説明

携帯用椅子

【課題】ヒンジ軸を中心にX字状に組み合わされた2本のロッド10,20を、ヒンジ軸を中心に畳んで重合可能とされ、両ロッドがX字状に展開されたときには、ヒンジ軸より下方側を脚部とし、ヒンジ軸より上方側に座面部が配置される携帯用椅子において、座面部に汚れや塵、埃が付着しないようにする。
【解決手段】
2本のロッドは、ヒンジ軸より上方側で一方は他方に比べて短く設定され、一方のロッドの上端11には揺動杆30が揺動自在に支持され、他方のロッドのヒンジ軸より上方側の支持部27と揺動杆との間に柔軟性を備えたシート40が座面部となるように張設され、揺動杆はシートが座面部を形成する位置で一方のロッドに対してロックされるようにロック装置80を備え、2本のロッドが畳まれて重合されたときに、揺動杆もロッドと共に重合可能とされ、揺動杆にカバー帯70が固定され、カバー帯はシートを覆うように巻回可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要に応じてコンパクトに畳むことが可能とされた携帯用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、携帯用椅子が開示されている。この携帯用椅子は、ヒンジ軸を中心にX字状に組み合わされた2本のロッドを、ヒンジ軸を中心に畳んで重合可能とされ、2本のロッドがX字状に展開されたときには、ロッドのヒンジ軸より下方を脚部として椅子となるように、ヒンジ軸より上方に座面部が配置されている。2本のロッドは、ヒンジ軸より上方側で一方は他方に比べて短めに設定され、一方のロッドの上端には座面部の一端部が揺動自在に支持され、他方のロッドの軸部に摺動自在とされたスライダに座面部の他端部が揺動自在に支持されて成る。かかる構成により2本のロッドをX字状に展開させたときには、座面部は一方のロッドとスライダに支持されて略水平状態とされて着座可能とされ、2本のロッドをヒンジ軸を中心に畳んで重合させたときには、座面部の裏面が他方のロッドに沿うように畳まれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の携帯用椅子は、畳まれた際には、杖として使用されるものであるが、杖として使用される際には、座面部は露出されたままとなるため、座面部がいろいろな物に触れて汚れたり、座面部に塵や埃が付着する可能性がある。
本発明は、このような問題に鑑み、椅子が畳まれた際は座面部が外部に露出しないようにすることにより、座面部に汚れや塵、埃が付着しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、ヒンジ軸を中心にX字状に組み合わされた2本のロッドを、ヒンジ軸を中心に畳んで重合可能とされ、2本のロッドがX字状に展開されたときには、2本のロッドのヒンジ軸より下方側を脚部とし、ヒンジ軸より上方側に座面部が配置される携帯用椅子であって、前記2本のロッドは、ヒンジ軸より上方側で一方は他方に比べて短く設定され、該一方のロッドの上端には揺動杆が揺動自在に支持され、他方のロッドのヒンジ軸より上方側の所定位置と前記揺動杆との間に柔軟性を備えたシートが前記座面部となるように張設され、前記揺動杆は、シートが前記座面部を形成する位置で前記一方のロッドに対してロックされるようにロック装置を備え、前記2本のロッドが畳まれて重合されたときに、前記揺動杆も揺動されて前記ロッドと共に重合可能とされ、このときシートに隣接する位置のロッド若しくは前記揺動杆にカバー帯が固定され、該カバー帯はシートを覆うように巻回可能とされていることを特徴とする携帯用椅子である。
第1発明によれば、2本のロッドが重合され、座面部が畳まれるときには、カバー帯によって座面部が覆われるため、座面部が畳まれている状態で、座面部に汚れや塵、埃が付着しないようにすることができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記他方のロッドのヒンジ軸より上方側で、且つ前記所定位置より下方側で、他方のロッドの外周上に摺動自在とされたスライダが設けられ、該スライダと前記一方のロッドのヒンジ軸より上方側部位との間に、前記スライダ及び一方のロッドに対して揺動自在にリンクが設けられ、前記他方のロッド上で前記所定位置の下方にはストッパが設けられ、2本のロッドがX字状に展開されたとき、リンクの軸心が他方のロッドに対して直交する位置よりも上方側となり、その位置で前記スライダが前記ストッパに当接して、その摺動を阻止されることを特徴とする。
第2発明によれば、リンクが2本のロッド間に配置されるため、2本のロッドがX字状に展開された状態で、リンクは2本のロッドの展開角度が大小いずれの方向にも変化しないように規制すると共に、リンクはスライダによって他方のロッドに摺動自在とされているため、2本のロッドが畳まれて重合されるときの動きをスムースにすることができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記ロック装置は、前記2本のロッドの展開及び重合に伴う前記リンクの動きを受けてロック状態とアンロック状態とに切り換えられることを特徴とする。
第3発明によれば、2本のロッドを展開してシートが座面部とされるときは、自動的に揺動杆がロックされるため、着座時の座面部を安定した位置に保持することができ、2本のロッドを重合させて座面部を畳むときには、揺動杆のロックが自動的に解除されるため、ロック装置に対する特別な操作なしで揺動杆を揺動させて簡単に椅子を畳むことができる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記揺動杆の揺動中心には、揺動杆と一体に回動するドラムが設けられ、該ドラムには、揺動杆が座面部を形成する位置にあるときに、前記一方のロッドのヒンジ軸側に向けられる開口が設けられ、一方、前記一方のロッドには、前記ドラムの外周面に向けて付勢されて前記ドラムの開口に嵌合して前記ドラムの回動及び揺動杆の揺動を阻止するロックピンが設けられ、また、前記2本のロッドが重合されるのに伴う前記リンクの動きによって前記ロックピンをアンロック方向へ移動させる連動機構が設けられていることを特徴とする。
第4発明によれば、2本のロッドが重合されるときには、ロックピンがドラムの開口から外され、それ以外のときには、ロックピンは付勢力によりドラムの外周面上に当接し、揺動杆が座面部を形成する位置に達すると、付勢力によってロックピンが開口に嵌合して揺動杆の揺動をロックするので、ドラムの開口位置を調整しておくのみで、揺動杆が座面部を形成する位置で正確に揺動杆の揺動を停止することができる。
【0009】
本発明の第5発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記カバー帯は、前記揺動杆に固定され、カバー帯の自由端部、及びカバー帯が畳まれた座面部を覆って巻き付けられているときに前記自由端部が対向する部位に、互いに接合可能なマジックファスナが設けられていることを特徴とする。
第5発明によれば、カバー帯及びその関連部分にマジックファスナが設けられているため、座面部を覆うようにカバー帯を巻き付けて一対のマジックファスナを接合することにより、カバー帯が座面部を覆った状態を安定して維持することができる。
【0010】
本発明の第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記2本のロッドの重合時には、前記他方のロッドに対する前記リンクの軸線の傾斜方向が、2本のロッドの展開時の傾斜方向に対して反対方向となるように、前記リンクの前記スライダ及び前記上方側部位への取付位置を設定し、前記ヒンジ軸と前記スライダとの間の他方のロッドの外表面上には、前記スライダを上方へ付勢するばねが設けられていることを特徴とする。
第6発明によれば、他方のロッドに対するリンクの軸線の傾斜方向が、2本のロッドの重合時には、2本のロッドの展開時の傾斜方向に対して反対方向とされているため、リンクを介して一方のロッドは展開時とは反対方向にばねによる付勢力を受け、椅子を携帯する際に一方のロッドが不用意に展開されることを防止できる。また、リンク及び一方のロッドを介してばねの付勢力はヒンジ部に伝達されるため、椅子を携帯する際にヒンジ部のガタによる異音の発生を抑制することができる。更に、2本のロッドを重合された状態から展開する際は、他方のロッドに対するリンクの軸線の傾斜方向を2本のロッドを展開させる方向に手動により転換させた後は、スライダ及びリンクを介して、ばねの付勢力は2本のロッドをX字状に展開させる方向に作用するため、ばねの付勢力が働く範囲では2本のロッドの展開を自動的に行うことができ、展開操作を容易にすることができる。
【0011】
本発明の第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、前記一方のロッドは、他方のロッドと重合される際に、他方のロッドに面する側が受面とされた樋形状とされると共に、一方のロッドの受面内に他方のロッドを嵌合可能な大きさとされ、前記リンクは、前記2本のロッドと共に重合される際に、他方のロッドに面する側が受面とされた樋形状とされると共に、前記リンクの受面内に他方のロッドを嵌合可能な大きさとされ、かつ一方のロッドの受面内に前記リンクを嵌合可能な大きさとされていることを特徴とする。
第7発明によれば、一方のロッドの受面内に他方のロッドを嵌合可能とされ、一方のロッドの受面内にリンクを嵌合可能とされているため、2本のロッドを重合させる際に、コンパクトに畳むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る携帯用椅子の一実施形態を示す斜視図(畳まれた状態)である。
【図2】上記実施形態の展開途中の状態を示す側面図である。
【図3】上記実施形態の更なる展開途中の状態を示す側面図である。
【図4】上記実施形態の展開完了の状態を示す斜視図である。
【図5】上記実施形態の展開完了の状態を示す正面図である。
【図6】上記実施形態のロック装置及びその周辺を拡大して示す側面図である。
【図7】上記実施形態のロック装置及びその周辺を拡大して示す正面図である。
【図8】上記実施形態のロック装置の断面説明図である。
【図9】図8と同様の断面説明図であり、リンクが畳まれた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態の携帯用椅子は、展開時に椅子となり、畳まれた状態では杖となるように構成されており、図1は畳まれて杖となった状態を示し、図2、3は展開の過程を示し、図4は展開完了し、椅子として使用可能となった状態を示す。
当該椅子は、図2〜4に良く示されるように、ヒンジ軸(ヒンジ部15、26)を中心にX字状に組み合わされた2本のロッド10、20を、ヒンジ軸を中心に畳んで重合可能とされ、2本のロッド10、20がX字状に展開されたときには、2本のロッド10、20のヒンジ軸より下方側を脚部として椅子となるように、ヒンジ軸より上方側に座面部(シート40)が配置される。ヒンジ軸は、各ロッド10、20のヒンジ部15、26に設けられている。
2本のロッド10、20は、ヒンジ軸より上方側で一方のロッド10は他方のロッド20に比べて短く設定され、該一方のロッド10の上端11には揺動杆30が揺動自在に支持されている。また、他方のロッド20のヒンジ軸より上方側の所定位置(支持部27)と揺動杆30との間には柔軟性を備えたシート40が座面部となるように張設されている。この場合のシート40は、合成繊維を使用した織物から成る。
【0014】
シート40は全体として三角形に縫製され、支持部27への取り付けは、シート40の先端が二つ割りにされ、その先端に他方のロッド20を挟み込んで縛り付けることにより行っている。詳しくは、支持部27は他方のロッド20に直交する部材が該ロッド20に溶接されて成り、この直交部材の上方側でロッド20にシート40の先端が縛り付けられている。
また、シート40の二つ割りにされた先端の反対側は揺動杆30に固定されている。詳しくは、揺動杆30はパイプから成り、このパイプ内には棒状体(不図示)が挿入されており、一方、パイプにはシート40の大きさに応じた長さのスリット(不図示)が形成されている。スリットは棒状体の太さより細く形成されている。シート40は、スリットを通って棒状体に巻き付け固定されることにより揺動杆30に固定されている。
【0015】
揺動杆30は、シート40が座面部を形成する位置で一方のロッド10に対してロックされるようにロック装置80を備える。2本のロッド10、20が畳まれて重合されたときに、揺動杆30も揺動されて各ロッド10,20と共に重合可能とされている。揺動杆30にはカバー帯70が固定され、2本のロッド10、20が畳まれて重合されたとき、カバー帯70はシート40を覆うように巻回可能とされている。
この実施形態の場合、カバー帯70は、シート40と連続する一枚の織物によって形成されており、上記のように揺動杆30のパイプ内で棒状体に巻き付けられた先に延びている。このため、スリットを通して揺動杆30のパイプ内にはシート40とカバー帯70の各固定端が挿入されている。
このように、2本のロッド10,20が重合され、座面部を成すシート40が畳まれるときには、図1に示されるように、カバー帯70によってシート40が覆われるため、シート40が畳まれている状態で、シート40に汚れや塵、埃が付着しないようにすることができる。カバー帯70は、シート40と共に2本のロッド10、20の上下部を除く中央部を広く覆う大きさとされるため、一方のロッド10の上端部にある揺動杆30やロック装置80など構成が比較的複雑な金具部分を覆うことができ、杖として使用する際の見栄えを良くすることができる。
図1が、カバー帯70でシート40を覆った状態を示しており、この状態で杖として使用される。図中、99は杖として使用する際の把手部であり、98はストラップである。
【0016】
他方のロッド20のヒンジ部26より上方側で、且つシート40の支持部27より下方側で、他方のロッド20の外周上にはスライダ50が摺動自在に設けられている。そして、スライダ50と一方のロッド10のヒンジ部15より上方側部位(リンク60のヒンジ軸)12との間には、スライダ50及び一方のロッド10に対して揺動自在にリンク60が設けられている。
他方のロッド20上で支持部27の下方にはストッパ24が設けられ、2本のロッド10,20がX字状に展開されたとき、リンク60の軸心が他方のロッド20に対して直交する位置よりも僅かに上方側となり、その位置でスライダ50がストッパ24に当接して、スライダ50の摺動が阻止される。このように構成されているため、2本のロッド10,20がX字状に展開された状態でシート40に着座すると、着座者の体重を受けて2本のロッド10,20間には互いに重合させる方向の力が作用するが、この力はリンク60、スライダ50を介してストッパ24で受け止められ、2本のロッド10,20は展開された状態に維持される。
このように、リンク60が2本のロッド10,20間に配置されるため、2本のロッド10,20がX字状に展開された状態で、リンク60は2本のロッド10,20の展開角度が大小いずれの方向にも変化しないように規制すると共に、リンク60はスライダ50によって他方のロッド20に摺動自在とされているため、2本のロッド10,20が畳まれて重合されるときの動きをスムースにすることができる。
【0017】
図2〜3において、51はスライダ50の上端部に溶接にて固定された操作部であり、スライダ50を図3の状態から上方へ操作する場合、並びにスライダ50を図4の状態から下方へ操作する場合に、操作を容易にするように設けられている。
また、図示を省略したが、操作部51の下方側には、他方のロッド20の外周面上でスライダ50が回転するのを防止するために回転止部が設けられている。かかる回転止部は、操作部51の下方側のスライダ50にロッド20の軸方向にスリットが設けられ、このスリットに嵌合するようにロッド20の表面に突起が設けられて成る。なお、スライダ50に設けられたスリットはスライダ50の上下端で閉じられて、スライダ50がスリットによって開いてしまうことがないようにされている。
【0018】
また、ロック装置80は、2本のロッド10,20の展開及び重合に伴うリンク60の動きを受けてロック状態とアンロック状態とに切り換えられる。
図7に良く示されるように、揺動杆30の揺動中心には、揺動杆30と一体に回動するドラム81が設けられ、該ドラム81には、揺動杆30が座面部を形成する位置にあるときに、一方のロッド10のヒンジ部15側に向けられる開口83(図2参照)が設けられている。一方、図8に良く示されるように、一方のロッド10には、ドラム81の外周面に向けて付勢されてドラム81の開口83に嵌合してドラム81の回動及び揺動杆30の揺動を阻止するロックピン85が設けられている。図7中、82は一方のロッド10の上端11に対してドラム81を回動自在に固定するためのビスである。
また、2本のロッド10,20が重合されるのに伴うリンク60の動きによってロックピン85をアンロック方向へ移動させる連動機構が設けられている。かかる連動機構は、リンク60のヒンジ軸12に隣接して一方のロッド10側に設けられた凸部61と、凸部61に押圧されて移動するカム体89と、ロックピン85の胴体中央部にカム体89を受け入れるように穿孔して形成された傾斜面部87とから成る。
図8中、84はロックピン85を収容するケース、88はカム体89が貫通するようにケース84に形成された貫通孔、90はカム体89のケース84からの突出端に設けられ、カム体89がケース84を貫通した状態から脱落しないように維持するための係止片、91はケース84に対してロックピン85をドラム81の外周面方向へ付勢するためのばね、92はケース84におけるロックピン85の突出側とは反対側を閉塞すると共に、ばね91の反ロックピン85側を支持する栓、86はドラム81の開口83に嵌合されるロックピン85の先端部である。
【0019】
このように構成されているため、2本のロッド10、20を展開してシート40が座面部とされるときは、自動的に揺動杆30がロックされ、着座時の座面部を安定した位置に保持することができる。また、2本のロッド10、20を重合させて座面部を畳むときには、揺動杆30のロックが自動的に解除されるため、ロック装置80に対する特別な操作なしで揺動杆30を揺動させて簡単に椅子を畳むことができる。
具体的には、図8のように、2本のロッド10、20が展開され、一方のロッド10に対するリンク60の相対角度が大きくなると、それ以前は凸部61に押圧されていたカム体89が押圧されなくなるため、カム体89は、ケース84及びロックピン85を貫通している状態から離脱する方向へ移動する。このため、カム体89のカム面に沿ってロックピン85がばね91の付勢力によってドラム81の外周部に当接するように移動する。この状態で、揺動杆30が略水平となり、ドラム81の開口83が一方のロッド10のヒンジ部15の方向へ向くと、ロックピン85の先端部86が開口83に嵌合し、揺動杆30がロックされる。
反対に、図9のように、2本のロッド10、20を互いに重合させるように畳むと、リンク60も同時に畳まれて、一方のロッド10と重合するようになる。このため、リンク60の凸部61がカム体89を押圧し、カム体89はロックピン85及びケース84を貫通する方向へ移動し、そのカム面によりロックピン85をばね91による付勢力に抗してケース84内に収納するように移動させる。そのため、ロックピン85の先端部86はドラム81の開口83から外れ、ドラム81は自由に回動できるようになる。従って、揺動杆30も揺動可能となる。
このように2本のロッド10、20が重合されるときには、ロックピン85がドラム81の開口83から外され、それ以外のときには、ロックピン85はばね91の付勢力によりドラム81の外周面上に当接し、揺動杆30が座面部を形成する位置に達すると、付勢力によってロックピン85の先端86が開口83に嵌合して揺動杆30の揺動をロックするので、ドラム81の開口83の位置を調整しておくのみで、揺動杆30が座面部を形成する位置で正確に揺動杆30の揺動を停止することができる。
【0020】
カバー帯70は、揺動杆30に固定され、図5に良く示されるように、カバー帯70の自由端部75には端部に沿ってマジックファスナ71、72が縫合され、また、図7に良く示されるように、カバー帯70が畳まれた座面部を覆って巻き付けられているときに自由端部75が対向する部位となる揺動杆30に、上記マジックファスナ71、72に接合可能なマジックファスナ73、74が設けられている。
カバー帯70及び揺動杆30にマジックファスナ71、72及びマジックファスナ73、74が設けられているため、座面部を覆うようにカバー帯70を巻き付けて一対のマジックファスナ71、72及び73、74を接合することにより、カバー帯70が座面部を覆った状態を安定して維持することができる。
【0021】
図からは明らかではないが、2本のロッド10、20の重合時には、他方のロッド20に対するリンク60の軸線の傾斜方向が、2本のロッド10、20の展開時の傾斜方向に対して反対方向となるように、リンク60のスライダ50及びヒンジ軸(上方側部位)12への取付位置を設定している。また、図1〜4に示されるように、他方のロッド20の外周面上で、ヒンジ部26とスライダ50との間には、スライダ50を上方へ付勢するばね22が設けられている。
この結果、他方のロッド20に対するリンク60の軸線の傾斜方向が、2本のロッド10、20の重合時には、2本のロッド10、20の展開時の傾斜方向に対して反対方向とされているため、リンク60を介して一方のロッド10は展開時とは反対方向にばね22による付勢力を受け、椅子を携帯する際に一方のロッド10が不用意に展開されることを防止できる。また、リンク60及び一方のロッド10を介してばね22の付勢力はヒンジ部15に伝達されるため、椅子を携帯する際にヒンジ部15のガタによる異音の発生を抑制することができる。更に、2本のロッド10、20を重合された状態から展開する際は、他方のロッド20に対するリンク60の軸線の傾斜方向を2本のロッド10、20を展開させる方向に手動により転換させた後は、スライダ50及びリンク60を介して、ばね22の付勢力は2本のロッド10、20をX字状に展開させる方向に作用するため、ばね22の付勢力が働く範囲では2本のロッド10、20の展開を自動的に行うことができ、展開操作を容易にすることができる。
【0022】
各図から明らかなように、一方のロッド10は、他方のロッド20と重合される際に、他方のロッド20に面する側が受面とされた樋形状とされると共に、一方のロッド10の受面内に他方のロッド20を嵌合可能な大きさとされている。また、リンク60は、前記2本のロッド10、20と共に重合される際に、他方のロッド20に面する側が受面とされた樋形状とされると共に、リンク60の受面内に他方のロッド20を嵌合可能な大きさとされ、かつ一方のロッド10の受面内にリンク60を嵌合可能な大きさとされている。
このように、一方のロッド10の受面内に他方のロッド20を嵌合可能とされ、一方のロッド10の受面内にリンク60を嵌合可能とされているため、2本のロッド10、20を重合させる際に、コンパクトに畳むことができる。
なお、樋形状とされた一方のロッド10には、樋形状を成す円弧断面に沿って補強リブが設けられている。
【0023】
図2〜4に示されるように、2本のロッド10、20の各ヒンジ部15、26より下方側には、2本のロッド10、20間にワイヤ16が張設されている。即ち、ワイヤ16の一端は、樋形状の一方のロッド10の受面内に固定され、他端は円柱状の他方のロッド20の内部に固定されている。このようにワイヤ16が設けられていることにより、シート40上に大きな荷重が加えられて、両ロッド10、20の各ヒンジ部15、26より下方側の脚部が開かれる力を受けたとき、その力の一部をワイヤ16に分担させ、ロッド10、20が変形するのを防止している。
2本のロッド10、20が重合されて畳まれるとき、ワイヤ16は湾曲変形することにより2本のロッド10、20間に挟持される。
【0024】
図1〜5において、25は他方のロッド20の下端に設けられた緩衝ゴム体、14は一方のロッド10の下端に設けられた支持脚部、13、13は支持脚部14の両端に設けられた緩衝ゴム体である。このように2本のロッド10、20の下端に緩衝ゴム体25、13、13が設けられているため、図4のように2本のロッド10、20が展開されて椅子として使用される際に脚部の3点支持が実現され、椅子が倒れないように支えなくても着座することができる。
【0025】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.カバー帯は、一方又は他方のロッドにおける他方又は一方のロッドから遠い側の面に固定しても良い。
2.一対のマジックファスナは、共にカバー帯上に設けられても良い。
3.シートは、織物に限らず、樹脂、金属、紙など各種材料のものが適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 一方のロッド
12 ヒンジ軸(上方側部位)
15 一方のロッドのヒンジ部
20 他方のロッド
22 ばね
24 ストッパ
26 他方のロッドのヒンジ部
27 支持部(所定位置)
30 揺動杆
40 シート
50 スライダ
60 リンク
61 凸部(連動機構)
70 カバー帯
71、72、73、74 マジックファスナ
80 ロック装置
81 ドラム
83 開口
85 ロックピン
87 傾斜面部(連動機構)
89 カム体(連動機構)
91 ばね
92 栓


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ軸を中心にX字状に組み合わされた2本のロッドを、ヒンジ軸を中心に畳んで重合可能とされ、2本のロッドがX字状に展開されたときには、2本のロッドのヒンジ軸より下方側を脚部とし、ヒンジ軸より上方側に座面部が配置される携帯用椅子であって、
前記2本のロッドは、ヒンジ軸より上方側で一方は他方に比べて短く設定され、該一方のロッドの上端には揺動杆が揺動自在に支持され、
他方のロッドのヒンジ軸より上方側の所定位置と前記揺動杆との間に柔軟性を備えたシートが前記座面部となるように張設され、
前記揺動杆はシートが前記座面部を形成する位置で前記一方のロッドに対してロックされるようにロック装置を備え、
前記2本のロッドが畳まれて重合されたときに、前記揺動杆も揺動されて前記ロッドと共に重合可能とされ、このときシートに隣接する位置のロッド若しくは前記揺動杆にカバー帯が固定され、該カバー帯はシートを覆うように巻回可能とされていることを特徴とする携帯用椅子。
【請求項2】
請求項1において、前記他方のロッドのヒンジ軸より上方側で、且つ前記所定位置より下方側で、他方のロッドの外周上に摺動自在とされたスライダが設けられ、
該スライダと前記一方のロッドのヒンジ軸より上方側部位との間に、前記スライダ及び一方のロッドに対して揺動自在にリンクが設けられ、
前記他方のロッド上で前記所定位置の下方にはストッパが設けられ、
2本のロッドがX字状に展開されたとき、リンクの軸心が他方のロッドに対して直交する位置よりも上方側となり、その位置で前記スライダが前記ストッパに当接して、その摺動を阻止されることを特徴とする携帯用椅子。
【請求項3】
請求項2において、前記2本のロッドの重合時には、前記他方のロッドに対する前記リンクの軸線の傾斜方向が、2本のロッドの展開時の傾斜方向に対して反対方向となるように、前記リンクの前記スライダ及び前記上方側部位への取付位置を設定し、前記ヒンジ軸と前記スライダとの間の他方のロッドの外表面上には、前記スライダを上方へ付勢するばねが設けられていることを特徴とする携帯用椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−235967(P2012−235967A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108261(P2011−108261)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(506048809)
【Fターム(参考)】