説明

携帯用切断機

【課題】バッテリと電動モータ2とのこ刃1の配置の集中度を高め、小型で重量バランスがよく、取り回しが楽な携帯用切断機。
【解決手段】定盤6上にのこ刃1とソーカバー14とのこ刃駆動用電動モータ2とを並設した切断機本体3の上部に操作用ハンドル4をのこ刃1の切断方向と平行に配置し、ハンドル4の下部に電動モータ駆動用のバッテリパック5を着脱自在に設けるとともに、切断機本体3の下部には、被切断材上に載置される定盤6とこの定盤6の下面からののこ刃1の出量を調整する切込み深さ調整機構とを設け、バッテリパック5を電動モータ2に近接し、かつハンドル4の中心よりものこ刃1の反対側にオフセットした位置に設けるとともに、切込み深さ調整機構の調整レバー27を上記バッテリパック5と上記ソーカバー14との間の空間に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリで駆動される携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動鋸などの携帯用切断機は、家庭用の電源を利用するものが主流であったが、電源ケーブルが付きまとって取り回しが悪く、電源が近くにないときは利用できないという問題があった。そのため、最近は電源として着脱できるバッテリパックを装備したものが市場に提供されている(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
このような携帯用切断機は、定盤上にのこ刃と、のこ刃を覆うソーカバーと、のこ刃を駆動する電動モータとを左右に並設した切断機本体の上部に操作用ハンドルを前後方向に配置し、上記ハンドルの後方下部にバッテリパックを着脱自在に設けた構成になっている。ところが、バッテリパックは電動モータ、のこ刃やソーカバーと同様に、携帯用切断機の構成部品のなかでは重量が嵩む部品であるから、ハンドルの操作部(トリガレバー)から離れた位置に設けるのは重量バランス上好ましくない。ハンドルの操作部は人差し指で操作できるよう、ハンドルのグリップ部分の前部に設けられているから、同じ重量であっても、バッテリ、電動モータおよびのこ刃(ソーカバーを含む)をハンドルの操作部から離れた位置に設けたものは、3部品を近接した位置に設けたものに比べて前後に長くなり、右、左と近くにある部材を切断していくような場合に、手に持って軽快に振り回しにくい。このように、バッテリと電動モータとのこ刃はハンドルの操作部に近接した位置に集中して配置するのが好ましい。
【0004】
その点で、現在のところ、特許文献1に示したものが最もバッテリとハンドル操作部とが近接しているので、最もこの集中構造がすすんでいるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−18498号公報
【特許文献2】特開2001−293672号公報
【特許文献3】特開2002−316302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の切断機であっても、取り回しの良さという点では必ずしも十分ではない。なぜならば、切断機の切込み深さ調整機構がバッテリパックを電動モータ側に近づけることができないからである。すなわち、切断機本体の後部には切込み深さ調整機構が設けられている。この調整機構は、切断機本体の下部に回動自在に配置された定盤の傾きを調整して定盤の下面から露出するのこ刃の出量を調整するものであるが、機構本体はのこ刃側に、のこ刃の出量を調整する調整レバーはのこ刃と反対側の電動モータ側に配置され、機構本体と調整レバーとはシャフトによって連結されている。上記構造では、シャフトはバッテリパックと電動モータとの間に設けざるを得ないので、特許文献1に示された構造が限界で、それ以上バッテリパックを電動モータに近づけることができない。シャフトを短くし、調整レバーをのこ刃側に寄せて配置すればバッテリパックを電動モータ側(前側)に近接させることができるが、その場合、調整レバーを取付けるスペースがなくなる。したがって、特許文献1に示された配置を改変することはできないと言うのが現状である。
【0007】
本発明は上記問題点を解消し、さらにバッテリと電動モータとのこ刃の配置の集中度を高め、小型で重量バランスがよく、取り回しが楽な携帯切断機を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、のこ刃とのこ刃を覆うソーカバーとのこ刃駆動用電動モータとを並設した切断機本体の上部に操作用ハンドルを前後方向に配置し、上記ハンドルの後下部に電動モータ駆動用のバッテリパックを着脱自在に設けるとともに、上記切断機本体の下部には、被切断材上に載置される定盤とこの定盤の下面からののこ刃の出量を調整する切込み深さ調整機構とを設けた携帯用切断機において、上記バッテリパックを上記電動モータに近接し、かつ上記ハンドルの中心よりものこ刃の反対側にオフセットした位置に設け、上記切込み深さ調整機構は、上記定盤を上記切断機本体の前部に回動自在に支持する回動軸と、上記定盤の後部に設けられた円弧状のリンクと、上記切断機本体に設けられて上記リンクに沿って摺動可能な狭持体と、上記挟持体を緩め又は締めるための調整レバーと、を備えて構成され、上記調整レバーは、上記回動軸と平行なシャフトに取り付けられて上記定盤が上記回動軸に対して回動する方向に回動するものであって、上記バッテリパックをオフセットした位置に設けたことで形成された上記バッテリパックと上記ソーカバーとの間の空間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記調整レバーを、上記ソーカバーよりも後方にまで延設させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記シャフトは上記リンクから上記バッテリパック手前までの範囲に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリパックを電動モータの近傍でハンドルの中心よりものこ刃の反対側にオフセットした位置に設ける構成であるから、ソーカバーとバッテリパックとの間に空間を形成することができ、これを調整レバーを設けるスペースとして利用することができる。調整レバーを、バッテリパックよりものこ刃側に配置すれば、電動モータの後部にバッテリパックを近接配置する上で障害になるものは何もないので、バッテリパックを直接に電動モータハウジングに当接できる程度の近接位置に配置することができる。そして、ハンドルの前部に設けられた操作部の近傍にバッテリパックと電動モータとのこ刃(ソーカバーを含む)とが一箇所に集中的に配置されるから、従来よりもさらに小型化を進めることができる。
【0012】
また、バッテリパックと電動モータとのこ刃とが一箇所に集中的に配置されるだけでなく、バッテリパックを電動モータの近傍でハンドルの中心よりものこ刃の反対側にオフセットした位置に設けたことにより、携帯用切断機を手に持ったときの左右の重量バランスがよく、左右どちらにも傾かずに安定するので、取り回しがよく、長時間使用しても疲れにくい。したがって、重量バランスがよく、取り回しが格段に楽な携帯用切断機を得ることができる。
【0013】
また、上記切込み深さ調整機構の調整レバーを、上記バッテリパックと上記ソーカバーとの間に配置したので、調整レバーは従来のものとほぼ同じく、切断機本体の後方位置に配置することができ、作業者がとまどうことがなく、操作性が損なわれない。また、切断動作中に他の部材にぶつかるという事故は生じにくくなるので、切込み深さ調整機構の誤動作がほとんどなくなり、作業の安全性が向上する。さらに、調整レバーを上記ソーカバーよりも後方にまで延設させれば、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る携帯用切断機の平面図
【図2】上記携帯用切断機の平面面図
【図3】図1のa−a線上の断面図
【図4】図2のb−b線上の断面図
【図5】図2のc−c線上の断面図
【図6】図2のd−d線上の断面図
【図7】切込み深さ調整機構の作動態様を図2のd−d線上の断面で示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3において符号Aは携帯用切断機を示す。この切断機は、のこ刃(丸鋸)1とこののこ刃1を駆動する電動モータ2とを左右に並設した切断機本体3の上部に操作用ハンドル4をのこ刃1の切断方向と平行に、つまり前後方向に配置し、上記ハンドル4の後端4aの下部に電動モータ2駆動用のバッテリパック5を着脱自在に設けるとともに、切断機本体3の下部に被切断材上に載置される定盤6を設けたもので、切断機本体3と定盤6には、定盤6の下面から露出するのこ刃1の出量を調整する切込み深さ調整機構(後述)が設けられている。
【0016】
電動モータ2の出力軸7には中間軸8の一端に固定した第1減速歯車10が噛合し、さらに中間軸8の他端に固定した第2減速歯車11が最終軸9に固定された第3減速歯車12に噛合し、最終軸9にはのこ刃1が固定されている。これにより、電動モータ2が回転すると、その回転力は第1、第2、第3減速歯車10、11、12を介して最終軸9に伝達され、のこ刃1が回転する。
【0017】
なお、電動モータ2はモータハウジング13に内装され、のこ刃1の定盤6より上方のほぼ半周部分は安全確保用のソーカバー14によって覆われている。電動モータ2の出力軸7には電動モータ冷却用のファン15も取付けられている。
【0018】
また、定盤6は切断機本体3の下部に設けられた金属製の板状部材で、その一部には開口部16が貫通形成され、開口部16の下方にはのこ刃1の一部が露出し、円弧状のロアガード17によって覆われている。このロアガード17はのこ刃1の回転軸(最終軸)9を中心に回動可能に装着されている。
【0019】
さらに、操作用ハンドル4は、切断機本体3の上部に配置され、その前部は切断機本体3の前部のややモータハウジング13側に一体的に設けられ、その後部は屈曲し、屈曲端部は切断機本体3の後面に一体的に設けられている。ハンドル4のグリップ部分の前部内側には操作部として電動モータ2のスイッチボタン18が配置されている。ハンドル4の後端4aの下部と定盤6との間には、公知の着脱機構を備えたバッテリパック5の装着部が形成され、バッテリパック5は、公知の手段により、装着部の後方から差し込んで装着してロックし、ロックを解除した後に引き抜いて外すことができるようになっている。
【0020】
ところで、上記バッテリパック5は、図2に示されるように、電動モータ2の近傍で上記ハンドル4の中心よりも電動モータ2側にオフセットして配置されている。これにより、バッテリパック5ののこ刃1側にはソーカバー14との間に空間Sが形成されている。
【0021】
次に、上記携帯用切断機には、定盤6の下面からののこ刃1の出量を可変調整することにより被切断材の切り込み深さを調整する切込み深さ調整機構が設けられている。この切込み深さ調整機構は上記空間Sを含み、バッテリパック5よりものこ刃1側に配置されている。
【0022】
すなわち、切込み深さ調整機構は、図4に示されるように、定盤6の前端部を切断機本体3の前部に設けられた回動軸20により回動自在に支持するとともに、定盤6の後部から円弧状のリンク21を設け、このリンク21を図5のように切断機本体3に設けられた1対の挟持体22、23によって挟み、調整レバー27によって挟持体22、23を緩め又は締めることにより定盤6を図6及び図7に示すように、回動軸20を中心に所望の位置まで回動させて固定し、定盤6の下面からののこ刃1の出量を調整することによって被切断材の切り込み深さを調整するものである。
【0023】
図4及び図5に示されるように、リンク21の中央にはその長手方向に沿って長穴24が円弧状に形成され、長穴24には切断機本体3側に設けられたシャフト25が貫通している。シャフト25はさらにソーカバー14の内側の側壁14aを貫通している。そして、シャフト25には外側と内側の両側からリンク21を挟み付ける挟持体22、23が取付けられている。外側の挟持体22はリンク21の長手方向に形成された凹溝26に沿って摺動可能に設けられているとともに、シャフト25に螺合している。内側の挟持体23はシャフト25と一体で、かつ調整レバー27の基部27aと一体的に形成されている。これにより、図6及び図7のように、調整レバー27を下方向と上方向に回動させることにより、それぞれ外側の挟持体22を内側の挟持体23に対して接近させたり離間させたりすることができ、側壁14aとともにリンク21を締め付けたり緩めたりすることで定盤6を回動軸20を中心に回動させてのこ刃1の出量を調整することができるようになっている。
【0024】
上記機構によれば、図7のように調整レバー27を上方に回動操作して挟持体22、23を緩めることにより、定盤6の後部がフリーになるので、定盤6は前部の回動軸20を中心に回動することができ、回動により、定盤6の下面から突出するのこ刃1の出量が変化する。出量は切り込み深さであるから、被切断材に従って切り込み深さを調整することができる。調整後は、調整レバー27を逆方向に回動させることにより挟持体22、23を締め付け方向に作動させれば定盤6と切断機本体3とを調整された角度で固定することができる。
【0025】
上記シャフト25はバッテリパック5の手前まで延び、シャフト25の端部はバッテリパック5とソーカバー14との間の空間Sで終わっている。そして、調整レバー27は上記空間Sに配置され、ソーカバー14の後方に回り込む形状で操作可能に設けられている。
【0026】
上述のように、バッテリパック5を電動モータ2の近傍でハンドル4の中心よりも電動モータ2側にオフセットした位置に設けたから、ソーカバー14とバッテリパック5との間に空間Sが形成され、これを切込み深さ調整機構を設けるスペースとして利用することができる。このようにして、切込み深さ調整機構を構成するシャフト25は、切断機本体3を左右に貫通する構造ではなく、その軸端はバッテリパック5ののこ刃1側に設けられる構造であり、電動モータ2の後部にバッテリパック5を近接配置する上で障害になるものが何もない。このため、バッテリパック5を直接にモータハウジング13に当接できる程度の近接位置に配置することができる。したがって、バッテリパック5と電動モータ2とのこ刃1とが集中的に配置されるから、従来よりもさらに小型化を進めることができる。
【0027】
また、バッテリパック5と電動モータ2とのこ刃1とがハンドル4のスイッチボタン18の近傍に集中的に配置されるだけでなく、バッテリパック5を電動モータ2の近傍で操作用ハンドル4の中心よりも電動モータ2側にオフセットした位置に設けたことにより、携帯用切断機を手に持ったときの左右の重量バランスがよく、左右どちらにも傾かずに安定するので、取り回しがよく、長時間使用しても疲れにくい。したがって、重量バランスがよく、取り回しが格段に楽な携帯用切断機を得ることができる。
【0028】
さらに、調整レバー27はバッテリパック5とのこ刃1との間にソーカバー14の後方に回り込む形状で設けられるので、調整レバー27の操作性を良好にすることができ、また切断動作中に他の部材にぶつかるという事故は生じにくくなるから、切込み深さ調整機構の誤動作がほとんどなくなり、作業の安全性が向上する。
【0029】
なお、切込み深さ調整機構はリンク21を締め緩めすることができるものであればよく、上述の形態に限定されない。例えば、調整レバー27を挟持体22、23と一体的に設ける代わりに、シャフトと一体的に設け、調整レバー27によりシャフトを回転させる構造でもよい。
【0030】
また、調整レバー27をバッテリパック5とのこ刃1との間ではなく、ソーカバー14の後部等に設けた場合も、調整レバー27のスペース分だけバッテリパック5とハンドル4をのこ刃1側に寄せて配置することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 のこ刃
2 電動モータ
3 切断機本体
4 操作用ハンドル
5 バッテリパック
6 定盤
14 ソーカバー
27 調整レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
のこ刃とのこ刃を覆うソーカバーとのこ刃駆動用電動モータとを並設した切断機本体の上部に操作用ハンドルを前後方向に配置し、上記ハンドルの後下部に電動モータ駆動用のバッテリパックを着脱自在に設けるとともに、上記切断機本体の下部には、被切断材上に載置される定盤とこの定盤の下面からののこ刃の出量を調整する切込み深さ調整機構とを設けた携帯用切断機において、
上記バッテリパックを上記電動モータに近接し、かつ上記ハンドルの中心よりものこ刃の反対側にオフセットした位置に設け、
上記切込み深さ調整機構は、上記定盤を上記切断機本体の前部に回動自在に支持する回動軸と、上記定盤の後部に設けられた円弧状のリンクと、上記切断機本体に設けられて上記リンクに沿って摺動可能な狭持体と、上記挟持体を緩め又は締めるための調整レバーと、を備えて構成され、
上記調整レバーは、上記回動軸と平行なシャフトに取り付けられて上記定盤が上記回動軸に対して回動する方向に回動するものであって、上記バッテリパックをオフセットした位置に設けたことで形成された上記バッテリパックと上記ソーカバーとの間の空間に配置されていることを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
上記調整レバーを、上記ソーカバーよりも後方にまで延設させたことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用切断機。
【請求項3】
上記シャフトは上記リンクから上記バッテリパック手前までの範囲に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の携帯用切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194567(P2011−194567A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128400(P2011−128400)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2009−52600(P2009−52600)の分割
【原出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】