説明

携帯電子機器および防水装置

【課題】携帯電子機器のキー部分を薄型化が可能で十分な防水性能を得ることができるようにする。
【解決手段】筐体10の側壁11に形成された開口部12と内部に設置されたスイッチ19との間に防水装置収納部13が形成され、その防水装置収納部13に防水装置15が装着される。防水装置15は、キートップ16の押子17が挿入される浅いカップ形状の有底円筒部15aと、有底円筒部15aの開口縁部の周囲に形成されたフランジ部15bと、このフランジ部15bの両面に有底円筒部15aを囲うように突設された止水リブ15cとが弾性を有する材料によって一体に形成されている。フランジ部15bには、板材15dが埋設され、防水装置収納部13に防水装置15を押し込んだときに止水リブ15cの弾性変形を支持し、その復元力で止水リブ15cを防水装置収納部13の内壁に密着させ、確実に止水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、携帯電子機器および防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器などでは、その入力装置として外部に露出するよう配置されたキートップと筐体内部に収納されているスイッチとの間を防水構造にしたものが知られている(たとえば、特許文献1,2参照)。防水構造は、筐体のキートップが設置される位置に形成された開口部を水密状態にするようにキートップとスイッチとの間に防水性を有する変形自在な材質の防水装置を配置し、キートップの押圧動作をその防水装置を介してスイッチに伝達するようにしている。
【0003】
防水装置は、たとえば外周にリブが形成された有底円筒部を有し、その有底円筒部を開口部に挿入したときに、リブが開口部の内壁に押し付けられることによりリブが圧縮変形して防水効果を発揮することになる。この構造では、キー操作により、キートップから同軸方向に延出された押子が有底円筒部の底部を押すと、その底部が弾性変形してスイッチを押圧することでスイッチが閉成され、押子による押圧が解除されると、変形された底部が復元してスイッチが開成される。
【0004】
また、別の防水装置では、外周部が筐体の開口部の中に内設されたフランジと全周にわたって嵌合されることにより開口部を閉鎖するようにし、中央部がキートップの押圧動作をスイッチに伝達する押子を成している。この構造では、キートップが押下されると、押子と外周部との間の連結部が弾性変形して押子がスイッチを押圧することによりスイッチが閉成され、押子による押圧が解除されると、変形された連結部が復元してスイッチが開成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−344528号公報
【特許文献2】特開2009−54380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外周にリブが形成された有底円筒部を有する防水装置では、筐体に設けた開口部へ押し込んだときにリブだけが圧縮変形して止水を保持するようにするために中空の有底円筒部内に有底円筒部の変形防止のための硬質のスリーブが設けられている。有底円筒部は、そのスリーブが設けられている部分よりも底部側に、押子が底部を押したときに弾性変形する伸長部が確保されていて、キー押下時においてキーの良好な押し感が得られるようにしている。また、筐体側においても、開口部は、そのような有底円筒部が押し込まれるだけの挿入代が形成されている。上記の伸長部および挿入代の存在のため、有底円筒部を有する防水装置が適用された携帯電子機器は、キートップの押下方向における薄型化を阻む要因になっているという問題点があった。
【0007】
また、外周部に嵌合部を有する防水装置では、止水部分が単なる嵌合構造であって、嵌合部分に筐体のフランジに対し強制的に密着させる構造にはなっていないことから、十分な水密状態を維持することは難しいという問題点があった。
【0008】
そこで本件は、キー部分の薄型化が可能で十分な防水性能を得ることができる携帯電子機器および防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、キー部分に防水機能を有する携帯電子機器が提供される。この携帯電子機器は、内部に設置されたスイッチと筐体に形成された開口部との間に設けられて前記スイッチに対応する前記開口部と同軸の位置に連通孔を有する防水装置収納部と、前記連通孔を塞ぐように前記防水装置収納部の中に装着される防水装置と、を備え、前記防水装置は、前記連通孔に挿入される形状に形成されて中に前記開口部を介して延出されたキートップの押子が挿入される有底円筒部と、前記有底円筒部の開口縁部の周囲に形成されたフランジ部と、前記有底円筒部を囲うように前記フランジ部の面に突設された止水リブとを有している。
【発明の効果】
【0010】
開示の携帯電子機器および防水装置によれば、キー部分の薄型化が可能で十分な防水性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】携帯電子機器の外観例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水キー構造を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置をキートップ側から見た斜視図である。
【図4】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置をスイッチ側から見た斜視図である。
【図5】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置の装着前の状態を示す説明図である。
【図7】第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置の装着後の状態を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係る携帯電子機器の防水キー構造を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を組み合わせて実施することができる。
図1は携帯電子機器の外観例を示す図である。
【0013】
携帯電子機器には、入力装置として多くのキーが設けられている。たとえば図示の折りたたみ式の携帯電話機は、表示部1と操作部2とがヒンジ部3によって連結されており、各種のキーは、折りたたんだときに表示部1に対向する操作部2の面に配置されている。また、操作部2は、その側面にも、使用頻度の低いまたは特殊用途のキー4が設けられている。以下では、この操作部2の側面に設けられたキー4に関する防水キー構造について説明する。
【0014】
図2は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水キー構造を示す断面図である。図3は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置をキートップ側から見た斜視図、図4は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置をスイッチ側から見た斜視図、図5は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置を示す断面図である。図6は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置の装着前の状態を示す説明図、図7は第1の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置の装着後の状態を示す説明図である。
【0015】
携帯電話機の操作部2は、図2に示したように、操作部背面側の筐体10の周囲の側面に側壁11が立設されていて、その側壁11には、開口部12が形成されている。開口部12の奥側には、これに隣接して防水装置収納部13が形成されている。この防水装置収納部13は、図の上方に、開口部12の軸に直交する方向に細長く開口したスリット状の入口13aを有し、この入口13aより連続して開口部12の軸に直交する方向に凹設されたポケット形状を有している。防水装置収納部13は、また、開口部12と同軸上に、筐体10の内部へ連通する連通孔14が形成されている。この防水装置収納部13には、防水装置15が挿入されて、開口部12を遮るように配置される。開口部12は、その軸線方向に進退自在にキートップ16の押子17が配置され、防水装置収納部13よりも内部には、プリント基板18に実装されたスイッチ19が防水装置収納部13に隣接して開口部12と同軸上に配置されている。なお、キートップ16は、鍔部16aを有していて、図示の筐体10に図示しない操作部正面側の筐体が組み合わされたときに、その操作部正面側の筐体に鍔部16aが係止されることによって、脱落が防止されるようになっている。
【0016】
防水装置15は、図3ないし図5に示したように、底の浅いカップ形状をした有底円筒部15aと、その開口縁部に形成された方形のフランジ部15bと、そのフランジ部15bの両面に有底円筒部15aを囲うように突設された止水リブ15cとを有している。有底円筒部15a、フランジ部15bおよび止水リブ15cは、天然ゴム、シリコーンゴムなどの弾性を有する材料によって一体に形成されている。
【0017】
防水装置15は、好ましくは、フランジ部15bの中に、フランジ部15bの材料よりも硬質の金属または樹脂を含む板材15dが埋設されている。この板材15dは、四角形の板の中央に有底円筒部15aの外径に近い直径の孔が穿設された形状を有し、インサート成形または二色成形によって有底円筒部15a、フランジ部15bおよび止水リブ15cと一体に形成される。弾性を有するフランジ部15bにフランジ部15bよりも硬質の板材15dを埋設することで、弾性を有するフランジ部15bに剛性を付与することができる。そのため、防水装置15の防水装置収納部13への装着が容易になるだけでなく、防水装置収納部13の中で止水リブ15cが圧縮変形されるときにフランジ部15bの内部から支持できるようになる。
【0018】
防水装置15を防水装置収納部13へ装着するときは、図6に示したように、有底円筒部15aを連通孔14のある側に向けて入口13aから防水装置収納部13へ挿入する。このとき、開口部12の軸方向の入口13aの幅は、図2に示したように、フランジ部15bの厚さよりも大きく、その両面に設けた止水リブ15cの頂点間の距離よりも小さな寸法に形成されている。このため、防水装置15は、止水リブ15cを押し潰しながら防水装置収納部13に押し込まれることになる。また、フランジ部15bより突出されている有底円筒部15aは、これをフランジ部15bの厚さに近いところまで押し潰しながら防水装置15を防水装置収納部13に押し込んでいく。防水装置15が所定位置まで押し込まれると、そこで有底円筒部15aは、図2および図7に示したように、復元して連通孔14に挿入された状態になる。
【0019】
この防水キー構造によれば、キートップ16が押下されると、防水装置15の有底円筒部15aの中まで延在している押子17が有底円筒部15aの底部を押すことになる。これにより、有底円筒部15aの底部が弾性変形してスイッチ19を押圧し、スイッチ19を閉成させる。キートップ16が押下されなくなると、有底円筒部15aの底部が弾性変形から復元してスイッチ19から離れるので、スイッチ19は開成される。同時に、有底円筒部15aの底部は、押子17を押し戻すので、キートップ16は、その初期位置まで戻されることになる。
【0020】
以上のように、側壁11に設けた開口部12のその軸線方向内側に、その軸線に対して直交する方向に防水装置15を挿入できるポケット形状の防水装置収納部13を配置している。これにより、操作部2の操作部背面側の筐体10に対して上から防水装置15を防水装置収納部13に挿入することにより容易に防水装置15を装着することができる。また、止水リブ15cを押し潰しながら防水装置15を防水装置収納部13に押し込むので、防水装置15を防水装置収納部13に装着した段階で、止水リブ15cは、その復元力により、防水装置収納部13の平行平面の内壁に密着するようになる。開口部12に隣接する側の防水装置収納部13の内壁が開口部12を囲うように止水リブ15cによって止水されることにより、側壁11の開口部12に入った水は、操作部2の内部への浸入が確実に防止される。
【0021】
防水装置15は、止水リブ15cをフランジ部15bに設けたことによって、有底円筒部15aの全体を、押子17により押されたときの伸長部とすることができるので、有底円筒部15aは、キー押下方向の寸法が伸長部に要求される長さで足りることになる。その結果、防水装置15は、有底円筒部15aを含めた有底円筒部15aの膨出方向の寸法を小さくすることができるので、キー部分におけるキー押下方向の薄型化が可能となり、操作部2の内部空間を広くすることが可能となる。
【0022】
防水装置15は、有底円筒部15aが硬質のスリーブによる補強をしていない。それでも、有底円筒部15aは、その膨出方向の寸法が短いために、有底円筒部15aが内側に変形してキートップ16の押子17が入る穴が大きく狭められてしまうことがなく、そのために中に配置された押子17を挟み込んでしまうこともない。
【0023】
図8は第2の実施の形態に係る携帯電子機器の防水キー構造を示す断面図、図9は第2の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置を示す断面図である。なお、この図8および図9において、図2および図5に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0024】
この第2の実施の形態に係る携帯電子機器の防水装置15は、止水リブ15cを有底円筒部15aの開口側のフランジ部15bの面にのみ設けている。この防水装置15も、防水装置収納部13への装着方法は、第1の実施の形態のものと同じであり、有底円筒部15aをフランジ部15bの厚さ近くまで押し潰した状態で、止水リブ15cを押し潰しながら防水装置15を防水装置収納部13に押し込んでいく。防水装置15が所定位置まで押し込まれると、そこで有底円筒部15aは、復元して図8に示したように連通孔14に挿入された状態になる。
【0025】
この防水キー構造においても、キートップ16が押下されると、その押子17が有底円筒部15aの底部を押して弾性変形させ、これがスイッチ19を押圧してスイッチ19を閉成させる。キートップ16が押下されなくなると、有底円筒部15aの底部が弾性変形から復元してスイッチ19から離間される。これにより、スイッチ19が開成され、復元した有底円筒部15aの底部が押子17をその初期位置まで戻す。
【0026】
なお、第1および第2の実施の形態に係る防水装置15は、開口部12の側のフランジ部15bの面に一条の止水リブ15cを備えているが、そのような止水リブ15cを同心円状に複数配置するようにしてもよい。また、防水装置15は、フランジ部15bを方形の形状に形成したが、これに限定されることなく、円形のような他の形状でもよい。さらに、上記の携帯電子機器の防水キー構造を携帯電話機の操作部2の側面に設けられたキー4の部分に適用した場合について説明したが、操作部2のテンキーなどが設けられている面に設置されたキーの部分においても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
2 操作部
4 キー
10 筐体
11 側壁
12 開口部
13 防水装置収納部
13a 入口
14 連通孔
15 防水装置
15a 有底円筒部
15b フランジ部
15c 止水リブ
15d 板材
16 キートップ
17 押子
19 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電子機器において、
内部に設置されたスイッチと筐体に形成された開口部との間に設けられて前記スイッチに対応する前記開口部と同軸の位置に連通孔を有する防水装置収納部と、
前記連通孔を塞ぐように前記防水装置収納部の中に装着される防水装置と、
を備え、
前記防水装置は、前記連通孔に挿入される形状に形成されて中に前記開口部を介して延出されたキートップの押子が挿入される有底円筒部と、前記有底円筒部の開口縁部の周囲に形成されたフランジ部と、前記有底円筒部を囲うように前記フランジ部の面に突設された止水リブとを有していることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記防水装置は、前記フランジ部の両面に前記止水リブが形成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記防水装置は、前記有底円筒部が開口している側の前記フランジ部の面に前記止水リブが形成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記防水装置収納部は、前記開口部の軸に直交する方向に入口を有し、前記入口より前記開口部の軸に直交する方向に凹設されたポケット形状を有していることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記防水装置収納部の前記入口は、前記開口部の軸方向の幅が前記フランジ部の厚さと前記フランジ部の面に突設した前記止水リブの頂点を含む前記フランジ部の厚さ方向両端の距離との間の寸法に形成されていることを特徴とする請求項4記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記防水装置は、前記フランジ部に前記防水装置の材料よりも硬質の板材が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項7】
携帯電子機器の防水装置において、
中にキートップの押子が挿入される有底円筒部と、
この前記有底円筒部の開口縁部の周囲に形成されたフランジ部と、
前記有底円筒部を囲うように前記フランジ部の面に形成された止水リブと、
を有していることを特徴とする防水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45600(P2013−45600A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182088(P2011−182088)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(310022372)富士通モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】