説明

搾乳器

【課題】負圧形成のための吸引効率に優れ、負圧に加えてさらに搾乳効果を高める効果的な機能を備えるととともに、構成が比較的単純で、洗浄が容易となるようにした搾乳器を提供すること。
【解決手段】搾乳部22と、負圧を発生するための負圧生成手段とを含む搾乳器本体21と、搾乳された母乳を貯留する貯留手段47と、前記搾乳器本体と前記貯留手段との間に配置され、搾乳された母乳の前記貯留手段への移動を一時止め、あるいは通す開閉手段37とを有し、前記搾乳部は、形状保持部23と、該形状保持部の内側に着脱される前記負圧生成手段の一部である負圧生成部28とを備え、該負圧生成部は、少なくとも前記拡開側である一端が、柔軟なダイアフラム部と、該ダイアフラム部の折り返し部が前記乳房への当接部の仮想の延長線を超えて、該乳房を押圧する押圧部27とを含み、他端が前記開閉手段と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳を搾るための搾乳器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母親の乳房に当接されるラッパ状に拡径した搾乳部すなわち搾乳拡径部を備えた搾乳器が広く使用されている。
特に搾乳に際して負圧によりミスト状となった母乳が、外部に漏れ出たりすることがないように、搾乳器本体の上端等に凹所を設け、この凹所内にダイアフラムなどの変形される部材を収容した構成が知られている。
【0003】
すなわち、上記ダイアフラムにハンドル等の操作手段を連結し、ハンドルの往復動によりダイアフラムを繰り返し引き上げることで負圧を形成する手動搾乳器として特許文献1のものが知られている。
また、これとほぼ共通する構成を備えた搾乳器はいくつか知られている(特許文献2乃至4等)。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5749850号
【特許文献2】米国特許第6749582号
【特許文献3】WO2003/013628
【特許文献4】WO2004/000390
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の搾乳器では、ラッパ状の搾乳部から導かれる通路が連通した空間を、液体が収容される容器の上部に設け、この空間がダイアフラムにより容量変化されるようにしている。
このため、搾乳のための負圧が形成される空間が大きく、大きな容量を吸引しなければならないため、吸引効率が悪い。
また、ラッパ状の搾乳部以外の箇所に上記空間を形成してダイアフラムを取り付けるようにしたために、ダイアフラムの取り付け構造が複雑で分解しにくく、隅々まできれいに洗浄するのが大変で、清潔に使用する上では不便である。
【0006】
そこで、本発明は、負圧形成のための吸引効率に優れ、負圧に加えてさらに搾乳効果を高める効果的な機能を備えるととともに、構成が比較的単純で、洗浄が容易となるようにした搾乳器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、第1の発明にあっては、使用者の乳房に当接され負圧により母乳を搾乳する搾乳部および該搾乳部に配置され、前記負圧を発生するための負圧生成手段とを含む搾乳器本体と、前記搾乳器本体に着脱され、搾乳された母乳を貯留することができる貯留手段と、前記搾乳器本体と前記貯留手段との間に配置され、前記搾乳器本体で搾乳された母乳の前記貯留手段への移動を一時止め、あるいは通す開閉手段とを有しており、前記搾乳部は、ラッパ状に拡開した形状を保持するための形状保持部と、該形状保持部の内側に着脱される前記負圧生成手段の一部である負圧生成部とを備え、該負圧生成部は、少なくとも前記拡開側である一端が、柔軟なダイアフラム部と、該ダイアフラム部の折り返し部が前記乳房への当接部の仮想の延長線を超えて、該乳房を押圧する押圧部とを含み、他端が前記開閉手段と接続されている搾乳器により、達成される。
【0008】
第1の発明の構成によれば、搾乳部のラッパ状に拡開した形状を保持するための形状保持部の内側に着脱される前記負圧生成手段の一部である負圧生成部としてのダイアフラム部により、搾乳に必要とされる負圧が形成されるので、負圧が形成される空間が小さく、吸引すべき容積が小さいので、吸引効率に優れている。
また、搾乳部の前記形状保持部の内側に前記ダイアフラム状の負圧生成部が着脱されるため、分解・洗浄が容易である。
さらに、負圧生成部であるダイアフラム部の折り返し部が前記乳房への当接部の仮想の延長線を超えて、該乳房を押圧する押圧部を有している。
これにより、ダイアフラム部の負圧生成タイミングに合わせて、その変形により前記押圧部が使用者の乳房の乳輪部周辺を確実に押圧することができる。したがって、吸引だけでなく、吸引動作に同期して周期的に乳房への押圧がされることで、きわめて効率良く搾乳することができる。
かくして、負圧形成のための吸引効率に優れ、負圧に加えてさらに搾乳効果を高める、吸引動作と同期した乳房への周期的な押圧機能を備えるととともに、構成が比較的単純で、洗浄が容易となるようにした搾乳器を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記負圧生成部の前記ダイアフラム部が、支持部を介して柔軟なチューブ体と接続されるとともに、該チューブ体が前記開閉手段と接続され、かつ前記支持部には、前記ダイアフラムを変形させる駆動力を付与する駆動手段と接続されるための接続部とされていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、搾乳部内に設けたダイアフラム部を変形駆動するようにし、これをチューブ体で前記開閉手段で接続したので、比較的簡単でコンパクトな構成で効果的に搾乳しつつ、搾乳した母乳を確実に容器本体に導くことができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記開閉手段として、前記チューブ体が、前記ダイアフラム部の変形移動にともなって前記チューブ体が変位して曲折されることで変形する構成とされ、前記負圧生成手段により前記搾乳部内が負圧状態とされることに対応して前記チューブ体が変形してその内壁同士が接近当接され、前記負圧生成手段により前記搾乳部内が負圧解除状態とされることに対応して前記チューブ体が復元してその内壁同士が離間される構成としたことを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記搾乳器本体で搾乳された母乳の前記貯留手段への移動を一時止め、あるいは通す開閉手段として、中空のチューブ体を用いるようにしたので、比較的簡単な構成で機械的強度も向上させることができ、洗浄の際などにおいても取り扱いが容易である。
しかも、負圧生成部である前記ダイアフラム部が負圧を生成する動きに応じて、前記チューブ体が変位曲折して通路を開閉するので、負圧の生成の動きと母乳通路の開閉のきわめて効率的な連動が実現される。
【0011】
第4の発明は、第2または3のいずれかの発明の構成において、前記負圧生成手段が、負圧生成部と、該負圧生成部に負圧生成動作をさせるための手動レバーとを有することを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、使用者が手で握って手動で操作されるレバーと、該レバーの動きを受けて変形もしくは変位することで、搾乳部における負圧を生成する負圧生成手段により搾乳に必要とされる負圧を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0013】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る搾乳器の構成を示しており、図1は搾乳器の概略断面図、図2は図1の部分平面図である。
図1は搾乳器20の構成における要部を示しており、図において、搾乳器20は、搾乳した母乳の貯留手段としての容器であって、哺乳瓶としても使用可能なボトル47に着脱できる搾乳器本体21を備えている。
【0014】
搾乳器本体21は、斜めに傾斜した状態で外方に開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳部22とその構成部品の一部を保護し、支持するフレーム42を備えている。
フレーム42は、比較的軽く、丈夫な合成樹脂材料により成形されており、例えば、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリフェニールサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリプロピレン等により形成されている。
【0015】
搾乳器本体21のフレーム42には、搾乳した母乳を貯留するためのボトル47と着脱する着脱部46を備えている。着脱部46は、例えば、偏平な円筒状部分であって、内側に雌ネジ部46aを備えており、ボトル47の瓶口の周囲に形成された雄ネジ部と螺合されるようになっている。尚、ボトル47は、パック状とされた袋体が直接装着されてもよく、または袋体やケース体が雄ネジ部を有する筐体を介して間接的に装着されるよう構成してもよい。更に、フレーム42とボトル47を直接的に着脱するのではなく、口径が異なる場合には口径調整兼グリップ機能を有する調整パーツを介して装着されるよう構成してもよい。
【0016】
図1において、搾乳器本体21の上部には、斜めに傾斜した状態で外方に開く円錐状もしくはラッパ状の搾乳部22が設けられている。搾乳部22は、負圧空間を形成する通気路44を構成するやや拡開した開き通路の先端側に一体に設けられ、フレーム42の搾乳部22側は、ラッパ状に大きく拡開した形状保持部23を備えている。この形状保持部23は、図1で説明したフレーム42と一体に形成され、この場合、上述したフレーム42と同様の合成樹脂材料などで形成することができ、比較的高い剛性を有していて、変形しにくい。なお、フレーム42と形状保持部23とを一体に形成するのではなく、別体として着脱可能となるよう構成してもよい。
【0017】
また、形状保持部23の内側には、形状保持部23と略同じ形状とされたラッパ状の当接部24が設けられている。この当接部24は、例えば、該当接部24の先端が図示されているように形状保持部23の先端となる外周全体を内側から外側に回り込むようにして、着脱可能に取付けられている。
すなわち、当接部24と形状保持部23は、例えば、互いにそれぞれ係止し合う手段(例えば係止凸部と係止凹部や、圧入可能な寸法とするなど)を設けることにより、形状保持部23の内側に着脱される。この当接部24は鎖線で示す乳房Bの表面に不快な刺激を与えることなく当接できるように、シリコーンゴムや、天然ゴム等の比較的柔軟な弾性体(エラストマー)で形成されている。
【0018】
この当接部24は柔軟なラッパ状の筒体であるが、形状保持部23に取付けられることで、該形状保持部23に接しているために、乳房Bを挿入した際に変形が起こらずに、乳房Bにフィットするようにされている。なお、当接部24の内面(乳房Bと接触する面の仮想の延長線Kが図1に示されている。
これに対して、図1において該当接部24と一体に配置された、ボトル47に向かう方向に延びる負圧生成手段である負圧生成部28は、当接部24と同じ材料で筒状に延びている。この負圧生成部28は、形状保持部23に接しないようにされ、しかも、好ましくは当接部24よりも材料厚みを薄く形成されることにより変形しやすい部分とされている。
【0019】
すなわち、負圧生成部28はダイアフラム部として、後述する使用者の操作に伴って積極的に変形することで、図1の実線の状態と、点線の状態に変形する。
すなわち、使用開始状態である実線の状態では、筒状とされた外周壁28aの内側に向かって、変形壁28bが折り返される状態である。そして、負圧生成部28を変形させた点線の状態では、変形壁28bが搾乳部22から離間する方向に移動することで負圧を生成することができ、その後、操作を緩めることで変形壁28bが変形状態から復元することで負圧が解除されて実線の使用開始状態に戻る。
なお、当接部24と負圧生成部28とを一体に形成するのではなく、これらの境界位置で別体となるように構成し、かつ密閉可能に着脱できるよう構成してもよい。
【0020】
ダイアフラム部である負圧生成部28の変形壁28bは、その負圧開放時の変形の際に内側へ折り返される折り返し部分の頂点が、押圧部27として、上記した当接部24の仮想の延長線Kを超えて、乳房B側に突出して、その図示しない乳輪周辺を押し込むようになっている。
これにより、負圧が高まった後に、乳房を確実に押圧し、乳輪近傍を中心に搾乳に伴う好ましい刺激を与え、搾乳効果が一層促進されるようになっている。
また、負圧生成部28の一端、すなわち図1における上端付近は当接部24と一体であるが、他方の端部である下端側には、後述するアーム部33の端部である形状保持部33aを着脱可能に収容できるようにした支持部26が形成されている。
この支持部26は、その内側に搾乳した母乳の通路である負圧空間44を形成する。
【0021】
支持部26から図1の下方に向かって中空のチューブ体31が延びている。そして、チューブ体31の下端は、ボトル47の蓋体となっているフレーム42の着脱部46から起立する中空の筒体状の装着部46bに装着されている。
チューブ体31は、搾乳部22に連接された負圧空間44とボトル47内とを該チューブ体31自体のもつ中空の空間45で接続する。
【0022】
このような機能を果たす限りにおいて、チューブ体31は上記ダイアフラム部28および支持部26と一体でも別体でもよく、本実施形態では一体に形成されている。
チューブ体31は後述するように、負圧形成動作にともなって容易に変形もしくは屈曲されるように柔軟で、かつ繰り返し屈曲されても破断しない強度を備える可撓性材料により形成されている。また、チューブ体31は円筒状だけでなく、楕円筒状や長円筒状とされてもよい。
【0023】
チューブ体31の下端には、開閉手段としての小室弁37が接続されている。
すなわち、上記小室弁37は、全体がシリコーンゴムや、天然ゴム等の弾性体(エラストマー)で形成された中空状のキャップ状の形態であり、内部に空間38aを有している。小室弁37の下端側の両側壁38b,38cは肉薄とされて下端に向けて互いに幅が徐々に接近するように形成された弾性体の傾斜壁でなる弁体となっている。両側壁38b,38cの接近した下端には、スリット38dが設けられており、搾乳した母乳が小室弁37の空間38a内に所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、スリット38dが開いて、母乳はボトル47内に落とされるようになっている。また、傾斜壁の下端にスリット38dを形成したことにより、負圧時にボトル47内の空気が小室弁37の内部の空間30a内に入ることを防ぐようになっている。
【0024】
また、この搾乳器20では、図1に示すように、例えば手動で操作する手動レバー(以下、「レバー」という)35により、負圧生成部28を駆動させるようになっている。
この駆動手段の構成例について説明する。
図1に示すように、レバー35はその把持領域35aにおける上端が、フレーム42の着脱部46から起立した支軸部48に回動自在であって着脱可能に固定されている。レバー35の一部は、この支軸部48の周囲から上方に延長された短いロッドもしくは板状のリンク34とされている。このリンク34の先端は、負圧生成部28に接続されたアーム部33の下端の支軸の周囲で回動可能であって、かつ着脱可能に固定されている。
【0025】
すなわち、上記アーム部33は剛性を有する材料で形成されており、図1及び図2に示すように、アーム部33の搾乳部22側である形状保持部33aは拡径されたカップ形状とされている。該形状保持部33aは、搾乳部22側から支持部開口26aにアーム部33を挿通することで、該形状保持部33aを支持部26内に装着することができる。これにより、負圧に伴う支持部26の変形を防止する機能を有している。なお、アーム部33はインサート成形等の一体成形により支持部26等と一体化されていてもよい。この位置からアーム部33は斜め下方に延びて、図2で拡大して示すように、その下端の周囲で回動可能なように、上述したリンク34と係合されている。
【0026】
本実施形態は以上のように構成されており、次に搾乳器20の動作を説明する。
図1に示すように、手動によりレバー35の下端側がボトル47に近づくようにされ、支軸部48の周囲で、矢印A1に示すように回動されると、リンク34が矢印A2に示すように上記支軸部48周囲で回動する。
これにより、矢印A3に示すようにアーム部33が移動するので、支持部26内に装着された形状保持部33aに引っ張られるようにして、負圧生成部であるダイアフラム部28が引き延ばされるように変形し点線で示すような形状となる。これにより乳房Bで当接部24側が塞がれている負圧空間44の負圧が増大することにより乳房Bから搾乳され、該搾乳された母乳が負圧空間44に入り込む。
【0027】
上記動きに同期して、負圧生成手段25の支持部26は図1の下方に変位するが、チューブ体31は変形可能であるから、このような動きに十分追従できる。
次いで、使用者が力を緩めると、変形壁28bの復元力が働き、レバー35は図1の矢印A1と逆の方向に動き、リンク34も矢印A2と逆に動いて実線の位置に戻り、アーム部33は矢印A3とは逆に上方に移動するので、ダイアフラム部28は実線の状態に戻る。
これにより、ダイアフラム部である負圧生成部28の変形壁28bは、その負圧開放時の変形の際に内側へ折り返される折り返し部分の頂点である押圧部27が、当接部24の仮想の延長線Kを超えて、乳房B側に突出し、その図示しない乳輪周辺を押し込む。これにより、負圧が高まった後に、乳房を確実に押圧し、乳輪近傍を中心に搾乳に伴う好ましい刺激を与え、搾乳が促進される。
そして、符号44の負圧空間が元の大気圧の状態に戻る(負圧解除)と、搾乳により負圧空間44に溜まった母乳がこの空間44と連通したチューブ体31を通り、開閉手段としての小室弁37の空間38aに導かれる。この母乳が空間38a内に所定量まで貯留されると、その重量や、後述するように負圧が解除された際の圧力の変化に伴い、スリット38dが開いて、母乳はボトル47内に落とされて、貯留される。
【0028】
すなわち、使用者はレバー35を矢印A1の方向に握って、その力を緩めるという動きで繰り返し操作することにより、ダイアフラム部28による負圧空間44内の負圧形成とその解除が交互に行われて、ボトル47内に必要量の母乳を溜めることができる。
このように、本実施形態の搾乳器20によれば、負圧形成のための吸引効率に優れ、負圧に加えてさらに搾乳効果を高める、吸引動作と同期した乳房への周期的な押圧機能を備えるととともに、構成が比較的単純で、洗浄が容易となるようにした搾乳器を提供することができる。
【0029】
図3は、第1の実施形態の変形例であり、アーム部33を介して、負圧生成部であるダイアフラム部28を駆動する構成例を簡単に示す要部概略平面図である。
アーム部33の先端には、取付け部14が設けられており、取付け部14には、アーム部33の延びる方向と直交する方向に長くされた長孔15が形成されている。この長孔15には、偏心カム12の外周付近に設けたピン13が挿入されている。
この偏心カム12の中心の駆動軸11は、例えば電動モータ等の回転軸が固定されたものである。
この変形例は、以上のように構成されており、駆動軸11の回転により、偏心カム12が矢印C方向に回転すると偏心カム12のピン13が長孔15内を矢印E方向に往復動し、これにともないアーム部33は矢印D方向に往復動する。この動きは、図1の矢印A3方向及びその反対の方向(A4方向)に沿った往復動と一致する。
このようにして、負圧生成手段25を手動でなく、電動などの機械駆動で動作させることができる。
【0030】
次に第2の実施形態について説明する。
図4乃至図6は搾乳器の第2の実施形態の要部を示す概略断面図である。
図4乃至図6において、第1の実施形態を説明する図1及び図2の符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略する。
【0031】
搾乳器20−1における搾乳部22の負圧生成手段25−1にあっては、第1の実施形態と比較すると、負圧生成手段であるダイアフラム部28に続く支持部26−1の構成が少し異なる。具体的には、支持部26−1は図示のように少し長く、アーム部33や形状保持部33aは形成されていない。また、支持部26−1の終端部にはポケット状あるいはスリット状の収容部51が形成されており、その開口からは、レバー35の上方に延びる板状とされた長い形態のリンク34−1が挿入されている。
支持部26−1が長くされたことに伴い、形状保持部33aの代わりに支持部26−1の負圧時における形状保持のための補強リブ55,55,55がここでは円筒状とされた支持部26−1の外周から突出するよう4ヶ所形成されている。なお、補強リブ55を形成するのではなく、支持部26−1の厚みを変えたり、剛性を有する材料で、負圧生成部28と一体成形を行ってもよい。
【0032】
この実施形態では、負圧生成部28が負圧空間44内に負圧を生成する場合には、チューブ体31は、該負圧空間44と、ボトル47に連絡する通路45を該通路45の途中で塞ぐ機能を有しており、空間44とボトル47との間の通路の開閉手段となっている。
このため、第2の実施形態では、不要なため小室弁が形成されていない。
さらに、レバー35−1と一体に支軸部48−1からチューブ体31に向かって延びる変形促進手段の一部としての短いボス状部53が形成されている。このボス状部53の位置はチューブ体31の屈曲部32に対応した位置に設けられ、さらに、変形促進手段の他の一部として、同じく屈曲部32に対応した位置に、フレーム42の内壁から凸部54が突出するように設けられている。なお、支軸部48−1はフレーム42の壁面に切欠部を形成し、レバー35−1から外方に突出した軸部を切欠部に係合するよう構成されている。
また、チューブ体31は支持部26−1と別体に形成されており、下端側は座板部31aがボトル47と着脱部46との間に挟まれることで固定されてボトル47と連通しており、上端側は支持部26−1下端から外方に突出した着脱凸部26−1aを挿入することで負圧空間44と連通するよう構成されている。
【0033】
本実施形態は以上のように構成されており、図5の状態からレバー35−1を矢印B1の方向に動かすと、リンク34−1により支持部26−1の終端部がB2の方向に移動する。これにより、図6に示すようにダイアフラム部28の変形壁28bはボトル47側に向かって変形して、負圧空間44内に負圧を形成する。
これと同時に、図6に示すように、ボス状部53がチューブ体31のレバー35−1側外面に当たり、その反対面ではチューブ体31の外面に凸部54が当たって挟み込むように押さえるこのため、確実にチューブ体31が屈曲して密閉することが促進される。
この迅速な屈曲によりチューブ体31の内面同士が接近して当接し、中空の空間内は閉止される。このように、確実かつ迅速なチューブ体31の屈曲によって、負圧空間44内の負圧はボトル47側と分断され、リークすることがなく、適切に搾乳され、母乳はチューブ体31の屈曲箇所32よりも上に溜まる。
【0034】
次いで、使用者が力を緩めると、変形壁28bの復元力が働き、レバー35−1は図5の矢印B2と逆の方向に動き、リンク34−1も矢印B2とは反対の方向に動くので、ダイアフラム部28は図5の状態に戻る。
これにより符号44の空間が元の大気圧の状態に戻る(負圧解除)と同時にチューブ体31の屈曲部32も延びて、図5の状態に戻り、その中空の通路の閉止は解除されるので、空間44とボトル47の間の通路は開かれ、搾乳により空間44に溜まっていた母乳がボトル47内に落とし込まれる。
かくして、小室弁を設けることなく、簡単な構成により、空間44とボトル47の間の通路を開閉することができる。
その他の作用は第1の実施形態と同じである。
【0035】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、チューブ体を開閉する構成を有していれば、変形例でも説明したように、手動による搾乳ではなく、間歇的に負圧と大気圧とを変動させるようダイアフラムを電動で駆動させる所謂電動搾乳器としてもよく、その駆動手段を搾乳器本体とは別体の据付型として構成し、他のチューブで連結するよう構成してもよい。なお、各実施形態の各構成は互いに入れ替えたりすることができ、あるいは各実施形態、変形例の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搾乳器の概略断面図。
【図2】図1の構成の部分平面図。
【図3】図1の搾乳器の変形例の要部を示す部分平面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係わる搾乳器の概略斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る搾乳器における未使用状態の要部断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る搾乳器における移動状態の要部断面図。
【符号の説明】
【0037】
20・・・搾乳器、21・・・搾乳器本体、22・・・搾乳部、24・・・当接部、25・・・負圧生成手段、27・・・押圧部、28・・・負圧生成部(ダイアフラム)、31・・・チューブ体、32・・・屈曲部、37・・・小室弁、47・・・ボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の乳房に当接され負圧により母乳を搾乳する搾乳部および該搾乳部に配置され、前記負圧を発生するための負圧生成手段とを含む搾乳器本体と、
前記搾乳器本体に着脱され、搾乳された母乳を貯留することができる貯留手段と、
前記搾乳器本体と前記貯留手段との間に配置され、前記搾乳器本体で搾乳された母乳の前記貯留手段への移動を一時止め、あるいは通す開閉手段と
を有しており、
前記搾乳部は、
ラッパ状に拡開した形状を保持するための形状保持部と、
該形状保持部の内側に着脱される前記負圧生成手段の一部である負圧生成部と
を備え、
該負圧生成部は、
少なくとも前記拡開側である一端が、柔軟なダイアフラム部と、
該ダイアフラム部の折り返し部が前記乳房への当接部の仮想の延長線を超えて、該乳房を押圧する押圧部と
を含み、
他端が前記開閉手段と接続されている
ことを特徴とする搾乳器。
【請求項2】
前記負圧生成部の前記ダイアフラム部が、支持部を介して柔軟なチューブ体と接続されるとともに、該チューブ体が前記開閉手段と接続され、かつ前記支持部は、前記ダイアフラム部を変形させる駆動力を付与する駆動手段と接続されるための接続部とされていることを特徴とする請求項1に記載の搾乳器。
【請求項3】
前記開閉手段として、前記チューブ体が、前記ダイアフラム部の変形移動にともなって前記チューブ体が変位して曲折されることで変形する構成とされ、前記負圧生成手段により前記搾乳部内が負圧状態とされることに対応して前記チューブ体が変形してその内壁同士が接近当接され、前記負圧生成手段により前記搾乳部内が負圧解除状態とされることに対応して前記チューブ体が復元してその内壁同士が離間される構成としたことを特徴とする請求項2に記載の搾乳器。
【請求項4】
前記負圧生成手段が、負圧生成部と、該負圧生成部に負圧生成動作をさせるための手動レバーとを有することを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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