説明

撮像装置付き表示装置

【課題】 製造コストの上昇を最低限に抑える。
【解決手段】 画像情報を表示する表示手段2と、表示手段の背面に配設され、表示手段の画像情報を観察する使用者を撮影する複数の撮像手段5とを備えた撮像装置付き表示装置1であって、複数の撮像手段は、表示手段の表示面に対して平行な面に2次元的に配置され、撮像手段の垂直方向の配列間隔Pyが水平方向の配列間隔Pxより広くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ電話などのリアルタイム双方向通信などに好適な撮像装置付き表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信網の目覚しい発展によりテレビ電話などのリアルタイム双方向通信が可能となった。テレビ電話は被写体像を電気的な画像信号に変換する撮像手段と電気的な画像信号を光信号に変換して表示する表示手段とから構成されている。テレビ電話の使用者は、表示手段の画面に映された相手の顔を見ながら会話をし、同時に使用者の顔は、撮像手段により撮影され、電気信号に変換されたのち、相手側へ送られる。しかしながら、従来のテレビ電話など双方向通信に用いられる機器では、撮像手段は表示手段の隣りまたは別の独立した装置として設けられており、表示手段を見ている受信者を斜め方向から撮影することになる。そのため、表示手段に映った相手の顔は視線が別のところを向いており、相互に話していてもぎこちなく、面と向かって話をするばあいと比較して違和感があるという問題がある。また撮像装置と表示装置とを別々に製造して組み立てたり、別個の装置としたりしなければならず、製造コストが高くなるという問題がある。
【0003】
そこで本出願人は、複数の表示画素と複数の表示画素の各表示画素間に配置された遮光部材とを備えた表示手段と、表示手段の背部に配置された撮像手段とを具備した撮像装置付き表示装置を特許文献1にて開示している。そして、これは、遮光部材の一部に撮像手段に光を導くための開口部を備え、撮像手段は開口部に対応した位置に結像手段を備えている。
【0004】
同文献の撮像装置付き表示装置は、表示手段を見ながらの撮像ができ、かつ表示手段に表示される相手と視線を一致させることが可能となる。また、表示手段前面に薄型の撮像手段を設けたことによって装置全体が大型化することもない。
【0005】
しかしながら、表示手段の画面に映される相手の顔の位置が画面内に配置された撮像手段の位置と一致するとは限らない。また、表示手段の画面内に配置された撮像手段の位置に対してずれた位置に映された相手の顔をみる使用者の位置も、相手の顔の位置にあわせてずれてしまう場合もある。
【0006】
図6は、テレビ電話等の表示手段を注視する使用者の視線方向と撮像手段の方向とのズレを説明する平面図である。図中20は表示手段である表示パネル、5は撮像手段であるカメラ、10は使用者である。また、×印の11は表示パネル20に表示された相手の顔の位置を示している。
【0007】
図7は、従来の撮像装置付き表示装置の説明図で、表示パネル20に使用者を撮影するカメラ5が組み込まれている。同図では、カメラ5の位置に対して図中−x方向(水平方向)にずれた位置(図中×印の位置)に相手の顔11が表示され、使用者10はカメラ5の光軸(z軸)からずれた位置より相手の顔11を注視している。ここで、カメラ5が使用者10を撮影する撮影方向と使用者10の視線方向とは所定の角度θずれており、この角度θが大きいとカメラ5で撮影された使用者の画像をみたテレビ電話の相手側の人は自分の顔を見ながら会話していない、と認識してしまう。
【0008】
カメラ5で撮影された使用者の画像をみたテレビ電話の相手側の人が、自分を見ているように認識してもらうためには、カメラ5が使用者10を撮影する撮影方向と使用者10の視線方向とのなす角度θを小さくする必要がある。
【0009】
カメラ5が使用者10を撮影する撮影方向と使用者10の視線方向とのなす角度θを小さくするために、特許文献1では表示パネル20に複数のカメラ5を配設している。そうすることによって、複数のカメラのうちの一台のカメラ5が使用者10を撮影する撮影方向と使用者10の視線方向とのなす角度θが小さくなり、カメラ5で撮影された使用者の画像をみた相手側の人は、自分を見ているように認識してもらえるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−176151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、表示パネル20の任意の位置に表示される相手側の人を注視する使用者10の視線方向と使用者10を撮影するカメラ5の撮影方向とのなす角度θを小さくするためには、表示パネル20の背面近傍に多数のカメラ5を配設しなければならない。そのため、製造コストがかかってしまうという欠点があった。
【0012】
(発明の目的)
本発明の目的は、製造コストの上昇を最低限に抑えることができる撮像装置付き表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置付き表示装置は、画像情報を表示する表示手段と、前記表示手段の背面に配設され、前記表示手段の画像情報を観察する使用者を撮影する複数の撮像手段とを備えた撮像装置付き表示装置であって、前記複数の撮像手段が、前記表示手段の表示面に対して平行な面に2次元的に配置され、前記撮像手段の垂直方向の配列間隔が水平方向の配列間隔より広いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コストの上昇を最低限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による撮像装置付き表示装置の実施例を示す図である。
【図2】実施例の側面図である。
【図3】実施例における表示パネルの一部を示す水平断面図である。
【図4】実施例における表示パネルの詳細を示す水平断面図である。
【図5】実施例の回路構成を示すブロック図である。
【図6】実施例の動作を示すフローチャートである。
【図7】使用者の視線方向と撮像手段の方向とのずれを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に記載される通りである。
【実施例】
【0017】
図1〜図5は撮像装置として複数のカメラ(撮像手段)を備えた本発明による撮像装置付き表示装置の実施例を示す。図1(a)は実施例の側面図、図1(b)は実施例の正面図、図2は実施例の側面図、図3は実施例における表示パネルの一部の水平断面図、図4は表示パネルの詳細を示す水平断面図である。また、図5は実施例の回路構成を示すブロック図、図6は実施例の動作を示すフローチャートである。
【0018】
図1はテレビ電話やテレビ会議システム等で使用される撮像装置付き表示装置1の説明図である。20は光を透過可能な表示手段である表示パネルで、画像情報を表示する表示手段に相当するものである。表示パネル20は表示パネル枠体2に組み込まれている。表示パネル枠体2の背面(図中+z方向)には脚部3が設けられ、脚部3に固定された台座4によって撮像装置付き表示装置1は直立するようになっている。
【0019】
表示パネル20の背面(図中+z方向)には、表示パネル20の画像情報(テレビ電話に使用される場合には対話する相手側の顔など)を観察する使用者を撮影するための撮像手段であるカメラ5が複数(図では21)配設されている。本実施例では、垂直(y)方向に3行、水平(x)方向に7列のカメラ5が、表示パネル20の表示面と平行な面に2次元的に配設されている。
【0020】
テレビ電話等で対話する相手側の人に対して、使用者が自分(相手側の人)を見ているように認識してもらうための水平(x)方向のカメラ5の間隔Pxは、表示パネル20の幅Wに依存し、例えば
W/30≦Px≦W/10 (1)
を満足するようになっている。
【0021】
また本実施例では、カメラ5の垂直方向の配列間隔Pyは水平方向の配列間隔Pxより広くなるように構成している。カメラ5の垂直方向の配列間隔Pyと水平方向の配列間隔Pxが異なるのは、使用者の画像をみた相手側の人は垂直方向の視線のズレは認識しづらいためである。その結果、垂直方向のカメラ5の配列間隔Pyは水平方向の配列間隔Pxに対して粗くなっている。このとき、カメラ5の垂直方向の配列間隔Pyは水平方向の配列間隔Pxに対して、例えば
2Px≦Py≦3Px (2)
を満足するように構成している。つまり、垂直方向の配列間隔Pyは、水平方向の配列間隔Pxの2倍以上で、水平方向の配列間隔Pxの3倍以下である。
【0022】
このように本実施例では、使用者の視線方向とカメラ5が使用者を撮影する撮影方向とのなす角度は水平方向ではより小さくし、垂直方向は水平方向より大きくなるように構成することにより、撮像装置付き表示装置1に具備されるカメラ5の数を削減し、コストを低減している。
【0023】
また表示パネル22の周囲には、使用者の音声を拾うマイク6と相手側の音声を伝えるスピーカー7が配設されている。
【0024】
さらに、撮像装置付き表示装置1の表示パネル枠体2と脚部3は不図示のヒンジで連結されている。そのため、脚部3に対して表示パネル枠体2は図中x軸方向を軸として回転可能になっている。
【0025】
図2の撮像装置付き表示装置1の側面図では、使用者が表示される画像情報を正対して見やすくするために表示パネル枠体2の角度を変えた状態を示している。ここで、カメラ5は表示パネル枠体2と一体的に回転するため、使用者が表示画像を見やすくするために表示パネル枠体2の角度を変えても使用者の画像を略正面から撮像することが可能となっている。
【0026】
図3は表示パネル20の一部の拡大水平断面図で、表示パネル20は光を透過可能な有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)で構成されている。図4は有機EL層の一部の拡大水平断面図である。図中−z方向が表示面方向である。
【0027】
図3において、200は有機EL層であり、有機EL層200の背面側(+z方向側)にある209はスイッチング及び駆動用のTFT(薄膜トランジスタ)である。TFT209はポリシリコン等で構成され、各表示画素部200aないし200nの境界部に配設されている。また、TFT209の背面側(+z方向側)にある210はアルミニウム等による遮光部材、210aは開口部である。
【0028】
本実施例の表示パネル20は、表示面側に有機EL層200を有し、背面側にTFT209を有するトップエミッション型の有機ELパネルである。
【0029】
5はカメラで、撮影レンズ50と撮像素子51とから構成され、表示パネル20の一つの表示画素部200lを通して使用者を撮影するようになっている。即ち、撮像素子51は、撮影レンズ50および遮光部材210の開口部210aを介して、各表示画素部200aないし200nの境界部に配設されたTFT209の間を受光するようになっている。また遮光部材210は、表示画素部200lに隣接する表示画素部から撮像素子51に迷光が入射するのを防止するためのものである。
【0030】
図4は有機EL層200を含む表示パネル20の一部の拡大水平断面図で、201は平坦化層、202は陽極で透明なITO等で構成されている。203は正孔輸送層、204は発光層、205は電子輸送層、206は電子注入層、207は陰極でITO等で構成されている。208は平坦化層である。図中の発光層204のうち、204Rは赤色を発光する発光層、204Gは緑色を発光する発光層、204Bは青色を発光する発光層で、図中x方向(表示パネル20の長辺方向)に3画素周期で配列している。有機EL層200の構成の詳細に関しては、本出願人により特開2009−187697号公報に開示されている。
【0031】
次に、撮像装置付き表示装置1をテレビ電話として使用した場合の制御動作を、図5の撮像装置付き表示装置1のブロック図と、図6の撮像装置付き表示装置1の動作フローチャートを用いて説明する。
【0032】
図6のフローチャートにおいて、テレビ電話の使用者がテレビ電話である撮像装置付き表示装置1の操作スイッチ8を操作し、テレビ電話を起動すると(s100)、撮像装置付き表示装置1の制御手段であるシステム制御回路90は、相手先の情報をリモコン等による使用者の操作からリモコン回路95を介して受信する。さらにシステム制御回路90は、使用者の操作から得られた相手先の情報に基づいて、送受信回路96を介してテレビ電話の相手側との通信状態を設定する(s101)。引き続きシステム制御回路90は、撮像装置付き表示装置1に配設された複数のカメラ5のうち、表示パネル20の中央に位置するカメラ5を、使用者を撮影するカメラとして初期設定する(s102)。カメラ5の撮像素子51で撮影された画像は、画像処理回路91で処理されて相手側に送信可能な状態になる。同時に、使用者の音声はマイク6で拾われ、音声処理回路93で処理されて相手側に送信可能な状態になる。カメラ5で使用者を撮影可能となったら、システム制御回路90は送受信回路96を介して相手側のテレビ電話との画像及び音声の送受信を開始する(s103)。
【0033】
次に、送受信回路96を介してテレビ電話の相手側から送信されてきた画像とステレオ音声を受信すると、システム制御回路90は相手側の画像を、表示処理回路92を介して表示パネル20に表示する。同時に、相手側の音声を駆動回路94を介してスピーカー7から出力する。
【0034】
さらに認識回路97は、テレビ電話の相手側から送信されてきた画像から、表示パネル20に表示される相手側の人物の目の位置(注視対象)を特定する。ここで相手側の画像に複数の人物が含まれる場合は、認識回路97は送信されてきたステレオ音声を解析して話者を特定し、その話者の目の位置を特定する(s104)。
【0035】
使用者が注視すると思われる表示パネル20上の相手側の人物の目の位置が特定されると、システム制御回路90は表示パネル20に表示される相手側の人物の目の位置に最も近いカメラ5を特定する(s105)。
【0036】
システム制御回路90は、現在設定されているカメラの位置とテレビ電話の相手側の話者の目の位置から特定されたカメラの位置とを比較する(s106)。現在設定されているカメラの位置とテレビ電話の相手側の話者の目の位置から特定されたカメラの位置とが異なっていれば、システム制御回路90は使用者を撮影するカメラを変更する(s107)。
【0037】
引き続きシステム制御回路90は操作スイッチ8の状態を確認し(s108)、テレビ電話が使用中のままであれば、再度テレビ電話の相手側から送信されてきた画像を解析し、表示パネル20に表示される相手側の人物の目の位置を特定する(s104)。
【0038】
一方、使用者によって操作スイッチ8がoffされたことをシステム制御回路90が確認すると(s108)、システム制御回路90は相手側のテレビ電話との送受信を終了する(s109)。さらに、システム制御回路90はカメラ5による使用者の撮影を終了するとともに、表示パネル20への相手側から受信した画像の表示を終了する(s110)。
【0039】
本実施例では、認識回路97は受信画像と音声情報に基づいて表示画像中の話者を特定し、それに基づいてシステム制御回路90が使用者を撮影するカメラ5を一つ選択する例を示したが、表示画像中の話者と略一致するカメラとその周囲に配置された複数カメラとから画像を合成するように構成しても構わない。
【0040】
また本実施例では、相手側から送られてきた受信画像と音声情報に基づいて認識回路97が表示画像中の話者を特定した例を示したが、カメラ5で撮影した使用者の画像とマイク6で拾った音声から使用者の位置情報を認識して、テレビ電話の相手側に使用者の位置情報を送信するようにシステムを構成するのも有効である。
【符号の説明】
【0041】
1 撮像装置付き表示装置
5 カメラ
6 マイク
7 スピーカー
20 表示パネル
90 システム制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を表示する表示手段と、前記表示手段の背面に配設され、前記表示手段の画像情報を観察する使用者を撮影する複数の撮像手段とを備えた撮像装置付き表示装置であって、
前記複数の撮像手段は、前記表示手段の表示面に対して平行な面に2次元的に配置され、前記撮像手段の垂直方向の配列間隔が水平方向の配列間隔より広いことを特徴とする撮像装置付き表示装置。
【請求項2】
前記撮像手段の垂直方向の配列間隔は、水平方向の配列間隔の2倍以上で、水平方向の配列間隔の3倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置付き表示装置。
【請求項3】
前記撮像手段の水平方向の配列間隔は、前記表示手段の大きさによって決まることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の撮像装置付き表示装置。
【請求項4】
前記表示手段に表示する画像情報に基づいて、使用者を撮影する前記複数の撮像手段のうちの少なくとも一つを選択する制御手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像装置付き表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、テレビ電話に使用される場合に、相手側が注視する対象に近い前記撮像手段を選択することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置付き表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110461(P2013−110461A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251748(P2011−251748)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】