説明

携帯端末

【課題】簡易な構成にて利用者が要求する選択事項を確実に選択し得る携帯端末を提供する。
【解決手段】ICカードCと非接触通信するためのアンテナであってそれぞれ離間する位置に第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23が配置されている。そして、ステップS103またはS105にてICカードCが第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23のいずれかにかざされたことを検出した検出結果に基づいて、顧客の要求である決済条件が特定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者がかざす非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を読み取る携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者、特に顧客がかざす非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を読み取る携帯端末に関する技術として、下記特許文献1に示す非接触ICカードリーダ/ライタ装置が知られている。この非接触ICカードリーダ/ライタ装置は、非接触ICカードとの間で搬送波の送受信を行う複数のアンテナと、これら複数のアンテナが非接触ICカードから個々に受信した搬送波の電圧レベルをそれぞれ検出するA/D変換器と、各A/D変換器により検出された電圧レベルに基づいて、非接触ICカードの位置を算出する制御部と、を有している。このように構成されることにより、検出した電圧レベルに基づいて非接触ICカードリーダ/ライタ装置に対する非接触ICカードの位置を算出して特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2004−132890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、決済用の携帯端末を使用して決済処理を実施する場合、通常、接客する端末操作者が、口頭にて利用者に対して決済条件等の確認を行ない、当該携帯端末に対して入力する作業を行なう。このとき、端末操作者の聞き間違いや入力操作のミス等により、利用者の要求とは異なる決済条件等が選択されてしまう可能性があった。このため、利用者に、携帯端末に設けられるタッチパネルやボタンを操作してもらうことで決済条件等を入力(選択)させる方法も考えられる。しかしながら、携帯端末においては、携帯性を確保するために小型に形成されるので、慣れない利用者ではボタン操作が困難であるという問題があり、盗難防止のために端末自体を利用者に渡す行為が禁止されるなどの問題もある。
【0005】
この問題を解決するために、上記特許文献1に開示されるような非接触ICカードの位置を算出することで利用者の要求を特定する構成を採用することが考えられる。しかしながら、複数配置されたアンテナそれぞれの受信レベルを測定してICカードの位置を検出する構成であるため、受信レベルを測定する為にAD変換回路などの特別な回路が必要になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成にて利用者が要求する選択事項を確実に選択し得る携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末では、利用者がかざす非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を読み取る携帯端末において、前記非接触通信媒体と非接触通信するためのアンテナであってそれぞれ離間する位置に配置される複数のアンテナと、前記非接触通信媒体が前記複数のアンテナのいずれかにかざされたことを検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて前記利用者の要求を特定する特定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記特定手段は、前記複数のアンテナのうちいずれか1つに前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、他のアンテナに対して前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されない場合に、前記1つのアンテナに前記非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、前記利用者の要求を特定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の携帯端末において、前記複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、これらのアンテナの受信感度を徐々に下げる受信感度調整手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記特定手段は、前記複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、これらのアンテナのうち受信電波の最も強いアンテナに前記非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、前記利用者の要求を特定することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記複数のアンテナは、第1のアンテナおよび第2のアンテナから構成され、これら第1のアンテナおよび第2のアンテナは、当該携帯端末の外面のうち互いに離間して対向する一側面および他側面にて、前記非接触通信媒体と非接触通信可能にそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の携帯端末において、前記第1のアンテナに前記非接触通信媒体をかざすことで選択される第1の選択事項と、前記第2のアンテナに前記非接触通信媒体をかざすことで選択される第2の選択事項とを表示可能な表示手段を備え、前記第1の選択事項は、前記表示手段の表示面において、前記第1のアンテナに対して前記第2の選択事項よりも近くなる位置にて当該第1のアンテナが配置される位置を示すように表示され、前記第2の選択事項は、前記表示面において、前記第2のアンテナに対して前記第1の選択事項よりも近くなる位置にて当該第2のアンテナが配置される位置を示すように表示されることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の携帯端末において、前記第1の選択事項および前記第2の選択事項は、前記表示手段の表示面において、前記利用者側から読めるように表示向きが変更されることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記非接触通信媒体は、前記利用者が決済するための決済処理用の通信媒体であって、前記特定手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて前記利用者により選択された決済事項を前記利用者の要求として特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、非接触通信媒体と非接触通信するためのアンテナであってそれぞれ離間する位置に複数のアンテナが配置されている。そして、検出手段により非接触通信媒体が複数のアンテナのいずれかにかざされたことを検出した検出結果に基づいて、特定手段により利用者の要求が特定される。
【0016】
これにより、利用者が要求する選択事項に応じたアンテナに非接触通信媒体をかざすことで利用者の要求が特定されるため、携帯端末を渡すことなく利用者自身に選択させることができるので、簡易な構成にて利用者が要求する選択事項を確実に選択することができる。
【0017】
請求項2の発明では、複数のアンテナのうちいずれか1つに非接触通信媒体がかざされたことが検出手段により検出されると、他方のアンテナに対して非接触通信媒体がかざされたことが検出手段により検出されない場合に、上記1つのアンテナに非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、特定手段により利用者の要求が特定される。
【0018】
これにより、複数のアンテナのうち2以上のアンテナで非接触通信媒体がかざされたことが検出手段により検出される場合、すなわち、非接触通信媒体がどのアンテナにかざされたか判断することが困難である場合には、特定手段による利用者の要求が特定されないので、誤った選択がなされることを抑制することができる。
【0019】
請求項3の発明では、複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて非接触通信媒体がかざされたことが検出手段により検出されると、受信感度調整手段により、これらのアンテナの受信感度が徐々に下げられる。このように受信感度を徐々に下げていくと、最後まで検出されるアンテナに非接触通信媒体がかざされていると判断することができるので、利用者が要求する選択事項の選択に関する正確性を向上させることができる。
【0020】
請求項4の発明では、複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて非接触通信媒体がかざされたことが検出手段により検出されると、これらのアンテナのうち受信電波の最も強いアンテナに非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、特定手段により利用者の要求が特定される。
【0021】
非接触通信媒体は、複数のアンテナのうち利用者の要求に対応するアンテナに対して最も近づけられるはずなので、受信電波の最も強いアンテナに非接触通信媒体がかざされたことに基づいて利用者の要求を特定することで、各アンテナ同士を十分に離間させることができない場合でも、利用者が要求する選択事項を適切に選択することができる。
【0022】
請求項5の発明では、第1のアンテナおよび第2のアンテナは、当該携帯端末の外面のうち互いに離間して対向する一側面および他側面にて、非接触通信媒体と非接触通信可能にそれぞれ配置される。これにより、携帯性を確保するために当該携帯端末が小型に形成される場合でも、第1のアンテナをかざす面と第2のアンテナをかざす面とを十分に離間させて誤検出を防止することができる。
【0023】
請求項6の発明では、表示手段により、上記第1の選択事項が、第1のアンテナに対して第2の選択事項よりも近くなる位置にて当該第1のアンテナが配置される位置を示すように上記表示面に表示され、上記第2の選択事項は、第2のアンテナに対して第1の選択事項よりも近くなる位置にて当該第2のアンテナが配置される位置を示すように上記表示面に表示される。
【0024】
これにより、利用者は、2つのアンテナがそれぞれ配置される場合でも自分の要求に対応するアンテナが配置される位置を容易に視認できるため、要求する選択事項を確実に選択することができる。
【0025】
請求項7の発明では、第1の選択事項および第2の選択事項は、表示手段の表示面において、利用者側から読めるように表示向きが変更されるため、利用者は、自分の要求に対応するアンテナが配置される位置をより容易に視認できるため、要求する選択事項をより確実に選択することができる。
【0026】
請求項8の発明では、非接触通信媒体は、利用者が決済するための決済処理用の通信媒体であり、特定手段により、検出手段による検出結果に基づいて利用者により選択された決済事項が利用者の要求として特定される。このように、決済処理用に使用される非接触通信媒体に対しても、当該非接触通信媒体を利用者が要求する決済事項(選択事項)に応じたアンテナにかざすことで利用者が要求する決済事項が特定されるため、簡易な構成にて利用者が要求する決済事項を確実に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る決済端末のアンテナにICカードをかざした状態を示す斜視図である。
【図2】図1の決済端末の電気的構成を例示するブロック図である。
【図3】本実施形態に係る制御部による決済条件選択処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】表示処理における表示部の表示状態を例示する説明図である。
【図5】本実施形態の変形例に係る制御部における決済条件選択処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の携帯端末を決済端末10に適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る決済端末10のアンテナ21〜23にICカードCをかざした状態を示す斜視図である。図2は、図1の決済端末10の電気的構成を例示するブロック図である。
【0029】
本実施形態に係る決済端末10は、商品の購入に関する決済を行う携帯型の端末であって、現金だけでなくキャッシュカードやクレジットカードのような決済用媒体と非接触通信(無線通信)することで決済処理を行うように構成されている。特に、本実施形態では、上記決済用媒体として、非接触型のICカードCが採用されており、図1に示すように、決済端末10には、ICカードCと非接触通信するための3つのアンテナ21〜23が設けられている。
【0030】
上面アンテナ21は、表示部15にかざされるICカードCと非接触通信するように、表示部15の周囲に配置される。また、第1側面アンテナ22は、筐体11の一側面11aにかざされるICカードCと非接触通信するように、当該一側面11aのうち表示部15の近傍に配置される。また、第2側面アンテナ23は、筐体11の側面のうち一側面11aに対向する他側面11bにかざされるICカードCと非接触通信するように、当該他側面11bのうち表示部15の近傍に配置される。このように、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23は、決済端末10の外面のうち一側面11aおよび他側面11bに配置されることで、お互いに離間するように配置されることとなる。なお、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23は、特許請求の範囲に記載の「第1のアンテナ」および「第2のアンテナ」の一例に相当し得る。
【0031】
図2に示すように、決済端末10の筐体11内には、決済端末10全体を制御する制御部12が設けられている。この制御部12は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有しており、メモリ13とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有している。また、制御部12には、キー操作部14、表示部15および通信インターフェース16などが接続されている。
【0032】
キー操作部14は、制御部12に対して操作信号を入力する構成をなしており、制御部12は、これらからの操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行うようになっている。また、表示部15は、制御部12によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部12から表示処理等に関する指令を受けて動作するようになっている。
【0033】
通信インターフェース16は、外部ホスト装置等との間での決算等に関するデータ通信を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部12と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体11内には、電源となるバッテリ17や電源部18が収容されており、これらによって制御部12や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0034】
また、制御部12には、当該制御部12から入力される送信データを符号化して所定の送信信号として出力する送信部24と、送信部24からの送信される信号の出力を調整する送信出力調整部25と、アンテナを介して受信された受信信号を復号化した受信データを制御部12に入力する受信部26と、受信部26における受信時の感度を調整するための受信感度調整部27と、アンテナ切替え部28とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0035】
アンテナ切替え部28は、上記各アンテナ21〜23にそれぞれ電気的に接続されており、制御部12から入力される切替信号に応じて、送信部24からの送信される送信信号を上記各アンテナ21〜23のいずれかを介して出力し、上記各アンテナ21〜23のいずれかを介して受信される受信信号を受信部26に出力するように構成されている。
【0036】
次に、決済端末10において制御部12により実施される決済条件選択処理について図3のフローチャートを参照して以下に説明する。図3は、本実施形態に係る制御部12による決済条件選択処理の流れを例示するフローチャートである。図4は、表示処理における表示部15の表示状態を例示する説明図である。
【0037】
顧客(利用者)が商品を購入しこの購入費用の決済にICカードCが使用される場合、制御部12により図3に示す決済条件選択処理が実施される。まず、図3のステップS101にて、表示処理がなされ、複数の決済条件が表示部15に表示されることで、顧客に対して選択可能な決済条件が提示される。
【0038】
具体的には、図4に例示するように、一括支払いを選択するための「一括」表示と分割支払いを選択するための「分割」表示との2つの決済条件に関する表示が、表示部15の表示面15aに表示される。ここで、表示面15aにおける「一括」表示および「分割」表示は、顧客側から読めるように、表示向きが変更されて表示されている。特に、図4から分かるように、表示面15a上の「一括」表示は、第1側面アンテナ22に対して「分割」表示よりも近くなる位置にて当該第1側面アンテナ22が配置される筐体11の一側面11aを示すように表示されている。また、表示面15a上の「分割」表示は、第2側面アンテナ23に対して「一括」表示よりも近くなる位置にて当該第2側面アンテナ23が配置される筐体11の他側面11bを示すように表示されている。なお、表示部15および表示面15aは、特許請求の範囲に記載の「表示手段」および「表示面」の一例に相当し、「一括」および「分割」は、特許請求の範囲に記載の「第1の選択事項」および「第2の選択事項」の一例に相当し得る。
【0039】
このように選択可能な決済条件が表示部15に表示されると、ステップS103にて第1側面アンテナ22による読取処理がなされ、アンテナ切替え部28により読取可能に切り替えられた第1側面アンテナ22を用いて、ICカードCを読み取るための処理がなされる。ここで、ICカードCが第1側面アンテナ22にかざされていない場合には、ステップS105にてカードが検出されないとしてNoと判定される。そして、ステップS107にて第2側面アンテナ23による読取処理がなされ、アンテナ切替え部28により読取可能に切り替えられた第2側面アンテナ23を用いて、ICカードCを読み取るための処理がなされる。ここで、ICカードCが第2側面アンテナ23にかざされていない場合には、ステップS109にてカードが検出されないとしてNoと判定されて、ステップS103からの処理がなされる。そして、ICカードCが第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23の少なくともいずれか一方にて検出されるまで、ステップS103〜S109の処理が繰り返されることとなる。なお、ステップS105およびステップS109を実施する制御部12は、特許請求の範囲に記載の「検出手段」の一例に相当し得る。
【0040】
このような繰り返し処理中に、例えば、顧客が一括払いの決済条件を選択するためにICカードCを第1側面アンテナ22にかざすと、ステップS105にてYesと判定される。そして、ステップS111において、検出アンテナ番号記憶処理がなされる。この処理では、ICカードCが検出された側面アンテナを示す番号、上述した例では、第1側面アンテナ22を示す番号が、メモリ13に記憶される。
【0041】
次に、ステップS113において、他方の側面アンテナによる読取処理がなされ、ステップS111にて記憶された番号の側面アンテナと異なる側面アンテナを用いたICカードCを無線通信により読み取るための処理がなされる。この処理では、上述のようにICカードCが第1側面アンテナ22にて読み取られたことから、この第1側面アンテナ22を示す番号がメモリ13に記憶される場合には、第2側面アンテナ23を用いたICカードCを無線通信により読み取るための処理がなされる。
【0042】
そして、他方の側面アンテナ、すなわち、第2側面アンテナ23によりICカードCが読み取られずステップS115にてカードが検出されないとしてNoと判定されると、ステップS117にて決済条件決定処理がなされる。この処理では、ステップS111にて記憶されたアンテナ番号に対応する決済処理、上述した例では、一括支払いが選択されて特定されることとなる。このように、顧客自らがICカードCを所望の決済条件に対応するアンテナにかざすことで決済条件が選択されて特定され、この選択に基づく決済処理がなされることとなる。なお、ステップS117を実施する制御部12は、特許請求の範囲に記載の「特定手段」の一例に相当し得る。
【0043】
一方、ステップS115において、他方の側面アンテナによりICカードCが読み取られる場合、例えば、ICカードCが第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23の双方にて読み取れる位置にかざされる場合には、Yesと判定される。この場合、顧客の選択が明確にならないため、上述したステップS117の処理はなされず、ステップS119において、受信感度低減処理がなされる。この処理では、制御部12により制御される受信感度調整部27により各アンテナ22,23における受信感度が所定のレベルだけ低減される。そして、再び上記ステップS103からの処理がなされ、どちらか一方のアンテナのみがICカードCを検出するまで、ステップS115にてYesと判定されて、ステップS119にて受信感度が徐々に低減されることとなる。
【0044】
このように徐々に受信感度を低減していくことで、どちらか一方のアンテナのみがICカードCを検出すると、ステップS115にてNoと判定されて、ステップS117にて、この検出されたアンテナにICカードCがかざされていると判断して、このアンテナに対応する決済方法が選択されることとなる。
【0045】
以上説明したように、本第1実施形態に係る決済端末10では、ICカードCと非接触通信するためのアンテナであってそれぞれ離間する位置に第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23が配置されている。そして、ステップS105またはS109にてICカードCが第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23のいずれかにかざされたことを検出した検出結果に基づいて、顧客の要求である決済条件が特定される。
【0046】
これにより、顧客が要求する決済条件に応じたアンテナ22,23にICカードCをかざすことで顧客の要求である決済条件が特定されるため、決済端末10を渡すことなく顧客自身に選択させることができるので、簡易な構成にて顧客が要求する決済条件を確実に選択することができる。
【0047】
また、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23のうちいずれか1つにICカードCがかざされたことが検出されると、他方のアンテナに対してICカードCがかざされたことが検出されない場合に、上記1つのアンテナにICカードCがかざされたことに基づいて、顧客が要求する決済条件が特定される。
【0048】
これにより、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23の双方のアンテナでICカードCがかざされたことが検出される場合、すなわち、ICカードCがどのアンテナにかざされたか判断することが困難である場合には、一方のアンテナにてICカードCが検出されたことのみをもって顧客が要求する決済条件が特定されないので、誤った選択がなされることを抑制することができる。
【0049】
さらに、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23の双方にてICカードCがかざされたことが検出されると、ステップS119における受信感度低減処理により、これらのアンテナの受信感度が徐々に下げられる。このように受信感度を徐々に下げていくと、最後まで検出されるアンテナにICカードCがかざされていると判断することができるので、顧客が要求する決済条件の選択に関する正確性を向上させることができる。
【0050】
また、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23は、決済端末10の外面のうち互いに離間して対向する一側面11aおよび他側面11bにて、ICカードCと非接触通信可能にそれぞれ配置される。これにより、携帯性を確保するために当該決済端末10が小型に形成される場合でも、第1側面アンテナ22をかざす面(一側面11a)と第2側面アンテナ23をかざす面(他側面11b)とを十分に離間させて、誤検出を防止することができる。なお、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23は、対向する一側面11aおよび他側面11bに配置されることに限らず、互いに離間した面に配置されてもよいし、互いに離間して配置可能であれば、同一の面に配置されてもよい。
【0051】
さらに、表示部15により、「一括」表示が、第1側面アンテナ22に対して「分割」表示よりも近くなる位置にて当該第1側面アンテナ22が配置される筐体11の一側面11aを示すように上記表示面15aに表示され、「分割」表示は、第2側面アンテナ23に対して「一括」表示よりも近くなる位置にて当該第2側面アンテナ23が配置される筐体11の他側面11bを示すように上記表示面15aに表示される。
【0052】
これにより、顧客は、2つのアンテナ22,23がそれぞれ配置される場合でも自分の要求に対応するアンテナが配置される位置を容易に視認できるため、要求する決済条件を確実に選択することができる。
【0053】
さらにまた、「一括」表示および「分割」表示は、表示部15の表示面15aにおいて、顧客側から読めるように表示向きが変更されるため、顧客は、自分の要求に対応するアンテナが配置される位置をより容易に視認できるため、要求する決済条件をより確実に選択することができる。なお、表示面15aに表示される選択項目は、「一括」および「分割」に限らず、顧客(利用者)が選択可能な選択事項を表示してもよい。
【0054】
図5は、本実施形態の変形例に係る制御部12における決済条件選択処理の流れを例示するフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態の変形例として、上述したステップS119における受信感度低減処理に代えて、ステップS121における受信電波を用いた決済条件決定処理を実施するようにしてもよい。具体的には、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23にてICカードCがかざされたことが検出されると、これらのアンテナのうち受信電波の最も強いアンテナにICカードCがかざされたことに基づいて、顧客が要求する決済条件が特定される。
【0055】
ICカードCは、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23のうち顧客の要求に対応するアンテナに対して最も近づけられるはずなので、受信電波の最も強いアンテナにICカードCがかざされたことに基づいて顧客が要求する決済条件を特定することで、各アンテナ同士を十分に離間させることができない場合でも、顧客が要求する決済条件を適切に選択することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、携帯型の決済端末に採用されることに限らず、例えば、光学的情報読取装置などの携帯端末であって、顧客などの利用者に対して所定の選択事項を選択させる必要がある携帯端末に採用されてもよい。このようにしても、利用者が要求する選択事項に応じたアンテナにICカードなどの非接触通信媒体をかざすことで利用者の要求が特定されるため、携帯端末を渡すことなく利用者自身に選択させることができるので、簡易な構成にて利用者が要求する選択事項を確実に選択することができる。
【0057】
(2)本発明は、ICカードCを無線通信対象とする携帯端末に採用されることに限らず、カード式の非接触通信媒体やRFIDタグのような非接触通信媒体を無線通信対象とする携帯端末に採用されてもよい。
【0058】
(3)利用者が要求する選択事項に応じたアンテナは、第1側面アンテナ22および第2側面アンテナ23に限らず、例えば、上面アンテナ21を選択事項に応じたアンテナとして採用してもよいし、他のアンテナを選択事項に応じたアンテナして追加してもよい。この場合、上述した決済条件選択処理では、ICカード(非接触通信媒体)が複数のアンテナのいずれかにかざされたことを検出した検出結果に基づいて、特定手段により利用者の要求が特定される。
【符号の説明】
【0059】
10…決済端末(携帯端末)
11a…一側面
11b…他側面
12…制御部(検出手段,特定手段)
15…表示部(表示手段)
15a…表示面
22…第1側面アンテナ(第1のアンテナ)
23…第2側面アンテナ(第2のアンテナ)
C…ICカード(非接触通信媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者がかざす非接触通信媒体と非接触通信することで当該非接触通信媒体の情報を読み取る携帯端末において、
前記非接触通信媒体と非接触通信するためのアンテナであってそれぞれ離間する位置に配置される複数のアンテナと、
前記非接触通信媒体が前記複数のアンテナのいずれかにかざされたことを検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて前記利用者の要求を特定する特定手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記複数のアンテナのうちいずれか1つに前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、他のアンテナに対して前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されない場合に、前記1つのアンテナに前記非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、前記利用者の要求を特定することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、これらのアンテナの受信感度を徐々に下げる受信感度調整手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記複数のアンテナのうちいずれか2つ以上にて前記非接触通信媒体がかざされたことが前記検出手段により検出されると、これらのアンテナのうち受信電波の最も強いアンテナに前記非接触通信媒体がかざされたことに基づいて、前記利用者の要求を特定することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記複数のアンテナは、第1のアンテナおよび第2のアンテナから構成され、
これら第1のアンテナおよび第2のアンテナは、当該携帯端末の外面のうち互いに離間して対向する一側面および他側面にて、前記非接触通信媒体と非接触通信可能にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記第1のアンテナに前記非接触通信媒体をかざすことで選択される第1の選択事項と、前記第2のアンテナに前記非接触通信媒体をかざすことで選択される第2の選択事項とを表示可能な表示手段を備え、
前記第1の選択事項は、前記表示手段の表示面において、前記第1のアンテナに対して前記第2の選択事項よりも近くなる位置にて当該第1のアンテナが配置される位置を示すように表示され、
前記第2の選択事項は、前記表示面において、前記第2のアンテナに対して前記第1の選択事項よりも近くなる位置にて当該第2のアンテナが配置される位置を示すように表示されることを特徴とする請求項5に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記第1の選択事項および前記第2の選択事項は、前記表示手段の表示面において、前記利用者側から読めるように表示向きが変更されることを特徴とする請求項6に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記非接触通信媒体は、前記利用者が決済するための決済処理用の通信媒体であって、
前記特定手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて前記利用者により選択された決済事項を前記利用者の要求として特定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−181756(P2012−181756A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45335(P2011−45335)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】