説明

撥水処理方法およびその方法により処理された基材

【課題】シランカップリング剤を用いた基材の浸漬法による撥水処理において、溶媒の種類やシランカップリング剤の濃度を適切に調整することで、高度に平滑な処理表面とそれに伴う高度な撥水性および水滴除去性を付与する。
【解決手段】アルキルシラン類からなる撥水剤を芳香族系溶媒を用いて溶解させ、前記アルキルシラン類の濃度を25μMよりも高く100mMよりも低い値とした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施す、あるいは、フルオロアルキルシラン類からなる撥水剤をフッ素系溶媒を用いて溶解させ、前記フルオロアルキルシラン類の濃度を0.1〜2mMとした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施すことを特徴とする撥水処理方法、およびその方法により処理された基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハーやガラス等の基材に高度な撥水性と水滴除去性を付与する方法およびその方法により処理された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撥水処理に対して、高い水接触角だけでなく良好な水滴除去性が要求されるようになってきている。ところが、水接触角に比べて水滴除去性は向上が難しく、シランカップリング剤を用いたガラス等の平滑表面の撥水処理において、処理剤の種類とともに処理方法にも大きく依存することが知られている。この原因としては接触角への影響が少ないような小さい表面粗さが転落角などの水滴除去性に影響することが報告されており(非特許文献1)、従って高度な平滑性を達成することが重要な意味を持つと考えられる。また、耐摩擦などの観点からも、凹凸が少なく平滑であることが望ましい。近年では、M. Liebermanらにより長鎖アルキル基を有するオクタデシルトリクロロシランを用いた平滑な表面(単分子膜)作成が報告されているが(非特許文献2)、水滴除去性に関わる検討に至っていない。一方、フルオロアルキルシランを用いた処理においては、自己組織化単分子膜作成と言いながらも実際には平滑にならずに微粒子状や鱗状等の付着となり、しかも処理時間に応じて膜厚が分子サイズに比して大きくなる傾向が強い。このフルオロアルキルシランでは、水接触角は高いものの、オクタデシルシラン処理に比べて水滴転落角が高くしかも水滴転落速度が遅い。かかる状況から、高度な平滑性を達成する表面処理方法の開発が求められている。
【非特許文献1】T. Morimoto, Y. Sanada, H. Tomonaga, Thin Solid Films, 2001, 392, p214
【非特許文献2】Langmuir 2003, 19, p1159-1167
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、シランカップリング剤を用いた基材の浸漬法による撥水処理において、溶媒の種類やシランカップリング剤の濃度を適切に調整することで、高度に平滑な処理表面とそれに伴う高度な撥水性および水滴除去性を付与することが可能な撥水処理方法、およびその方法により処理された基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る撥水処理方法は、長鎖アルキル基を有するアルキルシラン類からなる撥水剤を芳香族系溶媒を用いて溶解させ、前記アルキルシラン類の濃度を25μMよりも高く100mMよりも低い値とした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施すことを特徴とする方法からなる。
【0005】
上記アルキルシラン類からなる撥水剤としては、例えばオクタデシルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、上記芳香族系溶媒として撥水剤を分子溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。このような芳香族系溶媒としては、常温常圧で液体である芳香族化合物の水飽和物が好ましく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(オルト、メタ、パラ体およびそれらの混合物)、トリメチルベンゼン(1,2,3−、1,2,4−、1,3,5−、およびそれらの混合物)、エチルベンゼンやプロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、およびこれらの混合物などの化合物を水飽和させたものを用いることができる。さらに、上記浸漬は、例えば、1時間以上2週間以下、好ましくは5時間以上2日間以下、行うことが望ましい。
【0006】
また、本発明に係る撥水処理方法は、フルオロアルキルシラン類からなる撥水剤をフッ素系溶媒を用いて溶解させ、前記フルオロアルキルシラン類の濃度を0.1〜2mMとした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施すことを特徴とする方法からなる。フルオロアルキルシラン類のより好ましい濃度は0.1〜1mMである。
【0007】
上記フルオロアルキルシラン類からなる撥水剤としては、例えば1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、上記フッ素系溶媒として撥水剤を分子溶解可能な溶媒を用いることが好ましい。このようなフッ素系溶媒としては、常温常圧で液体であるフッ素系化合物が好ましく、例えば、α,α,α−トリフルオロトルエン、1,2−、1,3−、ないし1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンおよびそれらの混合物、トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン(1,2,3−、1,2,4−、1,3,5−、およびそれらの混合物)、ポリフルオロベンゼン(C6 6 −nFn;n=1〜6)、パーフルオロトルエン、およびこれらの混合物などを用いることができる。さらに、上記浸漬は、例えば、1時間以上1週間以下、好ましくは4時間以上3日間以下、行うことが望ましい。
【0008】
このような本発明に係る撥水処理方法においては、フルオロアルキルシランおよびアルキルシラン類のシランカップリング剤を用いた基材の浸漬法による撥水処理において、溶媒の種類およびシランカップリング剤の濃度を適切に調整することで、高度に平滑な処理表面とそれに伴う高度な撥水性および水滴除去性を付与することができる。
【0009】
用いる溶媒に求められる条件はシランカップリング剤を良好に溶解させることであり、またさらにシランカップリング剤の濃度を適切に調整する必要がある。これらは、界面活性剤としての機能を持つシランカップリング剤を分子溶解させて凝集(溶液中でのミセル化)を防ぐとともに、脱水縮合反応速度を適度に調整する意味がある。これらの調整により、シランカップリング剤同士の反応を抑制し、基材表面と効率的に反応させることができるようになり、結果として高度に単分子膜的で平滑な撥水表面を得ることができる。
【0010】
このような撥水表面は、アルキルシラン類による処理においては、水を飽和させたキシレン等の芳香族系溶媒を用いて,アルキルシラン類の濃度が例えば25mM程度である溶液を用いることで達成される。フルオロアルキルシラン類による処理においては、例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶媒を用いて,フルオロアルキルシラン類の濃度を例えば0.1〜1.0mMとすることで達成される。
【0011】
したがって、基材に撥水処理を施す場合には、例えば、洗浄、前処理した基材を前記溶液に浸漬した後、有機溶剤等により洗浄し、次いで加熱乾燥することで、上述の如き、高度に単分子膜的で平滑な撥水表面を得ることができる。とくに、この洗浄、前処理には、エキシマランプによる紫外光照射を含むことが好ましく、その場合には、後述の如く、光源からの距離や照射時間等の条件を最適化することが好ましい。
【0012】
このような本発明に係る撥水処理方法により撥水処理された基材においては、従来の方法では同時に達成できない、基材の面平均表面粗さRaが1nm以下、水接触角が100°以上、30mgの水滴の転落角が15°以下であり、しかも傾斜角35°の基材面上において30mgの水滴が等加速度的に転落する表面を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に係る撥水処理方法によれば、溶媒の種類およびシランカップリング剤の濃度を適切に調整することにより、高度に平滑な処理表面とそれに伴う高度な撥水性および水滴除去性を付与することができ、目標とする望ましい表面を有する基材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、実施例(試験)に基づいて説明する。
試験1
Octadecyltrimethoxysilane(オクタデシルトリメトキシシラン)(ACROS、以下、ODSと略称する。) 0.94 gを、水飽和キシレン(キシレン400 mLに水100 mLを加えて撹拌し1日以上放置したものの上澄みを用いた) 100 mLに溶解させた溶液(25 mM)に、シリコンウェハーを浸漬させた。シリコンウェハーは、水およびアセトンで順に洗浄し乾燥させたのち、エキシマランプを大気中10分照射することで、洗浄したものを用いた。あるいは、30%過酸化水素水と濃硫酸の3:7混合溶液に90℃で30分間浸漬させ、蒸留水で洗浄・乾燥させたシリコンウェハーを用いても以後の結果に大きな変化はなかった。ODS溶液へ浸漬後、塩化メチレン、アセトン、水で順に洗浄した後、塩化メチレン中で10分間超音波洗浄し、その後100°Cにて30分間乾燥させた。こうして得られたサンプルについて、水接触角、水滴転落角、水滴転落速度、AFMによる表面観察等を行った。同様にして、25 mMのメタノール(MeOH)溶液、25 mMのキシレン溶液についても同様の検討を行った。また、Octadecyltrichlorosilaneを用いて、濃度25mMにおいて、キシレン中および水飽和キシレン中で同様の反応を行った。
【0015】
表面粗さRaは、AFMにより測定した5μmx 5μmの範囲での平均粗さを用いた。膜厚は、分光エリプソメトリーにより測定した。水接触角は、接触角計(協和界面科学社製、Dropmaster500)を用いて測定し、転落角測定は同社製の接触角計および転落角測定システム(SA11)を用いた。転落加速度は、デジタルビデオカメラ(Sony TRV50、1/30sec)を用いて転落を撮影し、画像を解析することで得た。
【0016】
以上のODSの結果を表1にまとめた。溶媒がメタノールの場合では、ODSがメタノールに溶解しにくいためにODSの自己縮合によって溶液自体が次第に白濁してゆき、基板との反応の進行が遅いことがわかった。キシレン溶液中では、比較的良好な結果だが、Raが大きくなり、水滴転落加速度が比較的小さい傾向が見られた。水飽和キシレンでは、浸漬時間とかかわりなくRaは小さく、5h以降では水接触角・転落角も良好であったが、転落加速度は5hをピークに時間経過とともに低下する傾向が見られた。
【0017】
また、表2にOctadecyltrichlorosilane(オクタデシルトリクロロシラン)の場合の結果をまとめたが、Octadecyltrichlorosilaneの場合では、水接触角と転落加速度は良好であるが、Raにはばらつきが出やすく、転落角に改善が見られなかった。
【0018】
これらの結果をまとめると、ODS(メトキシシラン型)を用い水飽和キシレンを溶媒として、5h程度の浸漬が総合的に最も良い結果を与えた。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
試験2
次に、溶媒の濃度の影響を調べた。ODS (octadecyltrimethoxysilane)について、溶媒を水飽和キシレンに固定し、ODS濃度が100 mM、2.5 mM、250 μM、25μMの溶液を用いて、それぞれ表面処理を行った。処理手順・評価測定方法等は試験1と同様である。試験の結果、表3に示すような結果が得られた。
【0022】
濃度100 mMの場合
反応の進行が遅く、1週間の浸漬によっても依然不十分な処理状態にあり、求める性能に至らなかった。また、処理溶液には時間の経過とともに白濁・沈殿が見られ、望ましくない副反応によりODSが消費されていることがわかった。従って、100 mMより低いことが望ましい。
【0023】
濃度2.5 mMの場合
反応の進行が若干遅かったが、1週間の浸漬で、ほぼ期待する性能に達した(転落角がわずかに劣る)。
【0024】
濃度250 μMの場合
1〜2日の浸漬により良好な結果を得た。
【0025】
濃度25μMの場合
反応の進行が遅く、1週間の浸漬によっても依然不十分な処理状態にあり、求める性能に至らなかった。従って、25μMより高いことが望ましい。
【0026】
したがって、これらの結論として、ODSの濃度範囲は、25μMより高く、100 mMより低いことが望ましい。
【0027】
【表3】

【0028】
試験3
1H,1H,2H,2H-Perfluorodecyltrimethoxysilane(GE東芝シリコーンTSL8233、以下、FAS17と略称する。) 7.4 mgを1,3-bis(trifluoromethyl)benzene(和光純薬、以下F6Xy) 100 mLに溶解させた溶液(130 μM)に、シリコンウェハーを浸漬させた。シリコンウェハーは、水およびアセトンで順に洗浄し乾燥させたのち、エキシマランプを大気中10分照射することで、洗浄したものを用いた。浸漬後、塩化メチレン、アセトン、水で順に洗浄し、残った水滴を吹き飛ばした後に100°Cにて30分間乾燥させた。得られたサンプルについて、水接触角、水滴転落角、水滴転落速度、AFMによる表面観察を行った。同様にして、FAS17濃度が25 mM、1.3 mM、13μMのF6Xy溶液、25 mMのメタノール溶液、25 mMのキシレン溶液、25 mMの水飽和キシレン溶液についても同様の検討を行った。
【0029】
以上のFAS17の結果を表4にまとめた。メタノール中では、FAS17の溶解性が悪く、基板との反応も遅いうえに目視で白濁が見られた。キシレン中では、Ra、転落角ともに大きく、基板が白濁しやすかった。水飽和キシレンでは、浸漬1d程度までは比較的良好だが、Raにはばらつきが大きく、転落角が大きく転落加速度も大きな向上が見られなかった。
【0030】
溶解性のよいF6Xyを用いた場合、濃度1.3mMでは、2hで転落加速度には改善が見られたが、Raと転落角には向上が見られなかったが、濃度を130μMとした場合、浸漬時間を長くしても外観上白濁が見られずRa・膜厚は一定に保たれる結果となり、転落角および転落加速度は浸漬1dにおいてピークを示した。濃度をさらに薄めて13μMとした場合は、基板との反応はほとんど進行しなかった。
【0031】
これらの結果においては、F6Xyを溶媒として濃度を130μMとし、1d程度の浸漬が総合的に最も良い結果が得られた。
【0032】
【表4】

【0033】
上記のような本発明に係る撥水処理を行うにあたっては、とくに基材の前処理が重要になる。撥水処理前に基材表面を溶剤等により洗浄したものをさらにエキシマランプ照射により洗浄・活性化させる際、特に光源からの距離、照射時間によって結果が大きく左右される。例えば、光源からの距離が1cm以上である場合、照射時間を20分程度に長くしてもその後の撥水処理はかなり遅かったが、5mm以下にした場合には10分程度で良好な結果を得た。したがって、前処理であるエキシマランプ照射条件が異なるとその後の撥水処理の結果にばらつきが生じることもあるが、この条件を最適化するとにより、本発明に係る撥水処理を再現性良くしかも効率的に行うことができるようになる。以下に、とくに、このエキシマランプ照射条件について行った試験・検討結果について説明する。
【0034】
試験において、エキシマランプ照射条件を変えて検討を行った。具体的には、光源からの距離(約5mmおよび約15mm)および照射時間を変えて、その後の撥水処理の検討(水接触角測定)を行った。光源からの距離が約15mmの場合、照射時間が10〜20分では、十分な撥水性を付与するためには1週間以上の浸漬処理が必要であった。光源からの距離が約5mmの場合、1日程度の浸漬処理により十分な撥水性を付与するためには、照射時間が10分程度で十分であった。
【0035】
これは、次のような理由によると考えられる。すなわち、シランカップリング剤を基材上に平滑に反応させるためには、表面の汚染物が除去されしかも基材表面が活性化(シラノール等の反応性官能基を高密度に発生させる)されていなければならない。汚染物除去としては通常のUV−オゾン処理として光源からの距離に対する依存性が小さいが、基材表面を活性化させるためには光源からの距離を短くしてエキシマランプからの真空紫外光が到達しやすくする必要があることが示唆される。
【0036】
つまり、洗浄、前処理操作により、本発明に係る撥水処理の結果が左右される。まず、水および塩化メチレンによる洗浄では、ホコリなどの微粒子および油脂類を除く必要がある。超音波洗浄後、流し洗いにてこれらの除去をするのがより効果的である。引き続いてのエキシマランプによる洗浄操作では、雰囲気、光源からの距離、照射時間によって結果が大きく左右される。雰囲気は大気ないし酸素雰囲気が望ましく、不活性ガス雰囲気あるいは減圧下での操作は効果が低下する。光源からの距離は短い方が望ましく、照射時間との兼ね合いではあるが1cm以下、より望ましくは5mm以下である。照射時間は、距離との兼ね合いではあるが、10分以上が望ましい。これらの洗浄操作の結果として、水接触角が5度以下となることが望ましい。
【0037】
洗浄、特にエキシマランプ照射が不十分であった場合、表面処理により求められる効果を得るための浸漬処理時間が長くなるとともに均質な単分子膜が得られにくくなる。また、基材としてシリコンウェハーではなくガラスを用いた場合、エキシマランプ照射時間を長くする方が望ましい。光源からの距離が5mm程度である場合、シリコンウェハーでは10分以上照射することが望ましいが、ガラスの場合では20分以上の照射が望ましい。
【0038】
図1に、エキシマランプ照射条件の異なるFAS17処理(0.13mM、溶媒はF6Xy)の結果を示す。縦軸が水接触角(WCA)、横軸が浸漬時間である。光源からの距離の短い場合(約5mm)に比べて、光源からの距離が長い場合(約15mm)には反応が格段に遅くなった。
【0039】
さらに、浸漬処理を行う際の容器にも注意が必要である。容器としては、シランカップリング剤と反応しない素材であることが望ましく、さらに吸着が小さい方が良い。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン製の容器であり、フッ素加工してあるものがさらに望ましい。ガラス容器を用いることもできるが、あらかじめこのガラス容器の表面をシランカップリング剤で処理しておくか、あるいは浸漬溶液濃度を高くしておく必要がある。
【0040】
同様にして、少ない溶液量で大面積の処理を行おうとする場合は、浸漬処理過程において処理溶液濃度が大きく変化するため望ましくない。
【0041】
前述の如く、特にエキシマランプ照射条件を最適化することにより、本発明に係る撥水処理を再現性良くしかも効率的に行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る撥水処理方法は、高度な撥水性と水滴除去性が求められるあらゆる基材に対して適用でき、とくに、シリコンウェハーやガラス等の基材に用いて好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エキシマランプ照射条件の最適化検討のために行った試験結果を示す、水接触角と浸漬時間との関係図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖アルキル基を有するアルキルシラン類からなる撥水剤を芳香族系溶媒を用いて溶解させ、前記アルキルシラン類の濃度を25μMよりも高く100mMよりも低い値とした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施すことを特徴とする撥水処理方法。
【請求項2】
前記アルキルシラン類からなる撥水剤としてオクタデシルトリメトキシシランを用いる、請求項1の撥水処理方法。
【請求項3】
前記芳香族系溶媒として前記撥水剤を分子溶解可能な溶媒を用いる、請求項1または2の撥水処理方法。
【請求項4】
前記浸漬を1時間以上2週間以下行う、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水処理方法。
【請求項5】
フルオロアルキルシラン類からなる撥水剤をフッ素系溶媒を用いて溶解させ、前記フルオロアルキルシラン類の濃度を0.1〜2mMとした溶液を調製し、該溶液に基材を浸漬して基材表面に撥水処理を施すことを特徴とする撥水処理方法。
【請求項6】
前記フルオロアルキルシラン類からなる撥水剤として1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシランを用いる、請求項5の撥水処理方法。
【請求項7】
前記フッ素系溶媒として前記撥水剤を分子溶解可能な溶媒を用いる、請求項5または6の撥水処理方法。
【請求項8】
前記浸漬を1時間以上1週間以下行う、請求項5〜7のいずれかに記載の撥水処理方法。
【請求項9】
洗浄、前処理した基材を前記溶液に浸漬した後、有機溶剤等により洗浄し、次いで加熱乾燥する、請求項1〜8のいずれかに記載の撥水処理方法。
【請求項10】
前記洗浄、前処理が、エキシマランプによる紫外光照射を含む、請求項9の撥水処理方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により撥水処理された基材。
【請求項12】
面平均表面粗さRaが1nm以下である、請求項11の基材。
【請求項13】
水接触角が100°以上である、請求項11または12の基材。
【請求項14】
30mgの水滴の転落角が15°以下である、請求項11〜13のいずれかに記載の基材。
【請求項15】
傾斜角35°の基材面上において30mgの水滴が等加速度的に転落する、請求項11〜14のいずれかに記載の基材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−283011(P2006−283011A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60957(P2006−60957)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】