説明

摩擦撹拌接合方法

【課題】第1ワークと第2ワークとをギャップを介して配置しても接合することが可能な摩擦撹拌接合方法を提供する。
【解決手段】第1ワークW1の第1端面12と第2ワークW2の第2端面14とが互いに傾斜面を構成し、ギャップGを介して対向配置した状態で摩擦撹拌接合用工具10を構成するプローブ18を前記第1ワークW1側にオフセットして前記第1ワークW1と第2ワークW2とを摩擦撹拌接合する。前記プローブ18のオフセットにより第1ワークW1側がアドバンシングサイドとして肉の流動が惹起し前記ギャップGを埋める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同質のある部材(部材A)と他の部材(部材B)とを隙間を介して対向配置し、前記部材Aと部材Bの端面同士を摩擦撹拌接合用工具によって接合する摩擦撹拌接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合は、対向する部材Aと部材Bの端面同士を固相接合する接合方法の1種として、近年広汎に採用されるに至っている。摩擦撹拌接合を行うには、回転する摩擦撹拌接合用工具の先端部に設けられたプローブが前記端面同士の対向箇所に埋没される。これに伴って該対向箇所の周辺に摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって端面を含む部材Aと部材Bの端部の肉が塑性流動を起こし、これによって前記端面同士が接合一体化される。
【0003】
摩擦撹拌接合には、部材Aと部材Bの接合部に隆起部が形成されないので仕上げ工程が不要となるという利点がある。しかしながら、摩擦撹拌接合では、例えば、ろう部材等の接合材料を用いないため、対向する部材Aと部材Bの端面同士間に隙間(以下、ギャップと記す)があると、そのギャップを埋める部材が不足し、また両部材A、Bを互いに接近させる圧力も加わらないために、良好な接合品質を得ることができず、該ギャップが未接合箇所として残留することがある。このような未接合箇所が一部にでも存在すると、両部材A、Bの接合部の強度が小さくなる。そして、接合強度が過度に小さくなると、クラック発生の原因となる懸念が生じる。
【0004】
前記の不都合を回避するために、両部材A、Bの端面同士のギャップが所定の範囲、例えば、0.2mm以下となるように厳密な管理が行われる。
【0005】
しかしながら、そのために両部材A、Bの端面に対し、精度良く機械加工を行うと、加工コスト高の要因となる。さらに、両部材A、Bが相当長尺であると、前記ギャップを所定の範囲に留める管理のために精度良く加工を行って寸法出しをすることは困難である。そこで、特許文献1、2において、この不具合を解消するための摩擦撹拌接合方法が提案されている。
【0006】
特許文献1には、摩擦撹拌接合用工具を構成するプローブをその回転方向と進行方向とが一致しないリトリーティングサイドに存在する端部側に偏在させることにより、未接合箇所が残留することを回避する技術的思想が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、二つの接合される部材の接合端面が互いに対応するように傾斜させて、その傾斜面に上下一組の摩擦撹拌接合用工具を埋没させるとともに接合端面に沿って移動させることにより、摩擦撹拌接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−314088号公報
【特許文献2】特開2007−283379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、摩擦撹拌接合用工具を構成するプローブの回転方向前方に撹拌する材料が不足するため、十分な接合強度が得られない。また、特許文献2に記載されている摩擦撹拌接合は、一組のボビンツール型工具によって、上下から被接合部材を挟みこむことが前提となる接合方法である。そのため、被接合部材が一組のボビンツール型工具で上下から挟み込むことができない形状では、適用することができないという不具合がある。
【0010】
本発明は上記した不具合を解決するためになされたもので、摩擦撹拌接合方法において、上下から挟み込むことのできない複雑な被接合部材同士であっても、しかも該被接合部材間にギャップがあったとしても、接合端面に厳格な機械加工を施して面精度を高める必要のない、加工コストも低廉で且つ接合強度に優れた良好な接合品質を得ることができる摩擦撹拌接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1ワークの第1端面と、第2ワークの第2端面とを互いに接近して対向配置させた後、回転動作する摩擦撹拌接合用工具によって前記第1端面と第2端面とを接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記第1端面と第2端面とは互いに補角関係を形成するように鈍角と鋭角に傾斜する傾斜面であり、
前記摩擦撹拌用工具を構成するプローブは前記第1ワークと第2ワークに臨む際にその先を端部が徐々に縮径する円錐台状であり、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とをギャップ(G)を介して対向配置する第1の工程と、
前記プローブの先端部中心を前記ギャップよりも第1ワークのアドバンシングサイドに位置決めする第2の工程と、
前記摩擦撹拌用工具を回転駆動するとともに前記プローブの先端部中心を前記第1ワークに回転埋没させて前記ギャップに前記第1ワークと第2ワークの肉を塑性流動させて後固化する第3の工程と、
からなることを特徴とする。
【0012】
前記請求項1で特定される発明によれば、摩擦撹拌接合用工具を構成するプローブがワークのアドバンシングサイドに配置されて摩擦撹拌作業が開始されるために、前記アドバンシングサイド側の肉が塑性流動して容易に第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面の間に形成されたギャップを埋めることができる。
【0013】
請求項2で特定される発明は、請求項1記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記プローブの円錐台状の周壁の傾斜角度は、該プローブの軸線L1を基準とするとき、
前記第2ワークの第2端面の傾斜角度よりも前記軸線L1側に接近するように設定されていることを特徴とする。
【0014】
前記請求項2で特定される発明によれば、前記プローブの円錐台状の周壁の傾斜角度が第2ワークの第2端面の傾斜角度より第1ワークの第1端面側に近くなるように設定されているために、回転するツールの周速が高く、撹拌力が大きくなり、前記円錐台状の周壁がアドバンシングサイドの第1ワークの肉を容易に且つ大量にその塑性流動に供することができ、それによってギャップを確実に埋めることができる。
【0015】
請求項3で特定される発明は、請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と、第2ワークの第2端面の間のギャップGの先端部が前記プローブの先端部の半径内に位置するように該プローブを位置決めすることを特徴とする。
【0016】
前記請求項3で特定される発明によれば、前記プローブの先端部の半径内にギャップGの先端部が位置しているために、プローブ先端が第1ワークと第2ワークに侵入して摩擦撹拌接合のための最深位置に到達した最終段階においても第1ワークと第2ワークの境界面に十分な肉の塑性流動を惹起することができる。
【0017】
請求項4で特定される発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とを互いにギャップGを介して対向配置する際に、
前記第2端面の傾斜角度は前記プローブの軸線L1を中心とすると−20°〜−30°の範囲であることを特徴とする。
【0018】
前記請求項4で特定される発明によれば、前記第2端面の傾斜角度が前記プローブの軸線L1を中心として−20°〜−30°の範囲であるので、該プローブの周壁で第1ワークと第2ワーク間のギャップを埋めるのに十分な肉の塑性流動を惹起する摩擦力を得ることが可能となる。
【0019】
請求項5で特定される発明は、請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とを互いにギャップGを介して対向配置する際に、
前記第2ワークの第2端面の傾斜角度は前記プローブの円錐台状の周壁の傾斜角度と同一に形成されていることを特徴とする。
【0020】
前記請求項5で特定される発明によれば、第2ワークの第2端面の傾斜角と前記プローブの周壁の傾斜角度が同一であるために、該プローブの円滑な回転が達成され、肉の塑性流動がより一層円滑化する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とが互いに傾斜形成させた状態で設定配置し、摩擦撹拌接合用工具をワークのアドバンシングサイドに存在する端部側に偏在させて埋没させるようにしている。これにより、前記第1端面と第2端面との境界面にギャップを有していても、第1ワーク側からの十分な肉の塑性流動が惹起してキャップを埋め、良好な接合品質を確保することができるとともに、前記第1端面と第2端面とについて加工精度をさほどに高くする必要がないため、加工精度の管理が容易となり、しかも、前記第1端面と前記第2端面に対する機械加工のコストを低減できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】摩擦撹拌接合用工具によって、摩擦撹拌接合する状態を示す斜視説明図である。
【図2】摩擦撹拌用工具を構成するプローブの軸線がワークの接合面に対向して配置される境界面からアドバンシングサイド側に存在する状態で、摩擦撹拌接合している状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図4(a)は、摩擦撹拌接合用工具を構成するプローブの軸線L1とワークの傾斜面との角度関係を示す説明図であり、図4(b)〜(e)は、ワークの傾斜面の角度をそれぞれ−10〜−40°の範囲内で設定した際の、アドバンシングサイドからリトリーティングサイドへの肉の流動状態を示す説明図である。
【図5】第4ワークに、第3ワークを載置する段差が設けられた、該第3ワークと第4ワークとを摩擦撹拌接合によって一体化している状態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る摩擦撹拌接合方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、摩擦撹拌接合用工具10により、ワークW1とワークW2とを摩擦撹拌接合する状態を示す斜視説明図である。
【0025】
図2に示すように、ワークW1の傾斜する第1端面12とワークW2の傾斜する第2端面14とを突き合わせると、その境界面にはギャップGが形成される。前記第1端面12の傾斜角と第2端面14の傾斜角は互いに補角の関係を有し、第1端面の傾斜角は鈍角であり、第2端面14の傾斜角は鋭角である。前記第1端面12と前記第2端面14とを摩擦撹拌接合するための摩擦撹拌接合用工具10は、図示しない摩擦撹拌接合装置のスピンドルに固定された円柱状の回転体16と、該回転体16の先端部に設けられて該第1端面12と該第2端面とを接合するために、ワークW1とワークW2に埋没されるプローブ18とを有する。ここで、プローブ18の外周面の形状を、先端にいくほど縮径する円錐台状とするのが好ましいが、場合によっては可及的に円柱に近づけてもよい。なお、後述する理由に基づき、プローブ18を、その中心線L1がワークW1側に偏在するように埋没させる。好ましくは、前記プローブ18の中心線L1がワークW1の傾斜面開始位置、すなわち、鈍角を形成する隅角部と一致させるとよい。十分な摩擦撹拌作用が得られるからである。
【0026】
図2のワークW1、ワークW2と工具10との関係を平面視した状態を図3に示す。この図3において、摩擦撹拌接合用工具10を構成するプローブ18は、矢印X方向に回転動作する。この状態で、プローブ18を矢印Y方向に沿って移動させると、ワークW1、W2の肉がプローブ18で撹拌されることに伴って塑性流動する。その後、該プローブ18が矢印Y方向に指向して撹拌箇所から離間すると、この肉が硬化するに至る。この現象が逐次的に繰り返されることにより、第1端面12と第2端面14とが一体的に固相接合され、その結果、第1端面12と第2端面14が接合一体化される。
【0027】
ここで、図3中の左側のワークW1では、プローブ18における第1端面12と第2端面14との境界線L2から最も離間する箇所での回転方向(矢印X方向)のベクトル成分V1が指向する方向は、プローブ18の移動方向(矢印Y方向)と一致する。以下の説明においては、このように前記ベクトル成分V1が指向する方向がプローブ18の移動方向と一致する側(以下、アドバンシングサイドという)の第1端面12を有するワークW1を、アドバンシングサイドに存在するワークW1ともいう。
【0028】
一方、図3中の右側のワークW2では、プローブ18における第1端面12と第2端面14との境界線L2から最も離間する箇所での回転方向(矢印X方向)のベクトル成分V2が指向する方向は、プローブ18の移動方向(矢印Y方向)と反対となる。以下、前記ベクトル成分V2が指向する方向と該プローブ18の移動方向とが逆になる側(以下、リトリーティングサイドという)の第2端面14を有するワークW2を、リトリーティングサイドに存在するワークW2ともいう。
【0029】
図2に示すように、摩擦撹拌接合される前記第1端面12と前記第2端面14とは、互いに補角となる傾斜した平面によって形成される。ここで、摩擦撹拌接合用工具10のプローブ18がワークW1に埋没する角度を0°とした際(プローブ18の軸線L1を0°とする)、前記第1端面12と前記第2端面14との境界面の角度は、好ましくは−20°〜−30°の範囲内になるように設定しておく。十分な摩擦撹拌作用を営むためである。ここで、以下に、プローブ18がワークに埋没する角度と境界面の角度との関係を図4(a)〜(e)に基づき、説明する。
【0030】
図4(a)は、摩擦撹拌接合用工具10により、第1端面12と第2端面14とを摩擦撹拌接合する場合の側面説明図であり、図4(b)〜(e)は、摩擦撹拌接合用工具10のプローブ18をワークに埋没させる角度を図2の中心線L1に沿う0°とし、第1端面と第2端面を突き合わせて形成される境界面の角度を−10°〜−40°と変化させた場合、それぞれ撹拌前から撹拌後までワークW1とワークW2の間の塑性流動の状態を示す平面説明図である。
【0031】
ここで、図4(b)は前記境界面の傾斜角度を−10°とした場合であり、また、図4(c)は前記境界面の傾斜角度を−20°とした場合であり、さらに、図4(d)は前記境界面の傾斜角度を−30°とした場合であり、図4(e)は前記境界面の傾斜角度を−40°とした場合である。ここで、図4(b)〜(e)中の矢印X方向はプローブ18の回転方向を示し、矢印Y方向はプローブ18の移動方向を示す。また、図4(b)〜(e)中の左側はアドバンシングサイドとなり、図4(b)〜(e)中の右側はリトリーティングサイドとなる。
【0032】
図4(b)中の点P1は摩擦撹拌前のワークの肉の位置を示し、点P2は該点P1から摩擦撹拌された後の肉の位置を示す。図4(c)〜(e)についても、同様に、それぞれ点P3、P5、P7が摩擦撹拌前の肉の位置を示し、それらの点の摩擦撹拌後の肉の位置をそれぞれ点P4、P6、P8に示す。なお、P2、P4、P6およびP8から反時計方向に延在する線はそれぞれワークの肉の塑性流動の量を概念的に示すものである。
【0033】
図4(c)、(d)より、前記境界面の傾斜角度を−20°と−30°とに設定した際の点P3から点P4への変位と点P5から点P6への変位とにおいて、ワークの肉の塑性流動量が徐々に多くなり、第1端面12と第2端面14との間のギャップGに対し、肉の高い充填効果を発揮することが諒解される。さらに、摩擦撹拌前の点P3、P5と摩擦撹拌後の点P4、P6とを対比すると、プローブ18の回転方向に伴って、肉がアドバンシングサイド側からリトリーティングサイド側に移動していることが諒解されよう。なお、前記境界面の角度を−40°に設定すると、プローブが挿入される領域からギャップの一部がはみ出してしまう。一方、これを防ぐためにプローブを大径な形状のものにすると、ツール全体として大型化は避けられず、またプローブを回転させる装置自体も大型化する不都合を露呈する。
【0034】
そこで、本実施の形態においては、図2に示すように、プローブ18の中心線L1を、第1端面12と第2端面14との境界面からアドバンシングサイドに存在するワークW1側に偏在させる。すなわち、プローブ18は、アドバンシングサイドに存在するワークW1側に偏在させて埋没させる。
【0035】
換言すれば、図2及び図3に示すように、前記第1端面12と第2端面14との境界面をリトリーティングサイドにオフセットする量は、プローブ18が埋没される側の第1端面12と第2端面14との境界線L2からプローブ18の先端の直径dの1/2の範囲内とし、第1端面12と第2端面14とから形成される傾斜した境界面がプローブ18の先端の直径dの1/2の範囲と重なるように設定すると、より良好に摩擦撹拌接合される。円錐台状のプローブ18の回転する周壁部が十分な摩擦撹拌力を発揮するからである。さらに、プローブ18の中心線L1が、第1ワークW1の第1端面12である鈍角端面(隅角部)を通るように設定すると、確実に前記境界面がプローブ18の円錐台状の傾斜する周壁と重なるように配置されため、良好な接合品質を確保することが可能となる。
【0036】
この状態で、図1に示す矢印Y方向に沿ってプローブ18が移動し、プローブ18によって肉が撹拌されることによって塑性流動する。そして、図2に示すように、第1端面12と第2端面14とから形成される傾斜した境界面に沿って、撹拌され軟化した肉が塑性流動し、第1端面12と第2端面14との間に存在するギャップGを埋めることができる。結局、図1に示すように、ワークW1、W2に対し、摩擦撹拌接合用工具10によって、摩擦撹拌接合することにより、接合強度に優れた接合部が得られる。
【0037】
本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法は、例えば、図5に示すような薄肉部を備えたワークW3と厚肉部を備えたワークW4とから構成される形状にも適することができる。ここで、ワークW3とワークW4とは鋳造成形品である。
【0038】
ここで、ワークW3がアドバンシングサイド側に存在するものとし、ワークW4がリトリーディング側に存在するものとする。
【0039】
ワークW3の外周面である第1端面30に対し、ワークW4には、該第1端面30に対応した第2端面32が設けられている。ここで、第2端面32には段部34が設けられており、第1端面30は、該段部34上に配置される。その際、前記第1端面30と該第2端面32とから形成される境界面の角度が、摩擦撹拌接合用工具10のプローブ18を前記ワークW3に埋没させる角度を0°とした場合に(中心軸L1に沿って埋没する角度を0°とする)、−20°〜−30°の範囲内となるように設けられる。
【0040】
そして、摩擦撹拌接合用工具10のプローブ18をアドバンシングサイド側に存在するワークW3にオフセットして配置する。その際のオフセット量は、該プローブ18が埋没する側の第1端面30と第2端面32との境界線から該プローブ18の直径の1/2以内である。好ましくは、プローブ18の中心L1がワークW3の鈍角を形成する隅角部と一致するか、あるいはアドバンシング側に偏在させてもよい。そして、前記プローブ18を中心軸L1に沿って移動させ、摩擦撹拌接合を行うと、前記ワークW3と前記ワークW4とが良好に接合される。
【0041】
本発明に係る摩擦撹拌接合方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
10…摩擦撹拌接合用工具 12、30…第1端面
14、32…第2端面 16…回転体
18…プローブ L1…プローブの中心線
L2…境界線 W1、W2、W3、W4…ワーク
V1、V2…ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワークの第1端面と、第2ワークの第2端面とを互いに接近して対向配置させた後、回転動作する摩擦撹拌接合用工具によって前記第1端面と第2端面とを接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記第1端面と第2端面とは互いに補角関係を形成するように鈍角と鋭角に傾斜する傾斜面であり、
前記摩擦撹拌用工具を構成するプローブは前記第1ワークと第2ワークに臨む際にその先を端部が徐々に縮径する円錐台状であり、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とをギャップ(G)を介して対向配置する第1の工程と、
前記プローブの先端部中心を前記ギャップよりも第1ワークのアドバンシングサイドに位置決めする第2の工程と、
前記摩擦撹拌用工具を回転駆動するとともに前記プローブの先端部中心を前記第1ワークに回転埋没させて前記ギャップに前記第1ワークと第2ワークの肉を塑性流動させて後固化する第3の工程と、
からなることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記プローブの円錐台状の周壁の傾斜角度は、該プローブの軸線L1を基準とするとき、
前記第2ワークの第2端面の傾斜角度よりも前記軸線L1側に接近するように設定されていることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と、第2ワークの第2端面の間のギャップGの先端部が前記プローブの先端部の半径内に位置するように該プローブを位置決めすることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とを互いにギャップGを介して対向配置する際に、
前記第2端面の傾斜角度は前記プローブの軸線L1を中心とすると−20°〜−30°の範囲であることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項5】
請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法において、
前記第1ワークの第1端面と第2ワークの第2端面とを互いにギャップGを介して対向配置する際に、
前記第2ワークの第2端面の傾斜角度は前記プローブの円錐台状の周壁の傾斜角度と同一に形成されていることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−201484(P2010−201484A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51997(P2009−51997)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】