説明

携帯通信端末

【課題】製品の高コスト化を抑制しつつ、筐体の防水性を確保する。
【解決手段】携帯通信端末10は、少なくとも一部が樹脂42に被覆された金属板41と、樹脂42に被覆された金属板41の一部を露出させた状態で、金属板41を収容する表示側筐体11と、導電性を有し、表示側筐体11から露出した金属板41の一部を被覆する樹脂42に設けられた孔42aに配置された弾性部材30aと、弾性部材30aを介して、金属板41と接続された通信ユニットと、を有する。これにより、金属板41と通信ユニットとの接続が可能とされるとともに、金属板41と樹脂42との隙間44が塞がれ、表示側筐体11の内部の防水を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯通信端末は、携帯性を確保する観点から、筐体を操作側筐体と表示側筐体とに分割した2ピースのものが広く用いられている。この種の携帯通信端末では、表示側筐体にアンテナ素子として用いられる金属板が配置される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−50056号公報
【特許文献2】特開2005−50324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示側筐体に収容される金属板は、操作側筐体に収容される電気ユニットと電気的に接続される。このため、金属板の一部は、表示側筐体から露出していることが好ましい。しかしながら、金属板の一部を筐体から露出させると、金属板と筐体との隙間、或いは金属板と当該金属板をコーティングする樹脂との隙間を介して、表示側筐体の内部に水が進入することが予想される。
【0005】
この対策として、金属板の表面に、熱硬化型の接着膜を貼り付けて、上述の隙間を塞ぐことが考えられる。しかし、この場合、コストが高くなるとともに、歩留まりが悪くなる。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、製品の高コスト化を抑制しつつ、筐体の防水性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の携帯通信端末は、
少なくとも一部が樹脂に被覆された導電体と、
前記樹脂に被覆された前記導電体の一部を露出させた状態で、前記導電体を収容する第1筐体と、
導電性を有し、前記第1筐体から露出した前記導電体の一部を被覆する樹脂に形成された孔に配置された弾性部材と、
前記弾性部材を介して、前記導電体と接続された通信ユニットと、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性部材により、導電体と外部機器との接続が可能とされるとともに、樹脂と導電体との隙間が塞がれる。これにより、導電体を筐体の外部へ引き出しつつ、筐体内部の防水を確保することができる。また、樹脂と導体との間に防水処理を行う必要がない。このため、製品の高コスト化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る携帯電話機の展開した状態の斜視図である。
【図2】携帯電話機の分解斜視図である。
【図3】(A)は、金属板を示す斜視図であり、(B)は、金属板の突出部の断面図である。
【図4】弾性部材を示す斜視図である。
【図5】表示側筐体の回動を説明するための斜視図である。
【図6】携帯電話機のA−A断面を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る携帯電話機の展開した状態の斜視図である。
【図8】携帯電話機のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《実施形態1》
以下、本発明の実施形態1について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態1に係る携帯電話機10の展開した状態の斜視図である。この携帯電話機10は、携帯時等には、閉じた状態(閉状態)とし、通話時等には、展開した状態(開状態)とすることが可能な折り畳み式携帯電話機である。携帯電話機10は、表示側筐体11と、操作側筐体12と、表示側筐体11と操作側筐体12とを接続するヒンジ20と、ヒンジ20の一部を覆うカバー34と、を有している。
【0012】
図2は、携帯電話機10の分解斜視図である。図2に示すように、表示側筐体11は、直方体板状のケースである。表示側筐体11の内部には、液晶パネル13等から構成される液晶ユニットや、金属板41と樹脂42とから構成される板部材40等が収容されている。板部材40の−Y側の端部は、表示側筐体11から露出している。液晶パネル13は、表示側筐体11の+Z側から視認可能となっており、画像、図形、文字、記号などの情報を表示する。
【0013】
図3(A)は、金属板41を示す斜視図である。金属板41の素材は、例えば、ステンレス鋼である。図3(A)に示すように、金属板41の−Y側には、−Y側に突出した突出部41a,41bが形成されている。図3(B)は、金属板41の突出部41aの断面図である。図3(B)に示すように、突出部41aは、樹脂42により被覆されている。樹脂42には、弾性部材30aを圧入するための開口42aが形成されている。開口42aの形状は、円形である。そして突出部41aは、開口42aを介して、樹脂42から露出する。
【0014】
同様に、突出部41bは、樹脂42により被覆されている。樹脂42には、弾性部材30bを圧入するための開口42bが形成されている。開口42bの形状は、円形である。そして突出部41bは、開口42bを介して、樹脂42から露出する。
【0015】
図2に示すように、表示側筐体11の−Y側の端部には、表示側筐体11の内部に収容された液晶ユニットと電気的に接続されているコネクタ14と、ねじ穴15a,15bと、が形成されている。
【0016】
操作側筐体12は、表示側筐体11とほぼ同形状の直方体板状のケースである。操作側筐体12の+Y側の端部には、+Y方向に突出したヒンジ部18が形成されている。ヒンジ部18には、X軸方向に貫通する孔が形成されている。操作側筐体12は、+Z側の表面に複数の操作キー17が配置されている。そして、内部には、例えば、操作キー17からの入力を検知するための回路や液晶ユニットを制御するための電子ユニットと、商用の携帯通信網からの信号の入力及び商用の携帯通信網への信号の出力を行うための通信ユニットとが収容されている。
【0017】
ヒンジ20は、表示側筐体11と操作側筐体12とを接続する部材である。ヒンジ20は、ヒンジ本体21と、ヒンジ本体21の+Y側に形成されたヒンジプレート22と、ヒンジ本体21の−Y側に形成されたヒンジ筒23と、を有する。
【0018】
ヒンジプレート22は、ヒンジ本体21に対して、Y軸に平行な軸回りに回動可能に形成されている。ヒンジプレート22は、導電性を有する材料からなる。また、ヒンジプレート22の中央には、コネクタ24が形成され、ヒンジプレート22の両端には、開口25a,25bが形成されている。
【0019】
ヒンジ筒23は、ヒンジ本体21と一体に形成されている。ヒンジ筒23には、X軸方向に貫通する孔が形成されている。
【0020】
ヒンジ20の内部には、図示しないケーブルが配置されている。ケーブルは、例えば、1つに束ねられた複数本の同軸ケーブルが、防水チューブ等により被覆されたものである。同軸ケーブルの一端は、コネクタ24やヒンジプレート22と電気的に接続されている。そして、同軸ケーブルの他端は、ヒンジ筒23に形成された孔から引き出されている。
【0021】
図4に示すように、弾性部材30aは、円盤状の部材である。弾性部材30aは、導電性を有する素材からなる。素材としては、例えば、導電性シリコーンゴムである。弾性部材30aは、上下方向に突出する端部31,32と、径方向に突出するフランジ部33と、を有する。弾性部材30bの形状及び素材も、弾性部材30aの形状及び素材と同等である。
【0022】
上述の表示側筐体11と操作側筐体12とは、以下のように一体化される。図2を参照するとわかるように、まず、樹脂42に形成された開口42a,42bに、弾性部材30a,30bを圧入する。次に、同軸ケーブルの端部を、操作側筐体12の内部に収容された電子ユニット及び無線通信ユニットに接続する。次に、ヒンジ20のコネクタ24を、表示側筐体11のコネクタ14に接続する。これにより、表示側筐体11の内部に配置された液晶ユニットと、操作側筐体12の内部に配置された電子ユニットとは、同軸ケーブルによって、電気的に接続される。
【0023】
次に、ねじ35a,35bを、ヒンジプレート22の、開口25a,25bを介して、ねじ穴15a,15bに挿入して、締める。これにより、ヒンジ20は、表示側筐体11に固定される。次に、カバー34を、ヒンジプレート22を覆うように、ヒンジ20に固定する。
【0024】
最後に、図示しない軸部材を、−X側及び+X側から、ヒンジ部18の孔を介して、ヒンジ筒23の孔に挿入する。これにより、ヒンジ20と操作側筐体12とが、回動可能に接続される。
【0025】
上述のように構成された携帯電話機10は、図1を参照するとわかるように、X軸に平行な軸回りに、閉状態から開状態にすることができる。さらに、図5に示すように、開状態時においては、Y軸に平行な軸回りに、表示側筐体11を回動することができる。
【0026】
図6は、図1における携帯電話機10のA−A断面を示す斜視図である。図6に示すように、弾性部材30aが径方向に圧縮されることにより、弾性部材30aのフランジ部33は、開口42aの内壁と弾性接触する。また、弾性部材30aがZ軸方向に圧縮されることにより、弾性部材30aを介して、金属板41とヒンジプレート22とは電気的に接続される。
【0027】
同様に、弾性部材30bが径方向に圧縮されることにより、弾性部材30bのフランジ部33は、開口42bの内壁と弾性接触する。また、弾性部材30bがZ軸方向に圧縮されることにより、弾性部材30bを介して、金属板41とヒンジプレート22とは電気的に接続される。したがって、金属板41は、弾性部材30a,30b、ヒンジプレート22、及び同軸ケーブルを介して、通信ユニットと電気的に接続される。金属板41は、アンテナ素子として用いられる
【0028】
また、表示側筐体11の−Y側の端部とカバー34の−Y側の端部との間には、隙間50が形成されている。また樹脂42の−Y側の端部とヒンジプレート22の−Y側の端部との間には、隙間51が形成されている。このため、開口42a,42bは、隙間50,51を介して、外部と通じている。
【0029】
以上、説明したように、本実施形態1に係る携帯電話機10によれば、弾性部材30a,30bにより、金属板41と通信ユニットとの接続が可能とされるとともに、金属板41と樹脂42との隙間44が塞がれる。これにより、金属板41を表示側筐体11から露出させつつ、表示側筐体11の内部の防水を確保することができる。具体的には、隙間50,51を通った水は、開口42a,42bに進入するが、弾性部材30a,30bにより、金属板41と樹脂42との隙間44には進入することができない。このため、金属板41と樹脂42との間に防水処理を行う必要がなく、製品の高コスト化が抑制される。
【0030】
《実施形態2》
次に、本発明の実施形態2を、図7及び図8を参照しながら説明する。なお、実施形態1と同一又は同等の構成については、同一の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0031】
図7は、本発明の実施形態2に係る携帯電話機110の斜視図である。図7に示すように、この携帯電話機110は、表示側筐体111と操作側筐体112とが重なる閉状態から、表示側筐体111をスライドさせることによって、操作キー17が露出した開状態になるスライド式の携帯電話機である。
【0032】
図8は、図7における携帯電話機110のB−B断面図である。表示側筐体111の内部には、液晶パネル13等から構成される液晶ユニットと、金属板41(図3(A)参照)と、が収容されている。金属板41は、表示側筐体111に形成された開口111aから露出している。この開口111aには、弾性部材30aが圧入されている。
【0033】
表示側筐体111と操作側筐体112との接続部分には、隙間150が形成されている。また表示側筐体111と導電性材料からなるプレート122との間には、隙間151が形成されている。これにより、開口111aは、隙間150,151を介して、外部と通じている。
【0034】
なお、プレート122は、同軸ケーブルを介して、操作側筐体112の内部に配置された通信ユニットと電気的に接続されている。これにより、金属板41は、弾性部材30a、プレート122、及び同軸ケーブルを介して、通信ユニットと電気的に接続される。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態2に係る携帯電話機110によれば、本実施形態1に係る携帯電話機10と同様に、弾性部材30aにより、金属板41と通信ユニットとの接続が可能とされるとともに、金属板41と表示側筐体111との隙間44が塞がれる。これにより、金属板41を表示側筐体111から露出させつつ、表示側筐体111の内部の防水を確保することができる。具体的には、隙間150,151を通った水は、開口111aに進入するが、弾性部材30aにより、金属板41と表示側筐体111との隙間44には進入することができない。このため、金属板41と表示側筐体111との間に防水処理を行う必要がなく、製品の高コスト化が抑制される。
【0036】
以上、実施形態1及び実施形態2について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、上記各実施形態においては、樹脂42は、表示側筐体11,111に収容されている。これに限らず、表示側筐体11,111と一体に形成されていてもよい。
【0038】
また、上記各実施形態においては、弾性部材30a,30bの素材は、導電性を有するシリコーンゴムであるが、これに限らず、導電性を有する他の弾性素材であってもよい。
【0039】
また、上記各実施形態においては、開口42a,42b,111aに、弾性部材30a,30bを圧入している。これに限らず、液状の樹脂を充填し、硬化させてもよい。
【0040】
また、上記各実施形態においては、携帯電話機10,110は、弾性部材を二つ又は一つ備えているが、これに限らず、三つ以上備えていてもよい。
【0041】
また、上記各実施形態においては、金属板41の素材は、ステンレス鋼であるが、これに限らず、導電性を有する他の素材であってもよい。
【0042】
また、上記各実施形態においては、携帯電話機10,110は、それぞれ折り畳み式の携帯電話機、スライド式の携帯電話機であるが、これに限らず、リボルバー式等の携帯電話機であってもよい。
【0043】
また、上記各実施形態では、表示側筐体11,111の内部に収容されている液晶ユニットと、操作側筐体12,112の内部に収容されている電子ユニットとの接続に同軸ケーブルを用いている。これに限らず、フレキシブルプリント基板を用いてもよい。
【0044】
本発明は、上記各実施形態で説明した携帯電話機に限らず、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handy-phone System)、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書、電子ゲーム機などの携帯通信端末、及びその他の情報処理装置においても適用することができる。
【0045】
また、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の携帯通信端末は、折り畳み式携帯電話機又はスライド式携帯電話機に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0047】
10,110…携帯電話機、11,111…表示側筐体、12,112…操作側筐体、13…液晶パネル、14…コネクタ、15a,15b…ねじ穴、17…操作キー、18…ヒンジ部、20…ヒンジ、21…ヒンジ本体、22…ヒンジプレート、23…ヒンジ筒、24…コネクタ、25a,25b…開口、30a,30b…弾性部材、31…端部、32…端部、33…フランジ部、34…カバー、35a,35b…ねじ、40…板部材、41…金属板、41a,41b…突出部、42…樹脂、42a,42b,111a…開口、43…パッキン、44…隙間、50,51,150,151…隙間、122…プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が樹脂に被覆された導電体と、
前記樹脂に被覆された前記導電体の一部を露出させた状態で、前記導電体を収容する第1筐体と、
導電性を有し、前記第1筐体から露出した前記導電体の一部を被覆する樹脂に形成された孔に配置された弾性部材と、
前記弾性部材を介して、前記導電体と接続された通信ユニットと、
を有する携帯通信端末。
【請求項2】
前記通信ユニットを収容する第2筐体を備える請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記第2筐体は、前記第1筐体に対して回動可能に設けられている請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記第2筐体は、前記第1筐体に対してスライド可能に設けられている請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記弾性部材は、導電性を有するシリコーンゴムである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の携帯通信端末。
【請求項6】
前記樹脂は、前記第1筐体を構成する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−234060(P2011−234060A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101536(P2010−101536)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】