説明

撮像ユニット、及び硬貨識別装置

【課題】被写体の表面の性状に左右されずに被写体の表面の凹凸パターンと表面状態を確実にとらえることのできる撮像ユニットを提供する。
【解決手段】表面に凹凸パターンを有する被写体を撮像する撮像ユニットは、前記被写体の表面を照明する照明光を一定の出力で出射する面光源と、前記被写体の表面で反射された反射光を受光する撮像手段と、前記面光源から出射される前記照明光と前記撮像手段に入射する前記反射光とが交わる箇所に配置されたビームスプリッタと、を備え、前記面光源から出射された前記照明光は、前記ビームスプリッタを介して前記被写体の表面に入射し、前記被写体の表面で反射された前記反射光は、前記ビームスプリッタを介して前記撮像手段に入射し、前記被写体の表面に入射する前記照明光は、前記被写体の表面に垂直に入射する平行光と、拡散光とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像ユニット、及び硬貨識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨識別装置として、硬貨の表面を撮像し、取得された画像にあらわれる硬貨表面の凹凸パターンから硬貨を識別するものが知られている。そのような硬貨識別装置は、一般に、複数の硬貨を順次搬送し、その搬送経路に設けられる撮像箇所を硬貨が通過する際に、その硬貨を撮像ユニットで撮像する。そして、撮像ユニットは、硬貨表面を照明する照明光を出射する光源と、硬貨表面で反射された反射光を受光する撮像手段と、を備えている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された撮像ユニットにおいて、光源は、硬貨表面の法線方向から外れて配置されており、撮像手段は、硬貨表面の法線方向に配置されている。光源から出射された照明光は、硬貨表面に斜めに入射し、撮像手段は、主として硬貨表面の凹凸パターンのエッジ部分で反射された反射光を受光する。この撮像ユニットで取得される画像には、硬貨表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とでコントラストが生じる。しかし、この撮像ユニットでは、硬貨表面の凹凸パターンのエッジ部分で反射された反射光を撮像手段で受光するため、硬貨表面の汚損状態や色を検出することは困難である。
【0004】
特許文献2に記載された撮像ユニットにおいて、光源には平行光を出射する面光源が用いられ、面光源は、硬貨表面の法線方向に配置されている。面光源と硬貨との間には、ハーフミラーが設けられている。そして、撮像手段は、硬貨表面の法線方向に進みハーフミラーで反射される光線の光路に配置されている。面光源から出射された照明光(平行光)は、ハーフミラーを透過して硬貨表面に垂直に入射する。撮像手段は、主として凹凸パターンのエッジ部分を除く硬貨表面で反射され、且つハーフミラーで反射された反射光を受光する。この撮像ユニットで取得される画像には、硬貨表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とでコントラストが生じる。さらに、この撮像ユニットでは、硬貨表面の汚損状態や色を検出することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−319911号公報
【特許文献2】特開平6−150104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載された撮像ユニットでは、硬貨表面の汚損が酷く、或いは硬貨表面が拡散面である場合に、硬貨表面の輝度が全体的に不足し、取得される画像において硬貨表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とのコントラストが不明瞭となり識別できないことがある。このような場合の対処として硬貨表面の性状に応じて光源の出力を都度調整したのでは、複数の硬貨を順次撮像する硬貨識別装置にあっては、識別処理速度の低下を招く。
【0007】
本発明は、光源の出力は一定に保ちつつ、被写体の表面の性状に左右されずに被写体の表面の凹凸パターンを確実にとらえることのできる撮像ユニットを提供することを目的とし、また、識別処理速度に優れる硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 表面に凹凸パターンを有する被写体を撮像する撮像ユニットであって、前記被写体の表面を照明する照明光を一定の出力で出射する面光源と、前記被写体の表面で反射された反射光を受光する撮像手段と、前記面光源から出射される前記照明光と前記撮像手段に入射する前記反射光とが交わる箇所に配置されたビームスプリッタと、を備え、前記面光源から出射された前記照明光は、前記ビームスプリッタを介して前記被写体の表面に入射し、前記被写体の表面で反射された前記反射光は、前記ビームスプリッタを介して前記撮像手段に入射し、前記被写体の表面に入射する前記照明光は、前記被写体の表面に垂直に入射する平行光と、拡散光とを含む撮像ユニット。
(2) 硬貨を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記硬貨の表面を撮像する撮像ユニットと、前記撮像ユニットにより取得された画像に基づいて前記硬貨を識別する識別手段と、を備え、前記撮像ユニットは、上記(1)の撮像ユニットである硬貨識別装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像ユニットは、平行光と拡散光とを含む照明光を被写体の表面に照射する。拡散光によって被写体の表面全体の輝度が確保され、それにより、平行光で生じる被写体の表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とのコントラストが明瞭となる。よって、光源の出力は一定に保ちつつ、被写体の表面の性状に左右されずに被写体の表面の凹凸パターンを確実にとらえることができる。そして、これを備えた硬貨識別装置においては、識別処理速度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を説明するための硬貨識別装置の一例を示す図。
【図2】図1の硬貨識別装置の識別系のブロックダイアグラムを示す図。
【図3】本発明の実施形態を説明するための撮像ユニットの一例であって、図1の硬貨識別装置の撮像ユニットを示す図。
【図4】図3の撮像ユニットの面光源の一例を示す図。
【図5】硬貨の表面に入射する照明光及び硬貨の表面で反射された反射光を模式的に示す図。
【図6】図3の撮像ユニットの変形例を示す図。
【図7】本発明の実施形態を説明するための撮像ユニットの他の例を示す図。
【図8】硬貨の表面を撮像して得られる画像の輝度分布を示す図。
【図9】図8の輝度分布の画像を撮像する際の照明光の照度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、硬貨識別装置の一例を示し、図2は、図1の硬貨識別装置の識別系のブロックダイアグラムを示す。
【0012】
図1及び図2に示す硬貨識別装置1は、硬貨2を搬送する搬送手段3と、搬送される硬貨2を検知する検知手段4と、搬送される硬貨2の表面を撮像する撮像ユニット5と、撮像ユニット5により取得された画像に基づいて硬貨2を識別する識別手段6と、を備えている。
【0013】
搬送手段3は、硬貨2の搬送経路を規定する搬送テーブル10と、一対のプーリ11と、一対のプーリ11に架け渡された無端ベルト12と、を含んでいる。一対のプーリ11は、搬送テーブル10の延在方向の両端部にそれぞれ配置されており、図示しないモータで駆動される。一対のプーリ11に架け渡された無端ベルト12は、搬送テーブル10との間に硬貨2を巻き込むことができる程度の適宜な隙間をおいて、搬送テーブル10に対向して配置されている。
【0014】
搬送経路の上流側にあたる搬送テーブル10の一方の端部(以後、上流側端部という)10aには、硬貨識別装置1の図示しない硬貨投入口に投入された複数の硬貨が順次供給される。搬送テーブル10の上流側端部10aに供給された硬貨2は、前記モータ及び一対のプーリ11によって一定速度で回転駆動される無端ベルト12と搬送テーブル10との間に巻き込まれ、無端ベルト12との摩擦によって無端ベルト12に引きずられながら搬送テーブル10上を移動し、搬送経路に沿って搬送テーブル10の下流側端部10bへ搬送される。
【0015】
撮像ユニット5は、搬送テーブル10の下面側、即ち無端ベルト12のある側とは反対側にあって、搬送経路の中流域を臨むように配置されている。搬送経路の中流域にあたる搬送テーブルの中央部には開口が形成されており、この開口には、撮像ユニット5の筐体20の一部をなす板状の透明部材21が嵌め込まれている。透明部材21は、例えばサファイアガラスなどで形成され、その表面は、搬送テーブル10の上面と面一となっており、搬送経路に沿って搬送される硬貨2は、透明部材21上を通過する。搬送経路における透明部材21上の箇所が撮像箇所となり、撮像ユニット5は、搬送される硬貨2が撮像箇所を通る際に、その硬貨2を撮像する。
【0016】
検知手段4は、搬送される硬貨2が撮像箇所を通るタイミングで、その硬貨2を検知する。検知手段4は、図示の例では、一組の発光素子31及び受光素子30を含んでいる。発光素子31は、撮像ユニット5に組み込まれ、透明部材21に向けて光を出射する。発光素子31としては、例えばLED(Light Emitting Diode)などが用いられる。受光素子30は、搬送テーブル10の上面側にあって、発光素子31と対向するように配置されており、発光素子31から出射されて透明部材21を透過した光を受光する。受光素子30としては、例えばフォトダイオードなどが用いられる。硬貨2が撮像箇所にあるとき、発光素子31から受光素子30に至る光が硬貨によって遮られ、検知手段4は撮像箇所にある硬貨2を検知する。撮像ユニット5は、検知手段4が硬貨を検知するのに同期して撮像を行う。なお、図示の例では、一組の発光素子31及び受光素子30は撮像箇所の下流域に配置されているが、それらの位置は特に限定されず、例えば撮像箇所の上流域に配置されていてもよい。
【0017】
識別手段6は、メモリ40と、画像処理部41と、識別処理部42と、を含んでいる。メモリ40は、種々の硬貨について、その表面の凹凸パターンに関する凹凸パターンデータを含む硬貨データを記憶している。画像処理部41は、撮像ユニット5で撮像された硬貨2の表面の画像データが入力される。そして、画像処理部41は、この画像データを解析して、凹凸パターンデータを含む撮像硬貨データを生成する。識別処理部42は、画像処理部41で生成された撮像硬貨データが入力される。そして、識別処理部42は、メモリ40に記憶された種々の硬貨の硬貨データから、撮像画像データに合致する硬貨データを抽出して、撮像ユニット5で撮像された硬貨2を識別する。
【0018】
硬貨データ及び撮像硬貨データとしては、硬貨の表面の凹凸パターンデータの他に、例えば硬貨の表面の色に関する色度データや明度データを含んでもよい。色度データは、凹凸パターンとともに硬貨を識別するのに用いることができる。また、色度データ及び明度データを用いて、硬貨の表面の汚損状態を検出することもできる。
【0019】
図3は、図1の硬貨識別装置1の撮像ユニット5を示す。
【0020】
図3に示す撮像ユニット5は、面光源50と、撮像手段51と、ビームスプリッタ52と、を備えている。
【0021】
面光源50は、撮像する硬貨2の表面を照明する照明光を一定の出力で出射する。照明光は、撮像箇所の全域、つまりは透明部材21の全面にわたって実質的に均一な照度とされている。面光源50の詳細な構成については後述する。
【0022】
撮像手段51は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子53と、この固体撮像素子53の受像面に結像する結像光学系54とを含んでいる。撮像手段51は、硬貨2の表面で反射された反射光を受光する。
【0023】
ビームスプリッタ52は、入射する光の一部を透過し、残りを反射するものであって、典型的には透過と反射との割合が等しいハーフミラーが用いられる。
【0024】
ビームスプリッタ52は、面光源50から出射される照明光と、撮像手段51に入射する反射光とが交わる箇所に配置されている。そして、面光源50から出射された照明光は、ビームスプリッタ52を介して硬貨2の表面に入射し、硬貨2の表面で反射された反射光は、ビームスプリッタ52を介して撮像手段51に入射する。
【0025】
より詳細には、ビームスプリッタ52は、硬貨2に対して、その表面の法線方向に位置している。面光源50は、硬貨2の表面の法線方向に進みビームスプリッタ52で反射される光の光路に配置されており、撮像手段51は、硬貨2の表面の法線方向に進みビームスプリッタ52を透過する光の光路に配置されている。面光源50から出射されてビームスプリッタ52に入射した照明光は、その一部がビームスプリッタ52で反射されて硬貨2の表面に入射する。硬貨2の表面で反射されてビームスプリッタ52に入射した反射光は、その一部がビームスプリッタ52を透過して撮像手段51に入射する。つまり、この撮像ユニット5は、同軸落射照明により撮像する。
【0026】
面光源50から出射される照明光は、平行光と、拡散光とを含む。そのような照明光を出射する面光源の一例を以下に説明する。
【0027】
図4は、図3の撮像ユニット5の面光源50を示す。
【0028】
図4に示す面光源50は、いわゆるエッジライト方式の面光源であり、光源素子60と、導光板61と、拡散フィルム63と、を有している。
【0029】
光源素子60としては、例えば白色光を出射する冷陰極管や白色LEDなどが用いられ、導光板61の側面に沿って配置される。なお、上述した識別手段6による硬貨の識別において、硬貨の表面の色に関するデータ(色度データ、及び明度データ)が不要であるならば、単色光を出射する光源素子であってもよい。
【0030】
導光板61は、例えばアクリルなどで形成され、その下面には、微細なプリズムパターン62が形成されている。光源素子60から出射された光は、導光板61の側面に入射して導光板61内に導かれ、導光板61の下面のプリズムパターン62で反射されて、導光板61の上面から、その法線方向に出射される。
【0031】
拡散フィルム63は、導光板61の出射面である上面に重ねられ、面光源50の出射面を形成している。導光板61の上面から出射された光は、拡散フィルム63を通ることにより、その一部が拡散される。
【0032】
以上のように構成された面光源50から出射される照明光は、導光板61の特性と拡散フィルム63の特性とが組み合わされることにより、上述の通り、その出射面の法線方向に進む平行光と、拡散光とを含む。なお、照明光に拡散光を含むことは、この照明光が照射される撮像箇所における照度分布の均一化に寄与する。
【0033】
面光源50は、硬貨2の表面の法線方向に進みビームスプリッタ52で反射される光の光路に出射面を直交させて配置されており、照明光に含まれる平行光は、ビームスプリッタ52で反射され、硬貨2の表面に垂直に入射する。また、照明光に含まれる拡散光もまた、ビームスプリッタ52で反射され、硬貨2の表面に入射する。
【0034】
図5は、硬貨2の表面に入射する照明光及び硬貨2の表面で反射された反射光を模式的に示す。
【0035】
硬貨2の表面の凹凸パターンのエッジ部分2aを除く硬貨2の表面に垂直に入射した平行光は、硬貨2の表面で反射され、その反射光の多くはビームスプリッタ52に戻り、ビームスプリッタ52を透過して撮像手段51で受光される。一方、凹凸パターンのエッジ部分2aに入射した平行光もまたエッジ部分2aで反射されるが、その反射光の殆どがビームスプリッタ52には向かず、エッジ部分2aで反射されてビームスプリッタ52に戻る反射光は著しく減少する。それにより、撮像手段51で撮像された画像において、硬貨2の表面の凹凸パターンのエッジ部分2aとその他の部分とにコントラスト(輝度差)が生じる。上述した識別手段6よる硬貨の識別において、画像処理部41は、このコントラストに基づいて凹凸パターンを抽出し、凹凸パターンデータを生成する。
【0036】
また、硬貨2の表面に入射した拡散光は、硬貨2の表面の輝度を全体的に上げる。このことは、硬貨2の表面の汚損が酷く、或いは硬貨2の表面が拡散面である場合にも、硬貨2の表面全体の輝度が確保される。それにより、平行光で生じる硬貨2の表面の凹凸パターンのエッジ部分2aとその他の部分とのコントラストが黒潰れすることなく明瞭となる。そこで、面光源50の出力は一定に保ちつつ、硬貨2の表面の性状に左右されずにその表面の凹凸パターンを確実にとらえることができる。そして、これを備えた硬貨識別装置1においては、識別処理速度を保つことができる。
【0037】
なお、上述した例では、硬貨識別装置1を例に、撮像ユニット5は硬貨を撮像するものとして説明したが、硬貨に限らず、例えばメダル等の、表面に凹凸パターンを有する盤状のものであって表面の反射率(鏡面反射率)が硬貨に近いものも被写体とすることができる。
【0038】
図6は、図3に示した撮像ユニット5の変形例を示す。
【0039】
図6に示す撮像ユニット5´は、同軸落射照明により撮像を行うものであるが、ビームスプリッタ52との関係で、面光源50及び撮像手段51の配置が図2に示した撮像ユニット5とは異なる。ビームスプリッタ52は、硬貨2に対して、その表面の法線方向に位置している。面光源50は、硬貨2の表面の法線方向に進みビームスプリッタ52を透過する光の光路に配置されており、撮像手段51は、硬貨2の表面の法線方向に進みビームスプリッタ52で反射される光の光路に配置されている。面光源50から出射されてビームスプリッタ52に入射した照明光は、その一部がビームスプリッタ52を透過して硬貨2の表面に入射する。硬貨2の表面で反射されてビームスプリッタ52に入射した反射光は、その一部がビームスプリッタ52で反射されて撮像手段51に入射する。
【0040】
図3に示した撮像ユニット5、及び図6に示した撮像ユニット5´では、撮像手段51に含まれる結像光学系54は、非テレセントリックな結像光学系とされている。面光源50が照明光を実質的に均一な照度で硬貨2の表面全体にわたって照射することは、面光源50が硬貨2の表面全体に写り込むことである。例えば図3に示した撮像ユニット5において、面光源50から出射されて硬貨2の表面に至る照明光の光路P1の光路長をPL1、硬貨2の表面で反射されて撮像手段51に至る反射光の光路P2の光路長をPL2、硬貨の径をdとすれば、面光源50の径は、少なくともd×(PL1+PL2)/PL2の大きさとなる。
【0041】
図7は、撮像ユニットの他の例を示す。なお、図3に示した撮像ユニット5と共通する要素には、同一の符号を付することにより説明を簡略ないし省略する。
【0042】
図7に示す撮像ユニット105は、同軸落射照明により撮像を行うものであるが、撮像手段151に含まれる結像光学系154を物体側がテレセントリックな結像光学系としたものである。この場合に面光源150が硬貨2の表面全体に写り込むには、面光源150の径Dは、硬貨の径dと同じで足りる。このように、撮像手段151の結像光学系154にテレセントリックな結像光学系を用いることにより、面光源150を小型化し、そして撮像ユニット105を小型化することができる。面光源150及び撮像ユニット105を小型化することで、消費電力の低減、均一な照明、そして低コストを実現できる。さらに、テレセントリックな光学系を用いることにより、歪の少ない安定した像を得ることができ、結像に寄与する光線の角度分布が狭くなることで色や光量のムラを低減することができる。
【0043】
図8は、硬貨の表面を撮像して得られる画像の輝度分布を示し、図9は、図8の輝度分布の画像を撮像する際の照明光の照度分布を示す。
【0044】
図8には、照明光に平行光及び拡散光を含む撮像ユニット105で表面の反射率が比較的高い100円硬貨などのニッケル硬貨を撮像して得られる画像の輝度分布1(FIG.8A)と、撮像ユニット105で表面の反射率が比較的低い10円硬貨などの銅硬貨を撮像して得られる画像の輝度分布2(FIG.8B)と、照明光を平行光のみとした撮像ユニットでニッケル硬貨を撮像して得られる画像の輝度分布3(FIG.8C)と、照明光を平行光のみとした撮像ユニットで銅硬貨を撮像して得られる画像の輝度分布4(FIG.8D)と、が示されている。いずれも、硬貨の一つの径上における輝度分布であり、硬貨の表面の凹凸パターンのエッジ部分は、輝度分布の谷の部分に相当する。図9には、照明光に平行光及び拡散光を含む撮像ユニット105の照明光の照度分布が実線で示され、また、照明光を平行光のみとした撮像ユニットの照明光の照度分布が破線で示されている。
【0045】
照明光が平行光のみである場合の銅硬貨の輝度分布4(FIG.8D)では、硬貨の表面の輝度が全体的に低いために黒潰れを生じ、硬貨の表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とのコントラストが不明瞭となる。これに対して、照明光に拡散光を含む場合の銅硬貨の輝度分布2(FIG.8B)では、拡散光によって硬貨の表面の輝度が全体的に高く、硬貨の表面の凹凸パターンのエッジ部分とその他の部分とのコントラストが黒潰れすることなく明瞭となる。
【0046】
そして、照明光に拡散光を含む場合のニッケル硬貨の輝度分布1(FIG.8A)と銅硬貨の輝度分布2(FIG.8B)との平均の輝度差は、照明光が平行光のみである場合のニッケル硬貨の輝度分布3(FIG.8C)と銅硬貨の輝度分布4(FIG.8D)との平均の輝度差に比較して少なくなっている。
【0047】
以上のことから、平行光と拡散光とを含む照明光を硬貨の表面に照射することで、面光源50の出力は一定に保ちつつ、硬貨の表面の性状に左右されずにその表面の凹凸パターンを確実にとらえることができることがわかる。
【0048】
以上説明したように、本明細書には、表面に凹凸パターンを有する被写体を撮像する撮像ユニットであって、前記被写体の表面を照明する照明光を一定の出力で出射する面光源と、前記被写体の表面で反射された反射光を受光する撮像手段と、前記面光源から出射される前記照明光と前記撮像手段に入射する前記反射光とが交わる箇所に配置されたビームスプリッタと、を備え、前記面光源から出射された前記照明光は、前記ビームスプリッタを介して前記被写体の表面に入射し、前記被写体の表面で反射された前記反射光は、前記ビームスプリッタを介して前記撮像手段に入射し、前記被写体の表面に入射する前記照明光は、前記被写体の表面に垂直に入射する平行光と、拡散光とを含む撮像ユニットが開示されている。
【0049】
また、本明細書に開示された撮像ユニットは、前記撮像手段が、テレセントリックな結像光学系を含む。
【0050】
また、本明細書に開示された撮像ユニットは、硬貨を撮像する。
【0051】
また、本明細書には、硬貨を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記硬貨の表面を撮像する撮像ユニットと、前記撮像ユニットにより取得された画像に基づいて前記硬貨を識別する識別手段と、を備え、前記撮像ユニットが、上記の撮像ユニットである硬貨識別装置が開示されている。
【符号の説明】
【0052】
1 硬貨識別装置
2 硬貨
3 搬送手段
4 検知手段
5 撮像ユニット
6 識別手段
10 搬送テーブル
11 プーリ
12 無端ベルト
20 筐体
21 透明部材
30 受光素子
31 発光素子
40 メモリ
41 画像処理部
42 識別処理部
50 面光源
51 撮像手段
52 ビームスプリッタ
53 固体撮像素子
54 結像光学系
60 光源素子
61 導光板
62 プリズムパターン
63 拡散フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸パターンを有する被写体を撮像する撮像ユニットであって、
前記被写体の表面を照明する照明光を一定の出力で出射する面光源と、
前記被写体の表面で反射された反射光を受光する撮像手段と、
前記面光源から出射される前記照明光と前記撮像手段に入射する前記反射光とが交わる箇所に配置されたビームスプリッタと、
を備え、
前記面光源から出射された前記照明光は、前記ビームスプリッタを介して前記被写体の表面に入射し、
前記被写体の表面で反射された前記反射光は、前記ビームスプリッタを介して前記撮像手段に入射し、
前記被写体の表面に入射する前記照明光は、前記被写体の表面に垂直に入射する平行光と、拡散光とを含む撮像ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像ユニットであって、
前記撮像手段は、テレセントリックな結像光学系を含む撮像ユニット。
【請求項3】
硬貨を撮像する請求項1又は請求項2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
硬貨を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記硬貨の表面を撮像する撮像ユニットと、
前記撮像ユニットにより取得された画像に基づいて前記硬貨を識別する識別手段と、
を備え、
前記撮像ユニットは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の撮像ユニットである硬貨識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−212221(P2012−212221A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76340(P2011−76340)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(500265501)ローレル精機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】