撮像装置、生体高分子分析チップ及び分析支援装置
【課題】 低感度であっても蛍光を検知することができる撮像装置を提供すること。
【解決手段】 生体高分子分析チップ1は、透明基板17と、透明基板17上においてダブルゲートトランジスタ20を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス3と、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜35と、反射防止膜35の表面上においてマトリクス状に点在したスポット60,60,…と、を具備する。
【解決手段】 生体高分子分析チップ1は、透明基板17と、透明基板17上においてダブルゲートトランジスタ20を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス3と、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜35と、反射防止膜35の表面上においてマトリクス状に点在したスポット60,60,…と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光感度の高い撮像装置に関し、特に生体高分子分析チップに有用な撮像装置に関し、その撮像装置を用いた生体高分子分析チップ及び分析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種のタンパク質の機能を特定するために、遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することを含む。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてmRNAと相補的なcDNAを合成し、このcDNAに蛍光物質で標識したサンプルDNAを作成する。
【0005】
次に、サンプルDNAをDNAマイクロアレイ上に添加すると、cDNAの塩基配列が相補的なサンプルDNAがハイブリダイゼーションによってDNAマイクロアレイ上に固定される。つまり、サンプルDNAが複数種類のプローブDNAのうち塩基配列が相補的なプローブDNAとのみ結合して、二本鎖が生じる。一方、サンプルDNAは、相補性を有しないプローブDNAとは結合しないので洗浄する際にDNAマイクロアレイから除去される。このためサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置のみから蛍光物質による蛍光を検出することが可能になる。
【0006】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光レーザーの照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査し、励起光レーザー光が蛍光物質に入射されることにより発した蛍光を集光レンズでフォトマルチプライヤーに集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測し、二次元走査によってDNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測するようになっている。これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、サンプルDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したプローブDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって検体中で転写されているmRNAの塩基配列を特定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のこのようなフォトセンサは感度が高い方が好ましいが、DNAマイクロアレイは異なる塩基配列の遺伝子に対応するcDNAを固定担体上にそれぞれスポットするため、各スポットの径が小さくなってしまい、十分な感度を得にくいといった問題を抱えていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、感度の良好な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を備えることを特徴とする撮像装置である。
【0010】
このような構造にすることで固体撮像デバイスの受光面での光の反射を抑制できるので固体撮像デバイスに到達する光の量を増大することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の撮像装置であって、前記固体撮像デバイスが、二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子と、これら光電変換素子を被覆した透明な保護膜と、を有するとともに前記保護膜の表面を受光面としたことを特徴とする撮像装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の撮像装置であって、
前記固体撮像デバイス上に、所定の波長域の光を吸収するフィルタが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、生体高分子分析チップであって、
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の生体高分子分析チップであって、
前記生体高分子の特性に応じて結合された生体高分子に付着される蛍光標識を励起する励起光を遮光する励起光フィルタが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、分析支援装置において、固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
前記スポットに対して励起光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
以上の生体高分子分析チップを用いる際には、蛍光標識されたサンプルを反射防止膜上に添加する。そうすると、サンプルが特異的な(例えば、相補的な)スポットには結合し、特異的でないスポットには結合しない。そのため、固体撮像デバイスの受光面に向けて励起光を照射した状態で固体撮像デバイスで撮像を行えば、サンプルに結合したスポットが付いた部分では蛍光により明るくなり、サンプルに結合したスポットが付いていない部分では暗くなる。
【0017】
このように、励起光による走査を行わずとも固体撮像デバイスで撮像を行うだけで、二次元の画像が得られ、得られた画像からサンプルの分析を行うことができる。固体撮像デバイスの受光面に成膜された反射防止膜上にスポットが点在しているから、レンズ等の光学系が無くとも固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。
【0018】
また、固体撮像デバイスの受光面に成膜された反射防止膜上にスポットが点在しているから、固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しているから、スポットから発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射する。従って、固体撮像デバイスの感度が高くなくても済む。
【0019】
また、固体撮像デバイスの受光面上に反射防止膜が成膜されているから、サンプルと結合したスポットから発した光が反射防止膜を介して固体撮像デバイスの受光面を透過する透過率が非常に向上する。そのため、固体撮像デバイスの感度が低くても、固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。つまり、サンプルに結合したスポットから固体撮像デバイスの受光面に入射する光量が増え、サンプルに結合したスポットの明るさと、サンプルに結合していないスポットの明るさの差が大きくなるので、固体撮像デバイスでコントラストの高い像を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固体撮像デバイスの受光面に反射防止膜が成膜されているから、反射防止膜を介して固体撮像デバイスの受光面を透過する光の透過率が向上する。そのため、固体撮像デバイスの感度が低くても、固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0022】
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、本発明を適用した実施形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図であり、図2は、図1の生体高分子分析チップ1を厚さ方向に切断した切断面IIを矢印方向に見た断面図である。
【0023】
この生体高分子分析チップ1は、透明基板17と、画素としての光電変換素子を透明基板17上に二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス3と、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜(AR(Anti-Reflection)コート)35と、反射防止膜35の表面上において二次元アレイ状に点在したスポット60,60,…と、を具備する。固体撮像デバイス3の受光面に反射防止膜35を成膜したものが、本発明の撮像装置を適用した実施形態の撮像装置である。
【0024】
〔2〕固体撮像デバイス
図1〜図4を用いて固体撮像デバイス3について詳細に説明する。ここで、図3は、固体撮像デバイス3の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図であり、図4は、図3における固体撮像デバイス3の光電変換素子を厚さ方向に切断した切断面IIを矢印方向に見た断面図である。
この固体撮像デバイス3は透明基板17上に設けられている。透明基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0025】
この固体撮像デバイス3においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜31によってまとめて被覆されている。
【0026】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極30と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜25に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号に変換するものである。
【0027】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板17上に形成されている。また、透明基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0029】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0030】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0031】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0032】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0033】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0034】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極30がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極30は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極30が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極30及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0035】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極30及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜31によってまとめて被覆され、保護絶縁膜31は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜31は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0036】
以上のように構成された固体撮像デバイス3は、保護絶縁膜31の表面を受光面としており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0037】
〔3〕反射防止膜
反射防止膜35は、固体撮像デバイス3の受光面(保護絶縁膜31の表面)上に成膜されている。反射防止膜35は、単層構造であっても良いし、複層(多層)構造であっても良い。
【0038】
〔3−1〕反射防止膜単体
反射防止膜35のみが設けられ、励起光フィルタが設けられていない場合、生体高分子分析チップ1の下面側、つまり透明基板17の下方に配置され、後述する蛍光物質63を励起する波長域の光を、ダブルゲートトランジスタ20,20,…間を介してスポット60,60,…に照射する面光源が配置されている。この面光源は、光源自体が平面形状であってもよく、また直線状の光源と平面形状の導光板とのセットであってもよい。
後述する、スポット60を構成する一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションを引き起こしたサンプルDNA62に付着した蛍光物質63が励起光によって発する蛍光64が矢印方向に向かって反射防止膜35の表面に到達するまで伝搬する媒体(例えば空気或いはサンプルDNA62を電気泳動させるための溶液、溶媒)の相の屈折率をnhybとし、保護絶縁膜31の屈折率をnprotとすると、反射防止膜35の無反射条件、つまりθ1=0°としたときに、反射防止膜35の屈折率nARが次式(1)を満たすような反射防止膜35が好ましい。
【数1】
【0039】
また、反射防止膜35の光学膜厚(膜厚×屈折率)は、固体撮像デバイス3で受光する蛍光の強度が最も大きい波長(ピーク波長)の4分の1に等しい方が好ましい。したがって、固体撮像デバイス3で受光する光のピーク波長をλ〔μm〕とした場合、反射防止膜35の膜厚dAR〔μm〕が次式(2)を満たしていることが好ましい。
【数2】
【0040】
例えば、λ=500nm、nhyb=1.0、nprot=1.87のとき、nAR=1.37、dAR=100.5nmとなる。
【0041】
反射防止膜35が式(1)・(2)を満たすように設けられていれば、後述するサンプルDNA62が一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションされたスポット60において、生体高分子分析チップ1の下面に位置する光源の光が入射されることによって標識化された蛍光物質63が発する蛍光64が上から反射防止膜35に入射した場合、反射防止膜35の表面における光学的干渉作用によって反射防止膜35において殆ど反射せず、非常に高い透過率で反射防止膜35及び保護絶縁膜31を透過し、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23に入射する。
【0042】
そして、蛍光64は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r12P、S偏光振幅反射率r12Sは、それぞれ次式(3)、(4)を満たしている。
【数3】
【数4】
【0043】
上記θ1は、屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相に入射されるときの入射角であり、上記θ2は反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射されるときの入射角である。
【0044】
また、反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たしている。
【数5】
【数6】
【0045】
上記θ3は反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射角θ2で入射したときの屈折角である。
そして、P偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(7)、(8)を満たしている。
【数7】
【数8】
【0046】
図5は比較例として反射防止膜35が設けられていない生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(7)、(8)に基づいて示し、図6は反射防止膜35が設けられている生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示している。なお、nhyb=1.0、nprot=1.87、nAR=1.37として計算している。
【0047】
このように、反射防止膜35がない場合、ハイブリダイゼーションによって放射状に発する蛍光64のうち、相対的に保護絶縁膜31に到達する光強度の強い入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が8%を越えてしまい、当該範囲での透過光量は、総光量の90%程度になってしまうためダブルゲートトランジスタ20の受光感度が低くなってしまうが、反射防止膜35が設けられていると、入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が低く、当該範囲での透過光量は、総光量の100%近くに達するのでダブルゲートトランジスタ20の受光感度を向上することが出来る。
【0048】
なお、反射防止膜35が例えば、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0049】
〔3−2〕反射防止膜及び励起光フィルタ積層構造
図7に示すように、保護絶縁膜31上に形成され、励起光を選択的に遮光するSiO2又はTiO2等の励起光フィルタ36と、励起光フィルタ36上に形成された反射防止膜35との積層構造をλ/4波長板として機能させた場合、生体高分子分析チップ1の上面側、つまりスポット60,60,…の上方に配置され、蛍光物質63を励起する波長域の光を、ダブルゲートトランジスタ20,20,…間を介さずに直接スポット60,60,…に照射する面光源が配置されている。この面光源は、光源自体が平面形状であってもよく、また直線状の光源と平面形状の導光板とのセットであってもよい。
反射防止膜35の上方に位置し、蛍光64が矢印方向に向かって反射防止膜35の表面に到達するまで伝搬する媒体(例えば空気或いはサンプルDNA62を電気泳動させるための溶液、溶媒)の相の屈折率をnhybとし、保護絶縁膜31の屈折率をnprotとすると、反射防止膜35及び励起光フィルタ36での無反射条件、つまり入射角θ1=0°としたときに、励起光フィルタ36の屈折率nFLT及び反射防止膜35の屈折率nARが次式(9)を満たすことが好ましい。
【数9】
【0050】
また、反射防止膜35及び励起光フィルタ36の光学膜厚は、固体撮像デバイス3で受光する蛍光の波長の4分の1に等しい。すなわち、固体撮像デバイス3で受光する光の波長をλ〔μm〕とした場合、励起光フィルタ36の膜厚dFLT〔μm〕が次式(10)を満たし、反射防止膜35の膜厚dAR〔μm〕が次式(11)を満たすことが好ましい。
【数10】
【数11】
【0051】
例えば、λ=500nm、nhyb=1.0、nAR=1.70、nFLT=2.32、nprot=1.87のとき、dFLT=59.27nm、dAR=81.05nmとなる。
【0052】
反射防止膜35及び励起光フィルタ36が式(9)・(10)・(11)を満たすように設けられていれば、光源から蛍光物質63を励起する光がスポット60,60,…に照射されると、後述するサンプルDNA62が一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションされたスポット60では、生体高分子分析チップ1の下面に位置する光源の光が入射されることによって標識化された蛍光物質63が発する蛍光64及び光源からの励起光が上から反射防止膜35に入射した場合、反射防止膜35の各界面における光学的干渉作用によって反射防止膜35及び励起光フィルタ36において反射が抑制され、非常に高い透過率で反射防止膜35及び励起光フィルタ36を透過し、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23に入射する。
【0053】
そして、蛍光64は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。屈折率がnARの反射防止膜35の相から伝搬された光が励起光フィルタ36の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(12)、(13)を満たしている。
【数12】
【数13】
【0054】
上記θ2は、屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相に入射されるときの入射角であり、上記θ3は励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射されるときの入射角である。
【0055】
また、励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たしている。
【数14】
【数15】
【0056】
上記θ4は励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射角θ3で入射したときの屈折角である。
【0057】
そして、励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面におけるP偏光エネルギー反射率R23P、S偏光エネルギー反射率R23Sは、それぞれ次式(16)、(17)を満たしている。
【数16】
【数17】
【0058】
反射防止膜35の相と励起光フィルタ36との界面、及び励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面を合成した仮想的な境界面におけるp偏光振幅反射率r234P、s偏光振幅反射率r234Sは、次式(18)、(19)を満たしている。
【数18】
【数19】
【0059】
屈折率がnhybの相と反射防止膜35の相との界面、反射防止膜35の相と励起光フィルタ36との界面、及び励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(20)、(21)を満たしている。
【数20】
【数21】
【0060】
ここで、φ3Pは上記仮想的な境界面におけるp偏光位相角、φ3Sは上記仮想的な境界面におけるs偏光位相角であり、次式(22)、(23)を満たしている。
【数22】
【数23】
【0061】
図8は比較例として励起光フィルタ36のみで反射防止膜35が設けられていない生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(20)、(21)に基づいて示し、図9は反射防止膜35及び励起光フィルタ36が設けられている生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示している。なお、nhyb=1.0、nAR=1.70、nFLT=2.32、nprot=1.87として計算している。
【0062】
このように、励起光フィルタ36のみの場合、ハイブリダイゼーションによって放射状に発する蛍光64のうち、相対的に保護絶縁膜31に到達する光強度の強い入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が20%を越えてしまい、当該範囲での透過光量は総光量の80%未満になってしまうため、ダブルゲートトランジスタ20の受光感度が低くなってしまうが、反射防止膜35及び励起光フィルタ36が設けられていると、入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が低く、当該範囲での透過光量は、総光量の100%近くに達するのでダブルゲートトランジスタ20の受光感度を向上することが出来る。
このとき、光源からの励起光は、反射防止膜35を透過することになるが励起光フィルタ36に吸収されてしまうので、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23にはほとんど到達しない。このため、ダブルゲートトランジスタ20でのS/N比(蛍光64の受光量/励起光の受光量)を高くすることが可能となる。
【0063】
なお、反射防止膜35が励起光フィルタ36同様に、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0064】
また、図10に示すように、反射防止膜35及び励起光フィルタ36が交互に繰り返すよう積層した多層膜であっても良い。この場合でも、反射防止膜35が励起光フィルタ36と同様に、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0065】
〔4〕スポット
次に、スポット60について説明する。図1、図2、図4に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、マトリクス状となって反射防止膜35の表面上に配列されている。1つのスポット60は一本鎖プローブDNA61が多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数の一本鎖プローブDNA61は同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとに一本鎖プローブDNA61の塩基配列が異なる配列となっている。一本鎖プローブDNA61としては、検体において既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。
【0066】
1つのスポット60につき1つのダブルゲートトランジスタ20が重なるように、スポット60,60,…が配列されている。なお、1つのスポット60につき隣り合う幾つかのダブルゲートトランジスタ20,20,…が重なっても良いが、この場合には何れのスポット60でも重なったダブルゲートトランジスタ20の数が同じである。
【0067】
〔5〕DNA分析方法及び分析支援装置
次に、生体高分子分析チップ1を用いたDNA分析方法について説明する。
【0068】
生体高分子分析チップ1を分析支援装置にセッティングして生体高分子分析チップ1を用いるので、まず分析支援装置について図11、図12を用いて説明する。図11は、分析支援装置70の回路構成を示したブロック図であり、図12は、分析支援装置70に生体高分子分析チップ1をセッティングした場合の側面図である。図12において、生体高分子分析チップ1は破断して示されている。
【0069】
分析支援装置70は、生体高分子分析チップ1がセッティングされる分析台71と、この分析台71に対して着脱できる生体高分子分析チップ1と、固体撮像デバイス3の受光面の上から受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、固体撮像デバイス3を駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコントローラ73と、コントローラ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、を備える。
【0070】
生体高分子分析チップ1が分析台71にセッティングされた場合には、固体撮像デバイス3のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ74の端子にそれぞれ接続されるようになっている。同様に、固体撮像デバイス3のボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ75の端子にそれぞれ接続されるようになっており、固体撮像デバイス3のドレインライン43,43,…がドレインドライバ76の端子にそれぞれ接続されるようになっている。また、生体高分子分析チップ1が分析台71にセッティングされた場合、固体撮像デバイス3のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されるようになっている。
【0071】
励起光照射装置72は分析台71に対向しており、分析台71に生体高分子分析チップ1が搭載された場合に、励起光照射装置72から面状に出射した励起光が生体高分子分析チップ1に照射されるようになっている。励起光照射装置72が照射する励起光は紫外線波長域の光である。なお、励起光照射装置72は、出射する励起光の波長域を可変可能に設けられていても良い。
【0072】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0073】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス3を駆動するものである。トップゲートドライバ74は、シフトレジスタである。つまり、図13に示すように、トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時にローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。
【0074】
ボトムゲートドライバ75は、シフトレジスタである。つまり、図13に示すように、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。
【0075】
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後にキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0076】
図13に示すように、ドレインドライバ76は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ76は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧を増幅してコントローラ73に出力するようになっている。
【0077】
コントローラ73は励起光照射装置72を点灯させる機能を有する。また、コントローラ73は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に固体撮像デバイス3の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コントローラ73はドレインドライバ76から入力した電気信号をA/D変換することで、固体撮像デバイス3の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。また、コントローラ73は入力した二次元の画像データ画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0078】
生体高分子分析チップ1及び分析支援装置70の動作並びにDNAの分析方法(同定方法)について説明する。
まず、作業者が検体からcDNAを採取して、場合によってPCR増幅を行い、得られたDNAに蛍光物質63を結合させ、DNAを蛍光物質63で標識する。蛍光物質63は、分析支援装置の励起光照射装置から出射される励起光で励起されるものであってその励起光によって蛍光(但し、反射防止膜35によって反射が防止される波長の光)を発するものを選択するが、蛍光物質63としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られたDNAは、溶液中に含まれている。以下では、このDNAをサンプルDNA62という。
【0079】
次いで、作業者が、サンプルDNA62を含有した溶液を固体撮像デバイス3の受光面に塗布する。ここで、固体撮像デバイス3の受光面にサンプルDNA62を分布させるために、サンプルDNA62を電気泳動させても良い。なお、サンプルDNA62を含有した溶液をスポット60,60,…に順次又は同時に滴下しても良い。このとき、サンプルDNAが一本鎖となるようにサンプルDNAを含有した溶液は加熱されている。
【0080】
その後、プローブDNA61とサンプルDNA62とがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ1を所定の温度に冷却する。これにより、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA62と相補的なプローブDNA61があれば、これとハイブリダイズする。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA62と相補的なものがなければ、サンプルDNA62はどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0081】
その後、固体撮像デバイス3の受光面に塗布したサンプルDNA62のうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す。
【0082】
次いで、作業者が固体撮像デバイス3を分析台71にセッティングし、励起光照射装置72を固体撮像デバイス3の受光面に対向させ、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をコントローラ73に接続する。
【0083】
その後、コントローラ73を起動すると、コントローラ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させると、励起光照射装置72から固体撮像デバイス3の受光面に向けて励起光が出射する。
【0084】
サンプルDNA62が標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNA62とハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が発し、サンプルDNA62と結合しなかったスポット60からは蛍光が発しない。そのため、サンプルDNA62と結合したスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には高強度の蛍光が入射し、サンプルDNA62と結合していないスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には殆ど蛍光が入射しない。固体撮像デバイス3の受光面にスポット60,60,…が固定されているため、サンプルDNA62と結合したスポット60から発した蛍光はあまり減衰せずに、そのスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20に入射して電子−正孔対を発生させる。従って、ダブルゲートトランジスタ20,20,…の感度が低くても、十分に強度を検知することができる。
【0085】
その後、励起光照射装置72が点灯した状態で、コントローラ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、固体撮像デバイス3に撮像動作を行わせる。これにより、固体撮像デバイス3がダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれで光強度又は光量を検知し、受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する。コントローラ73は、固体撮像デバイス3で取得された画像データを入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コントローラの処理が終了する。
【0086】
作業者は、出力装置77により出力された画像データからハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればプローブDNA61の塩基配列からサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによって検体中で発現している遺伝子を特定することができる。
【0087】
ここで、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76による固体撮像デバイス3の動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から最終行目のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ76が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0088】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。図10に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極30の電圧により反発して吐出される。
【0089】
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了する。i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0090】
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極30に印加されている電位が−20〔V〕であり、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、たとえ半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔の電荷だけではゲート−ソース間電位が低いので半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0091】
次に、ドレインドライバ76がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0092】
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極30の負電界を緩和するように働くため、ボトムゲート電極21の正電界により半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0093】
ここで、キャリア蓄積期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の変化傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧を検出してA/D変換する。これにより、光の強度に換算される。なお、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。また、図10では、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスが立ち下がってからであるが、これに限らず、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、トップゲートドライバ74のi行目のリセットパルスの立ち下がり直後からボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がりまでの間であってもよい。ただし、(i+1)行目のダブルゲートトランジスタ20のためにドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスの出力は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がり以降になるように設定されている。
【0094】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、生体高分子分析チップ1上の光の強度分布が画像として取得される。そして、光強度分布を表した画像は、コントローラに入力される。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜35上にスポット60,60,…が点在しているから、走査を行わずとも固体撮像デバイス3で撮像を行うだけで二次元の画像が得られる。更に、分析支援装置70にレンズを設けなくとも、固体撮像デバイス3で鮮明な像を得ることができるので、分析支援装置70の小型化を図ることができる。更に、スポット60から発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイス3の受光面に入射するので、固体撮像デバイス3の感度が高くなくても済む。
【0096】
また、固体撮像デバイス3の受光面に反射防止膜35が成膜され、その反射防止膜35は界面における干渉作用によって反射を防止するものであるから、反射防止膜35における蛍光の透過率が非常に向上する。そのため、固体撮像デバイス3の蛍光感度が低くても、固体撮像デバイス3で鮮明な像を得ることができる。つまり、サンプルDNA62に結合したプローブDNA61があるスポット60からダブルゲートトランジスタ20に入射する蛍光量が増え、サンプルDNA62に結合したスポット60での受光量と、結合していないスポット60での受光量の差が大きくなるので、固体撮像デバイス3でコントラスト比の高い像を得ることができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。以下、生体高分子分析チップ1の変形例について説明する。
【0098】
〔変形例1〕
上記実施形態では励起光照射装置72が分析台71の上に設置され、反射防止膜35の上方から反射防止膜35に向けて励起光を照射するようになっている。それに対して、図14に示すように、励起光照射装置72を分析台71に設置しても良い。この場合、固体撮像デバイス3の裏面を励起光照射装置72の向けて生体高分子分析チップ1をセッティングし、励起光照射装置72によって励起光が固体撮像デバイス3の下から固体撮像デバイス3の裏面向けて照射される。固体撮像デバイス3はボトムゲート電極21、ボトムゲートライン41、ソース電極27、ソースライン42、ドレイン電極28、ドレインライン43の部分を除いて光透過性であるから、励起光がダブルゲートトランジスタ20,20,…の間において固体撮像デバイス3の受光面から上へ出射する。また、この場合、励起光フィルタ36を設けず且つ反射防止膜35が励起光遮蔽性を有さないようにする。
【0099】
〔変形例2〕
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を画素として用いた固体撮像デバイス3を用いているが、別の種類の光電変換素子を画素として用いた固体撮像デバイスを生体高分子分析チップに用いても良い。例えば、フォトダイオードを画素として用いたCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等といった固体撮像デバイスを用いても良い。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するためのCMOS回路が設けられている。CCDイメージセンサであっても、CMOSイメージセンサであっても、その受光面に反射防止膜35と同様の反射防止膜を成膜し、その反射防止膜上に複数種のスポットを点着させる。
【0100】
〔変形例3〕
上記実施形態では、スポット60が既知の塩基配列の一本鎖DNAからなるものであるが、その他の既知の生体高分子、例えば、既知のアミノ酸配列のペプチドやタンパク質、既知の細胞等からなるものを用いてもよい。
【0101】
〔変形例4〕
上記実施形態では、励起光照射装置72から発する励起光を紫外線とし、励起光によってサンプルDNA62から発する蛍光を可視光としたが、このような光の波長域に限定されない。但し、励起光照射装置72から発する励起光がサンプルDNA62に結合させた標識物質を励起させる波長域の光であること、励起光によって標識物質から発した光の波長域が励起光の波長域と異なることが必要である。また、固体撮像デバイス3が標識物質から発した光に対して感度を示すことが必要であり、反射防止膜35はその光の反射を防止するような光学膜厚に設計されている必要がある。
また、上記実施形態では、蛍光物質63から発する蛍光強度を計測したが、蛍光物質の代わりに化学発光物質を標識物質として用い、発光強度を計測してもよい。この場合には、励起光照射装置が不要となる。ただし、固体撮像デバイス3が化学発光物質から発した光に対して感度を示すことが必要である。
【0102】
〔変形例5〕
また、上記実施形態では、コントローラ73が固体撮像デバイス3から入力した画像データに従った画像を出力装置77に出力し、作業者が出力された画像データからサンプルDNA62の配列を特定したが、コントローラ73がサンプルDNA62の配列を特定しても良い。すなわち、コントローラが、特徴抽出処理によって画像データ中のどの部分の蛍光強度が高いかを特定し、蛍光強度が高い部分に対応するスポット60を特定し、その特定したスポット60に相補的な塩基配列を出力装置から出力する。
【0103】
〔変形例6〕
また上記実施形態では、生体高分子分析チップとして用いたが、受光面に指を接触させて、指の指紋に沿った凹凸により変位する光の出射量を検知する指紋センサとして用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図である。
【図2】図1の切断面IIに沿った断面図である。
【図3】固体撮像デバイス3の1つの画素の平面図である。
【図4】図3の切断面IVに沿った断面図である。
【図5】比較例での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図6】本発明での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図7】固体撮像デバイス3の表層の断面図である。
【図8】比較例での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図9】本発明での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図10】他の固体撮像デバイス3の表層の断面図である。
【図11】分析支援装置70の回路構成を示したブロック図である。
【図12】分析支援装置70の概略側面図である。
【図13】ドライバによって固体撮像デバイス3に出力される電気信号のレベルの推移を示したタイミングチャートである。
【図14】別例の分析支援装置70Aの概略側面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 … 生体高分子分析チップ
3 … 固体撮像デバイス
35 … 反射防止膜
60 … スポット
61 … 一本鎖プローブDNA(生体高分子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光感度の高い撮像装置に関し、特に生体高分子分析チップに有用な撮像装置に関し、その撮像装置を用いた生体高分子分析チップ及び分析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種のタンパク質の機能を特定するために、遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することを含む。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてmRNAと相補的なcDNAを合成し、このcDNAに蛍光物質で標識したサンプルDNAを作成する。
【0005】
次に、サンプルDNAをDNAマイクロアレイ上に添加すると、cDNAの塩基配列が相補的なサンプルDNAがハイブリダイゼーションによってDNAマイクロアレイ上に固定される。つまり、サンプルDNAが複数種類のプローブDNAのうち塩基配列が相補的なプローブDNAとのみ結合して、二本鎖が生じる。一方、サンプルDNAは、相補性を有しないプローブDNAとは結合しないので洗浄する際にDNAマイクロアレイから除去される。このためサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置のみから蛍光物質による蛍光を検出することが可能になる。
【0006】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光レーザーの照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査し、励起光レーザー光が蛍光物質に入射されることにより発した蛍光を集光レンズでフォトマルチプライヤーに集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測し、二次元走査によってDNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測するようになっている。これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、サンプルDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したプローブDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって検体中で転写されているmRNAの塩基配列を特定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のこのようなフォトセンサは感度が高い方が好ましいが、DNAマイクロアレイは異なる塩基配列の遺伝子に対応するcDNAを固定担体上にそれぞれスポットするため、各スポットの径が小さくなってしまい、十分な感度を得にくいといった問題を抱えていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、感度の良好な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を備えることを特徴とする撮像装置である。
【0010】
このような構造にすることで固体撮像デバイスの受光面での光の反射を抑制できるので固体撮像デバイスに到達する光の量を増大することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の撮像装置であって、前記固体撮像デバイスが、二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子と、これら光電変換素子を被覆した透明な保護膜と、を有するとともに前記保護膜の表面を受光面としたことを特徴とする撮像装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の撮像装置であって、
前記固体撮像デバイス上に、所定の波長域の光を吸収するフィルタが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、生体高分子分析チップであって、
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の生体高分子分析チップであって、
前記生体高分子の特性に応じて結合された生体高分子に付着される蛍光標識を励起する励起光を遮光する励起光フィルタが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、分析支援装置において、固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
前記スポットに対して励起光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
以上の生体高分子分析チップを用いる際には、蛍光標識されたサンプルを反射防止膜上に添加する。そうすると、サンプルが特異的な(例えば、相補的な)スポットには結合し、特異的でないスポットには結合しない。そのため、固体撮像デバイスの受光面に向けて励起光を照射した状態で固体撮像デバイスで撮像を行えば、サンプルに結合したスポットが付いた部分では蛍光により明るくなり、サンプルに結合したスポットが付いていない部分では暗くなる。
【0017】
このように、励起光による走査を行わずとも固体撮像デバイスで撮像を行うだけで、二次元の画像が得られ、得られた画像からサンプルの分析を行うことができる。固体撮像デバイスの受光面に成膜された反射防止膜上にスポットが点在しているから、レンズ等の光学系が無くとも固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。
【0018】
また、固体撮像デバイスの受光面に成膜された反射防止膜上にスポットが点在しているから、固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しているから、スポットから発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射する。従って、固体撮像デバイスの感度が高くなくても済む。
【0019】
また、固体撮像デバイスの受光面上に反射防止膜が成膜されているから、サンプルと結合したスポットから発した光が反射防止膜を介して固体撮像デバイスの受光面を透過する透過率が非常に向上する。そのため、固体撮像デバイスの感度が低くても、固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。つまり、サンプルに結合したスポットから固体撮像デバイスの受光面に入射する光量が増え、サンプルに結合したスポットの明るさと、サンプルに結合していないスポットの明るさの差が大きくなるので、固体撮像デバイスでコントラストの高い像を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固体撮像デバイスの受光面に反射防止膜が成膜されているから、反射防止膜を介して固体撮像デバイスの受光面を透過する光の透過率が向上する。そのため、固体撮像デバイスの感度が低くても、固体撮像デバイスで鮮明な像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0022】
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、本発明を適用した実施形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図であり、図2は、図1の生体高分子分析チップ1を厚さ方向に切断した切断面IIを矢印方向に見た断面図である。
【0023】
この生体高分子分析チップ1は、透明基板17と、画素としての光電変換素子を透明基板17上に二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイス3と、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜(AR(Anti-Reflection)コート)35と、反射防止膜35の表面上において二次元アレイ状に点在したスポット60,60,…と、を具備する。固体撮像デバイス3の受光面に反射防止膜35を成膜したものが、本発明の撮像装置を適用した実施形態の撮像装置である。
【0024】
〔2〕固体撮像デバイス
図1〜図4を用いて固体撮像デバイス3について詳細に説明する。ここで、図3は、固体撮像デバイス3の画素である光電変換素子の電極構造を示した平面図であり、図4は、図3における固体撮像デバイス3の光電変換素子を厚さ方向に切断した切断面IIを矢印方向に見た断面図である。
この固体撮像デバイス3は透明基板17上に設けられている。透明基板17は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0025】
この固体撮像デバイス3においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が透明基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が保護絶縁膜31によってまとめて被覆されている。
【0026】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極30と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜25に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号に変換するものである。
【0027】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに透明基板17上に形成されている。また、透明基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0028】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0029】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0030】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23側にはキャリアとして正孔が発生し、チャネル保護膜24側には電子が発生する。
【0031】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0032】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0033】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0034】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極30がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極30は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極30が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極30及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0035】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極30及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜31によってまとめて被覆され、保護絶縁膜31は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜31は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0036】
以上のように構成された固体撮像デバイス3は、保護絶縁膜31の表面を受光面としており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0037】
〔3〕反射防止膜
反射防止膜35は、固体撮像デバイス3の受光面(保護絶縁膜31の表面)上に成膜されている。反射防止膜35は、単層構造であっても良いし、複層(多層)構造であっても良い。
【0038】
〔3−1〕反射防止膜単体
反射防止膜35のみが設けられ、励起光フィルタが設けられていない場合、生体高分子分析チップ1の下面側、つまり透明基板17の下方に配置され、後述する蛍光物質63を励起する波長域の光を、ダブルゲートトランジスタ20,20,…間を介してスポット60,60,…に照射する面光源が配置されている。この面光源は、光源自体が平面形状であってもよく、また直線状の光源と平面形状の導光板とのセットであってもよい。
後述する、スポット60を構成する一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションを引き起こしたサンプルDNA62に付着した蛍光物質63が励起光によって発する蛍光64が矢印方向に向かって反射防止膜35の表面に到達するまで伝搬する媒体(例えば空気或いはサンプルDNA62を電気泳動させるための溶液、溶媒)の相の屈折率をnhybとし、保護絶縁膜31の屈折率をnprotとすると、反射防止膜35の無反射条件、つまりθ1=0°としたときに、反射防止膜35の屈折率nARが次式(1)を満たすような反射防止膜35が好ましい。
【数1】
【0039】
また、反射防止膜35の光学膜厚(膜厚×屈折率)は、固体撮像デバイス3で受光する蛍光の強度が最も大きい波長(ピーク波長)の4分の1に等しい方が好ましい。したがって、固体撮像デバイス3で受光する光のピーク波長をλ〔μm〕とした場合、反射防止膜35の膜厚dAR〔μm〕が次式(2)を満たしていることが好ましい。
【数2】
【0040】
例えば、λ=500nm、nhyb=1.0、nprot=1.87のとき、nAR=1.37、dAR=100.5nmとなる。
【0041】
反射防止膜35が式(1)・(2)を満たすように設けられていれば、後述するサンプルDNA62が一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションされたスポット60において、生体高分子分析チップ1の下面に位置する光源の光が入射されることによって標識化された蛍光物質63が発する蛍光64が上から反射防止膜35に入射した場合、反射防止膜35の表面における光学的干渉作用によって反射防止膜35において殆ど反射せず、非常に高い透過率で反射防止膜35及び保護絶縁膜31を透過し、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23に入射する。
【0042】
そして、蛍光64は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r12P、S偏光振幅反射率r12Sは、それぞれ次式(3)、(4)を満たしている。
【数3】
【数4】
【0043】
上記θ1は、屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相に入射されるときの入射角であり、上記θ2は反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射されるときの入射角である。
【0044】
また、反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たしている。
【数5】
【数6】
【0045】
上記θ3は反射防止膜35の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射角θ2で入射したときの屈折角である。
そして、P偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(7)、(8)を満たしている。
【数7】
【数8】
【0046】
図5は比較例として反射防止膜35が設けられていない生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(7)、(8)に基づいて示し、図6は反射防止膜35が設けられている生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示している。なお、nhyb=1.0、nprot=1.87、nAR=1.37として計算している。
【0047】
このように、反射防止膜35がない場合、ハイブリダイゼーションによって放射状に発する蛍光64のうち、相対的に保護絶縁膜31に到達する光強度の強い入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が8%を越えてしまい、当該範囲での透過光量は、総光量の90%程度になってしまうためダブルゲートトランジスタ20の受光感度が低くなってしまうが、反射防止膜35が設けられていると、入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が低く、当該範囲での透過光量は、総光量の100%近くに達するのでダブルゲートトランジスタ20の受光感度を向上することが出来る。
【0048】
なお、反射防止膜35が例えば、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0049】
〔3−2〕反射防止膜及び励起光フィルタ積層構造
図7に示すように、保護絶縁膜31上に形成され、励起光を選択的に遮光するSiO2又はTiO2等の励起光フィルタ36と、励起光フィルタ36上に形成された反射防止膜35との積層構造をλ/4波長板として機能させた場合、生体高分子分析チップ1の上面側、つまりスポット60,60,…の上方に配置され、蛍光物質63を励起する波長域の光を、ダブルゲートトランジスタ20,20,…間を介さずに直接スポット60,60,…に照射する面光源が配置されている。この面光源は、光源自体が平面形状であってもよく、また直線状の光源と平面形状の導光板とのセットであってもよい。
反射防止膜35の上方に位置し、蛍光64が矢印方向に向かって反射防止膜35の表面に到達するまで伝搬する媒体(例えば空気或いはサンプルDNA62を電気泳動させるための溶液、溶媒)の相の屈折率をnhybとし、保護絶縁膜31の屈折率をnprotとすると、反射防止膜35及び励起光フィルタ36での無反射条件、つまり入射角θ1=0°としたときに、励起光フィルタ36の屈折率nFLT及び反射防止膜35の屈折率nARが次式(9)を満たすことが好ましい。
【数9】
【0050】
また、反射防止膜35及び励起光フィルタ36の光学膜厚は、固体撮像デバイス3で受光する蛍光の波長の4分の1に等しい。すなわち、固体撮像デバイス3で受光する光の波長をλ〔μm〕とした場合、励起光フィルタ36の膜厚dFLT〔μm〕が次式(10)を満たし、反射防止膜35の膜厚dAR〔μm〕が次式(11)を満たすことが好ましい。
【数10】
【数11】
【0051】
例えば、λ=500nm、nhyb=1.0、nAR=1.70、nFLT=2.32、nprot=1.87のとき、dFLT=59.27nm、dAR=81.05nmとなる。
【0052】
反射防止膜35及び励起光フィルタ36が式(9)・(10)・(11)を満たすように設けられていれば、光源から蛍光物質63を励起する光がスポット60,60,…に照射されると、後述するサンプルDNA62が一本鎖プローブDNA61とハイブリダイゼーションされたスポット60では、生体高分子分析チップ1の下面に位置する光源の光が入射されることによって標識化された蛍光物質63が発する蛍光64及び光源からの励起光が上から反射防止膜35に入射した場合、反射防止膜35の各界面における光学的干渉作用によって反射防止膜35及び励起光フィルタ36において反射が抑制され、非常に高い透過率で反射防止膜35及び励起光フィルタ36を透過し、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23に入射する。
【0053】
そして、蛍光64は、P偏光成分とS偏光成分に分離できる。屈折率がnARの反射防止膜35の相から伝搬された光が励起光フィルタ36の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(12)、(13)を満たしている。
【数12】
【数13】
【0054】
上記θ2は、屈折率がnhybの相から伝搬された光が反射防止膜35の相に入射されるときの入射角であり、上記θ3は励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射されるときの入射角である。
【0055】
また、励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相との界面で反射するときのP偏光振幅反射率r23P、S偏光振幅反射率r23Sは、それぞれ次式(5)、(6)を満たしている。
【数14】
【数15】
【0056】
上記θ4は励起光フィルタ36の相から伝搬された光が保護絶縁膜31の相に入射角θ3で入射したときの屈折角である。
【0057】
そして、励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面におけるP偏光エネルギー反射率R23P、S偏光エネルギー反射率R23Sは、それぞれ次式(16)、(17)を満たしている。
【数16】
【数17】
【0058】
反射防止膜35の相と励起光フィルタ36との界面、及び励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面を合成した仮想的な境界面におけるp偏光振幅反射率r234P、s偏光振幅反射率r234Sは、次式(18)、(19)を満たしている。
【数18】
【数19】
【0059】
屈折率がnhybの相と反射防止膜35の相との界面、反射防止膜35の相と励起光フィルタ36との界面、及び励起光フィルタ36の相と保護絶縁膜31の相との界面を合成した仮想的な境界面におけるP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSは、それぞれ次式(20)、(21)を満たしている。
【数20】
【数21】
【0060】
ここで、φ3Pは上記仮想的な境界面におけるp偏光位相角、φ3Sは上記仮想的な境界面におけるs偏光位相角であり、次式(22)、(23)を満たしている。
【数22】
【数23】
【0061】
図8は比較例として励起光フィルタ36のみで反射防止膜35が設けられていない生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを式(20)、(21)に基づいて示し、図9は反射防止膜35及び励起光フィルタ36が設けられている生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示している。なお、nhyb=1.0、nAR=1.70、nFLT=2.32、nprot=1.87として計算している。
【0062】
このように、励起光フィルタ36のみの場合、ハイブリダイゼーションによって放射状に発する蛍光64のうち、相対的に保護絶縁膜31に到達する光強度の強い入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が20%を越えてしまい、当該範囲での透過光量は総光量の80%未満になってしまうため、ダブルゲートトランジスタ20の受光感度が低くなってしまうが、反射防止膜35及び励起光フィルタ36が設けられていると、入射角0°〜40°の間の蛍光64の保護絶縁膜31の界面での反射率が低く、当該範囲での透過光量は、総光量の100%近くに達するのでダブルゲートトランジスタ20の受光感度を向上することが出来る。
このとき、光源からの励起光は、反射防止膜35を透過することになるが励起光フィルタ36に吸収されてしまうので、ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23にはほとんど到達しない。このため、ダブルゲートトランジスタ20でのS/N比(蛍光64の受光量/励起光の受光量)を高くすることが可能となる。
【0063】
なお、反射防止膜35が励起光フィルタ36同様に、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0064】
また、図10に示すように、反射防止膜35及び励起光フィルタ36が交互に繰り返すよう積層した多層膜であっても良い。この場合でも、反射防止膜35が励起光フィルタ36と同様に、励起光として特に紫外線を遮蔽する性質を有するものであっても良い。
【0065】
〔4〕スポット
次に、スポット60について説明する。図1、図2、図4に示すように、複数種のスポット60,60,…が互いに離間して、マトリクス状となって反射防止膜35の表面上に配列されている。1つのスポット60は一本鎖プローブDNA61が多数集まった群集であり、1つのスポット60に含まれる多数の一本鎖プローブDNA61は同じ塩基配列(ヌクレオチド配列)を有する。また、スポット60ごとに一本鎖プローブDNA61の塩基配列が異なる配列となっている。一本鎖プローブDNA61としては、検体において既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。
【0066】
1つのスポット60につき1つのダブルゲートトランジスタ20が重なるように、スポット60,60,…が配列されている。なお、1つのスポット60につき隣り合う幾つかのダブルゲートトランジスタ20,20,…が重なっても良いが、この場合には何れのスポット60でも重なったダブルゲートトランジスタ20の数が同じである。
【0067】
〔5〕DNA分析方法及び分析支援装置
次に、生体高分子分析チップ1を用いたDNA分析方法について説明する。
【0068】
生体高分子分析チップ1を分析支援装置にセッティングして生体高分子分析チップ1を用いるので、まず分析支援装置について図11、図12を用いて説明する。図11は、分析支援装置70の回路構成を示したブロック図であり、図12は、分析支援装置70に生体高分子分析チップ1をセッティングした場合の側面図である。図12において、生体高分子分析チップ1は破断して示されている。
【0069】
分析支援装置70は、生体高分子分析チップ1がセッティングされる分析台71と、この分析台71に対して着脱できる生体高分子分析チップ1と、固体撮像デバイス3の受光面の上から受光面に向けて励起光を照射する励起光照射装置72と、固体撮像デバイス3を駆動するトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76と、励起光照射装置72、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御するコントローラ73と、コントローラ73から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置77と、を備える。
【0070】
生体高分子分析チップ1が分析台71にセッティングされた場合には、固体撮像デバイス3のトップゲートライン44,44,…がトップゲートドライバ74の端子にそれぞれ接続されるようになっている。同様に、固体撮像デバイス3のボトムゲートライン41,41,…がボトムゲートドライバ75の端子にそれぞれ接続されるようになっており、固体撮像デバイス3のドレインライン43,43,…がドレインドライバ76の端子にそれぞれ接続されるようになっている。また、生体高分子分析チップ1が分析台71にセッティングされた場合、固体撮像デバイス3のソースライン42,42,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン42,42,…が接地されるようになっている。
【0071】
励起光照射装置72は分析台71に対向しており、分析台71に生体高分子分析チップ1が搭載された場合に、励起光照射装置72から面状に出射した励起光が生体高分子分析チップ1に照射されるようになっている。励起光照射装置72が照射する励起光は紫外線波長域の光である。なお、励起光照射装置72は、出射する励起光の波長域を可変可能に設けられていても良い。
【0072】
出力装置77はプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
【0073】
トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス3を駆動するものである。トップゲートドライバ74は、シフトレジスタである。つまり、図13に示すように、トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時にローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。
【0074】
ボトムゲートドライバ75は、シフトレジスタである。つまり、図13に示すように、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。
【0075】
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後にキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0076】
図13に示すように、ドレインドライバ76は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+10〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ76は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧を増幅してコントローラ73に出力するようになっている。
【0077】
コントローラ73は励起光照射装置72を点灯させる機能を有する。また、コントローラ73は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に固体撮像デバイス3の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コントローラ73はドレインドライバ76から入力した電気信号をA/D変換することで、固体撮像デバイス3の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。また、コントローラ73は入力した二次元の画像データ画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。
【0078】
生体高分子分析チップ1及び分析支援装置70の動作並びにDNAの分析方法(同定方法)について説明する。
まず、作業者が検体からcDNAを採取して、場合によってPCR増幅を行い、得られたDNAに蛍光物質63を結合させ、DNAを蛍光物質63で標識する。蛍光物質63は、分析支援装置の励起光照射装置から出射される励起光で励起されるものであってその励起光によって蛍光(但し、反射防止膜35によって反射が防止される波長の光)を発するものを選択するが、蛍光物質63としては、例えばCyDyeのCy2(アマシャム社製)がある。得られたDNAは、溶液中に含まれている。以下では、このDNAをサンプルDNA62という。
【0079】
次いで、作業者が、サンプルDNA62を含有した溶液を固体撮像デバイス3の受光面に塗布する。ここで、固体撮像デバイス3の受光面にサンプルDNA62を分布させるために、サンプルDNA62を電気泳動させても良い。なお、サンプルDNA62を含有した溶液をスポット60,60,…に順次又は同時に滴下しても良い。このとき、サンプルDNAが一本鎖となるようにサンプルDNAを含有した溶液は加熱されている。
【0080】
その後、プローブDNA61とサンプルDNA62とがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ1を所定の温度に冷却する。これにより、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA62と相補的なプローブDNA61があれば、これとハイブリダイズする。一方、スポット60,60,…のなかにサンプルDNA62と相補的なものがなければ、サンプルDNA62はどのスポット60,60,…にも結合しない。
【0081】
その後、固体撮像デバイス3の受光面に塗布したサンプルDNA62のうちハイブリダイゼーションしなかったものは洗い流す。
【0082】
次いで、作業者が固体撮像デバイス3を分析台71にセッティングし、励起光照射装置72を固体撮像デバイス3の受光面に対向させ、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をコントローラ73に接続する。
【0083】
その後、コントローラ73を起動すると、コントローラ73が励起光照射装置72を制御して励起光照射装置72を点灯させると、励起光照射装置72から固体撮像デバイス3の受光面に向けて励起光が出射する。
【0084】
サンプルDNA62が標識されているので、スポット60,60,…のうちサンプルDNA62とハイブリダイゼーションしたスポット60からは蛍光(主に可視光波長域)が発し、サンプルDNA62と結合しなかったスポット60からは蛍光が発しない。そのため、サンプルDNA62と結合したスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には高強度の蛍光が入射し、サンプルDNA62と結合していないスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20には殆ど蛍光が入射しない。固体撮像デバイス3の受光面にスポット60,60,…が固定されているため、サンプルDNA62と結合したスポット60から発した蛍光はあまり減衰せずに、そのスポット60に対応したダブルゲートトランジスタ20に入射して電子−正孔対を発生させる。従って、ダブルゲートトランジスタ20,20,…の感度が低くても、十分に強度を検知することができる。
【0085】
その後、励起光照射装置72が点灯した状態で、コントローラ73がトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76を制御することにより、固体撮像デバイス3に撮像動作を行わせる。これにより、固体撮像デバイス3がダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれで光強度又は光量を検知し、受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する。コントローラ73は、固体撮像デバイス3で取得された画像データを入力し、その画像を出力装置77に出力する。そして、コントローラの処理が終了する。
【0086】
作業者は、出力装置77により出力された画像データからハイブリダイゼーションの有無を確認し、ハイブリダイゼーションが起きていればプローブDNA61の塩基配列からサンプルDNAの塩基配列を特定する。即ち、サンプルDNAの塩基配列は、画像の中でハイブリダイゼーションによって蛍光を発した画素に重なったスポット60と相補的な配列であるので、出力された画像データ中のどの部分が蛍光を発したかによって検体中で発現している遺伝子を特定することができる。
【0087】
ここで、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76による固体撮像デバイス3の動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から最終行目のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ76が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0088】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。図10に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極30の電圧により反発して吐出される。
【0089】
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了する。i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0090】
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極30に印加されている電位が−20〔V〕であり、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、たとえ半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔の電荷だけではゲート−ソース間電位が低いので半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0091】
次に、ドレインドライバ76がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0092】
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極30の負電界を緩和するように働くため、ボトムゲート電極21の正電界により半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0093】
ここで、キャリア蓄積期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の変化傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧を検出してA/D変換する。これにより、光の強度に換算される。なお、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ76を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。また、図10では、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスが立ち下がってからであるが、これに限らず、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、トップゲートドライバ74のi行目のリセットパルスの立ち下がり直後からボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がりまでの間であってもよい。ただし、(i+1)行目のダブルゲートトランジスタ20のためにドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスの出力は、ボトムゲートドライバ75のi行目のリードパルスの立ち下がり以降になるように設定されている。
【0094】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、生体高分子分析チップ1上の光の強度分布が画像として取得される。そして、光強度分布を表した画像は、コントローラに入力される。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、固体撮像デバイス3の受光面上に成膜された反射防止膜35上にスポット60,60,…が点在しているから、走査を行わずとも固体撮像デバイス3で撮像を行うだけで二次元の画像が得られる。更に、分析支援装置70にレンズを設けなくとも、固体撮像デバイス3で鮮明な像を得ることができるので、分析支援装置70の小型化を図ることができる。更に、スポット60から発した光が殆ど減衰せずに固体撮像デバイス3の受光面に入射するので、固体撮像デバイス3の感度が高くなくても済む。
【0096】
また、固体撮像デバイス3の受光面に反射防止膜35が成膜され、その反射防止膜35は界面における干渉作用によって反射を防止するものであるから、反射防止膜35における蛍光の透過率が非常に向上する。そのため、固体撮像デバイス3の蛍光感度が低くても、固体撮像デバイス3で鮮明な像を得ることができる。つまり、サンプルDNA62に結合したプローブDNA61があるスポット60からダブルゲートトランジスタ20に入射する蛍光量が増え、サンプルDNA62に結合したスポット60での受光量と、結合していないスポット60での受光量の差が大きくなるので、固体撮像デバイス3でコントラスト比の高い像を得ることができる。
【0097】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。以下、生体高分子分析チップ1の変形例について説明する。
【0098】
〔変形例1〕
上記実施形態では励起光照射装置72が分析台71の上に設置され、反射防止膜35の上方から反射防止膜35に向けて励起光を照射するようになっている。それに対して、図14に示すように、励起光照射装置72を分析台71に設置しても良い。この場合、固体撮像デバイス3の裏面を励起光照射装置72の向けて生体高分子分析チップ1をセッティングし、励起光照射装置72によって励起光が固体撮像デバイス3の下から固体撮像デバイス3の裏面向けて照射される。固体撮像デバイス3はボトムゲート電極21、ボトムゲートライン41、ソース電極27、ソースライン42、ドレイン電極28、ドレインライン43の部分を除いて光透過性であるから、励起光がダブルゲートトランジスタ20,20,…の間において固体撮像デバイス3の受光面から上へ出射する。また、この場合、励起光フィルタ36を設けず且つ反射防止膜35が励起光遮蔽性を有さないようにする。
【0099】
〔変形例2〕
上記実施形態では、光電変換素子としてダブルゲートトランジスタ20,20,…を画素として用いた固体撮像デバイス3を用いているが、別の種類の光電変換素子を画素として用いた固体撮像デバイスを生体高分子分析チップに用いても良い。例えば、フォトダイオードを画素として用いたCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等といった固体撮像デバイスを用いても良い。CCDイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲には、フォトダイオードで光電変換された電気信号を転送するための垂直CCD、水平CCDが形成されている。CMOSイメージセンサにおいては、フォトダイオードが基板上にマトリクス状となって配列されており、それぞれのフォトダイオードの周囲にはフォトダイオードで光電変換された電気信号を増幅するためのCMOS回路が設けられている。CCDイメージセンサであっても、CMOSイメージセンサであっても、その受光面に反射防止膜35と同様の反射防止膜を成膜し、その反射防止膜上に複数種のスポットを点着させる。
【0100】
〔変形例3〕
上記実施形態では、スポット60が既知の塩基配列の一本鎖DNAからなるものであるが、その他の既知の生体高分子、例えば、既知のアミノ酸配列のペプチドやタンパク質、既知の細胞等からなるものを用いてもよい。
【0101】
〔変形例4〕
上記実施形態では、励起光照射装置72から発する励起光を紫外線とし、励起光によってサンプルDNA62から発する蛍光を可視光としたが、このような光の波長域に限定されない。但し、励起光照射装置72から発する励起光がサンプルDNA62に結合させた標識物質を励起させる波長域の光であること、励起光によって標識物質から発した光の波長域が励起光の波長域と異なることが必要である。また、固体撮像デバイス3が標識物質から発した光に対して感度を示すことが必要であり、反射防止膜35はその光の反射を防止するような光学膜厚に設計されている必要がある。
また、上記実施形態では、蛍光物質63から発する蛍光強度を計測したが、蛍光物質の代わりに化学発光物質を標識物質として用い、発光強度を計測してもよい。この場合には、励起光照射装置が不要となる。ただし、固体撮像デバイス3が化学発光物質から発した光に対して感度を示すことが必要である。
【0102】
〔変形例5〕
また、上記実施形態では、コントローラ73が固体撮像デバイス3から入力した画像データに従った画像を出力装置77に出力し、作業者が出力された画像データからサンプルDNA62の配列を特定したが、コントローラ73がサンプルDNA62の配列を特定しても良い。すなわち、コントローラが、特徴抽出処理によって画像データ中のどの部分の蛍光強度が高いかを特定し、蛍光強度が高い部分に対応するスポット60を特定し、その特定したスポット60に相補的な塩基配列を出力装置から出力する。
【0103】
〔変形例6〕
また上記実施形態では、生体高分子分析チップとして用いたが、受光面に指を接触させて、指の指紋に沿った凹凸により変位する光の出射量を検知する指紋センサとして用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態における生体高分子分析チップ1の概略平面図である。
【図2】図1の切断面IIに沿った断面図である。
【図3】固体撮像デバイス3の1つの画素の平面図である。
【図4】図3の切断面IVに沿った断面図である。
【図5】比較例での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図6】本発明での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図7】固体撮像デバイス3の表層の断面図である。
【図8】比較例での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図9】本発明での生体高分子分析チップ1でのP偏光エネルギー反射率RP、S偏光エネルギー反射率RSを示したグラフである。
【図10】他の固体撮像デバイス3の表層の断面図である。
【図11】分析支援装置70の回路構成を示したブロック図である。
【図12】分析支援装置70の概略側面図である。
【図13】ドライバによって固体撮像デバイス3に出力される電気信号のレベルの推移を示したタイミングチャートである。
【図14】別例の分析支援装置70Aの概略側面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 … 生体高分子分析チップ
3 … 固体撮像デバイス
35 … 反射防止膜
60 … スポット
61 … 一本鎖プローブDNA(生体高分子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像デバイスと、
前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記固体撮像デバイスが、二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子と、これら光電変換素子を被覆した透明な保護膜と、を有するとともに前記保護膜の表面を受光面としたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイス上に、所定の波長域の光を吸収するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
を備えることを特徴とする生体高分子分析チップ。
【請求項5】
前記生体高分子の特性に応じて結合された生体高分子に付着される蛍光標識を励起する励起光を遮光する励起光フィルタが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の生体高分子分析チップ。
【請求項6】
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
前記スポットに対して励起光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする分析支援装置。
【請求項1】
固体撮像デバイスと、
前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記固体撮像デバイスが、二次元アレイ状に配列された複数の光電変換素子と、これら光電変換素子を被覆した透明な保護膜と、を有するとともに前記保護膜の表面を受光面としたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記固体撮像デバイス上に、所定の波長域の光を吸収するフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
を備えることを特徴とする生体高分子分析チップ。
【請求項5】
前記生体高分子の特性に応じて結合された生体高分子に付着される蛍光標識を励起する励起光を遮光する励起光フィルタが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の生体高分子分析チップ。
【請求項6】
固体撮像デバイスと、前記固体撮像デバイスの受光面に成膜され、光の反射を防止する反射防止膜と、を有する撮像装置と、
生体高分子が前記反射防止膜上に点在した複数種のスポットと、
前記スポットに対して励起光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする分析支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−30162(P2006−30162A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37957(P2005−37957)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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