説明

携帯電話機

【課題】携帯可能な筐体2を具え、該筐体2の表面には受話部24が装備されている携帯電話機において、受話部24が筐体2の幅方向の中心位置からずれている場合にも受話部24からの音声を十分な音量で聞き取ることが出来る携帯電話機を提供する。
【解決手段】本発明に係る携帯電話機において、受話部24は、筐体2の幅方向の中心位置からずれた位置に配置されており、筐体2の表面には、受話部24に近接して凸部23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能な筐体に受話部を配備した携帯電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機は、携帯可能な直方体状の筐体を具え、該筐体の表面には、筐体長手方向の両端部に受話部と送話部が配備されており(例えば特許文献1)、通話時には、筐体を把持して、受話部を左右何れかの耳に当てると共に、送話部を口元に近づけて通話を行なう。
【0003】
この際、使用者は、筐体の長手方向とは直交する幅方向(左右方向)の中心位置に受話部が配備されているものと理解して、筐体の幅方向の中心位置が外耳道と対向する様に、筐体の位置を調節することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−72285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話機においては、筐体内部の電子部品等の構成部品の配置によって、筐体の幅方向の中心位置に受話部を配備することが困難な場合がある。
【0006】
この様な場合、筐体の大型化を招くことなく、筐体内部の電子部品との干渉を避けるためには、受話部を筐体の幅方向の中心位置からずれた位置に配備することが必要となる。
しかしながら、受話部が筐体の幅方向の中心位置からずれている携帯電話機により通話を行なう場合、使用者は、筐体の幅方向の中心位置に受話部が配備されているとの前提で、筐体の幅方向の中心位置を耳の中心にあてがうことになる。
【0007】
この結果、受話部は、使用者の外耳道と対向する位置からずれるばかりでなく、耳介(耳殻)によって受話部が塞がれてしまうことがあった。この場合、使用者にとって受話部からの音声が聞き取り難くなる問題がある。
そこで本発明の目的は、受話部が筐体の幅方向の中心位置からずれている場合にも受話部からの音声を十分な音量で聞き取ることが出来る携帯電話機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る携帯電話機は、携帯可能な筐体(2)を具え、該筐体(2)の表面には受話部(24)が装備されており、該受話部(24)は、筐体(2)の幅方向の中心位置からずれた位置に配置されている。
ここで、筐体(2)の表面には、前記受話部(24)に近接して凸部(23)が形成されている。
【0009】
上記本発明の携帯電話機によれば、使用者が、筐体(2)の幅方向の中心位置に受話部(24)が配備されているとの前提で、筐体(2)の幅方向の中心位置を耳の中心にあてがい、これによって受話部(24)が使用者の耳介(耳殻)により覆われたとしても、受話部(24)と近接する位置には凸部(23)が形成されているので、凸部(23)によって使用者の耳介が持ち上げられることとなる。
その結果、受話部(24)と使用者の耳介との間には、隙間が形成されることになり、受話部(24)が使用者の耳介によって完全に塞がれてしまう事態が回避される。
従って、受話部(24)からの音声は十分な音圧で使用者の外耳道へ導かれることになる。
【0010】
具体的態様において、前記凸部(23)の側壁(26)は、前記受話部(24)と近接する位置から筐体(2)の幅方向の中心位置まで延びている。
該具体的態様によれば、受話部(24)が使用者の耳介により覆われたとしても、受話部(24)と近接する位置には凸部(23)が形成されており、該凸部(23)の側壁(26)は、受話部(24)と近接する位置から筐体(2)の幅方向の中心位置、即ち、使用者の外耳道の入口若しくはその近傍まで延びているので、受話部と使用者の耳介との間には、受話部(24)から使用者の外耳道の入口若しくはその近傍まで延びる隙間が形成されることになる。
従って、受話部(24)からの音声は、上記の隙間を通過して、使用者の外耳道の入口まで導かれることになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る携帯電話機によれば、受話部(24)が筐体(2)の幅方向の中心位置からずれている場合にも受話部(24)からの音声を十分な音量で聞き取ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る携帯電話機の正面図である。
【図2】図2は、該携帯電話機の要部を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、該携帯電話機の全閉状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、該携帯電話機のチルト状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、該携帯電話機の回動全開状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、該携帯電話機のスライド全開状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、該携帯電話機の全閉状態からチルト状態を経てスライド全開状態に至る過程の前半を示す一連の側面図である。
【図8】図8は、同上の過程の後半を示す一連の側面図である。
【図9】図9は、本発明の携帯電話機の効果を実証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である携帯電話機は、図3〜図6に示す如く、表面に第1表示面(11)を有する第1筐体(1)と、表面に第2表示面(21)を有する第2筐体(2)とが、連結機構(3)を介して互いに連結されている。ここで、第1表示面(11)及び第2表示面(21)には、画像だけでなく文字又は映像を表示することが出来る。
【0014】
第1筐体(1)の内部には、第1表示面(11)に面して第1タッチパネル(図示省略)と第1ディスプレイ(12)が配備され、第2筐体(2)の内部には、第2表示面(21)に面して第2タッチパネル(図示省略)と第2ディスプレイ(22)が配備されている。
【0015】
該携帯電話機は、図3に示す如く第1筐体(1)の表面を第2筐体(2)の裏面によって覆うと共に第2筐体(2)の表面のみを露出させた全閉状態と、図4に示す如く第2筐体(2)を後方へ移動させることによって両筐体(1)(2)の表面を露出させ且つ第1筐体(1)の表面に対して第2筐体(2)の表面を90度以上、180度未満の開き角度で傾斜させたチルト状態と、図5に示す如く第2筐体(2)を後方へ回動させることによって両筐体(1)(2)の表面を同一平面上に露出させた回動全開状態と、図6に示す如く両筐体(1)(2)の表面を同一平面上に露出させた状態で第2筐体(2)を第1筐体(1)側へスライドさせたスライド全開状態の4つの状態を選択的に設定することが出来る。
【0016】
第1筐体(1)と第2筐体(2)とを互いに連結する連結機構(3)は、図7及び図8に示す如く、両筐体の表示面に直交する面上でL字形状に屈曲するL字状の連結アーム(31)を、両筐体の左右両側部に配備したものあって、左右一対の連結アーム(31)(31)は、左右に延びる連結アーム部(図示省略)によって互いに連結されている。各連結アーム(31)は、基端部が第1筐体(1)の側面後方端部に枢支連結されると共に、先端部が第2筐体(2)の背面端部に枢支連結されている。
【0017】
一対の連結アーム(31)(31)の先端部を第2筐体(2)の背面端部に枢支連結する2つのヒンジ機構を、第2筐体(2)の内部に収容するために、図1に示す如く、第2筐体(2)の表面には、第2筐体(2)の幅方向の中心位置を第2筐体(2)の長手方向(受話部(24)と送話部(25)が配置されている方向)へ延びる中心線C上の両端部に、半円状の凸部(23)(23′)が形成されており(図2参照)、この凸部(23)(23′)の形成によって生成された空間に、前記ヒンジ機構の一部が収容されている。
【0018】
第2筐体(2)の表面には、図1に示す如く、上端部に受話部(24)が配備されると共に、下端部に送話部(25)が配備されている。
ここで、受話部(24)は、第2筐体(2)の中心線Cから所定の距離Dだけずれた偏寄位置であって、第2筐体(2)の表面に形成された凸部(23)と接する位置に配備されている。
又、送話部(25)も、第2筐体(2)の中心線Cに対して所定の距離だけずれた偏寄位置に配備されている。
【0019】
上記携帯電話機においては、図7(a)〜(d)及び図8(a)〜(d)に示す様に、全閉状態からチルト状態及び回動全開状態を経てスライド全開状態まで移行させる過程で、図7(a)に示す全閉状態で第2筐体(2)を後方へ押圧することによって、同図(b)〜(d)に示す様に、第2筐体(2)は破線の矢印の如く反時計方向へ回動し、これに伴って連結アーム(31)は実線の矢印の如く時計方向へ回転する。
これによって、第2筐体(2)は第2表示面(21)を上方若しくは斜め上方に向けたまま後方へ移動することになる。
【0020】
そして、図8(b)に示すチルト状態で第2筐体(2)を後方へ押圧して、連結アーム(31)を時計方向へ回転させることによって、連結アーム(31)が図8(c)に示す回動全開状態の回転角度まで回転する。この連結アーム(31)の回転に伴って第2筐体(2)は後方へ向けて回動し、最終的に第1表示面(11)と第2表示面(21)とが同一平面上に揃うことになる。
【0021】
更に、図8(c)に示す回動全開状態から第2筐体(2)を第1筐体(1)側へ引き寄せることによって、第2筐体(2)は図8(d)に示すスライド全開位置まで水平に移動し、最終的に第1筐体(1)と当接する。
この結果、図8(d)に示す如く第1表示面(11)と第2表示面(21)とが互いに接近して、両表示面(11)(21)によって1つの大きな画面が形成されることになる。
【0022】
上記の携帯電話機においては、図1に示す全閉状態で受話部(24)と送話部(25)を用いて通話を行なうことが出来る。
ここで、使用者が、第2筐体(2)の中止線C上に受話部(24)が配備されているとの前提で、第2筐体(2)の中心線C上の端部を耳の中心にあてがい、これによって図2の如く、受話部(24)が使用者の耳介Eにより覆われたとしても、受話部(24)と接する位置には凸部(23)が形成されているので、凸部(23)によって使用者の耳介が持ち上げられることとなる。
【0023】
その結果、受話部(24)と使用者の耳介Eとの間には、隙間が形成されることになり、該隙間は、受話部(24)を構成するスピーカ(4)と通じることになる。この様にして、受話部(24)が使用者の耳介Eによって完全に塞がれてしまう事態が回避される。
【0024】
又、凸部(23)の側壁(26)は、受話部(24)と接する位置から筐体(2)の幅方向の中心位置、即ち、使用者の外耳道の入口若しくはその近傍まで延びているので、前記隙間は、受話部(24)から使用者の外耳道の入口若しくはその近傍まで延びることになる。
【0025】
この結果、受話部(24)から音声は、上記の隙間を通過して、使用者の外耳道まで十分な音圧で導かれることになる。
従って、使用者は、受話部(24)からの音声を十分な音量で聞き取ることが出来る。
【0026】
図9は、本発明の携帯電話機の効果を実証するために行なった実験の結果を示すグラフである。実験においては、B&K社製のHATS(Head And Torso Simulator)を用い、HATSの擬似耳(マイクロフォン内蔵)に本発明と従来の2種類の携帯電話機をあてがって、擬似耳に対する携帯電話機の受話部の位置ずれ(シフト距離)を増大させつつ、携帯電話機の受話部から発せられる音声の音量をマイクロフォンによって測定した。
【0027】
図9は、横軸に上記のシフト距離、縦軸に受話ラウドネスレイトRLR(Receiving Loudness Rating)をとって、上記凸部(23)を有する本発明の携帯電話機と凸部を有しない従来の携帯電話機とを比較したものである。
図9から明らかな様に、凸部を有しない従来の携帯電話機においては、シフト距離が増大するにつれて、受話ラウドネスレイトRLRが急激に低下しているのに対し、凸部を有する本発明の携帯電話機においては、シフト距離が0から10mmまでの範囲では、受話ラウドネスレイトRLRに低下はみられず、シフト距離が11mmを越えて増大すると、受話ラウドネスレイトRLRが低下することになる。
【0028】
より具体的には、凸部を有する本発明の携帯電話機においては、シフト距離が0から11mmまではRLRが−12dBから約−9dBまでの約3dBの範囲に収まっているため、シフトによるRLRの劣化が殆ど無いと言える。但し、シフト距離が11mmを越えると、RLRが約3dBの範囲を越えて劣化するため、音量は十分でない。
これに対し、凸部を有しない従来の携帯電話機においては、シフト距離が約8mmを越えると、RLRが約3dBの範囲を越えて劣化することになる。
従って、凸部を有する本発明の携帯電話機によれば、従来よりも広範囲に亘って音量を十分に確保することが出来る。
【0029】
上述の如く、凸部を有する本発明の携帯電話機においては、シフト距離が0mm以上、11mm未満の範囲では、凸部の形成によって、受話部が使用者の耳介によって完全に塞がれてしまう事態が回避され、受話部からの音声を使用者の外耳道まで十分な音圧で導く効果が得られる。
【0030】
従って、本発明に係る携帯電話機においては、図1に示す如く、受話部(24)の位置を、第2筐体(2)の中心線Cから11mm未満の距離Dだけ偏寄させることが可能であり、これによって、凸部(23)の内部に収容されるヒンジ機構と受話部(24)を構成するスピーカとの干渉を回避すると同時に、十分な受話音量を確保することが出来る。
【0031】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、受話部(24)の位置は、第2筐体(2)の中心線の右側に限らず、左側であってもよい。
又、本発明は、2つの筐体を具えた携帯電話機であって、一方の筐体に対して他方の筐体が1軸回りに回動する折り畳み式、一方の筐体に対して他方の筐体が互いに直交する2軸回りに回動する折り畳み式、若しくは一方の筐体に対して他方の筐体がスライドするスライド式の携帯電話機に実施することも可能である。
更に又、携帯電話機は、上述の如く2つの筐体を具えたものに限らず、単一の筐体から構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
(1) 第1筐体
(11) 第1表示面
(12) 第1ディスプレイ
(2) 第2筐体
(21) 第2表示面
(22) 第2ディスプレイ
(23) 凸部
(24) 受話部
(25) 送話部
(26) 側壁
(3) 連結機構
(31) 連結アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可能な筐体を具え、該筐体の表面には受話部が装備されており、該受話部は、筐体の幅方向の中心位置からずれた位置に配置されている携帯電話機において、筐体の表面には、前記受話部に近接して凸部が形成されていることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
前記凸部の側壁は、前記受話部と近接する位置から筐体の幅方向の中心位置まで延びている請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項3】
前記凸部の形成によって筐体の内部に生成される空間には、電気的若しくは機械的な部品の全体又は一部が収容されている請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項4】
携帯可能な筐体を具え、該筐体の表面には受話部が装備されており、該筐体の表面には、部品収容空間を形成するための凸部が形成されている携帯電話機において、前記受話部は、前記凸部と近接する位置であって、筐体の幅方向の中心位置からずれた位置に配置されていることを特徴とする携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−156767(P2012−156767A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13819(P2011−13819)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】