説明

摺接部材、及びそれを内部に設けている感光体ドラム、並びに該感光体ドラムを備えた電子写真用ドラムカートリッジ、画像形成装置

【課題】 接触帯電部材を感光体ドラムに直接接触させ、交流電圧を印加して感光体ドラムを帯電させる際に発生する帯電音を高温環境下でも永続的に抑制できる摺接部材、及びそれを内部に設けている感光体ドラム、並びに該感光体ドラムを備えた電子写真用ドラムカートリッジ、画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光体ドラムに接触して、該感光体ドラムを帯電させる方式の帯電装置を備えた画像形成装置に具備される感光体ドラムの内部に設けられる摺接部材であって、前記感光体ドラムの長手方向に延びるスリット及びくびれ部が形成された円筒形状を有し、更に、該くびれ部を中心に15〜45℃に変態温度を有する形状記憶金属が設置されていることを特徴とする摺接部材、及びそれを内部に設けている感光体ドラム、並びに該感光体ドラムを備えた電子写真用ドラムカートリッジ、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子写真複写機、レーザプリンタ等、電子写真方式の画像形成装置、特に感光体に接触して感光体を帯電する方式の帯電装置を備えた画像形成装置の構成部品である摺接部材、感光体ドラム、電子写真用ドラムカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、レーザービームプリンタ、コピーなど、電子写真技術を使用して画像形成を行う画像形成装置は、近年の目覚しい技術革新により、日々低価格となり、現在では、オフィスのみならず、一般家庭環境でも使用されている。
ここで述べる電子写真技術を使用した画像画像形成装置とは、電子写真用感光体(以下、「感光体」)を中心に、少なくとも帯電部材、画像露光系装置、現像装置、転写装置を有し、各装置が順に作動することで、画像形成を行う装置を指す。
【0003】
感光体は、まず帯電部材により、一様に帯電された後、画像露光系装置で原稿の画像情報を担持した光を照射されることで、感光体表面に静電潜像を形成し、これを現像装置で現像することでトナー像を得、転写装置で非転写体に転写することで、プリント画像が得られる。
帯電部材に着目すると、現在一般的に採用されている帯電方式には、コロナ帯電などに代表される非接触帯電方式、ブラシ帯電などに代表される接触帯電方式がある。
【0004】
コロナ帯電では、高電圧が印加されるために大量のオゾンが発生し、オゾン問題による環境への影響が問題視されているが、接触帯電は印加電圧が低いため、オゾンの発生が極めて低い。
【0005】
一方、接触帯電方式は、直流電圧だけでも使用可能ではあるが、帯電ムラが起こりやすくなるため、印加電圧は交流電圧を重畳させた直流電圧で行うことが望ましい。
しかし、交流電圧を重畳した直流電圧を帯電装置に印加した場合には、交流電圧の重畳により印加電圧が高くなり、直流電圧の場合よりオゾン、窒素酸化物などの低抵抗汚染物質により画像品質が悪くなるという現象の他、耳障りな高周波音である帯電音が発生するという騒音上の問題がある。
【0006】
この帯電音は直流電圧で印加した場合にはほとんど問題にならないが、交流電圧の場合は、振動電流であるため、感光体に振動を発生させ、このときの振動が耳にはキーンという連続的な騒音となって聞こえる。
帯電音発生のメカニズムのより詳細は、既に示されている(例えば、特許文献1参照)。
従来この帯電音を減少させるために、いろいろな施策がなされており、大別すると(1)錘型、(2)基材厚肉型、(3)制振型、(4)エネルギー変換型などがある。以下に、各々の代表的なものを、例を挙げて説明する。
【0007】
(1)錘型
比較的密度の高い錘を、感光体ドラムの内部に配置し、感光体ドラムの重量を増すことで、共振点をずらし、帯電音を減少させる方法である。この方法は、錘を感光体ドラム内部に固定させるために、接着材などを用いる。そのため、再利用などができず、かつ接着剤の選択を間違えば、感光体ドラム円筒度の悪化を引き起こす。それ以上に、感光体ドラムの重量を増すことで、輸送時の落下などによる衝撃に対し、非常に不利な方法である(例えば、特許文献2〜6参照)。
また、接着固定を避け、Oリングで錘を保持する方法が紹介されているが、この場合も落下変形に対する問題は解決されない(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
(2)基材厚肉型
インロー部以外の基材肉厚を厚くすることで、感光体ドラムの剛体を高め、振動を抑制し、帯電音を減少させる方法。剛性による効果か、質量増加による効果かは不明であるが、基材を厚肉にすると結果的に質量も増すため、錘型で問題となった落下変形の問題が発生する。この手法の場合、特に肉厚の薄いインロー部に力が集中するため、端部変形が起こりやすい(例えば、特許文献8及び9参照)。
【0009】
(3)制振型
感光体ドラム内壁に金属性のバネ(コイルバネ、板バネなど)を装填し、そのバネ力でドラム内壁を押接して振動を抑制し、結果として帯電音を抑制しようという方法である。コイルバネ形式の場合、押接面積が少ないため、あまり効果がえられず、板バネ、円筒バネの場合は、その材質に金属単体を使用すると、反発力が大きいため、円筒化の方法によっては感光体ドラムの真円度を悪化させるという問題点がある(例えば、特許文献10及び11参照)。
【0010】
特許文献10では、その請求項の中で、組立性向上の観点から、材質に形状記憶合金を使用するとあるが、形状記憶合金でも単体で円筒バネにすると同様の問題が発生する。
更にスプリング機能を有する支持体を振動吸収剤と被覆材でコーティングすることで、この問題を解決しているが、組立が面倒であり、再生時の煩雑さが付加される(例えば、特許文献12参照)。
【0011】
(4)エネルギー変換型
長手方向にスリットおよびくびれをもつ感光体ドラムの重量を実質的に増加させないような、例えば円筒状の軽い樹脂製の摺接部材を、感光体ドラムの内壁に所定の摩擦力、好ましくはその力が0.5kg・f以上12.5kg・f以下、で押接させる、この方法は、帯電器からの振動エネルギーにより、感光体ドラム内部で摺接部材が小刻みに動き、擦れることによって、振動エネルギーを熱エネルギーに変換、放出することで帯電音を減少させる方法が提案されている(例えば、特許文献13参照)。
【0012】
この方式は非常に優れており、過度の質量増加を引き起こすことなく、かつ単純な構造で効果を得られる。摺接部材に使用される材料としては、例えばアクリル、ABS、ガラス繊維入りポリカーボネート、硬質ゴムなどが挙げられるが、製造し易さからABSがよく用いられる。しかしながら、この系では、45〜55℃の高温環境下で長期に使用あるいは保管し続けると、消音機能が減少してしまうという問題が発生する場合がある。これは、感光体内部への挿入性を向上させるために設けられたくびれ部が、高温環境下において、軟化してしまい、ドラム内壁面に所定の摩擦力で押接するように調整した外径を保持できなくなってしまうためである。
【0013】
このとき、ドラム内壁面による押接力、樹脂自体の自重に働く重力なども、この望ましくない復元力に拍車をかける要因となっている。このような症状に陥ると、消音効果が低くなるばかりか、ひどい場合には、感光ドラム内壁面への押接力が失われ、感光ドラム内を容易に移動してしまい、輸送時の振動から、接着固定しているフランジを内側からハンマーで叩くような状態となり、フランジ脱落などの欠陥をも引き起こす場合がある。この問題を解決する手段として、使用環境温度の制御、軟化温度の高い材料の使用、くびれ部肉厚の制御などが考えられる。使用環境温度の制御は、すでに実機内の過度の温昇を避けるようなエアフロー機構の工夫がなされてはいるが、昨今の小型化による熱のこもりは、徐序に制御範囲を凌駕しつつあり、またお客様のニーズにより、過酷な状況下での使用を制限することはできない。
【0014】
軟化温度の高い材料、例えば、スーパーエンジニアリングプラスティックと呼ばれるポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリアリレートなどを使用する方法は、所定押接力を得るための外径の制御が非常に困難であり、製造コストが高くなってしまう。また、感光体ドラム内に挿入する際、過度な力で外径を窄めて挿入すると、強度的に弱くなっているくびれ部に白化が起こり、所定押接力が得られなくなってしまう。くびれ部肉厚の制御は、肉厚を厚くする方向になるが、この場合にも所定押接力を得るための外径制御が困難、くびれ部の白化にという問題が発生する。
【0015】
また、感光体ドラムの構成上、摺接部材は、感光体ドラム内部に挿入された後、フランジでドラム両端部を塞いでしまうのが一般的であるため、一度、この望ましくない復元力により外径が小さくなったフランジは、感光体ドラムを破壊して、再度、適性な外径に調整してから、新たな感光体ドラムに装填しない限り、その効果を甦らせることはできない。
【特許文献1】特開平4−86682号公報
【特許文献2】特開平5−35167号公報
【特許文献3】特開平5−35048号公報
【特許文献4】特開平5−35166号公報
【特許文献5】特開平3−45981号公報
【特許文献6】特開平5−197321号公報
【特許文献7】特開平11−184308号公報
【特許文献8】特開2000−0919761号公報
【特許文献9】特開2000−155500号公報
【特許文献10】特開平5−142922号公報
【特許文献11】特開2000−321929号公報
【特許文献12】特開2003−156972号公報
【特許文献13】特開2000−315036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、接触帯電部材を感光体ドラムに直接接触させ、交流電圧を印加して感光体ドラムを帯電させる際に発生する帯電音を高温環境下でも永続的に抑制できる摺接部材、及びそれを内部に設けている感光体ドラム、並びに該感光体ドラムを備えた電子写真用ドラムカートリッジ、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の本発明により達成された。
即ち、本発明は、
<1> 感光体ドラムに接触して、該感光体ドラムを帯電させる方式の帯電装置を備えた画像形成装置に具備される感光体ドラムの内部に設けられる摺接部材であって、前記感光体ドラムの長手方向に延びるスリット及びくびれ部が形成された円筒形状を有し、更に、該くびれ部を中心に15〜45℃に変態温度を有する形状記憶金属が設置されていることを特徴とする摺接部材である。
【0018】
<2> 前記形状記憶金属が設置されている範囲が、スリット部を基準(0°)とした場合に、最大で60〜300°の範囲、最小で150〜210°の範囲であることを特徴とする<1>に記載の摺接部材である。
<3> <1>又は<2>に記載の摺接部材を内部に設けていることを特徴とする感光体ドラムである。
【0019】
<4> <3>に記載の感光体ドラムを組み込んでいることを特徴とする電子写真用ドラムカートリッジである。
<5> 感光体ドラムと、該感光体ドラムを接触することにより帯電させる方式の帯電装置とを備えた画像形成装置であって、前記感光体ドラムが<3>に記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、接触帯電部材を感光体ドラムに直接接触させ、交流電圧を印加して感光体ドラムを帯電させる際に発生する帯電音を高温環境下でも永続的に抑制できる摺接部材、及びそれを内部に設けている感光体ドラム、並びに該感光体ドラムを備えた電子写真用ドラムカートリッジ、画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の摺接部材は、感光体ドラム(ドラム形状の感光体)に接触して、該感光体ドラムを帯電させる方式の帯電装置を備えた画像形成装置に具備される感光体ドラムの内部に設けられる摺接部材であって、前記ドラム形状の感光体の長手方向に延びるスリット及びくびれ部が形成された円筒形状を有し、更に、該くびれ部を中心に15〜45℃に変態温度を有する形状記憶金属が設置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の摺接部材は、感光体ドラムの長手方向に延びるスリット及びくびれ部が形成された円筒形状の樹脂を備えることが好ましい。その樹脂の外径を感光体ドラムの内径よりもやや大きく形成しておき、スリット及びくびれ部が形成されていることからその樹脂の径を縮める方向に撓ませてその摺接部材を感光体ドラムに簡単に挿入することができ、組立ての作業性が向上する。感光体ドラムに挿入された摺接部材はその径が広がろうとして感光体ドラムの内壁を所期の摩擦力が生じるように押圧する。
【0023】
図1は、本発明の摺接部材が組み込まれた感光体ドラムの長手方向の断面図である。
図1において、円筒状の感光体ドラム11の内部に摺接部材111が装入されており、また、その感光体ドラム11の両端はフランジ112で閉じられている。
【0024】
図2は、図1に示す矢印X−X方向に見た摺接部材の形状の一例を示した図である。
図2に示す摺接部材111は、円筒状であり、長手方向に延びるスリット111aが形成されており、さらに、スリット111aの反対側に、やはりその長手方向に延びるくびれ部111bが形成されており、径方向に撓みやすく形成されている。この摺接部材111は、例えばアクリル,ABS,ガラス入りポリカーボネート等の樹脂で形成することができる。その他、ステンレス等の金属、硬質ゴム等で摺接部材111を形成してもよい。摺接部材111は、感光体ドラム11の内部に配置したときに、その感光体ドラム11の内壁との間で所定の摩擦力を持って接するよう、その外径寸法や表面粗さ等が予め定められている。
【0025】
更に、図2に示す摺接部材111には、くびれ部111bを中心に15〜45℃に変態温度を有する形状記憶金属111cが設置されている。
【0026】
本発明の摺接部材111は、スリット111a、及びくびれ部111bが形成されていることにより、帯電音を減少させる効果があるが、更に形状記憶金属111cが設置されることにより、高温環境下で長期使用した場合に生じる望ましくない復元力発現を防ぎ、半永久的に、その消音効果を保つことが可能であり、かつ再利用も容易となる。
【0027】
形状記憶金属111cを設置する方法は、摺接部材内壁に貼り付ける方法や、摺接部材内壁から外壁に向かい摺接部材内部に埋め込む方法などがあり、本発明において、形状記憶金属の設置方法を特に限定するものではないが、発明時の経験上、摺接部材外壁に形状記憶金属が露出すると、例えば、摺接部材外壁に形状記憶金属を貼り付けた場合には、その接着力が、形状記憶金属の復元力よりも小さい場合、形状記憶樹脂は摺接部材外壁から遊離してしまうばかりか、感光体ドラムの内壁に過度の押圧力を及ぼし、感光体ドラムの真円度悪化を生じてしまう場合がある。
【0028】
形状記憶金属111cが設置されている範囲は、くびれ部111bを中心とし、くびれ部111bとは反対に位置するスリット111aを基準(0°)とした場合に、最大で60〜300°の範囲、最小で150〜210°の範囲であることが好ましく、最大で90〜270°の範囲、最小で135〜225°の範囲であることがより好ましい。前記形状記憶金属111cが設置されている範囲が、60〜300°の範囲より大きくなると、得られる画像が悪くなる場合がある。一方、150〜210°の範囲より小さくなると、高音環境下で放置された場合においても、消音効果を保つという効果が得られない場合がある。
【0029】
尚、本発明において、スリット111aを基準とした角度とは、図3に示すようにスリット111aの中心を0°とし、そこを基準とした角度をいう。例えば60〜300°とは図3に示す領域を指す。
また、本発明において、くびれ部111bとは、円筒状の摺接部材111の外周面において、他の部分より内側に入り込んでいる部分を指す。
更に、形状記憶金属111cは、長手方向に連続して設置されていてもよいが、図4に示すように長手方向に断続的に設置されていてもよい。
【0030】
ここで本発明に用いられる形状記憶金属111cとは、一般の金属材料では復元不可能な大きな変形を加えても、その合金の変態温度以上に加熱するだけで元の形に復元する形状記憶効果を有する金属(合金)のことを指し、現在実用されているものとしては、チタン−ニッケル合金が一般的であるが、形状記憶効果があるものとしては、銅−亜鉛−ニッケル合金、ニッケル−アルミ合金など10種類以上の形状記憶合金が確認されている。形状記憶効果とは、ある形状の試料を臨界温度より高温から急冷して低音(マルテンサイト)相を形成させ、これを変形した後再び加熱するとき、その臨界温度を超えると逆変態が起こり同時に形状も回復する現象をいう。形状記憶効果は、このマルテンサイト変態によって起こり、このマルテンサイト変態が起こる温度のことを変態温度と呼ぶ。変態温度は、チタン−ニッケル混合比率を調整したり、コバルト、銅を微量添加することで、−20〜100℃程度に調整可能であるが、実際の変態は10〜30℃の幅をもつため、変形もある温度幅で徐々に起こる。
【0031】
本発明の摺接部材では、45〜55℃でくびれ部の軟化を抑制するという目的から、変態温度は15〜45℃の範囲にあることを必須とし、35〜45℃の範囲にあることが好ましい。
【0032】
本発明の電子写真用ドラムカートリッジは、既述の本発明の感光体ドラムを組み込んでいることを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、既述の本発明の感光体ドラムと、該感光体ドラムを接触することにより帯電させる方式の帯電装置とを備えることを特徴とする。本発明の画像形成装置においては、本発明の感光体ドラムを備えてもよい。
【0033】
本発明の画像形成装置を図5を用いて説明する。図5は、接触帯電方式の帯電装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図5に示す画像形成装置は、感光体ドラム11と、感光体ドラム11の軸と平行の軸を中心に回転自在に軸支された帯電ロール121、帯電ロール121に図示しない電圧印加電源からの所定の電圧(直流電圧+交流電圧)を印加する板バネ状の電極122、及びクリーニングパッド123を有する、感光体ドラム11を接触帯電する帯電装置12と、現像ロール141を有する現像装置14と、転写装置15と、クリーナ16と、転写ロール151と、が備えられている。
【0034】
図5に示す画像形成装置による画像形成は、感光体ドラム11が図示の矢印Aの方向に回動し、この感光体ドラム11が帯電装置12により一様に接触帯電される。この帯電装置12には、感光体ドラム11の軸と平行の軸を中心に回転自在に軸支された帯電ロール121が備えられており、この帯電ロール121は、図示しない加圧バネにより感光体ドラム11に押圧付勢されて感光体ドラム11に直線状に接触し、感光体ドラム11の回動に従動して矢印Bの方向に回転する。この帯電ロール121には、板バネ状の電極122を経由して図示しない電圧印加電源からの所定の電圧(直流電圧+交流電圧)が印加されており、これにより、感光体ドラム11の表面が必要な電位に帯電処理される。また、帯電ロール121の表面は、クリーニングパッド123によりクリーニングされる。
【0035】
感光体ドラム11の、帯電装置12により帯電された領域には、レーザ光13により画像が記録されて静電潜像が形成され、その静電潜像が現像装置14の、矢印C方向に回転する現像ロール141により運ばれたトナーにより現像され、そのトナー像が転写装置15を構成する転写ロール151に転写され、その後、その転写ロール151に転写されたトナー像が、図示しない用紙上に転写される。一方、感光体ロール11はクリーナ16により、次の画像形成のためにクリーニングされる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1−1)
外径φ28mm、肉厚4mm、長さ100mmのABS樹脂円筒パイプに、スリット幅3mm、くびれ部の肉厚0.7mm、くびれ部の幅2mmの加工を施した後、スリット部にスペーサーを噛ませながら、くびれ部を加熱し、所定の押接力を得られるようにφ28.5mmに外径を広げた摺接部材の内面側に、スリット部を基準(0°)とし、150°〜210°の範囲に、変態温度20℃、板厚1mmの形状記憶金属(KIOKALLOY:大同特殊鋼(株)製)を設置した。設置する方法は、ここでは樹脂系接着剤で貼り付ける方法を用いた。このようにして得られた摺接部材を、φ30×L404×t1.0mmの感光体ドラム内部中央に1本挿入し、両側を弊社製レーザービームプリンタ DocuCentreColor f450用フランジにて閉管し、感光体ドラムを作製した。
【0037】
(実施例1−2)
実施例1−1において、形状記憶金属の設置範囲を、スリット部を基準(0°)としたときに60°〜300°となる範囲に変更したこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0038】
(実施例2−1)
実施例1−1において、形状記憶金属を、変態温度40℃、板厚1mmの形状記憶金属に変更したこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0039】
(実施例2−2)
実施例2−1において、形状記憶金属の設置範囲を、スリット部を基準(0°)としたときに60°〜300°となる範囲に変更したこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0040】
(比較例1)
実施例1−1において、形状記憶金属を、変態温度10℃、板厚1mmの形状記憶金属に変更したこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0041】
(比較例2)
実施例1−1において、形状記憶金属を、変態温度50℃、板厚1mmの形状記憶金属に変更したこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0042】
(比較例3)
実施例1−1において、形状記憶金属を設置しなかったこと以外、実施例1−1と同様にして感光体ドラムを作製した。
【0043】
得られた感光体ドラムを、富士ゼロックス社製レーザービームプリンタDocuCentreColor f450にセットし、ハーフトーン50%の画質をプリントして、感光体ドラム周方向に同期する濃度ムラの有無と、そのときに発生する帯電音の官能評価を行った。つぎに、同じ感光体ドラムを50℃/RH80%環境下で24時間保管し、室温に十分慣らした後、同様の評価を行った。その結果を表1に示す。尚、濃度ムラの有無及びの官能評価は以下の通りである。
【0044】
(濃度ムラの有無)
○:濃度ムラが発生しない。
×:濃度ムラが発生した。
【0045】
(帯電音)
○:キーンと言う耳障りな高周波音が発生せず静かである。
×:キーンと言う耳障りな高周波音が発生した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、本発明の条件を満たす感光体ドラムでは、50℃/RH80%環境下で24時間保管した場合でも、画質を損なうほどの真円度の悪化を生ずることなく、帯電音の低減が図れ、濃度ムラのない画質が得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の摺接部材が組み込まれた感光体ドラムの長手方向の断面図である。
【図2】図1に示す矢印X−X方向に見た摺接部材の形状の一例を示した図である。
【図3】スリット111aを基準とした角度を説明するための説明図である。
【図4】形状記憶金属111cが長手方向に連続して設置されていない場合を説明するための説明図である。
【図5】接触帯電方式の帯電装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
11・・・感光体ドラム、
12・・・帯電装置、
13・・・レーザ光、
14・・・現像装置、
15・・・転写装置、
16・・・クリーナ、
111・・・摺接部材、
111a・・・スリット、
111b・・・くびれ部、
111c・・・形状記憶金属、
121・・・帯電ロール、
122・・・板バネ状の電極、
123・・・クリーニングパッド、
141・・・現像ロール、
151・・・転写ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムに接触して、該感光体ドラムを帯電させる方式の帯電装置を備えた画像形成装置に具備される感光体の内部に設けられる摺接部材であって、
前記感光体ドラムの長手方向に延びるスリット及びくびれ部が形成された円筒形状を有し、更に、該くびれ部を中心に15〜45℃に変態温度を有する形状記憶金属が設置されていることを特徴とする摺接部材。
【請求項2】
前記形状記憶金属が設置されている範囲が、スリット部を基準(0°)とした場合に、最大で60〜300°の範囲、最小で150〜210°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の摺接部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の摺接部材を内部に設けていることを特徴とする感光体ドラム。
【請求項4】
請求項3に記載の感光体ドラムを組み込んでいることを特徴とする電子写真用ドラムカートリッジ。
【請求項5】
感光体ドラムと、該感光体ドラムを接触することにより帯電させる方式の帯電装置とを備えた画像形成装置であって、
前記感光体ドラムが請求項3に記載の感光体ドラムであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−91562(P2006−91562A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278196(P2004−278196)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】