説明

携帯通信端末およびサーバ

【課題】携帯通信端末の演算処理環境に左右されることなく様々なソフトウェアの使用を可能にする携帯通信端末および代理処理サーバを提供する。
【解決手段】携帯通信端末11が、所望のソフトウェアを選択すると、代理処理サーバ13の実行制御部42は、選択されたソフトウェアを取得し、取得したソフトウェアに付帯された実行環境情報を実行環境構築部43に渡す。実行環境構築部43は、実行環境情報に基づいて、代理処理環境上に実行環境を構築する。実行制御部42は、ソフトウェアを、構築した実行環境上で実行し、実行環境における仮想的な疑似I/F53から実行結果を取得し、取得した実行結果を携帯通信端末11に出力する。携帯通信端末11の実行制御部29は、実行結果を受信すると、受信した実行結果を、実行ソフトウェア向けに構築されたウィンドウ上に表示出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して相互に接続された携帯通信端末およびサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声通話、メール機能等の特定の機能を実装し、端末の購入後に、使用者が自分の必要とするソフトウェアを購入し実装するという携帯通信端末が現れてきている(例えば、特許文献1参照)。また、従来、携帯通信端末のOSは、携帯通信端末メーカに閉じたものであり、携帯通信端末のソフトウェアは、個々の携帯通信端末メーカが、端末の機能として端末に実装した形で供給していたが、携帯通信端末のOSに、様々なフリーのOSが使われるようになってきているため、携帯通信端末メーカ以外の開発者からもソフトウェアが供給されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−347867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯通信端末のCPU、メモリ、ハードディスクなどの演算処理環境は、コンピュータ、サーバの演算処理環境に比べると、低いものである。このため、携帯通信端末上で実行されるソフトウェアは、携帯通信端末の演算処理環境に左右され、常に快適に動作すると限らない。携帯通信端末の処理能力を超えたソフトウェアを実行すれば、演算処理速度が間に合わず、また、メモリが足らず、スワップを頻発することにより、ゆっくりとした応答になる。場合によっては、フリーズするなどの問題を有することとなる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、携帯通信端末の演算処理環境に左右されることなく様々なソフトウェアの使用を可能にする携帯通信端末および代理処理サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ネットワークを介して携帯通信端末に接続されたサーバであって、前記携帯通信端末の仮想環境と、前記仮想環境上に、ソフトウェアを実行する演算処理部を含む、ソフトウェア毎の実行環境を構築する実行環境構築部と、前記実行環境を制御する実行制御部とを備え、前記実行制御部は、前記携帯通信端末からソフトウェアの代理実行要求を受信すると、前記ソフトウェアに付帯される実行環境情報に基づいて、前記実行環境構築部に、前記仮想環境上への前記実行環境の構築を指示するとともに、前記演算処理部に対して、前記ソフトウェアの実行を指示し、前記演算処理部による前記ソフトウェアの実行結果を、前記携帯通信端末に送信することを特徴とする。
また、前記仮想環境は、携帯通信端末毎に備えることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、ネットワークを介してサーバに接続された携帯通信端末であって、表示部と、実行制御部とを備え、前記実行制御部は、前記サーバにソフトウェアの代理実行を要求し、代理実行を要求した前記ソフトウェアの実行結果を前記サーバから受信した場合に、前記表示部に、前記ソフトウェアに対応するウィンドウを生成し、前記ウィンドウに前記ソフトウェアの実行結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、代理処理サーバの代理処理環境上に、選択されたソフトウェア個々に対応した仮想的な実行環境を構築して、ソフトウェアを、構築した実行環境上で実行するため、ソフトウェアを演算処理環境に左右されることなく使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯通信端末および代理処理サーバを含む携帯通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯通信端末および代理処理サーバの構成を示す図である。
【図3】実行環境上で実行されるソフトウェアの構成の一例を示す図である。
【図4】実行環境上でソフトウェアが実行されるときの動作を説明するフローチャートである。
【図5】実行環境上で複数のソフトウェアが実行されるときの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る携帯通信端末および代理処理サーバを含む携帯通信システムの構成を示す図である。携帯通信端末11は、基地局12およびネットワーク19を介して、代理処理サーバ13と通信接続する。代理処理サーバ13は、ネットワーク19に接続して、Webサーバ14および携帯通信端末11との通信接続を可能とする。
【0011】
使用者1は、携帯通信端末11を用いて、代理処理サーバ13にてソフトウェアを実行し、実行結果を携帯通信端末11にて得る。同様に、使用者1は、携帯通信端末11を用いて、代理処理サーバ13にてソフトウェアを実行して、代理処理サーバ13から、Webサーバ14へアクセスする。Webサーバ14にてアクセスしているWebページは、代理処理サーバ13を通して、携帯通信端末11上に表示出力される。外部から入力データは、代理処理サーバ13のセキュリティ・ソフトウェアにてウィルス・チェックされる。なお、ここで、携帯通信端末11は、例えば、携帯電話機、スマートフォンなどの情報端末である。
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係る携帯通信端末および代理処理サーバの構成を示す図である。携帯通信端末11は、マイク22と、スピーカ23と、演算処理部24と、記憶部25と、送受信部26と、操作部27と、表示部28と、実行制御部29とにより構成されている。
【0013】
使用者1は、携帯通信端末11の操作部27からキー入力を行う。実行制御部29は、操作部27からのキー入力を、送受信部26を介して、代理処理サーバ13へ送信する。また、代理処理サーバ13からの出力情報は、送受信部26から実行制御部29に渡される。実行制御部29は、代理処理サーバ13からの受信情報が、ユーザ・インタフェースへの出力情報と判断すると、対応するユーザ・インタフェース(例えば、表示部28、スピーカ23)に出力する。
【0014】
代理処理サーバ13は、携帯通信端末の仮想環境40と、通信I/F(インタフェース)41と、仮想環境40上に構築された実行環境を制御する実行制御部42と、仮想環境40上にソフトウェア毎の実行環境を構築する実行環境構築部43と、ソフトウェアを保持する記憶部44とにより構成されている。代理処理サーバ13は、仮想環境40を、携帯通信端末毎に備えており、仮想環境40は、携帯通信端末11から操作するソフトウェア毎の実行環境50を備えている。各実行環境50は、ソフトウェアを実行処理する演算処理部51と、記憶部52と、携帯通信端末11における入出力I/Fに代わって対応する疑似I/F(インタフェース)53と、通信機能部54とにより構成されている。
【0015】
実行制御部42は、携帯通信端末11の実行制御部29からの送信情報を受信する。受信した送信情報が、操作部27、マイク22などのユーザ・インタフェースからの入力情報と判断されると、仮想環境40上の操作対象ソフトウェアの実行環境50の疑似I/F53に渡され、疑似I/F53からユーザ・インタフェース信号として演算処理部51に渡され、演算処理部51にて、対象ソフトウェアの操作として処理される。対象ソフトウェアの実行環境50の演算処理部51から、表示部28、スピーカ23などへの出力信号は、擬似I/F53を介して実行制御部42に渡される。実行制御部42は、出力信号を、ネットワーク19を介して、携帯通信端末11に通知する。
【0016】
携帯通信端末11からの操作信号によって、記憶部44に保持されているソフトウェアの実行が選択されると、実行制御部42は、ソフトウェアに付帯される実行環境情報を取得し、実行環境構築部43に渡す。実行環境構築部43は、実行環境情報に基づいて、携帯通信端末11の仮想環境40上に、ソフトウェア毎の実行環境50を構築する。実行制御部42は、構築した実行環境50上の演算処理部51に対して、記憶部44に保持されているソフトウェアの実行を指示して、ソフトウェアを実行環境50上にて実行する。
【0017】
図3は、実行環境50上で実行されるソフトウェアの構成の一例を示す図である。ソフトウェアは、ファイル構造が記されたヘッダー部31と、ソフトウェアの本体である実行本体部33と、ソフトウェアの本体を実行するための実行環境情報(推奨されるオペレーティング・システム、メモリ容量、演算速度など)を格納する実行環境情報部32を有している。
【0018】
図4は、携帯通信端末11からソフトウェアの実行が選択され、代理処理サーバ13の実行環境50上でソフトウェアが実行されるときの動作を説明するフローチャートである。携帯通信端末11の表示部28の画面上にブラウザを表示し(S101)、表示されたブラウザを通して、使用者1により、ソフトウェアが選択されると(S102)、実行制御部29は、ソフトウェア選択情報を代理処理サーバ13に送信する(S103)。代理処理サーバ13の実行制御部42は、ソフトウェア選択情報を受信すると(S104)、仮想環境40上に、選択されたソフトウェア向けの実行環境50の構築を実行環境構築部43に指示し、実行環境構築部43は、選択されたソフトウェアの実行環境情報に基づいて、仮想環境40上に、選択されたソフトウェアの実行環境50を構築する(S105)。実行制御部42は、演算処理部51に対して、記憶部44に保持されている選択ソフトウェアの実行を指示して、ソフトウェアを実行環境50上にて実行する(S106)。
【0019】
実行制御部42は、疑似I/F53を通してソフトウェアの実行結果を取得すると(S105)、取得した実行結果を携帯通信端末11に送信する(S106)。携帯通信端末11の実行制御部29は、実行結果を受信すると(S107)、前記ソフトウェア用のウィンドウを生成し(S108)、受信した実行結果を、実行ソフトウェア向けに構築したウィンドウ上に表示出力する(S109)。
【0020】
図5は、実行環境50上で複数のソフトウェアが実行されるときの動作を説明する図である。3つのソフトウェアA、B、Cを実行する場合、各々の実行環境情報に基づいて、仮想環境40上に個別の実行環境50a、50b、50cが構築され、ソフトウェアA、B、Cは各々の実行環境にて実行される。携帯通信端末11の実行制御部29は、各々のソフトウェアに応じて、個別のウィンドウを生成する。3つのソフトウェアの実行環境50上の各々の疑似I/F53からの出力は、実行制御部42を介して、携帯通信端末11の実行制御部29に送信され、実行制御部29は、各出力を対応するウィンドウにて表示する。また、携帯通信端末11の操作部27からの操作入力を取得すると、実行制御部29は、前記入力情報を、アクティブ状態のウィンドウ(ここでは、最前面に位置するウィンドウA)に対する入力情報と判断し、実行制御部42を介して、該当する(ここでは、ソフトウェアAの実行環境50aの)疑似I/F53に入力する。ソフトウェアA、B、Cが、各々異なるオペレーティング・システムにおいて、実行するソフトウェアであったとしても、携帯通信端末11上では、その影響を受けることなく、使用することが可能となる。
【0021】
上述したように、本発明によれば、代理処理サーバの代理処理環境上に、選択されたソフトウェア個々に対応した仮想的な実行環境を構築して、ソフトウェアを、構築した実行環境上で実行するため、ソフトウェアを演算処理環境に左右されることなく使用することが可能となる。
また、本発明によれば、操作するソフトウェア毎に独立した実行環境を備えているので、携帯通信端末の使用者は、どのオペレーティング・システム上で使用するソフトウェアなのかを気にすることなく、ソフトウェアを選択、実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 使用者
11 携帯通信端末
12 基地局
13 代理処理サーバ
14 Webサーバ
19 ネットワーク
22 マイク
23 スピーカ
24 演算処理部
25 記憶部
26 送受信部
27 操作部
28 表示部
29 実行制御部
31 ヘッダー部
32 実行環境情報部
33 実行本体部
40 仮想環境
41 通信I/F
42 実行制御部
43 実行環境構築部
44 記憶部
50 実行環境
51 演算処理部
52 記憶部
53 疑似I/F
54 通信機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して携帯通信端末に接続されたサーバであって、
前記携帯通信端末の仮想環境と、
前記仮想環境上に、ソフトウェアを実行する演算処理部を含む、ソフトウェア毎の実行環境を構築する実行環境構築部と、
前記実行環境を制御する実行制御部と、を備え、
前記実行制御部は、前記携帯通信端末からソフトウェアの代理実行要求を受信すると、前記ソフトウェアに付帯される実行環境情報に基づいて、前記実行環境構築部に、前記仮想環境上への前記実行環境の構築を指示するとともに、前記演算処理部に対して、前記ソフトウェアの実行を指示し、前記演算処理部による前記ソフトウェアの実行結果を、前記携帯通信端末に送信することを特徴とするサーバ。
【請求項2】
前記仮想環境は、携帯通信端末毎に備えることを特徴とする請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
ネットワークを介してサーバに接続された携帯通信端末であって、
表示部と、実行制御部とを備え、
前記実行制御部は、前記サーバにソフトウェアの代理実行を要求し、代理実行を要求した前記ソフトウェアの実行結果を前記サーバから受信した場合に、前記表示部に、前記ソフトウェアに対応するウィンドウを生成し、前記ウィンドウに前記ソフトウェアの実行結果を出力することを特徴とする携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−65205(P2013−65205A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203575(P2011−203575)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】