説明

撮像装置のバリア機構

【課題】円滑にバリア羽根を作動させて適切な閉鎖状態を実現し、係る閉鎖状態の外観の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、各バリア羽根の閉鎖動作を行う際に、駆動リングが回転駆動して、各バリア羽根をバリアベースに対して回動させて、バリア羽根の合わせ部が当接させた後、駆動リングが更に回転して、バリアベースのバリア羽根押圧手段と、駆動リングのカム部とが協動して、バリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させるバリア機構を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、非撮像時におけるカメラの対物レンズを保護するバリア機構に関し、特に、複数枚のバリヤ羽根を用いた撮像装置のバリア機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、非撮像時におけるレンズを保護する撮像装置のバリア機構は、対物レンズを覆う複数枚のバリア羽根と、当該バリア羽根を駆動する駆動機構を備えている。この駆動機構が各バリア羽根を駆動して、外部に対して対物レンズを開放した状態と、遮断した状態とする。
【0003】
例えば、特許文献1に示すレンズバリアユニットでは、開口部を画定するベースリングと、ベースリングに回動自在に支持された2枚のバリア羽根と、開口部の周りに回動自在に支持されて回動により2枚のバリア羽根を開閉駆動する駆動リング(回動リング)等を備えている。
【0004】
各バリア羽根は、駆動リングとカバーとの間に形成される羽根室内に収容された状態で、支持軸を中心として回転する。この際、バリア羽根は、閉じる方向に付勢されるバネの一端が支持軸に隣接して係止される。バネの他端は、駆動リングに係止される。
【0005】
そのため、バリア羽根が閉じた状態では、バリア羽根の支持軸側がバネによってベース側に付勢されて、バリア羽根の支持軸とは反対側となる先端部が、カバー側に迫り上がった状態となる。バリア羽根の先端部は、羽根室のクリアランス分、カバー側に倒れるため、バリア羽根同士の当接部(合わせ部分)においてねじれが生じ、外観が悪化する問題がある。
【0006】
そこで、羽根室のクリアランスを狭めることで合わせ部分におけるねじれを解消することが考えられるが、狭めすぎるとバリア羽根の作動不良を招来し、完全に閉じた状態とならない、所謂、薄目状態が発生してしまう。かかる薄目状態では、バリア機構本来のレンズ保護機能が損なわれてしまう。
【0007】
従って、各構成部品の寸法や組み付けの精度が低いと、合わせ部分におけるねじれの発生や、薄目状態が発生し、外観の低下を招き、各構成部品の寸法や組み付けの精度を高めると、製造コストの高騰を招く問題がある。
【0008】
かかる不都合を解消すべく、特許文献2では、バリア羽根同士の当接部を面一に合わせるべく光軸方向に押し出してバリア羽根に当接させるカムをベースに形成している。これにより、バリア羽根が閉じる方向に駆動リングが回転されると、バリア羽根同士の合わせ部が当接した状態から、更に駆動リングが回転されて、ベースに形成されたカムによって駆動リングがバリア羽根側に押しつけられる。そのため、駆動リングとカバーとの間に形成される羽根室が狭くなっていき、当該羽根室内に収容されたバリア羽根がカバー側に押圧されて、当該バリア羽根の光軸方向における相対的な位置が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−147599号公報
【特許文献2】特開2006−126552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2では、駆動リングの回転に伴って、バリア羽根が収容される羽根室のクリアランスを狭めていくことで、バリア羽根の合わせ部同士に生じるねじれを解消する構成とされているが、当該構成では、バリア羽根同士の当接面が当接した状態から、更に駆動リングが回転される過程において、駆動リングとバリア羽根とは、面接触して押圧される。そのため、摺動抵抗が大きくなって、バリア羽根自体の作動性が悪化し、場合によっては、駆動リングとカバーとの間において各構成部材同士が密着した状態で、駆動リングの回転方向に力が加えられることで作動不良が生じる。
【0011】
この作動不良を改善するため、各構成部品の寸法精度や組み付け精度を高める必要が生じ、これによって、製造コストの高騰を招来する問題がある。
【0012】
以上のことから、簡素な構成にてバリア羽根の作動不良を改善することができると共に、バリア羽根の合わせ部において生じるねじれを解消することができるバリア機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、本件発明にかかる撮像装置のバリア機構を採用することで、円滑にバリア羽根を作動させて適切な閉鎖状態を実現し、係る閉鎖状態の外観の向上を図ることができることに想到したのである。
【0014】
本件発明にかかる撮像装置のバリア機構は、複数のバリア羽根と、バリアベースと、駆動リングとを備え、バリアベースは、光軸方向に対して開口する開口部と、その開口部外周のリム部とからなり、各バリア羽根は、バリアベースに回動自在に係合され、バリア羽根同士が協動して自在に離着動作を行うことで、バリアベースの開口部の開閉を行うように機能するものであり、駆動リングは、回転駆動することによって、各バリア羽根をバリアベースに対して回動させるものであり、バリア羽根の合わせ部が当接した後、駆動リングを更に回転させ、バリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させることを特徴とする。
【0015】
そして、複数のバリア羽根と、バリアベースと、駆動リングは、順次積層配置した構成され、バリアベースは、リム部にバリア羽根押圧手段を備え、駆動リングは、各バリア羽根の閉鎖動作を行う際に、バリア羽根の支点部を被写体側に移動させるためのカム部を備え、バリア羽根の合わせ部が当接した後、駆動リングを更に回転させ、バリアベースのバリア羽根押圧手段と、駆動リングのカム部とが協動して、バリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させることが好ましい。
【0016】
そして、バリア羽根押圧手段は、光軸方向に変位自在な操作片により構成され、カム部は、傾斜面を有して被写体側に突出して形成され、操作片は、バリア羽根の合わせ部が当接した後、更に駆動リングを回転させることによって、カム部の傾斜面に沿って被写体側にシフト移動することが好ましい。
【0017】
更に、バリアベースのリム部には、カム部を収容可能とする退避孔が形成され、当該退避孔には、バリア羽根の合わせ部が当接する位置以外における当該カム部が退避されることが好ましい。
【0018】
操作片は、弾性材にて構成されて、各バリア羽根に常時当接していることがより好ましい。
【0019】
バリアベースには、バリアベースのリム部を被覆するバリアカバーが取り付けられると共に、バリアカバーと当該バリアベースとの間に各バリア羽根が収容される羽根室が画成されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の撮像装置のバリア機構によれば、各バリア羽根の閉鎖動作を行う際には、駆動リングが回転駆動して、各バリア羽根がバリアベースに対して回動し、バリア羽根の合わせ部が当接する。その後、駆動リングが更に回転してバリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させることにより、バリア羽根同士の合わせ部において生じるねじれを補正するとともに、薄目状態を回避することができる。
【0021】
本発明によれば、バリア羽根の支点部を、被写体側にシフト移動させて、バリア羽根のねじれを補正するため、従来のようなバリア羽根と駆動リングとが面接触して、バリア羽根のねじれを補正する場合と異なり、摺動抵抗を小さくすることができ、作動不良の発生を回避することができる。
【0022】
これにより、円滑にバリア羽根を作動させて適切な閉鎖状態を実現し、係る閉鎖状態の外観の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の撮像装置のバリア機構の分解斜視図(被写体側)である。
【図2】図1のバリア機構の分解斜視図(像面側)である。
【図3】組み立てた状態のバリア機構の斜視図(被写体側)である。
【図4】組み立てた状態のバリア機構の斜視図(像面側)である。
【図5】図1のバリア機構の正面図(バリア羽根閉鎖状態)である。
【図6】図1のバリア機構の正面図(バリア羽根開放状態)である。
【図7】図5のバリア機構の背面図である。
【図8】図6のバリア機構の背面図である。
【図9】バリアベースの平面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【図11】駆動リングの平面図である。
【図12】駆動リングのB方向からみた斜視図である。
【図13】バリア羽根が開放位置にある状態の被写体側からみたバリア機構の透視平面図である。
【図14】図13のC−C断面図である。
【図15】図13のD−D断面図である。
【図16】バリア羽根が閉鎖位置にある状態の被写体側からみたバリア機構の透視平面図である。
【図17】図16のG−G断面図である。
【図18】図16のI−I断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本件発明の撮像装置のバリア機構の最良の実施形態について、図面を参照して詳述する。この際、本実施の形態におけるバリア機構1の構造については、図1の被写体側から見たバリア機構1の分解斜視図を中心として説明する。図3の被写体側から見たバリア機構1の斜視図、図4の像面側から見たバリア機構1の斜視図、図4の分解斜視図、図5の正面図(バリア羽根10閉鎖状態)、図6の正面図(バリア羽根10開放状態)、図7、図8の背面図は、補助的に参照して説明する。なお、図5〜図8は、いずれもバリアカバー40が無い状態を示している。
【0025】
本件発明にかかる撮像装置のバリア機構1は、図示しない撮像装置の撮像レンズの被写体側に設けられ、撮像装置の鏡筒部品(不図示)との連結によって、連動して開閉駆動するバリア機構である。
【0026】
図1からも明らかなように、当該バリア機構1は、バリアカバー40と、複数のバリア羽根10、10と、バリアベース20と、駆動リング30とを被写体側から順次積層配置した構成を備える。また、バリア機構1は、駆動リング30の回転駆動に伴って、バリア羽根10、10の位置を調整する調整機構50を備える。
【0027】
ここで、本実施の形態では、バリア羽根10は2枚、設けられているが、これに限らず2枚以上の複数設けても良い。この際、バリア羽根10は、偶数枚に限られない。以下、各構成要素ごとに説明する。
【0028】
<バリアベース>
バリアベース20は、光軸方向に対して開口する開口部21と、その開口部21外周のリム部22とからなる。バリアベース20のリム部22の被写体側に位置する面20Aには、開口部21を開放状態又は閉鎖状態とする各バリア羽根10に対応する複数の支持軸23が、光軸L方向に延在して設けられている。各支持軸23は、バリアベース20のリム部22において、光軸Lを中心とした同一円周上に等角度間隔で配置されている。
【0029】
また、当該バリアベース20のリム部22には、各バリア羽根10、10が閉鎖位置にある場合にのみ、該各バリア羽根10の位置補正を行うバリア羽根押圧手段としての操作片24、24がそれぞれ設けられている。操作片24の詳細については後述する。
【0030】
更に、バリアベース20のリム部22には、各バリア羽根10の連結片12を挿通可能とする透孔28、28が各バリア羽根10に対応して形成されている。図中29は、バリアベース20の被写体側に位置する各バリア羽根10の回転動作に沿って形成されるガイドリブであり、バリアベース20のリム部の被写体側に位置する面20Aに形成されている。これにより、バリアベース20と各バリア羽根10とは、当該ガイドリブ29による点接触とされる。
【0031】
本実施の形態では、各バリア羽根10は、光軸Lが通る仮想点P(図5参照)を中心として点対称となる位置に設けるため、各バリア羽根10を支持する各支持軸23、及び、各バリア羽根10の位置補正を行う各操作片24、透孔28は、同様に光軸Lが通る仮想点を中心として点対称となる位置に設けられる。
【0032】
また、バリアベース20の開口部21の開口縁部には、像面側に突出した筒状のカラー27が形成されている。更に、バリアベース20の外周縁部には、後述するバリアカバー40の係合部42と着脱自在に嵌合する被係合部26が複数形成されている。
【0033】
<バリアカバー>
バリアカバー40は、バリアベース20のリム部22を被写体側から被覆するカバー部材であり、バリアベース20の開口部21と重合する開口41が形成されている。このバリアカバー40は、外周縁部から像面側に延在する係合部42が複数形成されており、当該係合部42は、上記バリアベース20の外周縁部に形成された各被係合部26と着脱自在に嵌合する。
【0034】
そして、バリアベース20にバリアカバー40が取り付けられた状態で、当該バリアベース20とバリアカバー40との間には、各バリア羽根10が収納される羽根室2が画成される。
【0035】
また、バリアカバー40の像面側の面40Bには、バリアカバー40の像面側に位置する各バリア羽根10の回転動作に沿って複数のガイドリブ43が形成されている。これにより、バリアカバー40と各バリア羽根10とは、当該ガイドリブ43による点接触とされる。更に、バリアカバー40の像面側の面40Bには、バリアベース20の各支持軸23、23の端部を保持する各軸受け部44、44が形成されている。
【0036】
これにより、バリアカバー40は、その像面側の面40Bのガイドリブ43が各バリア羽根10の被写体側の面10Aに当接可能に配置されることにより、各バリア羽根10、10の光軸方向の位置を駆動リング30と協働して規定する役割を果たす。
【0037】
<バリア羽根>
各バリア羽根10は、薄板状に形成されており、バリア羽根10、10同士が協動して自在に離着動作を行うことで、バリアベース20の開口部21を開放状態又は閉鎖状態とするように機能する。すなわち、各バリア羽根10、10が開放位置にある場合には、図5に示すようにバリアベース20の開口部21を開放して、レンズを使用可能とし、各バリア羽根10、10が閉鎖位置にある場合には、図6に示すように、バリアベース20の開口部21は、当該バリア羽根10、10によって閉鎖され、撮像装置の非使用時におけるレンズを保護する。
【0038】
各バリア羽根10は、バリアベース20の各支持軸23にそれぞれ回動自在に係合するための連結孔11、11を備えている。各バリア羽根の連結孔11が形成される側の支点部15には、連結片12が像面側に向けて折曲形成されている。この際、バリア羽根10がバリアベース20に取り付けられた状態で、連結片12は、バリア羽根10の支点部15であって、支持軸23の開口部21側(内径側)に配置される。
【0039】
また、用いられるバリア羽根10の形状をすべて同一形状とすることで、製造コストの高騰を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、各バリア羽根10に形成された連結孔11を、バリアベース20に形成された支持軸23に係合することで、当該バリア羽根10は、バリアベース20に対し回動自在とされているが、これに限定されるものではなく、バリア羽根10に支持軸を形成し、バリアベース20に連結孔を形成して、バリア羽根をバリアベースに対して回動自在としても良い。
【0041】
また、バリア羽根10の被写体側の面には、所謂スピン加工を施してもよい。すなわち、各バリア羽根10同士の合わせ部14を当接させて、バリアベース20の開口部21を閉鎖した状態で、光軸Lを中心とした同心円の複数の溝により構成されるスピン加工を、各バリア羽根10の被写体側の面に施すことで、外観の向上を図ってもよい。
【0042】
<駆動リング>
駆動リング30は、調整機構50によって各バリア羽根10、10を回転駆動させる環状部材であり、撮像装置の図示しない鏡筒部品のカムにより光軸Lを中心として回転駆動される。この駆動リング30は、バリアベース20の開口部21に形成されたカラー27に内周面が回動自在に外嵌される。
【0043】
そして、この駆動リング30には、その像面側の面30Bから光軸方向の像面側に突出する操作脚部31が形成されている。この操作脚部31が撮像装置の図示しない鏡筒部品の係合突起に当接することにより、回転駆動される。また、この駆動リング30には、上記バリアベース20の操作片24を操作するカム部34が被写体側の面30Aに形成されている。なお、当該カム部34の詳細については、操作片24の説明と併せて後述する。
【0044】
<調整機構>
調整機構50は、各バリア羽根10を閉鎖する方向に付勢する閉鎖側付勢部材51、51と、各バリア羽根10を開放する方向に付勢する開放側付勢部材52とから構成される。各付勢部材51、52はいずれも縮退する方向に付勢されるコイルバネにより構成されている。
【0045】
閉鎖側付勢部材51は、一端を透孔28を介して像面側に突出する上記各バリア羽根10の連結片12に形成された係合部13に係合し、他端を駆動リング30の像面側に突出した係合部33と係合することにより、各バリア羽根10と駆動リング30とを連結する。この閉鎖側付勢部材51は、縮退する方向に付勢されているため、常時バリア羽根10の連結片12の係合部13が、駆動リング30の係合部33と近接する方向、すなわち、各バリア羽根10を閉鎖する方向に付勢される。
【0046】
開放側付勢部材52は、一端を駆動リング30の像面側の面30Bに突出して形成される係合部35に係合し、他端をバリアベース20のカラー27に形成された係合部19と係合させることにより、駆動リング30とバリアベース20とを連結する。この開放側付勢部材52は、縮退する方向に付勢されているため、常時駆動リング30の係合部35が、バリアベース20の係合部19と近接する方向、すなわち、駆動リング30が各バリア羽根10を開放させる方向に回動させる方向に付勢される。
【0047】
<操作片及びカム部>
次に、上記操作片24及びカム部34について図9〜図12を参照して詳述する。図9はバリアベース20の平面図、図10は図9のA−A線断面図、図11は駆動リング30の平面図、図12は図11をB方向からみた斜視図をそれぞれ示している。
【0048】
上述したように、バリア羽根押圧手段としての操作片24は、バリアベース20のリム部22の支持軸23側に設けられている。この操作片24は、駆動リング30のカム部34によって、各バリア羽根10の支点部15を被写体側に押圧する部材である。本実施の形態における操作片24は、図9及び図10に示すように、当該バリアベース20のリム部22に貫通形成された連通孔60内に収容保持された状態で設けられる。連通孔60は、バリアベース20のリム部22における支持軸23の開口部21側(内径側)に位置して、バリア羽根10の回動方向に延在して形成されている。
【0049】
操作片24は、バリアベース20のリム部22と同一平面上に形成された弾性材にて構成され、その一端のみが連通孔60の縁部と連続して形成される。すなわち、本実施の形態では、操作片24は、バリアベース20のリム部に一体に形成されている。これにより、操作片24は、バリアベース20と連続した一端側を中心として他端側が光軸方向に変位自在とされる。この操作片24の他端側の被写体側の面には、当該被写体側に突出する当接部24Aが形成され、像面側の面には、当該像面側に突出する当接部24Bが形成されている。本実施の形態では、操作片24が有する弾性力によって、被写体側に付勢されて、当該操作片24の当接部24Aが各バリア羽根10側に常時、当接していることがより望ましい。
【0050】
操作片24を操作するカム部34は、駆動リング30の被写体側の面30Aに形成されている。このカム部34は、図12に示すように、被写体側のバリア羽根10に徐々に近接するように突出する傾斜面34Aと、当該傾斜面34Aの最高部から所定寸法分平らに形成される平坦部34Bとから構成される。この際、各バリア羽根10、10の閉鎖動作において、各バリア羽根10同士の合わせ部14が当接する位置にあるときに、当該平坦部34Bが、バリアベース20の操作片24と当接する位置となるように設定されている。
【0051】
また、操作片24が収容保持されるバリアベース20の連通孔60は、操作片24の他端側と、当該連通孔60の他端側縁部との間に所定の間隔が形成されて、当該間隔は、駆動リング30のカム部34を収容可能とする退避孔60Aを兼ねる。
【0052】
以下、本件実施形態のバリア機構1の動作について図13〜図18を参照して説明する。図13はバリア羽根10が開放位置にある状態の被写体側からみたバリア機構1の透視平面図、図14は図13のC−C断面図及び部分拡大図、図15は図13のD−D断面図及び部分拡大図、図16はバリア羽根10が閉鎖位置にある状態の被写体側からみたバリア機構1の透視平面図、図17は図16のG−G断面図及び部分拡大図、図18は図16のI−I断面図及び部分拡大図をそれぞれ示している。
【0053】
駆動リング30の操作脚部31が鏡筒部品の係合突起により押圧されていない状態では、駆動リング30は、開放側付勢部材52の付勢力によって、駆動リング30の係合部35とバリアベース20の係合部19とが近接する方向、すなわち、駆動リング30が各バリア羽根10、10を開放させる方向に付勢される。
【0054】
そのため、各バリア羽根10は、バリアベース20のリム部22の被写体側に重合して図6に示すように、被写体側からみて反時計回りの回転端に位置した開放位置となる。この開放位置では、各バリア羽根10、10は、バリアベース20の開口部21を全開した状態となる。
【0055】
この開放位置では、駆動リング30のカム部34は、図14及び図15の部分拡大図に示すように、連通孔60の操作片24が形成されていない箇所である退避孔60A内に退避し、操作片24の当接部24Bには、当接していない。そのため、操作片24は、その弾性力によってのみ、バリア羽根10の像面側の面に当接する。
【0056】
この開放位置から、駆動リング30の操作脚部31が鏡筒部品の係合突起により押圧力を受けることで、駆動リング30は、開放側付勢部材52の付勢力に抗しつつ、被写体側からみて光軸Lを中心として時計回りに回転すると、バリア羽根10は、閉鎖側付勢部材51の付勢力によって、支持軸23を中心に、被写体側からみて時計回りに回転する閉鎖動作を行う。すなわち、閉鎖側付勢部材51の付勢力によって、バリア羽根10の連結片12の係合部13が、駆動リング30の係合部33と近接する方向に移動する。
【0057】
これにより、バリア羽根10、10は、支持軸23を中心として、バリアベース20の開口部21を閉鎖する方向に回動することで、各バリア羽根10の合わせ部14同士が当接する当接位置となる。
【0058】
この開放位置から当接位置に至る過程で、各バリア羽根10、10は、バリアベース20の被写体側の面20Aに形成されたガイドリブ29と、バリアカバー40の像面側の面40Bに形成されたガイドリブ43と点接触しながら、それぞれ支持軸23を中心として同一平面上を回転移動する。また、バリアベース20に形成された操作片24は、常時バリア羽根10側に当接するように付勢されて構成されているため、この操作片24の当接部24Aによってもバリア羽根10が支持される。
【0059】
そして、上記バリア羽根10の閉鎖動作において、各バリア羽根10の合わせ部14同士が当接した後、更に、駆動リング30の操作脚部31が鏡筒部品の係合突起により押圧力を受けることで、駆動リング30は、被写体側からみて光軸Lを中心として更に時計回りに回転する。
【0060】
駆動リング30が当接位置から更にバリア羽根10を閉鎖する方向に回転駆動されると、当該閉鎖動作における開放位置から当接位置に至るまでの間、連通孔60の操作片24が形成されていない箇所である退避孔60A内に退避しながら移動していた駆動リング30のカム部34は、バリアベース20に形成された操作片24の当接部24Bと当接する。
【0061】
これによって、操作片24は、カム部34の傾斜面34Aと当接することで、被写体側にシフト移動して、バリア羽根10の支点部15を被写体側に位置するバリアカバー40側に徐々に押圧していく(図17、図18の部分拡大図中、太線矢印方向)。そして、駆動リング30の回転駆動によって、操作片24がカム部34の平坦部34Bにまで到達すると、操作片24の被写体側へのシフト移動が保持される(図17、図18の部分拡大図)。この平坦部34Bに操作片24が位置した状態で、各バリア羽根10は、被写体側からみて時計回りの回転端に位置した閉鎖位置となる。
【0062】
従来では、かかる操作片24により構成されるバリア羽根押圧手段が設けられていなかったため、バリア羽根10の支点部15(連結片12)が閉鎖側付勢部材51によって駆動リング30の係合部33側、すなわち、像面側に引き寄せられ、バリア羽根10の支点部15とは反対側に位置する端部、他端側16がバリアベース20とバリアカバー40との間に形成される羽根室2の間隔寸法分だけ被写体側に倒れる。
【0063】
点対称に配置されるバリア羽根10、10同士が逆方向に引っ張られることによって、合わせ部14同士にねじれが発生する。
【0064】
これに対し、本件発明では、各バリア羽根10の合わせ部14同士が接した当接位置から、更に駆動リング30を回転させて、カム部34と操作片24とが協働して各バリア羽根10の支点部15を支持軸23に沿って被写体側にシフト移動させる。そのため、閉鎖側付勢部材51のバリア羽根10の支点部15側を被写体側にシフト移動させて、当該バリア羽根10の他端部16側のみならず、支点部15をもバリアカバー40の像面側の面40B側に押圧することができる。これにより、バリア羽根10の他端部16側と支点部15とがバリアカバー40によって規制され、支点部15が像面側、他端部16が被写体側に引っ張られる捻れ状態、すなわち、各バリア羽根10の合わせ部14同士の段差を平らな状態に補正することができる。そのため、各バリア羽根10、10の合わせ部14同士の重合状態を適切なものとでき、ねじれ状態を改善することができる。
【0065】
特に、操作片24とカム部34によるバリア羽根10の支点部15のシフト移動は、バリア羽根10の閉鎖動作において、各バリア羽根10の合わせ部14が当接した状態から徐々にカム部34の傾斜面34Aから平坦部34Bに渡って押圧していく構成とされているため、開放位置から閉鎖位置にまで渡る閉鎖動作の全体にわたって、バリア羽根10の支点部15を被写体側に押圧していく場合と異なり、バリア羽根10の同一平面上における回動状態を維持でき、円滑に、バリア羽根10の合わせ部14を当接させることができる。合わせ部14同士を当接させた状態から、支点部15の被写体側への押圧操作を行うことで、摺動抵抗を著しく小さく抑えることができる。
【0066】
従って、上述した従来のようなバリア羽根と駆動リングとが面接触して、バリア羽根のねじれを補正する場合と異なり、摺動抵抗を小さくすることができ、作動不良の発生を回避することができる。
【0067】
これにより、円滑にバリア羽根10を作動させて適切な閉鎖状態を実現し、各バリア羽根10、10による開口部21の閉鎖状態における外観の向上を図ることができる。
【0068】
特に、本実施の形態に示すように、バリア羽根10にスピン加工が施されている場合には、合わせ部14にずれが発生していると、外観の大きな低下を招くこととなるが、本件発明を採用することで、外観の向上を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、駆動リング30に形成されたカム部34は、バリア羽根10の合わせ部14が当接する位置以外、すなわち、閉鎖位置から当接位置までにおいて、バリアベース20のリム部22に形成された退避孔60A内に退避する構成とされているため、バリアベース20とバリアカバー40との間に形成される羽根室2のクリアランスを適切に維持できる。従って、カム部34により悪影響を与えられることなく、各バリア羽根10を支障なく滑らかに回転させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本件発明に係るバリア機構は、撮像装置の撮像レンズの被写体側に設けられて、レンズの非使用時にレンズの被写体側に設けられたバリア羽根を閉じることにより、外部からの衝撃や汚染などからレンズを保護する場合に有効であり、特に、このバリア羽根の適切な閉鎖状態を実現すると共に、開閉動作を円滑とすることができる本願発明は、有効である。
【符号の説明】
【0071】
1 バリア機構
2 羽根室
10 バリア羽根
10A 被写体側の面
11 連結孔
12 連結片
13、19、33、42 係合部
14 合わせ部
15 支点部
16 他端部
20 バリアベース
20A 被写体側に位置する面
21 開口部
22 リム部
23 支持軸
24 操作片(バリア羽根押圧手段)
24A、24B 当接部
26 被係合部
28 透孔
29 ガイドリブ
30 駆動リング
30A 被写体側の面
30B 像面側の面
31 操作脚部
34 カム部
35 係合部
40 バリアカバー
40B 像面側の面
41 開口
43 ガイドリブ
50 調整機構
51 閉鎖側付勢部材
52 開放側付勢部材
60 連通孔
60A 退避孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバリア羽根と、バリアベースと、駆動リングとを備えるバリア機構であって、
当該バリアベースは、光軸方向に対して開口する開口部と、その開口部外周のリム部とからなり、
当該各バリア羽根は、当該バリアベースに回動自在に係合され、当該バリア羽根同士が協動して自在に離着動作を行うことで、当該バリアベースの開口部の開閉を行うように機能するものであり、
当該駆動リングは、回転駆動することによって、各バリア羽根をバリアベースに対して回動させるものであり、
当該バリア羽根の合わせ部が当接した後、当該駆動リングを更に回転させ、バリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させることを特徴とする撮像装置のバリア機構。
【請求項2】
前記複数のバリア羽根と、バリアベースと、駆動リングは、順次積層配置した構成され、
前記バリアベースは、リム部にバリア羽根押圧手段を備え、
前記駆動リングは、当該各バリア羽根の閉鎖動作を行う際に、当該バリア羽根の支点部を被写体側に移動させるためのカム部を備え、
当該バリア羽根の合わせ部が当接した後、当該駆動リングを更に回転させ、当該バリアベースのバリア羽根押圧手段と、当該駆動リングのカム部とが協動して、バリア羽根の支点部を被写体側にシフト移動させる請求項1の撮像装置のバリア機構。
【請求項3】
前記バリア羽根押圧手段は、光軸方向に変位自在な操作片により構成され、
前記カム部は、傾斜面を有して被写体側に突出して形成され、
当該操作片は、前記バリア羽根の合わせ部が当接した後、更に前記駆動リングを回転させることによって、当該カム部の傾斜面に沿って被写体側にシフト移動する請求項2に記載の撮像装置のバリア機構。
【請求項4】
前記バリアベースのリム部には、前記カム部を収容可能とする退避孔が形成され、当該退避孔には、前記バリア羽根の合わせ部が当接する位置以外における当該カム部が退避される請求項2又は請求項3に記載の撮像装置のバリア機構。
【請求項5】
前記操作片は、弾性材にて構成されて、前記各バリア羽根に常時当接する請求項3又は請求項4に記載の撮像装置のバリア機構。
【請求項6】
前記バリアベースには、当該バリアベースのリム部を被覆するバリアカバーが取り付けられると共に、当該バリアカバーと当該バリアベースとの間に前記各バリア羽根が収容される羽根室が画成される請求項1〜請求項5のいずれかに記載の撮像装置のバリア機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−109091(P2013−109091A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252822(P2011−252822)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】