携帯食品
【課題】簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易で、飲食時には開封して水を注入するだけで乾燥食品を飲食可能にする。
【解決手段】携帯食品1は、乾燥または半乾燥した食品3を耐熱性容器2に収納して密封し、飲食時に耐熱容器2を開封して外部から水5aを注入し、この水5aを食品3に吸収させると共に、水5aにより耐熱性容器2に予め入れておいた発熱剤を反応させて、水5aの温度を上昇させる。
【解決手段】携帯食品1は、乾燥または半乾燥した食品3を耐熱性容器2に収納して密封し、飲食時に耐熱容器2を開封して外部から水5aを注入し、この水5aを食品3に吸収させると共に、水5aにより耐熱性容器2に予め入れておいた発熱剤を反応させて、水5aの温度を上昇させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥食品を、場所、時間を選ばず、随時飲食可能にすることができる携帯食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の加熱容器と携帯した食品を組み合わせることが知られており、例えば、特開昭59−131317号公報(特許文献1)に、内部に発熱体を収納した所定形状の容器が開示されている。これは使用に際して、加熱容器内に直接食品を収納し、或いはコップなどの容器を収納して食品の加温をなすようにしているものである。
【0003】
また、実公平5−13326号公報(特許文献2)には、上部を開閉できるパック体の中に発熱体を収納した加熱パックが示されており、これはパック上部を開口し所望の食品を収納して加温するものである。
【0004】
また、特許第3467729号(特許文献3)には、発熱剤を包装した発熱剤パックを、上面開口する発熱用トレー内に水パックとともに収容し、発熱用トレーの上面開口縁部を、保護シートで、水パックと保護シートを同時に開裂するティアテープと一緒に、ヒートシールした加熱ユニットを開示している。
【特許文献1】特開昭59−131317号公報
【特許文献2】実公平5−13326号公報
【特許文献3】特許第3467729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、加熱剤と食品を区別するものであり、加熱容器の構造が複雑で製作コストがかかる。また、特許文献2では、加熱パックと、加熱対象食品とが別々であり、飲食時にパック上部を開口し所望の食品を収納して加温しなければならず、取り扱いが面倒である。また、特許文献3では、食品とは区別して発熱剤パックと水パックとを収容する構造であり、発熱用トレーの構造が複雑で製作コストがかかり、かつ水パックを収納する分、大型化し、重量も嵩むなどの問題がある。
【0006】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易で、飲食時には開封して水を注入するだけで乾燥食品を飲食可能にすることができる携帯食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封し、
飲食時に前記耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を前記食品に吸収させると共に、前記水により前記耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、前記水の温度を上昇させることを特徴とする携帯食品である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯食品である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記発熱剤を透水性袋に封入したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯食品である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、外郭に位置する外郭部位と、この外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位と、によって構成してあり、
前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かつ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記溶着部位の一部が剥離可能、かつ、前記溶着部位の一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記剥離不能な一部の溶着力が、前記剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項7に記載の携帯食品である。
【発明の効果】
【0016】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0017】
請求項1に記載の発明では、飲食前には、乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封しており、耐熱性容器は特別な構造にする必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0018】
飲食時には、耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を食品に吸収させると共に、水により耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、水の温度を上昇させて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品を食することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含み、水を注入するだけで発熱して食品を加熱し容易に可食状態とすることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、発熱剤を透水性袋に封入し、携帯食品に応じた適量の発熱剤パックとすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、発熱剤の発熱によって発熱に供した水が気化して水蒸気となり、水蒸気の発生は蒸気圧を発生させ、この蒸気圧がエネルギーとなって透水性袋を内側から押し広げようとする。この蒸気圧エネルギーが、溶着部位を構成する内郭部位を剥離する。この内郭部位を剥離するためには相応のエネルギーが消費されるが、その消費された分、蒸気圧エネルギーは小さくなる。また、内郭部位の剥離に伴って透水性袋の体積が増大するところ、これによって蒸気圧が減少する。さらに、一部の水蒸気は織布又は不織布を介して透水性袋外部に流出する。水蒸気流出も蒸気圧を小さくする一因でもある。小さくなった蒸気圧エネルギーは外郭部位を剥離する方向に働くが、外郭部位を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位の一部又は全部が剥離されずに残り、これによって、透水性袋内外の連通、すなわち、透水性袋の破れが有効に防止される。なお、溶着度合いに基づく溶着力のバラツキや蒸気圧の高低(水蒸気発生量の多少)等により、内郭部位に多少の未剥離部位が残存し、また、外郭部位に多少の剥離が生じる場合が想定されるが、そのような場合もこの発明の範囲内である。すなわち、剥離を意図的に行わせる部位が内郭部位であり、本来であれば剥離を予定していないが内郭部位の剥離だけでは蒸気圧を抑えきれない場合に予備的な剥離を行わせる部位が外郭部位であり、最終的に、透水性袋内外の連通が防止されればよい。
【0022】
請求項5に記載の発明では、外郭部位の溶着力を内郭部位の溶着力よりも強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより内郭部位が先に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは外郭部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【0023】
請求項6に記載の発明では、外郭部位の溶着力を内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより内郭部位が先に徐々に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは外郭部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【0024】
請求項7に記載の発明では、請求項4に記載の発明の効果と同様であるが、溶着部位が、発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位の一部が剥離可能、かつ、溶着部位の一部が剥離不能であることによって透水性袋内外を連通不能であることによって、溶着部位の一部又は全部が剥離されずに残り、これによって、透水性袋内外の連通、すなわち、透水性袋の破れが有効に防止される。
【0025】
請求項8に記載の発明では、剥離不能な一部の溶着力を剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより溶着力の弱い溶着部位の一部が先に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは溶着部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の携帯食品の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0027】
[第1の実施の形態の携帯食品の構造]
図1および図2は第1の実施の形態の携帯食品を示したもので、図1は斜視図、図2は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装しない乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0028】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。
【0029】
耐熱性容器2は、アルミニウムなどの金属箔シート、耐熱性樹脂シートなどの耐熱体で構成され、外周に固着部2aを有する方形の袋状であるが、これに限定されない。この実施の形態の耐熱性容器2の開封側には、両側部に開封するための目安となる切り欠き20が形成され、開封側の固着部2aより内側に切り欠き20を結ぶ切り取り線21が形成されている。取り線21の内側には、シール部2bが線状に形成され、このシール部2bは凹部2b1と、凸部2b2とからなっているが、切り欠き20やシール部2bは設けなくてもよい。
【0030】
乾燥した食品3は、例えば調理済の乾燥ピラフ、乾燥米飯などである。乾燥米飯としては、白飯、雑炊などがある。食品3は、乾燥した食品に限定されず、半乾燥した食品でもよく、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどでもよい。
【0031】
耐熱性容器2には、さらに脱酸素剤3a、スプーン3bなどを一緒に収容して密封してもよい。
【0032】
[第1の実施の形態の携帯食品の飲食]
図3は第1の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図3(a)に示すように、飲食前には、包装しない乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、乾燥した食品3と発熱剤パック4とが一緒に耐熱性容器2に収容して密封してあるだけである。
【0033】
また、耐熱性容器2には、さらに脱酸素剤3a、スプーン3bなどを一緒に収容して密封することがある場合だけであり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パックをセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0034】
飲食時には、図3(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、脱酸素剤3a、スプーン3bを取り出し、図3(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0035】
耐熱性容器2の密封は、図3(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。耐熱性容器2を密封状態とすることで、発熱剤パック4によって短時間に水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にすることができる。
【0036】
図3(e)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除し、スプーン3bを用いて飲食することができる。このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥食品3に水分を与えて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第2の実施の形態の携帯食品の構造]
図4および図5は第2の実施の形態の携帯食品を示したもので、図4は斜視図、図5は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装した乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0037】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、包装から取り出した乾燥した食品3と、発熱剤パック4と、を直接接触させ、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。
【0038】
耐熱性容器2は、第1の実施の形態と同様に構成されるから同じ符号を付して説明を省略する。また、乾燥した食品3は、例えば調理済の乾燥ピラフ、乾燥米飯などであり、透明樹脂袋30でパックされ、さらに調味料パック3c、スプーン3bなどとともに透明樹脂袋31でパックされている。また、食品3は、乾燥した食品に限定されず、半乾燥した食品、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどでもよいことは、第1の実施の形態の携帯食品と同様である。
【0039】
[第2の実施の形態の携帯食品の飲食]
図6は第2の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図6(a)に示すように、飲食前には、包装した乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パック4をセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0040】
飲食時には、図6(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、透明樹脂袋31から乾燥した食品3を入れた透明樹脂袋30、調味料パック3c、スプーン3bを取り出す。さらに、透明樹脂袋30から乾燥した食品3を取り出し耐熱性容器2の内部に入れ、調味料パック3cから調味料を取り出して、耐熱性容器2の内部に入れてスプーン3bでかきまぜ、スプーン3bは耐熱性容器2の内部に入れないで、図6(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0041】
耐熱性容器2の密封は、図6(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥食品3に水分を与えて飲食可能にする。耐熱性容器2を密封状態とすることで、発熱剤パック4によって短時間に乾燥した食品3に加熱した水分を与えて飲食可能にすることができる。
【0042】
図6(e)に示すように、耐熱性容器2のシール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除することで、スプーン3bを用いて飲食することができる。
【0043】
このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、包装から取り出した乾燥した食品3と、発熱剤パック4と、を直接接触させ、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第3の実施の形態の携帯食品の構造]
図7および図8は第3の実施の形態の携帯食品を示したもので、図7は斜視図、図8は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装した乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0044】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能にする。
【0045】
耐熱性容器2は、第1の実施の形態と同様に構成されるから同じ符号を付して説明を省略する。また、乾燥した食品3は、例えばコーヒー粉を包装したコーヒーパック、お茶や紅茶の粉を包装したテーパックなどである。
【0046】
[第3の実施の形態の携帯食品の飲食]
図9は第3の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図9(a)に示すように、飲食前には、包装した乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パック4をセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0047】
飲食時には、図9(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、図9(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0048】
耐熱性容器2の密封は、図9(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能にする。
【0049】
図9(e)に示すように、耐熱性容器2のシール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除することで、耐熱性容器2から適当な時間を経過したときに温水を飲むことができる。
【0050】
このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第4の実施の形態の携帯食品]
第4の実施の形態の携帯食品は、第1乃至第3の実施の形態の携帯食品1と同様に構成されるが、この第1乃至第3の実施の形態の携帯食品1において乾燥または半乾燥した食品3のみを耐熱性容器2に収納して密封したものである。飲食時に、耐熱容器2を開封して、発熱剤パック4を入れて外部から水5aを注入し、この水5aを食品3に吸収させると共に、水5aにより耐熱性容器2に予め入れておいた発熱剤パック4の発熱剤を反応させて、水5aの温度を上昇させる。発熱剤パック4は、耐熱性容器2の外部に取り付けておいてもよいし、別に用意しておいたものを用いてもよい。
【0051】
次に、携帯食品1の構成を詳細に説明する。
【0052】
(耐熱性容器)
耐熱性容器2の材料と構造は、特段に限定されず、金属、プラスチックス、木、陶磁器、紙、ラミネートフィルム、各種材料の複合材から、食品、マーチャンダイジング、コスト等を勘案して、適宜選択される。マーチャンダイジングによっては、耐熱性容器を透明にして、内容物が観察できるようにした方がよい場合がある。その場合、透明単層の材料としては、スチレン系樹脂、ポリプロピレン、透明多層タイプにしたい場合には、ポリプロピレン/エバール/ポリプロピレンで、アルミニウム箔タイプにしたい場合には、外面保護塗料/アルミニウム箔/ヒートシールラッカー、外面保護塗料/アルミ箔/ポリプロピレンで製造することが好ましい。
【0053】
近年、使用済みプラスチックス容器の処理が問題になっている。使用済みプラスチックス容器の処理を速やかに、かつ、経済的に行うために必要な初期処理は、減容化である。したがって、耐熱性容器を、容易に減容化できる材料で製造すれば、環境問題に資することができる。
【0054】
耐熱性容器2の断面形状は、乾燥した食品または半乾燥した食品の種類によって異なる。食品として、たとえば、赤飯、白飯、五目飯、ちらし寿司等のご飯類、各種調理済み食品、総菜類、カレー、ビーフシチュー、グラタン、ピラフ等、ご飯などの場合は、トレー型が好ましい。釜飯、うどん、ラーメン、スパゲティー、おでん等液状食品には、カップ型が適している。
【0055】
(食品)
乾燥した食品3の種類は、特に限定されないが、前記したように、例えば、赤飯、白飯、五目飯、ちらし寿司等のご飯類、各種調理済み食品、総菜類、カレー、ビーフシチュー、グラタン、ピラフ等、ご飯など、また釜飯、うどん、ラーメン、おでん、スープ類、酒等液状食品などがある。これらの乾燥した食品3は樹脂などでパックされていてもよいし、パックされていなくてもよいが、液状食品はパックされている必要がある。半乾燥した食品の種類は、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどがある。
(発熱剤パック)
発熱剤パック4は、発熱剤を透水性袋に封入して密封し、透水性袋から浸透する水によって発熱剤が反応し発熱する。この実施の形態では、発熱剤を透水性袋に封入して密封しているが、水に混入しないように固形化したものであれば、透水性袋に封入して密封しないでもよい。
【0056】
「発熱剤」
発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含む。発熱剤は、化学物質の発熱反応を利用したものであればよく、代表的なものでは、生石灰(酸化カルシウム)と水との水和反応を利用するタイプの発熱剤が使用される。
【0057】
発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150μm90%以上)〜200メッシュ(−75μm95%以上)の粉状の生石灰が15〜30%、及び−330メッシュ(−45μm)が40〜60%,+330メッシュ(+45μm)が15〜30%,+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉状のアルミニウム70〜85%から成り、水と反応させると、短時間で約90℃〜約100℃の水蒸気を発生させ、60℃に降下するまでの持続時間が、少なくとも20分間となる。
【0058】
さらに、塩化ナトリム(NaCl)を添加することで、発生熱量を増加させ、さらに塩化マグネシウム(MgCl2)を添加することで、発熱時間の延長と水素の発生量の低減化することができる。
【0059】
また、発熱剤が水に反応し発熱することによってアルカリ性になるために、中和剤を添加することで中和する。この中和剤は、有機のジ−またはポリ−カルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、および類似の酸、そして特にヒドロキシ酸、例えばクエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸および類似の酸、ならびに安息香酸およびリン酸および他の無機酸を含む。
【0060】
中和剤のタイプおよび量は、pH6.0〜8.0程度にすることが好ましく、価格などの点でクエン酸が好ましい。また、また、中和剤は、例えばカプセル剤、粒剤または小錠剤において存在してもよい。そのようなカプセル剤、粒剤または小錠剤は、大きさ、例えば50〜250μmを有し、そして吸収材料全体に均等に分布されていてもよい。
【0061】
ここで、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むとしたのは、発熱時に臭気をほとんど発しないこと、熱発生効率が比較的よく、直接食品を加熱して飲食することができるからである。
【0062】
また、飲食時に耐熱性容器2を開封して注入される水を電解還元水とすることができ、電解還元水によって発熱剤が反応し発熱することによってアルカリ性になることが抑制され、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰するだけでよく、中和剤が不要になる。
【0063】
「透水性袋」
この実施の形態では、発熱剤パック4が発熱剤を透水性袋に封入したものであり、透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、水が浸透するが内部に封入された発熱剤が外部に漏れ出すことがないようになっている。
【0064】
(発熱剤パックの1例)
発熱剤パック4の全体形状は、図10に示すように、平面視したときに矩形であることが一般的であるが、この形状に限定する必要はない。加熱剤の製造方法から理解できるように矩形が最も製造し易い形状ではあるが、その加熱剤が使用される食品等に応じて、種々の形状を選択し得る。たとえば、三角形や一部の辺が曲線に形成された形等が、矩形以外の形状として挙げられる。
【0065】
発熱剤パック4は、図11に示すように、発熱剤40と、この発熱剤40を封入した透水性袋41とを含めてある。発熱剤パック4は食品の加温、加熱に用いる。発熱剤40は、加水によって発熱可能な性質、すなわち加えられた水に接触して発熱反応を起こし、熱を発する性質を有する。
【0066】
この実施形態に係る透水性袋41は、超音波、高周波、熱などの溶着性繊維を含む透水性の織布によって構成されてあり、全体に袋状を呈する。透水性袋41を袋状に形成するためには、部分的に超音波、高周波、熱など溶着部位を形成する必要がある。織布を製造する段階で袋状に形成することはできないから、シート状に形成した1枚の布を折り曲げ、折り曲げによって重なった部分を溶着させる必要があるからである。折り曲げを行わずに2枚の布を溶着のみによって袋状に形成することも可能である。
【0067】
溶着性繊維を含む織布には、たとえば、溶着性繊維のみで織られた織布、溶着性繊維と溶着性繊維以外の繊維とで織られた織布がある。また、透水性袋41は溶着性繊維を含む透水性の不織布で形成することができる。溶着性繊維を含む不織布には、たとえば、含まれる繊維が溶着繊維のみである不織布、含まれる繊維が溶着繊維以外の繊維を含む不織布がある。溶着性繊維は、たとえばポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維のような合成繊維から成り、超音波、高周波、熱などのを加えると軟化、溶融する性質を有する。
【0068】
織布と不織布のいずれを選択するかは使用者・製造者の好みによるが、この実施形態は織布を採用した。
【0069】
透水性袋41を構成する織布は、これを構成する溶着性繊維が好ましくはポリエステル繊維のみから構成される。つまり、ポリエステル繊維以外の繊維を混入させるよりは、混入させないほうがよい。異なる繊維を混在させると溶着の調整が難しくなる等の不都合が予想されるからである。
【0070】
また、透水性袋41を構成する織布の織密度は、織布の1平方インチ(2.54cm×2.54cm)当たりのたて糸及びよこ糸の本数を、300乃至1200本とすることが望ましい。これによれば、透水性袋41からの発熱剤40の漏れを防止することができるからである。300本未満の織密度を除外した理由は、300本を下回ると織布の目が粗くなりすぎて発熱剤40が透水性袋41から漏れ出す恐れがあるため、そのような恐れをなくすためである。他方、1200本を越える織密度を除外した理由は、1200本を超えると織布の目が細かすぎて通水性が充分に確保できないおそれがあるので、そのような恐れをなくすためである。
【0071】
繊維径を上記範囲から外れる範囲に設定することを妨げるものではないが、繊維径を上記範囲に設定した理由はこれらの点にある。さらに、上記範囲内における織密度の選択により、水が織布に浸透するのに要する時間、したがって水が発熱剤40に接し、これが発熱するのに要する時間を調整することができる。実験によれば、織密度が、300本前後の場合は加水後即座に、500本前後の場合は加水後5秒前後経過後に、800本前後の場合は加水後60秒前後経過後に、さらに、1200本前後の場合は加水後1週間前後経過後に、それぞれ発熱剤40が発熱することが分かった。
【0072】
透水性袋41には透水性が求められるが、この透水性があるがゆえに、発熱剤パック4に水をかけることによって、透水性袋41の織布41a,41bを通して発熱剤40に加水することができる。織布41a,41bを介して発熱剤40に加えられた水は、発熱剤40に触れることによって発熱剤40を発熱させ、その発熱に伴って水が、加熱、気化され、水蒸気となる。この水蒸気は透水性袋41にその内部からその外部に向けて蒸気圧を及ぼし、その一部が透水性袋41を構成する織布41a,41bの目を抜けて内部から外部に漏出する。漏出水蒸気の熱と発熱剤パック4自体が持つ熱が、直接又は空気等を介して間接に食品3の物質に伝達して加温又は加熱作用を及ぼす。
【0073】
透水性袋41は溶着部位50を有する。溶着部位50は、織布41a,41b同士をこれらの間に発熱剤40の封入空間が生じるように溶着することによって形成される。溶着部位50を有する透水性袋41は、図10に示すように、一枚の細長い矩形状の織布を折り重ねることにより生じた2枚の織布41a,41bのコ字形の周縁を溶着することにより、あるいは、たとえば図12に示すように、互いに重ねあわされた2枚の織布を矩形の四辺に沿って溶着すること等により形成することができる。折り重ねを行った場合には、折れ曲がりの部分には溶着部位は形成されない。
【0074】
溶着部位50は、外郭に位置する外郭部位50aと、この外郭部位50aに包囲されこれに隣接する内郭部位50bとを有し、発熱剤40の封入空間は内郭部位50bにより直接に区画されている。このため、内郭部位50bは、発熱剤40に直接触れることになる。
【0075】
外郭部位50aと内郭部位50bとは、外郭部位50aの溶着力が内郭部位50bの溶着力よりも強いものであるように設定されている。例えば、外郭部位50aの溶着力が、内郭部位50bの溶着力よりも徐々に強く設定され、この徐々に強くは、段階的でもよく、段階的でなく連続的でもよい。
【0076】
また、外郭部位50aの溶着力の程度及び内郭部位50bにおける溶着力の程度は、織布41a,41bが発熱剤40への加水により発生した水蒸気の圧力(蒸気圧)を受けるとき、織布41a,41bが内郭部位50bにおいて剥離可能であり、かつ外郭部位50aの少なくとも一部において剥離不能であり、これにより透水性袋41内外すなわち封入空間内外を連通不能であるように設定されている。
【0077】
また、内郭部位50b自体を内から外に向かって段階的に溶着力を高めておくこと、これと併せ、又は、これに代わり、外郭部位50a自体を内から外に向かって段階的(たとえば、2段階に)に溶着力を高めておくこともできる。一気に剥離されるよりも段階的に剥離されるほうが、透水性袋41の破れをより生じづらくすることができると考えられるからである。
【0078】
これによれば、図11に示すように、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布41a,41bが蒸気圧を受けて膨らみ、織布41a,41bを通して水蒸気Vが外部に発散されるとき、内郭部位50bに剥離が生じる(想像線で示す)。このとき、織布41a,41bを押し広げようとする蒸気圧エネルギーの一部が内郭部位50bの剥離のために消費され、蒸気圧が低下する。つまり、内郭部位50bは、外郭部位50aに強い圧力が加わらないようにするための緩衝部位としての機能を有している。
【0079】
また、内郭部位50bの剥離により、発熱剤40の封入空間の容積が増大し、これによっても蒸気圧の低下が生じる。さらに、発生水蒸気の一部が織布41a,41b を通して透水性袋41外に流出し、これによっても蒸気圧が低下する。低下した蒸気圧は、内郭部位50bに連なる外郭部位50aに剥離力を及ぼすが、外郭部位50aの全部を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位50aの少なくとも一部が剥離されずに残り、これにより透水性袋41内外の連通、すなわち透水性袋41の破れが防止される。
【0080】
外郭部位50aの幅寸法及び内郭部位50bの幅寸法、これらの部位の溶着の程度等は、発熱剤40の量、織布41a,41bの引っ張り強度等を考慮して、適宜に定められる。前述したように織布の折り重ねを行った場合には折れ曲がり部分には溶着部位は形成されないから、その部分について緩衝機能を期待することができない。形成されない分だけ形成された内郭部位50bに余計な負担が掛かるから、内郭部位50bの設計に当たって、その余計な負担を考慮した設定が必要である。
【0081】
また、図示の例では、発熱剤パック4が全体に矩形の平面形状を有するが、これに代えて他の任意の平面形状を有するものとすることができる。さらに、溶着部位50の形状を他の任意の平面形状を有するものとすることができる。たとえば、前記コ字形とする図示の例に代えて半円形とし、前記矩形とする例に代えて円形とすることができる。
【0082】
(発熱剤パックの1例の製造方法)
図10に示す発熱剤パック4は、次のようにして製造することができる。まず、溶着性繊維を含む透水性の織布を調達する(素材調達工程)。次に、調達した織布を折り重ね、重ね合わされた織布同士を溶着することにより、発熱剤40を透水性袋41内に封入する(発熱剤パック形成工程)。
【0083】
発熱剤40の封入には、たとえば、一部未溶着の透水性袋41を形成し、その未溶着部分(開口部)を介して発熱剤40を充填した後に未溶着部分を溶着する方法や、発熱剤40を載せた一方の織布の上に他方の織布を重ねて発熱剤40を挟み、挟んだ発熱剤40を囲むように重ね合わせた織布同士を溶着する方法などがある。
【0084】
素材調達工程においては、たとえば、細長いストリップ状の織布を準備する。ストリップ状の織布に発熱剤パック形成工程を適用することにより、互いに連なる複数の発熱剤パック4を連続的に製造することができる。得られた複数の発熱剤パック4は、必要に応じて、このままの状態ですなわち連続した状態で、あるいはこれを切断して単体にして、前記した用途に供することができる。
【0085】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図13に示すように構成することができる。この装置は、織布の長手方向(上下方向)に伸びる一対の加熱シーラー67,67と、加熱シーラー67,67の下方位置にあって織布の横断方向(横方向)へ伸びる一対の加熱シーラー69,69とが配置され、さらに織布41a,41bをその長手方向へ送るための一対の送りローラ80,80とを備える。
【0086】
織布を一対の加熱シーラー67,67間に通し、加熱シーラー67,67で両側から挟持し、押圧すると、織布が2つに折り重ねられ、折り重ねにより生じた2枚の織布41a,41bがこれらの縁部において互いに熱溶着される。この熱溶着は、織布を送りローラ80,80で移動させる間に行われる。
【0087】
織布41a,41bが予め定められた距離を移動された後、送りローラ80,80の作動を停止し、加熱シーラー69,69により2枚の織布41a,41bの縁部を両側から挟持、押圧し、熱溶着する(図13(a))。その後、溶着された2枚の織布41a,41b 間に所定量の発熱剤40が充填される。
【0088】
次に、加熱シーラー67,69をそれぞれ開いて、すなわち2枚の織布41a,41bの縁部から離し(図13(b))、送りローラ80,80を作動させることにより、加熱シーラー67,67が未熱溶着箇所に相対することとなるまで、織布41a,41bが移動される。その後、前記したと同様にして、加熱シーラー67,69による2枚の織布41a,41b の縁部の熱溶着が行われ、これにより1つの発熱剤パック4が形成される。
【0089】
このとき、図14に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、熱溶着の程度が異なる2つの部位50a,50bが縁部の外郭及びその内郭に生じるように、各対の加熱シーラー67,69の互いに相対する両面に2つの熱伝達抑制層81が配置されている。熱伝達抑制層81は、たとえばポリテトラフルオロエチレン製のシートからなり、両加熱シーラー67,69からこれらに挟まれた2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への熱の伝達を制限する。
【0090】
これによれば、加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への熱の移動が抑制され、これにより熱溶着の程度が異なる2つの部位、すなわち外郭に溶着度の高い外郭部位50aが形成され、外郭部位50aに隣接包囲された内郭に溶着度の低い内郭部位50bが形成される。
【0091】
外郭部位50aを形成するために加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部に付与される温度(T)と、内郭部位50aを形成するために熱伝達抑制層81を介して加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部に付与される温度(t)とは、外郭部位50a及び内郭部位50bにおける熱溶着の度合いが、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位50bの剥離を可能とし、かつ、外郭部位50bの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能とするように、設定されている。
【0092】
たとえば、織布として、織密度が500乃至750本のポリエステル繊維糸からなる織物を用いる場合における前記温度Tおよびtの値は、それぞれ、165乃至170℃及び130乃至150℃が適当であり、また前記織物に対する加熱シーラーの押し付け時間は0.5乃至1.5秒が適当である。
【0093】
互いに重ねあわされた2枚の織布を矩形の四辺に沿って熱溶着することにより形成される熱溶着部位を有する加熱剤の製造は、図13に示す装置にさらに他の一対の加熱シーラーを追加してなる装置を用いて行うことができる。前記他の一対の加熱シーラーは、加熱シーラー67と同様のものからなり、加熱シーラー67と平行に配置される。これによれば、加熱シーラー67及び追加の加熱シーラーにより前記矩形の熱溶着部位のうちの互いに平行な2辺に沿って伸びる2つの部分を同時に形成することができ、また、加熱シーラー69により前記矩形の熱溶着部位のうちの他の平行な2辺に沿って伸びる2つの部分を順次に形成することができる。
【0094】
(発熱剤パックの2例)
溶着部位50の溶着の強さの程度を外郭部位50aと内郭部位50bとで異なるものとする第1の実施形態に代えて、図15,16に示すように、溶着部位50全体の溶着の程度を一様なものとし、かつ外郭部位50aのみを補強したものとすることができる。外郭部位50aの補強は、外郭部位50aにたとえばその周囲に沿って伸び、かつ、これを覆うコ字形の横断面形状を有するプラスチック製のカバー51を外郭部位50aに固定することにより行うことができる。
【0095】
図16に示す発熱剤パック4によれば、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布41a,41bが蒸気圧を受けて膨らみ、織布41a,41bを通して水蒸気Vが外部に発散されるとき、内郭部位50aに剥離が生じ(想像線で示す)、前記したと同様、内郭部位50bの剥離のために蒸気圧エネルギーの一部が消費され、これにより前記蒸気圧が低下する。このとき、内郭部位50bへの剥離作用がこれに隣接する外郭部位50aに及ぼうとするが、外郭部位50aをその周囲から覆うカバー51が外郭部位50aへの剥離作用の伝達を止める働きをなすため、外郭部位50aに剥離作用が及ばず、このため、外郭部位50aが剥離せずに残り、透水性袋41の破れが防止される。
【0096】
(発熱剤パックの3例)
他の例の発熱剤パック4として、発熱剤パック4の1例の透水性袋41における溶着部位50の代わりに、接着剤で接着してなる接着部位を有するもの(図示せず)がある。接着部位を有する透水性袋41を構成する織布については、透水性を有するものであれば、前記溶着性繊維を含むものであるか否かを問わない。前記溶着部位を有しないためである。また、前記織布に代えて、透水性を有する不織布とすることができる。前記不織布には和紙も含まれる。
【0097】
前記接着部位は、図10,11に示す発熱剤パック4におけると同様、外郭に位置する外郭部位と、当該外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位とによって構成してあり、前記外郭部位の接着力は前記内郭部位の接着力より強く設定され、この設定は、段階的に強く設定されてもよく、徐々に強く設定されてもよい。
【0098】
前記外郭部位の接着力及び前記内郭部位の接着力については、加水された発熱粉体の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かっ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能であるように設定されている。
【0099】
なお、前記した溶着部位と同様、前記内郭部位自体を内から外に向かって段階的に接着力を高めておくと共に、又はこれに代えて、前記外郭部位自体を内から外に向かって段階的(たとえば、2段階に)に接着力を高めておくこともできる。
(発熱剤パックの3例の製造方法)
前記接着部位を有する発熱剤パックの製造方法は、透水性の織布を調達する素材調達工程と、この素材調達工程で調達した織布を折り重ね、折り重ねにより生じた2枚の織布同士を接着剤で接着することにより、又は、2枚の織布同士を接着剤で接着することにより、発熱剤40を透水性袋41内に封入する発熱剤パック形成工程とを含めてなる。なお、素材調達工程においては、前記織布を調達することに代えて、前記透水性の不織布を調達し、この不織布を用いて前記発熱剤パック形成工程を行うことができる。
【0100】
前記発熱剤パック形成工程において、前記織布を接着剤で接着することにより接着部位が形成される。前記接着部位は、比較的大きい接着力(P)をもって外郭に形成される外郭部位と、比較的小さい接着力(p)をもって前記外郭部位に隣接包囲された内郭に形成される内郭部位とによって構成してある。前記接着力(P)と前記接着力(p)とは、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって当該内郭部位が剥離可能、かつ、当該外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって当該透水性袋41内外を連通不能となるように設定してある。
(発熱剤パックの4例)
前記接着部位の接着力の程度、すなわち接着力の大きさを前記外郭部位と前記内郭部位とで異なるものとする前記第3の実施形態の例に代えて、前記接着部位全体の接着力の程度を一様なものとし、前記したと同様、前記外郭部位のみを、図15、図16に示した例におけると同様、前記外郭部位の周囲を覆うコ字形横断面形状のプラスチック製のカバーにより、補強することができる。
【0101】
(発熱剤パックの5例)
図17の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤40を封入した透水性袋41が、前記織布同士の接着ではなく、透水性の織布42とプラスチック製、木製等の耐熱性の封鎖部材45とを接着剤で接着することにより形成されている。封鎖部材45は、図示の例では板部材からなるが、織布42と協同して封鎖空間、すなわち発熱剤40のための封入空間を形成しうるものであれば、その形状を問わない。
【0102】
発熱剤パック4は、織布42と封鎖部材45とを接着剤で接着することによって形成された接着部位43を有する。接着部位43は平面で見て矩形、円形等の閉曲線に沿って伸びている。発熱剤40は、前記閉曲線で囲まれた範囲において、織布42と封鎖部材45との間に封入され、織布42を通して、発熱剤40への加水が行われる。
【0103】
接着部位43は、外郭に位置する外郭部位43aと、外郭部位43aに隣接包囲された内郭に位置する内郭部位43bとによって構成してあり、外郭部位43aの接着力が内郭部位43bの接着力よりも強いもの(大きいもの)に設定されている。これにより、加水された発熱剤40の発熱によって発生した水蒸気Vの圧力(蒸気圧)を受ける内郭部位43bにおいて織布42が封鎖部材45から剥離可能であり、かつ、外郭部位43aにおける織布の少なくとも一部が封鎖部材45から剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能に構成してある。
【0104】
これによれば、織布42を押し広げようとする蒸気圧エネルギーの一部が内郭部位43bの剥離すなわち内郭部位43bにおける織布42の剥離のために消費される。これによって前記蒸気圧の低下が生じる。また、内郭部位43bの剥離により、発熱剤40の封入空間の容積が増大し、これによっても前記蒸気圧の低下が生じる。さらに、発生水蒸気の一部が織布42を通して透水性袋41外に流出し、さらに前記蒸気圧の低下が生じる。低下した蒸気圧は、内郭部位43bに連なる外郭部位43aに剥離力を及ぼすが、外郭部位43aの全部を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位43aの少なくとも一部が剥離されずに残り、透水性袋41内外の連通、すなわち透水性袋41の破れが防止される
(発熱剤パックの6例)
接着部位43を接着力の大きさの異なる外郭部位43aと内郭部位43bとで構成する図19に示す例に代えて、接着部位全体の接着力を、たとえば内郭部位における接着力と同じ大きさのものとし、外郭部位のみを補強したものとすることができる(図示せず)。外郭部位の補強は、図15,16に示す例におけると同様、外郭部位にその周囲を覆うコ字形断面のプラスチック製のカバー(図示せず)を前記外郭部位に固定することにより行うことができる。
【0105】
これによれば、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布が蒸気圧を受けて膨らむとき、内郭部位が剥離力を受けて剥離する。しかし、外郭部位は前記カバーによる補強のために剥離せず、これにより透水性袋41の破れが防止される。なお、この例においても、前記織布に代えて、透水性の不織布を用いることができる。
【0106】
(発熱剤パックの7例)
図18の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤40を封入した透水性袋41が、超音波溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、第1乃至第6の実施形態と同様なものが用いられる。透水性袋41の溶着部位60は、織布又は不織布同士を超音波溶着することによって形成され、外郭に位置する外郭部位60aと、この外郭部位60aに隣接包囲された内郭に位置する内郭部位60bとによって構成してあり、第1乃至第6の実施形態と同様に、発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位60bが剥離可能、かつ、外郭部位60aの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能に構成してある。
【0107】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図19に示すように構成することができる。この装置は、織布41a,41bの長手方向(上下方向)に伸びる超音波ホーン77と、この超音波ホーン77の下方位置にあって織布41a,41bの横断方向(横方向)へ伸びる超音波ホーン79とが配置され、さらに織布41a,41bをその長手方向へ送るための一対の送りローラ80,80とを備える。
【0108】
織布41a,41bが2つに折り重ねられ、折り重ねにより生じた2枚の織布41a,41bが、これらの縁部において互いに超音波ホーン77によって超音波溶着される。この超音波溶着は、織布41a,41bを送りローラ80,80で移動させる間に行われる。
【0109】
織布41a,41bが予め定められた距離を移動された後、送りローラ80,80の作動を停止し、超音波ホーン79により2枚の織布41a,41bの縁部を両側から挟持、押圧し、超音波溶着する(図19(a))。その後、超音波溶着された2枚の織布41a,41b 間に所定量の発熱剤40が充填される。
【0110】
次に、図19(b)に示すように、送りローラ80,80を作動させることにより、超音波ホーン77が未超音波溶着箇所に相対することとなるまで、織布41a,41bが移動される。その後、前記したと同様にして、超音波ホーン77,79による2枚の織布41a,41b の縁部の超音波溶着が行われ、これにより1つの発熱剤パック4が形成される。
【0111】
このとき、図20に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、超音波ホーン77,79は先端部にテ−パ77a,79aが形成されており、このテ−パ77a,79aによって外郭部位50bの溶着力が、内郭部位50aの溶着力よりも徐々に強く設定することができる。
【0112】
これによれば、超音波ホーン77,79から2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への超音波がテ−パ77a,79aによって抑制され、これにより超音波溶着の程度が外郭部位50bが、内郭部位50aよりも徐々に強くなり、超音波溶着されている部分と、超音波溶着されていない部分との境界が曖昧となり、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位50bの剥離を可能とし、かつ、外郭部位50bの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能とするように、設定されている。
【0113】
(発熱剤パックの8例)
図21の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤パックの7例と同様に構成されるが、織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位60が、発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位60の一部60cが剥離可能、かつ、溶着部位60の一部60dが剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能に構成してある。この実施の形態では、溶着部位60の一部60cと、溶着部位60の一部60dとが、千鳥状になるように設けられている。
【0114】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図19の装置と同様に構成され、図22に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、超音波ホーン77,79によって溶着部位60の一部60cが溶着力が、溶着部位60の一部60dの溶着力よりも弱く設定することができ、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位60の一部60cが剥離可能、かつ、溶着部位60の一部60dが剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能とするように、設定されている。
【0115】
発熱剤パックの7例及び8例は、超音波溶着を行うものであるが、これに限らず、高周波溶着でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
この発明は、乾燥食品を、場所、時間を選ばず、随時飲食することができる携帯食品に適用可能であり、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易で、飲食時には開封して水を注入するだけで乾燥食品を飲食可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図3】第1の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図4】第2の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図6】第2の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図7】第3の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図8】第3の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図9】第3の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図10】発熱剤パックの1例の斜視図である。
【図11】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図12】他の発熱剤パックの斜視図である。
【図13】発熱剤パックの1例の製造方法を説明する図である。
【図14】発熱剤パックの他の溶着部位を示す断面図である。
【図15】発熱剤パックの2例の斜視図である。
【図16】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図17】他の発熱剤パックの断面図である。
【図18】発熱剤パックの7例の斜視図である。
【図19】発熱剤パックの7例の製造方法を説明する図である。
【図20】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図21】発熱剤パックの8例の斜視図である。
【図22】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 携帯食品
2 容器
3 食品
4 発熱剤パック
40 発熱剤
41 透水性袋
43 接着部位
50,60 溶着部位
67,69 加熱シーラー
77、79 超音波ホーン
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥食品を、場所、時間を選ばず、随時飲食可能にすることができる携帯食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の加熱容器と携帯した食品を組み合わせることが知られており、例えば、特開昭59−131317号公報(特許文献1)に、内部に発熱体を収納した所定形状の容器が開示されている。これは使用に際して、加熱容器内に直接食品を収納し、或いはコップなどの容器を収納して食品の加温をなすようにしているものである。
【0003】
また、実公平5−13326号公報(特許文献2)には、上部を開閉できるパック体の中に発熱体を収納した加熱パックが示されており、これはパック上部を開口し所望の食品を収納して加温するものである。
【0004】
また、特許第3467729号(特許文献3)には、発熱剤を包装した発熱剤パックを、上面開口する発熱用トレー内に水パックとともに収容し、発熱用トレーの上面開口縁部を、保護シートで、水パックと保護シートを同時に開裂するティアテープと一緒に、ヒートシールした加熱ユニットを開示している。
【特許文献1】特開昭59−131317号公報
【特許文献2】実公平5−13326号公報
【特許文献3】特許第3467729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、加熱剤と食品を区別するものであり、加熱容器の構造が複雑で製作コストがかかる。また、特許文献2では、加熱パックと、加熱対象食品とが別々であり、飲食時にパック上部を開口し所望の食品を収納して加温しなければならず、取り扱いが面倒である。また、特許文献3では、食品とは区別して発熱剤パックと水パックとを収容する構造であり、発熱用トレーの構造が複雑で製作コストがかかり、かつ水パックを収納する分、大型化し、重量も嵩むなどの問題がある。
【0006】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易で、飲食時には開封して水を注入するだけで乾燥食品を飲食可能にすることができる携帯食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封し、
飲食時に前記耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を前記食品に吸収させると共に、前記水により前記耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、前記水の温度を上昇させることを特徴とする携帯食品である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯食品である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記発熱剤を透水性袋に封入したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯食品である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、外郭に位置する外郭部位と、この外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位と、によって構成してあり、
前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かつ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記溶着部位の一部が剥離可能、かつ、前記溶着部位の一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記剥離不能な一部の溶着力が、前記剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項7に記載の携帯食品である。
【発明の効果】
【0016】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0017】
請求項1に記載の発明では、飲食前には、乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封しており、耐熱性容器は特別な構造にする必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0018】
飲食時には、耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を食品に吸収させると共に、水により耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、水の温度を上昇させて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品を食することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含み、水を注入するだけで発熱して食品を加熱し容易に可食状態とすることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、発熱剤を透水性袋に封入し、携帯食品に応じた適量の発熱剤パックとすることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、発熱剤の発熱によって発熱に供した水が気化して水蒸気となり、水蒸気の発生は蒸気圧を発生させ、この蒸気圧がエネルギーとなって透水性袋を内側から押し広げようとする。この蒸気圧エネルギーが、溶着部位を構成する内郭部位を剥離する。この内郭部位を剥離するためには相応のエネルギーが消費されるが、その消費された分、蒸気圧エネルギーは小さくなる。また、内郭部位の剥離に伴って透水性袋の体積が増大するところ、これによって蒸気圧が減少する。さらに、一部の水蒸気は織布又は不織布を介して透水性袋外部に流出する。水蒸気流出も蒸気圧を小さくする一因でもある。小さくなった蒸気圧エネルギーは外郭部位を剥離する方向に働くが、外郭部位を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位の一部又は全部が剥離されずに残り、これによって、透水性袋内外の連通、すなわち、透水性袋の破れが有効に防止される。なお、溶着度合いに基づく溶着力のバラツキや蒸気圧の高低(水蒸気発生量の多少)等により、内郭部位に多少の未剥離部位が残存し、また、外郭部位に多少の剥離が生じる場合が想定されるが、そのような場合もこの発明の範囲内である。すなわち、剥離を意図的に行わせる部位が内郭部位であり、本来であれば剥離を予定していないが内郭部位の剥離だけでは蒸気圧を抑えきれない場合に予備的な剥離を行わせる部位が外郭部位であり、最終的に、透水性袋内外の連通が防止されればよい。
【0022】
請求項5に記載の発明では、外郭部位の溶着力を内郭部位の溶着力よりも強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより内郭部位が先に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは外郭部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【0023】
請求項6に記載の発明では、外郭部位の溶着力を内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより内郭部位が先に徐々に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは外郭部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【0024】
請求項7に記載の発明では、請求項4に記載の発明の効果と同様であるが、溶着部位が、発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位の一部が剥離可能、かつ、溶着部位の一部が剥離不能であることによって透水性袋内外を連通不能であることによって、溶着部位の一部又は全部が剥離されずに残り、これによって、透水性袋内外の連通、すなわち、透水性袋の破れが有効に防止される。
【0025】
請求項8に記載の発明では、剥離不能な一部の溶着力を剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定することによって、透水性袋が発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧が作用したときに、蒸気圧の作用に伴うエネルギーにより溶着力の弱い溶着部位の一部が先に剥離され、剥離によってもなお残るエネルギーは溶着部位の一部又は全部に打ち負かされ、その結果、透水性袋の破れが有効防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の携帯食品の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0027】
[第1の実施の形態の携帯食品の構造]
図1および図2は第1の実施の形態の携帯食品を示したもので、図1は斜視図、図2は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装しない乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0028】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。
【0029】
耐熱性容器2は、アルミニウムなどの金属箔シート、耐熱性樹脂シートなどの耐熱体で構成され、外周に固着部2aを有する方形の袋状であるが、これに限定されない。この実施の形態の耐熱性容器2の開封側には、両側部に開封するための目安となる切り欠き20が形成され、開封側の固着部2aより内側に切り欠き20を結ぶ切り取り線21が形成されている。取り線21の内側には、シール部2bが線状に形成され、このシール部2bは凹部2b1と、凸部2b2とからなっているが、切り欠き20やシール部2bは設けなくてもよい。
【0030】
乾燥した食品3は、例えば調理済の乾燥ピラフ、乾燥米飯などである。乾燥米飯としては、白飯、雑炊などがある。食品3は、乾燥した食品に限定されず、半乾燥した食品でもよく、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどでもよい。
【0031】
耐熱性容器2には、さらに脱酸素剤3a、スプーン3bなどを一緒に収容して密封してもよい。
【0032】
[第1の実施の形態の携帯食品の飲食]
図3は第1の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図3(a)に示すように、飲食前には、包装しない乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、乾燥した食品3と発熱剤パック4とが一緒に耐熱性容器2に収容して密封してあるだけである。
【0033】
また、耐熱性容器2には、さらに脱酸素剤3a、スプーン3bなどを一緒に収容して密封することがある場合だけであり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パックをセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0034】
飲食時には、図3(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、脱酸素剤3a、スプーン3bを取り出し、図3(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0035】
耐熱性容器2の密封は、図3(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。耐熱性容器2を密封状態とすることで、発熱剤パック4によって短時間に水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にすることができる。
【0036】
図3(e)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除し、スプーン3bを用いて飲食することができる。このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥食品3に水分を与えて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第2の実施の形態の携帯食品の構造]
図4および図5は第2の実施の形態の携帯食品を示したもので、図4は斜視図、図5は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装した乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0037】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、包装から取り出した乾燥した食品3と、発熱剤パック4と、を直接接触させ、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能にする。
【0038】
耐熱性容器2は、第1の実施の形態と同様に構成されるから同じ符号を付して説明を省略する。また、乾燥した食品3は、例えば調理済の乾燥ピラフ、乾燥米飯などであり、透明樹脂袋30でパックされ、さらに調味料パック3c、スプーン3bなどとともに透明樹脂袋31でパックされている。また、食品3は、乾燥した食品に限定されず、半乾燥した食品、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどでもよいことは、第1の実施の形態の携帯食品と同様である。
【0039】
[第2の実施の形態の携帯食品の飲食]
図6は第2の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図6(a)に示すように、飲食前には、包装した乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パック4をセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0040】
飲食時には、図6(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、透明樹脂袋31から乾燥した食品3を入れた透明樹脂袋30、調味料パック3c、スプーン3bを取り出す。さらに、透明樹脂袋30から乾燥した食品3を取り出し耐熱性容器2の内部に入れ、調味料パック3cから調味料を取り出して、耐熱性容器2の内部に入れてスプーン3bでかきまぜ、スプーン3bは耐熱性容器2の内部に入れないで、図6(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0041】
耐熱性容器2の密封は、図6(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥食品3に水分を与えて飲食可能にする。耐熱性容器2を密封状態とすることで、発熱剤パック4によって短時間に乾燥した食品3に加熱した水分を与えて飲食可能にすることができる。
【0042】
図6(e)に示すように、耐熱性容器2のシール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除することで、スプーン3bを用いて飲食することができる。
【0043】
このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、包装から取り出した乾燥した食品3と、発熱剤パック4と、を直接接触させ、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて乾燥した食品3に水分を与えて飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第3の実施の形態の携帯食品の構造]
図7および図8は第3の実施の形態の携帯食品を示したもので、図7は斜視図、図8は断面図である。この実施の形態の携帯食品1は、耐熱性容器2に、包装した乾燥した食品3と、発熱剤を透水性袋に封入した発熱剤パック4と、を直接接触が可能な状態で収容して密封したものである。
【0044】
飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水を耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封し、発熱剤パック4の発熱剤が水に反応して発熱し、水の温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能にする。
【0045】
耐熱性容器2は、第1の実施の形態と同様に構成されるから同じ符号を付して説明を省略する。また、乾燥した食品3は、例えばコーヒー粉を包装したコーヒーパック、お茶や紅茶の粉を包装したテーパックなどである。
【0046】
[第3の実施の形態の携帯食品の飲食]
図9は第3の実施の形態の携帯食品の飲食状態を示す図である。この携帯食品1は、図9(a)に示すように、飲食前には、包装した乾燥した食品3と、発熱剤パック4とを直接接触が可能な状態で耐熱性容器2に収容して密封した食品であり、耐熱性容器2は乾燥した食品3と発熱剤パック4を区別する特別な構造や、発熱剤パック4をセットする構造などを設ける必要がなく、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易である。
【0047】
飲食時には、図9(b)に示すように、携帯食品1は、耐熱性容器2を切り欠き20から切り取り線21に沿って切断して開封する。そして、図9(c)に示すように、コップ5から水5aを所定量注入し、耐熱性容器2を密封する。
【0048】
耐熱性容器2の密封は、図9(d)に示すように、シール部2bの凹部2b1と凸部2b2を嵌め合うことで行われ、この密封状態で発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能にする。
【0049】
図9(e)に示すように、耐熱性容器2のシール部2bの凹部2b1と凸部2b2の嵌め合いを解除することで、耐熱性容器2から適当な時間を経過したときに温水を飲むことができる。
【0050】
このように、飲食時には、耐熱性容器2を開封して、外部から水5aを耐熱性容器2内に注入して耐熱性容器2を密封するだけで、発熱剤パック4の発熱剤が水5aに反応して発熱し、水5aの温度を上昇させて包装した乾燥した食品3に水分を与え、乾燥した食品3から出る成分で温水を飲食可能になるから、いつでもどこでも簡単に携帯食品1を食することができる。
[第4の実施の形態の携帯食品]
第4の実施の形態の携帯食品は、第1乃至第3の実施の形態の携帯食品1と同様に構成されるが、この第1乃至第3の実施の形態の携帯食品1において乾燥または半乾燥した食品3のみを耐熱性容器2に収納して密封したものである。飲食時に、耐熱容器2を開封して、発熱剤パック4を入れて外部から水5aを注入し、この水5aを食品3に吸収させると共に、水5aにより耐熱性容器2に予め入れておいた発熱剤パック4の発熱剤を反応させて、水5aの温度を上昇させる。発熱剤パック4は、耐熱性容器2の外部に取り付けておいてもよいし、別に用意しておいたものを用いてもよい。
【0051】
次に、携帯食品1の構成を詳細に説明する。
【0052】
(耐熱性容器)
耐熱性容器2の材料と構造は、特段に限定されず、金属、プラスチックス、木、陶磁器、紙、ラミネートフィルム、各種材料の複合材から、食品、マーチャンダイジング、コスト等を勘案して、適宜選択される。マーチャンダイジングによっては、耐熱性容器を透明にして、内容物が観察できるようにした方がよい場合がある。その場合、透明単層の材料としては、スチレン系樹脂、ポリプロピレン、透明多層タイプにしたい場合には、ポリプロピレン/エバール/ポリプロピレンで、アルミニウム箔タイプにしたい場合には、外面保護塗料/アルミニウム箔/ヒートシールラッカー、外面保護塗料/アルミ箔/ポリプロピレンで製造することが好ましい。
【0053】
近年、使用済みプラスチックス容器の処理が問題になっている。使用済みプラスチックス容器の処理を速やかに、かつ、経済的に行うために必要な初期処理は、減容化である。したがって、耐熱性容器を、容易に減容化できる材料で製造すれば、環境問題に資することができる。
【0054】
耐熱性容器2の断面形状は、乾燥した食品または半乾燥した食品の種類によって異なる。食品として、たとえば、赤飯、白飯、五目飯、ちらし寿司等のご飯類、各種調理済み食品、総菜類、カレー、ビーフシチュー、グラタン、ピラフ等、ご飯などの場合は、トレー型が好ましい。釜飯、うどん、ラーメン、スパゲティー、おでん等液状食品には、カップ型が適している。
【0055】
(食品)
乾燥した食品3の種類は、特に限定されないが、前記したように、例えば、赤飯、白飯、五目飯、ちらし寿司等のご飯類、各種調理済み食品、総菜類、カレー、ビーフシチュー、グラタン、ピラフ等、ご飯など、また釜飯、うどん、ラーメン、おでん、スープ類、酒等液状食品などがある。これらの乾燥した食品3は樹脂などでパックされていてもよいし、パックされていなくてもよいが、液状食品はパックされている必要がある。半乾燥した食品の種類は、例えば生中華めん、生うどん、生そばめんなどがある。
(発熱剤パック)
発熱剤パック4は、発熱剤を透水性袋に封入して密封し、透水性袋から浸透する水によって発熱剤が反応し発熱する。この実施の形態では、発熱剤を透水性袋に封入して密封しているが、水に混入しないように固形化したものであれば、透水性袋に封入して密封しないでもよい。
【0056】
「発熱剤」
発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含む。発熱剤は、化学物質の発熱反応を利用したものであればよく、代表的なものでは、生石灰(酸化カルシウム)と水との水和反応を利用するタイプの発熱剤が使用される。
【0057】
発熱剤の質量当たり、100メッシュ(−150μm90%以上)〜200メッシュ(−75μm95%以上)の粉状の生石灰が15〜30%、及び−330メッシュ(−45μm)が40〜60%,+330メッシュ(+45μm)が15〜30%,+235メッシュ(+63μm)が15%>、+200メッシュ(+75μm)が10%>の粒度分布を有する粉状のアルミニウム70〜85%から成り、水と反応させると、短時間で約90℃〜約100℃の水蒸気を発生させ、60℃に降下するまでの持続時間が、少なくとも20分間となる。
【0058】
さらに、塩化ナトリム(NaCl)を添加することで、発生熱量を増加させ、さらに塩化マグネシウム(MgCl2)を添加することで、発熱時間の延長と水素の発生量の低減化することができる。
【0059】
また、発熱剤が水に反応し発熱することによってアルカリ性になるために、中和剤を添加することで中和する。この中和剤は、有機のジ−またはポリ−カルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、および類似の酸、そして特にヒドロキシ酸、例えばクエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸および類似の酸、ならびに安息香酸およびリン酸および他の無機酸を含む。
【0060】
中和剤のタイプおよび量は、pH6.0〜8.0程度にすることが好ましく、価格などの点でクエン酸が好ましい。また、また、中和剤は、例えばカプセル剤、粒剤または小錠剤において存在してもよい。そのようなカプセル剤、粒剤または小錠剤は、大きさ、例えば50〜250μmを有し、そして吸収材料全体に均等に分布されていてもよい。
【0061】
ここで、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むとしたのは、発熱時に臭気をほとんど発しないこと、熱発生効率が比較的よく、直接食品を加熱して飲食することができるからである。
【0062】
また、飲食時に耐熱性容器2を開封して注入される水を電解還元水とすることができ、電解還元水によって発熱剤が反応し発熱することによってアルカリ性になることが抑制され、発熱剤は、粒状または粉状の生石灰するだけでよく、中和剤が不要になる。
【0063】
「透水性袋」
この実施の形態では、発熱剤パック4が発熱剤を透水性袋に封入したものであり、透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、水が浸透するが内部に封入された発熱剤が外部に漏れ出すことがないようになっている。
【0064】
(発熱剤パックの1例)
発熱剤パック4の全体形状は、図10に示すように、平面視したときに矩形であることが一般的であるが、この形状に限定する必要はない。加熱剤の製造方法から理解できるように矩形が最も製造し易い形状ではあるが、その加熱剤が使用される食品等に応じて、種々の形状を選択し得る。たとえば、三角形や一部の辺が曲線に形成された形等が、矩形以外の形状として挙げられる。
【0065】
発熱剤パック4は、図11に示すように、発熱剤40と、この発熱剤40を封入した透水性袋41とを含めてある。発熱剤パック4は食品の加温、加熱に用いる。発熱剤40は、加水によって発熱可能な性質、すなわち加えられた水に接触して発熱反応を起こし、熱を発する性質を有する。
【0066】
この実施形態に係る透水性袋41は、超音波、高周波、熱などの溶着性繊維を含む透水性の織布によって構成されてあり、全体に袋状を呈する。透水性袋41を袋状に形成するためには、部分的に超音波、高周波、熱など溶着部位を形成する必要がある。織布を製造する段階で袋状に形成することはできないから、シート状に形成した1枚の布を折り曲げ、折り曲げによって重なった部分を溶着させる必要があるからである。折り曲げを行わずに2枚の布を溶着のみによって袋状に形成することも可能である。
【0067】
溶着性繊維を含む織布には、たとえば、溶着性繊維のみで織られた織布、溶着性繊維と溶着性繊維以外の繊維とで織られた織布がある。また、透水性袋41は溶着性繊維を含む透水性の不織布で形成することができる。溶着性繊維を含む不織布には、たとえば、含まれる繊維が溶着繊維のみである不織布、含まれる繊維が溶着繊維以外の繊維を含む不織布がある。溶着性繊維は、たとえばポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維のような合成繊維から成り、超音波、高周波、熱などのを加えると軟化、溶融する性質を有する。
【0068】
織布と不織布のいずれを選択するかは使用者・製造者の好みによるが、この実施形態は織布を採用した。
【0069】
透水性袋41を構成する織布は、これを構成する溶着性繊維が好ましくはポリエステル繊維のみから構成される。つまり、ポリエステル繊維以外の繊維を混入させるよりは、混入させないほうがよい。異なる繊維を混在させると溶着の調整が難しくなる等の不都合が予想されるからである。
【0070】
また、透水性袋41を構成する織布の織密度は、織布の1平方インチ(2.54cm×2.54cm)当たりのたて糸及びよこ糸の本数を、300乃至1200本とすることが望ましい。これによれば、透水性袋41からの発熱剤40の漏れを防止することができるからである。300本未満の織密度を除外した理由は、300本を下回ると織布の目が粗くなりすぎて発熱剤40が透水性袋41から漏れ出す恐れがあるため、そのような恐れをなくすためである。他方、1200本を越える織密度を除外した理由は、1200本を超えると織布の目が細かすぎて通水性が充分に確保できないおそれがあるので、そのような恐れをなくすためである。
【0071】
繊維径を上記範囲から外れる範囲に設定することを妨げるものではないが、繊維径を上記範囲に設定した理由はこれらの点にある。さらに、上記範囲内における織密度の選択により、水が織布に浸透するのに要する時間、したがって水が発熱剤40に接し、これが発熱するのに要する時間を調整することができる。実験によれば、織密度が、300本前後の場合は加水後即座に、500本前後の場合は加水後5秒前後経過後に、800本前後の場合は加水後60秒前後経過後に、さらに、1200本前後の場合は加水後1週間前後経過後に、それぞれ発熱剤40が発熱することが分かった。
【0072】
透水性袋41には透水性が求められるが、この透水性があるがゆえに、発熱剤パック4に水をかけることによって、透水性袋41の織布41a,41bを通して発熱剤40に加水することができる。織布41a,41bを介して発熱剤40に加えられた水は、発熱剤40に触れることによって発熱剤40を発熱させ、その発熱に伴って水が、加熱、気化され、水蒸気となる。この水蒸気は透水性袋41にその内部からその外部に向けて蒸気圧を及ぼし、その一部が透水性袋41を構成する織布41a,41bの目を抜けて内部から外部に漏出する。漏出水蒸気の熱と発熱剤パック4自体が持つ熱が、直接又は空気等を介して間接に食品3の物質に伝達して加温又は加熱作用を及ぼす。
【0073】
透水性袋41は溶着部位50を有する。溶着部位50は、織布41a,41b同士をこれらの間に発熱剤40の封入空間が生じるように溶着することによって形成される。溶着部位50を有する透水性袋41は、図10に示すように、一枚の細長い矩形状の織布を折り重ねることにより生じた2枚の織布41a,41bのコ字形の周縁を溶着することにより、あるいは、たとえば図12に示すように、互いに重ねあわされた2枚の織布を矩形の四辺に沿って溶着すること等により形成することができる。折り重ねを行った場合には、折れ曲がりの部分には溶着部位は形成されない。
【0074】
溶着部位50は、外郭に位置する外郭部位50aと、この外郭部位50aに包囲されこれに隣接する内郭部位50bとを有し、発熱剤40の封入空間は内郭部位50bにより直接に区画されている。このため、内郭部位50bは、発熱剤40に直接触れることになる。
【0075】
外郭部位50aと内郭部位50bとは、外郭部位50aの溶着力が内郭部位50bの溶着力よりも強いものであるように設定されている。例えば、外郭部位50aの溶着力が、内郭部位50bの溶着力よりも徐々に強く設定され、この徐々に強くは、段階的でもよく、段階的でなく連続的でもよい。
【0076】
また、外郭部位50aの溶着力の程度及び内郭部位50bにおける溶着力の程度は、織布41a,41bが発熱剤40への加水により発生した水蒸気の圧力(蒸気圧)を受けるとき、織布41a,41bが内郭部位50bにおいて剥離可能であり、かつ外郭部位50aの少なくとも一部において剥離不能であり、これにより透水性袋41内外すなわち封入空間内外を連通不能であるように設定されている。
【0077】
また、内郭部位50b自体を内から外に向かって段階的に溶着力を高めておくこと、これと併せ、又は、これに代わり、外郭部位50a自体を内から外に向かって段階的(たとえば、2段階に)に溶着力を高めておくこともできる。一気に剥離されるよりも段階的に剥離されるほうが、透水性袋41の破れをより生じづらくすることができると考えられるからである。
【0078】
これによれば、図11に示すように、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布41a,41bが蒸気圧を受けて膨らみ、織布41a,41bを通して水蒸気Vが外部に発散されるとき、内郭部位50bに剥離が生じる(想像線で示す)。このとき、織布41a,41bを押し広げようとする蒸気圧エネルギーの一部が内郭部位50bの剥離のために消費され、蒸気圧が低下する。つまり、内郭部位50bは、外郭部位50aに強い圧力が加わらないようにするための緩衝部位としての機能を有している。
【0079】
また、内郭部位50bの剥離により、発熱剤40の封入空間の容積が増大し、これによっても蒸気圧の低下が生じる。さらに、発生水蒸気の一部が織布41a,41b を通して透水性袋41外に流出し、これによっても蒸気圧が低下する。低下した蒸気圧は、内郭部位50bに連なる外郭部位50aに剥離力を及ぼすが、外郭部位50aの全部を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位50aの少なくとも一部が剥離されずに残り、これにより透水性袋41内外の連通、すなわち透水性袋41の破れが防止される。
【0080】
外郭部位50aの幅寸法及び内郭部位50bの幅寸法、これらの部位の溶着の程度等は、発熱剤40の量、織布41a,41bの引っ張り強度等を考慮して、適宜に定められる。前述したように織布の折り重ねを行った場合には折れ曲がり部分には溶着部位は形成されないから、その部分について緩衝機能を期待することができない。形成されない分だけ形成された内郭部位50bに余計な負担が掛かるから、内郭部位50bの設計に当たって、その余計な負担を考慮した設定が必要である。
【0081】
また、図示の例では、発熱剤パック4が全体に矩形の平面形状を有するが、これに代えて他の任意の平面形状を有するものとすることができる。さらに、溶着部位50の形状を他の任意の平面形状を有するものとすることができる。たとえば、前記コ字形とする図示の例に代えて半円形とし、前記矩形とする例に代えて円形とすることができる。
【0082】
(発熱剤パックの1例の製造方法)
図10に示す発熱剤パック4は、次のようにして製造することができる。まず、溶着性繊維を含む透水性の織布を調達する(素材調達工程)。次に、調達した織布を折り重ね、重ね合わされた織布同士を溶着することにより、発熱剤40を透水性袋41内に封入する(発熱剤パック形成工程)。
【0083】
発熱剤40の封入には、たとえば、一部未溶着の透水性袋41を形成し、その未溶着部分(開口部)を介して発熱剤40を充填した後に未溶着部分を溶着する方法や、発熱剤40を載せた一方の織布の上に他方の織布を重ねて発熱剤40を挟み、挟んだ発熱剤40を囲むように重ね合わせた織布同士を溶着する方法などがある。
【0084】
素材調達工程においては、たとえば、細長いストリップ状の織布を準備する。ストリップ状の織布に発熱剤パック形成工程を適用することにより、互いに連なる複数の発熱剤パック4を連続的に製造することができる。得られた複数の発熱剤パック4は、必要に応じて、このままの状態ですなわち連続した状態で、あるいはこれを切断して単体にして、前記した用途に供することができる。
【0085】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図13に示すように構成することができる。この装置は、織布の長手方向(上下方向)に伸びる一対の加熱シーラー67,67と、加熱シーラー67,67の下方位置にあって織布の横断方向(横方向)へ伸びる一対の加熱シーラー69,69とが配置され、さらに織布41a,41bをその長手方向へ送るための一対の送りローラ80,80とを備える。
【0086】
織布を一対の加熱シーラー67,67間に通し、加熱シーラー67,67で両側から挟持し、押圧すると、織布が2つに折り重ねられ、折り重ねにより生じた2枚の織布41a,41bがこれらの縁部において互いに熱溶着される。この熱溶着は、織布を送りローラ80,80で移動させる間に行われる。
【0087】
織布41a,41bが予め定められた距離を移動された後、送りローラ80,80の作動を停止し、加熱シーラー69,69により2枚の織布41a,41bの縁部を両側から挟持、押圧し、熱溶着する(図13(a))。その後、溶着された2枚の織布41a,41b 間に所定量の発熱剤40が充填される。
【0088】
次に、加熱シーラー67,69をそれぞれ開いて、すなわち2枚の織布41a,41bの縁部から離し(図13(b))、送りローラ80,80を作動させることにより、加熱シーラー67,67が未熱溶着箇所に相対することとなるまで、織布41a,41bが移動される。その後、前記したと同様にして、加熱シーラー67,69による2枚の織布41a,41b の縁部の熱溶着が行われ、これにより1つの発熱剤パック4が形成される。
【0089】
このとき、図14に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、熱溶着の程度が異なる2つの部位50a,50bが縁部の外郭及びその内郭に生じるように、各対の加熱シーラー67,69の互いに相対する両面に2つの熱伝達抑制層81が配置されている。熱伝達抑制層81は、たとえばポリテトラフルオロエチレン製のシートからなり、両加熱シーラー67,69からこれらに挟まれた2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への熱の伝達を制限する。
【0090】
これによれば、加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への熱の移動が抑制され、これにより熱溶着の程度が異なる2つの部位、すなわち外郭に溶着度の高い外郭部位50aが形成され、外郭部位50aに隣接包囲された内郭に溶着度の低い内郭部位50bが形成される。
【0091】
外郭部位50aを形成するために加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部に付与される温度(T)と、内郭部位50aを形成するために熱伝達抑制層81を介して加熱シーラー67,69から2枚の織布41a,41bの縁部に付与される温度(t)とは、外郭部位50a及び内郭部位50bにおける熱溶着の度合いが、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位50bの剥離を可能とし、かつ、外郭部位50bの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能とするように、設定されている。
【0092】
たとえば、織布として、織密度が500乃至750本のポリエステル繊維糸からなる織物を用いる場合における前記温度Tおよびtの値は、それぞれ、165乃至170℃及び130乃至150℃が適当であり、また前記織物に対する加熱シーラーの押し付け時間は0.5乃至1.5秒が適当である。
【0093】
互いに重ねあわされた2枚の織布を矩形の四辺に沿って熱溶着することにより形成される熱溶着部位を有する加熱剤の製造は、図13に示す装置にさらに他の一対の加熱シーラーを追加してなる装置を用いて行うことができる。前記他の一対の加熱シーラーは、加熱シーラー67と同様のものからなり、加熱シーラー67と平行に配置される。これによれば、加熱シーラー67及び追加の加熱シーラーにより前記矩形の熱溶着部位のうちの互いに平行な2辺に沿って伸びる2つの部分を同時に形成することができ、また、加熱シーラー69により前記矩形の熱溶着部位のうちの他の平行な2辺に沿って伸びる2つの部分を順次に形成することができる。
【0094】
(発熱剤パックの2例)
溶着部位50の溶着の強さの程度を外郭部位50aと内郭部位50bとで異なるものとする第1の実施形態に代えて、図15,16に示すように、溶着部位50全体の溶着の程度を一様なものとし、かつ外郭部位50aのみを補強したものとすることができる。外郭部位50aの補強は、外郭部位50aにたとえばその周囲に沿って伸び、かつ、これを覆うコ字形の横断面形状を有するプラスチック製のカバー51を外郭部位50aに固定することにより行うことができる。
【0095】
図16に示す発熱剤パック4によれば、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布41a,41bが蒸気圧を受けて膨らみ、織布41a,41bを通して水蒸気Vが外部に発散されるとき、内郭部位50aに剥離が生じ(想像線で示す)、前記したと同様、内郭部位50bの剥離のために蒸気圧エネルギーの一部が消費され、これにより前記蒸気圧が低下する。このとき、内郭部位50bへの剥離作用がこれに隣接する外郭部位50aに及ぼうとするが、外郭部位50aをその周囲から覆うカバー51が外郭部位50aへの剥離作用の伝達を止める働きをなすため、外郭部位50aに剥離作用が及ばず、このため、外郭部位50aが剥離せずに残り、透水性袋41の破れが防止される。
【0096】
(発熱剤パックの3例)
他の例の発熱剤パック4として、発熱剤パック4の1例の透水性袋41における溶着部位50の代わりに、接着剤で接着してなる接着部位を有するもの(図示せず)がある。接着部位を有する透水性袋41を構成する織布については、透水性を有するものであれば、前記溶着性繊維を含むものであるか否かを問わない。前記溶着部位を有しないためである。また、前記織布に代えて、透水性を有する不織布とすることができる。前記不織布には和紙も含まれる。
【0097】
前記接着部位は、図10,11に示す発熱剤パック4におけると同様、外郭に位置する外郭部位と、当該外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位とによって構成してあり、前記外郭部位の接着力は前記内郭部位の接着力より強く設定され、この設定は、段階的に強く設定されてもよく、徐々に強く設定されてもよい。
【0098】
前記外郭部位の接着力及び前記内郭部位の接着力については、加水された発熱粉体の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かっ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能であるように設定されている。
【0099】
なお、前記した溶着部位と同様、前記内郭部位自体を内から外に向かって段階的に接着力を高めておくと共に、又はこれに代えて、前記外郭部位自体を内から外に向かって段階的(たとえば、2段階に)に接着力を高めておくこともできる。
(発熱剤パックの3例の製造方法)
前記接着部位を有する発熱剤パックの製造方法は、透水性の織布を調達する素材調達工程と、この素材調達工程で調達した織布を折り重ね、折り重ねにより生じた2枚の織布同士を接着剤で接着することにより、又は、2枚の織布同士を接着剤で接着することにより、発熱剤40を透水性袋41内に封入する発熱剤パック形成工程とを含めてなる。なお、素材調達工程においては、前記織布を調達することに代えて、前記透水性の不織布を調達し、この不織布を用いて前記発熱剤パック形成工程を行うことができる。
【0100】
前記発熱剤パック形成工程において、前記織布を接着剤で接着することにより接着部位が形成される。前記接着部位は、比較的大きい接着力(P)をもって外郭に形成される外郭部位と、比較的小さい接着力(p)をもって前記外郭部位に隣接包囲された内郭に形成される内郭部位とによって構成してある。前記接着力(P)と前記接着力(p)とは、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって当該内郭部位が剥離可能、かつ、当該外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって当該透水性袋41内外を連通不能となるように設定してある。
(発熱剤パックの4例)
前記接着部位の接着力の程度、すなわち接着力の大きさを前記外郭部位と前記内郭部位とで異なるものとする前記第3の実施形態の例に代えて、前記接着部位全体の接着力の程度を一様なものとし、前記したと同様、前記外郭部位のみを、図15、図16に示した例におけると同様、前記外郭部位の周囲を覆うコ字形横断面形状のプラスチック製のカバーにより、補強することができる。
【0101】
(発熱剤パックの5例)
図17の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤40を封入した透水性袋41が、前記織布同士の接着ではなく、透水性の織布42とプラスチック製、木製等の耐熱性の封鎖部材45とを接着剤で接着することにより形成されている。封鎖部材45は、図示の例では板部材からなるが、織布42と協同して封鎖空間、すなわち発熱剤40のための封入空間を形成しうるものであれば、その形状を問わない。
【0102】
発熱剤パック4は、織布42と封鎖部材45とを接着剤で接着することによって形成された接着部位43を有する。接着部位43は平面で見て矩形、円形等の閉曲線に沿って伸びている。発熱剤40は、前記閉曲線で囲まれた範囲において、織布42と封鎖部材45との間に封入され、織布42を通して、発熱剤40への加水が行われる。
【0103】
接着部位43は、外郭に位置する外郭部位43aと、外郭部位43aに隣接包囲された内郭に位置する内郭部位43bとによって構成してあり、外郭部位43aの接着力が内郭部位43bの接着力よりも強いもの(大きいもの)に設定されている。これにより、加水された発熱剤40の発熱によって発生した水蒸気Vの圧力(蒸気圧)を受ける内郭部位43bにおいて織布42が封鎖部材45から剥離可能であり、かつ、外郭部位43aにおける織布の少なくとも一部が封鎖部材45から剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能に構成してある。
【0104】
これによれば、織布42を押し広げようとする蒸気圧エネルギーの一部が内郭部位43bの剥離すなわち内郭部位43bにおける織布42の剥離のために消費される。これによって前記蒸気圧の低下が生じる。また、内郭部位43bの剥離により、発熱剤40の封入空間の容積が増大し、これによっても前記蒸気圧の低下が生じる。さらに、発生水蒸気の一部が織布42を通して透水性袋41外に流出し、さらに前記蒸気圧の低下が生じる。低下した蒸気圧は、内郭部位43bに連なる外郭部位43aに剥離力を及ぼすが、外郭部位43aの全部を剥離するのに充分な大きさではない。この結果、外郭部位43aの少なくとも一部が剥離されずに残り、透水性袋41内外の連通、すなわち透水性袋41の破れが防止される
(発熱剤パックの6例)
接着部位43を接着力の大きさの異なる外郭部位43aと内郭部位43bとで構成する図19に示す例に代えて、接着部位全体の接着力を、たとえば内郭部位における接着力と同じ大きさのものとし、外郭部位のみを補強したものとすることができる(図示せず)。外郭部位の補強は、図15,16に示す例におけると同様、外郭部位にその周囲を覆うコ字形断面のプラスチック製のカバー(図示せず)を前記外郭部位に固定することにより行うことができる。
【0105】
これによれば、加水された発熱剤40の発熱に伴って織布が蒸気圧を受けて膨らむとき、内郭部位が剥離力を受けて剥離する。しかし、外郭部位は前記カバーによる補強のために剥離せず、これにより透水性袋41の破れが防止される。なお、この例においても、前記織布に代えて、透水性の不織布を用いることができる。
【0106】
(発熱剤パックの7例)
図18の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤40を封入した透水性袋41が、超音波溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、第1乃至第6の実施形態と同様なものが用いられる。透水性袋41の溶着部位60は、織布又は不織布同士を超音波溶着することによって形成され、外郭に位置する外郭部位60aと、この外郭部位60aに隣接包囲された内郭に位置する内郭部位60bとによって構成してあり、第1乃至第6の実施形態と同様に、発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位60bが剥離可能、かつ、外郭部位60aの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能に構成してある。
【0107】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図19に示すように構成することができる。この装置は、織布41a,41bの長手方向(上下方向)に伸びる超音波ホーン77と、この超音波ホーン77の下方位置にあって織布41a,41bの横断方向(横方向)へ伸びる超音波ホーン79とが配置され、さらに織布41a,41bをその長手方向へ送るための一対の送りローラ80,80とを備える。
【0108】
織布41a,41bが2つに折り重ねられ、折り重ねにより生じた2枚の織布41a,41bが、これらの縁部において互いに超音波ホーン77によって超音波溶着される。この超音波溶着は、織布41a,41bを送りローラ80,80で移動させる間に行われる。
【0109】
織布41a,41bが予め定められた距離を移動された後、送りローラ80,80の作動を停止し、超音波ホーン79により2枚の織布41a,41bの縁部を両側から挟持、押圧し、超音波溶着する(図19(a))。その後、超音波溶着された2枚の織布41a,41b 間に所定量の発熱剤40が充填される。
【0110】
次に、図19(b)に示すように、送りローラ80,80を作動させることにより、超音波ホーン77が未超音波溶着箇所に相対することとなるまで、織布41a,41bが移動される。その後、前記したと同様にして、超音波ホーン77,79による2枚の織布41a,41b の縁部の超音波溶着が行われ、これにより1つの発熱剤パック4が形成される。
【0111】
このとき、図20に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、超音波ホーン77,79は先端部にテ−パ77a,79aが形成されており、このテ−パ77a,79aによって外郭部位50bの溶着力が、内郭部位50aの溶着力よりも徐々に強く設定することができる。
【0112】
これによれば、超音波ホーン77,79から2枚の織布41a,41bの縁部の内郭への超音波がテ−パ77a,79aによって抑制され、これにより超音波溶着の程度が外郭部位50bが、内郭部位50aよりも徐々に強くなり、超音波溶着されている部分と、超音波溶着されていない部分との境界が曖昧となり、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって内郭部位50bの剥離を可能とし、かつ、外郭部位50bの少なくとも一部が剥離不能であることによって透水性袋41の内外を連通不能とするように、設定されている。
【0113】
(発熱剤パックの8例)
図21の他の例の発熱剤パック4は、発熱剤パックの7例と同様に構成されるが、織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位60が、発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位60の一部60cが剥離可能、かつ、溶着部位60の一部60dが剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能に構成してある。この実施の形態では、溶着部位60の一部60cと、溶着部位60の一部60dとが、千鳥状になるように設けられている。
【0114】
発熱剤パック形成工程を行うための装置は、図19の装置と同様に構成され、図22に示すように、2枚の織布41a,41bの縁部に、超音波ホーン77,79によって溶着部位60の一部60cが溶着力が、溶着部位60の一部60dの溶着力よりも弱く設定することができ、加水された発熱剤40の発熱によって発生した蒸気圧によって溶着部位60の一部60cが剥離可能、かつ、溶着部位60の一部60dが剥離不能であることによって透水性袋41内外を連通不能とするように、設定されている。
【0115】
発熱剤パックの7例及び8例は、超音波溶着を行うものであるが、これに限らず、高周波溶着でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
この発明は、乾燥食品を、場所、時間を選ばず、随時飲食することができる携帯食品に適用可能であり、簡単な構造で、低コストで、かつ嵩張ることがなく、保管や運搬が容易で、飲食時には開封して水を注入するだけで乾燥食品を飲食可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図3】第1の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図4】第2の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図5】第2の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図6】第2の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図7】第3の実施の形態の携帯食品の斜視図である。
【図8】第3の実施の形態の携帯食品の断面図である。
【図9】第3の実施の形態の携帯食品の使用形態を示す図である。
【図10】発熱剤パックの1例の斜視図である。
【図11】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図12】他の発熱剤パックの斜視図である。
【図13】発熱剤パックの1例の製造方法を説明する図である。
【図14】発熱剤パックの他の溶着部位を示す断面図である。
【図15】発熱剤パックの2例の斜視図である。
【図16】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図17】他の発熱剤パックの断面図である。
【図18】発熱剤パックの7例の斜視図である。
【図19】発熱剤パックの7例の製造方法を説明する図である。
【図20】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【図21】発熱剤パックの8例の斜視図である。
【図22】発熱剤パックの溶着部位を示す断面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 携帯食品
2 容器
3 食品
4 発熱剤パック
40 発熱剤
41 透水性袋
43 接着部位
50,60 溶着部位
67,69 加熱シーラー
77、79 超音波ホーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封し、
飲食時に前記耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を前記食品に吸収させると共に、前記水により前記耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、前記水の温度を上昇させることを特徴とする携帯食品。
【請求項2】
前記発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯食品。
【請求項3】
前記発熱剤を透水性袋に封入したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯食品。
【請求項4】
前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、外郭に位置する外郭部位と、この外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位と、によって構成してあり、
前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かつ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品。
【請求項5】
前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品。
【請求項6】
前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品。
【請求項7】
前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記溶着部位の一部が剥離可能、かつ、前記溶着部位の一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品。
【請求項8】
前記剥離不能な一部の溶着力が、前記剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項7に記載の携帯食品。
【請求項1】
乾燥または半乾燥した食品を耐熱性容器に収納して密封し、
飲食時に前記耐熱容器を開封して外部から水を注入し、この水を前記食品に吸収させると共に、前記水により前記耐熱性容器に予め入れておいた発熱剤を反応させて、前記水の温度を上昇させることを特徴とする携帯食品。
【請求項2】
前記発熱剤は、粒状または粉状の生石灰と、中和剤から成る組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の携帯食品。
【請求項3】
前記発熱剤を透水性袋に封入したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯食品。
【請求項4】
前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、外郭に位置する外郭部位と、この外郭部位に隣接包囲された内郭に位置する内郭部位と、によって構成してあり、
前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記内郭部位が剥離可能、かつ、前記外郭部位の少なくとも一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品。
【請求項5】
前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品。
【請求項6】
前記外郭部位の溶着力が、前記内郭部位の溶着力よりも徐々に強く設定してあることを特徴とする請求項4に記載の携帯食品。
【請求項7】
前記透水性袋は、溶着性繊維を含む透水性の織布又は不織布によって構成してあり、
前記織布又は不織布同士を溶着することによって形成された溶着部位が、前記発熱剤の発熱によって発生した蒸気圧によって前記溶着部位の一部が剥離可能、かつ、前記溶着部位の一部が剥離不能であることによって前記透水性袋内外を連通不能に構成してあることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の携帯食品。
【請求項8】
前記剥離不能な一部の溶着力が、前記剥離可能な一部の溶着力よりも強く設定してあることを特徴とする請求項7に記載の携帯食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−35544(P2010−35544A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227890(P2008−227890)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(508207848)有限会社イージーマーケティング (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(508207848)有限会社イージーマーケティング (1)
【Fターム(参考)】
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