説明

携帯端末装置およびRSSIモニタリング方法

【課題】マルチモードの携帯端末装置における他システムへのハンドオーバー時に行われるRSSIモニタリングにおいて、広範囲なダイナミックレンジを確保する。
【解決手段】携帯端末装置は、受信信号を増幅するRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qと、Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定するゲイン設定値を予め記憶する不揮発メモリ11と、通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を不揮発メモリ11から読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、他のネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値を不揮発メモリ11から読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定するCPU10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信システムに対応したマルチモードの携帯電話機等の携帯端末装置に係り、特に接続中の第1のネットワークから第2のネットワークに切り替えるハンドオーバー時のRSSIモニタリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の携帯端末装置の進化は目覚ましく、複数の無線通信システム、例えばGSM(Global System for Mobile Communications)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、WLAN(Wireless LAN)、WIMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等に対応したマルチモード化が進んでおり、これからもマルチモード化の傾向は続くと考えられる。
【0003】
複数の無線通信システムを途切れることなくシームレスに接続するためには、他システムの状況を正確に把握することが重要である。そこで、携帯端末装置は、接続中の第1のネットワークから第2のネットワークに切り替えるハンドオーバー時に第2のネットワークのRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)をモニタリングするようにしている。このモニタリングにおいては、より広いRSSIダイナミックレンジを確保できることが望ましい。
【0004】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る携帯端末装置の送受信部の構成を示すブロック図であるが、従来においても送受信部全体の構成は同様であるので、図1を用いて従来の携帯端末装置の送受信部について説明する。
携帯端末装置の送受信部は、送受信RF(Radio Frequency)信号の処理を行うRFIC(RF Integrated Circuit)1と、RFIC1から出力されるデジタルデータの処理を行うCPU(Central Processing Unit)10と、CPU10とデータの受け渡しを行う不揮発メモリ11とを有する。
【0005】
RFIC1の内部には、大きく分けて送信部1−TXと受信部1−RXとがある。図1では、送信部1−TXの構成を省略している。受信部1−RXは、図示しないアンテナからの受信RF信号を低雑音で増幅するLNA(Low Noise Amplifier)2と、受信RF信号をベースバンド帯域の信号に変換するミキサ3−I,3−Qと、ローカル信号を生成するVCO(Voltage Controlled Oscillator)4と、ローカル信号をミキサ3−Iに出力する共にローカル信号を90°位相をずらしてミキサ3−Qに出力する90°位相分配器5と、ベースバンド帯域に変換されたIQ信号を所望の信号電力に増幅するRxゲインアンプ(Rx Gain Amplifier)6−I,6−Q,8−I,8−Qと、不要信号を減衰させるBB(BaseBand)フィルタ7−I,7−Qと、IQ信号をアナログ信号からデジタルデータに変換するA/D変換器9とから構成されている。
【0006】
図1を用いて信号の流れを説明する。RFIC1のLNA2は、図示しないアンテナから入力された受信RF信号を増幅する。LNA2によって増幅された受信RF信号は、ミキサー3−Iでローカル信号と混合されてRF帯域からベースバンド帯域の信号であるI信号に変換され、同様にミキサー3−Qでローカル信号と混合されてベースバンド帯域の信号であるQ信号に変換される。Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−QはIQ信号を増幅し、BBフィルタ7−I,7−QはIQ信号に含まれる不要信号を取り除く。A/D変換器9は、Rxゲインアンプ8−I,8−Qによって増幅されたIQ信号をデジタルデータに変換する。
【0007】
図6は通常動作時のRxゲインの制御動作を示すフローチャートである。不揮発メモリ11の図示しないRxゲインテーブルには、Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定するRxゲイン設定値が予め登録されている。第1のネットワークに接続中の通常動作時においては、CPU10は、第1のネットワークの基地局から受信し、A/D変換器9によってデジタル化されたIQ信号の強度をRSSIとして測定する(図6ステップS100)。
【0008】
そして、CPU10は、測定したRSSIの値に基づいて、A/D変換器9の入力レベルが一定になるようなRxゲイン設定値を不揮発メモリ11から読み出してRFIC1のRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定する(ステップS101)。こうして、様々な受信信号レベルに対してA/D変換器9の入力レベルが常に一定になるように制御される。このようなフィードバックによるゲインの制御技術、いわゆる自動利得制御技術については、例えば特許文献1に開示されている。
【0009】
図7はハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。通常動作時においては、接続中の第1のネットワークのRSSI値を測定している。一方、接続中の第1のネットワークから第2のネットワークに切り替えるハンドオーバーの際には、第2のネットワークのRSSI値を測定するRSSIモニタリングが必要となる。この場合、第1のネットワークの基地局は、ハンドオーバー時のRSSIモニタリングを行うよう携帯端末装置に指示する。携帯端末装置のCPU10は、RFIC1を介して基地局からの指示を受け取ると(図7ステップS200においてYES)、不揮発メモリ11に格納されている第2のネットワーク用の通常動作時のRxゲイン設定値のうち、RSSIダイナミックレンジが最も広くとれるようなRxゲイン設定値をRFIC1のRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し(ステップS201)、第2のネットワークの基地局から受信し、A/D変換器9によってデジタル化されたIQ信号の強度をRSSIとして測定する(ステップS202)。
【0010】
例えば、GSMとWCDMAとのマルチモードシステムにおけるWCDMAシステムからGSMシステムへの切り替えの際には、GSMシステムの通常動作時に使用しているRxゲインテーブルから固定のRxゲイン設定値を読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定する。
【0011】
一方、特許文献1に開示された技術では、ハンドオーバーの際には、過去に保存された通常動作時のRxゲイン設定値の中から最適なRxゲイン設定値を設定するようにしていた。特許文献1に開示された技術では、WCDMAを想定しているため、フィードバック制御によって最適なRxゲイン設定値を設定するようにしている。本発明では、GSMを想定しており、図7に示したように、RSSIダイナミックレンジが最も広くとれるようなRxゲイン設定値を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−286806
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、ハンドオーバー時のRSSIモニタリングにおいては、通常動作時に使用しているRxゲイン設定値を読み出してRxゲインアンプに設定し、RSSI値を測定する手法が採用されている。このような無線システムでは、使用するRFICによりRxゲインアンプの特性が異なるため、通常動作時に使用しているRxゲイン設定値では、適切な範囲でかつ十分なRSSIダイナミックレンジを確保できない場合があった。
【0014】
この従来の問題点を図8を用いて説明する。図8は通常動作時のRxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジを示す図である。図8では、RFIC1に入力される受信電力(Input Power)を横軸に示し、受信電力に対してA/D変換器9に出力されたRSSI値の差分を縦軸に示している。ここでは、便宜上、所望のRSSI値に対して、±1.0dBの範囲のRSSI値をダイナミックレンジと規定している。図8におけるDLA,DLB,DLCは、それぞれRxゲインA,B,CをRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定したときのRSSIダイナミックレンジである。
【0015】
図8では、通常動作時のRxゲインA〜Cの3種類をRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定した場合のRSSIダイナミックレンジを示しているが、それぞれのRxゲイン設定によりダイナミックレンジの広さ・範囲は異なる。上記のとおり、通常、最もダイナミックレンジが広くとれるようなゲイン設定にてRSSIモニタリングを実施するが、図8で最もダイナミックレンジが広くとれるRxゲインCの設定でも、弱電界時(−100dBm程度)のRSSI値は0.0dB±1.0dBの範囲に入っておらず、ダイナミックレンジが十分であるとは言えない。ハンドオーバー時のRSSIモニタリングでは、他ネットワークの状況を正確に把握するために、より広いRSSIダイナミックレンジが確保できることが望ましい。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、マルチモードの携帯端末装置における他システムへのハンドオーバー時に行われるRSSIモニタリングにおいて、広範囲なダイナミックレンジを確保することができる携帯端末装置およびRSSIモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の携帯端末装置は、受信信号を増幅するゲインアンプと、このゲインアンプに設定するゲイン設定値を予め記憶する不揮発メモリと、通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、前記他のネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手段と、前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の携帯端末装置は、受信信号を増幅するゲインアンプと、このゲインアンプに設定するゲイン設定値を予め記憶する不揮発メモリと、通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、RSSIの値に応じて、弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのゲイン設定値のうちどちらかを前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手段と、前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法は、通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を不揮発メモリから読み出して、受信信号を増幅するゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、前記他のネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手順と、前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手順とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法は、通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を不揮発メモリから読み出して、受信信号を増幅するゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、RSSIの値に応じて、弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのゲイン設定値のうちどちらかを前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手順と、前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手順とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハンドオーバー時に他ネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値をゲインアンプに設定することにより、使用するRFICの最適なゲイン設定でRSSIモニタリングを行うことが可能となり、従来のように通常動作時のゲイン設定値を使用する場合よりもRSSIダイナミックレンジを広く確保することが可能となる。
【0020】
また、本発明では、それぞれ弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのゲイン設定値を適切に切り替えることによって、弱電界に対応するゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジと強電界に対応するゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジを補い合うことが可能となるため、弱電界から強電界までの広範囲なRSSIダイナミックレンジを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る携帯端末装置の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る携帯端末装置のハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。
【図3】従来の通常動作時のRxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジと本発明の第1の実施の形態のRSSIモニタリング用の最適Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジとを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る携帯端末装置のハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態において弱電界Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジと強電界Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジとを示す図である。
【図6】携帯端末装置の通常動作時のRxゲインの制御動作を示すフローチャートである。
【図7】携帯端末装置のハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。
【図8】通常動作時のRxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の第1の実施の形態に係る携帯端末装置の送受信部の構成を示すブロック図である。
携帯端末装置の送受信部は、RFIC1と、CPU10と、不揮発メモリ11とを有する。RFIC1の内部には、大きく分けて送信部1−TXと受信部1−RXとがある。受信部1−RXは、LNA2と、ミキサ3−I,3−Qと、VCO4と、90°位相分配器5と、Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qと、BBフィルタ7−I,7−Qと、A/D変換器9とから構成されている。CPU10は、Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−QのRxゲインを設定するゲイン設定手段を構成し、またA/D変換器9とCPU10とは、RSSIを測定するRSSI測定手段を構成している。
【0023】
RFIC1のLNA2は、図示しないアンテナから入力された受信RF信号を増幅する。LNA2によって増幅された受信RF信号は、ミキサー3−Iでローカル信号と混合されてRF帯域からベースバンド帯域の信号であるI信号に変換され、同様にミキサー3−Qでローカル信号と混合されてベースバンド帯域の信号であるQ信号に変換される。Rxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−QはIQ信号を増幅し、BBフィルタ7−I,7−QはIQ信号に含まれる不要信号を取り除く。A/D変換器9は、Rxゲインアンプ8−I,8−Qによって増幅されたIQ信号をデジタルデータに変換する。
【0024】
通常動作時のRxゲインの制御動作は、図6に示したとおりである。一方、本実施の形態の不揮発メモリ11には、通常動作時のRxゲイン設定値とは別に、他ネットワークのRSSIモニタリング時に用いるRxゲイン設定値として、最もダイナミックレンジが広くとれるRxゲイン設定値が予め登録されている。
【0025】
図2は本実施の形態のハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。接続中の第1のネットワークから第2のネットワークに切り替えるハンドオーバーの際には、第1のネットワークの基地局は、ハンドオーバー時のRSSIモニタリングを行うよう携帯端末装置に指示する。携帯端末装置のCPU10は、RFIC1を介して基地局からの指示を受け取ると(図2ステップS1においてYES)、不揮発メモリ11に格納されている、他ネットワークのRSSIモニタリング用のRxゲイン設定値を読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し(ステップS2)、第2のネットワークの基地局から受信し、A/D変換器9によってデジタル化されたIQ信号の強度をRSSIとして測定する(ステップS3)。
【0026】
CPU10は、測定したRSSIの値を送信部1−TXを介して第1のネットワークの基地局に送信する。基地局は、RSSI値を基に、例えば第1のネットワークから第2のネットワークへの切り替えの妥当性判断を行う。
【0027】
図3は従来の通常動作時のRxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジと本実施の形態のRSSIモニタリング用の最適Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジとを示す図である。図8と同様に、便宜上、所望のRSSI値に対して、±1.0dBの範囲のRSSI値をダイナミックレンジと規定している。図3におけるDL0は通常動作時のRxゲイン設定値G0をRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定したときのRSSIダイナミックレンジ、DL1は他ネットワークのRSSIモニタリング用のRxゲイン設定値G1をRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定したときのRSSIダイナミックレンジである。
【0028】
図3から明らかなように、通常動作時のRxゲイン設定値使用時のRSSIダイナミックレンジと比較して、本実施の形態のRSSIモニタリング用のRxゲイン設定値を使用した場合のRSSIダイナミックレンジの方がより広い範囲で特性を確保できていることが分かる。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、ハンドオーバー時に他ネットワークのRSSIモニタリング用のRxゲイン設定値をRxゲインアンプに設定することにより、使用するRFICの最適なRxゲイン設定でRSSIモニタリングを行うことが可能となり、従来のように通常動作時のRxゲイン設定値を使用する場合よりもRSSIダイナミックレンジを広く確保することが可能となる。
【0030】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態においても、携帯端末装置の送受信部の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1の符号を用いて説明する。通常動作時のRxゲインの制御動作は、図6に示したとおりである。
第1の実施の形態では、ハンドオーバー時に他ネットワークのRSSIモニタリング用のRxゲイン設定値をRxゲインアンプに設定してRSSI値を測定したが、本実施の形態では、通常動作時に使用しているRxゲイン設定値を切り替えながら使用することでRSSIダイナミックレンジを確保する。
【0031】
図4は本実施の形態のハンドオーバー時のRSSIモニタリング動作を示すフローチャートである。接続中の第1のネットワークから第2のネットワークに切り替えるハンドオーバーの際には、第1のネットワークの基地局は、ハンドオーバー時のRSSIモニタリングを行うよう携帯端末装置に指示する。携帯端末装置のCPU10は、RFIC1を介して基地局からの指示を受け取ると(図4ステップS10においてYES)、不揮発メモリ11に格納されている第2のネットワーク用の通常動作時のRxゲイン設定値のうち、RSSIモニタリング用の初期値として予め決定されているRxゲイン設定値を読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し(ステップS11)、第2のネットワークの基地局から受信し、A/D変換器9によってデジタル化されたIQ信号の強度をRSSIとして測定する(ステップS12)。
【0032】
第2のネットワークのRSSIレベルは推測できないため、RSSIモニタリング用の初期値を予め決定しておく必要がある。ここでは、通常動作時のRxゲイン設定値のうち、弱電界でRSSIダイナミックレンジが確保できるRxゲイン設定値Gwが初期値として決められているものとする。
【0033】
続いて、CPU10は、ステップS12で測定したRSSI値と不揮発メモリ11に予め記憶されている所定の切替レベルとを比較し(ステップS13)、RSSI値が切替レベルよりも大きい場合、次のRSSIモニタタイミングで不揮発メモリ11に格納されている第2のネットワーク用の通常動作時のRxゲイン設定値のうち、RSSIモニタリング時の切替用の値として予め決定されているRxゲイン設定値を読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し(ステップS14)、ステップS12と同様にして再度RSSI値を測定する(ステップS15)。本実施の形態では、通常動作時のRxゲイン設定値のうち、弱電界でRSSIダイナミックレンジが確保できるRxゲイン設定値GwをRSSIモニタリング用の初期値としていたので、切替用の値として予め決定されているRxゲイン設定値は、強電界でRSSIダイナミックレンジが確保できるRxゲイン設定値Gsとなる(Gw>Gs)。
【0034】
図5は弱電界Rxゲイン設定値Gwを用いた場合のRSSIダイナミックレンジと強電界Rxゲイン設定値Gsを用いた場合のRSSIダイナミックレンジとを示す図である。図8と同様に、便宜上、所望のRSSI値に対して、±1.0dBの範囲のRSSI値をダイナミックレンジと規定している。ここでは、切替レベルを−70dBmとしている。図5におけるDLは、弱電界Rxゲイン設定値Gwを用いた場合のRSSIダイナミックレンジと強電界Rxゲイン設定値Gsを用いた場合のRSSIダイナミックレンジとを合わせたRSSIダイナミックレンジである。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、それぞれ弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのRxゲイン設定値を適切に切り替えることによって、弱電界Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジと強電界Rxゲイン設定値を用いた場合のRSSIダイナミックレンジを補い合うことが可能となるため、弱電界から強電界までの広範囲なRSSIダイナミックレンジを確保することが可能となる。
【0036】
なお、本実施の形態では、通常動作時のRxゲイン設定値のうち、弱電界でRSSIダイナミックレンジが確保できるRxゲイン設定値GwをRSSIモニタリング用の初期値としていたが、強電界でRSSIダイナミックレンジが確保できるRxゲイン設定値Gsを初期値としてもよい。この場合、CPU10は、ステップS13においてRSSI値が切替レベルよりも小さい場合、次のRSSIモニタタイミングで不揮発メモリ11に格納されている第2のネットワーク用の通常動作時のRxゲイン設定値のうち、切替用の値として予め決定されているRxゲイン設定値Gwを読み出してRxゲインアンプ6−I,6−Q,8−I,8−Qに設定し(ステップS14)、再度RSSI値を測定すればよい(ステップS15)。また、切替レベルは、外部からの設定により適宜変更可能である。
【0037】
また、第1、第2の実施の形態において、LNA2、ミキサ3−I,3−Q、VCO4、90°位相分配器5、BBフィルタ7−I,7−Qの構成は図1のとおりでなくてもよく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、複数の無線通信システムに対応したマルチモードの携帯端末装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…RFIC、1−RX…受信部、1−TX…送信部、2…LNA、3−I,3−Q…ミキサ、4…VCO、5…90°位相分配器、6−I,6−Q,8−I,8−Q…Rxゲインアンプ、7−I,7−Q…BBフィルタ、9…A/D変換器、10…CPU、11…不揮発メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を増幅するゲインアンプと、
このゲインアンプに設定するゲイン設定値を予め記憶する不揮発メモリと、
通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、前記他のネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手段と、
前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手段とを備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
受信信号を増幅するゲインアンプと、
このゲインアンプに設定するゲイン設定値を予め記憶する不揮発メモリと、
通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、RSSIの値に応じて、弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのゲイン設定値のうちどちらかを前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手段と、
前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手段とを備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の携帯端末装置において、
前記ゲイン設定手段は、通常動作時に、前記RSSIの値に基づいて、前記ゲインアンプの出力レベルが一定となるゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の携帯端末装置において、
前記ゲイン設定手段は、ハンドオーバー時に、前記2つのゲイン設定値のうち、RSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている一方のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、このゲイン設定値の設定後に前記RSSI測定手段で測定されたRSSI値と前記不揮発メモリに予め記憶されている所定の切替レベルとを比較して、前記2つのゲイン設定値のうち他方のゲイン設定値に切り替えるかどうかを判定することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項5】
請求項4記載の携帯端末装置において、
前記ゲイン設定手段は、前記2つのゲイン設定値のうち、弱電界に対応する通常動作時のゲイン設定値がRSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている場合は、前記RSSI測定手段で測定されたRSSI値が前記切替レベルよりも大きいときに、強電界に対応する通常動作時のゲイン設定値に切り替え、前記2つのゲイン設定値のうち、強電界に対応する通常動作時のゲイン設定値がRSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている場合は、前記RSSI測定手段で測定されたRSSI値が前記切替レベルよりも小さいときに、弱電界に対応する通常動作時のゲイン設定値に切り替えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の携帯端末装置において、
さらに、測定されたRSSIの値を基地局に送信する送信手段を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項7】
通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を不揮発メモリから読み出して、受信信号を増幅するゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、前記他のネットワークのRSSIモニタリング用のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手順と、
前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手順とを備えることを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。
【請求項8】
通常動作時には、通常動作時のゲイン設定値を不揮発メモリから読み出して、受信信号を増幅するゲインアンプに設定し、接続中のネットワークから他のネットワークに切り替えるハンドオーバー時には、RSSIの値に応じて、弱電界と強電界に対応する通常動作時の2つのゲイン設定値のうちどちらかを前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定するゲイン設定手順と、
前記ゲインアンプの出力信号の強度をRSSIとして測定するRSSI測定手順とを備えることを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法において、
前記ゲイン設定手順は、通常動作時に、前記RSSIの値に基づいて、前記ゲインアンプの出力レベルが一定となるゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定することを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法において、
前記ゲイン設定手順は、ハンドオーバー時に、前記2つのゲイン設定値のうち、RSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている一方のゲイン設定値を前記不揮発メモリから読み出して前記ゲインアンプに設定し、このゲイン設定値の設定後に前記RSSI測定手順で測定されたRSSI値と前記不揮発メモリに予め記憶されている所定の切替レベルとを比較して、前記2つのゲイン設定値のうち他方のゲイン設定値に切り替えるかどうかを判定することを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。
【請求項11】
請求項10記載の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法において、
前記ゲイン設定手順は、前記2つのゲイン設定値のうち、弱電界に対応する通常動作時のゲイン設定値がRSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている場合は、前記RSSI測定手順で測定されたRSSI値が前記切替レベルよりも大きいときに、強電界に対応する通常動作時のゲイン設定値に切り替え、前記2つのゲイン設定値のうち、強電界に対応する通常動作時のゲイン設定値がRSSIモニタリング用の初期値として予め決定されている場合は、前記RSSI測定手順で測定されたRSSI値が前記切替レベルよりも小さいときに、弱電界に対応する通常動作時のゲイン設定値に切り替えることを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の携帯端末装置のRSSIモニタリング方法において、
さらに、測定されたRSSIの値を基地局に送信する送信手順を備えることを特徴とする携帯端末装置のRSSIモニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109220(P2011−109220A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259667(P2009−259667)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】