説明

携帯用小物入れ、情報漏洩防護フィルム、カードケース及び情報漏洩防止板

【課題】カード等に記録された情報が盗み取られることが無い小物入れであって、携帯に不便がなく、耐久性が高く、さらに製造も容易な小物入れを提供する。
【解決手段】携帯用小物入れ1は、閉塞側の辺(図1のC−Cエリア)が縫製されており、表面の表側を構成する基布5と裏側を構成する基布6が重ねられ、その端部が糸7によって縫合され、別布により端の始末がされた上、裏表を裏返して袋形状が作られている。基布5,6に積層フィルム10が重ねられており、前記した縫製の際に基布5,6と共に積層フィルム10も縫合されている。積層フィルム10は、アルミニウム箔層12と樹脂層13が積層されたものである。携帯用小物入れ1は、内面の全てにアルミニウム箔層12と樹脂層13との積層フィルム10が設けられているので、カードから発せられる電磁波が外部に洩れずスキミングされることは無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄、袋物、財布、定期入れ、カード入れ等の携帯用小物入れやカードケースに関するものであり、特に個人情報の漏洩を防止する機能が付加された携帯用小物入れ等に関するものである。また本発明は、上記した小物入れ等に使用される情報漏洩防護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鞄やカード入れ等の携帯用小物入れは、古くから知られており、誰もが日常的に使用している。携帯用小物入れには、小銭やハンカチ等の他、キャッシュカードや銀行カード等のカードも入れられる。
これらのカードには、例えば特許文献1の様にICチップ等が埋め込まれたものがある。ICチップ等には口座情報や暗証番号等の重要な情報が記録されている。
【特許文献1】特開2005−73113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、スキミングと称される不正行為が問題となっている。スキミングは、他人のカードから口座情報や暗証番号等を読み出し、預金を引き出したり物品を購入する行為である。
本出願時において、スキミング犯の検挙数は少なく、その手口は定かではない。しかしながら、ICチップが埋め込まれたカードには非接触形のものもあり、当該非接触形のカードについては、通勤途上の混雑に紛れてのスキミングが可能ではないかと言われている。即ち非接触形のカードは、樹脂カードにコイルとICチップが埋め込まれており、コイルに磁界を与えることで誘導電流を起こしてICチップのデータを読みだすことができる。そのため所定の機能を備えたカードリーダを近づけるだけでICチップに記録された口座情報や暗証番号等を読み取ることができる。
【0004】
従って満員電車の中の様に他人と近接した状態にある場合、近接した位置に居る者がカードリーダを保持しておれば、カードの口座番号等を盗み取られる可能性がある。また近年、カードリーダの性能が向上し、カードと同等サイズのカードリーダも市販されている。この様な現状から、スキミングに対する不安が高く、スキミングを防止する対策が望まれている。
スキミングを防止する方策として、鞄やカード入れに金属板を取り付け、カードから漏洩する電磁波を遮蔽する方策が考えられるが、この様な構造のカード入れ等は、厚さが厚いものとならざるを得ず、携帯に不便である。
また金属箔を取り付ける構造も考えられるが、金属箔はやぶれ易く、耐久性が劣る。さらに金属箔を使用した構造は、金属箔の取付けに苦慮するという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記した現状を踏まえ、カード等に記録された情報が盗み取られることが無い小物入れであって、携帯に不便がなく、耐久性が高く、さらに製造も容易な小物入れを提供することを課題とする。また併せてスキミング等を防ぐためのフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、金属層と樹脂層が積層された情報漏洩防護フィルムである。
【0007】
本発明の情報漏洩防護フィルムは、金属層によって電磁波を遮蔽するのでカード等に記録された情報が外部に洩れない。また本発明の情報漏洩防護フィルムは、建材としても利用可能であり、室内の電話等から洩れる電磁波が室外に洩れることを防ぎ、情報の漏洩を防止することができる。
【0008】
金属層の素材は、アルミニウム、銅、銀等が採用可能であるが、銅は、錆びやすく、銀は高価であることからアルミニウムが最も適している。
【0009】
この点に注目して完成された請求項2に記載の発明は、金属層は、アルミニウム層であることを特徴とする請求項1に記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0010】
また請求項3に記載の発明は、金属層を複数有することを特徴とする請求項1に記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、金属層の少なくとも一層は、アルミニウム層であることを特徴とする請求項3に記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0012】
またカーボン層を設けることが推奨される(請求項5)。
【0013】
即ちカーボン層は、電磁波を吸収する機能を持ち、カード等に記録された情報が外部に洩れない。
【0014】
カーボン層は複数あることが望ましい(請求項6)。
【0015】
例えば表裏面にカーボン層を設けることが推奨される。
【0016】
請求項7に記載の発明は、異なる種類の金属層が混在していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0017】
また請求項8に記載の発明は、少なくともアルミニウム層と、鉄層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0018】
アルミニウム層は電磁波を遮蔽する機能が高く、鉄層は磁気を遮蔽する機能が高いので、両者を積層することによる相乗効果が高い。
【0019】
請求項9に記載の発明は、少なくともアルミニウム層と、銀層を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0020】
アルミニウム層と、銀層は、効果的に電磁波を遮蔽する周波数領域が異なる。そのため両者を積層することによって遮蔽効果の低い周波数領域を補完することができる。
【0021】
また銅層を設けてもよい(請求項10)。
【0022】
請求項11に記載の発明は、縫製可能な強度を備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0023】
本発明の情報漏洩防護フィルムは、縫製可能であるから、小物入れの内面等に縫い付けることができ、電磁波が洩れない構造にすることができる。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムが取り付けられたことを特徴とする携帯用小物入れである。
【0025】
本発明の小物入れは、アルミニウム層等が積層されたフィルムが取り付けられており、当該アルミニウム層等によって電磁波を遮蔽されるのでカードに記録された情報が外部に洩れない。
また小物入れに取り付けられるのはフィルムであるから、厚さが薄く、小物入れの総厚を増加させることはない。
さらに本発明では、アルミニウム箔等と樹脂が積層されたフィルムを使用するので強度が高く、耐久性が高い。また当該フィルムは縫製によって他部材と結合することができるので、小物入れの製造にも障害を与えない。
【0026】
請求項13に記載の発明は、一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられ、当該カード挿入ポケットに情報漏洩防護フィルムが取り付けられたことを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れである。
【0027】
本発明の小物入れでは、一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられているから、カードの出し入れが容易である。またカードは全面を遮蔽する必要はなく、コイル部分等の特定の部分を遮蔽すれば足りる。これに対して本発明では、カード挿入ポケットに積層フィルムが取り付けらているから、コイル部分等の特定の部分は積層フィルムによって覆われ、電磁波が漏洩することはない。
【0028】
請求項14に記載の発明は、一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられ、カード挿入ポケットは、小物入れの本体側に面する内壁と、これに対向する外壁によって構成され、カード挿入ポケットの少なくとも内壁側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れである。
ここで「内壁側」とは方向を表すものであり、「内壁」そのものとは異なる。従って「内壁側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられている」とは、ポケットの内壁そのもの(内壁の表面、裏面、内面を含む)に情報漏洩防護フィルムが取り付けられていてもよく、内壁を離れて設けられた壁、例えば小物入れの外周壁に情報漏洩防護フィルムが取り付けられていてもよい。以下の請求項についても同様である。
【0029】
本発明の小物入れについても、一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられているから、カードの出し入れが容易である。また本発明の小物入れでは、ポケットの内壁側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられているから、電磁波は小物入れの本体側には洩れない。またカードは、一部が露出した状態でポケットに挿入されるので、カードの構造や挿入方法の向き、深さ等によってはポケット側に電磁波を出すこともできる。
【0030】
請求項15に記載の発明は、カード挿入ポケットが設けられ、カード挿入ポケットを構成する壁の一方側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられ、カード挿入ポケットの他方側の壁は、電磁波が透過可能であることを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れである。
【0031】
本発明の小物入れでは、電磁波は、一方側には出ないが、他方側には電磁波を出すことができる。
【0032】
請求項16に記載の発明は、一面側に電磁波防護層が設けられたカードが挿入されることを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の携帯用小物入れである。
【0033】
本発明で採用するカードは、一方の面側にだけ電磁波が出る。また請求項12乃至15に記載の携帯用小物入れは、前記した様に、一方側にだけ電磁波を出すことが可能である。そのためカード自体の電磁波輻射面を小物入れの電磁波透過面等に合わせてポケットに挿入すると、カードから輻射される電磁波を外部のリーダで受信することができる。逆に電磁波輻射面を小物入れの漏洩防護フィルム側に合わせてポケットに挿入すると、カードに記録された情報を読み出すことはできず、スキミングを防止することができる。
【0034】
請求項17に記載の発明は、布帛又は革製の基材層を有し、当該基材層の裏側に情報漏洩防護フィルムが縫合されていることを特徴とする請求項12乃至16のいずれかに記載の携帯用小物入れである。
【0035】
本発明の小物入れでは、ある程度の剛性や強度を有する基材層を持ち、その基材層の裏側に情報漏洩防護フィルムが縫合されている。そのため本発明の小物入れは強度が高い。
【0036】
また情報漏洩防護フィルムは全面に設けられていてもよい(請求項18)。
【0037】
請求項19に記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムで作られたカードケースである。
【0038】
請求項20に記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムが内蔵された情報漏洩防止板である。
【0039】
請求項21に記載の発明は、少なくとも一方の面に接着層が設けられたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムである。
【0040】
本発明の情報漏洩防護フィルムは、一方の面に接着層が設けられているで、既存の小物入れや定期入れに貼り付けることができ、スキミング対策をとることができる。また部屋の壁等に貼ることにより、室内から電磁波が洩れることを防ぐことができ、盗聴等の対策をとることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の小物入れは、電磁波等を遮蔽することができ、スキミングによる情報の盗用を防止することができる効果がある。また本発明の情報漏洩防護フィルムは、情報の漏洩防止機能を付加することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の携帯用小物入れの正面図である。図2は、図1のA−A断面拡大図である。図3は、積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)の拡大断面図である。
【0043】
図1に示す携帯用小物入れ1は、全体が略長方形であり、その二辺(図1のB−Bエリア)が開口する。そして当該開口部分にはファスナー2が取り付けられている。
携帯用小物入れ1は、閉塞側の辺(図1のC−Cエリア)が縫合されて作られている。縫製部分の構造は、図2の通りである。即ち携帯用小物入れ1の表面の表側を構成する基布5と裏側を構成する基布6が重ねられ、その端部が糸7によって縫合され、別布により端の始末がされた上、裏表を裏返して袋形状が作られている。
【0044】
また特に本実施形態では、基布5,6に積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)10が重ねられており、前記した縫製の際に基布5,6と共に積層フィルム10も縫合されている。
従って本実施形態の携帯用小物入れ1は、袋形状の内面の全てに積層フィルム10が設けられている。
ここで積層フィルム10は、例えばスナック菓子の袋の素材と同等のものであり、図3の様にアルミニウム箔層12と樹脂層13が積層されたものである。
ここでアルミニウム箔層12の厚さは、8μm以上であることが望ましく、さらに18μm以上であることが推奨される。即ちアルミニウム箔層12の厚さが、8μm未満である場合は、電磁波を遮蔽する機能が十分ではない。アルミニウム箔層12の厚さが、18μm以上であれば、相当の強度を有する電磁波であっても遮蔽することができ、信頼性が高い。
上記した積層フィルム10は、2層構造であるが、3層以上の構成であってもよい。3層以上の構成を持つ例については後記する。
【0045】
樹脂層の素材は任意であり、公知の樹脂であってフィルム化が可能なものであれば良い。例えばセロハン、ポリエチレン、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニリデンコート二軸延伸ポリプロピレン、Kコートポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂を使用することができる。
【0046】
本実施形態の携帯用小物入れ1は、ファスナー2を開いて中の空間にカード等を入れることができるが、本実施形態の携帯用小物入れ1は、内面の全てにアルミニウム箔層12と樹脂層13との積層フィルム10が設けられているので、カードから発せられる電磁波が外部に洩れない。そのためスキミングされることは無い。
また積層フィルム10は、基布5,6を縫合する際に同時に縫い込まれるので、製造も容易である。
【0047】
以上説明した実施形態では、積層フィルム10を全面に設けた例を示したが、要部にだけ積層フィルム10を設けてもよい。即ちカードを収納する蓋然性が高い部位にのみ、積層フィルム10を設ける。
以下、要部にのみ積層フィルム10を設けた例を示す。
図4は、本発明の第二実施形態のハンドバッグの正面図である。図5は、図4のハンドバッグの内ポケットの正面図である。図6は、図5の内ポケットにカードを挿入する際の状態を示す斜視図である。図7は、図5の内ポケットの断面図である。図8は、本発明の第三実施形態の定期入れの斜視図である。図9は、図8の定期入れを開いた状態を示す正面図である。
【0048】
図4に示すハンドバッグ20は、内部に内ポケット(カード挿入ポケット)21が設けられている。内ポケット21は、図5の様に主としてカード22が挿入される。内ポケット21には、カード22の一部が露出した状態で挿入されるが、内ポケット21はカード22のICチップ23が十分に隠れる深さを持つ。そして本実施形態では、内ポケット21の内面に前記した積層フィルム10が縫合されている。即ち図7の様に内ポケット21の内面の全ての領域に積層フィルム10が設けられている。
【0049】
図8,9は、本発明を定期入れに応用した例である。図8,9に示す定期入れ30は、皮革製の二つ折り構造である。定期入れ30を開いた状態は、図9の通りであり、図面左側(A−Bエリア)は定期入れとなっており、図面右側(B−Cエリア)はカード入れとなっている。
そして図面右側(B−Cエリア)には3個のカード挿入ポケット35,36,37が設けられている。カード挿入ポケット35,36,37は、いずれもカードの一部が露出した状態で挿入されるが、ICチップ23は隠れる。
また各カード挿入ポケット35,36,37の内面には前記した積層フィルム10が縫合されている。
【0050】
一方、図面左側(A−Bエリア)には前記した様に定期が挿入される。本実施形態の定期入れ30では、図面左側(A−Bエリア)の定期挿入部位38には積層フィルムが無い。従って定期挿入部位38に挿入されたカードは電磁波等が外部に洩れる。そのため例えば電車の非接触形定期を定期挿入部位38に入れておくと、一々定期を出すことなく改札を通過することができる。
【0051】
なお、図8に示すように、定期入れを折り畳んだ状態の時、定期入れ側とカード入れ側との間に隙間31ができるが、この隙間は僅かであり、実質的に電磁波は洩れない。即ち定期入れ側とカード入れ側との間の隙間31は、カードから発せられる電磁波の波長よりも小さく、電磁波は洩れない。また隙間31部分の近傍にはアルミニウム箔層12が幾層にもあり、カードから発せられる電磁波が減衰する。
【0052】
次に本発明の第四実施形態について説明する。
図10は、本発明の第四実施形態の札入れの斜視図である。図11は、図10の札入れを開いた状態を示す斜視図である。図12は、図10の札入れに入れることが望ましいカードの表面図(a)と、裏面図(b)である。図13は、図12のカードの断面図である。図14は、図10の札入れにカードを挿入した状態を示す斜視図である。図15は、図10の札入れにカードを挿入した状態におけるポケットの断面図である。図16は、図10の札入れにカードを挿入した状態におけるポケットの斜視図である。
【0053】
本実施形態の札入れ40は、二つ折り構造であり、札入れ部41を持ち、札入れ部41の全面側にカード挿入ポケット43が設けられている。カード挿入ポケット43は、深さがカード50の幅よりも浅く、図14の様にカード50は、その一部が露出した状態で挿入される。
【0054】
カード挿入ポケット43は、図15の様に札入れ40の本体側に面する内壁51と、ポケットの膨らみを構成する外壁52によって構成されている。そして本実施形態では、カード挿入ポケット43の全内周面に積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)10が取り付けられている。即ち外壁52の内側と内壁51の内側に積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)10が縫い付けられている。
また本実施形態で採用するカード50は、一方の面の全域にアルミ箔(電磁波防護層)53が設けられている。そのためカード50は、一方の面からだけ電磁波が輻射され、アルミ箔53が設けらた面からは電磁波は輻射されない。図12,16において、網かけした側の表面にアルミ箔53が設けられており、当該表面は、電磁波の非輻射面である。また「A」の文字が表示された側が電磁波の輻射面である。
【0055】
本実施形態の札入れ40では、カード挿入ポケット43から出さずにカードリーダによって情報の読み出しを行いたい場合は、図15(a)、図16(a)の様にカード50の電磁波の輻射面が外壁52に面する様にカード50を挿入しておく。
本実施形態では前記した様に、カード50は、その一部が露出した状態で挿入されるので、露出部分から電磁波が輻射され、非接触型のカードリーダでカード50に記録された情報を読み取ることができる。
【0056】
逆にカード50のアルミ箔(電磁波防護層)53が設けられた側を外壁52に面する様にカード50を挿入すると、電磁波は外部に洩れない。そのためスキミングされることはない。
また本実施形態では、カード挿入ポケット43が複数設けられているので、カード挿入ポケット43から出さずに情報の読み出しを行いたいカードは、電磁波の輻射面が外壁52に面する向きに挿入し、そうでないカードについては裏返しにして挿入しておくと便利である。
【0057】
次に本発明の第五、第六実施形態について説明する。
図17は、本発明の第五実施形態の定期入れの開いた状態を示す正面図及びカードの正面図である。図18は、本発明の第六実施形態の定期入れのカードを挿入した状態におけるポケットの断面図である。
【0058】
第五、第六実施形態は、前記した第四実施形態の変形例である。即ち第四実施形態では、カード挿入ポケット43の深さを浅くして、カードの露出部分を作り、当該露出部分から電磁波が輻射させた。
これに対して図17に示す定期入れ60では、カード挿入ポケット35の深さはカードがすっぽりと入る深さとし、カード挿入ポケット35自体に孔61を設けた。孔61の位置は、カード50のICチップ23の位置に相当する。
本実施形態の定期入れ60では、孔61から電磁波が輻射される。なお他の構成は、前記した図9に示す定期入れ30と同一である。
【0059】
また図18に示すように、内壁51側だけ積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)10を設け、外壁52には積層フィルムが無い構成としてもよい。本実施形態では、外壁52は電磁波が透過可能であるから、カード50の電磁波の輻射面が外壁52に面する様にカード50を挿入すると、カード50をポケット63から出さなくても非接触型のカードリーダでカード50に記録された情報を読み取ることができる。
【0060】
次に積層フィルム10の変形例について説明する。図22乃至27は、積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)の変形例の拡大断面図である。
積層フィルム10は3層以上の構成であってもよいという点については前記したが、具体的には図22乃至27に示す様な層構成のものが推奨される。
即ち図22に示す積層フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の樹脂層13を挟んで2層のアルミニウム蒸着層12が設けられ、さらにその外側に樹脂層13が積層され、最も外層の二面にカーボン層80が積層されたものである。樹脂層13の厚さは、20〜30μmであり、アルミニウム蒸着層12は100〜500オングストローム程度である。
なおアルミニウム蒸着層12に代わってアルミニウム箔を採用し、アルミニウム箔と樹脂層13とを、接着剤等で貼り合わせてもよい。
両面のカーボン層80は、いずれも共役二重結合の炭素化合物を含む。
共役二重結合の炭素化合物をは、電磁波を吸収する機能があり、カードから漏洩する電磁波を吸収する。
【0061】
図23に示す積層フィルム10は、異種の金属層を有するものであり、アルミニウム箔層12に銅又は銀の層85が積層されている。銅又は銀の層85は、蒸着によって接合されてもよく、また予め金属箔化した後に、接着剤等で張り合わせてもよい。本実施形態では、アルミニウム箔層12と銅又は銀の層85は接着剤(図示せず)で貼り合わされている。
【0062】
本実施形態では、異種金属の層を有するものであり、いずれの周波数であっても高い電磁波遮蔽機能を有する。即ち電磁波を遮蔽する能力は、遮蔽しようとする電磁波の周波数の影響を受けるが、周波数と遮蔽能力との関係は、金属ごとに異なる。例えばアルミニウムは、周波数の上昇と共に遮蔽能力も上昇するが、周波数がある一定値以上となると、遮蔽能力が極端に低下する。これに対して、銀では大きな能力低下が見られない。一方、アルミニウムは安価であり、銀は効果である。
本実施形態では、アルミニウムの層と銀の層とを設けたので、周波数の影響が軽減され、いずれの周波数領域においても安定した遮蔽機能を発揮する。
【0063】
図24に示す積層フィルム10は、さらに鉄の層82を設けたものである。即ち図24に示す積層フィルム10は、アルミニウム箔層12、銀層81及び鉄層82が設けられている。これらの金属層12,81,82の間には、ポリエチレンテフタレート等の樹脂層13が設けられ、さらに最も外面には、ポリエチレンテフタレート等の樹脂層13を介してカーボン層80が設けられているる
本実施形態の積層フィルム10は、鉄層82が設けられているので、磁気を遮蔽することもできる。さらに鉛の層を追加してもよい。また鉄層82や銀層81に代わって鉛層を設けてもよい。
【0064】
上記した例は、いずれも複雑な積層構造を有するものであるが、図25に示す様なアルミニウム箔層12の片面にカーボン層80を積層し、他面に樹脂層13を積層した様なものであってもよい。また図26の様にアルミニウム箔層12に代わって銀や銅の層85を設け、片面にカーボン層80を積層し、他面に樹脂層13を積層した様なものでもよい。さらに図27の様にアルミニウム箔層12に代わって鉄層82を設け、片面にカーボン層80を積層し他面に樹脂層13を積層した様なものであってもよい。銀や銅の層85、鉄層82に代わって鉛層を設けてもよい。
【0065】
次に本発明の情報漏洩防護フィルムの他の用途について説明する。
情報漏洩防護フィルムは、小物入れに限らず、物品の収納物や収納室等から電磁波が洩れることを防ぐことができる。即ち収納物の表面や内面に情報漏洩防護フィルムを貼着したり縫製して取付け、電磁波の洩れを防ぐことができる。カーテンや壁紙に情報漏洩防護フィルムを取り付けることも考えられる。勿論、壁に直接情報漏洩防護フィルムを貼りつけてもよい。
図19は、壁貼り用の情報漏洩防護フィルムの拡大断面図である。図20は、壁貼り用の情報漏洩防護フィルムを壁に貼る際の状態を示す斜視図である。
【0066】
壁貼り用の情報漏洩防護フィルム65は、図19の様にアルミニウム箔層12の両面に樹脂層13が積層され、さらに一方の面に接着層66と離型紙層67が設けられたものである。壁貼り用の情報漏洩防護フィルム65は、裏面側の離型紙層67を剥がして図20の様に壁68の表面に貼ることができる。
【0067】
また情報漏洩防護フィルム自体で収納容器を作ってもよい。図21は、本発明の情報漏洩防護フィルムで作られたカードケースの斜視図である。
本実施形態のカードケース70は、情報漏洩防護フィルムを二枚重ね、その3辺を熱融着したものであり、袋状であって内部にカード22を入れることができる。
【0068】
また図28の様なラミネートシートの間に積層フィルム10等を入れた情報漏洩防止板90も便利である。即ち情報漏洩防止板90は、図29の様に二枚の熱融着シートの間に積層フィルム10等を挟み込み、三者を熱融着したものである。なお挟み込まれる積層フィルム10は、複数枚であってもよい。即ち同一厚さの積層フィルム10を大量に製造しておき、必要に応じた厚さとするために複数枚を重ねて使用する。特に情報漏洩防止板90は、多少厚くなっても弊害が少ないので、安全性を重視して複数枚の積層フィルム10をラミネートシートの間に挟み込んでもよい。
【0069】
情報漏洩防止板90の大きさは名刺サイズであり、カード50と同様の大きさである。 情報漏洩防止板90は、例えば図30に示すようにカード50の両面に接した状態でサイフやカード入れ等に入れて使用する。本実施形態では、情報漏洩防止板90に内蔵された積層フィルム10が電磁波を遮蔽するので、カード50から発せられる電磁波が外部に洩れない。そのためスキミングされることは無い。
【0070】
また図30に示した使用例では、二枚の情報漏洩防止板90でカード50を挟んだが、カード50の一面だけに情報漏洩防止板90を接しても相当のスキミング防止効果が期待できる。特にカーボン層の様な電磁波を吸収する効果がある層を有する積層フィルム10を使用すれば外部に洩れる電磁波が弱まり、スキミング防止に役立つ。
【0071】
上記した様にこれらの実施形態の携帯用小物入れやカード入れは、カードから発せられる電磁波を遮蔽することができ、スキミングを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態の携帯用小物入れの正面図である。
【図2】図1のA−A断面拡大図である。
【図3】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)の拡大断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態のハンドバッグの正面図である。
【図5】図4のハンドバッグの内ポケットの正面図である。
【図6】図5の内ポケットにカードを挿入する際の状態を示す斜視図である。
【図7】図5の内ポケットの断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態の定期入れの斜視図である。
【図9】図8の定期入れを開いた状態を示す正面図である。
【図10】本発明の第四実施形態の札入れの斜視図である。
【図11】図10の札入れを開いた状態を示す斜視図である。
【図12】図10の札入れに入れることが望ましいカードの表面図(a)と、裏面図(b)である。
【図13】図12のカードの断面図である。
【図14】図10の札入れにカードを挿入した状態を示す斜視図である。
【図15】図10の札入れにカードを挿入した状態におけるポケットの断面図である。
【図16】図10の札入れにカードを挿入した状態におけるポケットの斜視図である。
【図17】本発明の第五実施形態の定期入れの開いた状態を示す正面図である。
【図18】本発明の第六実施形態の定期入れのカードを挿入した状態におけるポケットの断面図である。
【図19】壁貼り用の情報漏洩防護フィルムの拡大断面図である。
【図20】壁貼り用の情報漏洩防護フィルムを壁に貼る際の状態を示す斜視図である。
【図21】本発明の情報漏洩防護フィルムで作られたカードケースの斜視図である。
【図22】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)の変形例の拡大断面図である。
【図23】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)の他の変形例の拡大断面図である。
【図24】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)のさらに他の変形例の拡大断面図である。
【図25】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)のさらに他の変形例の拡大断面図である。
【図26】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)のさらに他の変形例の拡大断面図である。
【図27】積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)のさらに他の変形例の拡大断面図である。
【図28】本発明の実施形態の情報漏洩防止板の斜視図である。
【図29】図28の情報漏洩防止板の断面図である。
【図30】図28の情報漏洩防止板の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 携帯用小物入れ
5,6 基布
7 糸
10,65 積層フィルム(情報漏洩防護フィルム)
12 アルミニウム箔層
13 樹脂層
20 ハンドバッグ
21 内ポケット(カード挿入ポケット)
22 カード
23 ICチップ
30 定期入れ
35,36,37 カード挿入ポケット
38 定期挿入部位
40 札入れ
43 カード挿入ポケット
50 カード
51 内壁
52 外壁
53 アルミ箔(電磁波防護層)
60 定期入れ
61 孔
63 ポケット
70 カードケース
80 カーボン層
90 情報漏洩防止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と樹脂層が積層された情報漏洩防護フィルム。
【請求項2】
金属層は、アルミニウム層であることを特徴とする請求項1に記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項3】
金属層を複数有することを特徴とする請求項1に記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項4】
金属層の少なくとも一層は、アルミニウム層であることを特徴とする請求項3に記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項5】
カーボン層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項6】
複数のカーボン層を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項7】
異なる種類の金属層が混在していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項8】
少なくともアルミニウム層と、鉄層を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項9】
少なくともアルミニウム層と、銀層を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項10】
少なくとも銅層を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項11】
縫製可能な強度を備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムが取り付けられたことを特徴とする携帯用小物入れ。
【請求項13】
一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられ、当該カード挿入ポケットに情報漏洩防護フィルムが取り付けられたことを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れ。
【請求項14】
一部が露出した状態でカードを保持可能なカード挿入ポケットが設けられ、カード挿入ポケットは、小物入れの本体側に面する内壁と、これに対向する外壁によって構成され、カード挿入ポケットの少なくとも内壁側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れ。
【請求項15】
カード挿入ポケットが設けられ、カード挿入ポケットを構成する壁の一方側に情報漏洩防護フィルムが取り付けられ、カード挿入ポケットの他方側の壁は、電磁波が透過可能であることを特徴とする請求項12に記載の携帯用小物入れ。
【請求項16】
一面側に電磁波防護層が設けられたカードが挿入されることを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の携帯用小物入れ。
【請求項17】
布帛又は革製の基材層を有し、当該基材層の裏側に情報漏洩防護フィルムが縫合されていることを特徴とする請求項12乃至16のいずれかに記載の携帯用小物入れ。
【請求項18】
全面に情報漏洩防護フィルムが設けられていることを特徴とする請求項12乃至17のいずれかに記載の携帯用小物入れ。
【請求項19】
請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムで作られたカードケース。
【請求項20】
請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルムが内蔵された情報漏洩防止板。
【請求項21】
少なくとも一方の面に接着層が設けられたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の情報漏洩防護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−341583(P2006−341583A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285071(P2005−285071)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500104211)
【Fターム(参考)】