説明

携帯端末

【課題】液晶画面等の表示部を採用することなく所定の情報を表示し得る携帯端末を提供する。
【解決手段】発光部22aからの照明光Lfが走査部22bによりラスタ走査されてバーコードBにて反射された反射光を受光することで、当該バーコードBが光学的に読み取られる。そして、読取関連情報に応じて走査部22bによりラスタ走査される照明光Lfの発光タイミングが制御されることで、残像効果を利用し当該読取関連情報が照射面に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示機能を有する携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶画面等の表示部を採用することなく所定の情報を表示可能な携帯端末として、下記特許文献1に示すスイング式表示装置が知られている。このスイング式表示装置は、線状に配列された多数の発光セルをもつ装置本体を手動などで往復スイングする際に、発光セルアレイを面的に走査するとともに時系列発光制御を実施することで、残像効果を利用して所定の情報を表示するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−271086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、所望の情報を表示するための液晶画面等の表示部を有し光学的に情報を読み取る読取装置のように所定の作業を実施することにより情報を取得する携帯端末では、作業中に表示部を見る必要性が低い。一方、表示部を見る必要性が高い場合としては、作業後に作業状況等を確認する場合である。そこで、低コスト化や部品点数削減等を図るために表示部を廃止し、表示が必要な情報を上記特許文献1のスイング式表示装置により表示する構成が考えられる。しかしながら、上述のような構成では、特別な装置が必要になり部品点数の削減が困難になるだけでなく、情報を表示する際には装置本体をスイングする必要があり作業性が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、液晶画面等の表示部を採用することなく所定の情報を表示し得る携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末では、照明光を発光する発光部とこの照明光を空間に対してラスタ走査する走査部とを有する発光走査手段と、前記発光部からの前記照明光が情報コードにて反射された反射光を受光することで当該情報コードを光学的に読み取る読取手段と、前記発光走査手段を制御する制御手段と、を備える携帯端末であって、前記制御手段は、表示すべき情報に応じて前記走査部によりラスタ走査される前記照明光の発光タイミングを制御することで、残像効果を利用し当該表示すべき情報を前記照明光が照射される照射面に表示することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記制御手段は、前記読取手段により読み取られた前記情報コードに関する読取関連情報に応じて前記走査部によりラスタ走査される前記照明光の発光タイミングを制御することで、当該読取関連情報を前記表示すべき情報として前記照明光が照射される照射面に表示することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の携帯端末において、前記発光部から前記照明光を照射することで前記読取手段により前記情報コードを読み取り可能な読取状態と、前記発光タイミングを制御することで前記表示すべき情報を前記照射面に表示する表示状態と、を切り替えるための切替手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記制御手段は、前記照射面のうち、一部にラスタ走査されて照射される前記照明光により前記表示すべき情報を表示するとともに、残部に前記情報コードから前記反射光を受光するためにラスタ走査された前記照明光を照射するように、前記発光走査手段を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記制御手段は、前記表示すべき情報が複数あるとき、これらの表示すべき情報のうちのいずれかを選択して前記照射面に表示する選択手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、照明光がラスタ走査されて情報コードにて反射された反射光を受光することで、当該情報コードが読取手段により光学的に読み取られる。そして、制御手段により、表示すべき情報に応じて走査部によりラスタ走査される照明光の発光タイミングが制御されることで、残像効果を利用して当該表示すべき情報が机面や壁面等の照射面に表示される。
【0012】
このように表示すべき情報が発光走査手段による残像効果を利用して照射面に表示されるので、液晶画面等の表示部を採用することなく所定の情報を表示することができる。特に、所定の情報を表示するために情報コードを読み取るための発光走査手段が流用されるので、特別な装置を設ける必要もなく部品点数の増加を抑制して小型軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明では、制御手段により、読取関連情報に応じて走査部によりラスタ走査される照明光の発光タイミングが制御されることで、残像効果を利用して当該読取関連情報が照射面に表示される。これにより、液晶画面等の表示部を採用することなく、読取作業後にでも、例えば読取個数等の作業結果等を読取関連情報として照射面に表示することができる。
【0014】
請求項3の発明では、切替手段により、読取手段により情報コードを読み取り可能な読取状態と、発光タイミングを制御することで表示すべき情報を照射面に表示する表示状態と、が切り替えられるので、切替手段を操作する作業者が望むタイミングで読取状態および表示状態を切り替えることができる。
【0015】
請求項4の発明では、照射面のうち、一部に表示すべき情報が表示されるとともに、残部に情報コードから反射光を受光するための照明光が照射されるので、照射面の残部の情報コードを読み取る作業中であっても、照射面の一部に表示すべき情報を表示することができる。
【0016】
請求項5の発明では、複数の表示すべき情報のうちのいずれかを選択して照射面に表示する選択手段が設けられている。このため、作業者が選択手段を用いて所望の表示情報をそれぞれ選択することで、照射面に一度に表示できる情報量が制限される場合であっても、多くの表示すべき情報を数回に分けて表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学的情報読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】発光走査部による読取状態を例示する説明図である。
【図3】発光走査部による表示状態を例示する説明図である。
【図4】本実施形態の第2変形例に係る発光走査部による読取表示状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の携帯端末を光学的情報読取装置に適用した実施形態について図を参照して説明する。
光学的情報読取装置10は、梱包箱等の読取対象に付されたバーコード等の情報コードを光学的に読み取る携帯型の読取装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図1に示すように、筐体(図示略)の内部に回路部20とこの回路部20を構成する各種電気部品の電源として機能する電源装置27とが収容されてなるものである。回路部20は、全体的制御を司る制御部21と、情報コードを光学的に読み取るための発光走査部22および受光部23とを備えている。
【0019】
発光走査部22は、発光部22aと走査部22bとを備えている。発光部22aは、例えば、赤色のLED等、照明光Lfを出射可能な光源として機能するように構成されている。また、走査部22bは、可動ミラー等を所定のタイミングで駆動することにより、発光部22aからの照明光Lfを空間に対してラスタ走査するように構成されている。
【0020】
これにより、発光走査部22は、後述する読取状態では、図2に示すように、バーコードBに対してラスタ走査された照明光Lfを連続的に照射することで、バーコードBからの反射光を促すように機能する。また、この発光走査部22は、後述する表示状態では、照明光Lfの発光タイミングが制御されることで残像効果を利用して所定の情報を表示する表示手段として機能する。この表示手段としての機能については後述する。なお、ラスタ走査とは、走査対象範囲の上側(もしくは下側)の走査ラインに沿い順に一端側(例えば右端側)から走査していく際、次の走査ラインを走査するときに一端側に戻ることで、常に一端側から他端側へ走査する2次元走査方式である。本実施形態におけるラスタ走査を図2を用いて説明すると、走査ラインL1に沿い右端側から他端側へ走査するように照明光Lfが移動すると、次の走査ラインである走査ラインL2に沿い右端側から他端側へ走査するように照明光Lfが移動する。
【0021】
また、受光部23は、バーコードB等からの反射光を受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を1次元に配列したラインセンサが、これに相当する。
【0022】
また、図1に示すように、制御部21には、上述した発光走査部22および受光部23に加えて、操作部24および通信部25などが接続されている。制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有し、メモリ26とともに情報処理装置として機能する。メモリ26は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当し、読取処理等を実行可能な所定のプログラムや、発光走査部22および受光部23等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラムなどが予め格納されている。
【0023】
操作部24は、読取処理の開始時に押圧操作されるトリガキー等の複数のキーを備え、作業者による各キーのキー操作に応じた操作信号を制御部21に対して出力するように構成されている。制御部21は、操作部24から操作信号を受けたとき、その操作信号に応じた動作を行うように構成されている。通信部25は、外部(例えばホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。
【0024】
次に、光学的情報読取装置10の読取処理について説明する。
この読取処理では、まず作業者により操作部24のトリガキーが押圧操作されると、この操作に応じて制御部21により発光走査部22が制御されて読取状態になる。この読取状態では、発光部22aからの照明光Lfが連続発光した状態でラスタ走査されて筐体の読取口(図略)を介して照射される。そして、図2に例示するように、上述のようにラスタ走査された照明光Lfが読取対象であるバーコードBに照射されると、このバーコードBからの反射光が読取口を介して受光部23にて受光される。
【0025】
この受光に応じて受光部23から出力される受光信号が制御部21に入力されて増幅等されると、この受光信号を二値化したデータに対して公知のデコード方法が施されることで、バーコードBに記録される情報が光学的に読み取られることとなる。
【0026】
次に、光学的情報読取装置10の表示処理について説明する。
本実施形態では、読取処理後に読取作業を終えた作業者がトリガキーの押圧を解除すると、表示処理がなされて制御部21により発光走査部22が制御されて表示状態になる。この表示状態では、読取作業により得られたバーコードBに関する読取関連情報、例えば、読取個数等の作業結果が発光走査部22からの照明光Lfの残像効果を利用して机面や壁面等の照射面に表示される。
【0027】
具体的には、図3に例示するように読取関連情報に対応する表示内容が「AB」である場合に、この「AB」を上記照射面に表示するために当該照射面に対して照明光Lfを照射する位置の座標を演算し、この演算された座標に照明光Lfが照射されるタイミングで発光部22aを発光させる。すなわち、ラスタ走査時における発光部22aの発光タイミングを制御することで、所定の情報を照射面に表示することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、照明光Lfがラスタ走査されてバーコードBにて反射された反射光を受光することで、当該バーコードBが光学的に読み取られる。そして、上記読取関連情報に応じて走査部22bによりラスタ走査される照明光Lfの発光タイミングが制御されることで、残像効果を利用して当該読取関連情報が照射面に表示される。
【0029】
このように読取関連情報が発光走査部22による残像効果を利用して照射面に表示されるので、液晶画面等の表示部を採用することなく所定の情報を表示することができる。特に、読取関連情報を表示するためにバーコードBを読み取るための発光走査部22が流用されるので、特別な装置を設ける必要もなく部品点数の増加を抑制して小型軽量化を図ることができる。また、液晶画面等をなくすことにより消費電力の低減を図ることができる。
【0030】
本実施形態の第1変形例として、トリガキーの押圧解除操作に応じて上記表示処理を実施することに代えて、読取状態と表示状態とを切り替える切替手段として例えば専用キーを操作部24に設けてもよい。これにより、作業者が望むタイミングで読取状態および表示状態を切り替えることができる。
【0031】
本実施形態の第2変形例として、図4に例示するように、照射面のうち、一部(図4では上半面)に読取関連情報を表示するとともに、残部(図4では下半面)にバーコードBから反射光を受光するための照明光Lfを連続的に照射してもよい。このような読取表示状態では、照射面の残部のバーコードBを読み取る作業中であっても、照射面の一部に読取関連情報を表示することができる。なお、読取関連情報は、照射面の上半面にて照明光Lfが連続的に照射されることを前提に照射面の下半面に表示されてもよいし、照明光Lfが連続的に照射される領域と異なる領域に表示されてもよい。
【0032】
本実施形態の第3変形例として、読取関連情報が複数あるとき、これら各読取関連情報のうちのいずれかを選択して照射面に表示する選択手段として例えば専用キーを操作部24に設けてもよい。これにより、作業者が専用キーを操作して所望の表示情報をそれぞれ選択することで、照射面に一度に表示できる情報量が制限される場合であっても、多くの表示すべき情報を数回に分けて表示することができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)本実施形態および各変形例において、ラスタ走査される照明光Lfの残像効果を利用した表示処理では、読取関連情報を表示することに限らず、作業指示や作業注意事項等を表示すべき情報として照射面に表示してもよい。また、所定時間の経過や休憩時間の到来を報知する報知情報を表示すべき情報として照射面に表示してもよい。これにより、読取関連情報と関連しない情報であっても、液晶画面等の表示部を採用することなく照射面に表示することができる。特に、上記第1変形例のように読取状態と表示状態とを切り替えるための専用キーか制御プログラムを採用することで、作業者が望むタイミングで表示すべき情報を照射面に表示することができる。特に、上記制御プログラムでは、情報の表意内容や操作(切替キーの割付)等を制御可能にプログラムすることで、上記作用効果をよりいっそう高めることができる。
【0034】
(2)本発明は、上記光学的情報読取装置10に適用されることに限らず、照明光をラスタ走査する走査部を有する携帯端末に適用されてもよい。これにより本発明を適用した携帯端末の低コスト化や小型軽量化、部品点数削減および消費電力低減等を実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…光学的情報読取装置(携帯端末)
21…制御部(制御手段,読取手段)
22…発光走査部(発光走査手段)
22a…発光部
22b…走査部
23…受光部(読取手段)
24…操作部(切替手段,選択手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を発光する発光部とこの照明光を空間に対してラスタ走査する走査部とを有する発光走査手段と、
前記発光部からの前記照明光が情報コードにて反射された反射光を受光することで当該情報コードを光学的に読み取る読取手段と、
前記発光走査手段を制御する制御手段と、
を備える携帯端末であって、
前記制御手段は、表示すべき情報に応じて前記走査部によりラスタ走査される前記照明光の発光タイミングを制御することで、残像効果を利用し当該表示すべき情報を前記照明光が照射される照射面に表示することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記制御手段は、前記読取手段により読み取られた前記情報コードに関する読取関連情報に応じて前記走査部によりラスタ走査される前記照明光の発光タイミングを制御することで、当該読取関連情報を前記表示すべき情報として前記照明光が照射される照射面に表示することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記発光部から前記照明光を照射することで前記読取手段により前記情報コードを読み取り可能な読取状態と、前記発光タイミングを制御することで前記表示すべき情報を前記照射面に表示する表示状態と、を切り替えるための切替手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記制御手段は、前記照射面のうち、一部にラスタ走査されて照射される前記照明光により前記表示すべき情報を表示するとともに、残部に前記情報コードから前記反射光を受光するためにラスタ走査された前記照明光を照射するように、前記発光走査手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記制御手段は、前記表示すべき情報が複数あるとき、これらの表示すべき情報のうちのいずれかを選択して前記照射面に表示する選択手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−154271(P2011−154271A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16722(P2010−16722)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】