説明

撥水・撥油紙及びその製造方法

【解決手段】紙基材の少なくとも一方の表面上に、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けた撥水・撥油紙であって、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83に従って測定した平面部の耐油度がキット値で9以上、折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度が8以上であり、かつJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定した平面部の撥水度がR8以上であり、上記折り曲げ部の撥水度がR7以上である耐折り曲げ性に優れた撥水・撥油紙。
【効果】撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層による良好な撥水性と撥油性を具備し、しかも、紙を折り曲げた際の折り曲げ部における撥水性と撥油性の低下も少なく、折り曲げ部においても実用上問題にならない程度に維持できることから、安全性の高い、様々な揚げ物食品や油脂含有食品等の油を含む食品の包装用又は容器用等の実用的な撥水・撥油紙として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水・撥油紙及びその製造方法に関し、更に詳しくは、チョコレート、スナック菓子等の台紙、包装紙、フライドポテト、フライドチキン、ドーナッツ、クラッカー、ケーキ等の紙箱や紙袋、ハンバーガー、天プラ等の惣菜類の食品包装用途等に好適に使用し得る撥水・撥油紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油の浸透を抑制する機能を有する撥水・撥油紙は、様々な揚げ物食品や油脂含有食品等の油を含む食品の包装用又は容器用等として一般に利用されている。このような撥水・撥油紙においては、高い撥水性と撥油性及び安全性が望まれており、多くの提案がされている。しかし、最近、有機フッ素樹脂を内添した撥水・撥油紙の安全性が問題視されており、これに代わるものとして紙基材表面に撥水撥油剤層を設けたものが提案されるようになっている(特開平8−209590号公報(特許文献1)、特開平9−87994号公報(特許文献2))。
【0003】
しかし、安全性を確保するために紙基材の表面に撥水撥油剤層を設けた撥水・撥油紙においては、有機フッ素樹脂を内添した撥水・撥油紙に比較して十分な撥水性及び撥油性が得られ難い場合があり、特に、撥水・撥油紙を折り曲げて容器や台座紙等に用いる場合には、該折り曲げ部における撥水性や撥油性が低下することが指摘されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−209590号公報
【特許文献2】特開平9−87994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた撥水性と撥油性を示し、特に折り曲げた場合の該折り曲げ部においても撥水性と撥油性の低下が少なく、かつ剥離性と安全性にも優れた撥水・撥油紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、紙基材の少なくとも一方の表面上に、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けた撥水・撥油紙であって、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83に従って測定した平面部の耐油度(20℃、湿度50%の条件で測定)がキット値で9以上、折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度がキット値で8以上であり、かつJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定した平面部の撥水度がR8以上であり、上記折り曲げ部の撥水度がR7以上であることを特徴とする耐折り曲げ性に優れた撥水・撥油紙を提供する。
【0007】
本発明の撥水・撥油紙は、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を有するので、撥水性と撥油性に優れ、しかも、折り曲げた際の折り曲げ部における撥水性と撥油性の低下が小さい。従って、チョコレート、スナック菓子等の台紙、包装紙、フライドポテト、フライドチキン、ドーナッツ、クラッカー、ケーキ等の紙箱や紙袋、ハンバーガー、天プラ等の惣菜類の包装紙等に好適に使用することができる。
【0008】
また、本発明は、クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー、グラシン紙又はパーチメント紙である紙基材の少なくとも一方の表面に、水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とする撥水撥油剤を乾燥質量換算で1.0g/m2以上となるように塗工して、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けることを特徴とする撥水・撥油紙の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の製造方法では、紙基材表面上に、水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とする撥水撥油剤を塗工するので、優れた撥水性と撥油性を示す撥水・撥油紙を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の撥水・撥油紙は、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層による良好な撥水性と撥油性を具備し、しかも、紙を折り曲げた際の折り曲げ部における撥水性と撥油性の低下も少なく、折り曲げ部においても実用上問題にならない程度に維持できることから、安全性の高い、様々な揚げ物食品や油脂含有食品等の油を含む食品の包装用又は容器用等の実用的な撥水・撥油紙として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の撥水・撥油紙は、紙基材の少なくとも一方の表面上に、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を有する。
【0012】
本発明に用いる紙基材としては特に限定されず、少なくとも一方の表面に後述するシリコーン樹脂層を設けることができるものであればよく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー、グラシン紙、パーチメント紙等が挙げられる。なお、紙基材の繊維原料はセルロースやセルロース誘導体に限定されない。また、紙基材の代わりにセルロースやセルロース誘導体以外の原料からできた繊維からなる織物や不織布等も基材として使用できる。
【0013】
シリコーン樹脂層(皮膜)は、シリコーンの特徴である良好な撥水性と剥離性を有すると共に、樹脂の特徴である三次元架橋構造をもつことで良好な皮膜強度と撥油性をも有することから、撥油性、撥水性、剥離性を同時に付与することが可能となる。更に、他の有機系樹脂よりも柔軟性に優れるシリコーン樹脂は、耐折り曲げ性の良い皮膜を形成し、撥水・撥油紙が折り曲げられても良好な撥油性と撥水性を示す特徴を付与することができる。
【0014】
本発明の撥水・撥油紙は、柔軟性、撥油性、撥水性、剥離性ともに良好なシリコーン樹脂層を有することから、20℃、湿度50%の条件で測定した、平面部の耐油度(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83によるキット値)を9以上、かつ折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83によるキット値)を8以上とすることができ、折り曲げによっても耐油性は殆ど低下しない。また、平面部の撥水度(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000による)をR8以上、折り曲げた際の該折り曲げ部の撥水度(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000による)をR7以上とすることができ、折り曲げによっても撥水性は殆ど低下しない。
【0015】
本発明の撥水・撥油紙は、紙基材の少なくとも一方の表面上に、主に水系シリコーン樹脂エマルジョンからなる撥水撥油剤を乾燥質量として1.0g/m2以上、優れた撥水性と撥油性を確保し、かつ紙の柔軟性等を保持するためには好ましくは1.0〜4.0g/m2、工業的により好ましくは1.0〜2.0g/m2の範囲となるように塗工することにより得ることができる。なお、好適な塗工量は使用する紙基材の種類や用途に応じて適宜調整される。
【0016】
塗工は、例えば、キャレンダーロール、サイズプレスロール、ロールコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等の塗工機を用いて常法に従い行なうことができる。塗工回数は、1回の塗工量と目的とする塗工量を勘案して適宜選択することができる。更に、紙基材上に塗工して形成した撥水撥油剤層を、例えば80〜160℃の温度で20秒〜2分乾燥・硬化させることによりシリコーン樹脂層を形成することができる。なお、シリコーン樹脂層の厚さは、通常1〜4μm程度である。
【0017】
紙基材上にシリコーン樹脂層を形成するために使用される撥水撥油剤についてより詳しく説明する。
撥水撥油剤としては、安全性の面から水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とするシリコーン系撥水撥油剤が好ましく、形成される皮膜の撥油性、撥水性、剥離性、柔軟性に優れる以下の(A)〜(D)成分
(A)分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ジカルボン酸系硬化剤 0.5〜20質量部、
(C)シリカ 1〜15質量部、
(D)ヒドロキシル基を含まず、長鎖アルキル基、及びアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン 2〜4質量部、及び
(E)界面活性剤 エマルジョン形成有効量
からなる水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分として含む撥水撥油剤が好ましく使用される。
【0018】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個、好ましく2〜200個含有するものである。このオルガノポリシロキサンのポリシロキサンからなる主骨格は、重合度100〜10,000の主に直鎖構造からなるが、形成される皮膜の柔軟性を損なわない程度に分岐を含んでいてもよい。重合度が100未満では皮膜の折り曲げ時の撥油性が乏しいものとなり、10,000より大きいとその撥油性が低下する。好ましくは重合度1,000〜5,000である。
【0019】
末端及び側鎖の有機基(ケイ素原子に結合する有機基)は、同一又は異種の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、その一部は炭素数1〜20のアルコキシ基であってもよいが、架橋性の面から1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子に結合するヒドロキシル基を有する必要がある。
【0020】
具体的な有機基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基などが挙げられる。
【0021】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記のものなどが挙げられる。
【化1】


ここで、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。また、0≦m≦1,000、100≦n≦10,000、1≦p≦1,000である。
【0022】
このようなオルガノポリシロキサンは、平衡化反応を用いる公知の方法によって製造することができる。
【0023】
(B)成分であるジカルボン酸系硬化剤は、シリコーンの硬化皮膜を形成させる架橋剤として働く成分であり、基材との密着性を向上させる作用も有する。ジカルボン酸系硬化剤としてはジカルボン酸無水物及びその反応物が好適に使用される。
【0024】
ジカルボン酸無水物としては、例えばシュウ酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物を挙げることができる。
【0025】
ジカルボン酸無水物をアルカリ性化合物との反応物として溶解性をより向上させたり、基材との密着性を向上させたりする目的でシランカップリング剤との反応物として用いることもできる。ここでシランカップリング剤としてはテトラエチルシリケートなどのアルキルシリケート類、メチルトリエトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニル基含有アルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン、メタアクリルオキシプロピルトリエトキシシランなどのメタアクリルオキシ基含有アルコキシシランなどのオルガノアルコキシシラン類、及びこれらの縮合物などが挙げられる。
【0026】
アミノ基を含有するシランカップリング剤とジカルボン酸無水物との反応は、例えば、アミノ基/酸無水物(モル比)が0.5〜2となるような配合比により、室温又は加温下で混合することで容易に実施することができる。ジカルボン酸無水物としてはマレイン酸無水物が好ましく用いられる。
【0027】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部であり、0.5質量部より少ない場合には基材との密着が弱くなり、20質量部より多い場合には皮膜が硬くもろいものとなるため、折り曲げ時の撥油性や撥水性が低下する。より好ましくは、1〜10質量部である。
【0028】
(C)成分のシリカは、皮膜補強剤として添加するものであり、湿式法、乾式法などで製造されたシリカや、水分散物として市販されているものを使用することが可能で、その種類に制限はないが、親水性のものが好ましい。BET法による比表面積10〜1000m2/gのもの、一次粒子の平均粒径が2〜200nmのものが好適に使用される。具体的にはAEROSIL(日本アエロジル社製)、TOKUSIL(トクヤマ社製)、NIPSIL(東ソー・シリカ社製)、SYLYSIA(富士シリシア社製)、スノーテックス(日産化学社製)、ルドックス(グレース社製)、シリカドール(日本化学工業社製)、アデライトAT(旭電化工業社製)、カタロイドS(触媒化成工業社製)などが挙げられる。
【0029】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部であり、1質量部未満では形成される皮膜の強度が弱くなるため撥油性が低下し、50質量部より多い場合にはシリコーン皮膜が硬くてもろいものとなるため折り曲げ時の撥油性が低下する。より好ましくは5〜30質量部の範囲である。
【0030】
(D)成分のオルガノポリシロキサンは、ヒドロキシル基を含まず、長鎖アルキル基、及びアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンであり、シリコーン系撥油剤の塗工性を向上させる成分である。塗工時のレベリング性等を改良することで良好な平坦性や均一性を有する皮膜を形成させて、得られる撥水・撥油紙の性能を向上させるために配合するものである。
【0031】
このオルガノポリシロキサンは、重合度が5〜260の直鎖状の構造であり、末端及び側鎖の有機基(珪素原子に結合する有機基)は主に同一又は異種の炭素数1〜3のアルキル基が占めるが、塗工性向上効果を得るには、同一又は異種の炭素数4〜20の長鎖アルキル基が好ましくは1分子当たり1〜100個、より好ましくは1分子中に1〜80個、及び同一又は異種の、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基を有するアルコキシシリル基で置換された炭素数2〜3のアルキル基が好ましくは1分子当たり0.1〜30個、より好ましくは1分子中に1〜30個含まれるものが好ましく使用される。
【0032】
ここで、炭素数1〜3のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられるが、好ましくはメチル基である。炭素数4〜20の長鎖アルキル基は、具体的にはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基である。炭素数1〜6のアルコキシ基は、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基を有するアルコキシシリル基で置換された炭素数2〜3のアルキル基は、具体的には−C24−Si(OCH33、−C24−Si(OC253、−C36−Si(OCH33、−C36−Si(OC253などが挙げられる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、−C24−Si(OCH33である。
【0033】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して2〜4質量部である。2質量部未満の場合には塗工性の向上が殆ど見られず、4質量部を超えると皮膜の撥油性が低下する。
【0034】
(E)成分の界面活性剤は、上記各成分をエマルジョンの形態にするために用いるもので、その種類は特に制限はないが、例えばアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル燐酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等のカチオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0035】
この界面活性剤の配合量は、エマルジョンを形成することができる有効量であればよく、特に制限はないが、通常、(A)成分100質量部に対して1〜20質量部である。
【0036】
なお、この撥水撥油剤においては、上記成分を縮合反応により硬化させるための触媒を、必要に応じて例えば(A)成分100質量部に対して10質量部以下、特に5質量部以下で配合することが可能であるが、この撥水撥油剤の場合、(B)成分に触媒作用があるため、必ずしも触媒を配合する必要はない。
【0037】
また、この撥水撥油剤には、本発明の効果を損なわない量の範囲で、例えば、市販の紙基材用の食品安全基準を充足するシリコーン樹脂エマルジョンを混合して用いることもできる。更に、シリコーン樹脂層の平滑性等を良好にするためにシリコーン系撥水撥油剤に消泡剤等を配合することもできる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0039】
[実施例1]
A成分として直鎖状メチルポリシロキサン(重合度1000、水酸基含有量0.004モル/100g)を100g、
B成分としてマレイン酸無水物/3−アミノプロピルトリエトキシシラン(モル比)=1/1の反応物を1g、
C成分として乾式未処理シリカ(BET法比表面積200m2/g、一次平均粒径10nm)を15g、
D成分として直鎖状ポリシロキサン(重合度30、有機基(珪素原子に結合する有機基)の10%がオクチル基、2%がプロポキシ基、残りはメチル基)を3g、
ラウリル硫酸ナトリウムを10g、水129gを混合しホモミキサーで均一に乳化して均一な白色の水系シリコーン樹脂エマルジョンを調製し、有効成分50%のシリコーン系撥水撥油剤とした。
【0040】
原紙として、機能剤を塗工していない白板紙原紙(坪量350g/m2)を用いた。まず、前記原紙の一方の表面上に、ワイヤーバー#5を用いてシリコーン系撥水撥油剤を乾燥質量換算で1.5〜2.0g/m2となるように塗工した後、120℃、30秒で乾燥・硬化させてシリコーン系樹脂層を形成することで撥水・撥油紙を作製した。
【0041】
得られた撥水・撥油紙について、以下の方法に従って耐油度、撥水度、剥離性を測定した。結果を表1に記載した。
【0042】
平面部の耐油度:J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83(キット法)によって塗工面を測定した。測定は目視により行なった。
折り曲げ部の耐油度:塗工面が外面となるようにして紙試料を2つに折り曲げ、その折り曲げ部分上から幅1.0mm、深さ0.7mm、圧力2.5kgf/cm2・secの条件で押圧して完全に折り目を付け、その後、紙試料を広げ、折り目部分の耐油度をJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83(キット法)によって測定した。測定は目視により行なった。
【0043】
平面部の撥水度:J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000によって塗工面を測定した。測定は目視により行なった。
折り曲げ部の撥水度:塗工面が外面となるようにして紙試料を2つに折り曲げ、その折り曲げ部分上から幅1.0mm、深さ0.7mm、圧力2.5kgf/cm2・secの条件で押圧して完全に折り目を付け、その後、紙試料を広げ、折り目部分の撥水度をJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000によって測定した。測定は目視により行なった。
【0044】
剥離性:塗工面に18mm×35mmセロテープ(ニチバン(株)登録商標)を貼り、2kgテープローラで1往復して圧着した。25℃で1時間放置後、セロテープ(登録商標)を手で剥がして剥離性を評価した。剥離音もなく滑らかに容易に手で剥がすことができたものを剥離性良好として○で、剥離音がしたり、手で剥がすには重く感じたりしたものを剥離性不足として×で示した。
【0045】
[比較例1]
シリコーン系撥水撥油剤を塗工していない白板紙原紙(坪量350g/m2)を実施例1と同様に評価した。
【0046】
[比較例2]
D成分を含まない水系シリコーン樹脂エマルジョンを調製し、有効成分50%のシリコーン系撥水撥油剤として使用した以外は実施例1と同様に評価した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、本発明の撥水・撥油紙は、優れた耐油度、撥水度、剥離性を示し、かつ折り曲げ部においても平面部に比べて遜色なく、耐油度及び撥水度の低下が十分小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の表面上に、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けた撥水・撥油紙であって、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.41−83に従って測定した平面部の耐油度(20℃、湿度50%の条件で測定)がキット値で9以上、折り曲げた際の該折り曲げ部の耐油度がキット値で8以上であり、かつJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定した平面部の撥水度がR8以上であり、上記折り曲げ部の撥水度がR7以上であることを特徴とする耐折り曲げ性に優れた撥水・撥油紙。
【請求項2】
上記シリコーン樹脂層を、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ジカルボン酸系硬化剤 0.5〜20質量部、
(C)シリカ 1〜50質量部、
(D)ヒドロキシル基を含まず、長鎖アルキル基、及びアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン 2〜4質量部、及び
(E)界面活性剤 エマルジョン形成有効量
からなる水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とする撥水撥油剤を紙基材表面上に塗工して形成したことを特徴とする請求項1記載の撥水・撥油紙。
【請求項3】
クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー、グラシン紙又はパーチメント紙である紙基材の少なくとも一方の表面に、水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とする撥水撥油剤を乾燥質量換算で1.0g/m2以上となるように塗工して、撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けることを特徴とする撥水・撥油紙の製造方法。
【請求項4】
上記撥水撥油剤が、
(A)1分子中にケイ素原子に結合するヒドロキシル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ジカルボン酸系硬化剤 0.5〜20質量部、
(C)シリカ 1〜50質量部、
(D)ヒドロキシル基を含まず、長鎖アルキル基、及びアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン 2〜4質量部、及び
(E)界面活性剤 エマルジョン形成有効量
からなる水系シリコーン樹脂エマルジョンを主成分とするものであることを特徴とする請求項4記載の撥水・撥油紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−95251(P2008−95251A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279815(P2006−279815)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(591069709)三葉化工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】