説明

撚糸用素糸の製造装置

【課題】 所定のテープ幅でテープ状に切断し易いとともに、撚り終わった紙糸の質感がごわごわしにくく、撚りを掛ける前の前処理にも時間が掛かりにくい撚糸用素糸を製造できるようにする。
【解決手段】 紙Aをテープ状に切断してある撚糸用素糸Bの製造装置であって、ノズル8から噴射させた加圧液体Wで紙をテープ状に切断可能な切断手段3を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙をテープ状に切断してある撚糸用素糸の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記撚糸用素糸の製造装置では、従来、超硬合金などで形成した鋭利な回転刃で紙をテープ状に切断するスリッターを使用している(例えば、特許文献1参照)が、紙をテープ状に切断してある撚糸用素糸は、乾燥状態ではいわゆる腰が強くて、均一に撚りを掛けにくいので、水などの液体を含浸させた状態で撚りを掛けることが行われており、このため、従来の製造装置で製造したテープ状の素糸は、乾燥状態で円盤状や螺旋状に巻き取った状態で、素糸どうしの重なり部分にも水が十分浸透するように、水槽などの水に所定時間に亘って浸漬した後、余剰の水を脱水して、二重撚糸装置などで撚りを掛けている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−121339号公報(段落番号[0007])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の製造装置は、鋭利な回転刃で紙をテープ状に切断するので、回転刃のふらつきでテープ幅が不揃いになり易い欠点があるとともに、切断端面が角張り、撚り終わった紙糸の質感がごわごわしたものになり易い欠点もある。
その上、従来の製造装置で製造したテープ状の素糸は、乾燥状態で円盤状や螺旋状に巻き取った状態で、撚りを掛ける前に、素糸どうしの重なり部分にも水が十分浸透するように、所定時間に亘って水などに浸漬しておく必要もあり、前処理に時間が掛かる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、所定のテープ幅でテープ状に切断し易いとともに、撚り終わった紙糸の質感がごわごわしにくく、撚りを掛ける前の前処理にも時間が掛かりにくい撚糸用素糸を製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、紙をテープ状に切断してある撚糸用素糸の製造装置であって、ノズルから噴射させた加圧液体で前記紙をテープ状に切断可能な切断手段を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
ノズルから噴射させた加圧液体で紙をテープ状に切断可能な切断手段を設けてあるので、加圧液体を一定位置から噴射させて、所定のテープ幅でテープ状に切断し易いとともに、例えば液体圧力やノズルと紙との間隔などを調整すれば、切断端面での繊維の毛羽立ちが多くなるように切断することもでき、撚り終わった紙糸の質感がごわごわしにくい。
また、加圧液体でテープ状に切断する際に、その液体を切断端面から含浸させることができ、撚りを掛ける前の前処理にも時間が掛かりにくい。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記加圧液体が、水に油剤を添加した液体である点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
水に油剤を添加した加圧液体で紙をテープ状に切断するので、油剤を含浸させたテープ状の素糸を製造することができ、素糸の滑りが良くなって、撚糸する際に引っ掛かりにくいとともに、撚り終えた紙糸の滑りも良くなって、布状に加工する際に織機や編み機などにも引っ掛かりにくく、糸切れが生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、公知の二重撚糸装置(ダブルツイスター)などを使用して撚糸できるように、紙Aをテープ状に切断してある撚糸用素糸Bの本発明による製造装置を示し、ロール状に巻き取ってある幅広の原紙ロールCを挟持ローラ1の駆動回転で繰り出し自在に支持してある繰り出し装置2と、その繰り出し装置2から繰り出した原紙Aを一定幅のテープ状の複数の撚糸用素糸Bに切断するウオータージェット切断装置(切断手段)3と、各撚糸用素糸Bを円盤状に巻き取る巻き取り装置4とを設けてある。
【0010】
前記原紙Aは、天然繊維、合成繊維、再生繊維、無機繊維などの繊維素を水スラリー状に分散させて抄紙したもので、挟持ローラ1を通過した原紙Aに、巻き取り装置4による巻き取りで適度な張力を付与しながら、切断装置3に連続的に供給できるように設けてある。
【0011】
前記切断装置3は、油剤を添加してある水を供給する水供給ライン5に、高圧水ポンプ6とヘッダ7とを接続するとともに、複数のノズル8をテープ幅に対応する一定間隔でヘッダ7に接続して構成してあり、高圧水ポンプ6で加圧した高圧水Wを、遊転ローラ9の周面に巻き掛けられて移動する原紙Aに向けて、各ノズル8から噴射させて、例えば5mm幅程度の複数の撚糸用素糸Bに切断できるように設けてある。
【0012】
そして、図2,図3に示すように、遊転ローラ9の周面に、原紙Aの各切断箇所に沿うように周溝10を形成するとともに、各ノズル8から噴射した高圧水Wが周溝10を通過して遊転ローラ9に衝突しないように、高圧水Wの噴射方向を設定してある。
【0013】
また、切断面調整手段としての、高圧水ポンプ6の供給圧力調整手段やノズル8の遊転ローラ9に対する位置調整手段などを設けて、高圧水Wの供給圧力やノズル8と原紙Aとの高圧水噴射方向に沿う間隔などを調整することにより、撚糸用素糸Bの切断端面での繊維の毛羽立ちを多くしたり少なくしたり出来るように設けてある。
【0014】
前記油剤としては、紙の特性を損なうことなく、素糸表面の滑りを向上させることができ、かつ、素糸Bに柔軟性を付与することができるエマルジョン化された油剤が望ましく、例えば、鉱物油−陰イオン活性剤、植物油−陰イオン活性剤、動物油−陰イオン活性剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ジメチルポリシロキサン乳化物等のアニオン系の油剤や、鉱物油−非イオン活性剤、植物油−非イオン活性剤、動物油−非イオン活性剤、パラフィン乳化物等のノニオン系の油剤や、アルキルアマイドアミン誘導体、アミノ変性ポリシロキサン乳化物、オルガノポリシロキサン乳化物、パラフィン−陽イオン活性剤、フッ素樹脂乳化物等のカチオン系の油剤を使用できる。
【0015】
尚、製織用として撚糸する素糸Bを製造するには、アニオン系のアルキル硫酸エステル塩や、アルキル燐酸エステル塩をエマルジョン化した油剤が望ましく、製編用として撚糸する素糸Bを製造するには、カチオン系のアルキルアマイドアミン誘導体や、アミノ変性ポリシロキサンをエマルジョン化した油剤が望ましく、必要に応じて、撥水撥油性物質や抗菌性物質等を添加してあっても良い。
【0016】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による撚糸用素糸の製造装置は、切断した撚糸用素糸を巻き取らずに、撚糸装置に連続的に供給できるように設けてあっても良い。
2.本発明による撚糸用素糸の製造装置は、切断前の紙をノズルから噴射させる加圧液体と同じ又は同等の液体中を潜らせてから、テープ状に切断できるように切断装置を設けてあっても、液体中の紙をテープ状に切断できるように切断装置を設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】撚糸用素糸の製造装置の概略側面図
【図2】要部の側面図
【図3】要部の断面図
【符号の説明】
【0018】
3 切断手段
8 ノズル
A 紙
B 撚糸用素糸
W 加圧液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙をテープ状に切断してある撚糸用素糸の製造装置であって、
ノズルから噴射させた加圧液体で前記紙をテープ状に切断可能な切断手段を設けてある撚糸用素糸の製造装置。
【請求項2】
前記加圧液体が、水に油剤を添加した液体である請求項1記載の撚糸用素糸の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169684(P2006−169684A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365953(P2004−365953)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(596151375)川▲崎▼撚糸株式会社 (4)
【Fターム(参考)】