摩砕機及び摩砕機用仕切板
【課題】仕切板の摩耗を大幅に減少させることが可能であって、仕切板の交換回数を少なくすることができ、摩砕効率の向上と設備コストの低減を達成することができ、メンテナンスの作業時間を大幅に短縮して稼働率を向上させることが可能な摩砕機を提供する。
【解決手段】被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板4と、摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、仕切板4は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔15が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロック20が嵌合されている。
【解決手段】被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板4と、摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、仕切板4は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔15が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロック20が嵌合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼球等の摩砕媒体を用いて骨材等の摩砕を行うための摩砕機及び摩砕機のドラム体内部を仕切る仕切板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリートやアスファルトの廃材から再生骨材を得るための装置として、種々のボールミル型摩砕機が存在している。
そのうち、被摩砕物の滞留時間を長くとるために、ドラム体内を複数の仕切板により区画した構造を有するものも多く存在しており、このような構造を有する摩砕機では、被摩砕物は仕切板の周縁部とドラム体内壁との隙間を通ってドラム体の一端側から他端側へと移動しながら、各区画内においてボールにより摩砕される。
【0003】
しかしながら、このような従来の摩砕機は、仕切板が中心軸に対して直角に取り付けられているため、ボールを積極的に前後方向(ドラム体の軸長方向)に移動させることはできず、ボールの運動は径方向及び周方向が殆どであった。
そのため、ボールと被摩砕物が等速度で回るいわゆる共回り現象が発生し、摩砕効率が大きく低下する原因となっていた。
【0004】
本出願人はかかる問題点を解決するために、上記した共回り現象の発生を防いで、摩砕効率を飛躍的に向上させることを可能とした摩砕機を既に提案している(下記特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の発明は、仕切板を中心軸に対して傾斜して取り付けるという従来に無い全く新規な発想に基づいた発明であって、これによりボールに積極的に前後方向の運動を与えることを可能としたものである。
しかしながら、この本願出願人が創出した摩砕機は、摩砕効率においては飛躍的な進歩を果たしたものの、仕切板が中心軸に対して傾斜して取り付けられているため、従来の摩砕機に比べると、仕切板表面に対する摩砕媒体(ボール等)の摩擦が大きい。
そのため、仕切板が短期間で摩耗し易くなって、仕切板を頻繁に交換しなければならず、面倒であるとともに、作業効率の低下と設備コストの増大を招いていた。
尚、仕切板が中心軸に対して直角に取り付けられている従来の摩砕機においても、仕切板の摩耗は当然生じるものであるから、仕切板の摩耗を低減させることは従来の摩砕機においても解決が強く要望されていた課題であった。
【0006】
上記した仕切板の摩耗という問題点を解決するために、本願出願人は更に検討を重ねて、下記特許文献2記載の発明を提案している。
特許文献2記載の発明は、仕切板の表面に多数の半球状のビットを突設したものであり、ボール等の摩砕媒体がビットに当たることで仕切板の表面との摩擦が低減され、仕切板の交換頻度を少なくすることが可能となる。
【0007】
しかしながら、この発明の仕切板では、一定期間毎に摩耗したビットを交換する作業が必要となるが、仕切板の表面にねじ等で固定された多数のビットを交換する作業は非常に手間がかかる上に、仕切板を回転軸に固定したままの状態で全てのビットを交換することは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特許第3261125号公報
【特許文献2】特開2006−205118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものであって、仕切板の摩耗を大幅に減少させることが可能であって、仕切板の交換回数を少なくすることができ、摩砕効率の向上と設備コストの低減を達成することができるとともに、メンテナンスの作業時間を大幅に短縮して稼働率を向上させることが可能である摩砕機及び摩砕機用仕切板を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板と、前記摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、前記ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、前記仕切板は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記仕切板は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、前記一対の挟持部には、他端側近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、前記仕切板に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項1記載の摩砕機に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項2記載の摩砕機に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、摩砕媒体が収容されたドラム体の内部に被摩砕物を取り入れて摩砕する摩砕機において、前記ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸に取り付けられて該ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板であって、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機用仕切板に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、前記一対の挟持部には、他端側近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、前記切り込み部の近傍位置に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項4記載の摩砕機用仕切板に関する。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項5記載の摩砕機用仕切板に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び4に係る発明によれば、仕切板の外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されているので、ボール等の摩砕媒体がブロックに当たることで仕切板の表面との摩擦が低減され、仕切板の交換頻度を少なくすることが可能となり、作業効率の向上と設備コストの低減を達成することができる。
しかも、ブロックはコの字状であって、仕切板の外周縁に沿って形成された切り込み部への嵌合によって仕切板に装着されているため、仕切板を中心軸に固定した状態においても取り付け取り外しの作業を容易に行うことができる。そのため、ブロックが摩耗した場合等には短時間で交換作業を行うことができ、摩砕機の稼働率を大幅に向上させることが可能となる。
【0017】
請求項2及び5に係る発明によれば、仕切板に形成された貫通孔と、ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されているため、ブロックを仕切板に対して確実に固定することができるとともに、ピンの挿脱により仕切板に対するブロックの着脱を容易に行うことができる。
【0018】
請求項3及び6に係る発明によれば、ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネはその復元力により仕切板の貫通孔内面を押圧することにより、簡易な構成で、仕切板に対するブロックの着脱の容易さを維持しつつ、ブロックの仕切板に対する固定強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る摩砕機及び摩砕機用仕切板の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る摩砕機の好適な実施形態の一例を示す正面図、図2は本発明に係る摩砕機の縦断面図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図である。
本発明に係る摩砕機(1)は、略円筒形状のドラム体(2)と、該ドラム体(2)内を軸長方向に貫いて回転する中心軸(3)と、該中心軸(3)に取り付けられてドラム体(2)内を複数の摩砕室に区画する仕切板(4)と、前記各摩砕室内に装填された多数の摩砕媒体(5)とから構成される。
尚、図3及び図4では、仕切板と摩砕媒体の図示を省略している。
【0020】
ドラム体(2)の一端部には、被摩砕物(原料)を内部に取り入れるための導入口(6)が設けられ、他端部には摩砕後の被摩砕物を排出する排出口(7)が設けられている。
導入口(6)はドラム体(1)の上面に開口して形成され、その上部には被摩砕物を投入するための投入用ホッパ(8)が接続されている。
排出口(7)はドラム体(2)の周壁に形成された多数の貫通孔から構成され、これら排出口(7)を囲うように、図4に示すように排出用ホッパ(9)が接続されている。
排出用ホッパ(9)の前後面には、開閉可能な扉(11)が取り付けられており、これらの扉(11)を開けてホッパ内部を点検することができる。
また、排出用ホッパ(9)の上部には、エアー吹き出しノズル(10)が排出用ホッパ(9)の底部に向けて配置されており、このエアー吹き出しノズル(10)から排出用ホッパ(9)内に向けてエアーを吹き出すことによって、ドラム体(2)から排出用ホッパ(9)へと取り出された被摩砕物を速やかに底部から排出することが可能となる。
【0021】
ドラム体(2)は、円筒の上半分を構成する上半分面(2a)と、円筒の下半分を構成する下半分面(2b)を組み合わせることにより形成されており、図5に示す如く上半分面(2a)の全体を開放することが可能となっている。
この上半分面(2a)の開放は、下半分面(2b)に取り付けられた油圧シリンダー(25)の駆動によって行うことが可能となっている。
このように、ドラム体(2)の上半分面が開放可能となっていることにより、仕切板(4)のメンテナンスや交換作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、ドラム体(2)の底部には、内部に装填された摩砕媒体(5)を外部に取り出すための排出口(26)が設けられている。この排出口(26)は各摩砕室の底部にそれぞれ設けられており、図3に示すように各摩砕室から個別に摩砕媒体(5)を取り出すことが可能となっている。
さらに、ドラム体(2)の外周面の上方寄り位置には、開閉可能な窓部(28)が設けられている。窓部(28)は、各摩砕室に対応する位置毎に設けられており、この窓部(28)を開けることによって、各摩砕室内部の消耗品を確認したり摩砕媒体を補充したりすることができる。
【0023】
中心軸(3)は、ドラム体(2)内を軸長方向に貫くように配設されており、その左右両端部にはそれぞれ油圧駆動のモータ(12)が接続され、これら2つのモータ(12)の駆動によって回転するように構成されている。
中心軸(3)の一端部にのみモータ(12)を接続した場合、回転時に中心軸自身の重量やボールから受ける負荷によって中心軸が他端部において偏心してしまうため、これを防ぐために大きな駆動力を必要とするが、中心軸(3)をその両端部に接続したモータ(12)の駆動によって回転させることによって、中心軸端部の偏心が抑えられるため、消費電力を低減することが可能となる。また、駆動機構の設置面積を縮小することができる。
また、油圧駆動のモータは、ショックロードに強く、無段可変速のため、中心軸(3)の回転数を容易に調整することができ、被摩砕物の種類に合わせて適宜対応することが可能となる。但し、本発明では、電気モータを用いることも可能である。
【0024】
摩砕媒体(5)は、各摩砕室(13)内に複数個ずつ装填されている。この摩砕媒体(5)は、例えば金属製のボール等からなり、摩砕室(13)内に取り入れられた被摩砕物と衝突し、擦り合わされることによって、被摩砕物が摩砕される。
【0025】
ドラム体(2)の各摩砕室(13)の上部にはそれぞれ開口部(20)が形成され、更にこれらの開口部(20)の上部には開口部(20)を全て覆うような箱状部(21)が形成されている。
箱状部(21)は、その側面に開口された側面開口部(22)のみによって外部と連通しており、この側面開口部(22)は各摩砕室(13)に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0026】
各側面開口部(22)には、それぞれ吸引パイプ(23)が挿入され、これら吸引パイプ(23)の先端は、開口部(22)から入ってドラム体(2)内の各摩砕室(13)に配置されている。尚、各吸引パイプ(23)の基端部は、吸引ポンプ(図示略)を介してバグフィルター(図示略)に接続されている。
【0027】
また、箱状部(21)には空気供給パイプ(24)が配設されており(図3参照)、この空気供給パイプ(24)は複数に分岐されて、各分岐端は開口部(22)から入ってドラム体(2)内の各摩砕室(13)内に配置されている。尚、空気供給パイプの基端部は、送風機(図示略)に接続されている。
【0028】
このように、ドラム体(2)の各摩砕室(13)内に、それぞれ吸引パイプ(23)及び空気供給パイプ(24)の先端が挿入されていることによって、各摩砕室(13)内で発生した微粉末を効率良く回収することが可能となっている。
【0029】
また、ドラム体(2)の底面にはドラム体を地面上の一定高さに支持するための支持脚(27)が設けられている。
この支持脚(27)は、ドラム体(2)の前後方向(図1にて左右方向)における前方寄り位置と後方寄り位置に取り付けられている。そして、これらの支持脚(27)のうち、後方寄り位置にある支持脚には油圧シリンダー(27a)が設けられており、この油圧シリンダー(27a)を伸縮させることによって、ドラム体(2)を前後方向において任意の角度に傾斜させることができ、これによって、被摩砕物のドラム体(2)内における滞留時間を調節することが可能となる。
【0030】
本発明は、摩砕機が備える仕切板(4)の構成に大きな特徴を有するものである。
図6は、仕切板(4)の外観斜視図である。
仕切板(4)は、中心軸(3)が挿通される中心穴(14)を有する楕円形(又は円形)のプレートからなり、仕切板(4)の全面に亘って略均等に且つ略同心楕円状(又は同心円状)に配置された長穴からなる多数の貫通孔(15)を有している。これらの貫通孔(15)は、上記した摩砕室同士を連通する連通部分に相当し、摩砕媒体(5)により所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させるために設けられている。
また、これら貫通孔(15)とは別に、中心穴(14)に沿うように円形の貫通孔(19)が設けられている。
【0031】
この仕切板(4)は、上半分を構成する部材(4a)と、下半分を構成する部材(4b)の2つの半楕円形(又は半円形)の部材から構成されており、1枚の仕切板(4)をこれら2つの部材(4a)(4b)に分割することが可能となっている。
このように、仕切板(4)が2つの部材に分割可能とされていることによって、仕切板(4)を容易に中心軸(3)から取り外してメンテナンスや交換を行うことが可能となる。
また、本発明における仕切板(4)は、3つ、4つ、5つ、6つ等、より多くの部材に分割可能とする構成を採用することもでき、このような多分割構造としても同様の作用効果が得られる。
但し、仕切板(4)が分割可能とされていない、即ち1枚板からなるものも本発明に含まれる。
【0032】
仕切板(4)には、複数のブロック(20)が表裏両面から突出するように取り付けられている。(尚、図2及び図5ではブロックは省略されている。)
ブロック(20)は、仕切板(4)の外周縁に沿って略等間隔で取り付けられており、周方向に隣り合う貫通孔(15)同士の間の部分において、仕切板(4)の中心に向けて延びている。
【0033】
図7は、ブロック(20)の外観斜視図である。
ブロック(20)は、互いに平行に形成されて仕切板(4)を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部(20a)と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部(20b)とから形成されており、全体として正面視コの字状を呈している。
一対の挟持部(20a)には、他端(連結部と反対側のコの字の開放端)の近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔(20c)が形成されている。
【0034】
各挟持部(20a)と連結部(20b)とは、いずれも略直方体形状をなしており、連結部(20b)の幅は挟持部(20a)の幅に比べて僅かに小さく形成されている。
これにより、一対の挟持部(20a)はその先端側(一端側)だけでなく基端側(他端側)においても、連結部(20b)の幅からはみ出ている部分で仕切板(4)を挟持することができる。
また、一対の挟持部(20a)の隙間は、仕切板(4)の厚みと略等しくされており、各挟持部(20a)の長さは、仕切板(4)の内周縁から外周縁までの距離の1/3〜2/3に設定されている。
【0035】
図8は、ブロック(20)を取り外した状態の仕切板(4)を示す図である。
尚、この図では、仕切板(4)が2つの部材からなる場合における一方の仕切板を示している。また、図6で示した仕切板(4)とは、貫通孔(15)の数が異なっている。
仕切板(4)は、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部(41)が形成されている。
各切り込み部(41)は、仕切板(4)の中心方向に向かって長方形状に切り込まれて形成されており、その長さ(中心方向に向かう長さ)及び幅は、ブロック(20)の連結部(20b)の長さ及び幅と略等しく設定されている。
【0036】
各切り込み部(41)に対して、ブロック(20)が夫々嵌合される。
ブロック(20)の嵌合は、切り込み部(41)に対して、コの字状のブロック(20)を開放端側(挟持部の先端側)から差し入れることにより行われる。
【0037】
各切り込み部(41)の近傍位置には、貫通孔(42)が夫々形成されている。
具体的には、切り込み部(41)の仕切板(4)の中心方向への延長線上の近傍位置に貫通孔(42)が形成されている。
この貫通孔(42)は、切り込み部(41)に対してブロック(20)を嵌合した状態において、ブロック(20)に形成された貫通孔(20c)と合致するようになっており、両貫通孔(42)(20c)が合致した状態においてピン(17)を嵌挿することによって、ブロック(20)が仕切板(4)に対して確実に固定される。
【0038】
ブロック(20)に形成される貫通孔(20c)の直径と、仕切板(4)に形成される貫通孔(42)の直径は略等しく設定されるが、貫通孔(20c)の直径を貫通孔(42)の直径よりも僅かに大きく設定してもよい。
【0039】
図9は、本発明において使用されるピン(17)を示す図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線端面図、(c)は板バネ(後述する)を外した状態の正面図である。
ピン(17)は、全体として円柱状であって、その長さはブロック(20)の全体厚み(図7において上下方向の厚み)と略等しく設定されている。
また、長さ方向の中間部分に両端部分に比べて小径の小径部(17a)を有しており、この小径部(17a)に板バネ(17b)が巻回されている。
【0040】
板バネ(17b)は、金属の薄板を円筒状に丸めたものであって、外側から力が加わると縮径し、加わる力が無くなると拡径するバネ性を有している。
板バネ(17b)の外径は、外力が加わっていない自然状態においては、仕切板(4)に形成された貫通孔(42)の内径よりも大きいが、外力を加えることにより貫通孔(42)の内径よりも小さくすることができる。また、板バネ(17b)がピン(7)から脱落しないように、自然状態における板バネ(17b)の内径は、ピン(7)の両端部の外径よりも小さくなっている。
板バネ(17b)の幅(小径部(17a)の長さと略等しい)は、仕切板(4)の厚みと同じかそれよりも大きく設定される。
【0041】
ピン(17)は、上述したように、貫通孔(42)(20c)が合致した状態において、両貫通孔に嵌挿される。
嵌挿状態において、ピン(17)の両端部分(小径部以外の部分)の外面は、ブロック(20)に形成された貫通孔(20a)の内面に密接し、板バネ(17b)の外面は仕切板(4)に形成された貫通孔(42)の内面に密接する。
【0042】
このとき、板バネ(17b)は、その復元力により拡径しようとするため、貫通孔(42)の内面を押圧する。そのため、ピン(17)が仕切板(4)に対して強固に固定され、結果として、ブロック(20)が仕切板(4)に対して強固に固定される。
【0043】
ピン(7)を貫通孔(42)(20c)に入れる際には、板バネ(17b)を強く握る等して縮径させた状態でブロック(10)の一方の挟持部の貫通孔(20c)に挿入した後、ハンマー等を用いてピン(7)の端面がブロック(20)の表面と略面一となるまで叩き込めばよい。一方、ピンを抜く際には、ピン(7)の一方の端面を、ハンマーやピンより小径の棒等を用いて叩くことにより、簡単に抜くことができる。
【0044】
本発明においては、このようにピン(7)の挿脱作業をバネ性を利用して容易に行えることに加えて、コの字状のブロック(10)を仕切板(4)の外周縁に沿って形成された切り込み部(41)へと嵌合させる構造であるため、仕切板(4)を中心軸(3)に固定した状態においても取り付け取り外しの作業を容易に行うことができる。
そのため、ブロックが摩耗した場合等には短時間で交換作業を行うことができ、摩砕機の稼働率を大幅に向上させることが可能となる。
【0045】
仕切板(4)の表裏面に突出するブロック(20)の挟持部(20a)には、回転抵抗を少なくし且つ被摩砕物の割れを防ぐために、面取りを施すことが好ましい。
各ブロック(20)の挟持部(20a)の厚み及び/又は幅は、中心から外周縁に向かうにつれて大きくなるようにしてもよい。このようにすると、周速度の大きい外周縁近傍において仕切板の摩耗を効果的に防止することができ、仕切板全体の摩耗を均一化できるため好ましい。
【0046】
ブロック(20)の数や位置は特に限定されず、仕切板(4)の大きさ等に応じて適宜設定することができるが、図示のように隣り合う貫通孔(15)の間の位置に夫々設けることが好ましい。
このようにすると、仕切板(4)の摩耗が効果的に防がれるとともに、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物が貫通孔(15)を通過することが阻害されない。
【0047】
ブロック(20)は、少なくともその表面部分の硬度が、仕切板(4)と同等もしくはより高硬度とされることが好ましい。
この場合において、ブロック全体を単一の高硬度材料(例えば超硬合金や高クロム鋼)から形成してもよいし、所定の金属材料(例えば炭素鋼や鉄)にて形成されたブロックの表面を、当該金属材料より高硬度の材料(例えば超硬合金や高クロム鋼)で被覆することによって形成してもよい。
【0048】
複数のブロック(20)同士の間隔(D)は、ボール等の摩砕媒体(5)の直径(d)に対して、D≧dとなるように設定することが好ましい。
このように設定すると、摩砕機の作動時において、ブロック(20)同士の間に摩砕媒体(5)が入り込むことができる。この状態では、ブロック(20)の間に他の摩砕媒体が接触することが防がれるので、仕切板の摩耗を効果的に抑制することができるとともに、被摩砕物が仕切板の貫通孔を通過することが殆ど妨げられない。また、2d>D≧dとすると、ブロック間において摩砕媒体の侵入が許容されると同時に、進入した摩砕媒体の仕切板表面に沿う移動が制限されるため、仕切板の摩耗がより効果的に抑制される。
また、ブロック(20)が仕切板(4)の表面から突出する高さを、粉砕媒体(5)の直径以上に設定すると、ブロック(20)同士の間に挟まれた摩砕媒体(5)が脱出しにくくなって、他の摩砕媒体の接触をより確実に防ぐことが可能となるため好ましい。
【0049】
上述の如く、ブロック(20)はピン(7)の挿脱により仕切板(4)に対して簡単に着脱可能であることから、摩砕媒体(5)の大きさを変更した場合、それに応じてブロック(20)を異なる大きさのものに変更することができるため、摩砕媒体に対してブロック同士の間隔や仕切板からの突出高さを上記のような適当な値に設定することができるようになる。
【0050】
仕切板(4)は、図10に示す如くボス(16)を介して中心軸(3)に取り付けられる。
ボス(16)は、円筒体(16a)と、この円筒体(16a)の外周面に該円筒体の軸長方向に対して傾斜して固着された傾斜板(16b)とから構成される。
円筒体(16a)は、ボルトにより一体化された2つの半円筒部材からなり、ボルトを外すことにより2つに分割して中心軸(3)から取り外すことができるようになっている。
傾斜板(16b)には周方向に等間隔で貫通孔(18)が形成されており、図9に示す如く、この貫通孔(18)と仕切板(4)に設けられた貫通孔(19)を重合一致させてボルト(B)を挿通しナット(N)を螺合することによって、傾斜板(16b)に仕切板(4)を固定することができ、これによりボス(16)に仕切板(4)が固定される。
【0051】
仕切板(4)の数は特に限定されず、1枚であってもよいが、図2に示すように、仕切板(4)を中心軸(3)の軸長方向に相互に間隔をあけて複数枚設けることが好ましく、この場合には仕切板(4)同士の間にそれぞれ摩砕室(13)が形成される。
仕切板(4)に設けられる貫通孔(19)の大きさは、摩砕室(13)内にて所定寸法未満になるまで摩砕された被摩砕物のみを通す大きさとされ、その所定寸法はドラム体(2)の上流側(一端側)から下流側(他端側)の仕切板にかけて次第に小さくなっていることが好ましい。
【0052】
以上本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明においては摩砕機の仕切板(4)以外の他の構成については上述した形態に特に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る範囲内において適宜変更することができる。
例えば、摩砕機の中心軸(3)を回転させずにドラム体(2)を回転させるように構成してもよいし、中心軸(3)とドラム体(2)の両方を互いに逆方向に回転させるように構成してもよい。また、仕切板(4)を中心軸(3)に対して傾斜させずに直角に取り付けたものや、ドラム体(2)の内面と仕切板(4)の外周縁との間に隙間を有するものも含まれる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すことにより、本発明により得られる更なる効果を明らかにする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例)
図6に示す構造を有する摩砕機用仕切板を図2及び図10に示すように中心軸に取り付けた摩砕機を用いて、コンクリート殻を原料として摩砕処理を行い、最終製品としてコンクリート用骨材を得た。
(比較例)
実施例で使用した摩砕機において、ブロック(20)が取り付けられていない仕切板を用いた以外は、実施例と同様に摩砕処理を行い、最終製品としてコンクリート用骨材を得た。
【0054】
(実験結果)
実施例及び比較例で得られた骨材を粗骨材(粒径5〜20mm)と細骨材(粒径0〜5mm)とにふるい分けし、絶乾密度(g/cm3)及び吸水率(%)を測定した。粗骨材についての結果を図11に示し、細骨材についての結果を図12に示す。尚、図11及び図12において、黒塗り印が実施例、白抜き印が比較例を示し、印横の数値は、運転条件であり、左側の数値が1時間当たりの処理トン数、右側の数値がドラム体の回転数を示している。
【0055】
また、図13乃至図15は、実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図であり、黒四角が実施例、黒丸が比較例を示す。また、図13は「30t/hr、30rpm」の運転条件、図14は「40t/hr、35rpm」の運転条件、図15は「40t/hr、30rpm」の運転条件を用いている。
【0056】
(結果の分析)
図11に示すように、実施例により得られた粗骨材は全ての運転条件においてJIS A 5201に規定される品質規格値を満たしていたが、比較例では殆どの条件で品質規格値を満たさなかった。
また、図12に示すように、実施例により得られた細骨材は全ての運転条件においてJIS A 5308付属書に規定される品質緩和規定値を満たしていたが、比較例では全ての条件で品質緩和規定値を満たさなかった。
【0057】
更に、図13乃至図15に示すように、実施例により得られた骨材は、全ての運転条件においてJIS A 5201の規定により定められた適正な粒度分布を示したが、比較例により得られた骨材は適正な粒度分布を示さなかった。
【0058】
このように、実施例、即ち本発明によれば、得られる骨材の品質(絶乾比重、吸水率、粒度分布)の向上にも大きな効果が得られることが確認された。
これは、仕切板の表裏面に突出するように取り付けられたブロックにより、摩砕媒体(ボール)の周方向への移動が抑制され、摩砕媒体の共回り現象がより確実に防止されたことと、ブロックが仕切板の外周縁に取り付けられていることにより、摩砕媒体は周速度の大きい外方においては移動が抑制される一方で、周速度の遅い内方においては自由な移動が可能となるため、摩砕媒体の移動が過度に抑制されず、骨材に対する摩砕作用が適度に発揮されたことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えばコンクリート廃材やアスファルト廃材から再生骨材を得るために用いられる摩砕機に対して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る摩砕機の正面図である。
【図2】本発明に係る摩砕機の縦断面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】ドラム体の上半分面を開放した状態を示す断面図である。
【図6】仕切板の外観斜視図である。
【図7】ブロックの外観斜視図である。
【図8】ブロックを取り外した状態の仕切板を示す図である。
【図9】本発明において使用されるピンを示す図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線端面図、(c)は板バネを外した状態を示す図である。
【図10】仕切板をボスを介して中心軸に取り付けた状態を示す断面図である。
【図11】実施例及び比較例により得られた粗骨材の絶乾密度及び吸水率の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例及び比較例により得られた細骨材の絶乾密度及び吸水率の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【図14】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【図15】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 摩砕機
2 ドラム体
3 中心軸
4 仕切板
41 切り込み部
42 貫通孔
5 摩砕媒体
13 摩砕室
15 貫通孔
17 ピン
17a 小径部
17b 板バネ
20 ブロック
20a 挟持部
20b 連結部
20c 貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼球等の摩砕媒体を用いて骨材等の摩砕を行うための摩砕機及び摩砕機のドラム体内部を仕切る仕切板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリートやアスファルトの廃材から再生骨材を得るための装置として、種々のボールミル型摩砕機が存在している。
そのうち、被摩砕物の滞留時間を長くとるために、ドラム体内を複数の仕切板により区画した構造を有するものも多く存在しており、このような構造を有する摩砕機では、被摩砕物は仕切板の周縁部とドラム体内壁との隙間を通ってドラム体の一端側から他端側へと移動しながら、各区画内においてボールにより摩砕される。
【0003】
しかしながら、このような従来の摩砕機は、仕切板が中心軸に対して直角に取り付けられているため、ボールを積極的に前後方向(ドラム体の軸長方向)に移動させることはできず、ボールの運動は径方向及び周方向が殆どであった。
そのため、ボールと被摩砕物が等速度で回るいわゆる共回り現象が発生し、摩砕効率が大きく低下する原因となっていた。
【0004】
本出願人はかかる問題点を解決するために、上記した共回り現象の発生を防いで、摩砕効率を飛躍的に向上させることを可能とした摩砕機を既に提案している(下記特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の発明は、仕切板を中心軸に対して傾斜して取り付けるという従来に無い全く新規な発想に基づいた発明であって、これによりボールに積極的に前後方向の運動を与えることを可能としたものである。
しかしながら、この本願出願人が創出した摩砕機は、摩砕効率においては飛躍的な進歩を果たしたものの、仕切板が中心軸に対して傾斜して取り付けられているため、従来の摩砕機に比べると、仕切板表面に対する摩砕媒体(ボール等)の摩擦が大きい。
そのため、仕切板が短期間で摩耗し易くなって、仕切板を頻繁に交換しなければならず、面倒であるとともに、作業効率の低下と設備コストの増大を招いていた。
尚、仕切板が中心軸に対して直角に取り付けられている従来の摩砕機においても、仕切板の摩耗は当然生じるものであるから、仕切板の摩耗を低減させることは従来の摩砕機においても解決が強く要望されていた課題であった。
【0006】
上記した仕切板の摩耗という問題点を解決するために、本願出願人は更に検討を重ねて、下記特許文献2記載の発明を提案している。
特許文献2記載の発明は、仕切板の表面に多数の半球状のビットを突設したものであり、ボール等の摩砕媒体がビットに当たることで仕切板の表面との摩擦が低減され、仕切板の交換頻度を少なくすることが可能となる。
【0007】
しかしながら、この発明の仕切板では、一定期間毎に摩耗したビットを交換する作業が必要となるが、仕切板の表面にねじ等で固定された多数のビットを交換する作業は非常に手間がかかる上に、仕切板を回転軸に固定したままの状態で全てのビットを交換することは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特許第3261125号公報
【特許文献2】特開2006−205118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる問題点を解決すべくなされたものであって、仕切板の摩耗を大幅に減少させることが可能であって、仕切板の交換回数を少なくすることができ、摩砕効率の向上と設備コストの低減を達成することができるとともに、メンテナンスの作業時間を大幅に短縮して稼働率を向上させることが可能である摩砕機及び摩砕機用仕切板を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板と、前記摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、前記ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、前記仕切板は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記仕切板は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、前記一対の挟持部には、他端側近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、前記仕切板に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項1記載の摩砕機に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項2記載の摩砕機に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、摩砕媒体が収容されたドラム体の内部に被摩砕物を取り入れて摩砕する摩砕機において、前記ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸に取り付けられて該ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板であって、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機用仕切板に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、前記一対の挟持部には、他端側近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、前記切り込み部の近傍位置に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項4記載の摩砕機用仕切板に関する。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項5記載の摩砕機用仕切板に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び4に係る発明によれば、仕切板の外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されているので、ボール等の摩砕媒体がブロックに当たることで仕切板の表面との摩擦が低減され、仕切板の交換頻度を少なくすることが可能となり、作業効率の向上と設備コストの低減を達成することができる。
しかも、ブロックはコの字状であって、仕切板の外周縁に沿って形成された切り込み部への嵌合によって仕切板に装着されているため、仕切板を中心軸に固定した状態においても取り付け取り外しの作業を容易に行うことができる。そのため、ブロックが摩耗した場合等には短時間で交換作業を行うことができ、摩砕機の稼働率を大幅に向上させることが可能となる。
【0017】
請求項2及び5に係る発明によれば、仕切板に形成された貫通孔と、ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されているため、ブロックを仕切板に対して確実に固定することができるとともに、ピンの挿脱により仕切板に対するブロックの着脱を容易に行うことができる。
【0018】
請求項3及び6に係る発明によれば、ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、該板バネはその復元力により仕切板の貫通孔内面を押圧することにより、簡易な構成で、仕切板に対するブロックの着脱の容易さを維持しつつ、ブロックの仕切板に対する固定強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る摩砕機及び摩砕機用仕切板の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る摩砕機の好適な実施形態の一例を示す正面図、図2は本発明に係る摩砕機の縦断面図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図である。
本発明に係る摩砕機(1)は、略円筒形状のドラム体(2)と、該ドラム体(2)内を軸長方向に貫いて回転する中心軸(3)と、該中心軸(3)に取り付けられてドラム体(2)内を複数の摩砕室に区画する仕切板(4)と、前記各摩砕室内に装填された多数の摩砕媒体(5)とから構成される。
尚、図3及び図4では、仕切板と摩砕媒体の図示を省略している。
【0020】
ドラム体(2)の一端部には、被摩砕物(原料)を内部に取り入れるための導入口(6)が設けられ、他端部には摩砕後の被摩砕物を排出する排出口(7)が設けられている。
導入口(6)はドラム体(1)の上面に開口して形成され、その上部には被摩砕物を投入するための投入用ホッパ(8)が接続されている。
排出口(7)はドラム体(2)の周壁に形成された多数の貫通孔から構成され、これら排出口(7)を囲うように、図4に示すように排出用ホッパ(9)が接続されている。
排出用ホッパ(9)の前後面には、開閉可能な扉(11)が取り付けられており、これらの扉(11)を開けてホッパ内部を点検することができる。
また、排出用ホッパ(9)の上部には、エアー吹き出しノズル(10)が排出用ホッパ(9)の底部に向けて配置されており、このエアー吹き出しノズル(10)から排出用ホッパ(9)内に向けてエアーを吹き出すことによって、ドラム体(2)から排出用ホッパ(9)へと取り出された被摩砕物を速やかに底部から排出することが可能となる。
【0021】
ドラム体(2)は、円筒の上半分を構成する上半分面(2a)と、円筒の下半分を構成する下半分面(2b)を組み合わせることにより形成されており、図5に示す如く上半分面(2a)の全体を開放することが可能となっている。
この上半分面(2a)の開放は、下半分面(2b)に取り付けられた油圧シリンダー(25)の駆動によって行うことが可能となっている。
このように、ドラム体(2)の上半分面が開放可能となっていることにより、仕切板(4)のメンテナンスや交換作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、ドラム体(2)の底部には、内部に装填された摩砕媒体(5)を外部に取り出すための排出口(26)が設けられている。この排出口(26)は各摩砕室の底部にそれぞれ設けられており、図3に示すように各摩砕室から個別に摩砕媒体(5)を取り出すことが可能となっている。
さらに、ドラム体(2)の外周面の上方寄り位置には、開閉可能な窓部(28)が設けられている。窓部(28)は、各摩砕室に対応する位置毎に設けられており、この窓部(28)を開けることによって、各摩砕室内部の消耗品を確認したり摩砕媒体を補充したりすることができる。
【0023】
中心軸(3)は、ドラム体(2)内を軸長方向に貫くように配設されており、その左右両端部にはそれぞれ油圧駆動のモータ(12)が接続され、これら2つのモータ(12)の駆動によって回転するように構成されている。
中心軸(3)の一端部にのみモータ(12)を接続した場合、回転時に中心軸自身の重量やボールから受ける負荷によって中心軸が他端部において偏心してしまうため、これを防ぐために大きな駆動力を必要とするが、中心軸(3)をその両端部に接続したモータ(12)の駆動によって回転させることによって、中心軸端部の偏心が抑えられるため、消費電力を低減することが可能となる。また、駆動機構の設置面積を縮小することができる。
また、油圧駆動のモータは、ショックロードに強く、無段可変速のため、中心軸(3)の回転数を容易に調整することができ、被摩砕物の種類に合わせて適宜対応することが可能となる。但し、本発明では、電気モータを用いることも可能である。
【0024】
摩砕媒体(5)は、各摩砕室(13)内に複数個ずつ装填されている。この摩砕媒体(5)は、例えば金属製のボール等からなり、摩砕室(13)内に取り入れられた被摩砕物と衝突し、擦り合わされることによって、被摩砕物が摩砕される。
【0025】
ドラム体(2)の各摩砕室(13)の上部にはそれぞれ開口部(20)が形成され、更にこれらの開口部(20)の上部には開口部(20)を全て覆うような箱状部(21)が形成されている。
箱状部(21)は、その側面に開口された側面開口部(22)のみによって外部と連通しており、この側面開口部(22)は各摩砕室(13)に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0026】
各側面開口部(22)には、それぞれ吸引パイプ(23)が挿入され、これら吸引パイプ(23)の先端は、開口部(22)から入ってドラム体(2)内の各摩砕室(13)に配置されている。尚、各吸引パイプ(23)の基端部は、吸引ポンプ(図示略)を介してバグフィルター(図示略)に接続されている。
【0027】
また、箱状部(21)には空気供給パイプ(24)が配設されており(図3参照)、この空気供給パイプ(24)は複数に分岐されて、各分岐端は開口部(22)から入ってドラム体(2)内の各摩砕室(13)内に配置されている。尚、空気供給パイプの基端部は、送風機(図示略)に接続されている。
【0028】
このように、ドラム体(2)の各摩砕室(13)内に、それぞれ吸引パイプ(23)及び空気供給パイプ(24)の先端が挿入されていることによって、各摩砕室(13)内で発生した微粉末を効率良く回収することが可能となっている。
【0029】
また、ドラム体(2)の底面にはドラム体を地面上の一定高さに支持するための支持脚(27)が設けられている。
この支持脚(27)は、ドラム体(2)の前後方向(図1にて左右方向)における前方寄り位置と後方寄り位置に取り付けられている。そして、これらの支持脚(27)のうち、後方寄り位置にある支持脚には油圧シリンダー(27a)が設けられており、この油圧シリンダー(27a)を伸縮させることによって、ドラム体(2)を前後方向において任意の角度に傾斜させることができ、これによって、被摩砕物のドラム体(2)内における滞留時間を調節することが可能となる。
【0030】
本発明は、摩砕機が備える仕切板(4)の構成に大きな特徴を有するものである。
図6は、仕切板(4)の外観斜視図である。
仕切板(4)は、中心軸(3)が挿通される中心穴(14)を有する楕円形(又は円形)のプレートからなり、仕切板(4)の全面に亘って略均等に且つ略同心楕円状(又は同心円状)に配置された長穴からなる多数の貫通孔(15)を有している。これらの貫通孔(15)は、上記した摩砕室同士を連通する連通部分に相当し、摩砕媒体(5)により所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させるために設けられている。
また、これら貫通孔(15)とは別に、中心穴(14)に沿うように円形の貫通孔(19)が設けられている。
【0031】
この仕切板(4)は、上半分を構成する部材(4a)と、下半分を構成する部材(4b)の2つの半楕円形(又は半円形)の部材から構成されており、1枚の仕切板(4)をこれら2つの部材(4a)(4b)に分割することが可能となっている。
このように、仕切板(4)が2つの部材に分割可能とされていることによって、仕切板(4)を容易に中心軸(3)から取り外してメンテナンスや交換を行うことが可能となる。
また、本発明における仕切板(4)は、3つ、4つ、5つ、6つ等、より多くの部材に分割可能とする構成を採用することもでき、このような多分割構造としても同様の作用効果が得られる。
但し、仕切板(4)が分割可能とされていない、即ち1枚板からなるものも本発明に含まれる。
【0032】
仕切板(4)には、複数のブロック(20)が表裏両面から突出するように取り付けられている。(尚、図2及び図5ではブロックは省略されている。)
ブロック(20)は、仕切板(4)の外周縁に沿って略等間隔で取り付けられており、周方向に隣り合う貫通孔(15)同士の間の部分において、仕切板(4)の中心に向けて延びている。
【0033】
図7は、ブロック(20)の外観斜視図である。
ブロック(20)は、互いに平行に形成されて仕切板(4)を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部(20a)と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部(20b)とから形成されており、全体として正面視コの字状を呈している。
一対の挟持部(20a)には、他端(連結部と反対側のコの字の開放端)の近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔(20c)が形成されている。
【0034】
各挟持部(20a)と連結部(20b)とは、いずれも略直方体形状をなしており、連結部(20b)の幅は挟持部(20a)の幅に比べて僅かに小さく形成されている。
これにより、一対の挟持部(20a)はその先端側(一端側)だけでなく基端側(他端側)においても、連結部(20b)の幅からはみ出ている部分で仕切板(4)を挟持することができる。
また、一対の挟持部(20a)の隙間は、仕切板(4)の厚みと略等しくされており、各挟持部(20a)の長さは、仕切板(4)の内周縁から外周縁までの距離の1/3〜2/3に設定されている。
【0035】
図8は、ブロック(20)を取り外した状態の仕切板(4)を示す図である。
尚、この図では、仕切板(4)が2つの部材からなる場合における一方の仕切板を示している。また、図6で示した仕切板(4)とは、貫通孔(15)の数が異なっている。
仕切板(4)は、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部(41)が形成されている。
各切り込み部(41)は、仕切板(4)の中心方向に向かって長方形状に切り込まれて形成されており、その長さ(中心方向に向かう長さ)及び幅は、ブロック(20)の連結部(20b)の長さ及び幅と略等しく設定されている。
【0036】
各切り込み部(41)に対して、ブロック(20)が夫々嵌合される。
ブロック(20)の嵌合は、切り込み部(41)に対して、コの字状のブロック(20)を開放端側(挟持部の先端側)から差し入れることにより行われる。
【0037】
各切り込み部(41)の近傍位置には、貫通孔(42)が夫々形成されている。
具体的には、切り込み部(41)の仕切板(4)の中心方向への延長線上の近傍位置に貫通孔(42)が形成されている。
この貫通孔(42)は、切り込み部(41)に対してブロック(20)を嵌合した状態において、ブロック(20)に形成された貫通孔(20c)と合致するようになっており、両貫通孔(42)(20c)が合致した状態においてピン(17)を嵌挿することによって、ブロック(20)が仕切板(4)に対して確実に固定される。
【0038】
ブロック(20)に形成される貫通孔(20c)の直径と、仕切板(4)に形成される貫通孔(42)の直径は略等しく設定されるが、貫通孔(20c)の直径を貫通孔(42)の直径よりも僅かに大きく設定してもよい。
【0039】
図9は、本発明において使用されるピン(17)を示す図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線端面図、(c)は板バネ(後述する)を外した状態の正面図である。
ピン(17)は、全体として円柱状であって、その長さはブロック(20)の全体厚み(図7において上下方向の厚み)と略等しく設定されている。
また、長さ方向の中間部分に両端部分に比べて小径の小径部(17a)を有しており、この小径部(17a)に板バネ(17b)が巻回されている。
【0040】
板バネ(17b)は、金属の薄板を円筒状に丸めたものであって、外側から力が加わると縮径し、加わる力が無くなると拡径するバネ性を有している。
板バネ(17b)の外径は、外力が加わっていない自然状態においては、仕切板(4)に形成された貫通孔(42)の内径よりも大きいが、外力を加えることにより貫通孔(42)の内径よりも小さくすることができる。また、板バネ(17b)がピン(7)から脱落しないように、自然状態における板バネ(17b)の内径は、ピン(7)の両端部の外径よりも小さくなっている。
板バネ(17b)の幅(小径部(17a)の長さと略等しい)は、仕切板(4)の厚みと同じかそれよりも大きく設定される。
【0041】
ピン(17)は、上述したように、貫通孔(42)(20c)が合致した状態において、両貫通孔に嵌挿される。
嵌挿状態において、ピン(17)の両端部分(小径部以外の部分)の外面は、ブロック(20)に形成された貫通孔(20a)の内面に密接し、板バネ(17b)の外面は仕切板(4)に形成された貫通孔(42)の内面に密接する。
【0042】
このとき、板バネ(17b)は、その復元力により拡径しようとするため、貫通孔(42)の内面を押圧する。そのため、ピン(17)が仕切板(4)に対して強固に固定され、結果として、ブロック(20)が仕切板(4)に対して強固に固定される。
【0043】
ピン(7)を貫通孔(42)(20c)に入れる際には、板バネ(17b)を強く握る等して縮径させた状態でブロック(10)の一方の挟持部の貫通孔(20c)に挿入した後、ハンマー等を用いてピン(7)の端面がブロック(20)の表面と略面一となるまで叩き込めばよい。一方、ピンを抜く際には、ピン(7)の一方の端面を、ハンマーやピンより小径の棒等を用いて叩くことにより、簡単に抜くことができる。
【0044】
本発明においては、このようにピン(7)の挿脱作業をバネ性を利用して容易に行えることに加えて、コの字状のブロック(10)を仕切板(4)の外周縁に沿って形成された切り込み部(41)へと嵌合させる構造であるため、仕切板(4)を中心軸(3)に固定した状態においても取り付け取り外しの作業を容易に行うことができる。
そのため、ブロックが摩耗した場合等には短時間で交換作業を行うことができ、摩砕機の稼働率を大幅に向上させることが可能となる。
【0045】
仕切板(4)の表裏面に突出するブロック(20)の挟持部(20a)には、回転抵抗を少なくし且つ被摩砕物の割れを防ぐために、面取りを施すことが好ましい。
各ブロック(20)の挟持部(20a)の厚み及び/又は幅は、中心から外周縁に向かうにつれて大きくなるようにしてもよい。このようにすると、周速度の大きい外周縁近傍において仕切板の摩耗を効果的に防止することができ、仕切板全体の摩耗を均一化できるため好ましい。
【0046】
ブロック(20)の数や位置は特に限定されず、仕切板(4)の大きさ等に応じて適宜設定することができるが、図示のように隣り合う貫通孔(15)の間の位置に夫々設けることが好ましい。
このようにすると、仕切板(4)の摩耗が効果的に防がれるとともに、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物が貫通孔(15)を通過することが阻害されない。
【0047】
ブロック(20)は、少なくともその表面部分の硬度が、仕切板(4)と同等もしくはより高硬度とされることが好ましい。
この場合において、ブロック全体を単一の高硬度材料(例えば超硬合金や高クロム鋼)から形成してもよいし、所定の金属材料(例えば炭素鋼や鉄)にて形成されたブロックの表面を、当該金属材料より高硬度の材料(例えば超硬合金や高クロム鋼)で被覆することによって形成してもよい。
【0048】
複数のブロック(20)同士の間隔(D)は、ボール等の摩砕媒体(5)の直径(d)に対して、D≧dとなるように設定することが好ましい。
このように設定すると、摩砕機の作動時において、ブロック(20)同士の間に摩砕媒体(5)が入り込むことができる。この状態では、ブロック(20)の間に他の摩砕媒体が接触することが防がれるので、仕切板の摩耗を効果的に抑制することができるとともに、被摩砕物が仕切板の貫通孔を通過することが殆ど妨げられない。また、2d>D≧dとすると、ブロック間において摩砕媒体の侵入が許容されると同時に、進入した摩砕媒体の仕切板表面に沿う移動が制限されるため、仕切板の摩耗がより効果的に抑制される。
また、ブロック(20)が仕切板(4)の表面から突出する高さを、粉砕媒体(5)の直径以上に設定すると、ブロック(20)同士の間に挟まれた摩砕媒体(5)が脱出しにくくなって、他の摩砕媒体の接触をより確実に防ぐことが可能となるため好ましい。
【0049】
上述の如く、ブロック(20)はピン(7)の挿脱により仕切板(4)に対して簡単に着脱可能であることから、摩砕媒体(5)の大きさを変更した場合、それに応じてブロック(20)を異なる大きさのものに変更することができるため、摩砕媒体に対してブロック同士の間隔や仕切板からの突出高さを上記のような適当な値に設定することができるようになる。
【0050】
仕切板(4)は、図10に示す如くボス(16)を介して中心軸(3)に取り付けられる。
ボス(16)は、円筒体(16a)と、この円筒体(16a)の外周面に該円筒体の軸長方向に対して傾斜して固着された傾斜板(16b)とから構成される。
円筒体(16a)は、ボルトにより一体化された2つの半円筒部材からなり、ボルトを外すことにより2つに分割して中心軸(3)から取り外すことができるようになっている。
傾斜板(16b)には周方向に等間隔で貫通孔(18)が形成されており、図9に示す如く、この貫通孔(18)と仕切板(4)に設けられた貫通孔(19)を重合一致させてボルト(B)を挿通しナット(N)を螺合することによって、傾斜板(16b)に仕切板(4)を固定することができ、これによりボス(16)に仕切板(4)が固定される。
【0051】
仕切板(4)の数は特に限定されず、1枚であってもよいが、図2に示すように、仕切板(4)を中心軸(3)の軸長方向に相互に間隔をあけて複数枚設けることが好ましく、この場合には仕切板(4)同士の間にそれぞれ摩砕室(13)が形成される。
仕切板(4)に設けられる貫通孔(19)の大きさは、摩砕室(13)内にて所定寸法未満になるまで摩砕された被摩砕物のみを通す大きさとされ、その所定寸法はドラム体(2)の上流側(一端側)から下流側(他端側)の仕切板にかけて次第に小さくなっていることが好ましい。
【0052】
以上本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明においては摩砕機の仕切板(4)以外の他の構成については上述した形態に特に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る範囲内において適宜変更することができる。
例えば、摩砕機の中心軸(3)を回転させずにドラム体(2)を回転させるように構成してもよいし、中心軸(3)とドラム体(2)の両方を互いに逆方向に回転させるように構成してもよい。また、仕切板(4)を中心軸(3)に対して傾斜させずに直角に取り付けたものや、ドラム体(2)の内面と仕切板(4)の外周縁との間に隙間を有するものも含まれる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すことにより、本発明により得られる更なる効果を明らかにする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例)
図6に示す構造を有する摩砕機用仕切板を図2及び図10に示すように中心軸に取り付けた摩砕機を用いて、コンクリート殻を原料として摩砕処理を行い、最終製品としてコンクリート用骨材を得た。
(比較例)
実施例で使用した摩砕機において、ブロック(20)が取り付けられていない仕切板を用いた以外は、実施例と同様に摩砕処理を行い、最終製品としてコンクリート用骨材を得た。
【0054】
(実験結果)
実施例及び比較例で得られた骨材を粗骨材(粒径5〜20mm)と細骨材(粒径0〜5mm)とにふるい分けし、絶乾密度(g/cm3)及び吸水率(%)を測定した。粗骨材についての結果を図11に示し、細骨材についての結果を図12に示す。尚、図11及び図12において、黒塗り印が実施例、白抜き印が比較例を示し、印横の数値は、運転条件であり、左側の数値が1時間当たりの処理トン数、右側の数値がドラム体の回転数を示している。
【0055】
また、図13乃至図15は、実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図であり、黒四角が実施例、黒丸が比較例を示す。また、図13は「30t/hr、30rpm」の運転条件、図14は「40t/hr、35rpm」の運転条件、図15は「40t/hr、30rpm」の運転条件を用いている。
【0056】
(結果の分析)
図11に示すように、実施例により得られた粗骨材は全ての運転条件においてJIS A 5201に規定される品質規格値を満たしていたが、比較例では殆どの条件で品質規格値を満たさなかった。
また、図12に示すように、実施例により得られた細骨材は全ての運転条件においてJIS A 5308付属書に規定される品質緩和規定値を満たしていたが、比較例では全ての条件で品質緩和規定値を満たさなかった。
【0057】
更に、図13乃至図15に示すように、実施例により得られた骨材は、全ての運転条件においてJIS A 5201の規定により定められた適正な粒度分布を示したが、比較例により得られた骨材は適正な粒度分布を示さなかった。
【0058】
このように、実施例、即ち本発明によれば、得られる骨材の品質(絶乾比重、吸水率、粒度分布)の向上にも大きな効果が得られることが確認された。
これは、仕切板の表裏面に突出するように取り付けられたブロックにより、摩砕媒体(ボール)の周方向への移動が抑制され、摩砕媒体の共回り現象がより確実に防止されたことと、ブロックが仕切板の外周縁に取り付けられていることにより、摩砕媒体は周速度の大きい外方においては移動が抑制される一方で、周速度の遅い内方においては自由な移動が可能となるため、摩砕媒体の移動が過度に抑制されず、骨材に対する摩砕作用が適度に発揮されたことによるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えばコンクリート廃材やアスファルト廃材から再生骨材を得るために用いられる摩砕機に対して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る摩砕機の正面図である。
【図2】本発明に係る摩砕機の縦断面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】ドラム体の上半分面を開放した状態を示す断面図である。
【図6】仕切板の外観斜視図である。
【図7】ブロックの外観斜視図である。
【図8】ブロックを取り外した状態の仕切板を示す図である。
【図9】本発明において使用されるピンを示す図であって、(a)は正面図、(b)はA−A線端面図、(c)は板バネを外した状態を示す図である。
【図10】仕切板をボスを介して中心軸に取り付けた状態を示す断面図である。
【図11】実施例及び比較例により得られた粗骨材の絶乾密度及び吸水率の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例及び比較例により得られた細骨材の絶乾密度及び吸水率の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【図14】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【図15】実施例及び比較例で得られた骨材の粒度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 摩砕機
2 ドラム体
3 中心軸
4 仕切板
41 切り込み部
42 貫通孔
5 摩砕媒体
13 摩砕室
15 貫通孔
17 ピン
17a 小径部
17b 板バネ
20 ブロック
20a 挟持部
20b 連結部
20c 貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板と、前記摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、前記ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、前記仕切板は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機。
【請求項2】
前記仕切板は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、
前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、
前記一対の挟持部には、他端近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、
前記仕切板に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項1記載の摩砕機。
【請求項3】
前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、
該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項2記載の摩砕機。
【請求項4】
摩砕媒体が収容されたドラム体の内部に被摩砕物を取り入れて摩砕する摩砕機において、前記ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸に取り付けられて該ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板であって、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機用仕切板。
【請求項5】
前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、
前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、
前記一対の挟持部には、他端近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、
前記切り込み部の近傍位置に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項4記載の摩砕機用仕切板。
【請求項6】
前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、
該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項5記載の摩砕機用仕切板。
【請求項1】
被摩砕物を内部に取り入れるドラム体と、該ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸と、該中心軸に取り付けられて前記ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板と、前記摩砕室内に装填された摩砕媒体とからなり、前記ドラム体と中心軸の少なくともいずれか一方が軸回りに回転することにより被摩砕物を摩砕する摩砕機であって、前記仕切板は、所定粒径未満に摩砕された被摩砕物のみを通過させる貫通孔が設けられるとともに、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機。
【請求項2】
前記仕切板は、前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、
前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、
前記一対の挟持部には、他端近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、
前記仕切板に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項1記載の摩砕機。
【請求項3】
前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、
該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項2記載の摩砕機。
【請求項4】
摩砕媒体が収容されたドラム体の内部に被摩砕物を取り入れて摩砕する摩砕機において、前記ドラム体内を軸長方向に貫く中心軸に取り付けられて該ドラム体内を相互に連通する複数の摩砕室に区画する仕切板であって、外周縁に沿って間隔を空けて複数の切り込み部が形成されており、該切り込み部に対してコの字状のブロックが嵌合されていることを特徴とする摩砕機用仕切板。
【請求項5】
前記切り込み部の近傍位置に貫通孔が形成されており、
前記ブロックは、互いに平行に形成されて前記仕切板を表裏両面側から挟み込む一対の挟持部と、該一対の挟持部の一端側を連結する連結部とからなり、
前記一対の挟持部には、他端近傍位置を同一軸線で貫く貫通孔が形成されており、
前記切り込み部の近傍位置に形成された貫通孔と、前記ブロックに形成された貫通孔とが合致して、該合致した貫通孔にピンが嵌挿されていることを特徴とする請求項4記載の摩砕機用仕切板。
【請求項6】
前記ピンは長さ方向の中間部分に小径部を有し、該小径部には板バネが巻回されており、
該板バネは、その復元力により前記仕切板の貫通孔内面を押圧していることを特徴とする請求項5記載の摩砕機用仕切板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−104910(P2008−104910A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288034(P2006−288034)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【特許番号】特許第3945717号(P3945717)
【特許公報発行日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(591079650)有限会社大東土木 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【特許番号】特許第3945717号(P3945717)
【特許公報発行日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(591079650)有限会社大東土木 (12)
【Fターム(参考)】
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