説明

撮像装置、光学装置および撮影装置の製造方法

【課題】塵埃などを除去し得る除塵能力に優れる撮像装置と、その撮像装置を有する光学装置と、撮像装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光学系による像を撮像する撮像素子12に対向して備えられ、第1軸と当該第1軸に対して直交する第2軸とを有する結晶構造の水晶を含む水晶板18と、前記水晶板18における前記光学系の光軸に交差する面に備えられ、前記水晶板を振動させる振動部材とを有し、前記光学系の光軸に交差する前記水晶板の面が、前記第2軸から見て、前記第2軸を中心として前記第1軸から反時計回りに約+45度回転した角度になっている撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、光学装置および撮影装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式デジタルカメラなどでは、撮像素子のフィルタ表面にゴミが付着し、撮影した映像にゴミが写りこむなどの問題がある。このような問題を解消するために、防塵部材を、撮像素子と光学系との間に配置し、撮像素子およびフィルタなどの防塵を図ると共に、防塵部材に付着したゴミなどを振動により除去するシステムが開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のシステムでは、防塵部材が円形のために、撮像素子をカバーするためには、大型の防塵部材が必要であり、撮像装置の小型化の要請に反していた。
【0004】
また、従来のシステムでは、防塵部材を振動させる圧電素子が、防塵部材における撮像素子側の面に取り付けられている。そのため、圧電素子自体が発塵することによって発生した塵埃が、防塵部材と撮像素子との間に配置された光学フィルタ等に付着し、これを除去することが困難であるという問題も懸念される。
【特許文献1】特開2003−338961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、塵埃などを除去し得る除塵能力に優れる撮像装置と、その撮像装置を有する光学装置と、撮像装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る撮像装置は、
光学系(48)による像を撮像する撮像素子(12)に対向して備えられ、第1軸と当該第1軸に対して直交する第2軸とを有する結晶構造の水晶を含む水晶板(18)と、
前記水晶板(18)における前記光学系の光軸に交差する面に備えられ、前記水晶板(18)を振動させる振動部材とを有し、
前記光学系(48)の光軸に交差する前記水晶板(18)の面が、前記第2軸から見て、前記第2軸を中心として前記第1軸から反時計回りに約+45度回転した角度になっている。
【0007】
本発明の第1の観点に係る撮像装置では、水晶板(18)は、光学フィルタの一部として利用することが可能であり、防塵のための新たな部材を別に必要とせず、部品点数の削減および装置のコンパクト化に寄与する。
【0008】
第1軸に対して約−45度の角度である表面を有する水晶板に比較して、第1軸に対して約+45度の角度である表面を有する水晶板(18)は、弾性係数が異なり、曲げ剛性が低く、共振周波数が例えば約20%低い。そのために、本発明の水晶板(18)は、曲げ変形を生じやすく、塵の除去能力が高い。
【0009】
また、たとえば水晶板(18)を長方形とすることも好ましい。この場合、撮像素子(12)の撮像面が長方形であるため、円形ガラスの場合と比べて、防塵のために水晶板(18)が占めるスペースが少なくて済み、装置のコンパクト化に寄与する。
【0010】
本発明に係る第2の撮像装置は、
光学系による像を撮像する撮像素子に対向して備えられ、光学的異方性を有する光学部材と、
前記光学部材における前記光学系の光軸に交差する面に備えられ、前記光学部材を振動させる振動部材とを有する。
【0011】
本発明の第2の観点に係る撮像装置では、
光学的異方性を有する光学部材は、光学フィルタの一部として利用することが可能であり、防塵のための新たな部材を別に必要とせず、部品点数の削減および装置のコンパクト化に寄与する。
【0012】
本発明の第3の観点に係る撮像装置は、
像を撮像する撮像素子(12)と、
前記撮像素子(12)と対向して備えられる透明部材(18)と、
前記透明部材(18)に備えられ、当該透明部材(18)を振動させる励振部材(20)とを有し、
前記透明部材(18)と前記励振部材(20)とをエポキシ系紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とする。
【0013】
また、例えば、本発明に係る撮像装置は、
像を撮像する撮像素子(12)と、
前記撮像素子(12)と対向して備えられる透明部材(18)と、
前記透明部材(18)に備えられ、当該透明部材(18)を振動させる励振部材(20)とを有し、
前記透明部材(18)と前記励振部材(20)とをカチオン重合型紫外線硬化型接着剤で固定することを特徴とするものであってもよい。
【0014】
本発明の撮像装置の製造方法は、
結晶成長軸である第1軸と当該第1軸に対して直交する電気軸である第2軸とを有する結晶構造の水晶を含む長方形の水晶板(18)の光学系の光軸に交差する面に、前記水晶板(18)を振動させる振動部材(20)を設け、
前記光学系(48)による像を撮像する撮像素子(12)に対向するように前記水晶板(18)を配置することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光学装置は、上記に記載の撮像装置を備えたことを特徴とする光学装置であり、スチルカメラやビデオカメラに限らず、顕微鏡、携帯電話などの光学装置も含む。
【0016】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図、
図2は図1に示す撮像装置の平面図、
図3は図2に示すIII−III線に沿う概略断面図、
図4は図2に示すIV−IV線に沿う概略断面図、
図5Aおよび図5Bは水晶の結晶軸を説明するための概略図、
図6A〜図6Cは図3および図4に示す水晶板と水晶の結晶軸との関係を示す平面図、
図7A〜図7Eは振動モードを示す概略図、
図8は水晶板に発生する歪みと曲げ振動との関係を示す概略図、
図9は振動周波数と周波数ステップとの関係を示すグラフ、
図10は駆動周波数と振動加速度との関係を示すグラフ、
図11A、図11B及び図12は本発明の他の実施形態に係る要部断面図、
図13は本発明の一実施形態に係る撮像装置の製造方法を示すフローチャート図、
図14Aは本発明の他の実施形態に係る撮像装置に用いられる光学異方性板の平面図、図14Bは図14Aに示す光学異方性板の側面図、
図15は光学異方性板の方向と弾性係数との関係を示す図、
図16Aおよび図16Bは光学異方性板の振動状態を示す図、
図17は光学異方性板が切り出されるインゴットの概略図、
図18はそのインゴットの側面図、
図19はそのインゴットの平面図、
図20は光学異方性板の光学特性を示す概略図、
図21A〜図21Cは本発明の比較例に係る光学異方性板の側面図である。
第1実施形態
【0018】
まず、図1に基づき、本実施形態のカメラの全体構成について説明する。撮像素子ユニット4を有するブレ補正装置2は、カメラボディ40の内部に、光学レンズ群48の光軸αに対して撮像素子ユニット4の水晶板18が略垂直に交差するように配置される。水晶板18については、後述する。
【0019】
図1に示すように、カメラボディ40には、レンズ鏡筒42が着脱自在に装着される。なお、コンパクトカメラなどでは、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが一体であるカメラもあり、カメラの種類は特に限定されない。また、スチルカメラに限らず、ビデオカメラ、顕微鏡、携帯電話などの光学機器にも適用できる。以下の説明では、説明の容易化のために、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが着脱自在となる一眼レフカメラについて説明する。
【0020】
カメラボディ40の内部において、撮像素子ユニット4の光軸α方向の前方には、シャッタ部材44が配置してある。シャッタ部材44の光軸α方向の前方には、ミラー46が配置してあり、その光軸α方向の前方には、レンズ鏡筒42に内蔵してある絞り部47および光学レンズ群48が配置してある。
【0021】
カメラボディ40には、ボディCPU50が内蔵してあり、レンズ接点54を介してレンズCPU58に接続してある。レンズ接点54は、カメラボディ40に対してレンズ鏡筒42を連結することで、ボディCPU50と、レンズCPU58とを電気的に接続するようになっている。ボディCPU50には、電源52が接続してある。電源52は、カメラボディ40に内蔵してある。
【0022】
ボディCPU50には、レリーズスイッチ51、ストロボ53、表示部55、ジャイロセンサ70、EEPROM(メモリ)60、防振スイッチ62、防塵フィルタ駆動回路56、画像処理コントローラ59、AFセンサ72、防振追随制御IC74などが接続してある。画像コントローラ59には、インターフェース回路57を介して、撮像素子ユニット4の撮像素子12(図2〜図4参照)が接続してあり、撮像素子12にて撮像された画像の画像処理を制御可能になっている。撮像素子12は、たとえばCCDやCMOS等の固体撮像素子で構成される。
【0023】
ボディCPU50は、レンズ鏡筒42との通信機能と、カメラボディ40の制御機能を有している。また、ボディCPU50はEEPROM60から入力された情報と、ジャイロセンサ70からの出力を受けて算出したブレの角度、焦点距離情報、距離情報から、防振駆動部目標位置を算出し、その防振駆動部目標位置を防振追従制御IC74へ出力する。また、ボディCPU50は、ジャイロセンサ70のセンサ出力を図示しないアンプを介してボディCPU50に入力し、ジャイロセンサ70の角速度を積分することによって、振れ角度を求める。
【0024】
また、ボディCPUは、レンズ鏡筒42との装着が完全であるか否かの通信を行い、レンズCPU58から入力された焦点距離、距離情報とジャイロセンサから目標位置を演算する。レリーズスイッチ51が半押し時であれば、AE、AFなどの状況に応じて、防振駆動等の撮影準備動作の指示を、レンズCPU58と、防振追従制御IC74とに出力する。全押し時にはミラー駆動、シャッター駆動、絞り駆動等の指示を出力する。
【0025】
表示部55は、主として液晶表示装置などで構成され、出力結果やメニューなどを表示する。レリーズスイッチ51は、シャッター駆動のタイミングを操作するスイッチであり、ボディCPU50にスイッチの状態を出力し、半押し時にはAF、AE、状況により防振駆動を行い、全押し時には、ミラーアップ、シャッター駆動等を行う。
【0026】
ミラー46は、構図決定の際にファインダーに像を映し出すためのもので、露光中は光路から退避する。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にミラーアップ、露光終了後にミラーダウンを行う。不図示のミラー駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。ミラー46には、サブミラー46aが連結してある。
【0027】
サブミラー46aは、AFセンサに光を送るためのミラーであり、ミラーを通過した光束を反射してAFセンサに導く。このサブミラー46aは、露光中は光路から退避する。
【0028】
シャッタ部材44は、露光時間を制御する機構である。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にシャッター駆動を行う。不図示のシャッター駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。
【0029】
AFセンサ72は、オートフォーカス(AF)を行うためのセンサである。このAFセンサとしては、通常CCDが用いられる。防振スイッチ62は、防振ON、OFFの状態を撮像素子ユニットCPUに出力する。ジャイロセンサ70は、ボディに生じるブレの角速度を検出し、ボディCPU50に出力する。EEPROM60は、ジャイロセンサのゲイン値、角度調整値などの情報を有し、ボディCPUに出力する。
【0030】
防塵駆動フィルタ駆動回路56は、後述する図2および図3に示す圧電素子20に接続してあり、所定条件を満足する場合に、圧電素子20を駆動し、図7B〜図7Eに示すように、水晶板18を振動させ、光学レンズ群48の光軸α(図1参照)に略直交する水晶板18の表面181に付着している塵埃などを飛ばして除去する動作を行う。
【0031】
たとえば圧電素子20には、周期的な矩形波もしくはサイン波等の電圧を印加する。このように防塵フィルタ駆動回路56を制御して圧電素子20に周期的な電圧を印加することにより、水晶板18が振動し、塵が水晶板18の表面から受けた慣性力が塵の付着力を上回ると、塵は水晶板18の表面から離れる。
【0032】
圧電素子20の周期的な駆動は、低電圧でなるべく大きな振幅を得るために、水晶板18の表面を共振させる振動数で圧電素子20を駆動させることが好ましい。共振する周波数は、形状と材質と支持の方法と振動モードによって決まる。水晶板18を支持する部分では振幅0となる節位置にて支持するようにすることが好ましい。水晶板18の支持構造に関しては、後述する。
【0033】
本実施形態では、防塵駆動フィルタ駆動回路56には、振動モード選択回路80が接続してある。振動モード選択回路80は、ボディCPU50を通して、防塵駆動フィルタ駆動回路56を制御する。振動モード選択回路80による制御の詳細については、後述する。
【0034】
防振追従制御IC74は、防振制御を行うためのICである。ボディCPU50から入力された防振駆動部目標位置と、位置検出部から入力された防振駆動部位置情報から、防振駆動部移動量を算出し、防振駆動ドライバ76へ出力する。すなわち、防振追随制御IC74には、位置センサ33からの撮像素子ユニットの位置信号が入力されると共に、ボディCPU50からの出力信号が入力される。ボディCPU50では、ジャイロセンサ70の出力を受けて算出したブレの角度、焦点距離エンコーダで検出された焦点距離情報、距離エンコーダ64で検出された距離情報などから、防振駆動部目標位置を算出し、その防振駆動部目標位置を防振追従制御IC74へ出力する。
【0035】
防振駆動ドライバ76は、防振駆動部を制御するためのドライバであり、防振追従制御ICから駆動量の入力を受けて、防振駆動部の駆動方向、駆動量を制御する。すなわち、防振駆動ドライバ76は、防振追従制御IC74からの入力情報に基づき、コイル28x,28yに駆動電流を流し、撮像素子ユニット4を固定部6に対してX軸およびY軸方向に移動させ、像ブレ補正制御を行う。
【0036】
図1に示すレンズ鏡筒42には、焦点距離エンコーダ66、距離エンコーダ64、絞り部47、絞り部47を制御する駆動モータ68、レンズCPU58、ボディ部とのレンズ接点54、及び、複数のレンズ群48が具備してある。レンズ接点54には、カメラボディ40からレンズ駆動系電源を供給するための接点と、レンズCPU58を駆動するためのCPU電源の接点とデジタル通信用の接点がある。
【0037】
駆動系電源およびCPU電源はカメラボディ40の電源52から供給され、レンズCPU58や駆動系の電源を供給している。デジタル通信用接点ではレンズCPU58から出力された焦点距離、被写体距離、フォーカス位置情報等のデジタル情報をボディCPU50に入力するための通信と、ボディCPU50から出力されたフォーカス位置や絞り量等のデジタル情報をレンズCPU58に入力するための通信を行う。ボディCPU50からのフォーカス位置情報や絞り量情報を受けてレンズCPU58がAF、絞り制御を行う。
【0038】
焦点距離エンコーダ66は、ズームレンズ群の位置情報より焦点距離を換算する。すなわち、焦点距離エンコーダ66は、焦点距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0039】
距離エンコーダ64は、フォーカシングレンズ群の位置情報より被写体距離を換算する。すなわち、距離エンコーダ64は、被写体距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0040】
レンズCPUは、カメラボディ40との通信機能、レンズ群48の制御機能を有している。レンズCPUには、焦点距離、被写体距離等が入力され、レンズ接点を介してボディCPU50に出力する。ボディCPU50からレンズ接点54を介して、レリーズ情報、AF情報が入力される。
【0041】
図2〜図4に示すように、本実施形態に係る撮像素子ユニット4は、基板10を有し、基板10の中央部上面には、撮像素子12が固定してある。撮像素子12の周囲には、ケース17が配置してあり、基板10の表面に、着脱自在に、あるいは着脱不可に固定してある。
【0042】
ケース17は、たとえば合成樹脂あるいはセラミックなどの絶縁体などで構成され、その上面には、内周側取付部17aと、外周側取付部17bとが段差状に形成してある。ケース17の内周側取付部17aには、光透過性を有する光学部材要素30の外周が取り付けられる。その結果、撮像素子12の周囲は、基板10、ケース17および光学部材要素30により密封される。
【0043】
ケース17の外周側取付部17bには、気密シール部材16を介して水晶板18が配置され、加圧部材19によって気密シール部材16へと押圧されている。ここでは、加圧部材19として金属板を用い、加圧部材19の変形に起因する弾性力により、水晶板18を気密シール部材16方向へと付勢している。
【0044】
その結果、撮像素子12および光学部材要素30が設けられた収納空間が気密状態となり、塵等がケース外部から収納空間に入るのを防止することができる。加圧部材19はケース17の上面に、たとえば着脱自在にビス止めされており、ケース17の上面に形成してある位置決めピン17cにより、長方形状の水晶板18の長手方向の位置決めが成されている。なお、気密シール部材16は、たとえば発泡樹脂、ゴムなどの剛性の低い材料で構成してあり、気密を確保しながら、後述する水晶板18の曲げ振動の動きを吸収するようになっている。
【0045】
光学部材要素30は、この実施形態では、複数の光学板の積層構造であり、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板(λ/4波長板)15との積層板で構成してある。これらの積層板で構成される光学部材要素30は、水晶板18よりも小さな面積の長方形であり、しかも、撮像素子12の平面側面積よりも大きく、撮像素子12を全て覆う面積を有する。
【0046】
水晶波長板15は、直線偏光を円偏向に変えることができる光学板であり、赤外線吸収ガラス板14は、赤外線を吸収する機能を有する。また、水晶板13は、水晶板18に対して、相互に複屈折の方向が90度異なる水晶板であり、一方が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板であれば、他方の水晶板は、0度方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板である。本実施形態では、水晶板18が0度方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板であり、水晶板13が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板である。
【0047】
すなわち、本実施形態では、相互に離れて配置された二つの水晶板13および18により、基本的には、光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。なお、一般的には、光学ローパスフィルタは、二つの水晶板13および18の間に、赤外線吸収ガラス14および水晶波長板15が全て積層されて光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。
【0048】
本実施形態では、ケース17の内部において、二つの水晶板13および18を相互に離れて配置し、特に、ケース17の外側に配置される水晶板18を、図5Aおよび図5Bに示す水晶18aから特定の角度(θ=+45度)で切り出した水晶板を用いている。水晶18aは、人工の水晶でもよいし天然水晶でもよい。
【0049】
図5Aおよび図5Bに示すように、水晶18aの結晶軸は、例えば、右手系の座標軸である水晶の電気軸(X軸)、水晶の機械軸(Y軸)、水晶の光軸(Z軸)によって定義される。水晶の光軸とは結晶の成長軸である。水晶の電気軸とは、水晶の光軸に垂直であって水晶の光軸に平行な稜線を通る軸である。電気軸のプラス方向(+X方向)とは、電気軸の方向であって、圧力を加えるとプラスの電荷を生じる方向である。電気軸のマイナス方向(−X方向)とは、電気軸の方向であって、圧力を加えるとマイナスの電荷を生じる方向である。水晶の機械軸とは、水晶の光軸及び水晶の電気軸に直交する軸である。なお、水晶の電気軸、水晶の機械軸及び水晶の光軸は、水晶のX軸、水晶のY軸及び水晶のZ軸と呼ばれることもある。
【0050】
本実施形態において、水晶板18は、光学レンズ群48の光軸α(図1参照)に交差(略直交)する面181が、電気軸のプラス方向(+X方向)から見て、電気軸(X軸)を中心として水晶の光軸(Z軸)から機械軸(Y軸)方向へ反時計回りにθ=約+45度回転した角度になるように水晶18aから切出されている。
【0051】
なお、本実施形態において、約+45度の角度とは、+45度から変動したものを含む。例えば、+45度の角度に対して、±3度の変動であれば十分な効果を得ることができる。また、θの角度がプラスの値とは、Z軸に対して、X軸の矢印に向けて時計回り方向の角度であり、反対方向の角度は、マイナスの値となる。
【0052】
本実施形態では、光学部材要素30の一部を構成する水晶板13は、水晶板18と同様に、水晶18aからθ=約+45度の角度の面が平板の平面となるように切り出された平板であっても良いし、その他の角度にて切り出された平板であっても良い。ただし、水晶板13の複屈折の方向は、水晶板18に対して、90度異なる水晶板であることが好ましい。効果的にOPLFとして機能し、モアレ現象を防止するためである。
【0053】
水晶18aからθ=+45度の角度の面でカットされた平板から成る水晶板18は、θ=−45度の角度の面でカットされた平板から成る水晶板に比較して、弾性係数が異なり、曲げ剛性が低く、共振周波数が約20%低い。
【0054】
水晶板18の厚みは、撮像素子の画素ピッチに対応して最適に設計され、例えば水晶板13の厚みと同じである。
【0055】
図6Aおよび図6Bに示すように、水晶板18は、図5Bに示す水晶18aから長方形状に切り出され、長方形の短辺方向が水晶18aのX軸と平行になる。水晶板18の表面および裏面は、Z軸およびY軸に対して約45度の角度に傾斜している面となる。
【0056】
図2、図3、図6Aおよび図6Bに示すように、水晶板18の表面(ケース17に対して外側の面)には、励振部材としての一対の圧電素子20が、長方形状の水晶板18の長辺方向Lに沿って両側位置に、X軸方向に平行に延在するように接着してある。圧電素子20は、たとえばPZT素子で構成される。
【0057】
次に、主として図7および図8に基づき、圧電素子20による水晶板18の振動モードについて説明する。
【0058】
本実施形態では、図1に示す振動モード選択回路80から防塵フィルタ駆動回路56に信号を送り、たとえば図7Bおよび図7Cに示すように、水晶板18を、水晶板18の長手方向L(X軸に垂直)に沿って6次曲げ振動モードで振動させる。6次曲げ振動モードの節22は、水晶板18の長手方向Lに沿って7つであり、それらの節22は、X軸に対して平行になる。振動の節22の位置は、図7Bおよび図7Cに示すように、振動モードが変化しない場合には、変化しない。
【0059】
また、振動モードを変える場合には、図1に示す振動モード選択回路80から防塵フィルタ駆動回路56に信号を送り、振動モードを変化させる。たとえば駆動周波数を高くすることで、図7Dおよび図7Eに示すように、水晶板18を、水晶板18の長手方向Lに沿って7次曲げ振動モードで振動させることができる。
【0060】
7次曲げ振動モードの節22は、水晶板18の長手方向Lに沿って8つであり、それらの節22は、X軸に対して平行になる。振動の節22の位置は、図7Dおよび図7Eに示すように、振動モードが変化しない場合には、変化しない。
【0061】
図7B〜図7Eに示すように、振動モードを変化させることで、水晶板18における節22の位置を変化させることができる。その結果、ある特定の振動モードでは、水晶板18の表面において、節22の位置に吹き飛ばされずに残っていた塵埃などが、他の振動モードでは、節22の位置が変化することから振動の加速度で吹き飛ばされることになる。その結果として、水晶板18の外面全域に渡りゴミ除去が可能になる。
【0062】
本実施形態では、水晶板18の長手方向Lの両側に配置してある各圧電素子20の外側に位置する節22の近くにおいて、図2〜図4に示す加圧部材19が、水晶板18の外面から気密シール部材16の方向に押圧している。加圧部材19は、水晶板18の長手方向Lの両側を、振動の節22に平行に加圧するのみであり、水晶板18における曲げ振動の節22と直交する方向の両端部は加圧しない。水晶板18の曲げ振動を抑制しないようにするためである。
【0063】
なお、圧電素子20の駆動周波数に応じて水晶板18が曲げ振動を行うと、図8に示すように、X軸に垂直で水晶板18の平面方向(この実施形態では水晶板18の長手方向L)に、水晶板18の内部では、圧縮歪みと引張歪みが発生する。
【0064】
本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、水晶板18は、OLPFの一部として利用することが可能であり、防塵のための新たな部材を別に必要とせず、部品点数の削減および装置のコンパクト化に寄与する。
【0065】
また、図5Aおよび図5Bに示すように、Z軸に対して約−45度の角度である表面を有する水晶板に比較して、Z軸に対して約+45度の角度である表面を有する水晶板18は、弾性係数が異なり、曲げ剛性が低く、共振周波数が約20%低い。そのために、その水晶板18は、曲げ変形を生じやすく、塵の除去能力が高い。
【0066】
また、その水晶板18は、共振周波数が低いため、圧電素子20に対する駆動回路の出力周波数(駆動周波数)を下げることが可能になる。駆動周波数を下げることができれば、たとえばマイコンのクロック周波数を用いて駆動周波数をステップ的に変化させる場合は、図9に示すように、駆動周波数が低くなるほど周波数ステップΔfが小さくなり、たとえば周波数ステップをΔf2からΔf1に下げることが可能になる。図10に示すように、高い駆動周波数f2にて振動加速度がピークとなる振動モードでは、周波数ステップΔf2の幅が大きく、振動加速度がピークとなる周波数位置で振動させることが困難である。
【0067】
これに対して、図10に示すように、低い駆動周波数f1にて振動加速度がピークとなる振動モードでは、周波数ステップΔf1の幅を狭くすることができ、振動加速度がピークとなる周波数位置に近い位置で振動させることが容易である。また、本実施形態では、駆動周波数が低いため、振動回路の設計、製作が容易になる。
【0068】
さらに、本実施形態では、水晶板18が長方形であり、撮像素子12の撮像面が長方形であるため、円形ガラスを振動させる場合と比べて、防塵のために水晶板が占めるスペースが少なくて済み、装置のコンパクト化に寄与する。
【0069】
さらにまた本実施形態では、OPLFの一部を構成する一方の水晶板18が、当該水晶板18を除くOPLFの光学部材要素30に対して、気密シール部材16の厚みに相当する所定の間隔で備えられている。そのため、水晶板18と光学部材要素30を含むOPLFの全体を振動させる場合に比較して、水晶板18のみを振動させることで、少ないエネルギーで振動加速度を大きくすることが可能になり、防塵効果が向上すると共に、省エネルギーにも寄与する。
【0070】
さらに本実施形態では、水晶板の表面弾性波による振動(駆動周波数が数MHz)ではなく、水晶板18の曲げ振動(駆動周波数が数十kHz〜数百kHz)を用いて、振動加速度による塵埃などの除去機能を発揮しているため、防塵効果に優れている。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0072】
たとえば、上述した実施形態では、図6Aおよび図6Bに示すように、水晶板18が長方形であり、長方形の短辺がX軸と略平行であるが、図6Cに示すように、長方形の長辺をX軸と略平行にしても良い。また、上述した実施形態では、一対の圧電素子20を、長方形の水晶板18の長辺方向の両側に配置したが、短辺方向の両側に配置しても良い。
【0073】
また、別の実施形態では、図2〜図3に示すケース17よりも、水晶板18の長手方向Lの幅を大きくし、水晶板18における長手方向Lの両端において、水晶板18の背面に圧電素子20を接着するように構成しても良い。
【0074】
さらに別の実施形態では、図11Aおよび図11Bに示すように、水晶板18に、光透過板90を一体化して光学部材板を構成し、一体となって図7B〜図7Eに示すように曲げ振動させても良い。光学部材板としては、特に限定されないが、たとえばガラス板、あるいはその他の光学特性板などで構成される。光透過板90の厚みは特に限定されないが、水晶板18の厚み以下程度が好ましい。
【0075】
水晶板18と光透過板90とを一体化させるための手段としては、特に限定されないが、たとえば接着などが例示される。圧電素子20は、水晶板18の表面に接着しても良いが、光透過板90の表面に接着しても良い。
【0076】
上述した第1実施形態に係る撮像装置の製造方法は、特に限定されないが、たとえば図13に示すように、以下の工程により製造することができる。まず、ステップS1において、水晶板18を形成する。上述したように、水晶板18は所定の角度で切出すことが好ましい。次に、ステップS2において、水晶板18に圧電素子20を固定する。水晶板18と圧電素子20との固定には、後述する第2実施形態に示すように、エポキシ系紫外線硬化型接着剤またはカチオン重合型紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。次に、ステップS3において、撮像素子12に対向するように水晶板18を配置する。
第2実施形態
【0077】
本発明の第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であり、下記に示す以外は、第1実施形態と同様な構成および作用効果を有する。
【0078】
本実施形態では、図12に示すように、圧電素子20は、水晶板18の外部面18aに、エポキシ系紫外線硬化型接着剤によって固定されている。すなわち、水晶板18の外部面18aには、エポキシ系紫外線硬化型接着剤が硬化した硬化物層21が、圧電素子20との間に形成されている。このように、硬化物層21は、圧電素子20を水晶板18の外部面18aに固定している。
【0079】
エポキシ系紫外線硬化型接着剤は、例えばアクリル系接着剤等にくらべて収縮率が小さいため、圧電素子20を精度良く接着することが可能である。また、本実施形態では、表面硬化性に優れたエポキシ系紫外線硬化型接着剤を使用しているため、圧電素子20と水晶板18との接着面からはみ出している硬化物層21のはみ出し部21aについても、接着剤が十分に硬化している。したがって本実施形態に係る撮像素子ユニットでは、はみ出し部等に残存した未硬化の接着剤が、水晶板18の清掃作業時等に染み出すことはなく、水晶板18を汚してしまうことを防止している。
【0080】
また、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いるため、水晶板18の封止面18b側から紫外線を照射することによって、圧電素子20を容易に接着することができる。さらに、本実施形態では、紫外線硬化型接着剤を用いているため、熱硬化型接着剤を用いる場合にくらべて、接着時に水晶板18が受ける熱負荷が抑制される。
【0081】
本実施形態に用いるエポキシ系紫外線硬化型接着剤は、当該エポキシ系紫外線硬化型接着剤を着色する着色剤を含んでいてもよい。エポキシ系紫外線硬化型接着剤に着色剤が含まれていると、硬化物層21も着色する。したがって、圧電素子20を接着した後であっても、硬化物層21を水晶板18の封止面18b側から観察することによって、硬化物層21の形状や硬化物層21中に存在する気泡等を比較的容易に認識することが可能である。したがって、圧電素子20と水晶板18との接着状態の検査を、簡単に行うことができる。
【0082】
また、硬化物層21を着色することにより、当該硬化物層21が不要な反射を起こすことを防止し、硬化物層が反射した光によって、撮像する像が劣化したり、撮像する像に不要な像が混入することを防止できる。さらに、着色剤が含まれる硬化物層21が、圧電素子20の少なくとも一部を覆っていてもよい。これによって、圧電素子が不要な反射を起こすことを防止し、圧電素子が反射した光によって、撮像する像が劣化したり、撮像する像に不要な像が混入することを防止できる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る水晶板18の外部面18aには、図2において2点鎖線で示す清掃領域32が設けられている。清掃領域32は、外部面18aのうち、撮像素子12に対応する領域を少なくとも含むように形成されている。
【0084】
カメラの組み立て時や、ユーザーメンテナンスの際には、アルコール等の溶剤を含ませた洗浄紙等を、清掃領域32に押し当てて拭くことによって、当該清掃領域32に付着した塵埃を除去する清掃作業が行われる。水晶板18について、溶剤を用いた清掃作業を行うことによって、圧電素子20によって当該水晶板18を振動させただけでは除去しきれない塵埃を除去することが可能である。
【0085】
本実施形態に係る水晶板18では、清掃領域32の長辺方向Lの両端部は、圧電素子20に接しており、光学部材要素30に対応する領域を含むように清掃領域32が形成されている。清掃領域32は、撮像素子12に対応する領域に比較して十分に広い面積にすることが好ましい。それによって、撮像素子12への塵埃の写り込みを、より確実に防止することができる。なお、清掃領域32は、撮像素子12に対応する領域を含んでいればよく、たとえば、硬化物層21および加圧部材19との接触面を除く外部面18a全体であってもよい。
【0086】
ここで、溶剤を用いて水晶板18の外部面18aの清掃作業を行う際には、清掃作業で用いる溶剤が、硬化物層21に接触する場合がある。その場合、圧電素子を接着する接着剤として、アクリル系接着剤等を用いる従来技術では、耐溶剤性が劣るため、接着剤が硬化した硬化物が、溶剤と接触した際に溶け出して、水晶板を汚すという問題が発生するおそれがある。
【0087】
また、従来技術では、接着剤が硬化した硬化物が、溶剤と接触した際に溶け出して、接着強度の低下または圧電素子の剥がれが発生するという問題が発生することがある。しかし、本実施形態では、耐溶剤性の良いエポキシ系紫外線硬化型接着剤によって硬化物層21が構成してあるため、硬化物層21が溶剤と接触しても、硬化物層21が溶け出すことはない。したがって、本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、硬化物層21が溶け出すことに起因する水晶板18の汚れ、圧電素子20の接着強度の低下または圧電素子20の剥がれ等を防止することができる。
【0088】
このように、本実施形態に係る撮像ユニット4では、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を使用しているため、洗浄領域32が形成されている外部面18aに、圧電素子20を、高い接着信頼性およびメンテナンス性を確保した状態で接着することができる。
【0089】
なお実施形態では、圧電素子20を水晶板18に接着する接着剤として、エポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いているが、その他の実施形態として、活性種としてプロトン酸を有するカチオン重合型紫外線硬化型接着剤を用いても良い。カチオン重合型紫外線硬化型接着剤についても、エポキシ系紫外線硬化型接着剤と同様にして、圧電素子20を水晶板18に接着する接着剤として用いることができる。カチオン重合型紫外線硬化型接着剤を用いた場合でも、従来技術との比較において、上述の実施形態で述べたエポキシ系紫外線硬化型接着剤を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、上述した実施形態では、水晶板18の表面に硬化物層21を介して圧電素子20を接着したが、これに限定されず、図11Bに示すように、水晶板18と一体化されている光透過板90に硬化物層21を介して圧電素子20を接着してもよい。あるいは、水晶板18ではない単一または複層の光透過板の表面に、硬化物層21を介して圧電素子20を接着してもよい。
第3実施形態
【0091】
本発明の第2実施形態は、上述した第1実施形態および第2実施形態の変形例であり、下記に示す以外は、第1実施形態と同様な構成および作用効果を有する。
【0092】
本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態における水晶板18の代わりに、ニオブ酸リチウムで構成される光学異方性板18を用いる。ニオブ酸リチウムで構成される光学異方性板18は、水晶板18と同等以上に優れた複屈折特性を有することから、OLPFの少なくとも一部として用いることかできる。
【0093】
また、ニオブ酸リチウムで構成される光学異方性板18は、機械的異方性も有し、結晶軸に対して曲げ振動しやすい方向が存在する。したがって、第1実施形態と同様にして、そのような曲げ振動しやすい方向でニオブ酸リチウムの結晶体を切断することにより、図7B〜図7Eに示す曲げ振動を生じさせやすくなる。
第4実施形態
【0094】
図14Aおよび図14Bは、ニオブ酸リチウムを含む光学異方性板18を用いた光学部材30を示す図である。光学部材30は、ニオブ酸リチウムを含む光学異方性板18と、光学異方性板18に取り付けられた圧電素子20とを有する。
【0095】
図14Bに示すように、光学異方性板18は、光学異方性板18の法線方向nに対して、Z軸がX軸回りに−45度回転する位置に位置するように構成されている。
【0096】
図示の実施形態において、ニオブ酸リチウムを含む光学異方性板18の方向を規定するXYZ軸は、図15に示す弾性定数の方向に基づいて定められている。図15において、C33(Z方向の弾性係数)が2.424×1011N/mであり、C11(X、Y方向の弾性係数)が2.030×1011N/mであり、C33(Z方向の弾性係数)がC11(XまたはY方向の弾性係数)よりも大きい。
【0097】
図16Aおよび図16Bは光学部材30の振動状態を示す図である。図16Aおよび図16Bにおいて、光学異方性板18は圧電素子20により駆動され、振動の節22が生じるように屈曲振動をする。
【0098】
図17〜図19に示すように、ニオブ酸リチウムから成る光学異方性板18は、例えば、ニオブ酸リチウムのインゴット900から切り出すことにより得られる。具体的には、まず、図17および図18に示すインゴット900からウエハ910がスライスされる。次に、図19に示すウエハ910がダイサなどでカットされ光学異方性板18が得られる。
【0099】
本実施例においては、ニオブ酸リチウムから成る光学異方性板18を用いているので、水晶の光学異方性板を用いた場合に比べて、常光線と異常光線との屈折率差が大きくなる。このため、ニオブ酸リチウムを含む光学異方性板18は、所定量の分離幅を得るために必要な厚みが、水晶の光学異方性板よりも薄くて済み、装置の薄型化を図ることができる。
【0100】
図20は、光学異方性板18の光学特性を示す図である。図20において、光学異方性板18には、紙面に垂直に振動する常光線a1、及び、紙面に平行かつ進行方向に垂直に振動する異常光線a2が入射している。異常光線a2は、常光線a1に対して角度θ1だけ屈折して光学異方性板18から射出し撮像素子12に入射している。この角度θ1は、水晶基板よりもニオブ酸リチウム基板の方が大きくなる。このため、図20に示した光学部材30は、角度θが大きい分だけ大きな分離幅b1が得られる。
【0101】
また、本実施形態の光学部材30は、図14Aおよび図14Bに示した方向にカットされた光学異方性板18を用いているので、図16Aおよび図16Bに示すようにX軸に平行な節22が生じるように駆動させたときの曲げ剛性が低くなり、良好に塵埃を除去できる。
【0102】
図21A〜図21Cは、本発明の比較例に係る光学部材91〜93を示す図である。比較例の光学部材91〜93は、図14Aおよび図14Bに示す本実施例の光学部材30とは光学異方性板のカット方向が異なり、本実施例の光学部材30よりも曲げ剛性が高い。
【0103】
なお、上述した第1〜第4実施形態では、撮像素子を移動させてブレ補正を行う撮像装置を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レンズを移動させてブレ補正を行う撮像装置でも良いし、ブレ補正機能を有しない撮像装置であっても良い。
【0104】
また、たとえば、図11Aに示す水晶板18の代わりに第4実施例のニオブ酸リチウムを含む光学異方性基板18を用いて、光学異方性基板18に光透過板90を一体化して光学部材板を構成してもよい。光学異方性基板18に光透過板90を一体化させることにより、光学異方性基板18単体の場合よりも剛性が高くなるからである。たとえば、光学異方性基板18単体では薄く、剛性が低い場合でも、光透過板90に一体化された光学部材板の状態では、十分に高い剛性を得ることができるからである。
【0105】
同様に、図11Bに示す水晶板18の代わりに第4実施例のニオブ酸リチウムを含む光学異方性基板18を用いて、光学異方性基板18に光透過板90を一体化して光学部材板を構成してもよい。光学異方性基板18に光透過板90を一体化させることにより、光学異方性基板18単体の場合よりも剛性が高くなるからである。
【0106】
第1〜第4実施例の構成は、適宜改良してもよい。また、第1実施例の構成の少なくとも一部を第2〜第4実施例の構成の少なくとも一部に組み合わせてもよく、第2実施例の構成の少なくとも一部を第1、第3〜第4実施例の構成の少なくとも一部に組み合わせてもよく、第3実施例の構成の少なくとも一部を第1〜第2または第4実施例の構成の少なくとも一部に組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図である。
【図2】図2は図1に示す撮像装置の平面図である。
【図3】図3は図2に示すIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】図4は図2に示すIV−IV線に沿う概略断面図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは水晶の結晶軸を説明するための概略図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは図3および図4に示す水晶板と水晶の結晶軸との関係を示す平面図と側面図で、図6Cはその他の例に係る水晶板と水晶の結晶軸との関係を示す平面図である。
【図7】図7Aは水晶の結晶軸と水晶板の平面との関係を示す概略図、図7B〜図7Eは振動モードを示す概略図である。
【図8】図8は水晶板に発生する歪みと曲げ振動との関係を示す概略図である。
【図9】図9は振動周波数と周波数ステップとの関係を示すグラフである。
【図10】図10は駆動周波数と振動加速度との関係を示すグラフである。
【図11】図11Aおよび図11Bは本発明の他の実施形態に係る要部断面図である。
【図12】図12は本発明のさらに他の実施形態に係る要部断面図である。
【図13】図13は本発明の一実施形態に係る撮像装置の製造方法を示すフローチャート図である。
【図14】図14Aは本発明の他の実施形態に係る撮像装置に用いられる光学異方性板の平面図、図14Bは図14Aに示す光学異方性板の側面図である。
【図15】図15は光学異方性板の方向と弾性係数との関係を示す図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは光学異方性板の振動状態を示す図である。
【図17】図17は光学異方性板が切り出されるインゴットの概略図である。
【図18】図18はそのインゴットの側面図である。
【図19】図19はそのインゴットの平面図である。
【図20】図20は光学異方性板の光学特性を示す概略図である。
【図21】図21A〜図21Cは本発明の比較例に係る光学異方性板の側面図である。
【符号の説明】
【0108】
2… ブレ補正装置
4… 撮像素子ユニット
12… 撮像素子
13… 水晶板
14… 赤外線吸収ガラス板
15… 水晶波長板
16… 気密シール部材
17… ケース
18… 水晶板
18a… 水晶
19… 加圧部材
20… 圧電素子
22… 振動の節
30… 光学部材要素
56… 防塵フィルタ駆動回路
80… 振動モード選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像を撮像する撮像素子に対向して備えられ、第1軸と当該第1軸に対して直交する第2軸とを有する結晶構造の水晶を含む水晶板と、
前記水晶板における前記光学系の光軸に交差する面に備えられ、前記水晶板を振動させる振動部材とを有し、
前記光学系の光軸に交差する前記水晶板の面が、前記第2軸から見て、前記第2軸を中心として前記第1軸から反時計回りに約+45度回転した角度になっている撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記第1軸は前記水晶の結晶成長軸であり、
前記第2軸は前記水晶の電気軸である撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板が、光の複屈折を有する方向で前記水晶から切り出された平板である撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板における前記光学系の光軸に交差する面が、前記水晶の前記第2軸に対して略平行である撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板が長方形であり、前記長方形の短辺が前記水晶の前記第2軸と略平行である撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板が長方形であり、前記長方形の長辺が前記水晶の前記第2軸と略平行である撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶の第2軸と略直交する方向に、前記水晶板に歪みが発生するように前記振動部材を駆動する駆動部を有する撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載された撮影装置であって、
前記水晶板は長方形であり、
前記駆動部は、前記長方形の水晶板の辺と略平行な振動の節が生じるように駆動する撮影装置。
【請求項9】
請求項7に記載された撮像装置であって、
前記駆動部は、振動の節が前記水晶の第2軸と略平行となる曲げ振動が前記水晶板に生じるように、前記振動部材を駆動する撮像装置。
【請求項10】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板と前記振動部材との間に供えられ、前記水晶板と前記振動部材とを固定するエポキシ系紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項11】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記水晶板と前記振動部材との間に供えられ、前記水晶板と前記振動部材とを固定するカチオン重合型紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項12】
請求項1に記載された撮像装置であって、
前記振動部材による前記水晶板の振動モードを変更する振動モード変更手段を有する撮像装置。
【請求項13】
光学系による像を撮像する撮像素子に対向して備えられ、光学的異方性を有する光学部材と、
前記光学部材における前記光学系の光軸に交差する面に備えられ、前記光学部材を振動させる振動部材とを有する撮像装置。
【請求項14】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材は、光複屈折特性を有する撮像装置。
【請求項15】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材は、水晶を含む撮像装置。
【請求項16】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材は、ニオブ酸リチウムを含む撮像装置。
【請求項17】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材は、長方形板であり、前記振動部材が前記長方形板の辺に沿って設けられている撮像装置。
【請求項18】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材は、二種類の光複屈折特性を有する第1および第2複屈折板を有し、前記振動部材は、前記第1複屈折板に備えられている撮像装置。
【請求項19】
請求項16に記載された撮像装置であって、
前記第1複屈折板が、前記第1複屈折板を除く前記光学部材の一部に対して間隔を隔てて備えられている撮像装置。
【請求項20】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材と前記振動部材との間に供えられ、前記光学部材と前記振動部材とを固定するエポキシ系紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項21】
請求項13に記載された撮像装置であって、
前記光学部材と前記振動部材との間に供えられ、前記光学部材と前記振動部材とを固定するカチオン重合型紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項22】
像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子と対向して備えられる透明部材と、
前記透明部材に備えられ、当該透明部材を振動させる振動部材と、
前記透明部材と前記振動部材とを固定するエポキシ系紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項23】
請求項22に記載された撮像装置であって、
前記振動部材は、前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側に備えられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項24】
請求項22に記載された撮像装置であって、
前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側には、溶剤による洗浄が行われる清掃領域が設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項25】
請求項22に記載された撮像装置であって、
前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤は、当該エポキシ系紫外線硬化型接着剤を着色する添加剤を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項26】
請求項22に記載された撮像装置であって、
前記透明部材の少なくとも一部は、光学ローパスフィルタであることを特徴とする撮像装置。
【請求項27】
請求項22に記載された撮像装置であって、
前記透明部材は、前記撮像素子を封止する封止面と当該封止面と対向する外部面とを有する封止部材であり、
前記外部面には、前記エポキシ系紫外線硬化型接着剤が硬化した硬化物層が備えられており、当該硬化物層は前記外部面に前記振動部材を固定していることを特徴とする撮像装置。
【請求項28】
像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子と対向して備えられる透明部材と、
前記透明部材に備えられ、当該透明部材を振動させる振動部材と、
前記透明部材と前記振動部材とを固定するカチオン重合型紫外線硬化型接着剤とを有する撮像装置。
【請求項29】
請求項25に記載された撮像装置であって、
前記振動部材は、前記透明部材の前記撮像素子が備えられた側とは反対側に備えられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項30】
請求項1に記載された撮像装置を備えたことを特徴とする光学装置。
【請求項31】
結晶成長軸である第1軸と当該第1軸に対して直交する電気軸である第2軸とを有する結晶構造の水晶を含む長方形の水晶板の光学系の光軸に交差する面に、前記水晶板を振動させる振動部材を設け、
前記光学系による像を撮像する撮像素子に対向するように前記水晶板を配置する撮影装置の製造方法。
【請求項32】
請求項31に記載された撮影装置の製造方法であって、
前記光学系の光軸に交差する前記水晶板の面が前記第2軸から見て前記第2軸を中心として前記第1軸から反時計回りに約45度回転した角度になるように前記水晶板を形成する撮影装置の製造方法。
【請求項33】
請求項31に記載された撮影装置の製造方法であって、
前記水晶板における前記光学系の光軸に交差する面が、前記水晶の前記第2軸に対して略平行となるように前記水晶板を形成する撮影装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−124702(P2009−124702A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274875(P2008−274875)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】