撮像装置、撮像制御方法及びプログラム
【課題】 逆パノラマ撮影における撮影地点の選定を支援する。
【解決手段】 任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際(逆パノラマ撮影を行う際)の撮影場所の選定を指南する指南手段は、被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段、被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段、2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置(P2、P3・・・・)を演算する演算手段、演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段を備える。ユーザは指南情報に従いながら、逆パノラマ撮影の撮影場所の選定を苦労なく行うことができる。
【解決手段】 任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際(逆パノラマ撮影を行う際)の撮影場所の選定を指南する指南手段は、被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段、被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段、2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置(P2、P3・・・・)を演算する演算手段、演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段を備える。ユーザは指南情報に従いながら、逆パノラマ撮影の撮影場所の選定を苦労なく行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像制御方法及びプログラムに関し、詳細には、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する機能を備えた撮像装置、撮像制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるパノラマ撮影は、景色等の被写体を広範囲にわたって撮影する手法である。横長の1つの画像(パノラマ写真)を生成し、この画像で被写体の全景を一望できる。デジタルカメラ等の通常のカメラでパノラマ撮影を行うには、被写体に対して撮影方向を変えながら複数の画像を撮像し、それらの画像を1つの画像に合成する(つなぎ合わせる)が、そのような合成作業は手間がかかって面倒である。
【0003】
この点において、下記の特許文献1には、「広い視野を画角の範囲で分割して撮像して得た複数の分割画像を繋ぎ合わせて合成し、広い視野を再現するパノラマ画像を得るパノラマ撮影方法であって、所望の記録画像を選択し、選択された記録画像に繋ぎ合せるための分割画像用の新たな撮像を行なうことにより、新たなパノラマ画像を得ることを特徴とするパノラマ撮影方法」の技術(以下、従来技術)が開示されている。
【0004】
この従来技術によれば、画像合成を自動で行うことができるので、面倒で手間のかかる作業を要しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−175185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パノラマ撮影に類似した手法に、「任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する」というものがある。たとえば、富士山のような被写体を様々な方向から撮影する場合などである。この場合、各々の写真はそれぞれが独立した作品になる。つまり、「静岡側から見た富士山の写真」、「山梨側から見た富士山の写真」・・・・という具合であるが、同一の被写体を撮影した複数の写真の楽しみ方はこれだけではない。たとえば、CG技術を応用すれば、複数の写真から被写体の立体画像(この場合は、富士山の立体画像)を作り出すことができる。この立体画像をディスプレイ画面上で回転させることにより、被写体を様々な方向から見るという仮想現実的なおもしろさが得られる。
【0007】
以下、立体画像生成につながるこのような撮影手法のことを、本明細書では便宜的に「逆パノラマ撮影」ということにする。
【0008】
なお、ここでいう「立体画像」とは、あたかも被写体の周りを巡りながら、その被写体の側面や裏面等の各面を見ているような感覚が得られる画像のことをいう。したがって、本件明細書における立体画像は、いわゆるステレオ視画像(あたかも人間の目で見たような奥行き感が得られる画像のこと:3D画像ともいう)とは異なる。
【0009】
以上のように、逆パノラマ撮影は、立体画像という面白みのある(したがって、従前の二次元的画像にない楽しみ方ができる)画像を生成できることから、今後の普及が期待されるものの、そのためには、撮影場所の選定をいかにして効率よく行うかという課題を克服しなければならない。パノラマ撮影と違い、逆パノラマ撮影では、被写体の周りを巡りながら複数の場所で撮影を行う必要があるからである。
【0010】
図10は、逆パノラマ撮影の撮影場所(以下、撮影地点ということもある)を示す図である。説明を簡単化するために、固定焦点レンズ(つまり、ズームなし)のカメラ1を使用するものとする。今、被写体2から距離Lだけ離れた第1の地点P1で1回目の撮影を行ったとすると、2回目以降の撮影地点P2〜Pnは、同一の距離L、すなわち、被写体2を中心とした半径Lの円3の上のどこかに設定しなければならない。その理由は、撮影地点ごとの距離が相違すると、撮影された被写体の大きさに違いが出てしまい、立体画像を生成する際の支障になるからである。
【0011】
1回目の撮影地点P1の距離(被写体2からの距離;以下同様)と、2回目以降の各地点P2〜Pnの距離とを合わせるためには、各々の地点で被写体2からの距離を測定する必要がある。短い距離であれば人為的計測(巻き尺で測定したり、歩測したりする)も可能であるが、長い距離では現実的でない。特に、大きな被写体(富士山などの山景)を撮影する場合は相当離れて(数キロないしは数十キロ離れて)撮影することになるので、距離の測定は事実上不可能である。このため、実際には適当に選定した地点(したがって、被写体からの距離が不正確な地点)で撮影を行わざるを得ず、距離のずれに伴って各画像の被写体の大きさに差を生じるから、立体画像の生成に支障を来す。
【0012】
適当な撮影地点(したがって、被写体からの距離が不正確な地点)の選定は、有効な支援技術がないためである。パノラマ撮影用の支援技術は存在(たとえば、前記の従来技術)するが、一般的とはいえない逆パノラマ撮影の支援技術は未だ出現していない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、逆パノラマ撮影における撮影地点の選定を支援するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段を備え、前記指南手段は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする撮像装置である。
請求項2に記載の発明は、前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離と略同等の距離にある任意の位置を前記2回目以降の撮影候補位置として求め、前記表示手段は、前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項3に記載の発明は、前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離に相当する長さの半径を持つ円を描き、当該円上の位置を、前記2回目以降の撮影候補位置として求め、前記表示手段は、前記円と前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークとをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置である。
請求項4に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つの付近でユーザが実際に撮影を行う際、その実際の撮影位置が前記円上にない場合に、前記被写体を撮像するための撮像部の画角を増減変化させて、あたかも前記円上で実際の撮影が行われたかのように当該撮影候補位置の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置である。
請求項5に記載の発明は、前記円上に設定された前記2回目以降の撮影候補位置の間隔をユーザに変更させるためのインターフェース手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置である。
請求項6に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが立ち入り困難な区域または立ち入りが制限された区域に含まれている場合に、当該区域を避けた場所に当該撮影候補位置を移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項7に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが障害物に邪魔されて前記被写体を見通せない場所にある場合に、当該撮影候補位置を、前記障害物を回避して前記被写体を見通せる場所に移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項8に記載の発明は、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)と現在位置とが異なる場合に、前記撮影位置(B)と現在位置との相対的な位置関係または前記撮影位置(B)への経路を提示して案内する第1の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項9に記載の発明は、前記2回目以降の撮影候補位置と現在位置との相対的な位置関係または前記2回目以降の撮影候補位置への経路を提示して案内する第2の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項10に記載の発明は、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南工程を含む撮像制御方法であって、前記指南工程は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得工程と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得工程と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算工程と、前記演算工程で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示工程とを含むことを特徴とする撮像制御方法である。
請求項11に記載の発明は、撮像装置のコンピュータに、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段としての機能を与えるためのプログラムであって、前記指南手段は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段とを含むことを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体の位置(A)と、被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)とに基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算し、演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面に表示することができる。したがって、ユーザはその指南情報に従いながら、逆パノラマ撮影、すなわち、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を苦労なく行うことができ、逆パノラマ撮影における有益な支援技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】デジタルカメラの構成図である。
【図2】記憶部16のデータ格納構造図である。
【図3】制御部19で実行する制御プログラムを示す図(1/2)である。
【図4】制御部19で実行する制御プログラムを示す図(2/2)である。
【図5】制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図(1/2)である。
【図6】制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図(2/2)である。
【図7】第1の変形例を示す図である。
【図8】第2の変形例を示す図である。
【図9】第3の変形例を示す図である。
【図10】逆パノラマ撮影の撮影場所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、デジタルカメラへの適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<構成>
まず、実施形態の構成を説明する。
図1は、デジタルカメラの構成図である。デジタルカメラ10は、撮像部11、操作部12、位置検出部13、表示部14、タッチパネル15、記憶部16、外部I/F17、電源部18及び制御部19などを備える。
【0019】
撮像部11は、いずれも不図示の撮影レンズや、CCDまたはCMOS等の二次元撮像デバイス及び画像処理部などを含み、制御部19からの制御により、撮影レンズを介して取り込んだ任意の被写体の像を二次元撮像デバイスの撮像面に結像させ、その像に対応した画像信号(静止画や動画)を二次元撮像デバイスから出力し、画像処理部等で所要の画像処理を行った後、制御部19に出力する。
【0020】
一般的に撮像部11の撮影レンズは画角を所定内で任意に変更できるズーム機能、すなわち、所定広画角のワイド側(広角側)から所定狭画角のテレ側(望遠側)までの範囲内で撮影画角を任意に変更できる機能を有しているが、説明の都合上、以下では特に言及しない限り、当該ズーム機能を有さない撮影レンズ(固定画角の撮影レンズ)であるものとする。
【0021】
操作部12は、電源スイッチやシャッタボタン及びその他のボタン類を含み、それらのスイッチやボタンの操作に対応した信号を生成して制御部19に出力する。
【0022】
位置検出部13は、このデジタルカメラ10の現在位置を検出するためのデバイスであり、典型的にはGPS衛星を利用した位置検出デバイスである。GPSはGlobal Positioning System(全地球測位システム)の略であり、高度約20,000Kmの軌道を一周約12時間かけて周回するおよそ30個のGPS衛星のうち、測位点の上空にある数個の衛星からの信号を受けることにより、その信号から測位点の位置座標(緯度経度及び衛星の捕捉数によっては標高も)を知ることができるシステムである。民間利用の位置検出精度は100m程度といわれているが、DGPS(Differential GPS)を利用すれば10m以内という極めて高い精度が得られる。DGPSは、2つの受信機を使い、それぞれの測位位置の差により正確な位置を求めるというものである。要求される精度に応じてGPS単独またはDGPSと併用すればよい。
【0023】
表示部14は、高精細な二次元表示デバイス、好ましくはカラー表示の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、制御部19から適宜に出力されるデータ、たとえば、撮影時の構図確認用画像(スルー画像)、撮影完了直後の確認画像、ユーザによって任意に選択された撮影済み画像、または、このデジタルカメラ10の各種設定画面などを表示するほか、本実施形態のポイントである「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」のための画面を表示する。このポイントについては後で詳しく説明する。
【0024】
タッチパネル15は、表示部14の画面サイズとほぼ同等の平面サイズを有する透明な薄膜シート体で、表示部14の画面の上に重ねて配置されており、このタッチパネル15を透して表示部14の表示情報が見えるようになっている。タッチパネル15の構造は抵抗膜方式や静電容量式など様々であるが、いずれの方式もタッチ点の位置(タッチパネル15のXY座標)を検出して、その位置データを制御部19に出力する点で同様である。抵抗膜方式は堅いもの(ペン等)のタッチを検出し、静電容量式は人体の一部(一般的には指)のタッチを検出する。利用の仕方を考慮していずれかの方式を選択すればよい。なお、図では、表示部14とタッチパネル15をずらして描いているが、これは図示の都合である。実際には両者はずれなく重なり合っている。
【0025】
記憶部16は、不揮発性且つ書き換え可能な情報記憶要素であり、たとえば、SDカード等のフラッシュメモリやハードディスクなどを用いることができる。この記憶部16は、様々なユーザデータ(撮像部12で撮影された画像データなど)を記憶保存するとともに、本実施形態のポイントである「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」に必要な地図データを記憶保存する。
【0026】
外部I/F17は、パーソナルコンピュータなどの外部機器とのデータインターフェースである。外部機器は、この外部I/F17と中央制御部19とを介して記憶部16にアクセスすることが可能であり、記憶部16に記憶されている各種データを読み出したり、または、書き換えたり、あるいは、新たなデータを追加したりする。
【0027】
電源部18は、一次電池または充電可能な二次電池からなるバッテリを含み、このバッテリの電力からデジタルカメラ10の動作に必要な各種電源電圧を発生して各部に供給する。
【0028】
制御部19は、コンピュータまたはマイクロコンピュータ(以下、CPU)19a、読み出し専用半導体メモリ(以下、ROM)19bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)19cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、あらかじめROM19bに格納されている制御プログラムをRAM19cにロードしてCPU19aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、このデジタルカメラ10の全体動作を統括制御する。なお、ROM19bは、書き換え可能な不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリやPROMなど)であってもよい。
【0029】
図2は、記憶部16のデータ格納構造図である。この図において、記憶部16には、撮像部12で撮影された画像データを記憶保存するための領域(以下、撮影画像記憶領域19)と、逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南に必要な地図データを記憶保存するための領域(以下、地図情報記憶領域20)とが確保されている。ここで、地図データは、デジタルカメラ10のユーザの行動予想範囲を全て網羅している(日本全図等)ことが望ましいが、そのような広範な地図データは相当なサイズになり、地図情報記憶領域20に収まりきらない恐れもあるので、たとえば、必要範囲の地図データを、必要の都度、外部機器から地図情報記憶領域20に書き込むようにしてもよい。
【0030】
<作用>
次に、実施形態の作用を説明する。
図3、図4は、制御部19で実行する制御プログラムを示す図、図5、図6は、制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図である。ただし、図示のプログラムは制御プログラムの全体ではない。本実施形態のポイントに係る部分、つまり、「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」に関する部分(要部フロー)を抜き出し、さらに、説明を簡単にするために、その要部フローを概略化したものである。
【0031】
この制御プログラム(要部フロー)は、通常の撮影では実行されない。ユーザによって「逆パノラマ撮影」のモードが選択され、且つ、そのユーザによって当該撮影時の指南(逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南)を開始する旨の選択が行われたときに実行される。
【0032】
したがって、当然ながら、操作部12には「逆パノラマ撮影」のモードを選択するためのボタンと、上記指南の開始を指示するためのボタンとが設けられている。ちなみに、これらの物理的なボタンの代わりに、表示部14上のオブジェクト(ボタンコントロールなど)を用いてもよい。タッチパネル15を用いて、それらのオブジェクトにタッチすることにより、操作部12に設けられた物理的なボタンを操作したときと同じ動作が得られる。
【0033】
図示の制御プログラムを開始すると、制御部19は、表示部14に指南画面(図5、図6参照)を表示する。ユーザは、以降、この指南画面と対話しながら、逆パノラマ撮影の撮影地点の選定と撮影とを行う。なお、図5、図6の指南画面は、図面の輻輳を避けるために背景の地図表示を省略している。
【0034】
制御部19は、まず、ユーザによって被写体(図5の被写体25)の位置が指定されたか否かを判定する(ステップS1)。そして、被写体25の位置が指定されていれば、その被写体25の位置座標(以下、座標Aという)を取得する(ステップS2)。
【0035】
被写体25とは、逆パノラマ撮影の対象になる任意の目標物または景色等であって、たとえば、冒頭で説明した富士山のようなものである。以下、被写体25を具体的にいう場合は「富士山」として説明する。
【0036】
富士山の位置(山頂の位置)座標は、北緯35度21分39秒/東経138度43分39秒(世界測地系座標)である。このように、被写体25の座標が既知であれば、タッチパネル15や操作部12を用いて、その既知座標を「座標A」として直接的に入力してもよい。この場合、制御部19は入力された座標を「座標A」として取得する。あるいは、表示部14に地図(記憶部16の地図情報記憶領域20から読み出したもの)を表示し、その地図上の被写体25(この場合は富士山)の位置をユーザ指定してもよい。この場合、制御部19は指定された位置の座標を「座標A」として取得する。または、可能であれば、被写体25の元に行き、位置検出部13を使って、その被写体25の座標を検出してもよい。この場合、制御部19は検出された座標を「座標A」として取得する。ただし、この最後の方法は被写体25が遠い場合には使えない。とりわけ、富士山のように大きな対象物を被写体25とする場合は到底無理である。したがって、現実的には前記2つの方法のいずれかで被写体25の座標Aを取得することになる。もちろん、被写体25が近くにある場合(たとえば、目の前にある場合など)はこの限りではない。その被写体25の元に行って座標Aを取得してもよい。
【0037】
被写体25の座標Aを設定すると、制御部19は、次に、ユーザによって第1回目の撮影地点(図5の地点P1)が指定されたか否かを判定する(ステップS3)。第1回目の撮影地点P1とは、ユーザが最初の撮影を希望した場所であって、表示部14に表示された地図(記憶部16の地図情報記憶領域20から読み出したもの)上の任意の地点である。
【0038】
第1回目の撮影地点P1が指定された場合は、次に、その撮影地点P1の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS4)。
【0039】
ステップS4の判定結果がYESの場合、つまり、第1回目の撮影地点P1の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致している場合は、その位置座標を第1回目の撮影地点P1の位置座標(以下、座標Bという)として取得する(ステップS5)。
【0040】
一方、ステップS4の判定結果がNOの場合、つまり、地図上の現在位置と異なる別の場所が第1回目の撮影地点P1として指定された場合には、当該撮影地点P1までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS6)、ステップS4の判定を繰り返す。なお、「案内」とは、現在位置から目標位置までの経路を地図上の道路にマッピングして表示する(いわゆるルートマップ)態様のみならず、現在位置と目標位置との相対的な位置関係を簡易的に表示(たとえば、目標位置の方向を示す矢印や目標位置までの距離)する態様も含む。以下、「案内」という場合は同じ定義とする。
【0041】
ユーザは、案内情報を見ながら第1回目の撮影地点P1へ移動し、第1回目の撮影地点P1に到達すると、ステップS4の判定結果がYESになる。つまり、第1回目の撮影地点P1に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、その位置座標を第1回目の撮影地点P1の位置座標Bとして取得する(ステップS5)。
【0042】
第1回目の撮影地点P1の座標Bの取得を行うと、制御部19は、表示部14に第1回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第1回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第1回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS7)。
【0043】
逆パノラマ撮影の撮影動作は通常の撮影動作と変わらないので、詳細な説明を省略する。通常の撮影動作と異なる点は、記憶部16に画像データを保存する際に、逆パノラマ撮影によって撮影された一群の画像データであることを明示して保存することにある。この明示の仕方はいろいろ考えられる。たとえば、ファイル名の一部を揃えてもよく、または、独立したフォルダを作り、その中に一群の画像データをまとめて保存してもよい。あるいは、画像データの付加情報に一群の画像データであることを示すデータを書き込んでもよい。
【0044】
第1回目の撮影を完了すると、制御部19は、次に、表示部14に「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」を行うための指南情報を含む指南画面21〜24を表示する。すなわち、まず、被写体25を中心にして座標Aから座標Bまでの距離を半径とする円を描き(ステップS8)、次いで、その円上に第2回目以降の撮影地点の候補マークを表示する(ステップS9)。
【0045】
この指南画面21〜24の具体例は、図6(a)、(b)に示されている。図6(a)において、被写体25を中心にして描かれた円26は、座標Aから座標Bまでの距離Lを半径としており、且つ、図6(b)において、その円26の上に複数のマークP2〜P8が表示されている。これらの複数のマークP2〜P8は、逆パノラマ撮影における撮影地点の候補となるマーク、つまり、逆パノラマ撮影に必要な撮影位置をユーザに指南するための指南情報であり、以下、候補マークP2〜P8ということにする。
【0046】
候補マークP2〜P8の設定条件は、第1に、各々の撮影候補地点(P2〜P8)から被写体25までの距離が、第1回目の撮影地点P1から被写体25までの距離Lと略一致していること(つまり、各々の撮影候補地点が円26の上にほぼ位置していること)、第2に、各々の撮影候補地点(P2〜P8)が、円25の面積を略同一の角度θで複数に分割した際の各分割線27、28・・・・の上にほぼ位置していることの2点である。
【0047】
第1の条件は、第1回目の撮影地点P1で撮影された被写体25の大きさと、第2回以降の撮影地点P2〜P8で撮影された被写体25の大きさとを揃えるためのものである。これは、各画像の被写体25の大きさが異なってしまうと、冒頭で説明した立体画像を作成する際に支障を来すからである。
【0048】
第2の条件は、立体画像の正確さ(緻密さともいえる)を決めるためのものである。角度θを小さくするほど正確な立体画像を生成できる。この角度θについて、たとえば、富士山の立体画像を生成する場合を例にして説明する。今、富士山の北方向の1点(静岡県内)と南方向の1点(山梨県内)の各々から富士山を撮影したとする。つまり、角度θ=180度で撮影したとする。この場合の撮影画像数は2になる。この少ない数の画像からも立体画像(富士山の立体画像)の生成は可能であるが、その正確さは充分でない。2つの撮影地点から見えない隠れた部分の情報が決定的に不足しているからである。
【0049】
したがって、正確な立体画像を得るためには、多くの方向からもれなく撮影する(角度θを小さくする)必要があるが、それにも限界がある。角度θを小さくすると、正確な立体画像が得られる反面、撮影地点の数が増えて撮影に手間がかかるようになるからである。このため、実際上は、要求される立体画像の正確さと撮影の手間とを勘案した過不足のない適切な角度θに設定することになる。
なお、ここでは、「被写体25を中心に座標Aから座標Bまでの距離Lを半径として描かれた円26」と、「その円26の上に設定された複数の候補マークP2〜P8」との2つを指南情報として画面(表示部14)に表示するとしたが、これに限定されない。指南情報から円26を省いた態様、つまり、候補マークP2〜P8だけを画面に表示する態様であってもよい。指南情報は、少なくとも前記の第1の条件を満たしたものであればよい。
【0050】
全ての候補マークP2〜P8を表示すると、制御部19は、候補マーク選択カウンタiに初期値“2”をセットし(ステップS10)、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“2”であるから、第2回目の撮影地点P2の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0051】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第2回目の撮影地点P2の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P2までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0052】
ユーザは、案内情報を見ながら第2回目の撮影地点P2へ移動し、第2回目の撮影地点P2に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第2回目の撮影地点P2に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第2回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第2回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第2回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0053】
第2回目の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP2を撮影済みにし(たとえば、色を変えたり形を変えたりなどし;以下同様)、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)。imaxは候補マークP2〜P8の総数である。「i>imax」の場合は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断してプログラムを終了するが、「i>imax」でない場合は、まだ、撮影が残っているので、ステップS11に戻る。
【0054】
制御部19は、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“3”であるから、第3回目の撮影地点P3の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0055】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第3回目の撮影地点P3の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P3までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0056】
ユーザは、案内情報を見ながら第3回目の撮影地点P3へ移動し、第3回目の撮影地点P3に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第3回目の撮影地点P3に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第3回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第3回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第3回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0057】
第3回目の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP3を撮影済みにし、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)。同様にimaxは候補マークP2〜P8の総数である。「i>imax」の場合は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断してプログラムを終了するが、「i>imax」でない場合は、まだ、撮影が残っているので、ステップS11に戻る。
【0058】
以上と同様の動作で第4回目から第7回目までの撮影地点への案内と撮影とを行い(詳細は省略)、第7回目の撮影完了の段階で、候補マーク選択カウンタiを+1して“8”になる。
【0059】
制御部19は、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“8”であるから、最後になる第8回目の撮影地点P8の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0060】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第8回目の撮影地点P8の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P8までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0061】
ユーザは、案内情報を見ながら第8回目の撮影地点P8へ移動し、第8回目の撮影地点P8に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第8回目の撮影地点P8に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第8回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、最後(第8回目)の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、最後(第8回目)の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0062】
最後(第8回目)の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP8を撮影済みにし、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)が、この段階でiがimaxを超えているので、制御部19は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断し、必要であれば所要の終了メッセージ(たとえば、“一連の逆パノラマ撮影を完了しました”)を表示した後、プログラムを終了する。
【0063】
<効果>
以上のとおりであるから、実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)逆パノラマ撮影の撮影場所選択支援:
任意の被写体の座標Aと、その被写体を最初に撮影した場所の座標Bとを設定するだけで、当該被写体を逆パノラマ撮影するのに適した複数の撮影場所の候補(候補マークP2〜P8)を指南情報として画面に表示することができる。したがって、ユーザは、それらの候補マークP2〜P8の位置に順次移動して、撮影を繰り返すだけで、その被写体の立体画像を生成するための素材(複数の画像)を容易に得ることができる。
(2)撮影場所への案内:
また、最初の撮影場所への経路案内や、2回目以降の撮影場所への経路案内を行うので、地理に不案内な場所であっても迷うことなく、目的の撮影場所にたどり着くことができる。
(3)立体画像への誘い:
そして、上記の(1)及び(2)により、一般によく知られていない特殊な撮影手法である「逆パノラマ撮影」を誰でも手軽に行わせることができるようになるから、最終的に、立体画像を作って被写体を様々な方向から見るという仮想現実的な楽しみ方を多くのユーザに味合わせることができる。
【0064】
<第1の変形例>
上記の実施形態は様々な変形や発展が可能である。たとえば、以下のように変形してもよい。
【0065】
図7は、第1の変形例を示す図である。(a)に示すように、現場の状況によっては、指定された候補地点(候補マークPi)で撮影を行うことができない場合がある。このような場合には円26に沿って位置を修正するか、あるいは、被写体25から遠ざかったり(P’)、近づいたり(Pi”)して位置を修正しなければならない。
【0066】
円26に沿って位置を修正した場合は特段の不都合を生じない。少なくとも前記の第1の条件(距離Lが一致)を満たしているからである。しかしながら、被写体25から遠ざかったり(P’)、近づいたり(Pi”)した場合は、前記の第1の条件(距離Lが一致)を満たさなくなり、当該修正地点(P’やPi”)で撮影された被写体25の大きさと他の撮影地点で撮影された被写体25の大きさとが異なってしまうため、冒頭で説明した立体画像を作成する際に支障を来すという不都合を招く。
【0067】
この第1の変形例は、かかる不都合を解消するためのものである。ただし、この第1の変形例では、撮像部12の撮影レンズがズーム付であって、且つ、そのズーム倍率が制御部19からの指令で制御可能であるという前提が必要である。
【0068】
かかる前提の下、この第1の変形例では、図7(b)に示すように、第2回目以降の撮影段階において、撮影地点が円26の上であるか否かという判定(ステップS21)を行い、その判定結果がNOの場合、つまり、図7(a)に示すような修正位置(P’やPi”)にあれば、それらの修正位置が被写体25に近いか否か、すなわち、被写体25までの距離L以下の修正位置(Pi”)にあるか否かを判定し(ステップS22)、以下の場合(修正位置Pi”)には適量値ズームダウンし(ステップS23)、以下でない場合(修正位置P’)には適量値ズームアップする(ステップS24)という処理を加えたものである。
【0069】
ここで、ズームアップ、ダウンの「適量値」とは、第1回目で撮影した被写体の大きさに合致した被写体が得られるズーム倍率のことをいう。具体的には、第1回目の撮影画像と今回の撮影構図調整画像に共通する特徴点を探索し、ズーム倍率を実際に制御しながら(動かしながら)、それらの特徴点の位置が一致する倍率を見つけ出して上記の「適量値」として設定することをいう。
【0070】
このようにすると、指定された候補地点(候補マークPi)で撮影を行うことができない場合の不都合を解消できる。詳細には、やむを得ずに被写体25から遠ざかった場所(P’)に移動して撮影した場合には、本来であれば被写体25が小さく撮影されてしまうところ、この第1の変形例では、ズームアップ(ステップS24)によって被写体25の大きさを適正に戻す(拡大する)ことができ、または、やむを得ずに被写体25に近づいた場所(P”)に移動して撮影した場合には、本来であれば被写体25が大きく撮影されてしまうところ、この第1の変形例では、ズームダウン(ステップS23)によって被写体25の大きさを適正に戻す(縮小する)ことができ、いずれの場合も、立体画像を作成する際に支障を来さないようにできる。
【0071】
<第2の変形例>
図8は、第2の変形例を示す図である。前記の実施形態では、少なくとも被写体25までの距離Lが一致する位置(第1の条件を満たす位置)に撮影地点の候補マークを設定している。しかしながら、このような位置は実際の地形地物を全く考慮していないから、図8(a)に示すような立ち入りにくい場所、たとえば、道路29から外れた場所(Pi)にあったり、あるいは、図8(b)に示すような被写体25が見えない場所、たとえば、障害物30の陰に隠れた場所(Pi)にあったりする場合があり得る。図8(a)の場合は、無理矢理その場所(Pi)に立ち入ることも可能であるが、図8(b)の場合は、被写体25を見通せないので撮影自体を行うことができない。
【0072】
そこで、この第2の変形例では、図8(a)の場合には、地図上の自由に立ち入りできる場所(たとえば、道路29の上の場所Pi)に移動して修正することとし、また、図8(b)の場合には、障害物30を避けて被写体25を見通せる場所(円26の上の場所Pia)に移動して修正することとした。
【0073】
移動後の場所をPia、Pibで示す。図8(a)において、Piaは道路29の上であって且つ円26の上の場所であり、Pibは道路29の上であって且つ被写体25に接近し、または、被写体25から遠ざかった場所である。Pibの場合は前記の第1の変形例を併用する。
【0074】
このように、この第2の変形例によれば、実際の地形地物を考慮した場所に撮影地点の候補マークPia、Pibを移動して設定できるため、道路29の外に立ち入る必要がなく、また、障害物30を避けて撮影することができる。
【0075】
なお、以上の説明では、立ち入りにくい場所として道路29の外を示したが、これに限定されない。そのような場所は個人の敷地や空港等の立ち入り制限区域など様々存在するが、いずれも地図情報から特定することが可能である。したがって、この第2の変形例のように、実際の地形地物を考慮した場所に撮影地点の候補マークを移動して設定することは十分に実現可能である。
【0076】
また、障害物30についても同様である。地図には高度(標高)情報が含まれているものがある。たとえば、国土地理院刊行の「数値地図5mメッシュ(標高)」などが知られている。このような高度情報を含む地図を利用すれば、撮影地点の標高から被写体25を見通したときに、その間に山などの障害物30があるか否かを調べることができ、その調査結果に従い、障害物30を避けた場所に撮影地点の候補マークを移動して設定することができる。
【0077】
さらに、障害物30は山などの自然物だけに限らない。ビルなどの人工物も障害物30になる。かかる人工の障害物30を避けた場所に撮影地点の候補マークを移動して設定するには、たとえば、カーナビ用地図データの利用が考えられる。昨今のカーナビ用地図データの多くには、各地のランドマークの詳細情報(外観や高さ、大きさ等)が含まれているからである。これを利用することにより、ビルなどのランドマークを人工の障害物30とみなして回避することができ、とりわけ、都会の被写体25に対して逆パノラマ撮影を行う場合に好適なものとすることができる。
【0078】
<第3の変形例>
前記の実施形態では、第2の条件の角度θ(図6(b)参照)を固定値としているが、この角度θを小さくすると、正確な立体画像が得られる反面、撮影地点の数が増えて撮影に手間がかかるという背反性を持っている。したがって、角度θの決定に際しては、一方を犠牲にするかまたは両者の妥協を図るかのいずれかの方策しか取り得なかった。そこで、この第3の変形例では、角度θを任意に設定できるようにし、これにより、正確な立体画像の生成と撮影の手間軽減のいずれを優先させるかをユーザの意志で選択できるようにした。
【0079】
図9は、第3の変形例を示す図である。(a)は角度θを大きく変更した場合を示し、(b)は角度θを小さく変更した場合を示している。この第3の変形例では、ユーザが第2回目の候補マークP2の分割線28を選択すると、制御部19によって所定形状(図では手の形)のアイコン31が画面上に表示される。そして、ユーザによってこのアイコン1が所定方向(被写体25を中心にした時計回り方向又は反時計回り方向)に動かされると、制御部19は、このアイコン31の動きに合わせて分割線28の角度θを増減変化させるとともに、他の分割線の角度も同様に増減変化させ、且つ、各々の分割線ごとの候補マークPiの位置や数を修正する。
【0080】
したがって、たとえば、(a)に示すように、角度θを大きく変更した場合には、候補マークの間隔が広がり、それに伴い、候補マークの数が少なくなるから、たとえば、当初の候補マークの数を図6(b)の7つとすれば、図示の例では7から3へと4つ減らすことができ、それだけ撮影地点を少なくして撮影の手間を軽減することができる。または、(b)に示すように、角度θを小さく変更した場合には、候補マークの間隔が狭まり、それに伴い、候補マークの数が増えるから、たとえば、当初の候補マークの数を同様に図6(b)の7つとすれば、図示の例では7から11へと4つ増やすことができ、撮影の手間は増えるものの、正確な立体画像を生成するための素材(多数の画像)を得ることができる。
【0081】
このように、この第3の変形例によれば、撮影の手間軽減を重視するユーザは自らの意志で必要なだけ角度θを大きくできる一方、正確な立体画像の生成を重視するユーザは同様に自らの意志で必要なだけ角度θを小さくできるという、いずれにも偏らない柔軟性のある使い方ができるから、実用上、好ましいものとすることができる。
【符号の説明】
【0082】
Pi 候補マーク(撮影場所)
10 デジタルカメラ(撮像装置)
13 位置検出部(第1の取得手段、第2の取得手段)
14 表示部(画面)
19 制御部(演算手段、第1の案内手段、第2の案内手段、第1の取得手段、第2の取得手段)
19a CPU(コンピュータ、表示手段)
25 被写体
26 円
30 障害物
31 アイコン(インターフェース手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像制御方法及びプログラムに関し、詳細には、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する機能を備えた撮像装置、撮像制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるパノラマ撮影は、景色等の被写体を広範囲にわたって撮影する手法である。横長の1つの画像(パノラマ写真)を生成し、この画像で被写体の全景を一望できる。デジタルカメラ等の通常のカメラでパノラマ撮影を行うには、被写体に対して撮影方向を変えながら複数の画像を撮像し、それらの画像を1つの画像に合成する(つなぎ合わせる)が、そのような合成作業は手間がかかって面倒である。
【0003】
この点において、下記の特許文献1には、「広い視野を画角の範囲で分割して撮像して得た複数の分割画像を繋ぎ合わせて合成し、広い視野を再現するパノラマ画像を得るパノラマ撮影方法であって、所望の記録画像を選択し、選択された記録画像に繋ぎ合せるための分割画像用の新たな撮像を行なうことにより、新たなパノラマ画像を得ることを特徴とするパノラマ撮影方法」の技術(以下、従来技術)が開示されている。
【0004】
この従来技術によれば、画像合成を自動で行うことができるので、面倒で手間のかかる作業を要しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−175185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パノラマ撮影に類似した手法に、「任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する」というものがある。たとえば、富士山のような被写体を様々な方向から撮影する場合などである。この場合、各々の写真はそれぞれが独立した作品になる。つまり、「静岡側から見た富士山の写真」、「山梨側から見た富士山の写真」・・・・という具合であるが、同一の被写体を撮影した複数の写真の楽しみ方はこれだけではない。たとえば、CG技術を応用すれば、複数の写真から被写体の立体画像(この場合は、富士山の立体画像)を作り出すことができる。この立体画像をディスプレイ画面上で回転させることにより、被写体を様々な方向から見るという仮想現実的なおもしろさが得られる。
【0007】
以下、立体画像生成につながるこのような撮影手法のことを、本明細書では便宜的に「逆パノラマ撮影」ということにする。
【0008】
なお、ここでいう「立体画像」とは、あたかも被写体の周りを巡りながら、その被写体の側面や裏面等の各面を見ているような感覚が得られる画像のことをいう。したがって、本件明細書における立体画像は、いわゆるステレオ視画像(あたかも人間の目で見たような奥行き感が得られる画像のこと:3D画像ともいう)とは異なる。
【0009】
以上のように、逆パノラマ撮影は、立体画像という面白みのある(したがって、従前の二次元的画像にない楽しみ方ができる)画像を生成できることから、今後の普及が期待されるものの、そのためには、撮影場所の選定をいかにして効率よく行うかという課題を克服しなければならない。パノラマ撮影と違い、逆パノラマ撮影では、被写体の周りを巡りながら複数の場所で撮影を行う必要があるからである。
【0010】
図10は、逆パノラマ撮影の撮影場所(以下、撮影地点ということもある)を示す図である。説明を簡単化するために、固定焦点レンズ(つまり、ズームなし)のカメラ1を使用するものとする。今、被写体2から距離Lだけ離れた第1の地点P1で1回目の撮影を行ったとすると、2回目以降の撮影地点P2〜Pnは、同一の距離L、すなわち、被写体2を中心とした半径Lの円3の上のどこかに設定しなければならない。その理由は、撮影地点ごとの距離が相違すると、撮影された被写体の大きさに違いが出てしまい、立体画像を生成する際の支障になるからである。
【0011】
1回目の撮影地点P1の距離(被写体2からの距離;以下同様)と、2回目以降の各地点P2〜Pnの距離とを合わせるためには、各々の地点で被写体2からの距離を測定する必要がある。短い距離であれば人為的計測(巻き尺で測定したり、歩測したりする)も可能であるが、長い距離では現実的でない。特に、大きな被写体(富士山などの山景)を撮影する場合は相当離れて(数キロないしは数十キロ離れて)撮影することになるので、距離の測定は事実上不可能である。このため、実際には適当に選定した地点(したがって、被写体からの距離が不正確な地点)で撮影を行わざるを得ず、距離のずれに伴って各画像の被写体の大きさに差を生じるから、立体画像の生成に支障を来す。
【0012】
適当な撮影地点(したがって、被写体からの距離が不正確な地点)の選定は、有効な支援技術がないためである。パノラマ撮影用の支援技術は存在(たとえば、前記の従来技術)するが、一般的とはいえない逆パノラマ撮影の支援技術は未だ出現していない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、逆パノラマ撮影における撮影地点の選定を支援するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段を備え、前記指南手段は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段とを備えたことを特徴とする撮像装置である。
請求項2に記載の発明は、前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離と略同等の距離にある任意の位置を前記2回目以降の撮影候補位置として求め、前記表示手段は、前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項3に記載の発明は、前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離に相当する長さの半径を持つ円を描き、当該円上の位置を、前記2回目以降の撮影候補位置として求め、前記表示手段は、前記円と前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークとをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置である。
請求項4に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つの付近でユーザが実際に撮影を行う際、その実際の撮影位置が前記円上にない場合に、前記被写体を撮像するための撮像部の画角を増減変化させて、あたかも前記円上で実際の撮影が行われたかのように当該撮影候補位置の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置である。
請求項5に記載の発明は、前記円上に設定された前記2回目以降の撮影候補位置の間隔をユーザに変更させるためのインターフェース手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置である。
請求項6に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが立ち入り困難な区域または立ち入りが制限された区域に含まれている場合に、当該区域を避けた場所に当該撮影候補位置を移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項7に記載の発明は、前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが障害物に邪魔されて前記被写体を見通せない場所にある場合に、当該撮影候補位置を、前記障害物を回避して前記被写体を見通せる場所に移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項8に記載の発明は、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)と現在位置とが異なる場合に、前記撮影位置(B)と現在位置との相対的な位置関係または前記撮影位置(B)への経路を提示して案内する第1の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項9に記載の発明は、前記2回目以降の撮影候補位置と現在位置との相対的な位置関係または前記2回目以降の撮影候補位置への経路を提示して案内する第2の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項10に記載の発明は、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南工程を含む撮像制御方法であって、前記指南工程は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得工程と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得工程と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算工程と、前記演算工程で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示工程とを含むことを特徴とする撮像制御方法である。
請求項11に記載の発明は、撮像装置のコンピュータに、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段としての機能を与えるためのプログラムであって、前記指南手段は、前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段とを含むことを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体の位置(A)と、被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)とに基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算し、演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面に表示することができる。したがって、ユーザはその指南情報に従いながら、逆パノラマ撮影、すなわち、任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を苦労なく行うことができ、逆パノラマ撮影における有益な支援技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】デジタルカメラの構成図である。
【図2】記憶部16のデータ格納構造図である。
【図3】制御部19で実行する制御プログラムを示す図(1/2)である。
【図4】制御部19で実行する制御プログラムを示す図(2/2)である。
【図5】制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図(1/2)である。
【図6】制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図(2/2)である。
【図7】第1の変形例を示す図である。
【図8】第2の変形例を示す図である。
【図9】第3の変形例を示す図である。
【図10】逆パノラマ撮影の撮影場所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、デジタルカメラへの適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<構成>
まず、実施形態の構成を説明する。
図1は、デジタルカメラの構成図である。デジタルカメラ10は、撮像部11、操作部12、位置検出部13、表示部14、タッチパネル15、記憶部16、外部I/F17、電源部18及び制御部19などを備える。
【0019】
撮像部11は、いずれも不図示の撮影レンズや、CCDまたはCMOS等の二次元撮像デバイス及び画像処理部などを含み、制御部19からの制御により、撮影レンズを介して取り込んだ任意の被写体の像を二次元撮像デバイスの撮像面に結像させ、その像に対応した画像信号(静止画や動画)を二次元撮像デバイスから出力し、画像処理部等で所要の画像処理を行った後、制御部19に出力する。
【0020】
一般的に撮像部11の撮影レンズは画角を所定内で任意に変更できるズーム機能、すなわち、所定広画角のワイド側(広角側)から所定狭画角のテレ側(望遠側)までの範囲内で撮影画角を任意に変更できる機能を有しているが、説明の都合上、以下では特に言及しない限り、当該ズーム機能を有さない撮影レンズ(固定画角の撮影レンズ)であるものとする。
【0021】
操作部12は、電源スイッチやシャッタボタン及びその他のボタン類を含み、それらのスイッチやボタンの操作に対応した信号を生成して制御部19に出力する。
【0022】
位置検出部13は、このデジタルカメラ10の現在位置を検出するためのデバイスであり、典型的にはGPS衛星を利用した位置検出デバイスである。GPSはGlobal Positioning System(全地球測位システム)の略であり、高度約20,000Kmの軌道を一周約12時間かけて周回するおよそ30個のGPS衛星のうち、測位点の上空にある数個の衛星からの信号を受けることにより、その信号から測位点の位置座標(緯度経度及び衛星の捕捉数によっては標高も)を知ることができるシステムである。民間利用の位置検出精度は100m程度といわれているが、DGPS(Differential GPS)を利用すれば10m以内という極めて高い精度が得られる。DGPSは、2つの受信機を使い、それぞれの測位位置の差により正確な位置を求めるというものである。要求される精度に応じてGPS単独またはDGPSと併用すればよい。
【0023】
表示部14は、高精細な二次元表示デバイス、好ましくはカラー表示の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、制御部19から適宜に出力されるデータ、たとえば、撮影時の構図確認用画像(スルー画像)、撮影完了直後の確認画像、ユーザによって任意に選択された撮影済み画像、または、このデジタルカメラ10の各種設定画面などを表示するほか、本実施形態のポイントである「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」のための画面を表示する。このポイントについては後で詳しく説明する。
【0024】
タッチパネル15は、表示部14の画面サイズとほぼ同等の平面サイズを有する透明な薄膜シート体で、表示部14の画面の上に重ねて配置されており、このタッチパネル15を透して表示部14の表示情報が見えるようになっている。タッチパネル15の構造は抵抗膜方式や静電容量式など様々であるが、いずれの方式もタッチ点の位置(タッチパネル15のXY座標)を検出して、その位置データを制御部19に出力する点で同様である。抵抗膜方式は堅いもの(ペン等)のタッチを検出し、静電容量式は人体の一部(一般的には指)のタッチを検出する。利用の仕方を考慮していずれかの方式を選択すればよい。なお、図では、表示部14とタッチパネル15をずらして描いているが、これは図示の都合である。実際には両者はずれなく重なり合っている。
【0025】
記憶部16は、不揮発性且つ書き換え可能な情報記憶要素であり、たとえば、SDカード等のフラッシュメモリやハードディスクなどを用いることができる。この記憶部16は、様々なユーザデータ(撮像部12で撮影された画像データなど)を記憶保存するとともに、本実施形態のポイントである「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」に必要な地図データを記憶保存する。
【0026】
外部I/F17は、パーソナルコンピュータなどの外部機器とのデータインターフェースである。外部機器は、この外部I/F17と中央制御部19とを介して記憶部16にアクセスすることが可能であり、記憶部16に記憶されている各種データを読み出したり、または、書き換えたり、あるいは、新たなデータを追加したりする。
【0027】
電源部18は、一次電池または充電可能な二次電池からなるバッテリを含み、このバッテリの電力からデジタルカメラ10の動作に必要な各種電源電圧を発生して各部に供給する。
【0028】
制御部19は、コンピュータまたはマイクロコンピュータ(以下、CPU)19a、読み出し専用半導体メモリ(以下、ROM)19bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)19cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、あらかじめROM19bに格納されている制御プログラムをRAM19cにロードしてCPU19aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、このデジタルカメラ10の全体動作を統括制御する。なお、ROM19bは、書き換え可能な不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリやPROMなど)であってもよい。
【0029】
図2は、記憶部16のデータ格納構造図である。この図において、記憶部16には、撮像部12で撮影された画像データを記憶保存するための領域(以下、撮影画像記憶領域19)と、逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南に必要な地図データを記憶保存するための領域(以下、地図情報記憶領域20)とが確保されている。ここで、地図データは、デジタルカメラ10のユーザの行動予想範囲を全て網羅している(日本全図等)ことが望ましいが、そのような広範な地図データは相当なサイズになり、地図情報記憶領域20に収まりきらない恐れもあるので、たとえば、必要範囲の地図データを、必要の都度、外部機器から地図情報記憶領域20に書き込むようにしてもよい。
【0030】
<作用>
次に、実施形態の作用を説明する。
図3、図4は、制御部19で実行する制御プログラムを示す図、図5、図6は、制御プログラムの実行画面(指南画面21〜24)を示す図である。ただし、図示のプログラムは制御プログラムの全体ではない。本実施形態のポイントに係る部分、つまり、「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」に関する部分(要部フロー)を抜き出し、さらに、説明を簡単にするために、その要部フローを概略化したものである。
【0031】
この制御プログラム(要部フロー)は、通常の撮影では実行されない。ユーザによって「逆パノラマ撮影」のモードが選択され、且つ、そのユーザによって当該撮影時の指南(逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南)を開始する旨の選択が行われたときに実行される。
【0032】
したがって、当然ながら、操作部12には「逆パノラマ撮影」のモードを選択するためのボタンと、上記指南の開始を指示するためのボタンとが設けられている。ちなみに、これらの物理的なボタンの代わりに、表示部14上のオブジェクト(ボタンコントロールなど)を用いてもよい。タッチパネル15を用いて、それらのオブジェクトにタッチすることにより、操作部12に設けられた物理的なボタンを操作したときと同じ動作が得られる。
【0033】
図示の制御プログラムを開始すると、制御部19は、表示部14に指南画面(図5、図6参照)を表示する。ユーザは、以降、この指南画面と対話しながら、逆パノラマ撮影の撮影地点の選定と撮影とを行う。なお、図5、図6の指南画面は、図面の輻輳を避けるために背景の地図表示を省略している。
【0034】
制御部19は、まず、ユーザによって被写体(図5の被写体25)の位置が指定されたか否かを判定する(ステップS1)。そして、被写体25の位置が指定されていれば、その被写体25の位置座標(以下、座標Aという)を取得する(ステップS2)。
【0035】
被写体25とは、逆パノラマ撮影の対象になる任意の目標物または景色等であって、たとえば、冒頭で説明した富士山のようなものである。以下、被写体25を具体的にいう場合は「富士山」として説明する。
【0036】
富士山の位置(山頂の位置)座標は、北緯35度21分39秒/東経138度43分39秒(世界測地系座標)である。このように、被写体25の座標が既知であれば、タッチパネル15や操作部12を用いて、その既知座標を「座標A」として直接的に入力してもよい。この場合、制御部19は入力された座標を「座標A」として取得する。あるいは、表示部14に地図(記憶部16の地図情報記憶領域20から読み出したもの)を表示し、その地図上の被写体25(この場合は富士山)の位置をユーザ指定してもよい。この場合、制御部19は指定された位置の座標を「座標A」として取得する。または、可能であれば、被写体25の元に行き、位置検出部13を使って、その被写体25の座標を検出してもよい。この場合、制御部19は検出された座標を「座標A」として取得する。ただし、この最後の方法は被写体25が遠い場合には使えない。とりわけ、富士山のように大きな対象物を被写体25とする場合は到底無理である。したがって、現実的には前記2つの方法のいずれかで被写体25の座標Aを取得することになる。もちろん、被写体25が近くにある場合(たとえば、目の前にある場合など)はこの限りではない。その被写体25の元に行って座標Aを取得してもよい。
【0037】
被写体25の座標Aを設定すると、制御部19は、次に、ユーザによって第1回目の撮影地点(図5の地点P1)が指定されたか否かを判定する(ステップS3)。第1回目の撮影地点P1とは、ユーザが最初の撮影を希望した場所であって、表示部14に表示された地図(記憶部16の地図情報記憶領域20から読み出したもの)上の任意の地点である。
【0038】
第1回目の撮影地点P1が指定された場合は、次に、その撮影地点P1の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS4)。
【0039】
ステップS4の判定結果がYESの場合、つまり、第1回目の撮影地点P1の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致している場合は、その位置座標を第1回目の撮影地点P1の位置座標(以下、座標Bという)として取得する(ステップS5)。
【0040】
一方、ステップS4の判定結果がNOの場合、つまり、地図上の現在位置と異なる別の場所が第1回目の撮影地点P1として指定された場合には、当該撮影地点P1までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS6)、ステップS4の判定を繰り返す。なお、「案内」とは、現在位置から目標位置までの経路を地図上の道路にマッピングして表示する(いわゆるルートマップ)態様のみならず、現在位置と目標位置との相対的な位置関係を簡易的に表示(たとえば、目標位置の方向を示す矢印や目標位置までの距離)する態様も含む。以下、「案内」という場合は同じ定義とする。
【0041】
ユーザは、案内情報を見ながら第1回目の撮影地点P1へ移動し、第1回目の撮影地点P1に到達すると、ステップS4の判定結果がYESになる。つまり、第1回目の撮影地点P1に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、その位置座標を第1回目の撮影地点P1の位置座標Bとして取得する(ステップS5)。
【0042】
第1回目の撮影地点P1の座標Bの取得を行うと、制御部19は、表示部14に第1回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第1回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第1回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS7)。
【0043】
逆パノラマ撮影の撮影動作は通常の撮影動作と変わらないので、詳細な説明を省略する。通常の撮影動作と異なる点は、記憶部16に画像データを保存する際に、逆パノラマ撮影によって撮影された一群の画像データであることを明示して保存することにある。この明示の仕方はいろいろ考えられる。たとえば、ファイル名の一部を揃えてもよく、または、独立したフォルダを作り、その中に一群の画像データをまとめて保存してもよい。あるいは、画像データの付加情報に一群の画像データであることを示すデータを書き込んでもよい。
【0044】
第1回目の撮影を完了すると、制御部19は、次に、表示部14に「逆パノラマ撮影における撮影地点選定の指南」を行うための指南情報を含む指南画面21〜24を表示する。すなわち、まず、被写体25を中心にして座標Aから座標Bまでの距離を半径とする円を描き(ステップS8)、次いで、その円上に第2回目以降の撮影地点の候補マークを表示する(ステップS9)。
【0045】
この指南画面21〜24の具体例は、図6(a)、(b)に示されている。図6(a)において、被写体25を中心にして描かれた円26は、座標Aから座標Bまでの距離Lを半径としており、且つ、図6(b)において、その円26の上に複数のマークP2〜P8が表示されている。これらの複数のマークP2〜P8は、逆パノラマ撮影における撮影地点の候補となるマーク、つまり、逆パノラマ撮影に必要な撮影位置をユーザに指南するための指南情報であり、以下、候補マークP2〜P8ということにする。
【0046】
候補マークP2〜P8の設定条件は、第1に、各々の撮影候補地点(P2〜P8)から被写体25までの距離が、第1回目の撮影地点P1から被写体25までの距離Lと略一致していること(つまり、各々の撮影候補地点が円26の上にほぼ位置していること)、第2に、各々の撮影候補地点(P2〜P8)が、円25の面積を略同一の角度θで複数に分割した際の各分割線27、28・・・・の上にほぼ位置していることの2点である。
【0047】
第1の条件は、第1回目の撮影地点P1で撮影された被写体25の大きさと、第2回以降の撮影地点P2〜P8で撮影された被写体25の大きさとを揃えるためのものである。これは、各画像の被写体25の大きさが異なってしまうと、冒頭で説明した立体画像を作成する際に支障を来すからである。
【0048】
第2の条件は、立体画像の正確さ(緻密さともいえる)を決めるためのものである。角度θを小さくするほど正確な立体画像を生成できる。この角度θについて、たとえば、富士山の立体画像を生成する場合を例にして説明する。今、富士山の北方向の1点(静岡県内)と南方向の1点(山梨県内)の各々から富士山を撮影したとする。つまり、角度θ=180度で撮影したとする。この場合の撮影画像数は2になる。この少ない数の画像からも立体画像(富士山の立体画像)の生成は可能であるが、その正確さは充分でない。2つの撮影地点から見えない隠れた部分の情報が決定的に不足しているからである。
【0049】
したがって、正確な立体画像を得るためには、多くの方向からもれなく撮影する(角度θを小さくする)必要があるが、それにも限界がある。角度θを小さくすると、正確な立体画像が得られる反面、撮影地点の数が増えて撮影に手間がかかるようになるからである。このため、実際上は、要求される立体画像の正確さと撮影の手間とを勘案した過不足のない適切な角度θに設定することになる。
なお、ここでは、「被写体25を中心に座標Aから座標Bまでの距離Lを半径として描かれた円26」と、「その円26の上に設定された複数の候補マークP2〜P8」との2つを指南情報として画面(表示部14)に表示するとしたが、これに限定されない。指南情報から円26を省いた態様、つまり、候補マークP2〜P8だけを画面に表示する態様であってもよい。指南情報は、少なくとも前記の第1の条件を満たしたものであればよい。
【0050】
全ての候補マークP2〜P8を表示すると、制御部19は、候補マーク選択カウンタiに初期値“2”をセットし(ステップS10)、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“2”であるから、第2回目の撮影地点P2の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0051】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第2回目の撮影地点P2の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P2までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0052】
ユーザは、案内情報を見ながら第2回目の撮影地点P2へ移動し、第2回目の撮影地点P2に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第2回目の撮影地点P2に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第2回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第2回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第2回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0053】
第2回目の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP2を撮影済みにし(たとえば、色を変えたり形を変えたりなどし;以下同様)、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)。imaxは候補マークP2〜P8の総数である。「i>imax」の場合は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断してプログラムを終了するが、「i>imax」でない場合は、まだ、撮影が残っているので、ステップS11に戻る。
【0054】
制御部19は、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“3”であるから、第3回目の撮影地点P3の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0055】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第3回目の撮影地点P3の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P3までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0056】
ユーザは、案内情報を見ながら第3回目の撮影地点P3へ移動し、第3回目の撮影地点P3に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第3回目の撮影地点P3に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第3回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、第3回目の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、第3回目の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0057】
第3回目の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP3を撮影済みにし、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)。同様にimaxは候補マークP2〜P8の総数である。「i>imax」の場合は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断してプログラムを終了するが、「i>imax」でない場合は、まだ、撮影が残っているので、ステップS11に戻る。
【0058】
以上と同様の動作で第4回目から第7回目までの撮影地点への案内と撮影とを行い(詳細は省略)、第7回目の撮影完了の段階で、候補マーク選択カウンタiを+1して“8”になる。
【0059】
制御部19は、第i回目の撮影地点、つまり、現在のiは“8”であるから、最後になる第8回目の撮影地点P8の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0060】
ステップS11の判定結果がNOの場合、つまり、第8回目の撮影地点P8の位置と、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)とが一致していない場合には、当該撮影地点P8までの経路等を案内する案内情報を表示部14に表示し(ステップS12)、ステップS11の判定を繰り返す。
【0061】
ユーザは、案内情報を見ながら第8回目の撮影地点P8へ移動し、第8回目の撮影地点P8に到達すると、ステップS11の判定結果がYESになる。つまり、第8回目の撮影地点P8に到達した時点で、ユーザの現在位置(位置検出部13で検出された位置)と一致するので、制御部19は、表示部14に第8回目の撮影を行うべき旨のメッセージを表示する(フロー省略)。ユーザは、このメッセージに従い、最後(第8回目)の逆パノラマ撮影を行い、制御部19は、最後(第8回目)の撮影が完了したか否かを判定する(ステップS13)。
【0062】
最後(第8回目)の撮影を完了すると、制御部19は、指南画像24(図6(b))の候補マークP8を撮影済みにし、候補マーク選択カウンタiを+1(ステップS14)した後、「i>imax」であるか否かを判定する(ステップS15)が、この段階でiがimaxを超えているので、制御部19は、全ての候補マークP2〜P8について逆パノラマ撮影を完了したと判断し、必要であれば所要の終了メッセージ(たとえば、“一連の逆パノラマ撮影を完了しました”)を表示した後、プログラムを終了する。
【0063】
<効果>
以上のとおりであるから、実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)逆パノラマ撮影の撮影場所選択支援:
任意の被写体の座標Aと、その被写体を最初に撮影した場所の座標Bとを設定するだけで、当該被写体を逆パノラマ撮影するのに適した複数の撮影場所の候補(候補マークP2〜P8)を指南情報として画面に表示することができる。したがって、ユーザは、それらの候補マークP2〜P8の位置に順次移動して、撮影を繰り返すだけで、その被写体の立体画像を生成するための素材(複数の画像)を容易に得ることができる。
(2)撮影場所への案内:
また、最初の撮影場所への経路案内や、2回目以降の撮影場所への経路案内を行うので、地理に不案内な場所であっても迷うことなく、目的の撮影場所にたどり着くことができる。
(3)立体画像への誘い:
そして、上記の(1)及び(2)により、一般によく知られていない特殊な撮影手法である「逆パノラマ撮影」を誰でも手軽に行わせることができるようになるから、最終的に、立体画像を作って被写体を様々な方向から見るという仮想現実的な楽しみ方を多くのユーザに味合わせることができる。
【0064】
<第1の変形例>
上記の実施形態は様々な変形や発展が可能である。たとえば、以下のように変形してもよい。
【0065】
図7は、第1の変形例を示す図である。(a)に示すように、現場の状況によっては、指定された候補地点(候補マークPi)で撮影を行うことができない場合がある。このような場合には円26に沿って位置を修正するか、あるいは、被写体25から遠ざかったり(P’)、近づいたり(Pi”)して位置を修正しなければならない。
【0066】
円26に沿って位置を修正した場合は特段の不都合を生じない。少なくとも前記の第1の条件(距離Lが一致)を満たしているからである。しかしながら、被写体25から遠ざかったり(P’)、近づいたり(Pi”)した場合は、前記の第1の条件(距離Lが一致)を満たさなくなり、当該修正地点(P’やPi”)で撮影された被写体25の大きさと他の撮影地点で撮影された被写体25の大きさとが異なってしまうため、冒頭で説明した立体画像を作成する際に支障を来すという不都合を招く。
【0067】
この第1の変形例は、かかる不都合を解消するためのものである。ただし、この第1の変形例では、撮像部12の撮影レンズがズーム付であって、且つ、そのズーム倍率が制御部19からの指令で制御可能であるという前提が必要である。
【0068】
かかる前提の下、この第1の変形例では、図7(b)に示すように、第2回目以降の撮影段階において、撮影地点が円26の上であるか否かという判定(ステップS21)を行い、その判定結果がNOの場合、つまり、図7(a)に示すような修正位置(P’やPi”)にあれば、それらの修正位置が被写体25に近いか否か、すなわち、被写体25までの距離L以下の修正位置(Pi”)にあるか否かを判定し(ステップS22)、以下の場合(修正位置Pi”)には適量値ズームダウンし(ステップS23)、以下でない場合(修正位置P’)には適量値ズームアップする(ステップS24)という処理を加えたものである。
【0069】
ここで、ズームアップ、ダウンの「適量値」とは、第1回目で撮影した被写体の大きさに合致した被写体が得られるズーム倍率のことをいう。具体的には、第1回目の撮影画像と今回の撮影構図調整画像に共通する特徴点を探索し、ズーム倍率を実際に制御しながら(動かしながら)、それらの特徴点の位置が一致する倍率を見つけ出して上記の「適量値」として設定することをいう。
【0070】
このようにすると、指定された候補地点(候補マークPi)で撮影を行うことができない場合の不都合を解消できる。詳細には、やむを得ずに被写体25から遠ざかった場所(P’)に移動して撮影した場合には、本来であれば被写体25が小さく撮影されてしまうところ、この第1の変形例では、ズームアップ(ステップS24)によって被写体25の大きさを適正に戻す(拡大する)ことができ、または、やむを得ずに被写体25に近づいた場所(P”)に移動して撮影した場合には、本来であれば被写体25が大きく撮影されてしまうところ、この第1の変形例では、ズームダウン(ステップS23)によって被写体25の大きさを適正に戻す(縮小する)ことができ、いずれの場合も、立体画像を作成する際に支障を来さないようにできる。
【0071】
<第2の変形例>
図8は、第2の変形例を示す図である。前記の実施形態では、少なくとも被写体25までの距離Lが一致する位置(第1の条件を満たす位置)に撮影地点の候補マークを設定している。しかしながら、このような位置は実際の地形地物を全く考慮していないから、図8(a)に示すような立ち入りにくい場所、たとえば、道路29から外れた場所(Pi)にあったり、あるいは、図8(b)に示すような被写体25が見えない場所、たとえば、障害物30の陰に隠れた場所(Pi)にあったりする場合があり得る。図8(a)の場合は、無理矢理その場所(Pi)に立ち入ることも可能であるが、図8(b)の場合は、被写体25を見通せないので撮影自体を行うことができない。
【0072】
そこで、この第2の変形例では、図8(a)の場合には、地図上の自由に立ち入りできる場所(たとえば、道路29の上の場所Pi)に移動して修正することとし、また、図8(b)の場合には、障害物30を避けて被写体25を見通せる場所(円26の上の場所Pia)に移動して修正することとした。
【0073】
移動後の場所をPia、Pibで示す。図8(a)において、Piaは道路29の上であって且つ円26の上の場所であり、Pibは道路29の上であって且つ被写体25に接近し、または、被写体25から遠ざかった場所である。Pibの場合は前記の第1の変形例を併用する。
【0074】
このように、この第2の変形例によれば、実際の地形地物を考慮した場所に撮影地点の候補マークPia、Pibを移動して設定できるため、道路29の外に立ち入る必要がなく、また、障害物30を避けて撮影することができる。
【0075】
なお、以上の説明では、立ち入りにくい場所として道路29の外を示したが、これに限定されない。そのような場所は個人の敷地や空港等の立ち入り制限区域など様々存在するが、いずれも地図情報から特定することが可能である。したがって、この第2の変形例のように、実際の地形地物を考慮した場所に撮影地点の候補マークを移動して設定することは十分に実現可能である。
【0076】
また、障害物30についても同様である。地図には高度(標高)情報が含まれているものがある。たとえば、国土地理院刊行の「数値地図5mメッシュ(標高)」などが知られている。このような高度情報を含む地図を利用すれば、撮影地点の標高から被写体25を見通したときに、その間に山などの障害物30があるか否かを調べることができ、その調査結果に従い、障害物30を避けた場所に撮影地点の候補マークを移動して設定することができる。
【0077】
さらに、障害物30は山などの自然物だけに限らない。ビルなどの人工物も障害物30になる。かかる人工の障害物30を避けた場所に撮影地点の候補マークを移動して設定するには、たとえば、カーナビ用地図データの利用が考えられる。昨今のカーナビ用地図データの多くには、各地のランドマークの詳細情報(外観や高さ、大きさ等)が含まれているからである。これを利用することにより、ビルなどのランドマークを人工の障害物30とみなして回避することができ、とりわけ、都会の被写体25に対して逆パノラマ撮影を行う場合に好適なものとすることができる。
【0078】
<第3の変形例>
前記の実施形態では、第2の条件の角度θ(図6(b)参照)を固定値としているが、この角度θを小さくすると、正確な立体画像が得られる反面、撮影地点の数が増えて撮影に手間がかかるという背反性を持っている。したがって、角度θの決定に際しては、一方を犠牲にするかまたは両者の妥協を図るかのいずれかの方策しか取り得なかった。そこで、この第3の変形例では、角度θを任意に設定できるようにし、これにより、正確な立体画像の生成と撮影の手間軽減のいずれを優先させるかをユーザの意志で選択できるようにした。
【0079】
図9は、第3の変形例を示す図である。(a)は角度θを大きく変更した場合を示し、(b)は角度θを小さく変更した場合を示している。この第3の変形例では、ユーザが第2回目の候補マークP2の分割線28を選択すると、制御部19によって所定形状(図では手の形)のアイコン31が画面上に表示される。そして、ユーザによってこのアイコン1が所定方向(被写体25を中心にした時計回り方向又は反時計回り方向)に動かされると、制御部19は、このアイコン31の動きに合わせて分割線28の角度θを増減変化させるとともに、他の分割線の角度も同様に増減変化させ、且つ、各々の分割線ごとの候補マークPiの位置や数を修正する。
【0080】
したがって、たとえば、(a)に示すように、角度θを大きく変更した場合には、候補マークの間隔が広がり、それに伴い、候補マークの数が少なくなるから、たとえば、当初の候補マークの数を図6(b)の7つとすれば、図示の例では7から3へと4つ減らすことができ、それだけ撮影地点を少なくして撮影の手間を軽減することができる。または、(b)に示すように、角度θを小さく変更した場合には、候補マークの間隔が狭まり、それに伴い、候補マークの数が増えるから、たとえば、当初の候補マークの数を同様に図6(b)の7つとすれば、図示の例では7から11へと4つ増やすことができ、撮影の手間は増えるものの、正確な立体画像を生成するための素材(多数の画像)を得ることができる。
【0081】
このように、この第3の変形例によれば、撮影の手間軽減を重視するユーザは自らの意志で必要なだけ角度θを大きくできる一方、正確な立体画像の生成を重視するユーザは同様に自らの意志で必要なだけ角度θを小さくできるという、いずれにも偏らない柔軟性のある使い方ができるから、実用上、好ましいものとすることができる。
【符号の説明】
【0082】
Pi 候補マーク(撮影場所)
10 デジタルカメラ(撮像装置)
13 位置検出部(第1の取得手段、第2の取得手段)
14 表示部(画面)
19 制御部(演算手段、第1の案内手段、第2の案内手段、第1の取得手段、第2の取得手段)
19a CPU(コンピュータ、表示手段)
25 被写体
26 円
30 障害物
31 アイコン(インターフェース手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段を備え、
前記指南手段は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離と略同等の距離にある任意の位置を前記2回目以降の撮影候補位置として求め、
前記表示手段は、前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離に相当する長さの半径を持つ円を描き、当該円上の位置を、前記2回目以降の撮影候補位置として求め、
前記表示手段は、前記円と前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークとをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つの付近でユーザが実際に撮影を行う際、その実際の撮影位置が前記円上にない場合に、前記被写体を撮像するための撮像部の画角を増減変化させて、あたかも前記円上で実際の撮影が行われたかのように当該撮影候補位置の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記円上に設定された前記2回目以降の撮影候補位置の間隔をユーザに変更させるためのインターフェース手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが立ち入り困難な区域または立ち入りが制限された区域に含まれている場合に、当該区域を避けた場所に当該撮影候補位置を移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが障害物に邪魔されて前記被写体を見通せない場所にある場合に、当該撮影候補位置を、前記障害物を回避して前記被写体を見通せる場所に移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)と現在位置とが異なる場合に、前記撮影位置(B)と現在位置との相対的な位置関係または前記撮影位置(B)への経路を提示して案内する第1の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記2回目以降の撮影候補位置と現在位置との相対的な位置関係または前記2回目以降の撮影候補位置への経路を提示して案内する第2の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南工程を含む撮像制御方法であって、
前記指南工程は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得工程と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得工程と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算工程と、
前記演算工程で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示工程と
を含むことを特徴とする撮像制御方法。
【請求項11】
撮像装置のコンピュータに、
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段としての機能を与えるためのプログラムであって、
前記指南手段は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段と
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項1】
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段を備え、
前記指南手段は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離と略同等の距離にある任意の位置を前記2回目以降の撮影候補位置として求め、
前記表示手段は、前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記被写体の位置(A)を中心にして、前記2つの位置(A、B)の間の距離に相当する長さの半径を持つ円を描き、当該円上の位置を、前記2回目以降の撮影候補位置として求め、
前記表示手段は、前記円と前記2回目以降の撮影候補位置を示す所定のマークとをユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つの付近でユーザが実際に撮影を行う際、その実際の撮影位置が前記円上にない場合に、前記被写体を撮像するための撮像部の画角を増減変化させて、あたかも前記円上で実際の撮影が行われたかのように当該撮影候補位置の修正を行うことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記円上に設定された前記2回目以降の撮影候補位置の間隔をユーザに変更させるためのインターフェース手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが立ち入り困難な区域または立ち入りが制限された区域に含まれている場合に、当該区域を避けた場所に当該撮影候補位置を移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記2回目以降の撮影候補位置のいずれか1つが障害物に邪魔されて前記被写体を見通せない場所にある場合に、当該撮影候補位置を、前記障害物を回避して前記被写体を見通せる場所に移動するように修正することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)と現在位置とが異なる場合に、前記撮影位置(B)と現在位置との相対的な位置関係または前記撮影位置(B)への経路を提示して案内する第1の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記2回目以降の撮影候補位置と現在位置との相対的な位置関係または前記2回目以降の撮影候補位置への経路を提示して案内する第2の案内手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南工程を含む撮像制御方法であって、
前記指南工程は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得工程と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得工程と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算工程と、
前記演算工程で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示工程と
を含むことを特徴とする撮像制御方法。
【請求項11】
撮像装置のコンピュータに、
任意の被写体に対して場所を変えながら複数の画像を撮像する際の撮影場所の選定を指南する指南手段としての機能を与えるためのプログラムであって、
前記指南手段は、
前記被写体の位置(A)を取得する第1の取得手段と、
前記被写体を最初に撮影する際の撮影位置(B)を取得する第2の取得手段と、
前記2つの位置(A、B)に基づいて2回目以降の撮影候補位置を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された撮影候補位置をユーザに対する指南情報として画面上の地図に表示する表示手段と
を含むことを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−138759(P2012−138759A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289752(P2010−289752)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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