説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】水中撮影での映像再生時に正確かつ迅速に適切なホワイトバランス補正がなされた映像表示を行うこと。
【解決手段】撮像装置は、水中撮影モードを設定するモード選択部401と、ホワイトバランス補正が施された映像を再生する再生画信号処理部314と、表示パネル309を備える。表示画信号処理部308は、水中撮影モードの場合、再生映像に係る色温度情報および撮像素子305による映像信号に係る色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行うことにより、再生映像の赤色成分を低減させた映像を表示パネル309に表示させる。映像再生の際、表示パネル309の環境光の色味に関して、カメラ映像に係る補正値を用いて表示映像のホワイトバランス状態が適正化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中撮影で表示手段に表示させる映像のホワイトバランス補正に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラには被写体像のモニタ用として液晶パネル等の表示部が設けられている。この種のデジタルカメラやビデオカメラは、防水用の専用ハウジング内に本体を装着することで水中撮影が可能である。
ところで、表示部が設けられた撮像装置を用いた水中撮影の場合、水深が深くなるにつれて赤色成分が減衰してしまうため、撮影した被写体像が青味掛かってしまうことが知られている。そのため、撮影時の正しい白になるようにホワイトバランス補正を行った映像を表示部で見る場合、周囲の環境光が青味掛かっており、人間の脳が周囲の青い環境光に順応しているため表示部の映像は赤味を帯びて見えてしまう。つまり、撮像装置では表示映像のホワイトバランス補正が、予め設定された補正値によって行われており、これは撮影時のカメラ画に対するホワイトバランス補正や周囲の環境光とは無関係である。人間の視覚は撮影環境に順応するので、ホワイトバランス補正がなされたカメラ画をそのまま表示パネルに表示するとユーザが違和感を抱くおそれがある。つまり、水中撮影ではホワイトバランス補正により赤色成分を加えて本来の色味になるように補正された信号が記録されるため、これを再生して表示パネルで表示するとユーザの目には映像が赤味を帯びて見える。そのため、ユーザは赤味掛かった映像が記録されてしまっていると錯覚してしまうおそれが生じる。
これを回避するため、デジタルカメラやビデオカメラで水中撮影を行う場合、表示部にカラーチャートを表示し、最も白色に見えるものをユーザに指定させ、指定された色に基づいて表示映像のホワイトバランスを調整する装置が提案されている(特許文献1参照)。また、撮影時の照明環境によって生じるカメラ画のホワイトバランスと表示画のホワイトバランスの差を軽減し、使用者が撮影している映像のホワイトバランス状態を正確に把握することのできる撮像装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−197478号公報
【特許文献2】特開2008−211333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、水中撮影にてユーザが表示画面上で、適切なホワイトバランス補正がなされた映像を確認できないか、または処理時間がかかるという問題がある。前記特許文献1に開示された技術では、表示映像のホワイトバランス調整にて予め設定されたカラーチャートをユーザに提示して選択してもらう必要があるため、正しい調整状態が得られるまでに要する時間がかかっていた。
そこで本発明は、水中撮影での映像再生時に正確かつ迅速に適切なホワイトバランス補正がなされた映像表示を行える撮像装置およびその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る装置は、撮像手段による映像信号を処理して画像を表示する撮像装置であって、水中撮影モードを設定するモード選択手段と、ホワイトバランス補正が施された映像を再生する再生画信号処理手段と、前記再生画信号処理手段からの映像信号に従って再生映像を表示する表示手段と、前記モード選択手段により設定されたモードが前記水中撮影モードである場合、前記再生映像に係る色温度情報および前記撮像手段による映像信号に係る色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行って再生映像に係る色信号の補正量を変化させることにより、再生映像の赤色成分を低減させた映像を前記表示手段に表示させる表示画信号処理手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水中撮影での映像再生時に正確かつ迅速に適切なホワイトバランス補正がなされた映像表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図2および3とともに本発明の第1実施形態を説明するために、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】ホワイトバランス制御における青色および赤色のゲイン制御量を例示するグラフである。
【図3】ホワイトバランス補正処理例を示すフローチャートである。
【図4】図5および6とともに本発明の第2実施形態を説明するために、撮像装置の外観例を示す斜視図である。
【図5】撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】ホワイトバランス補正処理例を示すフローチャートである。
【図7】図8とともに本発明の第3実施形態を説明するために、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】撮像装置の動作手順を例示するフローチャートである。
【図9】第3実施形態の変形例に係る撮像装置の動作手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態では水中撮影が可能なビデオカメラを説明するが、映像信号の記録再生が可能であればデジタルスチルカメラ等の各種撮像装置に適用できる。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るビデオカメラの構成例を示すブロック図である。
撮像光学系はレンズ301(フォーカスレンズ、手振れ補正レンズ等を含む)、絞り302、撮像素子305を備える。レンズ301の後方には絞り302が配置されており、これらを介した光は、撮像素子305の結像面上に被写体像として結像される。撮像素子305に使用するイメージセンサは被写体像を光信号から映像信号に変換する。撮像素子305により得た映像信号は、カメラ画信号処理部312に送られて所定の処理を施されて、外部表示装置316に出力されるか、または、内蔵メモリ315若しくはメモリカード318に記録される。なお、使用する記録媒体の種類についてはその如何を問わない。
システム制御部311は、撮像制御部306を介して撮像素子305の蓄積および読み出し等を制御する。またシステム制御部311は、レンズ制御部303を介してレンズ301のフォーカス制御やズーム制御等を行う。この他、システム制御部311は、撮像素子305から得た画像データより求められる被写体の輝度情報を用いて、絞り制御部304を介して絞り302を制御するとともにシャッタースピードを制御することで露出制御を行う。
【0010】
モード選択部401は、ユーザが水中撮影モードや再生モードを選択する際に使用する。選択されたモードに合わせてホワイトバランス(以下、WBとも記す)が設定される。設定されたWBモードの情報はシステム制御部311に送られる。システム制御部311は、カメラ画信号処理部312を通じて撮影のためにWB制御を行い、映像のWB状態が適正になるように処理する。WB制御のひとつとして映像表示画面を分割する方法では、分割された領域ごとに色を検出してWBの適正値を割り出し、平均値を基準に画面全体のWB補正値が適正値となるように処理される。映像画面の分割として9分割や6分割でWB検出がなされるが、これ以外の画面分割数でも構わない。
システム制御部311は、カメラ画信号処理部312において、カメラ映像の色座標変換により周囲の色温度情報を得て表示画信号処理部308に送る。映像再生時には、内蔵メモリ315またはメモリカード318に記録されている画像データが再生画信号処理部314に送られ、再生映像の色座標変換による色温度情報が表示画信号処理部308に送られる。表示画信号処理部308は、カメラ映像の色座標変換による周囲の色温度情報と、再生映像の色座標変換による色温度情報に従ってWB補正を行う。これにより、撮像装置の表示パネル309のWB状態が適正になる。なお、表示パネル309には、例えば液晶パネル(LCD)が使用されるが、これに限らず各種の表示デバイスの使用が可能である。
【0011】
図2は、本実施形態のWB制御における、R(赤)およびB(青)のゲイン制御量を例示するグラフである。横軸はRゲイン量を表し、縦軸はBゲイン量を表す。
本実施形態のWB補正は、R,G(緑),Bの3原色信号うち、Gを固定してRとBのゲインの補正量を変化させることにより行われる。図2において、実線部201で示すグラフ曲線は、黒体放射に沿った、水中再生モード時にWB補正をしていない場合におけるWB補正量の可変範囲を示している。点203は実線部201で示すグラフ曲線上に位置する制御点を例示する。水中では、水深が深くなるにつれて赤色成分が減衰してしまうため、実線部201のグラフ線に従ったWB補正量では、例えば、色温度が3000K(ケルビン)になり、Bのゲイン量が高くRのゲイン量が低くなると、映像が青味掛かってしまう。そこで、水中撮影モードでは、水深が深くなるにつれて点線202のグラフ線に沿ってWB補正が行われる。点204は点線202で示すグラフ線上に位置する制御点を例示し、例えば水深5mの場合に相当する。水中撮影モードでのWB補正により、色温度が10000Kになり、Bのゲイン量を小さくしてRのゲイン量を大きくするWB補正が行われる。点204でのWB補正に対して、表示パネル309の画面上ではRゲイン量が高くなるため、ユーザの目には映像が赤味掛かって見えてしまう。実線で示す矢印300は、点204でのWB情報から、表示パネル309のWB補正を逆方向に制御する際の向きを表している。表示パネル309のWB補正では黒体放射に沿う曲線に対してずれた位置に補正することで、周囲環境(水中)に順応しているユーザの目で見たときに、表示映像のWB状態が適正となる。なお、表示パネル309のWB補正については、使用するデバイスの特性(例えば、液晶パネル、バックライト等の分光特性)によって異なる場合があり、よって矢印300は例示である。
【0012】
図3は、本実施形態におけるWB補正処理の流れを例示したフローチャートである。
撮像装置に電源が投入されると、モード選択部401からの信号を受けてシステム制御部311は、現在の設定モードが水中撮影モードであるか否かを判定する(S10)。現在の設定モードが水中撮影モードの場合、S11に進み、水中撮影モードでない場合、処理を終了する。
システム制御部311は、現在の設定モードが再生モードであるか否かを判定する(S11)。現在の設定モードが再生モードでない場合、S16に処理を進める。また現在の設定モードが再生モードの場合、表示パネル309がオン状態であるか否かの判定処理(S12)に進む。表示パネル309がオン状態であって点灯中であれば、再生映像の色座標変換で色温度情報が取得される(S13)。そして、周囲環境(水中)に順応しているユーザの眼で見たときに、表示映像のWBが適正となるように、カメラ画信号処理部312において処理された、カメラ映像の色座標変換により周囲の色温度情報が取得される(S14)。表示画信号処理部308は、S15で取得した色温度情報およびS15で取得した色温度情報に基づき、図2で説明したように表示パネル309のWB補正を行う(S15)。表示パネル309のWB補正は、視覚の色順応効果によって打ち消されるため、ユーザは適正なWB状態で再生映像を見ることができる。そしてS16に処理を進める。
前記S12で表示パネル309がオフ状態であって消灯中の場合、表示パネル309のWB補正処理は行わず、S16に進む。再生が終了したか否かが判定され、再生が終了しない間、S10に戻って処理を繰り返す。また、再生終了の場合、前記した一連の処理が終了する。
第1実施形態によれば、水中撮影モードで撮影内容を確認するために映像再生を行う際に、カメラ画信号処理部312でのホワイトバランス補正値を用いて表示パネル309のWB補正が行われる。これにより、赤色成分が低減された再生映像を表示パネル309にて正確かつ迅速に表示させることができる。
【0013】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。以下では、第1実施形態との相違点を主として説明し、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることにより、それらの説明を省略する。このような省略の仕方は後述する他の実施形態でも同様とする。
図4は、第2実施形態に係る撮像装置の外観例を示す斜視図である。以下では、被写体側を装置の前方および正面側として説明する。
撮像装置の本体320内には、内蔵メモリやメモリカード等の記録媒体が収容され、動画及び静止画像のデータを記録再生可能な構成となっている。
本体320の前面部にはレンズ部321が設けられており、上部には撮影時の音声を記録するためにマイクロホン322が付設されている。本体320の側面部には、再生映像を表示するための表示パネル309が開閉可能に支持されており、本体320の後面部にはビューファインダ310が設けられている。第1切替え検出部501は、表示パネル309の開閉状態を検出するスイッチを有する。表示パネル309が本体320に収まっている場合、表示パネル309は消灯し、ビューファインダ310内の光源が点灯するので、ユーザはビューファインダ310を覗きながら再生表示を確認できる。また、ユーザがビューファインダ310を引き出したことを検出するスイッチが設けられている場合には、その引き出しが検出されると、表示パネル309が点灯し、ビューファインダ310も点灯する。これにより、ユーザはどちらでも再生表示を確認できる。第2切替え検出部502は、表示パネル309の表示面が本体320の側面側とは異なる方向を向いた反転状態であることを検出する。当該反転状態が検出された場合、表示パネル309およびビューファインダ310は共に点灯するので、ユーザはどちらでも再生表示を確認できる。
【0014】
モード選択部401は本体320の側面に設けた回転式スイッチを有する。ユーザはモード選択部401の操作により、再生モードを設定する「再生」位置と、水中撮影モードを設定する「水中」位置等を選択できる。操作スイッチ部327は、ユーザが本体320の操作に使用するための各種のキー、例えばメニュー操作や再生操作等のためのキーを備える。その下方に位置するスピーカ329は、映像信号の再生時に音声を出力する。バッテリ330は本体320の背面から着脱可能に設けられており、撮像装置内の各部に電源を供給する。
【0015】
図5は、第2実施形態に係るビデオカメラの構成例を示すブロック図である。なお、以下では図1に示す構成との相違点を説明する。
システム制御部311は、レンズ制御部303を通じてレンズ301を駆動するか、或いは、カメラ画信号処理部312を制御することで、ユーザによる撮影時の手振れを補正する。第1切替え検出部501と第2切替え検出部502の各検出信号はシステム制御部311に送られる。表示パネル309が点灯状態の場合、カメラ画信号処理部312によりカメラ映像から得られる周囲の色温度情報と、再生画信号処理部314による再生映像の色温度情報に基づいてWB補正が行われる。また、ビューファインダ310の光源が点灯状態の場合、ビューファインダ310に表示する映像のWB補正は予め決められた設定情報を用いて行われる。表示画信号処理部408は再生画信号処理部314からの再生信号を処理してビューファインダ310に出力し、画像表示を行う。
【0016】
図6は、第2実施形態におけるビューファインダ310のWB制御を説明するフローチャートである。
撮像装置に電源が投入されると、モード選択部401からに信号によりシステム制御部311は、現在の設定モードが水中撮影モードであるか否かを判定する(S20)。現在のモードが水中撮影モードの場合、S21に進み、水中撮影モードでない場合には処理を終了する。
【0017】
次に、現在の設定モードが再生モードであるか否かが判定され(S21)、現在の設定モードが再生モードでない場合、S24の処理に進む。また。現在の設定モードが再生モードである場合、S22に進む。S22にてシステム制御部311は、第1切替え検出部501および第2切替え検出部502からの信号を受けて、ビューファインダ310の状態がオン状態、つまり、光源が点灯中であるか否かを判定する。ビューファインダ310が点灯状態の場合、S23の処理に進み、ビューファインダ310がオフ状態であって消灯中である場合、S24に進む。
表示画信号処理部408は予め決められた色温度設定に従ってWB補正を行う(S23)。このとき、表示パネル309が点灯状態であれば、図3に説明したフローチャートに従って処理が実行される。
【0018】
以上の処理が行われた後、再生が終了したか否かについて判定され(S24)、再生終了の場合、前記した一連の処理が終了する。また、再生を継続する場合には、S20に戻って前記の処理が繰り返し実行され、電源が切断されると本処理が終了する。
第2実施形態によれば、ビューファインダ310への切替えが検出された場合、表示画信号処理部408によって、ビューファインダ310の表示映像に対して予め決められた色温度情報を用いてWB補正が行われる。よって、ユーザは適正なWB状態で撮影映像を確認することができる。
【0019】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
システム制御部311を構成する不図示のCPU(中央演算処理装置)は、制御プログラムを解釈して実行することで各部を制御する。また、システム制御部311はレンズ制御部303を介してレンズ301を駆動するか、或いは後述のカメラ画信号処理部312を制御することで、ユーザの撮影時の手振れ補正の制御を行う。モード選択部401はユーザが撮影モードや後述のWBモードを設定する際に使用する。
【0020】
撮像素子305により得られた映像信号は、カメラ画信号処理部312および後述の表示映像信号切替え部115に送られる。カメラ画信号処理部312は、WB処理部109、色補正処理部110、ガンマ処理部111、輪郭強調処理部112を備える。WB処理部109は、ユーザによって設定されたWBモードの情報に従って、撮影のためのWB制御を行い、映像のWB状態が適正になるように処理を行う。ガンマ処理部111は、画面中の明暗のレベルに応じて入出力特性を変化させる。そして輪郭強調処理部112は、映像信号の高周波成分を抽出してゲインアップ後に元の映像に加えることで輪郭を強調させる。また、色補正処理部110は、色再現性の改善および色収差の補正を行う。カメラ画信号処理部312で所定の処理を施された映像信号は、記録信号処理部114に送られて圧縮伸長処理を施される。圧縮伸長処理方式には、例えばモーションJPEGのように、各コマを独立して圧縮符号化する動画符号化方式がある。あるいはMPEGのように、コマによって独立して圧縮符号化し、また前後のコマの差分をとって圧縮符号化したり、複数のコマから予測して圧縮符号化する動画符号化方式でも構わない。なお、JPEGは“Joint Photographic Experts Group”の略号であり、MPEGは“Moving Picture Experts Group”の略号である。
【0021】
記録信号処理部114の出力は表示映像信号切替え部115に送られるか、または記録媒体118に記録される。静止画像データや動画像データ等を格納する記録媒体118は、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、あるいは半導体メモリ等で構成され、ランダムアクセス可能な種々の媒体を使用できる。
表示映像信号切替え部115は、表示画信号処理部308へ送る表示映像信号として、WB処理部109でWB処理が施される前の信号(映像信号経路B参照)、またはWB処理部109でWB処理が施された後の信号(映像信号経路A参照)を切替える。ここで選択された表示映像信号は、表示画信号処理部308にて所定の処理を施された後、表示パネル309に出力される。図4は、本実施形態に係る撮像装置の外観例を示す斜視図である。以下では、本実施形態に関連する構成要素だけを説明する。
【0022】
電子式ビューファインダ310は、ユーザが覗き込むことにより撮影時に被写体の捕捉や確認に使用する。動画用トリガースイッチ206はプッシュボタンであり、ユーザが動画撮影開始及び終了を装置に指示するために操作する。モード選択部401はモードダイヤルを備えており、ユーザは、再生モードやカメラモード、水中撮影モード等の設定位置と、OFF位置を選択できる。操作スイッチ部208は表示パネル309の近辺に設けられている。これは、ユーザが本体320を操作するために、WBモードの設定入力を行うキーや撮影シーンモード(人物、花火、水中等)の選択をするためのキー、その他のメニュー操作や再生操作等を行うキーから構成される。
表示パネル309は、本体320の側面部から開いた状態で使用され、更に水平方向にも回転可能である。
【0023】
次に、表示パネル309へ送る表示映像信号について、図7の映像信号経路AおよびBの切替え制御を説明する。
図8は表示映像信号の切替え手順を例示するフローチャートである。なお、以下の処理はシステム制御部311の指示に従って実行される。
撮像装置に電源が投入されると、システム制御部311は、現在の設定モードがカメラ(撮影)モードであるか、または再生モードであるかを判定する(S301)。カメラモードの場合、S302に進み、再生モードの場合にはS304に進む。
カメラモードの場合、設定されたモードが水中撮影モードであるか否かが判定される(S302)。水中撮影では、撮影映像の赤色成分が減衰してしまうため、カメラ画では予め赤色を強くするようにWB補正が行われる。そのため、LCD等の表示パネル309へ表示される映像は、ユーザの視覚の順応効果によって赤味を帯びた映像になってしまう。そこで、設定モードが水中撮影モードの場合、S303に処理を進める。表示映像信号切替え部115は、表示パネル309へ送る表示映像信号を、WB処理部109にてWB処理を施す前の映像信号(図7の映像信号経路B参照)に切替える。一方、設定モードが水中撮影モードでない場合には、S304に処理を進める。表示映像信号切替え部115は、表示パネル309へ送る表示映像信号として、WB処理部109にてWB処理を施した後の映像信号(図7の映像信号経路A参照)へ切替える。
【0024】
S303、S304での処理後、S305に進み、システム制御部311は撮影の継続について判定する。継続時にはS301に戻り、電源が切断されて制御が終了するまで前記の処理を繰り返す。撮影終了時には前記した一連の処理が終了する。
第3実施形態によれば、水中撮影モード時に表示パネル309へ送る表示映像信号は、WB処理が施される前の映像信号に切替えられるので、水中環境下で撮像した画像信号に係るWB処理で赤色成分を増強した映像は表示パネル309に表示されない。このため、水中環境下に順応した人間の視覚でも、表示パネル309には適正なWB状態での映像表示が行われる。つまり、水中環境下で生じるカメラ画(撮影画像)と表示パネル画(表示画像)の間のWBの差を軽減できる。そして、ユーザは撮影画像のWB状態を正確に把握できる。
尚、第3実施形態にて、ユーザがビューファインダ310を覗き込む場合には周囲の照明環境の影響を受けない。このため、ビューファインダ310へ送る表示映像信号については、WB処理部109でWB処理を施した後の映像信号を使用する映像信号経路A(図7参照)のままでよい。
【0025】
(変形例)
次に、本発明の第3実施形態の変形例を説明する。
図7に示すモード選択部401では、以下に示すWBモードの選択が可能である。
・オートホワイトバランスモード(AWB)
被写体の画像データまたは色温度センサの情報を元に自動補正を行って適正なWB状態を得るモードである。
・ホワイトバランスセットモード(WBセット)
予め、撮影環境下で基準となる白い被写体を撮影しながらユーザが操作することで、基準の白が適正な白となるようにWBを補正するモードである。
・ホワイトバランスプリセットモード(WBプリセット)
プリセット屋内、プリセット屋外等のように、予め想定される複数の環境下にて、適正なWBを得るための補正値を用意しておき、ユーザが補正値を選択するモードである。
モード選択部401に含まれる、WBモードの選択部をユーザが操作して設定したWBモードの指示信号はシステム制御部311に出力される。
【0026】
図9は、表示パネル309へ送る表示映像信号の切替え手順を例示するフローチャートである。なお、S501の処理は図8のS301と同様であり、S506乃至508の処理は図8のS303乃至305と同様であるため、以下では主にS502乃至S505の処理を説明する。
S501からS502に進むと(YESの場合)、WBモードの設定内容が判定される。システム制御部311は、前述したWBセット、AWB、WBプリセットのいずれであるかを判定する。WBセットの場合、WB処理部109は基準の白が適正な白となるようにWBを補正する(S503)。AWBでは、被写体の画像データまたは色温度センサの情報を元に自動補正により適正なWB状態が得られる(504)。またWBプリセットでは、予め想定される複数の環境下にて適正なWB状態を得るために用意された補正値をユーザが選択する(505)。WBセット(S503)やAWB(S504)では、表示パネル309に表示される映像も撮影映像と同じく適正なWB状態で表示される必要がある。周囲の照明環境に順応しているユーザの目で表示パネル309の表示映像を見た時でも適正なWB状態で観賞するために、WBセットまたはAWBの場合、S506に進む。表示映像信号切替え部113は、表示パネル309へ送る表示映像信号として、WB処理を施す前の映像信号に切替える(図7の映像信号経路B参照)。
【0027】
一方、WBプリセット(S505)では、予め想定される環境下で適正なWB状態となるように、それぞれ補正値が用意されている。しかし、ユーザが意図的に使用時の環境下とは異なる補正値を使用する場合がある(例えば、ユーザが夕焼けをより赤く撮りたい場合等)。そのため、WBプリセットの場合、S507に進む。表示映像信号切替え部113は、表示パネル309へ送る表示映像信号として、WB処理が施された後の映像信号へ切替える(図7の映像信号経路A参照)。
変形例によれば、映像の白部分が適正な白になっていることが求められるAWBやWBセットの場合、WB処理が施される前の映像信号を使用する経路Bに切替えられる。このため、撮影時の照明環境によって生じるカメラ画と表示パネル画の間のWBの差を軽減できるので、ユーザは撮影している映像のWB状態を正確に把握できる。また、WBプリセットの場合には、ユーザがWB補正量を意図的に変更する場合があるため、WB処理が施された後の映像信号を使用する映像信号経路Aに切替えることで、ユーザはWB補正量の変化を確認できる。
【0028】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0029】
109 ホワイトバランス処理部
115 表示映像信号切替え部
305 撮像素子
308 表示画信号処理部
309 表示パネル
310 ビューファインダ
312 カメラ信号処理部
314 再生画信号処理部
315 内蔵メモリ
318 メモリカード
401 モード選択部
501,502 切替え検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段による映像信号を処理して画像を表示する撮像装置であって、
水中撮影モードを設定するモード選択手段と、
ホワイトバランス補正が施された映像を再生する再生画信号処理手段と、
前記再生画信号処理手段からの映像信号に従って再生映像を表示する表示手段と、
前記モード選択手段により設定されたモードが前記水中撮影モードである場合、前記再生映像に係る色温度情報および前記撮像手段による映像信号に係る色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行って再生映像に係る色信号の補正量を変化させることにより、再生映像の赤色成分を低減させた映像を前記表示手段に表示させる表示画信号処理手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段による映像信号にホワイトバランス補正を施すカメラ画信号処理手段と、
前記カメラ画信号処理手段によってホワイトバランス補正を施した信号を記録する記録媒体をさらに備え、
前記再生画信号処理手段は前記記録媒体から信号を読み出して前記表示画信号処理手段に出力し、
前記表示画信号処理手段は、前記水中撮影モードの場合、前記再生映像の色座標変換から得られる色温度情報および前記カメラ画信号処理手段による映像信号の色座標変換から得られる色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行うことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記表示手段としての表示パネルおよびビューファインダと、
前記表示パネルおよびビューファインダの切替えを検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段によって前記ビューファインダへの切替えが検出された場合、前記表示画信号処理手段は、前記ビューファインダの表示映像に対して予め決められた色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行うことを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像手段による映像信号を処理して表示手段に画像を表示する撮像装置であって、
水中撮影モードを設定するモード選択手段と、
前記映像信号に対してホワイトバランス補正を施す信号処理手段と、
前記表示手段へ送る映像信号として、前記信号処理手段によりホワイトバランス補正が施される前の映像信号、または前記信号処理手段によりホワイトバランス補正が施された後の映像信号を切替える信号切替え手段と、を備え、
前記モード選択手段によって前記水中撮影モードが設定された場合、前記信号切替え手段は、前記表示手段へ送る映像信号として、前記信号処理手段によりホワイトバランス補正が施される前の映像信号に切替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
撮像手段による映像信号を処理して画像を表示手段に表示する撮像装置にて実行される制御方法であって、
水中撮影モードが設定されているか否かを判定する判定ステップと、
ホワイトバランス補正が施された映像を再生する再生画信号処理ステップと、
映像信号に従って再生映像を前記表示手段に表示させる表示画信号処理ステップを有し、
前記判定ステップで前記水中撮影モードが設定されていると判定された場合、前記表示画信号処理ステップでは、前記再生映像に係る色温度情報および前記撮像手段による映像信号に係る色温度情報を用いてホワイトバランス補正を行って再生映像に係る色信号の補正量を変化させることにより、再生映像の赤色成分を低減させた映像を前記表示手段に表示させる処理を行うことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項6】
撮像手段による映像信号を処理して表示手段に画像を表示する撮像装置にて実行される制御方法であって、
水中撮影モードが設定されているか否かを判定する判定ステップと、
前記表示手段へ送る映像信号として、信号処理手段によりホワイトバランス補正が施される前の映像信号、または前記信号処理手段によりホワイトバランス補正が施された後の映像信号を切替える信号切替えステップを有し、
前記判定ステップで前記水中撮影モードが設定されていると判定された場合、前記信号切替えステップでは、前記表示手段へ送る映像信号として、前記信号処理手段によりホワイトバランス補正が施される前の映像信号に切替えることを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21518(P2013−21518A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153411(P2011−153411)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】