形成された固定側取付板と、一端側が上記ベースフレームの上記固定側取付板の延設基部の下部に上記第1軸と平行な第2軸周りに回動自在に取り付けられ、上記固定側把持部側に凹状の断面円弧状に形成されて上記第2軸周りの回動により上記固定側把持部との間に形成される開口面積を縮小/拡大する可動側把持部を有する可動側取付板と、上記可動側取付板の上記第2軸周りの回動状態を維持して該可動側取付板を上記固定側取付板に固定する固定手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、固定側把持部と可動側把持部との間に形成される開口面積を縮小するように可動側取付板を第2軸周りに回動して、固定側把持部と可動側把持部とで被加工物を加圧挟持することにより、携帯用切断機の取付装置を被加工物に簡易に、かつ強固に取り付けることができる。この時、固定側把持部と可動側把持部とが断面円弧状に形成されているので、被加工物が円柱形状体であっても、簡易に加圧挟持できる。そこで、固定構造体が無くとも、携帯用切断機の取付装置を被加工物に直接取り付けることにより、携帯用切断機を用いて被加工物を簡易に切断できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す上面図、図2はこの発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す正面図、図3はこの発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す側面図、図4はこの発明に係る取付装置を用いて携帯用切断機を被加工物に取り付けた状態を説明する図、図5はこの発明に係る取付装置を用いて取り付けた携帯用切断機により被加工物を切断している状態を説明する図である。
【0010】
図1乃至図3において、取付装置1は、後述する携帯用切断機20を第1軸4周りに回動自在に支持する支持部3を上部に有するベースフレーム2と、支持部3から第1軸4の軸心方向に所定距離離れて、ベースフレーム2から第1軸4の軸心と直交する方向に延設された固定側取付板6と、一端がベースフレーム2の固定側取付板6の延設基部の下部に第2軸12の軸心と平行な軸5周りに回動自在に取り付けられた可動側取付板9と、回動状態を維持して可動側取付板9を固定側取付板6に固定する固定手段と、を備えている。
【0011】
支持部3は、鋼板をU字状に折り曲げ成形して作製されている。そして、一対の貫通孔3aが支持部3のU字状の相対する両側辺の先端側に孔中心を一致させて穿設されている。第1軸4が一対の貫通孔3aに嵌装されている。さらに、一対の貫通孔3bが支持部3のU字状の相対する両側辺に、貫通孔3aの底辺側に孔中心を一致させて穿設されている。円柱状のストッパ5が一対の貫通孔3bに嵌装されている。支持部3は、底辺をベースフレーム2の上面に固着して取り付けられている。
【0012】
固定側取付板6は、鋼板を所定幅のL字状に成形してベースフレーム2と一体に作製され、上方に凸状の断面円弧状の固定側把持部7がベースフレーム2からの延設方向の略中央部に屈曲成形されている。さらに、鋼板を平板状に成形してなる補強板8が、固定側取付板6のベースフレーム2からの延設方向と直交する方向、即ち幅方向の中央位置に、固定側把持部7の外周壁面の両側の部位と固定側取付板6の固定側把持部7に近接する部位の上面とに密接し、かつ固定側把持部7の上面に対して垂直にして、溶接などにより固着されている。
【0013】
可動側取付板9は、鋼板を長尺の矩形平板状に成形された基部10と、鋼板を断面円弧状に折り曲げ成形して作製され、断面円弧状の軸心方向に所定の長さを有する可動側把持部11と、を備えている。そして、基部10の長辺で構成される側面の長さ方向中央部が、可動側把持部11の断面円弧状の外周壁面形状に沿うように凹状に形成されている。そして、可動側把持部11が、その断面円弧状の軸心方向の略中央部の外周壁面を、基部10の長辺で構成される側面の長さ方向中央部の凹面に密接させて、かつ基部10の主面に垂直にして、溶接などにより固着されている。ここで、断面円弧状の可動側把持部11の軸心方向の長さは、固定側把持部7の幅長さと略等しくなっている。
【0014】
この可動側取付板9は、可動側把持部11の内周壁面を固定側把持部7側に向けて、基部10の一端を、ベースフレーム2の固定側取付板6の延設基部の下面に立設された一対の取付腕13間に挿入され、第2軸12により回動自在に取り付けられている。基部10の他端には、操作ハンドル14が取り付けられている。
【0015】
固定手段は、固定側取付板6の延設方向の先端側下面から、基部10の板厚と略一致する隙間をあけて相対して下方に延設され、第1貫通孔15aが第2軸12の軸心を中心とする同一円周上に所定のピッチで複数穿設されている一対の腕部15と、可動側取付板9の基部10の他端側に、第2軸12の軸心を中心とする第1貫通孔15aと同じ円周上に穿設された第2貫通孔10aと、第1および第2貫通孔15a,10aに挿通されて可動側取付板9と腕部15とを締着固定する締着ボルト16およびナット17と、から構成されている。
また、ゴム製の弾性部材18が固定側把持部7および可動側把持部11の内周壁面に装着されている。
【0016】
このように構成された取付装置1は、第1軸4と第2軸12との軸心が平行であり、支持部3と固定側取付板6とが第1軸4および第2軸12の軸心方向に所定距離離間している。また、補強板8と可動側取付板9の基部10とが第1軸4および第2軸12の軸心と直交する同一平面上に位置している。固定側把持部7は、略半円の断面円弧状に形成されている。そして、可動側把持部11の断面円弧状の曲率半径は、固定側把持部7の断面円弧状の曲率半径より大きくなっている。さらに、固定側把持部7および可動側把持部11の軸心方向は、第1軸4および第2軸12の軸心と平行となっている。そして、可動側取付板9が、第2軸12周りに回動し、固定側把持部7と可動側把持部11とで構成される開口面積が縮小、拡大される。
【0017】
携帯用切断機20は、図4に示されるように、平鋼、山形鋼、電線管などの被加工物を工事現場などで切断加工する電動工具として市販されている高速カッターであり、図示しないモータにより回転駆動される回転円盤砥石21と、回転円盤砥石21を覆う砥石カバー23と、操作ハンドル24と、取付腕25と、を備えている。また、係止突起26が上述するストッパ5に係合可能に取付腕25に形成されている。
このように構成された携帯用切断機20は、取付腕25の先端を支持部3のU字状の相対する側辺間に挿入し、一対の貫通孔3aに装着された第1軸4により回動可能に取り付けられる。
【0018】
つぎに、この取付装置1を用いた携帯用切断機20による被加工物の切断方法を、エレベータの解体工事における電動機の駆動軸の切断に適用した場合について説明する。
まず、締着ボルト16およびナット17を取り外し、固定側把持部7内に電動機の駆動軸30が入るように取付装置1を配置する。ついで、操作ハンドル14を持って、可動側取付板9を図4中時計回りに回動する。そして、固定側把持部7と可動側把持部11とで駆動軸30を加圧挟持した状態で、締着ボルト16を第1および第2貫通孔15a,10aに挿通し、ナット17を締着ボルト16に締着する。これにより、図4に示されるように、取付装置1が駆動軸30に取り付けられる。この時、弾性部材18が圧縮状態となり、取付装置1の駆動軸30周りの回動が阻止される。なお、支持部3が駆動軸30の切り落とし側に位置するように、取付装置1は配置される。
【0019】
ついで、携帯用切断機20の取付腕25の先端を支持部3のU字状の相対する側辺間に挿入し、第1軸4を一対の貫通孔3aに装着し、携帯用切断機20が図4に示されるように取付装置1に取り付けられる。
そして、モータにより回転円盤砥石21を回転駆動し、操作ハンドル24を持って、携帯用切断機20を図4中反時計回りに回動する。これにより、図5に示されるように、回転円盤砥石21による駆動軸30の切断が行われる。そして、係止突起26がストッパ5に係合すると、携帯用切断機20のそれ以上の回動が阻止される。そこで、モータによる回転円盤砥石21の回転を停止する。この時、駆動軸30が完全に切断されていない場合には、締着ボルト16およびナット17による可動側取付板9の固定を解除し、取付装置1の駆動軸30に対する取付角度を変えて、再度、回転円盤砥石21による駆動軸30の切断を行うことになる。
【0020】
このように、この取付装置1によれば、携帯用切断機20の取付腕25の端部を第1軸4周りに回動自在に支持する支持部3が上部側に設けられたベースフレーム2と、支持部3から第1軸4の軸心方向に所定距離離れて、ベースフレーム2から第1軸4の軸心方向と直交する方向に延設され、上部側に凸状の断面円弧状の固定側把持部7が延設方向の略中央部に形成された固定側取付板6と、一端側がベースフレーム2の固定側取付板6の延設基部の下部に第1軸4と平行な第2軸12周りに回動自在に取り付けられ、固定側把持部7側に凹状の断面円弧状に形成されて第2軸12周りの回動により固定側把持部7との間に形成される開口面積を縮小/拡大する可動側把持部11を有する可動側取付板9と、可動側取付板9の第2軸12周りの回動状態を維持して可動側取付板9を固定側取付板6に固定する固定手段と、を備えている。そこで、固定側把持部7と可動側把持部11との間に形成される開口面積を縮小するように可動側取付板9を第2軸12周りに回動して、固定側把持部7と可動側把持部11とで被加工物を加圧挟持し、この状態で可動側取付板9を固定側取付板6に固定することにより、携帯用切断機20の取付装置1を被加工物に簡易に、かつ強固に取り付けることができる。
【0021】
例えば、エレベータやエスカレータの解体工事においては、電動機の駆動軸やプランジャなどの切断作業があり、携帯用切断機を固定するための固定構造体がないことから、作業者が手動による鋸で切断していた。しかし、この取付装置1は、被加工物である電動機の駆動軸やプランジャに直接取り付けることができるので、電動機の駆動軸やプランジャなどの切断作業に携帯用切断機を用いることができ、切断作業の作業負荷を著しく軽減でき、作業時間を大幅に短縮できる。
【0022】
固定手段が、固定側取付板6の延設方向の先端側下面から、基部10の板厚と略一致する隙間をあけて相対して下方に延設され、第1貫通孔15aが第2軸12の軸心を中心とする同一円周上に所定のピッチで複数穿設されている一対の腕部15と、可動側取付板9の基部10の他端側に、第2軸12の軸心を中心とする第1貫通孔15aと同じ円周上に穿設された第2貫通孔10aと、第1および第2貫通孔15a,10aに挿通されて可動側取付板9と腕部15とを締着固定する締着ボルト16およびナット17と、から構成されているので、被加工物の径が変わっても、締着ボルト16が挿通される第1貫通孔15aの位置を変えることで簡易に対応することができる。
【0023】
また、可動側把持部の断面円弧状の曲率半径が固定側把持部の断面円弧状の曲率半径より大きくなっているので、被加工物の径に拘わらず、取付装置1を強固に被加工物に取り付けることができる。
また、ゴム製の弾性部材18が固定側把持部7および可動側把持部11の内周壁面に装着されているので、被加工物が円柱形状体であっても、滑りを抑えて、取付装置1を強固に被加工物に取り付けることができる。
【0024】
なお、上記実施の形態では、支持部3がU字状に形成されているものとしているが、支持部の形状はU字状に限定されるものではなく、携帯用切断機20の取付腕25の端部形状にあわせて適宜設計されるものである。例えば、取付腕が断面コ字状に形成されていれば、支持部は取付腕の断面コ字状の隙間に挿入される板厚に形成されていればよい。
また、上記実施の形態では、回転円盤砥石をもつ携帯用切断機を用いるものとしているが、携帯用切断機は回転円盤砥石をもつものに限定されるものではなく、例えば、円形鋸歯や無端帯鋸歯をもつ携帯用切断機に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す上面図である。
【図2】この発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す正面図である。
【図3】この発明に係る携帯用切断機の取付装置を示す側面図である。
【図4】この発明に係る取付装置を用いて携帯用切断機を被加工物に取り付けた状態を説明する図である。
【図5】この発明に係る取付装置を用いて取り付けた携帯用切断機により被加工物を切断している状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 取付装置、2 ベースフレーム、3 支持部、4 第1軸、6 固定側取付板、7 固定側把持部、9 可動側取付板、11 可動側把持部、10a 第2貫通孔(固定手段)、12 第2軸、15 腕部(固定手段)、15a 第1貫通孔(固定手段)、16 締着ボルト(固定手段)、17 ナット(固定手段)、18 弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用切断機の端部を第1軸周りに回動自在に支持する支持部が上部側に設けられたベースフレームと、
上記支持部から上記第1軸の軸心方向に所定距離離れて、上記ベースフレームから上記第1軸の軸心方向と直交する方向に延設され、上部側に凸状の断面円弧状の固定側把持部が延設方向の略中央部に形成された固定側取付板と、
一端側が上記ベースフレームの上記固定側取付板の延設基部の下部に上記第1軸と平行な第2軸周りに回動自在に取り付けられ、上記固定側把持部側に凹状の断面円弧状に形成されて上記第2軸周りの回動により上記固定側把持部との間に形成される開口面積を縮小/拡大する可動側把持部を有する可動側取付板と、
上記可動側取付板の上記第2軸周りの回動状態を維持して該可動側取付板を上記固定側取付板に固定する固定手段と、を備えたことを特徴とする携帯用切断機の取付装置。
【請求項2】
上記固定手段は、上記固定側取付板の延設方向の先端側下部から上記可動側取付板の他端側を挟むように延設された一対の腕部と、上記一対の腕部に上記第2軸の軸心を中心とする同一円周上に所定のピッチで穿設された複数の第1貫通孔と、上記可動側取付板の他端側に上記第2軸の軸心を中心とする上記同一円周上に穿設された第2貫通孔と、上記第1貫通孔および上記第2貫通孔に挿通される締着ボルトと、上記締着ボルトに螺着されるナットと、から構成されることを特徴とする請求項1記載の携帯用切断機の取付装置。
【請求項3】
上記可動側把持部の断面円弧状の曲率半径が、上記固定側把持部の断面円弧状の曲率半径より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯用切断機の取付装置。
【請求項4】
弾性部材が上記固定側把持部および上記可動側把持部の内周壁面に装着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の携帯用切断機の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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