説明

摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法

【課題】相対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知する。
【解決手段】本発明の摩耗検知装置は、対向側部品3に設けられ、相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を発生する信号発生部8と、混合信号を対向側部品3から摩耗側部品2に伝達する信号伝達部6と、摩耗側部品2に設けられ、摩耗側部品2の摺動面に沿って配置された先端部41に、複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部5が設けられ、信号伝達部6からノッチフィルタ部5に混合信号が入力される摩耗ゲージ4と、混合信号の入力に応じてノッチフィルタ部5から出力される計測信号を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達する信号伝達部7と、対向側部品3に設けられ、計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する周波数分析部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法に関し、特に、産業機械の摺動部の摩耗を検知する摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の摺動部の摩耗を検知するための摩耗ゲージとして、例えば特許文献1記載の摩耗ゲージが提案されている。この特許文献1記載の摩耗ゲージは、複数の摩耗検知用ラインを含む摩耗検知回路を絶縁板上に設けたものであり、摺動部の摩耗に伴い摩耗検知用ラインが段階的に摩滅することを利用して、摺動部の摩耗状態を検知する。つまり、摩耗ゲージ先端部の摩耗検知用ラインが摩滅して断線すれば、摩耗ゲージから測定部に電気信号が流れなくなるので、当該断線した摩耗検知用ラインの位置まで摺動部の摩耗が進行したことを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種の産業機械の摺動部を構成する摩耗側部品と、それに対向する対向側部品のうち、摩耗側部品の摩耗状態を検知する場合、上記特許文献1記載のような摩耗ゲージを、摩耗検知対象である摩耗側部品に設置する必要がある。一方、摩耗ゲージにより得られる摩耗状態の情報を処理する制御装置(特許文献1の測定部)等については、設置スペースや、動作の安定性、装置保護等の観点から、対向側部品に設置することが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記のように摩耗側部品に摩耗ゲージを設置し、対向側部品に制御装置等を設置する場合、特許文献1記載のように摩耗ゲージと制御装置の間を電気的に接続することが困難であるという問題があった。例えば、レシプロコンプレッサにおいてシリンダ(対向側部品に相当する。)に対して高速で摺動するピストン(摩耗側部品に相当する。)の摩耗を検知したい場合を考える。この場合、ピストンに設けられた摩耗ゲージと、シリンダに設けられた制御装置とを、配線や接触端子等を用いて電気的に接続することは、非常に困難である。
【0006】
また、特許文献1では、複数の摩耗検知用ラインで得られる情報を制御装置(特許文献1の測定部)に伝達するために、各摩耗検知用ラインと制御装置を複数の回路(配線系統)で接続する必要があった。しかし、摩耗側部品が摺動に伴って振動や水分付着等を受けることを考慮すると、摩耗側部品の動作の安定性や、構造の簡素化等の観点から、摩耗側部品から制御装置に摩耗情報を伝達するための回路数を極力少なくすることが好ましい。
【0007】
したがって、産業機械の稼働中(摩耗側部品の摺動中)に、摩耗側部品の摩耗ゲージで得られる摩耗情報を対向側部品の制御装置に対して好適に伝達し、摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知可能であり、かつ、摩耗情報伝達用の回路数を削減可能な方法が希求されていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、相対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知でき、かつ、摩耗情報伝達用の回路数を削減することが可能な摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、対向側部品との摺動に伴う摩耗側部品の摩耗を検知する本発明の摩耗検知装置は、対向側部品に設けられ、相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を発生する信号発生部と、混合信号を対向側部品から摩耗側部品に非接触方式で伝達する第1の信号伝達部と、摩耗側部品に設けられ、摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に、複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が設けられ、第1の信号伝達部からノッチフィルタ部に混合信号が入力される摩耗ゲージと、混合信号の入力に応じてノッチフィルタ部から出力される計測信号を、摩耗側部品から対向側部品に非接触方式で伝達する第2の信号伝達部と、対向側部品に設けられ、第2の信号伝達部から入力された計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、摩耗ゲージの摩耗状態を検知する周波数分析部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ノッチフィルタ部は、複数の周波数成分を含む混合信号が印加されるベースラインと、ベースラインから摩耗ゲージの先端部に向かって延び、複数の周波数成分の波長に応じて相異なるライン長を有する複数の摩耗検知用ラインと、を備え、摩耗側部品の摺動面の摩耗に伴い、複数の摩耗検知用ラインの先端が順次摩耗するようにしてもよい。
【0011】
第1の信号伝達部および第2の信号伝達部とベースラインの一端とが接続されており、混合信号がベースラインの一端から入力されて他端で反射し、一端から計測信号として出力されるようにしてもよい。
【0012】
対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に設けられる本発明の摩耗ゲージは、摩耗側部品の摺動面に沿って配置される先端部に、相異なる複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が配置されており、ノッチフィルタ部は、複数の周波数成分を含む混合信号が印加されるベースラインと、ベースラインから摩耗ゲージの先端部に向かって延び、複数の周波数成分の波長に応じて相異なるライン長を有する複数の摩耗検知用ラインと、を備え、摩耗側部品の摺動面の摩耗に伴い、複数の摩耗検知用ラインの先端が順次摩耗することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、対向側部品から、対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に非接触方式で相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を伝達する第1の信号伝達部と、摩耗側部品に設けられ、摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に、複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が設けられ、第1の信号伝達部からノッチフィルタ部に混合信号が入力される摩耗ゲージと、混合信号の入力に応じてノッチフィルタ部から出力される計測信号を、摩耗側部品から対向側部品に非接触方式で伝達する第2の信号伝達部と、により摩耗側部品の摩耗を検知する、本発明の摩耗検知方法は、対向側部品で混合信号を発生し、第2の信号伝達部から入力された計測信号を受信し、受信した計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、摩耗ゲージの摩耗状態を検知することを特徴とする。
【0014】
上記摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法によれば、信号発生部は、ノッチフィルタ部で減衰可能な特定の複数の周波数成分を含む混合信号を生成し、当該混合信号は、第1の信号伝達部により対向側部品から摩耗側部品に非接触方式で伝達されて、摩耗ゲージの先端部のノッチフィルタ部に入力される。ノッチフィルタ部は、混合信号の特定の複数の周波数成分を減衰させて計測信号として出力し、当該計測信号は、第2の信号伝達部により摩耗側部品から対向側部品に非接触方式で伝達されて、周波数分析部に入力される。この際、摩耗側部品の摺動面とともに摩耗ゲージの先端部が摩耗するので、当該摩耗が進行すれば、ノッチフィルタ部の先端部が順次摩耗して、特定の周波数成分の減衰機能が損なわれ、計測信号には、特定の周波数成分が徐々に含まれるようになる。そこで、周波数分析部は、計測信号に含まれる周波数成分を分析し、上記特定の周波数成分が含まれているか否かによって、摩耗ゲージの摩耗状態を多段階で検知することができる。また、複数の周波数に対応したノッチフィルタ部を用いて摩耗ゲージの摩耗状態を多段階で検知できるので、ノッチフィルタ部と対向側部品を接続する回路数を削減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、相対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知でき、かつ、摩耗情報伝達用の回路数を削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサのシリンダ機構を示す縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る摩耗検知装置の概略構成を示す図である。
【図3】同実施形態に係る摩耗ゲージのノッチフィルタ部を示す平面図である。
【図4】同実施形態に係るノッチフィルタ部による減衰作用を示す波形図である。
【図5】同実施形態に係るノッチフィルタ部による摩耗時の減衰作用を示す波形図である。
【図6】同実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る摩耗ゲージのノッチフィルタ部を示す平面図である。
【図8】同実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
[1.第1の実施形態]
【0018】
[1.1.摩耗検知対象の産業機械]
まず、本発明の第1の実施形態に係る摩耗検知装置が適用される産業機械の具体例について説明する。
【0019】
一般に、産業機械は、複数の部材を相対移動させる各種の機構を具備している。このうち、一方の部材を他方の部材に対して接触させながら摺動させる摺動機構では、その摺動部における摩擦により、双方の部材が摩耗する。本実施形態に係る摩耗検知装置は、かかる産業機械の摺動部の摩耗状態、特に、当該摺動部を構成する摩耗側部品と対向側部品のうち摩耗側部品(摺動部材)の摩耗状態を検知するためのものである。以下では、対向側部品に対して摩耗側部品が摺動する例を挙げて説明するが、例えば、レール上を走行体(自動走行台車、気動車等)が移動するシステムにおいて、レールに摩耗側部品を構成し、走行体に対向側部品を構成し、レールの摩耗側部品の構成部位を通過する際に摩耗を検知するといったように、対向側部品が摩耗側部品に対して摺動する場合も本実施形態に含まれる。
【0020】
ここで、産業機械の摺動機構とは、ある部材と他の部材が相対的に摺動するものであれば、任意の機構であってよいが、例えば、往復運動機構や回転機構などが含まれる。ここで、往復運動機構は、レシプロコンプレッサ、レシプロエンジン等におけるシリンダ機構、工作機械等におけるガイドレールを用いたスライド機構などである。回転機構は、コンプレッサ、ガスタービン等に用いられる各種の軸受(例えばスラストベアリング)、工作機械の切削工具、自動車のタイヤやブレーキパッド、工作機械のクラッチやブレーキパッド、圧延機のロールなどが含まれる。
【0021】
以下の説明では主に、産業機械の摺動機構として、レシプロコンプレッサのピストンとシリンダの例を挙げ、摩耗検知対象の摩耗側部品がピストンリングであり、対向側部品がシリンダである場合について説明するが、本発明の摩耗検知対象はかかる例に限定されるものではない。
【0022】
ここで、図1を参照して、本実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサの概略構成について説明する。図1は本実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサ100のシリンダ機構を示す縦断面図である。
【0023】
図1に示すように、レシプロコンプレッサ100は、シリンダ101と、ピストン102と、ピストンロッド103と、ピストンリング104と、プルリング105と、吸入弁106と、排出弁107とを備える。レシプロコンプレッサ100は、無給油式でも給油式であってもよいが、本実施形態では、無給油式のコンプレッサの例について説明する。
【0024】
シリンダ101は、例えば円筒形状を有し、その内部にピストン102が往復運動可能に設置される。シリンダ101やピストン102は、例えば鋳鉄、アルミニウム合金などで形成される。シリンダ101の内周面は、ハードクロームメッキまたは金属溶射を施した後、ホーニング仕上げが施されている。
【0025】
ピストン102は、ピストンロッド103に支持されており、当該ピストンロッド103の下端に連結された不図示のクランク機構により、シリンダ101内を上下に往復する。ピストン102の外周面には、例えば、上下2つのピストンリング104と、中央部に1つのプルリング105が設けられている。ピストンリング104およびプルリング105は、素材自体に潤滑性のあるカーボンまたはポリテトラフルオロエチレン等で形成されている。ピストンリング104は、例えば4または6分割のギャップレスタイプであり、その内側にエキスパンダースプリング(図示せず。)が設けられている。これにより、ピストンリング104の摩耗が進行しても、ギャップができず、スプリングの作用により最低限必要な面圧を維持することができるので、許容摩耗代を大きくとることができ、長寿命化が図れる。また、プルリング105は、ピストン102とシリンダ101とが直接接触することを防止する機能を有する。
【0026】
吸入弁106および排出弁107は、シリンダ101内の空間で気体を圧縮するようにピストン102の往復動作に合わせて開閉する。
【0027】
上記構成のレシプロコンプレッサ100の稼働時には、吸入弁106および排出弁107が適宜開閉しながら、シリンダ101内でピストン102が上下に摺動(往復運運)する。これにより、シリンダ101内に吸入された気体(例えば空気)を圧縮して、高圧の気体を製造することができる。
【0028】
ところで、上記ピストン102の摺動動作中には、ピストン102外周のピストンリング104およびプルリング105がシリンダ101の内周面と接触して摩擦する。したがってピストン102の摺動動作が繰り返されると、ピストンリング104およびプルリング105の外周部が徐々に摩耗していく。このため、ピストンリング104およびプルリング105の摩耗量が許容摩耗代に達したときには、これらリングを交換する必要があり、そのためには、当該摩耗量を検知するための装置を設ける必要がある。以下の説明では、本実施形態に係る摩耗検知装置により、上記レシプロコンプレッサ100のピストンリング104の摩耗量を検知する例について説明する。
【0029】
[1.2.摩耗検知装置の構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る摩耗検知装置の全体構成について説明する。図2は、本実施形態に係る摩耗検知装置の構成を示す図である。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係る摩耗検知装置は、産業機械の摺動部1付近に設置される。この産業機械の摺動部1は、摩耗側部品2と対向側部品3とからなり、摩耗側部品2は、対向側部品3に対して少なくとも一部を接触させながら周期的に摺動する。図示の例では、摩耗側部品2は、対向側部品3に対して所定の摺動方向(例えば図の上下方向)に所定の摺動ストロークで往復運動する。このとき、摩耗側部品2の摺動面21と、対向側部品3の摺動面31とは接触しており(図2では説明の便宜のため非接触で表している。)、上記摺動動作が繰り返されると、摺動面21と摺動面31が擦り合わされて摩耗する。例えば、産業機械がレシプロコンプレッサ100であり、摩耗側部品2が、当該レシプロコンプレッサ100のピストン102外周に設けられたピストンリング104であり、対向側部品3が、当該レシプロコンプレッサ100のシリンダ101である場合を考える。この場合、シリンダ101内でピストン102が往復運動すると、ピストンリング104の外周面(即ち、摺動面21)がシリンダ101の内周面(即ち、摺動面31)と摩擦して、徐々に摩耗する。
【0031】
本実施形態に係る摩耗検知装置は、上記のような摺動動作に伴って摩耗する摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知するためのものである。図2に示すように、摩耗検知装置は、ノッチフィルタ部5を備えた摩耗ゲージ4と、一対のコイル6a、6bからなる第1のトランス6と、一対のコイル7a、7bからなる第2のトランス7と、信号発生部8と、周波数分析部9とを主に備える。これら摩耗検知装置の各構成要素は、産業機械の摩耗側部品2と対向側部品3に分散して配置される。
【0032】
摩耗側部品2には、摩耗ゲージ4と、第1のトランス6の二次コイル6bと、第2のトランス7の一次コイル7aとが設置される。第1のトランス6の二次コイル6bは、摩耗ゲージ4の入力端子4aに接続され、第2のトランス7の一次コイル7aは、摩耗ゲージ4の出力端子4bに接続されている。
【0033】
摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗を検知する機能を有する。摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摺動部1付近に設けられ、当該摩耗ゲージ4の先端部41の先端面41aは、摩耗側部品2の摩耗面(即ち、摺動面21)に沿って配置される。この摩耗ゲージ4の先端部41には、後述するノッチフィルタ部5が設置されている。
【0034】
このノッチフィルタ部5は、入力信号から、相異なる複数の周波数成分を減衰させる機能を有する。以下では、ノッチフィルタ部5が、特定の5つの周波数成分(周波数:f、f、f、f、f)を減衰する例について説明するが、減衰対象の周波数成分の数は、5つに限られず、1つまたは任意の複数であってよい。このノッチフィルタ部5は、摩耗ゲージ4の摩耗量を段階的に計測するために、相異なるライン長x〜xの複数の摩耗検知用ライン51〜55(図3参照)を具備しており、当該摩耗検知用ライン51〜55を用いて、特定の周波数f、f、f、f、fの周波数成分を減衰させる。そして、摩耗ゲージ4の先端部41とともにノッチフィルタ部5の摩耗検知用ライン51〜55の先端が摩耗すると、当該摩耗した摩耗検知用ラインによる特定の周波数成分の減衰機能が失われるが、その詳細については後述する。
【0035】
一方、対向側部品3には、第1のトランス6の一次コイル6aと、第2のトランス7の二次コイル7bと、信号発生部8と、周波数分析部9が設置される。第1のトランス6の一次コイル6aは、信号発生部8に接続され、第2のトランス7の二次コイル7bは、周波数分析部9に接続されている。
【0036】
信号発生部8は、相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を発生する機能を有する。信号発生部8は、上記摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5が減衰可能な特定の周波数(ノッチ周波数)f、f、f、f、fの信号を混合した混合信号を生成する。かかる混合信号は、第1のトランス6の一次コイル6aに印加される。この信号発生部8の回路構成の詳細は後述する。
【0037】
第1のトランス6は、上記混合信号を対向側部品3から摩耗側部品2に非接触方式で伝達する第1の信号伝達部の一例である。第1のトランス6は、対向側部品3に配置される一次コイル6aと、摩耗側部品2に配置される二次コイル6bとからなり、両コイル6a、6bの電磁的結合を利用して、一次コイル6aから二次コイル6bに混合信号を伝達する。かかる第1のトランス6により伝達された混合信号は、摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5に入力される。
【0038】
また、第2のトランス7は、上記摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5から出力された信号(計測信号)を、摩耗側部品2から対向側部品3に非接触方式で伝達する第2の信号伝達部の一例である。第2のトランス7は、摩耗側部品2に配置される一次コイル7aと、対向側部品3に配置される二次コイル7bとからなり、両コイル7a、7bの電磁的結合を利用して、一次コイル7aから二次コイル7bに計測信号を伝達する。
【0039】
上記第1のトランス6の二次コイル6bと第2のトランス7の一次コイル7aは、摩耗側部品2と対向側部品3との対向部において、摩耗側部品2の対向面22に配置されている。対向面22と摺動面21は平行であり、図示のように摩耗側部品2の対向面22と摺動面21の間に段差があってもよいし、或いは面一であってもよい。また、上記第1のトランス6の一次コイル6aと第2のトランス7の二次コイル7bは、摩耗側部品2と対向側部品3との対向部において、対向側部品3の対向面32に配置されている。対向面32と摺動面31は平行であり、図示のように対向側部品3の対向面32と摺動面31とが面一であってもよいし、或いは対向面32と摺動面31の間に段差があってもよい。なお、対向面22と対向面32の間には所定の隙間が設けられるが、摺動部1の構造的制約から対向面22と対向面32が接触していてもよい。
【0040】
そして、摩耗側部品2が摺動して所定位置に移動したときに、第1のトランス6の一次コイル6aと二次コイル6bとが所定の距離範囲内に接近して対向するように、摩耗側部品2および対向側部品3における当該コイル6a、6bの配置が調整されている。さらに、一次コイル6aおよび二次コイル6bのコイル軸が相互に平行であり、かつ摺動方向に対しても平行となるように、一次コイル6aおよび二次コイル6bが配置されている。
【0041】
同様に、摩耗側部品2が摺動して所定位置に移動したときに、第2のトランス7の一次コイル7aと二次コイル7bとが所定の距離範囲内に接近して対向するように、摩耗側部品2および対向側部品3における当該コイル7a、7bの配置が調整されている。さらに、一次コイル7aおよび二次コイル7bのコイル軸が相互に平行であり、かつ摺動方向に対しても平行となるように、一次コイル7aおよび二次コイル7bが配置されている。
【0042】
かかる配置により、摩耗側部品2が摺動方向(例えば図の上下方向)に摺動するときに、一次コイル6aと二次コイル6b、および一次コイル7aと二次コイル7bが、当該摺動方向に相互に相対移動して、接近または離隔する。そして、一対のコイル6a、6bが対向すると同時に、一対のコイル7a、7bが対向したときに、二対のコイルが相互に電磁的に結合する。この結果、上記信号発生部8から発生した混合信号が、第1のトランス6によって対向側部品3から摩耗側部品2に非接触で伝達されるとともに、上記摩耗ゲージ4により計測された摩耗状態を表す計測信号が、第2のトランス7によって摩耗側部品2から対向側部品3に非接触で伝達される。このようにトランス6、7を用いて非接触で信号を伝達することにより、摩耗側部品2と対向側部品3を配線等で接続したり、摩耗側部品2の摺動を妨げたりすることなく、摩耗側部品2と対向側部品3の間で円滑に信号を授受できるようになる。
【0043】
周波数分析部9は、上記ノッチフィルタ部5を経由して戻ってきた計測信号の周波数成分を分析することにより、摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する機能を有する。摩耗検知ライン51のノッチフィルタ部5が摩耗すると、上記特定の周波数f、f、f、f、fの周波数成分を減衰させる機能が損なわれることになる。このため、ノッチフィルタ部5から第2のトランス7を介して周波数分析部9に入力される計測信号には、上記信号発生部8により送出された混合信号に含まれていた特定の周波数f、f、f、f、fの周波数成分が現れてくることになる。
【0044】
そこで、周波数分析部9は、上記第2のトランス7から入力された計測信号をAM検波することにより、当該計測信号に含まれる周波数成分を検出する。そして、周波数分析部9は、上記混合信号に含まれていた周波数成分(周波数がf、f、f、f、fの信号)が当該計測信号に含まれているか否かに基づいて、摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する。なお、この周波数分析部9の回路構成や検出動作の詳細は後述する。
【0045】
[1.3.摩耗ゲージの構成]
次に、図2および図3を参照して、本実施形態に係る摩耗ゲージ4の構成について詳述する。図3は、本実施形態に係る摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5を示す平面図である。
【0046】
図2に示したように、摩耗ゲージ4は、摩耗検知対象である摩耗側部品2に設置され、その先端部41の摩耗を計測する。摩耗ゲージ4の先端部41が摩耗検知対象部位(即ち、摩耗側部品2の摺動面21)に露出していれば、摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2に埋設されてもよいし、摩耗側部品2の側面に貼り付けられてもよい。摩耗ゲージ4の先端部41は、摩耗ゲージ4の長手方向の一側端部であって、摩耗検知対象部位とともに摩耗する部分である。本実施形態では、摩耗ゲージ4の先端部41は、摩耗側部品2の摺動面21に沿って配置され、摩耗ゲージ4の先端面41a(先端部41の端面)が摩耗側部品2の摺動面21と面一となっている。
【0047】
摩耗ゲージ4の本体は、例えば、矩形板状のプリント基板からなり、一般的なプリント基板製造技術を用いて製造可能である。プリント基板の材質は、絶縁材料であれば、ガラスエポキシ等、摩耗検知対象である摩耗側部品2の材質に応じて適宜選択することができる。かかるプリント基板は、リジッド基板またはフレキシブル基板のいずれであってもよい。リジッド基板を用いた場合には、摩耗ゲージ4自体がある程度の剛性を有することとなるので、特殊な保持部材を別途使用することなく、摩耗ゲージ4を摩耗側部品2の検知対象部位に固定可能となる。一方、フィルム状のフレキシブル基板を用いた場合には、摩耗ゲージ4が変形自在となるので、摩耗側部品2の検知対象部位に自由に取り付け可能となる。また、フィルム状であるため、摩耗ゲージ4から発生する摩耗粉は微小であり、摩耗側部品2より柔らかい素材で構成することが可能であるため、摩耗側部品2や対向側部品3の摩耗に及ぼす影響は極めて小さい。
【0048】
図3に示すように、摩耗ゲージ4の先端部41には、ノッチフィルタ部5が設置されている。このノッチフィルタ部5は、入力信号の特定の周波数成分を減衰させるフィルタ回路であり、バンドエリミネートフィルタ(Band Elimination Filter :BEF)として機能する。
【0049】
かかるノッチフィルタ部5は、摩耗ゲージ4のプリント基板上に櫛歯状に形成されたマイクロストリップラインで構成される。即ち、ノッチフィルタ部5は、摩耗ゲージ4の先端面41aに対して平行な方向(即ち、摺動方向)に延びる1本のベースライン50と、当該ベースライン50から摩耗ゲージ4の先端部41に向かって延びる複数の摩耗検知用ライン51、52、53、54、55とから構成される。ここでは、ベースライン50と摩耗検知用ライン51〜55とが直交している例を示す。
【0050】
これらのベースライン50および摩耗検知用ライン51〜55は、例えば、導電性材料(例えば銅等の金属)で形成されたマイクロストリップラインからなり、電気信号を導通可能である。図示の例のベースライン50および摩耗検知用ライン51〜55はいずれも、直線状である。これにより、これらラインの形成が容易になるだけでなく、所望の周波数成分を正確に減衰でき、摩耗量も正確に計測できようになる。しかし、ベースライン50および摩耗検知用ライン51〜55の形状は、湾曲状、波状等の任意の形状であってもよい。また、摩耗検知用ライン51〜55の配置や間隔、延長方向も図示の例に限定されない。
【0051】
ベースライン50は、摩耗ゲージ4の先端面41aから所定距離Lだけ内側に配置される。この距離Lは、摩耗検知対象である摩耗側部品2の最大摩耗量よりも十分に大きくなるように設定することが好ましい。これにより、摩耗ゲージ4の先端部41が摩耗しても、ベースライン50が摩滅しないようにできる。ベースライン50の一端50aは、上記第1のトランス6の二次コイル6bに接続されており、ベースライン50の他端50bは、上記第2のトランス7の一次コイル7aに接続されている。これにより、上記複数の周波数成分(周波数f、f、f、f、f)を含む混合信号は、第1のトランス6からベースライン50の一端50aに入力されて、ベースライン50を通過し、ベースライン50の他端50bから計測信号として出力される。
【0052】
一方、摩耗検知用ライン51〜55は、摩耗ゲージ4の先端部41において、相互に平行となるように、間隔を空けて配置される。各摩耗検知用ライン51〜55の基端はベースライン50に接続され、各摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aは、摩耗ゲージ4の先端面41aと対向している。
【0053】
摩耗検知用ライン51の先端51aは、摩耗ゲージ4の先端面41aに最も近い位置(距離L)に形成されている。図示の例では、距離Lはゼロ超であるが、L=0として、摩耗検知用ライン51の先端51aを先端面41aに露出させてもよい。摩耗検知用ライン52の先端52aは、先端面41aから距離Lの位置に形成されている。同様に、他の摩耗検知用ライン53、54、55の先端53a、54a、55aは、先端面41aから距離L、L、Lの位置にそれぞれ配置されている。距離L〜Lはそれぞれ、序数が大きいほど距離が長くなっている。これらの摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aと摩耗ゲージ4の先端面41aとの距離L〜Lが、摩耗ゲージ4で検知可能な摩耗量(基準摩耗量)となる。
【0054】
また、かかる摩耗検知用ライン51〜55はそれぞれ、相異なるライン長x〜xを有している。図示の例では、ベースライン50の一端50a側から他端50b側にかけて、摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xが徐々に長くなっている(x>x>x>x>x)。なお、摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xは、ベースライン50の中心線50cから摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aまでの長さである。
【0055】
上記摩耗検知用ライン51〜55はそれぞれ、相異なる複数の周波数f〜fの信号を減衰する機能を有している。このために、各摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xは、減衰対象の周波数f〜fの信号の波長λ〜λに合わせて設定される。例えば、摩耗検知用ライン51は、周波数fの信号を減衰する機能を有しており、この摩耗検知用ライン51のライン長xは、周波数fの信号の波長λの4分の1の値に設定される(x=λ/4)。同様に、他の摩耗検知用ライン52〜55のライン長x〜xも、減衰対象の周波数f〜fの信号の波長λ〜λの4分の1の値に設定される(x=λ/4、x=λ/4、x=λ/4、x=λ/4)。なお、周波数fと波長λは、信号の伝播速度vが一定であれば、反比例の関係にあるので(v=f・λ)、相互に対応している。
【0056】
また、この摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xは、以下の式(1)で表される値に設定されてもよい。なお、式(1)中のnは0以上の整数であり、kは序数である。この式(1)は、摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xが、減衰対象の信号の波長λ〜λの1/2倍に任意の整数nを乗じた値に、当該波長λ〜λの1/4倍を加えた値であることを意味する。
【0057】
=n・λ/2+λ/4 ・・・(1)
このように、各摩耗検知用ライン51のライン長x〜xを、減衰対象の信号の波長λ〜λに合わせて設定することで、上記混合信号に含まれる減衰対象の周波数成分(f〜f)を好適に減衰させて除去できる。以下にこの原理について説明する。
【0058】
図3に示すように、ベースライン50の一端50aから入力された混合信号は、ベースライン50内を他端50bに向けて進行する(矢印61)。この際、混合信号は、各摩耗検知用ライン51〜55とベースライン50との接続箇所で分岐して、各摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aに向けて進行する(矢印62)。この各摩耗検知用ライン51〜55に分岐した混合信号を分岐信号と称する。その後、当該分岐信号は、各摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aで反射して、ベースライン50に向けて進行し(矢印63)、上記接続箇所で、ベースライン50を進行する元の混合信号(矢印61)と合流する。
【0059】
この結果、元の混合信号(矢印61)と分岐信号(矢印63)とが相殺されて、混合信号中の特定の周波数成分が減衰される。例えば、摩耗検知用ライン51への分岐信号は、ベースライン50から摩耗検知用ライン51の先端51aまでを往復するときに(矢印62、63)、摩耗検知用ライン51のライン長xの2倍の距離(=2×x=2×(λ/4)=λ/2)を進む。このため、図4(a)、(b)に示すように、当該分岐信号は、元の混合信号に対して波長λの半分(即ち、半周期)だけ遅延し、分岐信号と元の混合信号との位相差は180°となる。よって、図4(c)に示すように、両信号を混合することにより、元の混合信号のうちの周波数fの成分(波長λ)と、周波数fの分岐信号(波長λ)とが相殺されて、元の混合信号から周波数fの成分が減衰される。他の摩耗検知用ライン52〜54および周波数f〜fの周波数成分についても同様に、元の混合信号から周波数f、f、f、fの成分が減衰される。
【0060】
上記のように、ノッチフィルタ部5は、ベースライン50に入力された混合信号と、各摩耗検知用ライン51〜55の先端までを往復した分岐信号との位相差を利用して、当該混合信号から特定の周波数成分(周波数f〜f)を減衰させることができる。したがって、ノッチフィルタ部5からの出力信号である計測信号には、当該周波数f〜fの成分が含まれない、または、非常に小さいことになる。以下、理解を容易にするため、ノッチフィルタ部5が摩耗していない場合、ノッチフィルタ部5により当該周波数f〜fが完全に減衰されて、計測信号に当該周波数f〜fの成分が含まれないものとして説明する。
【0061】
ところで、上記ノッチフィルタ部5により減衰される周波数成分は、各摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xに依存しており、当該ライン長x〜xが変化すれば、減衰される周波数成分も変化する。したがって、摩耗ゲージ4の先端部41の摩耗により、摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aが摩耗して、ライン長x〜xが短くなれば、上記周波数f〜fの成分を減衰する機能が失われる。
【0062】
例えば、周波数fの周波数成分を減衰させるために、摩耗検知用ライン51のライン長xは、当該周波数fに対応する波長λに合わせてλ/4に設定されている。このため、摩耗検知用ライン51が摩耗していない場合、図4に示したように、摩耗検知用ライン51の分岐信号を利用し、混合信号から周波数fの成分を完全に減衰させて除去できる。
【0063】
一方、摩耗側部品2の摺動面の摩耗に伴い、摩耗検知用ライン51の先端51aが摩耗した場合、摩耗検知用ライン51のライン長xがλ/4よりも摩耗量dだけ短くなる。このため、図5(a)、(b)に示すように、元の混合信号に対する分岐信号の遅延量は、2×((λ/4)−d)となり、λ/2(即ち、半周期)よりも短くなるため、分岐信号と元の混合信号との位相差は180°未満となる。よって、図5(c)に示すように、両信号を混合したとしても、元の混合信号から周波数fの成分(波長λ)を完全に除去することはできず、ある程度の信号レベルで残存してしまう。図5(c)の例では、元の混合信号の周波数fの成分の振幅Aが、振幅A’に低下しているものの、当該周波数fの成分を除去しきれていない。
【0064】
このように、摩耗検知用ライン51の先端51aが摩耗した場合、当該摩耗検知用ライン51により減衰される周波数成分がfからずれるので、混合信号中の周波数fの成分を完全に減衰させることができない。よって、ノッチフィルタ部5からは、周波数fの成分が残存した信号が、計測信号として出力されることとなる。なお、この場合でも、他の摩耗検知用ライン52〜55が摩耗していなければ、当該摩耗検知用ライン52〜55のライン長x〜xに対応する周波数成分(周波数f〜f)を減衰させることは可能である。
【0065】
また、さらに摩耗ゲージ4の摩耗が進行して、次に長い摩耗検知ライン52の先端52aも摩耗した場合、摩耗検知ライン52による周波数fの成分の減衰機能も失われるので、計測信号には周波数fの成分が残存することになる。さらに摩耗が進行した場合には、同様に、摩耗検知ライン53〜55による周波数f、f、fの成分の減衰機能も順次失われる。
【0066】
したがって、上記のように摩耗検知対象の摩耗側部品2の摩耗に伴ってノッチフィルタ部5の摩耗検知ライン51〜55が段階的に摩耗することで、摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摩耗量を段階的に計測することができる。
【0067】
つまり、産業機械の稼働時には、摩耗側部品2と対向側部品3との摺動により、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗が進行し、それに伴い、摩耗ゲージ4の先端部41も摩耗する。そして、摩耗量がLを超えたときに、摺動面21に最も近い摩耗検知用ライン51の先端51aが摩耗し、計測信号に周波数fの成分が含まれるようになる。これにより、摩耗量がLを超えたことを計測できる。さらに、摩耗ゲージ4の摩耗が進行し、摩耗量がLを超えたときに、次の摩耗検知用ライン52も摩滅するため、計測信号に周波数fの成分が含まれるようになる。これにより、摩耗量がLを超えたことを計測できる。同様に、摩耗ゲージ4の摩耗がさらに進行するにつれ、摩耗検知用ライン53、54、55が順次摩滅することにより、計測信号に周波数f、f、fの成分が含まれるようになる。これにより、摩耗量がL〜Lを超えたことを計測できる。
【0068】
この摩耗ゲージ4の先端部41の摩耗量L〜Lは、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量と同一であるため、摩耗ゲージ4の先端部41の摩耗量を段階的に計測することにより、摩耗側部品2の摩耗量を段階的に検知することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る摩耗ゲージ4は、ノッチフィルタ部5の複数の摩耗検知用ライン51〜55の摩耗による周波数成分の減衰機能の変化を利用して、摩耗側部品2の摩耗量を連続的に多段階で計測できる。
【0070】
[1.4.摩耗検知装置の回路構成例および動作]
次に、図6を参照して、本実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成例とその動作について説明する。図6は、本実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。
【0071】
図6に示すように、信号発生部8は、複数のオシレータ80−1、80−2、80−3、80−4、80−5(以下、「オシレータ80」と総称する場合もある。)と、混合器81とから構成される。各オシレータ80は、混合器81の入力端子にそれぞれ接続され、混合器81の出力端子は第1のトランス6の一次コイル6aに接続されている。
【0072】
オシレータ80−1、80−2、80−3、80−4、80−5は、相異なる周波数f、f、f、f、fの信号(交流信号)をそれぞれ発生させる。当該各信号の波長は、λ、λ、λ、λ、λであり、周波数f、f、f、f、fにそれぞれ対応している。かかる周波数f、f、f、f、fは、上述したノッチフィルタ部5のノッチ周波数(ノッチフィルタ部5により減衰される特定の周波数)に対応している。混合器81は、上記複数のオシレータ80から入力された複数の信号を混合して、上記複数の周波数成分を含む混合信号を生成する。
【0073】
かかる信号発生部8により生成された混合信号は、第1のトランス6の一次コイル6aに印加される。第1のトランス6は、当該混合信号を対向側部品3から摩耗側部品2に非接触で伝達する。第1のトランス6により伝達された混合信号は、摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5に入力される。
【0074】
ノッチフィルタ部5は、入力された混合信号に対して、摩耗検知ライン51〜55に対応する特定の周波数f、f、f、f、fの成分を減衰させ、計測信号を生成する。摩耗検知ライン51〜55が摩耗していない場合には、ノッチフィルタ部5は、混合信号に含まれる全ての周波数f、f、f、f、fの成分を減衰・除去するため、計測信号にはいずれの周波数成分も含まれない。一方、摩耗検知ライン51〜55の少なくともいずれか摩耗している場合には、ノッチフィルタ部5は、当該摩耗した摩耗検知ラインに対応する周波数成分を減衰しきれないので、計測信号には、当該周波数成分が残存する。
【0075】
かかるノッチフィルタ部5により生成された計測信号は、第2のトランス7の一次コイル7aに印加される。第2のトランス7は、当該計測信号を摩耗側部品2から対向側部品3に非接触で伝達する。第2のトランス7により伝達された計測信号は、周波数分析部9に入力される。
【0076】
図6に示すように、周波数分析部9は、分配器90と、複数の混合器91−1、91−2、91−3、91−4、91−5(以下、「混合器91」と総称する場合もある。)と、複数のローパスフィルタ(LPF)92−1、92−2、92−3、92−4、92−5(以下、「LPF92」と総称する場合もある。)と、複数のコンパレータ93−1、93−2、93−3、93−4、93−5(以下、「コンパレータ93」と総称する場合もある。)と、制御装置94とから構成される。
【0077】
分配器90の入力端子は、上記第2のトランス7の二次コイル7bに接続される。当該分配器90の5つの出力端子はそれぞれ、混合器91、LPF92およびコンパレータ93を介して制御装置94の入力端子D1〜D5に接続されている。分配器90は、第2のトランス7から入力される計測信号を同一の5つの信号に分配する。
【0078】
分配器90の後段の各分配経路において、混合器91は、当該分配された計測信号と、上記信号発生部8の各オシレータ80により生成された特定の周波数f、f、f、f、fの信号(以下「発信信号」という。)とをそれぞれ混合する。発信信号と計測信号を混合すると、発信信号の周波数fと、計測信号の周波数の和と差の周波数の信号が生成される。
【0079】
LPF92は、上記混合器91の出力信号から、差の周波数の信号を取り出し、隣接した不要信号を除去する。コンパレータ93は、LPF92により得られた差の周波数の信号の電圧を、所定の基準電圧値Vrefと比較し、当該比較結果を示す信号を制御装置94に出力する。例えば、計測信号に周波数fの信号成分が含まれていない場合、差の周波数(f−0=f)の信号の電圧値は、基準電圧値Vrefより高くなるので、コンパレータ93−1は、High信号を出力する。一方、計測信号に周波数fの信号成分が含まれている場合、差の周波数(f−f=0)の信号はVrefより低くなるので、コンパレータ93−1は、Low信号を出力する。他の周波数f、f、f、fについても同様である。
【0080】
制御装置94は、上記各コンパレータ93からの入力信号に基づいて、ノッチフィルタ部5から出力された計測信号に各周波数f、f、f、f、fの信号成分が含まれているか否かを検出する。例えば、制御装置94は、コンパレータ93−1からの入力信号がHigh信号である場合、上記計測信号に周波数fが含まれていないと判定し、当該入力信号がLow信号である場合、上記計測信号に周波数fが含まれていると判定する。そして、制御装置94は、上記計測信号に周波数fが含まれている場合には、当該周波数fに対応する摩耗検知ライン51が摩耗しており、摩耗ゲージ4の摩耗量、即ち、摩耗側部品2の摩耗量がL以上であると判定する。他の周波数f〜f、摩耗検知ライン52〜55、摩耗量L〜Lについても同様である。
【0081】
上述したように摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5は、複数の摩耗検知用ライン51〜55(図3参照)を用いて特定の複数の周波数成分(f、f、f、f、f)をそれぞれ減衰させる機能を有する。そして、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗により、ライン長L〜Lのうち長い摩耗検知用ライン51〜55から順に摩耗して、上記各周波数成分の減衰機能が順次失われるようになっている。したがって、信号発生部8で生成された混合信号が、摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5を通過する際に、ノッチフィルタ部5の摩耗検知用ライン51〜55が摩耗しておらず、上記周波数成分の減衰機能が失われていない場合には、混合信号中の全ての周波数成分が除去されるため、ノッチフィルタ部5から出力される計測信号にはいずれの周波数成分も含まれないことになる。一方、摩耗検知用ライン51〜55の摩耗により、一部または全部の周波数成分の減衰機能が失われている場合には、当該減衰機能が失われた周波数成分が混合信号から除去されないので、計測信号にも当該周波数成分が残存する。
【0082】
そこで、周波数分析部9は、上記分配器90、混合器91、LPF92、コンパレータ93等を用いて、ノッチフィルタ部5を経由して戻ってきた計測信号に含まれる周波数成分を検出する。そして、周波数分析部9の制御装置94は、当該計測信号に、ノッチフィルタ部5の各摩耗検知用ライン51〜55に対応する特定の周波数成分が含まれているか否かに基づいて、摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する。
【0083】
例えば、計測信号に周波数fの成分が含まれていない場合、制御装置94は、ノッチフィルタ部5が当該周波数fの成分を減衰する機能を発揮しており、摩耗ゲージ4の摩耗量が当該周波数fに対応する摩耗検知用ライン51にまで達していない(即ち、摩耗量がL未満である。)と判断する。一方、計測信号に周波数fの成分が含まれている場合、制御装置94は、ノッチフィルタ部5が当該周波数fの減衰機能を発揮しておらず、摩耗ゲージ4の摩耗量が当該周波数fに対応する摩耗検知用ライン51にまで達している(即ち、摩耗量がL以上である)と判断する。他の摩耗検知ライン52〜55と周波数f〜fについても同様である。これにより、制御装置94は、摩耗検知対象である摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を段階的に検出することができる。
【0084】
[1.5.効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る摩耗検知装置によれば、摩耗側部品2の摩耗ゲージ4にノッチフィルタ部5を設け、相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を、対向側部品3から第1のトランス6を通じて当該ノッチフィルタ部5に送り込む。そして、ノッチフィルタ部5から出力される計測信号を第2のトランス7を通じて取得し、当該計測信号に含まれる周波数成分を検出することにより、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を的確に検知することができる。また、このときの摩耗検知方式としては、ノッチフィルタ部5の摩耗を利用する単純な方式であるため、振動や水分付着等の外乱に強く、摩耗判定が容易である。また、摩耗ゲージ4を用いて摩耗検知対象の実際の摩耗量を測定するため、誤差のない正確な測定が可能となる。
【0085】
さらに、本実施形態によれば、相対移動する摩耗側部品2と対向側部品3の間において、上記2つのトランス6、7を利用して、混合信号と計測信号を非接触で伝達することが可能である。このため、対向側部品3の周波数分析部9は、摩耗側部品2の摺動ストローク中に、計測信号に含まれる周波数成分を連続的に検出して、複数の特定周波数成分の有無を検知することにより、摩耗側部品2の摩耗量を段階的に検知することができる。
【0086】
したがって、摩耗側部品2と対向側部品3を複数の配線等で電気的に接続しなくても、対向側部品3の周波数分析部9は、摩耗側部品2の摩耗量を多段階で適切に検知することができる。よって、摩耗側部品2の摩耗量の変化を段階的に把握できるため、摩耗量の変化の傾向を把握でき、摩耗側部品2の余寿命と最適なメンテナンスの時期を予測することが可能となる。
【0087】
さらに、ノッチフィルタ部5を用いることにより、信号発生部8からトランス6、摩耗ゲージ4、トランス7を通じて周波数分析部9に至る1つの回路だけで、摩耗側部品2の摩耗状態を多段階で検出することができる。したがって、摩耗側部品2から対向側部品3に摩耗情報を伝達するための回路数を大幅に削減でき、当該回路も小型化することが可能となる。よって、上記特許文献1のように複数の回路を設置する場合よりも、摩耗側部品2の動作の安定性を確保できるとともに、摩耗側部品2と対向側部品3の構造を簡素化することができる。
【0088】
また、トランス6、7の電磁的な結合により信号を伝達するので、光の投受光を用いて信号伝達する場合よりも、摩耗側部品2の円滑な摺動に用いられる潤滑油や水分の影響を受けにくくなり、信号の伝達性が向上する。
【0089】
加えて、摩耗側部品2が摺動ストローク中の所定位置に移動したときのみ、トランス6およびトランス7が電磁的に結合するため、当該電磁的に結合していないときは、対向側部品3から摩耗側部品2に混合信号が伝送されず、対向側部品3では何らの信号も検出されない。したがって、対向側部品3の周波数分析部9は、摩耗側部品2の摺動ストローク中に現れる計測信号の周波数成分を検出するだけで、摩耗側部品2の摩耗状態を検知することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る摩耗検知方法は、産業機械の稼働中、即ち摩耗側部品2の摺動動作中に、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知することができる。したがって、摩耗側部品2の摺動動作を停止することなく、当該摩耗側部品2の摩耗状態をリアルタイムで検知できるので、産業機械の稼働率を向上でき、摩耗検知のための時間と費用を削減できる。
【0091】
[2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る摩耗検知装置について説明する。第2の実施形態に係る摩耗検知装置は、上記第1の実施形態と比べて、ノッチフィルタ部5の構成と、信号伝達部の設置数が相違し、その他の機能構成は上記第1の実施形態と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0092】
[2.1.摩耗ゲージの構成]
まず、図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る摩耗ゲージ4の構成について詳述する。図7は、第2の実施形態に係る摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5を示す平面図である。
【0093】
上記第1の実施形態に係るノッチフィルタ部5(図3参照)は、ベースライン50の一端50aから信号が入力されて他端50bから信号が出力される2ポートのノッチ回路で構成されていた。これに対し、図7に示すように、第2の実施形態に係るノッチフィルタ部5は、ベースライン50の一端50aのみから信号が入出力され、他端50bがオープンとなっている1ポートのノッチ回路で構成されている。
【0094】
図7に示すように、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、摩耗ゲージ4の先端部41にノッチフィルタ部5が設置されており、このノッチフィルタ部5は、1本のベースライン50と、複数の摩耗検知用ライン51〜55とから構成される。ベースライン50の一端50aは、外部回路と接続されており、当該一端50aを通じて、混合信号や計測信号が入出力されるようになっている。一方、ベースライン50の他端50bは、開放されており、外部回路と接続されていないので、当該他端50bを通じた信号の入出力はない。
【0095】
ベースライン50の一端50aは、後述するトランス10の二次コイル10b(図8参照)に接続されている。これにより、上記複数の周波数成分(周波数f、f、f、f、f)を含む混合信号は、トランス10からベースライン50の一端50aに入力されて、ベースライン50上を他端50bに向けて進む。そして、当該混合信号は、他端50bで反射してベースライン50上を戻り、一端50aから計測信号として出力される。このように、第2の実施形態では、混合信号がベースライン50の一端50aから入力されて他端50bで反射し、再び一端50aから計測信号として出力されるように、信号伝達部であるトランス10とベースライン50の一端50aとが接続されている。
【0096】
また、摩耗検知用ライン51〜55は、摩耗ゲージ4の先端部41において、間隔を空けて配置される。第1の実施形態と同様に、これら摩耗検知用ライン51〜55のライン長x〜xは、減衰対象の周波数f〜fの信号の波長λ〜λの4分の1の値に設定される(x=λ/4、x=λ/4、x=λ/4、x=λ/4、x=λ/4)。
【0097】
さらに、第2の実施形態では、各摩耗検知用ライン51〜55の基端51b〜55bからベースライン50の他端50bまでの距離y(以下、「開放距離y」という。)はそれぞれ、減衰対象の周波数f〜fの信号の波長λ〜λに合わせて設定される。例えば、周波数fの信号を減衰するための摩耗検知用ライン51の開放距離yは、周波数fの信号の波長λの2分の1の値に設定される(y=λ/2)。同様に、他の摩耗検知用ライン52〜55の開放y〜yも、減衰対象の周波数f〜fの信号の波長λ〜λの2分の1の値に設定される(y=λ/2、y=λ/2、y=λ/2、y=λ/2)。
【0098】
また、この摩耗検知用ライン51〜55の開放距離yは、以下の式(2)で表される値に設定されてもよい。なお、式(2)中のnは0以上の整数であり、kは序数である。この式(2)は、摩耗検知用ライン51〜55の開放距離yが、減衰対象の信号の波長λ〜λの1/2倍に任意の整数nを乗じた値に、当該波長λ〜λの1/2倍を加えた値であることを意味する。
【0099】
=n・λ/2+λ/2 ・・・(2)
上記のように、各摩耗検知用ライン51のライン長x〜xのみならず、開放距離yをも、減衰対象の信号の波長λ〜λに合わせて設定することで、上記混合信号に含まれる減衰対象の周波数成分(f〜f)を好適に減衰させて除去できる。以下にこの原理について説明する。
【0100】
図7に示すように、ベースライン50の一端50a(入力端)から入力された混合信号は、ベースライン50内を他端50bに向けて進行する(矢印61)。この際、第1の実施形態と同様に、混合信号は、各摩耗検知用ライン51〜55とベースライン50との接続箇所で分岐して、各摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aに向けて進行する(矢印62)。この各摩耗検知用ライン51〜55に分岐した混合信号を分岐信号と称する。その後、当該分岐信号は、各摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aで反射して、ベースライン50に向けて進行し(矢印63)、上記接続箇所で、ベースライン50を進行する元の混合信号と合流する。
【0101】
さらに、ベースライン50の他端50bが開放されているので、ベースライン50上を進行する混合信号(矢印61)は、当該他端50bで反射して、ベースライン50の一端50aに向けて戻る(矢印64)。このベースライン50の他端50bで反射した混合信号を反射信号と称する。この反射信号も、各摩耗検知ライン51〜55とベースライン50の接続箇所で、上記分岐信号と合流する。
【0102】
この結果、元の混合信号(矢印61)と分岐信号(矢印63)と反射信号(矢印64)とが相殺されて、混合信号中の特定の周波数成分が減衰される。例えば、摩耗検知用ライン51への分岐信号は、元の混合信号に対してλ/2だけ遅延する。また、反射信号も、ベースライン50の他端50bまでを往復するときに、上記開放距離yの2倍の距離(=2×y=2×(λ/2)=λ)を進む。このため、図4(a)、(b)に示したように、分岐信号は、元の混合信号に対してλ/2だけ遅延し、分岐信号と元の混合信号との位相差は180°となるが、反射信号と元の混合信号との位相差は360°となる。したがって、反射信号は元の混合信号を減衰させる作用を奏さず、分岐信号のみが元の混合信号の減衰作用を奏する。よって、図4(c)に示したように、元の混合信号と分岐信号と反射信号を混合することにより、元の混合信号のうちの周波数fの成分(波長λ)と、周波数fの分岐信号(波長λ)とが相殺されて、元の混合信号から周波数fの成分が減衰される。他の摩耗検知用ライン52〜54および周波数f〜fの周波数成分についても同様に、元の混合信号から周波数f〜fの成分が減衰される。
【0103】
上記のように、ノッチフィルタ部5は、ベースライン50に入力された混合信号と、各摩耗検知用ライン51〜55の先端までを往復した分岐信号との位相差を利用して、当該混合信号から特定の周波数成分(周波数f〜f)を減衰させることができる。したがって、ノッチフィルタ部5からの出力信号である計測信号には、当該周波数f〜fの成分が含まれないことになる。
【0104】
ただし、第1の実施形態と同様に、摩耗ゲージ4の先端部41の摩耗により、摩耗検知用ライン51〜55の先端51a〜55aが摩耗して、ライン長x〜xが短くなれば、上記周波数f〜fの成分を減衰する機能が失われる。したがって、上記のように摩耗検知対象の摩耗側部品2の摩耗に伴ってノッチフィルタ部5の摩耗検知ライン51〜55が段階的に摩耗することで、摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摩耗量を段階的に計測することができる。
【0105】
以上のように、第2の実施形態に係る摩耗ゲージ4も、ノッチフィルタ部5の複数の摩耗検知用ライン51〜55の摩耗による周波数成分の減衰機能の変化を利用して、摩耗側部品2の摩耗量を連続的に多段階で計測できる。
【0106】
[2.2.摩耗検知装置の回路構成例および動作]
次に、図8を参照して、第2の実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成例とその動作について説明する。図8は、第2の実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。
【0107】
図8に示すように、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、摩耗側部品2と対向側部品3とが1つのトランス10を介して接続されている。このトランス10は、対向側部品3から摩耗側部品2に混合信号を伝達する第1の信号伝達部の機能と、摩耗側部品2から対向側部品3に計測信号を伝達する第2の信号伝達部の機能を兼ね備える。このように第2の実施形態では、第1の信号伝達部と第2の信号伝達部は、摩耗側部品2と対向側部品3の対向面21、31に沿って設けられた同一のトランス10で構成される。
【0108】
かかるトランス10は、対向側部品3に設置される一次コイル10aと、摩耗側部品2に設置される二次コイル10bとからなり、当該一次コイル10aと二次コイル10bの電磁的結合を利用して、信号を双方向に伝達する。即ち、摩耗側部品2の摺動中に一次コイル10aと二次コイル10bとが対向したときに、信号発生部8により生成された混合信号を一次コイル10aから二次コイル10bに送信するとともに、ノッチフィルタ部5から戻ってきた計測信号を二次コイル10bから一次コイル10aに送信する。
【0109】
信号発生部8は、相異なる周波数f、f、f、f、fの信号を発生させる複数のオシレータ80と、これら信号を混合する混合器81と、方向性結合器82と、終端器83とを備える。混合器81の出力端子は方向性結合器82に接続されている。また、方向性結合器82の入出力端子はトランス10の一次コイル10aに接続されており、方向性結合器82の別の出力端子は、周波数分析部9の分配器90に接続されている。オシレータ80および混合器81の機能構成は第1の実施形態と同様であるので詳細説明は省略する。
【0110】
方向性結合器82は、信号伝送路上を特定の方向に伝播する電力に対応する信号を取り出す機能を有し、例えば、3ポートの単方向性結合器または4ポートの双方向性結合器で構成される。方向性結合器82は、上記方向性結合器82で生成された混合信号をトランス10に出力するとともに、トランス10から入力された計測信号を取り出し、周波数分析部9に出力する。
【0111】
かかる方向性結合器82を通過した混合信号は、トランス10の一次コイル10aに印加され、対向側部品3から摩耗側部品2に非接触で伝達されて、摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5に入力される。ノッチフィルタ部5は、入力された混合信号に対して、摩耗検知ライン51〜55に対応する特定の周波数f、f、f、f、fの成分を減衰させ、計測信号を生成する。この際、第1の実施形態と同様に、摩耗検知ライン51〜55の摩耗に応じて減衰される周波数成分が異なる。ノッチフィルタ部5により生成された計測信号は、トランス10の二次コイル10bに印加され、摩耗側部品2から対向側部品3に非接触で伝達される。トランス10により伝達された計測信号は、上記方向性結合器82で取り出されて、周波数分析部9に入力される。
【0112】
周波数分析部9は、分配器90と、上記特定の周波数f、f、f、f、fに対応する複数組の混合器91、LPF92、コンパレータ93と、制御装置94とを備える。これらの分配器90、混合器91、LPF92、コンパレータ93の機能構成は第1の実施形態と同様であるので詳細説明は省略する。
【0113】
第2の実施形態に係る周波数分析部9も、第1の実施形態と同様に、ノッチフィルタ部5を経由して戻ってきた計測信号に含まれる周波数成分を検出する。そして、当該計測信号に、ノッチフィルタ部5の各摩耗検知ライン51で減衰される特定の周波数成分が含まれているか否かに基づいて、摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する。これにより、制御装置94は、摩耗検知対象である摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を段階的に検出することができる。
【0114】
[2.3.効果]
以上説明したように、第2の実施形態の摩耗検知装置によれば、摩耗側部品2と対向側部品3の間で信号伝達する手段として、1つのトランス10のみを設置すればよく、トランス10と摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5を1本の回路で接続すればよい。したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に係る効果に加えて、摩耗側部品2と対向側部品3の回路構成をより簡素化できるとともに、摩耗側部品2の動作の安定性をより向上できるという効果がある。
【0115】
[3.第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置について説明する。第3の実施形態に係る摩耗検知装置は、上記第1の実施形態と比べて、第1のトランス6および第2のトランス7の配置が相違し、その他の機能構成は上記第1の実施形態と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0116】
上述した第1の実施形態では、図2に示すように、第1のトランス6の二次コイル6bと第2のトランス7の一次コイル7aは、摩耗側部品2の摺動方向と平行な対向面22(摺動面21)に沿って配置され、第1のトランス6の一次コイル6aと第2のトランス7の二次コイル7bも、当該摺動方向と平行な対向面32(摺動面31)に沿って配置されている。ところが、摩耗側部品2の摺動中は、対向面22と対向面32が摺動方向に相対移動するため、二次コイル6bおよび一次コイル7aと、一次コイル6aおよび二次コイル7bも摺動方向に相対移動する。したがって、摩耗側部品2が高速で摺動する場合には、コイル間の電磁的な結合を瞬時に行うことが要求されるので、計測のタイミングを取ることが困難であるとともに、計測時間を短時間で行わなければならず、計測精度を向上し難いという問題があった。
【0117】
そこで、第3の実施形態では、かかる問題を解決するために、摩耗側部品2における二次コイル6bおよび一次コイル7aの配置と、対向側部品3における一次コイル6aおよび二次コイル7bの配置を変更したことを特徴とする。以下に、第3の実施形態に係る摩耗検知装置の構成について詳述する。
【0118】
[3.1.摩耗検知装置の構成]
まず、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置の全体構成について説明する。図9は、本実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。なお、図9(a)は、摩耗側部品2が摺動ストロークの端部に移動して、一時停止した状態を示し、図9(b)は、摩耗側部品2が摺動ストロークの中央付近で移動中の状態を示す。
【0119】
図9に示すように、第3の実施形態に係る摩耗検知装置では、第1のトランス6の一次コイル6aと二次コイル6b、および第2のトランス7の一次コイル7aと二次コイル7bが電磁的に結合する箇所を、摩耗側部品2の摺動方向(図9の上下方向)と平行な対向面22、32(摩耗側部品2の摺動ストロークの途中)ではなく、当該摺動方向と垂直な対向面23、33(即ち、摩耗側部品2の摺動ストロークの端部)に配置する。
【0120】
このために、摩耗側部品2の摺動方向の一側端部と対向する対向部34が、対向側部品3に設けられている。この対向側部品3の対向部34は、対向側部品3の本体部から摩耗側部品2側に向けて突出形成された部分である。対向部34は、摺動する摩耗側部品2と衝突せず、かつ、摺動ストロークの端部に移動した摩耗側部品2と近接する位置に設置される。この対向側部品3の対向部34の対向面33は、摺動方向に対して垂直であり、摩耗側部品2の摺動方向の一側端部の対向面23と対向する。そして、かかる対向部34の対向面33に沿って第1のトランス6の一次コイル6aと第2のトランス7の二次コイル7bが配置される。
【0121】
一方、摩耗側部品2には、摺動方向の一側端部の対向面23に沿って第1のトランス6の二次コイル6bおよび第2のトランス7の一次コイル7aが配置される。このとき、第1のトランス6の一次コイル6aと二次コイル6bとが摺動方向に対向し、第2のトランス7の一次コイル7aと二次コイル7bとが摺動方向に対向するように配置される。かかる第1のトランス6の二次コイル6bおよび第2のトランス7の一次コイル7aは、摩耗ゲージ4に接続されている。また、上記一次コイル6aのコイル軸と二次コイル6bのコイル軸とが相互に平行になり、一次コイル7aのコイル軸と二次コイル7bのコイル軸とが相互に平行になるように、第1のトランス6および第2のトランス7の各コイル6a、6b、7a、7bが配置される。また、コイル間の電磁的な結合を好適に実現するため、これらコイル6a、6b、7a、7bのコイル軸が、摩耗側部品2の摺動方向に対して垂直であることが好ましいが、かかる例に限定されず、当該コイル軸6a、6b、7a、7bが摺動方向に平行であってもよい。
【0122】
かかる配置により、摩耗側部品2の摺動中に、当該摩耗側部品2が摺動ストロークの端部に移動して一次停止したときに(図9(a)参照。)、摩耗側部品2の一側端部の対向面23と対向側部品3の対向部34の対向面33とが、最も接近した状態で相互に対向する。このとき、第1のトランス6の一次コイル6aと二次コイル6bとが接近するとともに、第2のトランス7の一次コイル7aと二次コイル7bとが接近する。このため、当該一次コイル6aと二次コイル6bとが電磁的に結合するとともに、当該一次コイル7aと二次コイル7bとが電磁的に結合する。この結果、上記信号発生部8から発生した混合信号が、第1のトランス6によって対向側部品3から摩耗側部品2に非接触で伝達されるとともに、上記摩耗ゲージ4により計測された摩耗状態を表す計測信号が、第2のトランス7によって摩耗側部品2から対向側部品3に非接触で伝達される。
【0123】
以上の構成により、摺動ストロークの端部において摩耗側部品2の移動速度が最も遅くなるときに、第1のトランス6の一次コイル6aと二次コイル6b、および第2のトランス7の一次コイル7aと二次コイル7bとを最も近接させた状態で対向させることができるので、これらコイル間での電磁的な結合を的確に実現することができる。よって、計測タイミングが取りやすくなり、比較的長い計測時間を確保できるので、対向側部品3から摩耗側部品2の摩耗量状態の計測を容易かつ正確に行うことが可能となる。さらに、摩耗側部品2の摺動面21や摩耗ゲージ4の摩耗粉が、第1のトランス6および第2のトランス7の近傍に到達しにくくなるので、当該摩耗粉が第1のトランス6および第2のトランス7の電磁的な結合を妨害することを抑制して、当該電磁的な結合を安定的に実現できる。
【0124】
なお、図9の例では、対向面23、33が摺動方向に対して垂直であったが、かかる例に限定されない。例えば、対向面23、33が摺動方向に対して傾斜していても、上記と同様に電磁的に結合することが可能である。
【0125】
また、図9の例では、摩耗側部品2の一側端部の対向面23に、第1のトランス6の二次コイル6bおよび第2のトランス7の一次コイル7aを配置したが、かかる例に限定されない。例えば、摩耗側部品2の一側端部の近傍の対向面22に、第1のトランス6の二次コイル6bおよび第2のトランス7の一次コイル7aを配置し、これに対向するようにして対向側部品3の対向面32に、第1のトランス6の一次コイル6aおよび第2のトランス7の二次コイル7bを配置してもよい。これによっても、摩耗側部品2の移動速度が遅くなる箇所で、これら素子を対向させることができるので、計測タイミングや計測時間に関して、ほぼ同様の効果が得られる。
【0126】
また、図9の例では、2つのトランス(第1のトランス6および第2のトランス7)を設けたが、かかる例に限定されない。第2の実施形態のように、1つのトランス10のみを摺動ストロークの端部に設置して、トランス10と摩耗ゲージ4のノッチフィルタ部5を1本の回路で接続してもよい。
【0127】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0128】
例えば、上記実施形態では、摩耗側部品2と対向側部品3間の信号伝達部として、トランス6、7、10を用いる例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の信号伝達部は、摩耗側部品と対向側部品の間で、非接触方式で信号を伝達可能なものであれば、例えば、摩耗側部品2と対向側部品3に一対または複数対のアンテナ等を設けてもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、周波数分析部9としてアナログ回路を設け、発信信号(計測信号)とリターン信号(計測信号)とを混合して、周波数成分を検出したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、周波数分析部9をマイクロプロセッサなどで構成し、計測信号をデジタル処理(フーリエ変換処理等)することにより、計測信号中の周波数成分を検出してもよい。
【0130】
例えば、上述した実施形態では、摩耗検知装置の具体的構成について説明したが、摩耗検知装置を用い、対向側部品で混合信号を発生し、摩耗側部品から入力された計測信号を受信し、受信した計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、摩耗ゲージの摩耗状態を検知する摩耗検知方法も提供される。また、摩耗検知装置の各構成要素に基づく処理や動作は当該摩耗検知方法にも適用される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、産業機械の摺動部の摩耗を検知する摩耗検知装置、摩耗ゲージおよび摩耗検知方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 …摺動部
2 …摩耗側部品
3 …対向側部品
4 …摩耗ゲージ
5 …ノッチフィルタ部
6、7、10 …トランス
6a、7a、10a …一次コイル
6b、7b、10b …二次コイル
8 …信号発生部
9 …周波数分析部
21、31 …摺動面
22、23、32、33 …対向面
34 …対向部
41 …先端部
41a …先端面
50 …ベースライン
50a …ベースラインの一端
50b …ベースラインの他端
51、52、53、54、55 …摩耗検知用ライン
51a、52a、53a、54a、55a …摩耗検知用ラインの先端
80 …オシレータ
81 …混合器
82 …方向性結合器
90 …分配器
91 …混合器
92 …ローパスフィルタ
93 …コンパレータ
94 …制御装置
100 …レシプロコンプレッサ
101 …シリンダ
102 …ピストン
103 …ピストンロッド
104 …ピストンリング
105 …プルリング
106 …吸入弁
107 …排出弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向側部品との摺動に伴う摩耗側部品の摩耗を検知する摩耗検知装置において、
前記対向側部品に設けられ、相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を発生する信号発生部と、
前記混合信号を前記対向側部品から前記摩耗側部品に非接触方式で伝達する第1の信号伝達部と、
前記摩耗側部品に設けられ、前記摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に、前記複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が設けられ、前記第1の信号伝達部から前記ノッチフィルタ部に前記混合信号が入力される摩耗ゲージと、
前記混合信号の入力に応じて前記ノッチフィルタ部から出力される計測信号を、前記摩耗側部品から前記対向側部品に非接触方式で伝達する第2の信号伝達部と、
前記対向側部品に設けられ、前記第2の信号伝達部から入力された前記計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、前記摩耗ゲージの摩耗状態を検知する周波数分析部と、
を備えることを特徴とする摩耗検知装置。
【請求項2】
前記ノッチフィルタ部は、
前記複数の周波数成分を含む前記混合信号が印加されるベースラインと、
前記ベースラインから前記摩耗ゲージの先端部に向かって延び、前記複数の周波数成分の波長に応じて相異なるライン長を有する複数の摩耗検知用ラインと、
を備え、
前記摩耗側部品の摺動面の摩耗に伴い、前記複数の摩耗検知用ラインの先端が順次摩耗することを特徴とする請求項1に記載の摩耗検知装置。
【請求項3】
前記第1の信号伝達部および前記第2の信号伝達部と前記ベースラインの一端とが接続されており、前記混合信号が前記ベースラインの一端から入力されて他端で反射し、前記一端から前記計測信号として出力されることを特徴とする請求項2に記載の摩耗検知装置。
【請求項4】
対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に設けられる摩耗ゲージにおいて、
前記摩耗側部品の摺動面に沿って配置される先端部に、相異なる複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が配置されており、
前記ノッチフィルタ部は、
前記複数の周波数成分を含む混合信号が印加されるベースラインと、
前記ベースラインから前記摩耗ゲージの先端部に向かって延び、前記複数の周波数成分の波長に応じて相異なるライン長を有する複数の摩耗検知用ラインと、
を備え、
前記摩耗側部品の摺動面の摩耗に伴い、前記複数の摩耗検知用ラインの先端が順次摩耗することを特徴とする摩耗ゲージ。
【請求項5】
対向側部品から、該対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に非接触方式で相異なる複数の周波数成分を含む混合信号を伝達する第1の信号伝達部と、該摩耗側部品に設けられ、該摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に、該複数の周波数成分に対応したノッチフィルタ部が設けられ、該第1の信号伝達部から該ノッチフィルタ部に該混合信号が入力される摩耗ゲージと、該混合信号の入力に応じて該ノッチフィルタ部から出力される計測信号を、該摩耗側部品から該対向側部品に非接触方式で伝達する第2の信号伝達部と、により該摩耗側部品の摩耗を検知する摩耗検知方法であって、
前記対向側部品で前記混合信号を発生し、
前記第2の信号伝達部から入力された前記計測信号を受信し、
受信した前記計測信号に含まれる周波数成分に基づいて、前記摩耗ゲージの摩耗状態を検知することを特徴とする摩耗検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−88194(P2013−88194A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227218(P2011−227218)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】