説明

携帯電子機器

【課題】人為的な作用による加速度が携帯電子機器に加わっているのか、若しくは現状における携帯電子機器の傾斜角度が単に大きいのだけなのかを判別し、人為的な作用による加速度が加わっている場合には、この加速度を除去し、正確な傾斜角度を検出する携帯電子機器を提供する。
【解決手段】ドライバIC46は加速度センサ45により検出された検出値を所定の間隔で所定の個数取得し、CPU49は取得される所定の個数の検出値のうち、最先の検出値に基づいて所定のレンジを設定し、所定間隔で取得される所定の個数の検出値のうち、最先の検出値以降の検出値が所定のレンジに収まるか否かを判定し、所定のレンジに収まると判定された場合には、所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を加速度センサ45の出力値として決定し、所定のレンジに収まらないと判定された場合には、所定の値を加速度センサ45の出力値として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサを内蔵した携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサを搭載した携帯端末において、加速度センサにより検出される加速度値から着信時の携帯端末の傾斜を算出し、算出した携帯端末の傾斜角度を用いて所定の態様でLEDを点灯する等の特定の動作をさせる技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、携帯端末がマナーモード等のバイブレーションモータが作動するように設定されている場合、着信時に加速度センサにより加速度値を取得する際に、加速度センサがバイブレーションモータの振動を検出してしまうため、携帯端末本体の正確な加速度値を得ることができない。
【0004】
上記の課題を解決するため、携帯端末の加速度値を識別する前に、意図的に静止状態を一定時間作ることにより、振動等のない状態を確認してから携帯端末に特定の動きを与えることで、意図しない振動等による誤動作を防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−139537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された技術では、バイブレーションモータの振動や人為的な作用による加速度が携帯端末に加わっているのか、若しくは現状における携帯端末の傾斜角度が単に大きいのだけなのかを判別することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、バイブレーションモータの振動や人為的な作用による加速度が携帯電子機器に加わっているのか、若しくは現状における携帯電子機器の傾斜角度が単に大きいのだけなのかを判別し、人為的な作用による加速度が加わっている場合には、この加速度を除去し、正確な傾斜角度を検出することができる携帯電子機器を提供することが目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯電子機器は、上記課題を解決するために、加速度センサにより検出された検出値を所定の間隔で所定の個数取得する取得手段と、前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最先の検出値に基づいて所定のレンジを設定する設定手段と、前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まるか否かを判定する判定手段と、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まると判定された場合には、前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を前記加速度センサの出力値として決定し、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定された場合には、所定の値を前記加速度センサの出力値として決定する決定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記携帯電子機器では、前記決定手段は、前記所定の値として、前記決定手段により前記加速度センサの出力値として前回決定されていた値又は任意の値を前記加速度センサの出力値として決定することが好ましい。
【0009】
また、前記携帯電子機器では、前記取得手段は、前記所定の個数として、少なくとも前記所定の間隔で3個以上の検出値を取得することが好ましい。
【0010】
また、前記携帯電子機器では、前記取得手段は、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定された場合、検出値の取得を終了し、新たに前記所定の間隔で前記所定の個数の検出値の取得を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記携帯電子機器では、前記取得手段は、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらない状態が2回発生したと判定された場合、検出値の取得を終了し、新たに前記所定の間隔で前記所定の個数の検出値の取得を行うことが好ましい。
【0012】
また、前記携帯電子機器では、前記取得手段は、互いに直交する2軸又は3軸方向における加速度を検出する前記加速度センサにより検出される検出値を取得し、前記設定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のそれぞれの軸で取得される前記所定の個数の検出値のうち、前記それぞれの軸における最先の検出値に基づいて前記それぞれの軸における所定のレンジを設定し、前記判定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のそれぞれの軸で取得される前記所定の個数の検出値のうち、前記それぞれの軸における最先の検出値以降の検出値が前記それぞれの軸における所定のレンジに収まるか否かを判定し、前記決定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のいずれかの軸で取得された前記最先の検出値以降の検出値が前記それぞれの軸における所定のレンジに収まらないと判定された場合には、それぞれの軸における所定の値を前記加速度センサの出力値として決定することが好ましい。
【0013】
本発明に係る携帯電子機器は、上記課題を解決するために、バイブレータを備えた携帯電子機器において、加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサによる検出値に基づいて所定の処理を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記バイブレータが所定の動作を行うとき、前記加速度センサによる検出値を所定の間隔で所定の個数取得し、前記所定の間隔で前記所定の個数取得した検出値のうち、最先の検出値に基づいて所定のレンジを設定し、前記所定の間隔で前記所定の個数取得した検出値のうち、最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まるか否かを判定し、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まると判定した場合には、前記所定の間隔で取得した前記所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を出力値として決定し、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定した場合には、所定の値を出力値として決定し、決定した前記出力値に基づいて前記所定の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バイブレーションモータの振動や人為的な作用による加速度が携帯電子機器に加わっているのか、若しくは現状における携帯電子機器の傾斜角度が単に大きいのだけなのかを判別し、人為的な作用による加速度が加わっている場合には、この加速度を除去し、正確な傾斜角度を検出する携帯電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る携帯電子機器の一例である携帯電話機1の外観斜視図を示す。なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0016】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0017】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display)表示部21と、通話の相手側の音声を出力するスピーカ22と、を備えて構成されている。
【0018】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折り畳み状態)にしたりできる。
【0019】
また、図2は、携帯電話機1の機能を示すブロック図である。携帯電話機1は、操作部11と、マイク12と、メインアンテナ40と、RF(Radio Frequency)回路部41と、LCD制御部42と、音声処理部43と、メモリ44と、加速度センサ45と、加速度センサ45を駆動するドライバIC46(取得手段)と、LED(Light Emitting Diode)47と、電源制御回路部48と、CPU49(設定手段、判定手段、決定手段)と、バイブレーションモータ50と、充電池51とが操作部側筐体2に備えられ、LCD表示部21と、スピーカ22と、ドライバIC23とが表示部側筐体3に備えられている。
【0020】
なお、本実施形態では、傾斜センサとして加速度センサ45を利用し、携帯電話機1の傾斜角度を算出する。
【0021】
メインアンテナ40は、所定の使用周波数帯(例えば、800MHz)で外部装置と通信を行う。なお、本実施形態では、所定の使用周波数帯として、800MHzとしたが、これ以外の周波数帯であってもよい。また、メインアンテナ40は、所定の使用周波数帯の他に、他の使用周波数帯(例えば、2GHz)に対応できる、いわゆるデュアルバンド対応型による構成であってもよい。
【0022】
RF回路部41は、メインアンテナ40によって受信した信号を復調処理し、処理後の信号をCPU49に供給し、また、CPU49から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ40を介して外部装置(基地局)に送信する。また、その一方で、メインアンテナ40によって受信している信号の強度をCPU49に通知を行う。
【0023】
LCD制御部42は、CPU49の制御にしたがって、所定の画像処理を行い、処理後の画像データをドライバIC23に出力する。ドライバIC23は、LCD制御部42から供給された画像データをフレームメモリに蓄え、所定のタイミングでLCD表示部21に出力する。
【0024】
音声処理部43は、CPU49の制御にしたがって、RF回路部41から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をスピーカ22に出力する。スピーカ22は、音声処理部43から供給された信号を外部に出力する。
【0025】
また、音声処理部43は、CPU49の制御にしたがって、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号をRF回路部41に出力する。RF回路部41は、音声処理部43から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ40に出力する。
【0026】
メモリ44は、例えば、ワーキングメモリを含み、CPU49による演算処理に利用される。具体的には、後述する加速度センサ45により検出される検出値や所定のレンジ等を記憶することができる。なお、メモリ44は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0027】
加速度センサ45は、携帯電話機1に与えられた加速度を検出し、検出結果をCPU49に出力する。この加速度センサ45は、傾斜検出手段の一例である。
【0028】
加速度センサ45は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出する3軸(3次元)タイプであって、外部から加わった力(F)と質量(m)に基づいて、加速度(a)を測定する(加速度(a)=力(F)/質量(m))。
【0029】
また、加速度センサ45は、例えば、圧電素子によって所定の質量に加わる力を計測して軸ごとの加速度を求め、数値データ化してバッファリングする。そして、CPU49は、周期的にバッファリングされた加速度データを読み出す。なお、加速度センサ45は、圧電素子(圧電式)に限らず、ピエゾ抵抗型、静電容量型、熱検知型等によるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式や、可動コイルを動かしてフィードバック電流によってもとに戻すサーボ式や、加速度によって生じる歪を歪ゲージによって測定する歪ゲージ式等により構成されてもよい。
【0030】
ドライバIC46は、加速度センサ45を駆動する。また、所定の間隔で加速度センサ45が検出する検出値を取得し、取得した検出値をCPU49に供給する。
【0031】
LED47は、電源制御回路部48から供給される電圧に基づいて発光するように構成されている。
【0032】
電源制御回路部48は、充電池51が接続されており、充電池51から供給される電源電圧を所定の電源電圧に変換し、変換後の電源電圧をLED47等に供給する。なお、電源制御回路部48は、他の電子部品や機能ブロック等にも電源供給することは勿論のことである。
【0033】
CPU49は、携帯電話機1の全体を制御しており、特に、RF回路部41、LCD制御部42、音声処理部43及びカメラ(図示せず)に対して所定の制御を行う。また、CPU49は、先に述べたメインアンテナ40による電波状態や充電池51の残量、不在着信及び未読メールの有無等の内部状態を監視しており、この結果に基づいて、LED47の発光色を変更したり、LCD表示部21の表示内容を変更したりする制御も行う。
【0034】
また、通信手段としてのRF回路部41により、自装置に対する呼出信号が検出されると、LCD表示部21とLED47とバイブレーションモータ50とスピーカ22とを駆動して、着信を報知する。なお、この着信に対して操作部11による応答操作が生じると、RF回路部41を通信、通話に移行させる。
【0035】
ここで、加速度センサ45とCPU49の動作について説明する。
【0036】
加速度センサ45は、電源制御回路部48から一定の電源電圧が供給されており、携帯電話機1の傾斜角度が変化する際に、その変化を定期的に加速度データ(検出値)として検出している。そして、ドライバIC46は、検出値を所定の間隔で取得する。CPU49は、ドライバIC46が取得した検出値に基づいて3軸ごとの傾斜角度を求める所定の演算を行い、携帯電話機1がどの方向に向いているのかを把握する。
【0037】
CPU49は、加速度センサ45が検出した検出値により、携帯電話機1の傾斜角度を求め、この傾斜角度に基づいて、LCD表示部21やLED47による演出を制御する。例えば、電話の着信時に、複数設けられたLED47の点灯箇所を傾斜角度に応じて決定したり、ゲーム等のアプリケーションにおいて、傾斜角度に応じて表示画像を変更したりする。
【0038】
ここで、携帯電話機1に搭載した加速度センサ45は、図3に示すように、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向の加速度データを検出するものとする。なお、3軸でなくとも、互いに直交するX軸方向、Y軸方向の2軸を検出軸とする2軸式加速度センサでもよい。
【0039】
ここで、図4を参照しながら、ドライバIC46が取得した加速度センサ45の検出値をCPU49が加速度センサ45の出力値として決定する方法について説明する。図4では、『記号(黒四角)』はドライバIC46が取得した加速度センサ45の検出値を示し、『記号(黒丸)』はCPU49により決定された出力値を示す。図4に示すように、CPU49は、前の検出値の取得時にレンジを設定し、後に取得した検出値が設定したレンジ収まるか否かを判定する。この判定結果に基づいて、取得した検出値を出力値として決定するか、1つ前の検出値を出力値として決定するかを決定する。このように、加速度センサ45により検出された検出値の前後2個の検出値を1組として設定されたレンジと比較することにより、加速度値が大きく変動した場合の検出値を除去することができる。
【0040】
上述の方法を用いた場合、静止状態の携帯電話機1において、携帯電話機1の傾斜を人為的な加速度を与えながら変化させ(振るようにして携帯電話機1の傾斜を変化させ)、その後、最初とは異なる傾斜で携帯電話機1を安定させた場合、携帯電話機1にはレンジ以上の加速度が加わるため、加速度センサ45は、常に一定値を出力し続けるが、携帯電話機1を元の傾斜とは異なる状態で安定させた後も、出力値は常に一定値であるため、CPU49は元の傾斜からの変化を認識することができない場合が考えられる。
【0041】
そこで、本発明に係る携帯電話機1において、ドライバIC46は、所定の周期ごとに加速度センサ45により検出された検出値を取得し、CPU49は、ドライバIC46により取得された所定の個数の検出値のうち、最初の検出値に基づいて所定のレンジを設定し、ドライバIC46により取得された所定の個数の検出値のうち、最初の検出値以降の検出値が所定のレンジに収まるか否かを判定し、最初の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まると判定した場合には、所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を加速度センサ45の出力値として決定し、最初の検出値以降の検出値が所定のレンジに収まらないと判定した場合には、所定の値を加速度センサ45の出力値として決定する。
【0042】
このように、検出値がレンジに収まらないと判定された場合、すなわち携帯電話機1に人為的な加速度が与えられるときには、CPU49により所定の値を加速度センサ45の出力値として決定するため、人為的な加速度を除去することができる。また、検出値がレンジに収まると判定された場合、すなわち携帯電話機1に人為的な加速度が与えられないときには、所定の個数の検出値のうち、CPU49により最後の検出値を加速度センサ45の出力値として決定するため、加速度センサ45の出力値を携帯電話機1の傾斜角度に追従させることができる。
【0043】
図5〜7は、加速度センサ45が検出する検出値の推移を模式的に示した図である。図5〜7では、横軸は時間、縦軸は加速度センサ45により検出される検出値を示している。また、図5〜7に示す『記号(黒丸)』、『記号(白三角)』、『記号(白四角)』、『記号(傾斜している黒四角)』は、それぞれ加速度センサ45が検出した検出値を示し、『記号(黒丸)』は1番目(最先)に検出された検出値、『記号(白三角)』は2番目に検出された検出値、『記号(白四角)』は3番目に検出された検出値で、『記号(傾斜している黒四角)』は4番目(最後)に検出された検出値である。
【0044】
CPU49は、加速度センサ45により最先に検出された検出値『記号(黒丸)』、2番目に検出された検出値『記号(白三角)』、3番目に検出された検出値『記号(白四角)』及び最後に検出された検出値『記号(傾斜している黒四角)』の4つの検出値を1グループとする。また、CPU49は最先に取得した検出値『記号(黒丸)』を代表値とし、この代表値によりレンジを設定する。レンジを設定した後、ドライバIC46は最先の検出値以降の3つの検出値を取得し、合計4つの検出値を取得した時点で、CPU49はグループ内で最先の検出値以降の検出値が設定されたレンジに収まるか否か判定する。その際に、CPU49は、グループ内の全ての検出値が代表値から設定したレンジに収まると判定した場合には、4番目(最後)の検出値を出力値として決定する。また、グループ内で、1つでもレンジに収まらないと判定した場合は、前回出力値として決定した検出値を再度、検出値として決定する。なお、携帯電話機1の使用開始時等のように、前回の検出値が存在しない場合には、CPU49はメモリ44に予め記憶された値を読み出し、出力値として決定する。
【0045】
ここで、1グループの検出値の個数は、必ずしも4個に限られないが、例えば、1グループの検出値の個数が2個のように少ない場合、CPU49は、加速度センサ45により検出される検出値が大きく変化しているときに人為的な加速度値を除去することができない。逆に1グループの個数が10個のように多い場合、加速度センサ45により検出された検出値を、CPU49が、加速度センサ45の出力値として出力する間隔が長くなり、携帯電話機1の傾斜角度に対する追従性が悪化する。よって、本発明者らは、バイブレーションモータ50等の振動のように周期的に変化する検出値をどのようにして除去し、且つ正確な傾斜角度を検出できるかをシミュレーションした結果、検出値4個で1グループにすると、それが実現できることを確認した。実際にバイブレーションモータ50を用いたシミュレーションについては、後述の図8に示す。
【0046】
図5は、携帯電話機1に人為的な加速度を与えていないときに、加速度センサ45が検出する検出値の推移を模式的に示した図である。図5のグループ1において、CPU49は、1番目(最先)に検出された検出値『記号(黒丸)』を代表値とし、この代表値に基づいて所定の範囲を持つレンジを設定する。次に、CPU49は、グループ1のうち、代表値とした最先に検出された検出値『記号(黒丸)』以降の検出値、すなわち2番目、3番目及び4番目に検出された検出値が、設定されたレンジに収まるか否かを判定する。グループ1では、いずれの検出値も設定されたレンジに収まるため、CPU49は、4番目(最後)に検出された検出値『記号(傾斜している黒四角)』を加速度センサ45の出力値として決定する。
【0047】
図5では、上述したグループ1と同様にグループ2及びグループ3においても、最先に検出された検出値以降の検出値は、代表値である最先に検出された検出値『記号(黒丸)』に基づくレンジに収まるため、CPU49は各グループ内での最後の検出値『記号(傾斜している黒四角)』を出力値として決定する。
【0048】
図6は、携帯電話機1に人為的な加速度を与えたときに、加速度センサ45が検出する検出値の推移を模式的に示した図である。図6のグループ1では、上述した図5と同様に、最先に検出された検出値以降の検出値は、代表値である最先に検出された検出値『記号(黒丸)』に基づくレンジに収まるため、CPU49は各グループ内での最後の検出値『記号(傾斜している黒四角)』を出力値として決定する。しかし、グループ2では、2番目に検出された検出値『記号(白三角)』は、レンジに収まるが、3番目及び4番目に検出された検出値『記号(白四角)、記号(傾斜している黒四角)』は、レンジに収まらない。この場合、CPU49は4番目(最後)に検出された検出値『記号(傾斜している黒四角)』を出力値とするのではなく、グループ2の検出値を加速度センサ45から取得する前に出力値として決定された検出値、すなわちグループ1で出力値として決定された検出値『記号(傾斜している黒四角)』を再度出力値として決定する。
【0049】
また、グループ3では、2番目及び3番目に検出された検出値はレンジに収まるが、4番目に検出された検出値はレンジに収まらないため、グループ2の場合と同様にグループ3の検出値を加速度センサ45から取得する前に出力値として決定された検出値、すなわちグループ2で出力値として決定された検出値『記号(傾斜している黒四角)』を再度出力値として決定する。
【0050】
図7は、図6と同様に携帯電話機1に人為的な加速度を与えたときに、加速度センサ45が検出する検出値の推移を模式的に示した図である。図7が図6と異なる点は、グループ2で人為的な加速度を与えた後、グループ3のように、元の傾斜角度(グループ1)とは異なる傾斜角度で携帯電話機1が安定状態になっている点である。図7では、グループ2で2番目、3番目及び4番目に検出した検出値がレンジに収まらないため、出力値は、グループ1で出力値として決定された検出値となる。続いて、グループ3ではレンジに収まらない検出値は無いため、出力値はグループ3で4番目(最後)に検出された検出値として決定される。
【0051】
このように、CPU49は、図7のグループ2に示したように、人為的な加速度が加わっているときは前回の出力値、すなわち一定の値を出力値とするが、図7のグループ3のように、再び安定状態になったときに、検出値を判定するレンジが、グループ2から3に切り替わると、新しいグループ3の代表値に基づくレンジに変更されるため、携帯電話機1の傾斜角度に追従した検出値を出力値とすることができる。したがって、人為的な加速度を除去するとともに、人為的な加速度が与えられた後に、携帯電話機1を元の傾斜とは異なる状態で安定させた場合でも、元の傾斜角度での出力値を出力し続けることがなく、実際の携帯電話機1の傾斜角度に追従した正確な検出値を出力値とすることができる。
【0052】
したがって、例えば、CPU49は加速度センサ45の出力値に基づいてLED47を所定の態様で点灯させる処理を行うとき、実際の携帯電話機1の傾斜に追従した好適な処理を行うことができる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、CPU49は、1グループに所定の個数の検出値が取得されてから、これらの検出値がレンジに収まるか否かを判定したが、これに限られない。CPU49は、1グループ内の所定個数の検出値のうち、最先の検出値以降の検出値がドライバIC46により取得されるごとに、レンジに収まるか否か判定を行ってもよい。そして、最先の検出値以降の検出値がレンジに収まらない場合には、CPU49は、ドライバIC46により所定の個数の検出値を取得している途中であっても、このグループでの所定の個数の検出値の取得を終了させ、新たなグループで所定個数の検出値の取得を行ってもよい。
【0054】
また、ドライバIC46は、最先の検出値以降の検出値がレンジに治まらない状態が2回発生した場合に、このグループでの所定の個数の検出値の取得を終了し、新たなグループで所定個数の検出値の取得を行ってもよい。
【0055】
図8は、加速度センサ45により検出された、バイブレーションモータ50による携帯電話機1の振動データを示したものである。図8では、上述の図5〜7で示した例と同様に、加速度センサ45により検出された検出値を、4個ずつで1グループとした。また、『記号(黒丸)』を各グループの代表値、『記号(黒四角)』を各グループの検出値、『記号(傾斜している黒四角)』を各グループの出力値とする。図8に示すように、各グループ内の2番目〜4番目の検出値のいずれかが、代表値である1番目の検出値に基づいて設定したレンジに収まらない場合、前のグループで出力値として決定した検出値を再度出力値として決定する。
【0056】
このように、前のグループで出力値として決定した検出値を再度出力値として決定することにより、携帯電話機1の傾斜角度が安定状態での検出値を出力値として決定するため、結果として、バイブレーションモータ50が振動している(人為的な加速度が加えられている)ときは一定値が出力値として決定されることとなる。
【0057】
ここで、1グループの検出値の数が少ない場合について説明する。図8に示したように、バイブレーションモータ50が振動している場合は、検出値が大きく変動する。例えば、図8の『※1』のグループは、バイブレーションモータ50が振動している途中である。このとき、1グループの検出値が『記号(黒丸)』と次の検出値『記号(黒四角)』の2個であった場合、2個目の検出値が代表値のレンジ内であるため、この2個目の検出値が出力値として決定される。このように、1グループの検出値の数が少ない場合、検出値が大きく変動している場合であっても、この検出値を除去できない場合が発生する。
【0058】
また、1グループの検出値の個数が多い場合、CPU49により検出値を出力値として決定し、出力するまでの間隔が長くなり、携帯電話機1の傾斜角度に対する追従性が悪化するという問題がある。そこで、本発明者らは、バイブレーションモータによる振動を含めた人為的な加速度を除去するのに最適な検出値の個数をシミュレーションした結果、今回の例においては1グループの検出値の個数は4個程度が最適であることを見出した。ただし、この値は加速度センサの検出同期、及び設定するレンジに応じて変化するものである。バイブレーションモータによる振動を除去するのであれば、これを想定した検証を行い、グループの検出個数を設定することが望ましい。
【0059】
図9は、本発明に係る携帯電話機1におけるドライバIC46とCPU49の動作の流れをフローチャートで示したものである。上述の図5〜7では検出値の個数を4個で1グループとしていたが、ここでは、1グループの検出値の個数をN個(Nは3以上の整数)として設定する。
【0060】
先ず、ステップS1では、ドライバIC46は、加速度センサ45によりX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸方向で検出される検出値を取得する。ここで、ステップS1で検出される検出値を、このグループ内における最先の検出値とする。
【0061】
ステップS2では、CPU49は、メモリ44からレンジを決定するための数値を読み出し、ステップS1で検出されたそれぞれの軸方向での最先の検出値に基づいて、それぞれの軸方向ごとにレンジを設定し、設定したレンジをメモリ44に記憶する。
【0062】
ステップS3では、ドライバIC46は、加速度センサ45によりX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸方向で検出される2番目からN番目の検出値を取得し、取得した各検出値はCPU49によりメモリ44に記憶される。
【0063】
ステップS4では、CPU49は、メモリ44に記憶したレンジ及び2番目からN番目の各検出値を読み出し、ステップS3で取得した各検出値のうち、いずれかの検出値がステップS2で設定したレンジに収まるか否かを判定する。レンジに収まらないと判定された場合(Yes)には、ステップS5へ移る。一方、レンジに収まると判定された場合(No)には、ステップS6へ移る。
【0064】
ステップS5では、CPU49は、前のグループで出力値として決定した検出値を再度出力値として決定する。
【0065】
ステップS6では、CPU49は、現在のグループ内で最後(N番目)に取得した検出値をこのグループの出力値として決定する。
【0066】
ステップS7では、CPU49は、加速度センサ45が動作を終了するか否かを判定し、動作を終了する場合(Yes)には本処理を終了し、動作を継続する場合(No)にはステップS1へ戻る。
【0067】
なお、上述の実施形態では、CPU49は、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの軸方向においてドライバIC46により取得される最先の検出値以降の検出値のいずれかがレンジに収まらない場合にレンジに収まらないと判定したが、これに限られず、X軸、Y軸、Z軸それぞれの軸方向においてドライバIC46により取得される最先の検出値以降の検出値の全てがレンジに収まらない場合にレンジに収まらないと判定してもよい。
【0068】
また、CPU49は、X軸、Y軸、Z軸それぞれの軸ごとにレンジを設定し、設定されたレンジに収まるか否か判定し、判定された結果に基づいて出力値を決定したが、これに限られず、X軸、Y軸、Z軸のいずれか1つの軸方向又は2つの軸方向についてレンジを設定し、設定されたレンジに収まるか否か判定し、判定された結果に基づいて出力値を決定してもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、1グループの検出値の個数を4個としたがこれに限られない。1グループの検出値の個数は、適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る加速度センサのX、Y、Zの3軸方向を示す図である。
【図4】本発明に係る加速度センサの出力値を決定する方法について示す図である。
【図5】加速度センサが検出する検出値の推移を模式的に示した図である。
【図6】加速度センサが検出する検出値の推移を模式的に示した図である。
【図7】加速度センサが検出する検出値の推移を模式的に示した図である。
【図8】加速度センサにより検出されたバイブレーションモータによる携帯電話機の振動データを示した図である。
【図9】本発明に係る携帯電話機のドライバICとCPUの動作の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 携帯電話機
2 操作部側筐体
3 表示部側筐体
11 操作部
12 マイク
21 LCD表示部
22 スピーカ
23 ドライバIC
40 メインアンテナ
41 RF回路部
42 LCD制御部
43 音声処理部
44 メモリ
45 加速度センサ
46 ドライバIC
47 LED
48 電源制御回路部
49 CPU
50 バイブレーションモータ
51 充電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサにより検出された検出値を所定の間隔で所定の個数取得する取得手段と、
前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最先の検出値に基づいて所定のレンジを設定する設定手段と、
前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まるか否かを判定する判定手段と、
前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まると判定された場合には、前記取得手段により前記所定の間隔で取得される前記所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を前記加速度センサの出力値として決定し、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定された場合には、所定の値を前記加速度センサの出力値として決定する決定手段とを備えることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記決定手段は、前記所定の値として、前記決定手段により前記加速度センサの出力値として前回決定されていた値又は任意の値を前記加速度センサの出力値として決定することを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記取得手段は、前記所定の個数として、少なくとも前記所定の間隔で3個以上の検出値を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記取得手段は、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定された場合、検出値の取得を終了し、新たに前記所定の間隔で前記所定の個数の検出値の取得を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記取得手段は、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらない状態が2回発生したと判定された場合、検出値の取得を終了し、新たに前記所定の間隔で前記所定の個数の検出値の取得を行うことを特徴とする請求項4に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記取得手段は、互いに直交する2軸又は3軸方向における加速度を検出する前記加速度センサにより検出される検出値を取得し、
前記設定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のそれぞれの軸で取得される前記所定の個数の検出値のうち、前記それぞれの軸における最先の検出値に基づいて前記それぞれの軸における所定のレンジを設定し、
前記判定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のそれぞれの軸で取得される前記所定の個数の検出値のうち、前記それぞれの軸における最先の検出値以降の検出値が前記それぞれの軸における所定のレンジに収まるか否かを判定し、
前記決定手段は、前記取得手段により前記2軸又は3軸方向のいずれかの軸で取得された前記最先の検出値以降の検出値が前記それぞれの軸における所定のレンジに収まらないと判定された場合には、それぞれの軸における所定の値を前記加速度センサの出力値として決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
バイブレータを備えた携帯電子機器において、
加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサによる検出値に基づいて所定の処理を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記バイブレータが所定の動作を行うとき、前記加速度センサによる検出値を所定の間隔で所定の個数取得し、
前記所定の間隔で前記所定の個数取得した検出値のうち、最先の検出値に基づいて所定のレンジを設定し、
前記所定の間隔で前記所定の個数取得した検出値のうち、最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まるか否かを判定し、
前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まると判定した場合には、前記所定の間隔で取得した前記所定の個数の検出値のうち、最後の検出値を出力値として決定し、前記最先の検出値以降の検出値が前記所定のレンジに収まらないと判定した場合には、所定の値を出力値として決定し、
決定した前記出力値に基づいて前記所定の処理を行うことを特徴とする携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−206913(P2009−206913A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47988(P2008−47988)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】