説明

撮像装置、プログラム及び手振れ補正方法

【課題】重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体像を撮像する撮像素子と、装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段と、装置本体の姿勢を判定する判定手段と、検出された角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、判定された姿勢に応じて、手触れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じた重力成分を調整して算出する算出手段と、算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手振れを補正することで撮影画像の劣化を防止する撮像装置、プログラム及び手振れ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置として、ピント合わせや露光量を自動的に決定する機構を搭載した撮像装置が普及している。また、近年では、手振れを補正することにより、手振れによる撮影画像の画質劣化を抑えることができる撮像装置も知られている。手振れは、撮像装置を把持する手や腕等が動いてしまうことによって生じる撮像装置の回転等の動きであり、概ね1〜10Hz程度の低周波振動で表される。このため、手振れを補正する撮像装置では、手振れによって生じる撮像装置の低周波数振動を検出し、これを打ち消すように、撮像素子や撮像レンズ、あるいは撮像レンズを構成する一部のレンズを移動させることにより、手振れによって撮影画像にあらわれる像のブレを低減する。
【0003】
また、手振れを防止する撮像装置では、手振れとして撮像装置の回転による角度ブレを緩和する。このため、角速度センサを搭載し、撮像装置の回転速度を計測することによって角度ブレを検出する。しかし、高撮影倍率のマクロモードによる撮影時に生じる手振れは、レリーズボタンの押圧等によって、撮像装置が平行にシフトするブレ(以下、シフトブレという)が角度ブレよりも支配的になり、角速度センサによって撮像装置の回転速度を計測するだけではシフトブレを正確に検出することが難しい。
【0004】
こうしたことから、近年では、小型で機動性が高く、角度センサを用いて並進ブレ量の高精度な補正を行う防振制御装置が知られている(特許文献1参照)。この防振制御装置は、振れにより画像振れを補正する振れ補正手段と、振れの角速度を検出する第1振れ検出手段と、第1振れ検出手段と異なる方法で振れを検出する第2振れ検出手段とを有し、防振対象の撮像装置の撮影動作が開始されるまでに第1振れ検出手段の出力に基づく第1信号と第2振れ検出手段の出力に基づく第2信号とから補正値を演算し、補正値を用いて第1振れ検出手段の出力を補正し、補正された第1振れ検出手段の出力に基づいて振れ補正手段を駆動する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−25961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の防振制御装置は、手振れ補正を行う際、角度ブレとシフトブレの両方を考慮して行うが、角度ブレの回転半径を算出するにあたり重力成分を考慮しなければならないため、その際の補正の精度が悪化する可能性があった。
【0007】
すなわち、手振れ補正を行う際に、多くの場合、重力を加味したオフセット値を用いるが、カメラの姿勢を意識せずに統一された方法で手振れ補正を行うため、カメラの姿勢によっては重力を過大評価して手振れ補正を行ってしまう可能性があり、その場合には撮影画像の画質が劣化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる撮像装置、プログラム及び手振れ補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、請求項1に記載したように、被写体像を撮像する撮像素子と、装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段と、装置本体の姿勢を判定する判定手段と、前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定手段によって判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出手段と、前記算出手段によって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正手段と、を備えている。
【0010】
請求項1に記載の撮影装置によれば、撮像素子により、被写体像が撮像され、第1検出手段により、装置本体における角速度及び加速度が検出され、判定手段により、装置本体の姿勢が判定される。また、算出手段により、前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量が、前記判定手段により判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出され、補正手段により、前記算出手段によって算出されたブレ量に基づいて手振れが補正される。これにより、装置本体の姿勢を考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項2に記載したように、前記判定手段は、装置本体の前記撮像素子の撮像方向を中心軸とした横方向の傾斜方向が水平方向を含む予め定められた範囲内にある場合に横撮り姿勢であると判定し、当該傾斜方向が重力方向を含む予め定められた範囲内にある場合に縦撮り姿勢であると判定し、前記算出手段は、前記判定手段により前記横撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向に対する前記重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出するとともに、縦方向に対する前記重力成分を調整して前記ブレ量を算出し、前記判定手段により前記縦撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向に対する前記重力成分を調整して前記ブレ量を算出するとともに、前記縦方向に対する前記重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出するようにしても良い。これにより、装置本体の向きを考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項3に記載したように、前記判定手段は、前記撮像方向が重力方向を含む予め定められた範囲内にある場合に上下撮り姿勢であると更に判定し、前記算出手段は、前記判定手段により前記上下撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向及び前記縦方向の重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出するようにしても良い。これにより、撮像装置の撮像方向を考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項4に記載したように、前記算出手段は、前記撮像素子により撮像を行う際の撮像倍率が予め定められた閾値未満であった場合、前記横方向及び前記縦方向の重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出するようにしても良い。これにより、撮像装置の撮像倍率を考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項5に記載したように、前記算出手段は、マクロ撮影モードに設定されている場合、前記横方向及び前記縦方向の各々の重力成分を調整して前記ブレ量を算出するようにしても良い。これにより、撮像の際のモードを考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項6に記載したように、前記判定手段は、装置本体の姿勢が、予め定められた時間以上継続した場合に、当該姿勢であると判定するようにしても良い。これにより、装置本体の姿勢をより精密に考慮して、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項7に記載したように、前記補正手段は、駆動されることにより装置本体の手振れを補正するブレ補正レンズを駆動することにより、前記手振れを補正するようにしても良い。これにより、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0017】
一方、上記目的を達成するために、請求項8に記載のプログラムは、被写体像を撮像する撮像素子と、装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段とを備えたコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、前記コンピュータを、装置本体の姿勢を判定する判定手段と、前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定手段により判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出手段と、前記算出手段によって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0018】
従って、請求項8に記載のプログラムによれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、装置本体の姿勢を考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0019】
また、上記目的を達成するために、請求項9に記載の手振れ補正方法は、被写体像を撮像する撮像素子と、装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段とを備えた撮像装置における手振れ補正方法であって、装置本体の姿勢を判定する判定ステップと、前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定ステップにより判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出ステップと、前記算出ステップによって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正ステップと、を行う手振れ補正方法である。
【0020】
従って、請求項9に記載の手振れ補正方法によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用することができるので、請求項1に記載の発明と同様に、措置本体の姿勢を考慮することで、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る撮像装置の外観を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は背面図である。
【図2】実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る撮像装置における角度ブレを説明するための概略図である。
【図4】実施形態に係る撮像装置におけるシフトブレを説明するための概略図である。
【図5】第1実施形態に係る撮像装置におけるブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態に係る撮像装置におけるブレ補正処理プログラムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る撮像装置におけるブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態に係る撮像装置におけるブレ補正処理プログラムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る撮像装置1について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る撮像装置1の外観を示す図であり、図1(A)は上面図、図1(B)は正面図、図1(C)は背面図である。図2は、本実施形態に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、撮像装置1は、内部に撮像に用いられる各種電子機器が収納された筐体2を有する。筐体2の正面には、複数のレンズからなる光学撮像系3、及び、発光するストロボ4が設けられている。また、筐体2の背面には、LCD(Liquid Crystal Display)等を有する表示部5、ユーザ操作により設定指示が入力されるメニュー操作部6Aが設けられている。一方で、筐体2の上面部には、ユーザ操作により撮影指示等を入力するレリーズボタン6B、ユーザ操作により電源のオン/オフ状態の切替指示を入力する電源ボタン6C、ユーザ操作によりモード切替指示を入力するモード切替ボタン6Dが設けられている。以下、メニュー操作部6A、レリーズボタン6B、電源ボタン6C、及びモード切替ボタン6Dをまとめて操作部6と言う。
【0026】
表示部5には、静止画の撮像に先立って撮像される画素数の小さい画像がスルー画として表示され、これにより表示部5がファインダとして機能する。また、表示部5には、メモリカード等の記憶装置(図示しない)に記憶された画像が表示されたり、ユーザによる操作部6の操作に応じた操作メニューや設定メニュー等が表示されたりする。
【0027】
モード切替ボタン6Dにより切り替えられるモードは、撮影を行う撮影モード、マクロモードで撮影を行うマクロ撮影モード、表示部5に既存の撮影画像を表示する再生モード、及び、各種設定を行う設定モード等である。マクロモードとは、被写体に接近して撮影するモードであり、近くの物にピントが合うような被写界深度が設定されたモードである。撮像装置1がマクロモードに設定されている場合、撮像装置1による撮影時の被写体深度が予め定められた範囲内に設定される。
【0028】
また、図1に示すように、撮像装置1において、筐体2の横方向をx方向、縦方向をy方向とする。
【0029】
図2に示すように、撮像装置1は、上述した撮像光学系3,撮像素子12,第1ブレ補正部13A,第2ブレ補正部13B、角速度センサ14,加速度センサ15,AFE(Analog Front End)検出回路16,AE/AWB(Automatic Exposure/Automatic White Balance)検出回路17、AFE31、A/D変換機32、DSP(Digital Signal Processor)33、画像処理部34、メモリ35、CPU(Central Processing Unit)37を備えている。
【0030】
撮像光学系3は、レンズ21、絞り22、ブレ補正レンズ23等から構成される。レンズ21は、ズームや焦点調節時に光軸Lに沿って移動可能に設けられたレンズである。図2においては簡単のためにレンズ21を1つ図示しているが、レンズ21は、複数のレンズからなり、ズーム時に駆動されるズーミングレンズ、焦点調節時に駆動されるフォーカシングレンズ等を含んでいる。絞り22は、光軸L上に複数の絞り羽根で形成する開口を有し、絞り羽根の位置を移動させ、開口の大きさを調節することにより、露光量を調節する。
【0031】
ブレ補正レンズ23は、光軸Lに対して垂直な方向に移動可能に設けられ、撮像装置1に手振れ(角度ブレやシフトブレ)が発生したときに、手振れを打ち消す向きに移動される。ブレ補正レンズ23は、ボイスコイルモータ(VCM)やステッピングモータ等からなるアクチュエータ24によって駆動される。なお、ブレ補正レンズ23の移動方向や移動量は、第1ブレ補正部13A、第2ブレ補正部13Bによって制御される。
【0032】
撮像素子12は、例えばCCD型撮像素子であり、撮像光学系3に撮像面を向けて配置される。撮像面には、複数の画素が所定の配列で設けられており、画素毎に被写体から入射した光を光電変換することにより、被写体の像を撮像する。撮像素子12が出力する撮像信号は、AFE31に入力され、相関二重サンプリングによってノイズが除去され、増幅される。こうしてAFE31でノイズが除去され、増幅された撮像信号はA/D変換器31によってデジタルな画像データに変換され、DSP33に入力される。
【0033】
DSP33は、入力された画像データに階調補正処理やガンマ補正処理等の信号処理を施す画質補正処理回路や、画像データをJPEG等の所定形式で圧縮/伸張する圧縮伸張処理回路として機能する。また、画像処理部34には、DSP33で各種補正処理等が施された画像データが入力され、さらに輪郭強調処理等の画像処理を施す。画像処理部34によって画像処理が施された画像データは、メモリ35に記憶されたり、表示部5に表示されたりする。
【0034】
AF検出回路16は、DSP33から出力される画像データに基づいて焦点距離を検出する回路であり、画像データ内の所定のAF検出領域から高周波成分を抽出し積算した評価値を出力する。そして、評価値に基づいて、AF検出領域内のコントラストが最大となるように、撮像光学系3のフォーカシングレンズ(レンズ21)を光軸Lに沿って移動させることにより、自動的にフォーカシングを行う。
【0035】
AE/AWB検出回路17は、DSP33から出力される画像データに基づいて、ホワイトバランスが撮影に適切か否かを検出するとともに、撮影に適切な露光量を検出する。そして、露光量が適切になるように、絞り22の開口の大きさや、撮像素子12の電子シャッタの速度等を調節する。
【0036】
第1ブレ補正部13A及び第2ブレ補正部13Bは、撮像装置1の回転によって生じる角速度ωと、平行移動によって生じる並進加速度Acc1に基づいて、撮像装置1に生じた手振れを算出して補正する。第1ブレ補正部13A及び第2ブレ補正部13Bが算出する手振れは、光軸Lが回転することによる角度ブレと、光軸Lに垂直な面内での平行移動によるシフトブレの2種類がある。また、ブレ補正部13A、13Bは、角速度ω及び並進加速度Acc1に基づいて角度ブレ及びシフトブレをそれぞれ算出すると、これらに基づいて、全体のブレ量δを算出する。
【0037】
ブレ量δは、後述するアクチュエータ54に入力され、アクチュエータ54は入力されたブレ量δを打ち消すようにブレ補正レンズ23を駆動する。したがって、撮像装置1では、ブレ補正レンズ23の移動により、角度ブレとシフトブレは共に補正される。なお、ブレ補正部13A、13Bは、角速度ωを角速度センサ14の出力値から取得し、並進加速度Acc1を加速度センサ15の出力値から取得する。
【0038】
CPU37は、操作部6を介したユーザ操作にしたがって上述の撮像装置1の各部を統括的に制御する。CPU37は例えば、レリーズボタンが半押し操作されると、AF検出回路16によって自動焦点調節を行うとともに、AE/AWB検出回路17によって露光量を自動的に調節する。また、CPU37は、撮像装置1が撮影モードに設定されている際に、後述するブレ補正処理プログラムを実行する。
【0039】
以下、撮像装置1による手振れ補正の態様を説明する。撮像装置1は、前述のようにブレ補正部13A、13Bによって角度ブレとシフトブレを算出する。
【0040】
図3は、本実施形態に係る撮像装置1における角度ブレを説明するための概略図である。図3に示すように、角度θは、回転中心Cを中心として光軸Lが回転する角度であり、回転半径Rは例えば回転中心Cから角速度センサ14までの長さである。角度θは角速度ωを積分することにより算出され、回転半径Rは、後述するようにシフトブレによって発生する並進加速度Acc1と角速度ωに基づいて算出される。
【0041】
また、図4は、本実施形態に係る撮像装置1におけるシフトブレを説明するための概略図である。図4に示すように、シフトブレは、光軸Lに垂直な面内での撮像装置1の平行移動によるブレであり、シフトブレによる並進ブレ量Yは、角度θと回転半径Rによって、Y=R・θの関係により表される。
【0042】
本実施形態に係る撮像装置1では、図1に示すx方向及びy方向の各々について、角度ブレとシフトブレとを加算することでブレ量を算出して、x方向及びy方向の各々について手振れ補正を行う。
【0043】
撮像光学系の主点の位置における並進ブレ量Yと角度θ及び撮像光学系の焦点距離fと撮影倍率βより撮像面に生ずる振れδは、以下の(1)式で求められる。
δ=(1+β)fθ+βY ………………(1)
【0044】
ここで、撮像光学系3の主点位置における並進ブレ量Yと角度θと回転中心Cを定めた場合の回転半径Rの関係は、以下の(2)式で表せ、加速度信号を1回微分した並進速度Vと角速度ωと回転中心Cを定めた場合の回転半径Rとの関係は、(3)式で表せる。
Y=Rθ ………………(2)
V=Rω ………………(3)
【0045】
そこで、本実施形態の撮像装置1では、重力方向においては、(1)式を、以下の(4)式の様に書き直したブレ量δに対して手振れ補正を行っている。
δ=(1+β)fθ+βRθ ………………(4)
【0046】
即ち、(4)式では、シフトブレを求める際に、加速度センサ15により直接求まる並進ブレ量Yを用いるのではなく、一旦(2)式或いは式(3)式で求まる回転半径Rを求め、この回転半径Rと角度θとズーム、フォーカス及びそれにより得られる撮影倍率βを用いる。
【0047】
ここで、加速度センサ15は撮像光学系3のレンズ主点位置に配置されており、回転半径Rは回転中心Cから撮像光学系3のレンズ主点位置までの距離に等しい。加速度計信号を2階積分すれば値Yが求まるので、式(1)式を利用してシフトブレ補正を行えば良いのに、(4)式を用いてシフトブレ補正を行う理由を以下に説明する。
【0048】
今、角度θが入力されると、加速度センサ15はその傾きによる重力成分の変動も検出する。そして、角度θが大きくない範囲では重力変動により出力される重力加速度(加速度センサ15による出力)は角度θに比例する。
【0049】
また、角度θに、回転半径Rを乗じた結果が並進ブレ量Y(加速度センサ15による出力)であり、この並進ブレ量Yを2階微分したシフトブレによる加速度が加速度センサ15から出力される。
【0050】
更に、加速度センサ15の出力にはノイズも重畳している。ノイズの種類は周波数によらず一定のノイズや周波数に関係するノイズなどがあるが、ここでは周波数に依存しないノイズであり、且つ角度θに比例するノイズとして取り扱うものとする。
【0051】
上記の重力加速度及びシフトブレによる加速度の合計が加速度センサ15の出力に表れ、これが2階積分されることにより、並進ブレ量Yが得られる。
【0052】
今、重力加速度比例項をG、回転半径をR、ノイズ比例項をk、角周波数をωとすると、信号検出系は、以下の(5)式で表せる。
【数1】

右辺の第1項は加速度出力と重力加速度出力の項であり、第2項はノイズ項である。
【0053】
ここで、加速度出力と重力加速度出力は共に角度θの位相と関連しており、ノイズに関しては角度θの位相と関連していないので、(5)式の右辺は2つの項に分けて示しているが、簡略化の為に各項の位相を無視すると以下の式(6)式となる。
【数2】

【0054】
即ち、シフトブレの変位は(7)式の等式((6)式の結果がゼロになる各周波数)が成り立つ各周波数を境に低周波側は重力加速度とノイズが支配的になり、高周波側でのみ正確なシフトブレが計測できる。
【0055】
一方、この周波数より高周波側では加速度信号の信頼性は高くなっている。
【0056】
今、手振れの帯域は1Hzから10Hzであり、既に重力加速度やノイズの影響がある帯域になっているため、加速度センサ15を用いてシフトブレを検出することが出来ない。
【0057】
そこで、本実施形態に係る撮像装置1では、重力の影響をあまり受けない水平方向(重力方向に垂直な方向)について手振れ補正を行う際には(1)式を用い、重力方向について手振れ補正を行う際には、加速度センサ15の信頼できる帯域を用いて並進ブレ量Yを検出する事を考慮し、(4)式を用いる。
【0058】
図5は、本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る撮像装置1は、上述したような手振れ補正を行うために、上記(1)式を用いて手振れ補正を行う第1ブレ補正部13A、及び、上記(4)式を用いて手振れ補正を行う第2ブレ補正部13Bを有していて、対象とする方向が重力方向であるか否かによっていずれかのブレ補正部に切り替えつつ手振れ補正を行う。本実施形態に係る撮像装置1は、上述したような手振れ補正を、x方向及びy方向の各々について行うために、各々の方向について第1ブレ補正部13A及び第2ブレ補正部13Bを有しているが、図5には、x方向あるいはy方向の一方のブロックのみを示している。
【0059】
また、図5に示すように、撮像装置1は、撮像装置1の姿勢に応じて加速度を加味するか否かを判断して切り替える切替部40を備えている。角速度センサ14、加速度センサ15から加速度信号及び加速度信号を入力する切替部40、ブレ補正部13Aは、重力を加味してブレ量を算出して補正し、ブレ補正部13Bは、重力成分を加味せずにブレ量を算出して補正する。なお、重力成分を加味するとは、上記(4)式を用いて重力成分を調整することを言う。
【0060】
角速度センサ14の出力信号(以下、角速度信号と言う。)及び加速度センサ15の出力信号(以下、加速度信号と言う。)は、切替部40に入力する。切替部40は、加速度信号に基づいて撮像装置1の重力方向を判定し、判定結果によって撮像装置1の姿勢を判断する。そして、切替部40は、撮像装置1の姿勢を判定し、判定結果に基づいて、角速度信号及び加速度信号を第1ブレ補正部13Aに対して出力するか、第2ブレ補正部13Bに出力するかを決定する。角速度信号及び加速度信号を入力した第1ブレ補正部13Aまたは第2ブレ補正部13Bは、各々ブレ量を算出して、算出されたブレ量に基づいて補正レンズ23の移動方向や移動量を制御する。
【0061】
まず、重力成分を加味したブレ量を算出する第1ブレ補正部13Aによるブレ量の算出手順について説明する。重力成分を加味したブレ量を算出する。ブレ補正部13Aは、角速度の変化量を算出するために、バンドパスフィルタ(BPF)41、A/D変換機42、ハイパスフィルタ(HPF)43,46,位相補正回路44、積分回路45を備えていて、加速度の変化量を算出するために、ローパスフィルタ(LPF)47、A/D変換機48、HPF49、位相補正回路50、積分回路51を備えていて、角速度及び加速度の変化量からブレ量を算出して補正するために、回転半径算出部52、ブレ量算出部53、及びアクチュエータ54を備えている。
【0062】
また、ブレ補正部13Bは、角速度の変化量を算出するために、バンドパスフィルタ(BPF)41、A/D変換機42、ハイパスフィルタ(HPF)43,46、位相補正回路44、積分回路45を備えていて、加速度の変化量を算出するために、ローパスフィルタ(LPF)47、A/D変換機48、位相補正回路50、積分回路51を備えていて、角速度及び加速度の変化量からブレ量を算出して補正するために、ブレ量算出部53、及びアクチュエータ54を備えている。
【0063】
第1ブレ補正部13Aに入力した角速度信号は、BPF41に入力され、角速度センサ14の出力信号のうち、手振れ補正によって発生する角度θの周波数帯(例えば1〜10Hz程度)の成分がA/D変換器42に入力される。A/D変換器42は、入力された所定周波数帯の角速度信号を、デジタル信号に変換し、HPF43に入力する。HPF43は、角速度信号のDC成分を除去する。DC成分をカットされた角速度信号は、位相補償回路44に入力され、位相を整えられた後、角速度ωとして出力される。位相補償回路44が出力する角速度ωは、積分回路45と回転半径算出部52に入力される。積分回路45は、位相補償回路44から入力される角速度ωを積分し、HPF46によってDC成分を除去することによって角度θを算出する。こうして算出される角度θは、ブレ量算出部53に入力される。
【0064】
一方、加速度センサ15の出力信号(以下、加速度信号という)は、LPF47に入力されノイズが除去されるとともに、A/D変換器48によってデジタル信号に変換し、HPF49に入力する。HPF49は、重力による加速度成分を除去するフィルタであり、カットオフ周波数fcは約10m/sである。HPF49によって重力加速度を除去された並進加速度Acc1は、位相補償回路50に入力する。
【0065】
位相補償回路50は、HPF49から入力される並進加速度Acc1の位相を整え、積分回路51に入力する。積分回路51は、入力された並進加速度Acc1を積分することにより、シフトブレによる並進速度Vを算出する。積分回路51によって算出されたシフトブレによる並進速度Vは、回転半径算出部52に入力される。
【0066】
回転半径算出部52は、位相補償回路44から入力される角速度ωと、積分回路51から入力される並進速度Vに基づいて、撮像装置1に生じた角度θによる回転半径Rを算出する。具体的には、回転半径算出部52は、並進速度Vを角速度ωで割ることによって回転半径Rが算出される(R=V/ω)。回転半径算出部52が算出した回転半径Rは、ブレ量算出部53に入力される。
【0067】
ブレ量算出部53は、HPF46から角度θを、回転半径算出部52から回転半径Rを取得する。また、ブレ量算出部53は、撮像倍率β及び焦点距離fをCPU37から取得する。ブレ量算出部53は、取得した角度θ、回転半径R、撮像倍率β、焦点距離fから、ブレ量(δ=(1+β)fθ+βRθ)を算出する。このとき、ブレ量算出部53は、加速度センサ15の感度に基づいて回転半径Rとして、入力された回転半径Rの値をゲイン補正した値に補正する。ブレ量δの式の「(1+β)fθ」は角度ブレのブレ量、「βRθ」はシフトブレのブレ量である。アクチュエータ54は、ブレ量算出部53によって算出されたブレ量δが打ち消されるように、ブレ補正レンズ23を駆動する。これにより、手振れ(ブレ量δ)が補正される。
【0068】
次に、重力成分を加味しない第2ブレ補正部13Bによるブレ量の算出について説明する。第1ブレ補正部13Bに入力した角速度信号は、BPF41に入力され、角速度センサ14の出力信号のうち、手振れ補正によって発生する角度ブレの角度θの周波数帯(例えば1〜10Hz程度)の成分がA/D変換器42に入力される。A/D変換器42は、入力された所定周波数帯の角速度信号を、デジタル信号に変換し、HPF43に入力する。
【0069】
HPF43は、角速度信号のDC成分を除去する。DC成分をカットされた角速度信号は、位相補償回路44に入力され、位相を整えられた後、角速度ωとして出力される。位相補償回路44が出力する角速度ωは、積分回路45に入力される。積分回路45は、位相補償回路44から入力される角速度ωを積分し、HPF46によってDC成分を除去することによって角度θを算出する。こうして算出される角度θは、ブレ量算出部53に入力される。
【0070】
一方、加速度センサ15の出力信号(以下、加速度信号という)は、LPF47に入力されノイズが除去されるとともに、A/D変換器48によってデジタル信号に変換され、位相補償回路50に入力する。
【0071】
位相補償回路50は、A/D変換機48から入力される並進加速度Acc1の位相を整え、積分回路51に入力する。積分回路51は、入力された並進加速度Acc1を積分することにより、シフトブレによる並進速度Vを算出する。積分回路51によって算出されたシフトブレによる並進速度Vは、ブレ量算出部53に入力される。
【0072】
ブレ量算出部53は、HPF46から角度θを、積分回路51からシフトブレの並進速度Vを取得する。また、ブレ量算出部53は、撮像倍率β及び焦点距離fをCPU37から取得する。ブレ量算出部53は、取得した角度θ、並進ブレ量Y、撮像倍率β、焦点距離fから、ブレ量(δ=(1+β)fθ+βY)を算出する。ブレ量δの式の「(1+β)fθ」は角度ブレのブレ量、「βRθ」はシフトブレのブレ量である。アクチュエータ54は、ブレ量算出部53によって算出されたブレ量δが打ち消されるように、ブレ補正レンズ23を駆動する。これにより、手振れ(ブレ量δ)が補正される。
【0073】
上述のように構成される撮像装置1は、回転半径算出部52によって算出された回転半径Rを用いて、ブレ量算出部53は重力成分が加味されたブレ量を算出する。そして撮像装置1は、撮像装置1の姿勢によらずに、より正確に手振れを補正することができる。
【0074】
ここで、本実施形態に係る撮像装置1は、撮影モードに設定されている間に、所定時間経過毎にブレ補正処理プログラムを実行する。そこで、まず、図6を参照して、ブレ補正処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図6は、撮影モードに設定された際に、CPU37により実行されるブレ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、ブレ補正処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
【0075】
始めに、ステップS101において、CPU37は、撮像装置1がマクロモードに設定されているか否かを判定する。マクロモードのオン/オフ状態は、ユーザにより操作部6を介して予め設定され、予めメモリ35に記憶されている。
【0076】
ステップS101においてマクロモードに設定されていないと判定された場合は、ステップS103において、CPU37は、倍率が0.2以上であるか否かを判定する。この際の倍率は、被写体の実物と同一の大きさを1とした場合の、撮影画像上の被写体の大きさの相対値である。
【0077】
ステップS101においてマクロモードに設定されていると判定された場合、及び、ステップS103において倍率が0.2倍以上であると判定された場合は、手振れによる撮影画像のブレ量が大きいため、撮像装置1のX方向及びY方向においてブレ量の算出に重力成分を加味することが望ましく、ステップS105において、CPU37は、第1ブレ補正部13Aにより、重力成分を加味してX方向の手振れ補正を行う。また、ステップS107において、CPU37は、第1ブレ補正部13Aにより、重力成分を加味してY方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0078】
ステップS105において倍率が0.2倍未満であると判定された場合は、ステップS109において、CPU37は、撮像装置1の姿勢の情報を取得する。この際、CPU37は、加速度信号に基づいて、撮像装置1の姿勢を判定すると良い。
【0079】
ステップS111において、CPU37は、撮像装置1の姿勢が横向きであるか否かを判定する。この際、CPU37は、撮像装置1のX方向が重力方向に対して垂直であった場合に、撮像装置1の姿勢が横向きであると判定する。
【0080】
ステップS111において撮像装置1の姿勢が横向きであると判定された場合は、ステップS113において、CPU37は、第2ブレ補正部13Bにより、撮像装置1のX方向は水平方向であるため、重力成分を加味せずX方向の手振れ補正を行う。また、ステップS115において、CPU37は、第1ブレ補正部13Aにより、撮像装置1のY方向は重力方向であるため、重力成分を加味してY方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0081】
ステップS111において撮像装置1の姿勢が横向きでないと判定された場合は、ステップS117において、CPU37は、ステップS123において撮像装置1の姿勢が縦向きであるか否かを判定する。この際、CPU37は、撮像装置1のY方向が重力方向に一致した場合に、撮像装置1の姿勢が縦向きであると判定する。
【0082】
ステップS117において撮像装置1が縦向きであると判定された場合は、ステップS119において、CPU37は、撮像装置1のX方向は重力方向であるため、第1ブレ補正部13Aにより、重力成分を加味してX方向の手振れ補正を行う。また、ステップS121において、CPU37は、撮像装置1のY方向は水平方向であるため、第2ブレ補正部13Bにより、重力成分を加味せずY方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0083】
ステップS117において撮像装置1の姿勢が縦向きでないと判定された場合、ステップS123において、CPU37は、撮像装置1の姿勢が水平であるか否かを判定する。この際、CPU37は、撮像装置1のXY平面の法線方向が重力方向に一致した場合に、撮像装置1の姿勢が水平であると判定する。
【0084】
ステップS123において撮像装置1の姿勢が水平であると判定された場合、ステップS125において、CPU37は、撮像装置1のX方向は水平方向であるため、第2ブレ補正部13Bにより、重力成分を加味せずX方向の手振れ補正を行う。また、ステップS127において、CPU37は、同様に撮像装置1のY方向も水平方向であるため、第2ブレ補正部13Bにより、重力成分を加味せずY方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0085】
ステップS123において撮像装置1の姿勢が水平でないと判定された場合、撮像装置1の姿勢が水平方向に対して斜め向きであることが考えられる。そこで、ステップS128において、CPU37は、HPF49において使用されるカットオフ周波数を、加速度信号から想定される撮像装置1の撮像方向の、水平方向に対する傾斜角度に基づいて調整する。
【0086】
そして、ステップS129において、CPU37は、第1ブレ補正部13Aにより、HPF49におけるオフセット値を変更した上でX方向の手振れ補正を行う。また、ステップS131において、CPU37は、第1ブレ補正部13Aにより、HPF49におけるオフセット値を変更した上でX方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0087】
このようにして本実施形態に係る撮像装置1は、装置本体の姿勢を判定し、検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う重力の影響の度合いに応じた重力成分を調整して算出し、算出されたブレ量に基づいてブレを補正する。これにより、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0088】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る撮像装置1Aについて添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態に係る撮像装置1Aは、第1実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1及び図2に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
【0089】
また、図7は、本実施形態に係る撮像装置1Aにおけるブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。なお、図5と同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、撮像装置1Aは、タイマー部55を備えている点で、第1実施形態に係る撮像装置1と異なっている。タイマー部55は、切替部40から開始指示を受信するとタイマー時間の計時を開始し、切替部40からリセット指示を受信するとタイマー時間を0に設定し直して再び計時を開始するとともに、切替部40からタイマー時間要求指示を受信すると切替部40に対して計時中のタイマー時間を送信する。
【0091】
次に、本実施形態に係る撮像装置1Aにおけるブレ補正処理のルーチンを示すブレ補正処理プログラムに基づいて説明する。撮像装置1Aは、撮影モードに設定されている間に、所定時間経過毎にブレ補正処理プログラムを実行する。
【0092】
図8を参照して、ブレ補正処理プログラムを実行する際のCPU37の実行処理を説明する。なお、図8は、撮像装置1AのCPU37により実行されるブレ補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該ブレ補正処理プログラムもメモリ35に予め記憶されている。なお、ブレ補正処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
【0093】
始めに、ステップS201において、CPU37は、切替部40にタイマー部55に対して開始指示を送信させることでタイマーを起動する。このタイマーのタイマー時間により、撮像装置1Aの姿勢が一定時間継続されているか否かが判定される。
【0094】
次に、ステップS203において、CPU37は、ステップS101と同様の手順で、撮像装置1Aがマクロモードに設定されているか否かを判定する。
【0095】
ステップS203においてマクロモードに設定されていないと判定された場合は、ステップS205において、CPU37は、ステップS103と同様の手順で、倍率が0.2以上であるか否かを判定する。
【0096】
ステップS203においてマクロモードに設定されていると判定された場合、または、ステップS205において倍率が0.2倍以上であると判定された場合は、手振れによる撮影画像のブレ量が大きいため、撮像装置1Aのx方向及びy方向においてブレ量の算出に重力成分を加味することが望ましく、ステップS207において、CPU37は、ステップS207と同様の手順で、x方向に第1ブレ補正部13Aを設定することにより、第1ブレ補正部13Aにより、重力成分を加味してx方向の手振れ補正を行う。また、ステップS209において、CPU37は、y方向に第1ブレ補正部13Aを設定することにより、第1ブレ補正部13Aにより、重力成分を加味してy方向の手振れ補正を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0097】
ステップS205において倍率が0.2倍未満であると判定された場合は、ステップS211において、CPU37は、ステップS109の手順と同様にして、撮像装置1Aの姿勢の情報を取得して、メモリ35に記憶する。
【0098】
ステップS213において、CPU37は、撮像装置1Aの姿勢が変更されたか否かを判定する。この際、CPU37、前回ステップS211において記憶された撮像装置1Aの姿勢と、今回ステップS207において記憶された撮像装置1Aの姿勢とを比較することで、姿勢が変更されたか否かを判定する。
【0099】
ステップS213において撮像装置1Aの姿勢が変更されたと判定された場合は、ステップS215において、CPU37は、変更後の新たな姿勢が一定時間継続されることを判定するために、切替部40にタイマー部55に対してリセット指示を送信させることでタイマーを再起動して、ステップS203に移行する。
【0100】
ステップS213において撮像装置1Aの姿勢が変更されていないと判定された場合は、ステップS217において、CPU37は、タイマー時間が所定値以上であるか否かを判定する。この際、CPU37は、切替部40にタイマー部55に対してタイマー時間要求指示を送信させてタイマー部55からタイマー時間を取得させることでタイマー時間を取得する。そして、CPU37は、取得したタイマー時間が所定値以上であるか否かを判定する。この所定値を示す情報は、予め設定されてメモリ35に記憶されている。
【0101】
ステップS217においてタイマー時間が所定値未満であると判定された場合は、CPU37は、撮像装置1Aの姿勢が一定時間継続していないものとし、ステップS203に移行する。
【0102】
ステップS217においてタイマー時間が所定値以上であると判定された場合は、CPU37は、撮像装置1Aの姿勢が一定時間継続しているものとして、x方向及びy方向の各々においてブレ補正処理を行う。すなわち、CPU37は、ステップS219乃至S241の処理(ステップS111乃至S131の各々の処理に対応)を行い、ブレ補正処理プログラムを終了する。
【0103】
このようにして本実施形態に係る撮像装置1Aは、装置本体の姿勢を判定し、検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う重力の影響の度合いに応じた重力成分を調整して算出し、算出されたブレ量に基づいてブレを補正する。これにより、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0104】
また、本実施形態に係る撮像装置1Aは、装置本体の姿勢が予め定められた時間以上継続した場合にのみ、当該姿勢であると判定することで、装置本体の姿勢をより精密に考慮した上で、重力成分の影響を適切に判断して手振れ補正の補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0105】
なお、本実施形態に係る撮像装置1は、撮像光学系3にブレ補正レンズ23を備え、ブレ補正レンズ23を光軸Lに垂直な面内で移動させることにより手振れの補正を行う例を説明したが、これに限らない。例えば、手振れの補正は、撮像光学系3の光軸Lに対して撮像素子12を移動させることによっても行うことができる。本実施形態に係る撮像装置1は、このように撮像素子12を移動させて手振れ補正を行う撮像装置にも好適である。
【0106】
また、本実施形態では、撮像素子12がCCD型の撮像素子である例を説明したが、これに限らず、CMOS型の撮像素子を用いても良い。
【符号の説明】
【0107】
1…撮像装置,2…筐体,3…光学撮像系,4…ストロボ,5…表示部,6…操作部,6A…メニュー操作部,6B…レリーズボタン,6C…電源ボタン,6D…モード切替ボタン,12…撮像素子,13A、13B…ブレ補正部,14…角速度センサ,15…加速度センサ,16…AF検出回路,17…AE/AWB検出回路,21…レンズ,22…絞り,23…ブレ補正レンズ,31…AFE,32,42、52 …A/D変換機,33…DSP,34…画像処理部,35…メモリ,36…表示部,37…CPU,38…操作部,40…切替部,41…BPF,42…A/D変換機,43、46、49…HPF,44…位相補償回路,45…積分回路,47…LPF,48、50…位相補償回路,57、51…積分回路,52…回転半径算出部,53…ブレ量算出部,54…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像素子と、
装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段と、
装置本体の姿勢を判定する判定手段と、
前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定手段によって判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正手段と、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記判定手段は、装置本体の前記撮像素子の撮像方向を中心軸とした横方向の傾斜方向が水平方向を含む予め定められた範囲内にある場合に横撮り姿勢であると判定し、当該傾斜方向が重力方向を含む予め定められた範囲内にある場合に縦撮り姿勢であると判定し、
前記算出手段は、前記判定手段により前記横撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向に対する前記重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出するとともに、縦方向に対する前記重力成分を調整して前記ブレ量を算出し、前記判定手段により前記縦撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向に対する前記重力成分を調整して前記ブレ量を算出するとともに、前記縦方向に対する前記重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出する
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記撮像方向が重力方向を含む予め定められた範囲内にある場合に上下撮り姿勢であると更に判定し、
前記算出手段は、前記判定手段により前記上下撮り姿勢であると判定された場合、前記横方向及び前記縦方向の重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出する
請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記撮像素子により撮像を行う際の撮像倍率が予め定められた閾値未満であった場合、前記横方向及び前記縦方向の重力成分を調整せずに前記ブレ量を算出する
請求項2または3のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項5】
前記算出手段は、マクロ撮影モードに設定されている場合、前記横方向及び前記縦方向の各々の重力成分を調整して前記ブレ量を算出する
請求項2乃至4のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項6】
前記判定手段は、装置本体の姿勢が、予め定められた時間以上継続した場合に、当該姿勢であると判定する
請求項1乃至5のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項7】
前記補正手段は、駆動されることにより装置本体の手振れブレを補正するブレ補正レンズを駆動することにより、前記手振れを補正する
請求項1乃至6のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項8】
被写体像を撮像する撮像素子と、装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段とを備えたコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、
前記コンピュータを、
装置本体の姿勢を判定する判定手段と、
前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定手段により判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
被写体像を撮像する撮像素子と、
装置本体における角速度及び加速度を検出する検出手段とを備えた撮像装置における手振れ補正方法であって、
装置本体の姿勢を判定する判定ステップと、
前記検出手段によって検出された前記角速度及び加速度に基づいて、撮影光軸を回転させる角度ブレ及び撮影光軸を平行移動させるシフトブレが含まれるブレ量を、前記判定ステップにより判定された姿勢に応じて、手振れ補正を行う方向の重力の影響の度合いに応じて重力成分を調整して算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出されたブレ量に基づいて手振れを補正する補正ステップと、
を行う手振れ補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15571(P2013−15571A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146398(P2011−146398)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】