摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材
【課題】 接合部の接合強度を向上する摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材を提供すること。
【解決手段】 厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合し、接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うようにした。
【解決手段】 厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合し、接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1〜特許文献3に記載の技術が開示されている。
特許文献1では、摩擦攪拌接合の始端と止端との間をオーバラップして接合線を形成し、このオーバラップして接合線を形成する際に摩擦ピンを順次引き上げて、接合線を止端に向けて順次浅くするものが開示されている。
【0003】
特許文献2では、摩擦攪拌接合の終端部を接合部の接合終点からずれた位置とするものが開示されている。また摩擦攪拌接合の始端部を接合部の接合始点からずれた位置とするものが開示されている。
特許文献3では、摩擦攪拌接合を接合終点まで行い接合始点に向かって戻した後にピンを引き抜くようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3409675号公報
【特許文献2】特開2005−95951号公報
【特許文献3】特開2007−289976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、摩擦攪拌接合の開始点では回転体による摩擦熱が低いため、接合部の塑性流動が十分に行われず接合強度が低下するおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、接合部の接合強度を向上する摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明においては、厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合し、接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うようにした。
【発明の効果】
【0007】
よって本発明においては、接合部の接合強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の摩擦攪拌接合器を示す図である。
【図2】実施例1の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図3】実施例1の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図4】実施例1の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図5】実施例1の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図6】実施例2の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図7】実施例3の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図8】実施例4の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図9】実施例5の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図10】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図11】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図12】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図13】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図14】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図15】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図16】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図17】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図18】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図19】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図20】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図21】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施例1〕
[摩擦攪拌接合器の構成]
図1は摩擦攪拌接合器1を示す図である。摩擦攪拌接合器1は、先端に円筒形のピン(摩擦回転体)2が設けられたツール3からなる。このツール3は、スピンドルを介してロボットアームに設けられたモータの回転軸に連結されている。これによりツール3は高速に自転しながら、被接合部材6に対して任意の位置に移動可能となっている。
【0010】
[接合部材の構成]
図2は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図3は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、肉厚の異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とから構成されている。
【0011】
厚肉被接合部材4は金属製の管状部材であり、大径部7と小径部8から構成されている。小径部8は大径部7の一端部に形成されており、この小径部8の外周径は大径部7の外周径よりも小径に形成されている。また小径部8は大径部7に比べて薄肉に形成されている。
【0012】
薄肉被接合部材5は金属製の管状部材であり、厚肉被接合部材4の大径部7よりも薄肉に形成されている。また薄肉被接合部材5の外径は厚肉被接合部材4の大径部7の外径と同径に形成され、また内径は厚肉被接合部材4の小径部8の外径よりもやや大径に形成されている。薄肉被接合部材5は、厚肉被接合部材4の小径部8に挿入されて一体の管状部材の被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部15と称する。
【0013】
[摩擦攪拌接合]
摩擦攪拌接合は、ツール3を回転させながらピン2を被接合部材に強い力で押しつけることで被接合部材にピン2を埋入させ、これによって摩擦熱を発生させて被接合部材をなんかさせるとともに、ツール3の回転力によって接合部付近を塑性流動させて練り混ぜることで一体に接合するものである。
【0014】
実施例1では、厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5の外周上の当接線9上を摩擦攪拌接合していく。接合をすべき位置の中心(接合中心)を接合中心線10と称する。実施例1では当接線9上が接合中心線10となる。
【0015】
図4は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図4(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図4(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0016】
摩擦攪拌接合を開始する際には、ツール3を回転させた状態でピン2の回転軸の軸線が接合中心線10上に位置するように配置する。ツール3を厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5に接近させ、ピン2を埋入させる。ピン2を埋入させた位置が接合開始点12となる。
【0017】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5を半円状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後は接合中心線10上を移動させ、接合開始点12上を通過し、接合中心線10の未接合部分を接合して摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0018】
図5は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図5に示すように厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とが練り混ざり、攪拌部14が形成されている。
摩擦攪拌接合の際、摩擦攪拌接合器1を被接合部材6に対して移動するようにしても良いし、被接合部材6を摩擦攪拌接合器1に対して移動(回転)させるようにしても良い。
【0019】
[作用]
摩擦攪拌接合の接合開始点12では回転するピン2の押しつけにより発生する摩擦熱が低いため、接合部の塑性流動が十分に行われず接合強度が低下するおそれがあった。
【0020】
そこで実施例1では、接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合するようにした。そのため、接合開始点12付近の図4の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被結合部材5側も接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0021】
また実施例1では、接合中心線10上での接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0022】
また実施例1では、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合部の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0023】
[効果]
以下、実施例1の効果について列記する。
【0024】
(1)厚みが異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とを厚み方向に互いに当接させて当接部15を形成し、回転するピン2を当接部15に埋入させた後、ピン2を当接部15の接合中心線10上に移動させることにより、当接部15を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合方法において、接合中心線10上の接合を開始する接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合を行うようにした。
そのため、接合開始点12付近では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0025】
(2)摩擦攪拌接合方法として、接合を開始する接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。
そのため、十分に摩擦熱が上昇したピン2が接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0026】
(3)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0027】
(4)厚みが異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とを厚み方向に互いに当接させて当接部15を形成し、回転するピン2を当接部15に埋入させた後、ピン2を当接部15の接合中心線10上に移動させることにより、当接部15を摩擦攪拌接合した攪拌接合部材において、接合中心線10上の接合を開始する接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合されるようにした。
そのため、接合開始点12付近では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0028】
(5)摩擦攪拌接合部材において、接合を開始する接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。
そのため、十分に摩擦熱が上昇したピン2が接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0029】
(6)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0030】
〔実施例2〕
次に実施例2について説明する。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1と実施例2では接合軌跡11が異なる。
【0031】
図6は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図6(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図6(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0032】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して再び接合開始点12に戻る。その後は接合中心線10上を移動し、再び接合開始点12に戻りで摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0033】
[作用]
実施例2では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了ようにした。そのため、接合開始点12付近の図6の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0034】
[効果]
以下、実施例2の効果について列記する。
【0035】
(7)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0036】
(8)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
なお、この実施例2における他の実施例としては、接合開始点12を接合して接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置に戻り、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して再び接合開始点12に戻り、接合を終了するようにしても良く、同様の作用効果が得られる。
【0037】
〔実施例3〕
次に実施例3について説明する。実施例1,2と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1,2と実施例3では接合軌跡11が異なる。
【0038】
図7は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図7(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図7(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0039】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後は接合中心線10上を移動し、接合開始点12上を通過し、接合中心線10の未接合部分を接合して摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0040】
[作用]
実施例3では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図7の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0041】
[効果]
以下、実施例3の効果について列記する。
【0042】
(9)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0043】
(10)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0044】
〔実施例4〕
次に実施例4について説明する。実施例1〜実施例3と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1〜実施例3と実施例4では接合軌跡11が異なる。
【0045】
図8は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図8(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図8(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0046】
接合開始点12を接合後、ツール3を接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後接合中心線10上を移動し、接合開始点12を通過した後に接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0047】
[作用]
実施例4では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図8の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0048】
[効果]
以下、実施例4の効果について列記する。
【0049】
(11)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0050】
(12)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0051】
〔実施例5〕
次に実施例5について説明する。実施例1〜実施例4と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1〜実施例4と実施例5では接合軌跡11が異なる。
【0052】
図9は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図9(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図9(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0053】
接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻る。その後、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0054】
[作用]
実施例5では接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図8の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0055】
[効果]
以下、実施例5の効果について列記する。
【0056】
(13)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0057】
(14)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0058】
〔他の実施例〕
以上、本発明の摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材について実施例に基づき説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1〜実施例5では被接合部材6を管状形状としたが他の形状であっても良い。
【0059】
図10は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図11は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図12は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6の一端側は閉塞しており、他端は開口している。被接合部材6は蓋部被接合部材(厚肉被接合部材)21と管部被接合部材(薄肉被接合部材)22とから構成されている。
【0060】
蓋部被接合部材21は、円筒形の大径部23と小径部24から構成されており、この小径部24の外周径は大径部23の外周径よりも小径に形成されている。
【0061】
管部被接合部材22は金属製の管状部材であり、管部被接合部材22の外径は蓋部被接合部材21の大径部23の外径と同径に形成され、また内径は蓋部被接合部材21の小径部24の外径よりもやや大径に形成されている。管部被接合部材22は、蓋部被接合部材21の小径部24に挿入されて一体の被接合部材6を形成する。このとき管部被接合部材22は蓋部被接合部材21に対しては厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部25と称する。
【0062】
当接部25を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図12に示すように蓋部被接合部材21と管部被接合部材22とが練り混ざり、攪拌部27が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0063】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図13は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図14は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図15は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6の外径は円筒状であるが、内部に中空部を有している。被接合部材6は容器部被接合部材(厚肉被接合部材)31と蓋部被接合部材(薄肉被接合部材)32とから構成されている。
【0064】
容器部被接合部材31は、金属製の円筒形の有底カップ状に形成されている。この容器部被接合部材31の開口部には段部34が形成されている。
【0065】
蓋部被接合部材32は金属製の円盤状に形成されており、蓋部被接合部材32の外径は容器部被接合部材31の段部34の外径よりもやや小径に形成されている。また蓋部被接合部材32の厚さは段部34の深さと同じ高さに形成されている。
【0066】
蓋部被接合部材32は、容器部被接合部材31の段部34に挿入されて一体の被接合部材6を形成する。このとき蓋部被接合部材32は容器部被接合部材31に対して厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部35と称する。
【0067】
当接部35を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図15に示すように容器部被接合部材31と蓋部被接合部材32とが練り混ざり、攪拌部37が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0068】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図16は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図17は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図18は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、厚肉被接合部材41と薄肉被接合部材42とから構成されている。
【0069】
厚肉被接合部材41は金属製の管状部材であり、薄肉被接合部材42も同じく金属製の管状部材であり厚肉被接合部材4よりも薄肉に形成されている。また薄肉被接合部材42の内径は厚肉被接合部材4の外径よりもやや小径に形成されている。薄肉被接合部材42は、厚肉被接合部材41の外径に挿入されて一体の管状部材の被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材41と薄肉被接合部材42は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部45と称する。
【0070】
当接部45を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図18に示すように薄肉被接合部材41と厚肉被接合部材42とが練り混ざり、攪拌部47が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0071】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図19は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図20は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図21は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52とから構成されている。
【0072】
厚肉被接合部材51は金属製の管状部材であり、大径部53、小径部54と中間部50から構成されている。小径部54の外周径は大径部53の外周径よりも小径に形成され、内周径は大径部53の内周径よりも小径に形成されている。中間部50の外周径は大径部53の外周径と同径に形成され、内径は小径部54の内周径と同径に形成されている。
【0073】
薄肉被接合部材52は金属製の管状部材であり、外周径は厚肉被接合部材51の大径部53および中間部50の外周径と同径に形成され、内周径は厚肉被接合部材51の小径部54および中間部50の内周径よりもやや大径に形成されている。
【0074】
薄肉被接合部材52は、厚肉被接合部材51の小径部54の外周に挿入されて一体の管状部材として被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部55と称する。
【0075】
当接部55を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図21に示すようにと厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52とが練り混ざり、攪拌部57が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 摩擦攪拌接合器
2 ピン(摩擦回転体)
3 ツール
4 厚肉被接合部材
5 薄肉被接合部材
6 被接合部材
10 接合中心線
12 接合開始点
13 接合終了点
21 蓋部被接合部材(厚肉被接合部材)
22 管部被接合部材(薄肉被接合部材)
31 容器部被接合部材(厚肉被接合部材)
32 蓋部被接合部材(薄肉被接合部材)
41 厚肉被接合部材
42 薄肉被接合部材
51 厚肉被接合部材
52 薄肉被接合部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1〜特許文献3に記載の技術が開示されている。
特許文献1では、摩擦攪拌接合の始端と止端との間をオーバラップして接合線を形成し、このオーバラップして接合線を形成する際に摩擦ピンを順次引き上げて、接合線を止端に向けて順次浅くするものが開示されている。
【0003】
特許文献2では、摩擦攪拌接合の終端部を接合部の接合終点からずれた位置とするものが開示されている。また摩擦攪拌接合の始端部を接合部の接合始点からずれた位置とするものが開示されている。
特許文献3では、摩擦攪拌接合を接合終点まで行い接合始点に向かって戻した後にピンを引き抜くようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3409675号公報
【特許文献2】特開2005−95951号公報
【特許文献3】特開2007−289976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、摩擦攪拌接合の開始点では回転体による摩擦熱が低いため、接合部の塑性流動が十分に行われず接合強度が低下するおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、接合部の接合強度を向上する摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明においては、厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合し、接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うようにした。
【発明の効果】
【0007】
よって本発明においては、接合部の接合強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の摩擦攪拌接合器を示す図である。
【図2】実施例1の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図3】実施例1の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図4】実施例1の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図5】実施例1の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図6】実施例2の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図7】実施例3の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図8】実施例4の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図9】実施例5の摩擦攪拌接合の接合軌跡を示す図である。
【図10】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図11】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図12】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図13】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図14】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図15】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図16】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図17】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図18】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図19】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の斜視図である。
【図20】他の実施例の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【図21】他の実施例の摩擦攪拌接合後の被接合部材と摩擦攪拌接合器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施例1〕
[摩擦攪拌接合器の構成]
図1は摩擦攪拌接合器1を示す図である。摩擦攪拌接合器1は、先端に円筒形のピン(摩擦回転体)2が設けられたツール3からなる。このツール3は、スピンドルを介してロボットアームに設けられたモータの回転軸に連結されている。これによりツール3は高速に自転しながら、被接合部材6に対して任意の位置に移動可能となっている。
【0010】
[接合部材の構成]
図2は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図3は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、肉厚の異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とから構成されている。
【0011】
厚肉被接合部材4は金属製の管状部材であり、大径部7と小径部8から構成されている。小径部8は大径部7の一端部に形成されており、この小径部8の外周径は大径部7の外周径よりも小径に形成されている。また小径部8は大径部7に比べて薄肉に形成されている。
【0012】
薄肉被接合部材5は金属製の管状部材であり、厚肉被接合部材4の大径部7よりも薄肉に形成されている。また薄肉被接合部材5の外径は厚肉被接合部材4の大径部7の外径と同径に形成され、また内径は厚肉被接合部材4の小径部8の外径よりもやや大径に形成されている。薄肉被接合部材5は、厚肉被接合部材4の小径部8に挿入されて一体の管状部材の被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部15と称する。
【0013】
[摩擦攪拌接合]
摩擦攪拌接合は、ツール3を回転させながらピン2を被接合部材に強い力で押しつけることで被接合部材にピン2を埋入させ、これによって摩擦熱を発生させて被接合部材をなんかさせるとともに、ツール3の回転力によって接合部付近を塑性流動させて練り混ぜることで一体に接合するものである。
【0014】
実施例1では、厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5の外周上の当接線9上を摩擦攪拌接合していく。接合をすべき位置の中心(接合中心)を接合中心線10と称する。実施例1では当接線9上が接合中心線10となる。
【0015】
図4は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図4(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図4(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0016】
摩擦攪拌接合を開始する際には、ツール3を回転させた状態でピン2の回転軸の軸線が接合中心線10上に位置するように配置する。ツール3を厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5に接近させ、ピン2を埋入させる。ピン2を埋入させた位置が接合開始点12となる。
【0017】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5を半円状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後は接合中心線10上を移動させ、接合開始点12上を通過し、接合中心線10の未接合部分を接合して摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0018】
図5は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図5に示すように厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とが練り混ざり、攪拌部14が形成されている。
摩擦攪拌接合の際、摩擦攪拌接合器1を被接合部材6に対して移動するようにしても良いし、被接合部材6を摩擦攪拌接合器1に対して移動(回転)させるようにしても良い。
【0019】
[作用]
摩擦攪拌接合の接合開始点12では回転するピン2の押しつけにより発生する摩擦熱が低いため、接合部の塑性流動が十分に行われず接合強度が低下するおそれがあった。
【0020】
そこで実施例1では、接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合するようにした。そのため、接合開始点12付近の図4の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被結合部材5側も接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0021】
また実施例1では、接合中心線10上での接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0022】
また実施例1では、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合部の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0023】
[効果]
以下、実施例1の効果について列記する。
【0024】
(1)厚みが異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とを厚み方向に互いに当接させて当接部15を形成し、回転するピン2を当接部15に埋入させた後、ピン2を当接部15の接合中心線10上に移動させることにより、当接部15を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合方法において、接合中心線10上の接合を開始する接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合を行うようにした。
そのため、接合開始点12付近では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0025】
(2)摩擦攪拌接合方法として、接合を開始する接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。
そのため、十分に摩擦熱が上昇したピン2が接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0026】
(3)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0027】
(4)厚みが異なる厚肉被接合部材4と薄肉被接合部材5とを厚み方向に互いに当接させて当接部15を形成し、回転するピン2を当接部15に埋入させた後、ピン2を当接部15の接合中心線10上に移動させることにより、当接部15を摩擦攪拌接合した攪拌接合部材において、接合中心線10上の接合を開始する接合開始点12の薄肉被接合部材5側を、接合中心線10を外れて接合されるようにした。
そのため、接合開始点12付近では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。
【0028】
(5)摩擦攪拌接合部材において、接合を開始する接合開始点12上を通って接合を終了するようにした。
そのため、十分に摩擦熱が上昇したピン2が接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0029】
(6)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0030】
〔実施例2〕
次に実施例2について説明する。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1と実施例2では接合軌跡11が異なる。
【0031】
図6は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図6(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図6(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0032】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して再び接合開始点12に戻る。その後は接合中心線10上を移動し、再び接合開始点12に戻りで摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0033】
[作用]
実施例2では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了ようにした。そのため、接合開始点12付近の図6の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0034】
[効果]
以下、実施例2の効果について列記する。
【0035】
(7)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0036】
(8)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して接合開始点12に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
なお、この実施例2における他の実施例としては、接合開始点12を接合して接合中心線10を接合後、接合開始点12の位置に戻り、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を接合して再び接合開始点12に戻り、接合を終了するようにしても良く、同様の作用効果が得られる。
【0037】
〔実施例3〕
次に実施例3について説明する。実施例1,2と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1,2と実施例3では接合軌跡11が異なる。
【0038】
図7は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図7(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図7(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0039】
接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後は接合中心線10上を移動し、接合開始点12上を通過し、接合中心線10の未接合部分を接合して摩擦攪拌接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0040】
[作用]
実施例3では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図7の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0041】
[効果]
以下、実施例3の効果について列記する。
【0042】
(9)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0043】
(10)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をヘの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0044】
〔実施例4〕
次に実施例4について説明する。実施例1〜実施例3と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1〜実施例3と実施例4では接合軌跡11が異なる。
【0045】
図8は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図8(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図8(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0046】
接合開始点12を接合後、ツール3を接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して再び接合中心線10に戻る。その後接合中心線10上を移動し、接合開始点12を通過した後に接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0047】
[作用]
実施例4では接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図8の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0048】
[効果]
以下、実施例4の効果について列記する。
【0049】
(11)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0050】
(12)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12を接合後、接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側をコの字状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10を接合後、接合開始点12を通過した後に接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合を終了する前に接合開始点12上を通ることにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0051】
〔実施例5〕
次に実施例5について説明する。実施例1〜実施例4と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例1〜実施例4と実施例5では接合軌跡11が異なる。
【0052】
図9は摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示す図であり、図9(a)は被接合部材6を周方向に展開した図に摩擦攪拌接合の接合軌跡11を示した図、図9(b)は接合軌跡11
の模式図である。
【0053】
接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻る。その後、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了する。摩擦攪拌接合を終了した位置を接合終了点13とする。
【0054】
[作用]
実施例5では接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。そのため、接合開始点12付近の図8の補強部16が示す位置では接合中心線10の部分が接合されるとともに、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合されるため、接合強度を向上させることができる。また、摩擦攪拌接合を行ってきたピン2は十分に摩擦熱が上昇しており、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0055】
[効果]
以下、実施例5の効果について列記する。
【0056】
(13)摩擦攪拌接合方法として、接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0057】
(14)摩擦攪拌接合部材において、接合開始点12から接合中心線10上を接合後、接合開始点12の手前から接合中心線10に対して薄肉被接合部材5側を半円状に接合して接合中心線10に戻り、接合中心線10上を接合開始点12側に戻って接合して、接合開始点12の位置で接合を終了するようにした。
そのため、接合中心線10より薄肉被接合部材5も摩擦攪拌接合され、接合強度を向上させることができる。また、接合開始点12で接合を終了することにより、接合開始点12の塑性流動を十分に行うことができ接合強度を向上させることができる。
【0058】
〔他の実施例〕
以上、本発明の摩擦攪拌接合方法、および摩擦攪拌接合部材について実施例に基づき説明したが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施例1〜実施例5では被接合部材6を管状形状としたが他の形状であっても良い。
【0059】
図10は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図11は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図12は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6の一端側は閉塞しており、他端は開口している。被接合部材6は蓋部被接合部材(厚肉被接合部材)21と管部被接合部材(薄肉被接合部材)22とから構成されている。
【0060】
蓋部被接合部材21は、円筒形の大径部23と小径部24から構成されており、この小径部24の外周径は大径部23の外周径よりも小径に形成されている。
【0061】
管部被接合部材22は金属製の管状部材であり、管部被接合部材22の外径は蓋部被接合部材21の大径部23の外径と同径に形成され、また内径は蓋部被接合部材21の小径部24の外径よりもやや大径に形成されている。管部被接合部材22は、蓋部被接合部材21の小径部24に挿入されて一体の被接合部材6を形成する。このとき管部被接合部材22は蓋部被接合部材21に対しては厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部25と称する。
【0062】
当接部25を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図12に示すように蓋部被接合部材21と管部被接合部材22とが練り混ざり、攪拌部27が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0063】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図13は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図14は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図15は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6の外径は円筒状であるが、内部に中空部を有している。被接合部材6は容器部被接合部材(厚肉被接合部材)31と蓋部被接合部材(薄肉被接合部材)32とから構成されている。
【0064】
容器部被接合部材31は、金属製の円筒形の有底カップ状に形成されている。この容器部被接合部材31の開口部には段部34が形成されている。
【0065】
蓋部被接合部材32は金属製の円盤状に形成されており、蓋部被接合部材32の外径は容器部被接合部材31の段部34の外径よりもやや小径に形成されている。また蓋部被接合部材32の厚さは段部34の深さと同じ高さに形成されている。
【0066】
蓋部被接合部材32は、容器部被接合部材31の段部34に挿入されて一体の被接合部材6を形成する。このとき蓋部被接合部材32は容器部被接合部材31に対して厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部35と称する。
【0067】
当接部35を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図15に示すように容器部被接合部材31と蓋部被接合部材32とが練り混ざり、攪拌部37が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0068】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図16は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図17は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図18は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、厚肉被接合部材41と薄肉被接合部材42とから構成されている。
【0069】
厚肉被接合部材41は金属製の管状部材であり、薄肉被接合部材42も同じく金属製の管状部材であり厚肉被接合部材4よりも薄肉に形成されている。また薄肉被接合部材42の内径は厚肉被接合部材4の外径よりもやや小径に形成されている。薄肉被接合部材42は、厚肉被接合部材41の外径に挿入されて一体の管状部材の被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材41と薄肉被接合部材42は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部45と称する。
【0070】
当接部45を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図18に示すように薄肉被接合部材41と厚肉被接合部材42とが練り混ざり、攪拌部47が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【0071】
被接合部材6の別の形状例について説明する。
図19は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の斜視図、図20は被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図、図21は摩擦攪拌接合を終えた被接合部材6と摩擦攪拌接合器1の断面図である。被接合部材6は管状形状をしており、厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52とから構成されている。
【0072】
厚肉被接合部材51は金属製の管状部材であり、大径部53、小径部54と中間部50から構成されている。小径部54の外周径は大径部53の外周径よりも小径に形成され、内周径は大径部53の内周径よりも小径に形成されている。中間部50の外周径は大径部53の外周径と同径に形成され、内径は小径部54の内周径と同径に形成されている。
【0073】
薄肉被接合部材52は金属製の管状部材であり、外周径は厚肉被接合部材51の大径部53および中間部50の外周径と同径に形成され、内周径は厚肉被接合部材51の小径部54および中間部50の内周径よりもやや大径に形成されている。
【0074】
薄肉被接合部材52は、厚肉被接合部材51の小径部54の外周に挿入されて一体の管状部材として被接合部材6を形成する。このとき厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52は厚み方向に当接していることとなる。この当接部分を当接部55と称する。
【0075】
当接部55を実施例1〜実施例5で説明した摩擦攪拌接合方法によって接合する。摩擦攪拌接合が行われた部分は、図21に示すようにと厚肉被接合部材51と薄肉被接合部材52とが練り混ざり、攪拌部57が形成されている。
上記のような被接合部材6であっても、実施例1〜実施例5と同様に接合強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 摩擦攪拌接合器
2 ピン(摩擦回転体)
3 ツール
4 厚肉被接合部材
5 薄肉被接合部材
6 被接合部材
10 接合中心線
12 接合開始点
13 接合終了点
21 蓋部被接合部材(厚肉被接合部材)
22 管部被接合部材(薄肉被接合部材)
31 容器部被接合部材(厚肉被接合部材)
32 蓋部被接合部材(薄肉被接合部材)
41 厚肉被接合部材
42 薄肉被接合部材
51 厚肉被接合部材
52 薄肉被接合部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、
回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合方法において、
接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法において、
接合を開始する前記開始点上を通って接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を接合して前記開始点に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点の位置で接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をヘの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をコの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項7】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点から前記接合中心線上を接合後、前記開始点の手前から前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線上を前記開始点側に戻って接合して、前記開始点の位置で接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項8】
厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、
回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合した摩擦攪拌接合部材において、
接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合されていることを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項9】
請求項8に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記接合中心線上であって前記開始点上を通って接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項10】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項11】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を接合して前記開始点に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点の位置で接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項12】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をヘの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項13】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をコの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項14】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点から前記接合中心線上を接合後、前記開始点の手前から前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線上を前記開始点側に戻って接合して、前記開始点の位置で接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項1】
厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、
回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌接合方法において、
接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合方法において、
接合を開始する前記開始点上を通って接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を接合して前記開始点に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点の位置で接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をヘの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をコの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項7】
請求項2に記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記開始点から前記接合中心線上を接合後、前記開始点の手前から前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線上を前記開始点側に戻って接合して、前記開始点の位置で接合を終了することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項8】
厚みが異なる厚肉被接合部材と薄肉被接合部材とを厚み方向に互いに当接させて当接部を形成し、
回転する摩擦回転体を前記当接部に埋入させた後、前記摩擦回転体を前記当接部の接合中心線上に移動させることにより、前記当接部を摩擦攪拌接合した摩擦攪拌接合部材において、
接合中心線上の接合を開始する開始点の前記薄肉被接合部材側を、前記接合中心線を外れて接合されていることを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項9】
請求項8に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記接合中心線上であって前記開始点上を通って接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項10】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項11】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を接合して前記開始点に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点の位置で接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項12】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をヘの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項13】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点を接合後、前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側をコの字状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線を接合後、前記開始点を通過した後に接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【請求項14】
請求項9に記載の摩擦攪拌接合部材において、
前記開始点から前記接合中心線上を接合後、前記開始点の手前から前記接合中心線に対して前記薄肉被接合部材側を半円状に接合して前記接合中心線に戻り、
前記接合中心線上を前記開始点側に戻って接合して、前記開始点の位置で接合を終了するようにしたことを特徴とする摩擦攪拌接合部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−115801(P2011−115801A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273105(P2009−273105)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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