説明

撮像装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】本発明は、ジオラマ風の特殊効果画像をどんなユーザでも容易に撮影することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】電子式ファインダに表示された撮影画像中の動きのあった領域を検出し、撮影画像の元画像及び縮小された画像に対して縮小処理を行い、元画像及び縮小された画像から帯状の領域を切り出す。そして、縮小された画像を拡大し、拡大された画像に切り出された帯状の領域画像を貼り付けて画像合成を行う。合成画像生成部203は、動き検出部111にて検出された領域を含む帯状の領域をくっきり領域として切り出し、画像合成部207にて処理を複数回繰り返すことによりくっきり領域以外の領域をぼかし領域として画像処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子から得られた画像データに対して画像処理を行い特殊な画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置において特殊な画像を生成する場合、例えば、レンズ前に各種専用フィルタを設置するソフトフォーカスやクロスフィルターなどが利用されていた。近年は、撮影画像に画像処理を施して特殊な画像を生成することが可能である。
【0003】
ティルトシフトレンズは、ピント面を撮像素子面と非平行にすることが可能なため、ジオラマを撮影したような効果(以下、「ジオラマ風効果」と呼ぶ)を得ることができる。このジオラマ風効果を画像処理で実現する場合には、所定の帯状領域では解像感を残し、帯状領域から離れるにつれてぼかす内容の処理が考えられる。
【0004】
通常、撮影画像に画像処理を施して特殊効果を得るには、例えば以下の手法がある。特許文献1では、元の撮影画像と撮影画像をボカシた画像とをある比率で混合して合成することによりソフトフォーカスのような効果が得られる点が記載されている。また、特許文献2では、撮影画像を縮小→フィルタ→拡大することにより、良好なボケ画像を得られる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−69277号公報
【特許文献2】特開2004−102904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ジオラマ風の特殊効果画像をどんなユーザでも容易に撮影することができる撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、被写体を撮影する撮像手段と、前記撮像手段による撮影画像について一部の領域にぼかしの画像処理を行う画像処理手段とを備える撮像装置において、前記撮影画像中の被写体の動きを検出する動き検出手段を備え、前記画像処理手段は、前記撮影画像に対して、前記動き検出手段により検出された領域を含む所定の領域をくっきり領域とし、当該くっきり領域以外の領域を前記ぼかしの画像処理を行うぼかし領域として画像処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ジオラマ風の特殊な画像をどんなユーザでも容易に撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1におけるデジタル信号処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1の撮像装置における画像合成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3の画像合成処理の具体例を示す図である。
【図5】図3のステップS301における画像合成処理の領域設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】動き検出領域を元にした画像合成領域設定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【0012】
光学系101は、被写体から入射した光を撮像素子103上に結像させる光学レンズユニットであり、露出機構やズーム機構、フォーカス機構、光学式手振れ補正機構等を備える。光学系制御部102は、光学系101内の露出機構やズーム機構、フォーカス機構、光学式ブレ補正機構等を駆動制御する制御部である。
【0013】
撮像素子103は、結像させた光学像を電気信号に変換して、アナログ信号処理部105に出力する。撮像系制御部104は、撮像素子103を駆動制御する制御部である。
【0014】
アナログ信号処理部105は、撮像素子103からの出力信号に対してクランプ、ゲイン等の処理を行い、アナログ/デジタル(A/D)変換部106に出力する。A/D変換部106は、アナログ信号処理部105から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換してデジタル信号処理部107に出力する。本実施形態では、光学系101からA/D変換部106までを含めて撮像手段とし、撮像装置は、撮像手段から出力された画像データを単独または連続して複数フレーム記録することで静止画及び動画を撮影可能としている。
【0015】
デジタル信号処理部107は、A/D変換されたデジタル信号から画像データを生成し、現像処理を行う。デジタル信号処理部107では、後述するが、撮影画像について一部の領域にぼかしの画像処理を行う機能を有する。
【0016】
内部記憶部108は、デジタル信号処理部107にて画像データを生成する際に一時的に画像データを格納する。
【0017】
インターフェース(I/F)部109は、デジタル信号処理部107で生成された画像データを保存するための外部記憶装置(不図示)と接続するインターフェースである。画像表示部110は、生成された画像データを表示する電子式ファインダ(EVF)としての機能を有する。
【0018】
動き検出部111は、EVF表示画像において、連続する複数フレーム間の差分を取るなどにより、撮影画像中の動きのあった領域を検出する。なお、図示例では、本発明に関連する機能部のみを記載しており、他の機能部については省略されている。
【0019】
図2は、図1におけるデジタル信号処理部107の概略構成を示すブロック図である。
【0020】
デジタル信号処理部107において、入力された画像データは、輝度信号処理を施す輝度信号処理部201と色信号処理を施す色信号処理部202を経て合成画像生成部203に入力される。内部記憶部108は、合成画像生成時の画像データの一時記憶等に使われるほか、ライブ画像を画像表示部110に表示するEVF動作時においても使われる。また、画像圧縮部204にて圧縮して出力された画像データは、I/F部109を介して外部記憶装置(不図示)に保存される。
【0021】
合成画像生成部203は、入力された画像データに対して画像の縮小処理をする画像縮小部205と、縮小処理された画像データに対して拡大処理をする画像拡大部206と、複数の処理画像を合成するための画像合成部207から構成される。合成画像生成部203は、縮小処理時、拡大処理時、画像合成処理時に必要に応じて内部記憶部108に画像データを一時記憶する。
【0022】
次に、図1の撮像装置の撮影モード時における画像合成処理の流れについて説明する。
【0023】
図3は、図1の撮像装置における画像合成処理の流れを示すフローチャートである。図4は、図3の画像合成処理の具体例を示す図である。
【0024】
本実施形態では、一例として、画像上の解像感のあるくっきりした領域(ボケていない領域。以下、「くっきり領域」と呼ぶ)から離れるにつれてボケていく画像を生成する場合の画像合成処理について説明する。
【0025】
ステップS301では、合成画像生成部203による画像合成処理の領域設定処理が実行される。本処理の詳細については図5のフローを参照して詳細に説明する。
【0026】
ステップS302では、合成画像生成部203は、ステップS301で設定されたぼかし量に応じて、縮小処理のループ回数を設定する。
【0027】
次に、ステップS303では、合成画像生成部203は、縮小前の画像データを内部記憶部108へ一時的に記憶すると共に、画像縮小部205により所定の縮小率で画像データの縮小処理を行う。
【0028】
ステップS304では、合成画像生成部203は、ステップS302で設定されたループ回数に達したか否かを判定し、設定されたループ回数を満たすまでステップS303の縮小処理を繰り返し行う。これにより、例えば、図4に示すように、元画像Aとループ回数枚の画像サイズの異なる縮小画像a1,a2,a3が生成される。なお、図4に示す例では、画像中央部の帯状の領域がくっきり領域と設定され、処理ループ回数が3回、画像の縮小率が1/2に設定されているものとする。
【0029】
ステップS305では、合成画像生成部203は、画像拡大部206により、最も縮小された画像、若しくはステップS306で貼り付け処理された画像に対して、ステップS303の縮小処理における画像の縮小率の逆数となる拡大率にて画像の拡大処理を行う。
【0030】
次に、ステップS306では、合成画像生成部203は、拡大処理された画像(例えば図4の拡大画像b1)と同サイズの縮小画像(例えば図4の縮小画像a2)を内部記憶部108から読み出す。そして、合成画像生成部203は、ステップS301で縮小画像別に設定された切り出し幅で同サイズの縮小画像から帯状の領域画像を切り出し、拡大処理された画像に貼り付ける。このとき、合成画像生成部203は画像切り出し手段として機能する。切り出された画像の貼り付け処理は、くっきり領域を中心として行われる(図4参照)。例えば、拡大画像b1に切り出し画像b2が貼り付けられて画像b3が生成される。
【0031】
ステップS307では、合成画像生成部203は、ステップS302で設定されたループ回数に達したか否かを判定し、設定されたループ回数を満たすまでステップS305の拡大処理及びステップS306の切り出し&貼り付け処理を繰り返し行う。これにより、例えば、図4に示すように、元画像Aと同じ画像サイズの合成画像Bが得られる。
【0032】
上記処理により画像の縮小処理及び画像の拡大処理と画像の貼り付けをそれぞれ複数回繰り返し行い、その処理回数によってぼかし量を変化させた画像を得ることができる。例えば、図4に示す合成画像Bでは、元画像上の解像感のあるくっきり領域が領域401であり、領域401から離れるにつれて、ややぼかした領域402、さらにぼかした領域403、最もぼかした領域404となる。これにより、くっきり領域以外の領域がぼかし領域として画像処理される。
【0033】
なお、図4では、簡略化のために、各領域の境界部がはっきりとした単純な貼り付け処理による合成画像を示しているが、境界部が目立たないように重み付けを考慮して貼り付け処理を行うことが好ましい。
【0034】
図5は、図3のステップS301における画像合成処理の領域設定処理の詳細を示すフローチャートである。図6は、動き検出領域を元にした画像合成領域設定を説明するための図である。
【0035】
ステップS501では、合成画像生成部203は、画像合成時の領域設定がなされているか否かを判定する。領域設定では、例えば、ユーザにより画像上のどの領域をくっきり領域とするか等が設定される。ステップS501の判定結果から領域設定がされていないと判定した場合にはステップS502へ進み、合成画像生成部203は、画像合成時の領域設定をデフォルト設定にする。デフォルト設定は、例えば、くっきり領域の中心位置は画像中央、くっきり領域幅は画像の高さ(縦方向)の1/5などとして、予め保存されている。
【0036】
ステップS503では、合成画像生成部203は、動き検出部111により撮影画像から動きが検出されたか否かを判定する。その結果、動きが検出されたと判定したときは、ステップS506へ進む一方、動きが検出されていないと判定したときは、ステップS504へ進む。
【0037】
ステップS504では、合成画像生成部203は、所定の回数連続して動きが検出されていないか否かを判定する。その結果、所定回数連続して動きが検出されていないと判定した場合、シーン変化の可能性などを考慮してステップS502へ進み、合成画像生成部203は領域設定をデフォルト設定に変更する。一方、撮影画像から動きが検出されていない状態が所定の回数未満の場合には、合成画像生成部203は、領域設定を維持する(ステップS505)。
【0038】
ステップS506では、合成画像生成部203は、動き検出部111により検出された動き検出領域が所定のサイズよりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合はステップS502へ進み、領域設定をデフォルト設定に変更する。これは、動き検出領域に基づいて領域設定を行っても、画面いっぱい大写しで被写体を写している場合やぶれなどにより効果的な画像の撮影が困難になると考えられるためである。
【0039】
ステップS507では、合成画像生成部203は、動き検出部111により検出された動き検出領域を元に画像合成処理に関する領域設定を行う。例えば、図6に示すように、動き検出領域601を含むようにくっきり領域602の位置と幅が設定される。
【0040】
ステップS508では、合成画像生成部203は、設定されたくっきり領域602の位置と幅及び図4のステップS302で設定されるループ回数に応じて、ぼかし領域の幅即ちステップS306おける各縮小画像から切り出す帯状の領域の切り出し幅を決定する。なお、切り出し幅の設定により、ぼかし処理領域の急峻さを変化させることができる。
【0041】
動き検出領域をくっきり領域として撮影する理由としては以下がある。すなわち、俯瞰シーンなどの逆ティルト撮影効果に適したシーンでは、人物や乗り物などの動きがある(小さな)被写体をくっきり領域に設定して主被写体として撮影すると、より効果的なジオラマ風の特殊効果画像を撮影することができるためである。
【0042】
以上説明したように、本発明を適用した撮像装置によれば、ジオラマ風の特殊効果画像を、ティルトシフトレンズを使用することなく、どんなユーザでも容易に撮影することが可能となる。
【0043】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0044】
101 光学系
102 光学系制御部
103 撮像素子
104 撮像系制御部
105 アナログ信号処理部
106 A/D変換部
107 デジタル信号処理部
108 内部記憶部
109 I/F
110 画像表示部
111 動き検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する撮像手段と、前記撮像手段による撮影画像について一部の領域にぼかしの画像処理を行う画像処理手段とを備える撮像装置において、
前記撮影画像中の被写体の動きを検出する動き検出手段を備え、
前記画像処理手段は、前記撮影画像に対して、前記動き検出手段により検出された領域を含む所定の領域をくっきり領域とし、当該くっきり領域以外の領域を前記ぼかしの画像処理を行うぼかし領域として画像処理することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記動き検出手段により検出された領域の位置およびサイズにより、前記くっきり領域の位置および幅を決定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、
前記撮影画像の元画像及び縮小された画像に対して縮小処理を行う画像縮小手段と、
前記元画像及び縮小された画像から帯状の領域を切り出す画像切り出し手段と、
前記縮小された画像を拡大する画像拡大手段と、
前記拡大された画像に前記切り出された帯状の領域画像を貼り付けて画像合成を行う画像合成手段とを備え、
前記画像合成手段は、画像合成の処理回数によって前記ぼかし領域のぼかし量を変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
被写体を撮影する撮像手段と、前記撮像手段による撮影画像について一部の領域にぼかしの画像処理を行う画像処理手段とを備える撮像装置の制御方法において、
前記撮影画像中の被写体の動きを検出する動き検出工程と、
前記撮影画像の元画像及び縮小された画像に対して縮小処理を行う画像縮小工程と、
前記元画像及び縮小された画像から帯状の領域を切り出す画像切り出し工程と、
前記縮小された画像を拡大する画像拡大工程と、
前記拡大された画像に前記切り出された帯状の領域画像を貼り付けて画像合成を行う画像合成工程と、
前記動き検出工程にて検出された領域を含む帯状の領域をくっきり領域として切り出し、前記画像合成工程にて処理を複数回繰り返すことにより前記くっきり領域以外の領域を前記ぼかしの画像処理を行うぼかし領域として画像処理する画像処理工程とを備えることを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の制御方法を撮像装置に実行させるためのコンピュータに読み取り可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114633(P2012−114633A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261207(P2010−261207)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】