説明

携帯端末に特化した開発キット

【課題】 携帯端末はプラットフォームの共有化に伴ってオープンなシステムになってきたが,新たなハードウェアを自由に追加できるような開発環境は提供されていない。
【解決手段】 本発明は上の課題を解決できる携帯端末の開発キットと,人材育成手法を提供するためになされたものであり,図1のように最初に必要なスターターキット1と,必要に応じて追加する各モジュールキット15に分ける。専用.OSがインストール済みの携帯端末3をマイコンボックス9にUSBケーブル7で接続し,マイコンボックス9に接続した各種モジュールキット15のハードウェアを制御できる。このように携帯端末の開発環境と実行環境をまとめてひとつの製品とし,一般ユーザが新たなハードウェアを接続したサービスの開発を実験できる環境として実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,将来のIT産業の健全な育成に役立つ新たな開発環境の提供とそれによる人材育成手法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在,携帯端末の開発は特定のハードウェアに対して,オープンプラットフォーム(Linux,Androidなど)をベースとして携帯端末のソフトウェアで対応している。しかしながら新たなハードウェアに対応した開発環境は存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年,携帯電話には高性能なハードウェアが搭載されるようになり,ユーザが利用できる機能はさらに複雑化しつつあるが,携帯電話が多機能化する一方で,実際にはあまりユーザに利用されていない機能も多くあり,ユーザの需要に応じたサービスや機能の提供が求められている。
【0004】
さらに社会的な問題として理系離れが指摘されているように,携帯電話のようなハードウェアとソフトウェアが密に連携したデバイスを開発するために必要なスキルを有した人材の確保が急務となっている。現状では中国やインドなどに拠点を設けて開発を行うことが多いが,将来の国内IT産業を健全に育てるためにも,新たな人材育成手法の提案が求められている。
【0005】
かつての携帯電話はクローズドなシステムであったが,近年のプラットフォームの共通化などに伴ってオープンなシステムを採用する端末も増えてきた。しかしこれらは開発ベンダレベルでの内容にとどまっていて,一般ユーザが自由に開発できるような状況にはない。
【0006】
H8やPICなどのワンチップマイコンの登場により,パソコンでプログラムを作成してマイコンで実行させるようなキットが教材として利用されているが,より本格的な技術者育成のための教材には,マイコンによるソフトウエア開発を学習するためのボードや教材をまとめた学習キットがある。これは開発現場で組込みソフトウェアの需要が急速に大きくなっていることから,ソフトウエア技術者を育成するために活用されることが多く,キットはパソコンとデバイスをつなげて機器の制御をするアプリケーション開発を学べるようになっているが,システムとしての使用用途が広く,目的を絞った学習に向いていない。
【0007】
そこで,携帯端末の開発環境と実行環境をまとめてひとつの製品とし,一般ユーザが新たなハードウェアを接続したサービスの開発を実験できる環境として提供し,携帯電話のようなハードウェアとソフトウェアが密に連携したデバイスを開発するために必要なスキルを有した人材を育成する手法を提案することが重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上の課題を解決するためになされたものであり,図1の構造によって最初に必要なスターターキット1と,必要に応じて集める各モジュールキット15に分ける。
【0009】
スターターキットには専用OSがインストール済みの携帯端末3があり,入出力用にUSB端子を備える。USB端子はマイコンボックス9と接続して携帯端末のアプリからモジュールを操作する。またPC5と接続してアプリをダウンロードやシステムのアップデートに利用する。さらにSDスロットを備え,WLANや各種汎用デバイスを扱えるようになる。
【0010】
USBケーブル7はPC5と携帯端末3,携帯端末3とマイコンボックス9,PC5とマイコンボックス9を繋ぐのに用いる。
【0011】
マイコンボックス9は各種モジュールキット15と携帯端末間のデータを中継する装置で,複数のモジュールを同時に接続できる。
【0012】
スターターモジュールキット6は基本的なモジュールを含めたキットで,数個のLEDとスイッチなどで構成され,基本的な学習に活用できる。
【0013】
スターターモジュールキット6を利用して,アプリケーションを開発するための基本的な技術を学ぶために,携帯電話からマイコンボックス9に接続したスターターモジュールキット6のLEDを点灯・点滅する機能や,スターターモジュールキット6のスイッチを押すと携帯端末に画像が表示する機能などを実現するサンプルプログラムができる。
【0014】
アプリケーション4の開発はPC5にインストールした開発ツール2を用いる。これはアプリケーションを制作する総合開発環境で,制作したアプリケーションはPC5にインストールした携帯端末エミュレータ8を使ってデバッグできる。
【発明の効果】
【0015】
ソフトウェア開発を学ぶための手段としては,携帯端末を対象としているため,身近なデバイスとして活用することを想定したアプリケーションの開発手法を学べる。オープンで明確なハードウェアで構成されるため,ユーザが携帯端末で実現したい内容を開発しやすい環境にある。
【0016】
また,電子回路やハードウェア制御を学ぶためには,既存のPICやH8などの汎用CPUを利用した手法があるが,システムとしての用途が広く,目的を絞った学習に向いておらず,本発明の開発キットによって,携帯端末向けに特化した開発を学習できるメリットがある。
【0017】
さらにこれによって提案されたアプリケーションを実用化することで,通信キャリアや携帯メーカーは新たなサービスをユーザに提供でき,また新たな企業が新規サービスを活用した新ビジネスの出現も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
携帯端末3から制御したいハードウェアをマイコンボックス9に接続する。これは各種モジュールキットに付属のものや,ユーザが汎用基盤等を用いて自作したものも利用できる。
【0019】
PC5とマイコンボックス9をUSBケーブル7で接続し,開発ツール2でアプリケーションを開発する。アプリケーションは携帯端末エミュレータ8で実行・デバッグできる。
【0020】
完成したアプリケーションは,携帯端末3とPC5をUSBケーブル7で接続して転送し,携帯端末3とマイコンボックス9をUSBケーブル7で接続してアプリケーションを実行できる。
【実施例1】
【0021】
アプリケーションを開発するために各種モジュールキット15をマイコンボックス9に接続する。これらのモジュールキット用のAPIをあらかじめ開発ツールに用意しておくと,モジュールキットのハードウェアを活用したアプリケーションを制作できる。
【実施例2】
【0022】
たとえば新たなハードウェアの例として血圧,体温,脈拍などの生体情報を取得できるセンサ等の装置19を図2のようにマイコンボックス9から携帯端末3に接続することで,保有者からセンシングしたデータを用い,健康管理に役立つようなアプリケーションを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本開発キットを用いて創出されたアイデアを基に,新しいハードウエアを組み込んだ携帯端末を作り,それを用いた新規サービスを実現できる可能性がある。
【0024】
また図2のようにして開発した結果にもとずいて,マイコンボックスを用いずに直接センサを付加した携帯端末を作成することによって,新たなビジネスを実現できる可能性がある。
【0025】
さらにセンシングしたデータは携帯端末から発信18し,インターネット17を経由して,別途用意したサーバ16に伝送し,必要に応じて活用できるアプリケーションを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 開発キットの構成例を示した平面図である。
【図2】 開発キットによって実現できるアプリケーションの例である。
【符号の説明】
【0027】
1 スターターキット
2 開発ツール
3 携帯端末
4 アプリケーション
5 PC
6 スターターモジュールキット
7 USBケーブル
8 携帯端末エミュレータ
9 マイコンボックス
10 LCDモジュールキット
11 加速度検出モジュールキット
12 温度センサモジュールキット
13 高精度GPSモジュールキット
14 においセンサモジュールキット
15 各種モジュールキット
16 サーバ
17 インターネット
18 携帯端末からの発信
19 生体情報センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末とアプリケーション開発に適したプラットフォームにおいて,専用の開発環境を持つソフトウェアの開発ツールと,前記開発ツールによって開発するアプリケーションで利用できるハードウェアのモジュールと,前記開発ツールによって開発するアプリケーションを実行できる前記携帯端末と,前記開発ツールと前記モジュール,または前記携帯端末と前記モジュールを接続できる装置のマイコンボックスで構成され,前記携帯端末を利用したアプリケーションを開発できることを特徴とする開発キット。
【請求項2】
前記プラットフォームは前記携帯端末用のものであって,ハードウェアを自由に接続でき,自由な発想でアプリケーションを開発できることを特徴とするソフトウェアとハードウェアの環境。
【請求項3】
前記開発ツールは前記プラットフォームにおいて,実行できるアプリケーションをコンピュータで開発できることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
前記モジュールは前記プラットフォームにおいて,前記開発ツールによって開発したアプリケーションから操作できることを特徴とするハードウェア装置。
【請求項5】
前記携帯端末は前記プラットフォームによって機能を構成され,入出力用にUSB端子を備え,専用OSがインストール済みであることを特徴とする移動体通信端末。
【請求項6】
前記マイコンボックスは前記モジュールを前記プラットフォームにおいて,アプリケーションから利用できるようにデータを中継できることを特徴とするハードウェア装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−268042(P2009−268042A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138716(P2008−138716)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(598035680)合資会社研究支援センター (7)
【Fターム(参考)】