説明

撮像装置及び撮像システム

【課題】天候等の影響によらずに常に画質が一定レベル以上の画像を撮像することが可能な撮像装置を得る。
【解決手段】撮像装置としての監視装置3は、撮像部12と、撮像部12による撮像のための補助光を照射する照射部13A,13Bと、照射部13A,13Bを制御する制御部14と、を備え、照射部13A,13Bは、第1の波長帯の赤外光を発光する照射部13Aと、第1の波長帯よりも大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する照射部13Bと、を有し、制御部14は、補助光を得るための照射部として、照射部13A及び照射部13Bを選択的に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによって所定の監視エリアを撮影することにより、監視エリアへの侵入者を検知する監視装置が広く実用化されている。このような監視装置においては、一般的に、監視カメラによって撮影した監視エリアの映像をモニタに表示し、表示された映像を監視者が目視することによって、監視エリアへの侵入者が監視される。また、夜間における監視を行うべく、監視エリアに向けて補助光を照射するための補助光照射器を備えた監視装置も実用化されている。
【0003】
下記特許文献1には、補助光として赤外光を照射する照明機器を備えた撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4310309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
監視カメラによって監視エリアへの侵入者を監視する場合には、侵入者をできるだけ遠方で発見するのが好ましい。しかしながら、補助光は天候等の影響を受けるため、その影響によって撮像画像の画質が低下して遠方の侵入者を発見しにくい状況が生じ得る。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、天候等の影響によらずに常に画質が一定レベル以上の画像を撮像することが可能な撮像装置及び撮像システムを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る撮像装置は、撮像部と、前記撮像部による撮像のための補助光を照射する照射部と、前記照射部を制御する制御部と、を備え、前記照射部は、第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、第1の波長帯よりも大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子と、を有し、前記制御部は、前記補助光を得るための発光素子として、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子を選択的に使用することを特徴とするものである。
【0008】
第1の態様に係る撮像装置によれば、照射部は、第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、第1の波長帯よりも大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子とを有する。そして、制御部は、補助光を得るための発光素子として、第1の発光素子及び第2の発光素子を選択的に使用する。赤外光には、水分に吸収されやすい特定の波長帯(例えば940nm帯)が存在する。太陽光に含まれる様々な波長成分のうちこの特定の波長帯の成分は、上空の大気中の水分によって多くが吸収され、地表への到達量が少ない。従って、この特定の波長帯である第1の波長帯の赤外光を補助光として使用した場合には、ノイズとなる太陽光に含まれる同一成分の赤外光の影響が小さいため、低ノイズの画像を撮像することができる。しかも、940nm帯は人間の目に見えない不可視の赤外光であるため、侵入者によって監視カメラの存在を察知されにくいというメリットを享受することができる。一方、降雨時や霧の発生時等の湿度の高い天候時には第2の発光素子を選択し、大気中の水分によって比較的吸収されにくい第2の波長帯(例えば850nm帯)の赤外光を補助光として使用することにより、十分な照射到達距離を確保することができる。その結果、対象物からの反射光の光量が不足するという事態を回避できるため、十分な明るさの画像を撮像することが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る撮像装置は、第1の態様に係る撮像装置において特に、前記制御部は、前記第1の発光素子を使用し、所定の第1条件を満たした場合に前記第2の発光素子に切り換えることを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係る撮像装置によれば、制御部は、第1の発光素子を通常使用(換言すればデフォルトで使用)する。第1の発光素子を通常使用することにより、降雨時や霧の発生時等以外の通常時には、低ノイズの画像を撮像することができ、また、撮像装置を監視カメラの用途に使用する場合には、侵入者によって監視カメラの存在を察知されにくいというメリットを享受することができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る撮像装置は、第2の態様に係る撮像装置において特に、前記第1条件は、前記第1の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値未満となったこと、前記撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が検出されたこと、湿度計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値以上となったこと、及び、雨量計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境で降雨が検出されたこと、の少なくとも一つを含むことを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係る撮像装置によれば、第1の発光素子を使用した場合における撮像部での受光強度が所定値未満となったこと、撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が検出されたこと、湿度計を用いた計測結果に基づいて、撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値以上となったこと、及び、雨量計を用いた計測結果に基づいて、撮像装置が設置されている環境で降雨が検出されたこと、の少なくとも一つを、第1の発光素子から第2の発光素子への切り換えの条件とする。切り換えの条件をこのように設定することにより、第1の発光素子よりも第2の発光素子を使用した方が望ましい状況に天候が変化した場合(例えば雨が降り始めた場合)等に、補助光の光源として使用する発光素子を第1の発光素子から第2の発光素子に適切に切り換えることが可能となる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る撮像装置は、第2又は第3の態様に係る撮像装置において特に、前記制御部は、前記第2の発光素子を使用している場合において、所定の第2条件を満たした場合に前記第1の発光素子に切り換えることを特徴とするものである。
【0014】
第4の態様に係る撮像装置によれば、制御部は、第2の発光素子を使用している場合において、所定の第2条件を満たした場合に第1の発光素子に切り換える。従って例えば、降雨によって第1の発光素子から第2の発光素子に切り換えられ、その後に雨が止んだ場合に、再び第1の発光素子に切り換えることが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る撮像装置は、第4の態様に係る撮像装置において特に、前記第2条件は、前記第1の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、前記第2の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、前記撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が確認されないこと、湿度計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値未満となったこと、及び、雨量計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境で降雨が確認されないこと、の少なくとも一つを含むことを特徴とするものである。
【0016】
第5の態様に係る撮像装置によれば、第1の発光素子を使用した場合における撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、第2の発光素子を使用した場合における撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が検出されないこと、湿度計を用いた計測結果に基づいて、撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値未満となったこと、及び、雨量計を用いた計測結果に基づいて、撮像装置が設置されている環境で降雨が検出されないこと、の少なくとも一つを、第2の発光素子から第1の発光素子への切り換えの条件とする。切り換えの条件をこのように設定することにより、第2の発光素子よりも第1の発光素子を使用した方が望ましい状況に天候が変化した場合(例えば雨が止んだ場合)等に、補助光の光源として使用する発光素子を第2の発光素子から第1の発光素子に適切に切り換えることが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る監視システムは、撮像装置と、前記撮像装置による撮像のための補助光を照射する照射装置と、前記照射装置を制御する制御装置と、を備え、前記照射装置は、第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、第1の波長帯よりも大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子と、を有し、前記制御装置は、前記補助光を得るための発光素子として、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子を選択的に使用することを特徴とするものである。
【0018】
第6の態様に係る撮像システムによれば、照射装置は、第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、第1の波長帯よりも大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子とを有する。そして、制御装置は、補助光を得るための発光素子として、第1の発光素子及び第2の発光素子を選択的に使用する。従って、湿度の低い天候時には第1の発光素子を選択し、大気中の水分によって比較的吸収されやすい第1の波長帯(例えば940nm帯)の赤外光を補助光として使用することにより、低ノイズの画像を撮像することができる。また、撮像システムを監視カメラシステムの用途に使用する場合には、侵入者によって監視カメラの存在を察知されにくいというメリットを享受することができる。一方、湿度の高い天候時には第2の発光素子を選択し、大気中の水分によって比較的吸収されにくい第2の波長帯(例えば850nm帯)の赤外光を補助光として使用することにより、十分な照射到達距離を確保することができる。その結果、対象物からの反射光の光量が不足するという事態を回避できるため、十分な明るさの画像を撮像することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、天候等の影響によらずに常に画質が一定レベル以上の画像を撮像することが可能な撮像装置及び撮像システムを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る監視装置の使用状況の一例を示す図である。
【図2】監視装置の外観を模式的に示す図である。
【図3】監視装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】撮像部の構成を簡略化して示す図である。
【図5】制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図6】選択部による選択処理を示すフローチャートである。
【図7】監視装置と同等の機能を備える監視システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る監視装置3(撮像装置)の使用状況の一例を示す図である。通信基地局1が山中に設置されており、通信基地局1の周囲はフェンス2で取り囲まれている。この例において、監視装置3は、所定の撮影エリアとして、フェンス2を含む監視エリア4を撮影することにより、フェンス2を乗り越えて通信基地局1へ侵入しようとする侵入者を監視する用途で使用される。なお、図1の例では通信基地局1に一つの監視装置3のみが設置されているが、通信基地局1の周囲を死角無く監視するために、複数の監視装置3が設置されてもよい。
【0023】
図2は、監視装置3の外観を模式的に示す図である。また、図3は、監視装置3の機能構成を示すブロック図である。図3を参照して、監視装置3は、監視エリア4の画像を撮像するための撮像部12と、撮像部12による撮像のための補助光を照射する照射部13A,13Bと、監視装置3が設置されている周囲環境での湿度を計測する湿度計18と、監視装置3が設置されている周囲環境での雨量を計測する雨量計19と、照射部13A,13Bを制御する制御部14とを備えて構成されている。
【0024】
図4は、撮像部12の構成を簡略化して示す図である。撮像部12は、複数のレンズを有する光学系30と、行列状に配列された複数の受光素子を有するCCD等の受光素子部31とを含んで構成されている。
【0025】
撮像の対象物からの反射光L1は、光学系30によって受光素子部31上に導光される。受光素子部31を構成する各受光素子は、反射光L1の受光強度に応じた量の電荷を蓄積し、蓄積した電荷を電流として取り出すことにより電気信号D1を出力する。これにより、対象物の画像が形成される。撮像部12によって撮影された画像は、通信基地局1内又は遠隔地の監視センタ内に設置された液晶ディスプレイ等の表示部32に表示される。
【0026】
図2,3を参照して、照射部13Aは、LED等の複数の発光素子を備えて構成されており、例えば940nm帯の赤外光を補助光として照射する。太陽光に含まれる様々な波長成分のうち940nm帯の成分は、上空の大気中の水分によって多くが吸収され、地表への到達量が少ない。従って、この940nm帯の赤外光を補助光として使用することにより、ノイズとなる太陽光に含まれる同一成分の赤外光の影響が小さいため、低ノイズの画像を撮像することができる。しかも、940nm帯は人間の目に見えない不可視の赤外光であるため、侵入者によって監視装置3の存在を察知されにくいというメリットもある。
【0027】
水分による吸収率が高い赤外光としては、940nm帯のほかに、1130nm帯等の赤外光を使用することもできる。しかし、940nm帯の赤外光は、1130nm帯の赤外光よりも発光効率が高く、また、シリコン基板を用いた汎用的なCCD等によって受光可能であるため、940nm帯の赤外光を使用することが望ましい。
【0028】
また、照射部13Bは、LED等の複数の発光素子を備えて構成されており、例えば850nm帯の赤外光を補助光として照射する。850nm帯の赤外光は、940nm帯の赤外光と比較して、大気中の水分による吸収率が低い。そのため、降雨時や霧の発生時等の湿度が高い状況下においては、850nm帯の赤外光を補助光として使用することにより、940nm帯の赤外光を使用する場合と比較して、長い照射到達距離を確保することができる。
【0029】
水分による吸収率が940nm帯よりも低い赤外光としては、850nm帯に限らず、様々な波長帯の赤外光を使用することができる。但し、850nm帯のLEDは汎用的に使用されており、大量に生産されているため、安価に入手できる。従って、監視装置3の製造コストを削減できるため、850nm帯の赤外光を使用することが望ましい。
【0030】
850nm帯は人間の目に見える可視の赤外光ではあるが、降雨時や霧の発生時等の視界の悪い状況下で使用するため、監視装置3の存在は侵入者によって察知されにくい。また、850nm帯の赤外光を使用することによって仮に侵入者が監視装置3の存在を察知したとしても、監視装置3の存在は侵入者に対する抑止力となるため、監視装置3の存在が察知されることが必ずしもデメリットというわけではない。
【0031】
図2を参照して、撮像部12のレンズと、照射部13A,13Bとが、筐体11の前面に取り付けられている。また、本実施の形態では、検出器としての湿度計18及び雨量計19が、筐体11の上面に取り付けられている。図3に示した制御部14は、筐体11の内部に配置されている。
【0032】
監視装置3は広角カメラを用いて構成されており、この場合、撮像部12は、監視エリア4の全体を撮影可能なように、視野が固定されている。またこの場合、監視エリア4の全体に対して補助光を照射可能なように、照射部13A,13Bによる補助光の照射範囲が固定されている。
【0033】
但し、監視装置3は、パンチルト機能及びズーム機能を搭載したPTZカメラを用いて構成されていてもよい。この場合、変化する撮像部12の撮影範囲に補助光を照射可能なように、照射部13A,13Bによる補助光の照射範囲を、撮像部12の撮影範囲に応じて可変に制御してもよい。
【0034】
本実施の形態において、監視装置3は、夜間における通信基地局1への侵入者を監視する用途で使用され、撮像部12は、照射部13A,13Bから照射された赤外光に対する対象物からの反射光を受光することによって、対象物を撮像する。
【0035】
なお、夜間のみならず日中における監視も可能であり、この場合には、撮像部12は、太陽光に対する対象物からの反射光を受光することによって、対象物を撮像する。
【0036】
図5は、図3に示した制御部14の機能構成を示すブロック図である。制御部14は、判定部41〜44及び選択部45を有して構成されている。
【0037】
判定部41は、撮像部12から入力される撮像エリア4の画像データS1に基づいて、撮像部12での受光強度(例えば全画像領域に関する平均輝度値)と、予め設定された所定値とを比較する。そして、その比較の結果を信号S11として選択部45に入力する。当該所定値は、例えば、照射部13Aを使用するよりも照射部13Bを使用した方が撮像画像の平均輝度値が高くなる輝度の境界値であり、実験又はシミュレーション等によって予め適正値が設定される。
【0038】
判定部42は、撮像部12から入力される撮像エリア4の画像データS1に基づいて、エッジ抽出による雨滴検出等の画像解析を行うことにより、降雨の有無を判定することができる。そして、その判定の結果を信号S12として選択部45に入力する。
【0039】
判定部43は、湿度計18から入力される湿度計測値に関する湿度データS2に基づいて、監視装置3が設置されている周囲環境での湿度と、予め設定された所定値とを比較する。そして、その比較の結果を信号S13として選択部45に入力する。当該所定値は、例えば、照射部13Aを使用するよりも照射部13Bを使用した方が撮像画像の平均輝度値が高くなる湿度の境界値であり、実験又はシミュレーション等によって予め適正値が設定される。
【0040】
判定部44は、雨量計19から入力される雨量計測値に関する雨量データS3に基づいて、監視装置3が設置されている周囲環境での降雨の有無を判定する。そして、その判定の結果を信号S14として選択部45に入力する。
【0041】
選択部45は、信号S11〜S14に基づいて、照射部13A及び照射部13Bの一方を選択し、その選択の結果を信号S20として出力する。図6は、選択部45による選択処理を示すフローチャートである。この選択処理は、定期的に実行される。本実施の形態に係る監視装置3は、主に天候の変化に伴って照射部13A,13Bの切り換えを行うものであるため、選択処理の実行間隔はある程度長い時間間隔(例えば30分)に設定すればよい。あるいは、信号S11〜S14に基づいて何等かの天候の変化が検知された場合に、選択処理を実行してもよい。
【0042】
選択部45は、デフォルトでは照射部13Aを選択する。つまり、降雨時や霧の発生時等以外の通常時(晴天時、雲天時等)には、照射部13Aを選択する。
【0043】
まずステップP01において選択部45は、その時点で照射部13Aが選択されているか否かを判定する。
【0044】
照射部13Aが選択されている場合(つまりステップP01における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP02において選択部45は、照射部13Aから照射部13Bに切り換えるための条件(以下「第1条件」と称す)を満たすか否かを判定する。
【0045】
具体的には、選択部45は、判定部41〜44からそれぞれ入力される信号S11〜S14を参照することにより、画像データS1に基づいて撮像部12での受光強度が所定値未満である場合、画像データS1に基づいて降雨が検出された場合、湿度データS2に基づいて湿度が所定値以上である場合、雨量データS3に基づいて降雨が検出された場合、又はこれらのうち少なくとも二つの事象が発生している場合に、第1条件を満たすと判定する。
【0046】
第1条件を満たす場合(つまりステップP02における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP03において選択部45は、照射部13Bを選択し、選択処理を終了する。
【0047】
一方、第1条件を満たさない場合(つまりステップP02における判定結果が「NO」である場合)は、選択部45は、照射部13Aの選択を維持し、選択処理を終了する。
【0048】
ステップP01において、照射部13Bが選択されている場合(つまりステップP01における判定結果が「NO」である場合)は、次にステップP04において選択部45は、照射部13Bから照射部13Aに切り換えるための条件(以下「第2条件」と称す)を満たすか否かを判定する。
【0049】
具体的には、選択部45は、判定部41〜44からそれぞれ入力される信号S11〜S14を参照することにより、画像データS1に基づいて撮像部12での受光強度が所定値以上である場合、画像データS1に基づいて降雨が検出されない場合、湿度データS2に基づいて湿度が所定値未満である場合、雨量データS3に基づいて降雨が検出されない場合、又はこれらのうち少なくとも二つの事象が発生している場合に、第2条件を満たすと判定する。また、選択処理において一時的に照射部13Aを使用することによって撮像部12での受光強度を測定し、当該受光強度が所定値以上であることを、上記第2条件の一つに含めてもよい。
【0050】
第2条件を満たす場合(つまりステップP04における判定結果が「YES」である場合)は、次にステップP05において選択部45は、照射部13Aを選択し、選択処理を終了する。
【0051】
一方、第2条件を満たさない場合(つまりステップP04における判定結果が「NO」である場合)は、選択部45は、照射部13Bの選択を維持し、選択処理を終了する。
【0052】
図7は、監視装置3と同等の機能を備える監視システム10(撮像システム)を示す図である。撮像部12に相当する撮像装置22と、照射部13Aに相当する照射装置23Aと、照射部13Bに相当する照射装置23Bと、制御部14に相当する制御装置24と、湿度計18及び雨量計19とが、フレーム21に取り付けられている。照射装置23Aは、大気中の水分によって比較的吸収されやすい波長帯(例えば940nm帯)の赤外光を発光する。照射装置23Bは、大気中の水分によって比較的吸収されにくい波長帯(例えば850nm帯)の赤外光を発光する。制御装置24は、照射装置23A,23Bを選択的に使用する。このように本発明は、一つの筐体内に全ての機能を集約した単体の装置として構成してもよく、あるいは、複数の機能を複数の装置に分散したシステムとして構成してもよい。
【0053】
なお、図5では制御部14が四つの判定部41〜44を備える例について述べたが、必ずしも全ての判定部41〜44を備える必要はなく、これらのうち一部の判定部は省略することもできる。また、判定部43,44を省略する場合には、湿度計18及び雨量計19も省略することができる。
【0054】
本実施の形態に係る監視装置3(及び監視システム10)によれば、大気中の水分によって比較的吸収されやすい波長帯(940nm帯)の赤外光を発光する発光素子を有する照射部13Aと、大気中の水分によって比較的吸収されにくい波長帯(850nm帯)の赤外光を発光する発光素子を有する照射部13Bとを備える。そして、制御部14は、補助光を得るための照射部として、照射部13A及び照射部13Bを選択的に使用する。従って、湿度の低い天候時には照射部13Aを選択し、大気中の水分によって比較的吸収されやすい波長帯の赤外光を補助光として使用することにより、低ノイズの画像を撮像することができる。また、撮像装置3を監視カメラの用途に使用する場合には、侵入者によって監視カメラの存在を察知されにくいというメリットを享受することができる。一方、湿度の高い天候時には照射部13Bを選択し、大気中の水分によって比較的吸収されにくい波長帯の赤外光を補助光として使用することにより、十分な照射到達距離を確保することができる。その結果、対象物からの反射光の光量が不足するという事態を回避できるため、十分な明るさの画像を撮像することが可能となる。
【0055】
また、制御部14は、照射部13Aを通常使用(換言すればデフォルトで使用)する。照射部13Aを通常使用することにより、降雨時や霧の発生時等以外の通常時には、低ノイズの画像を撮像することができ、また、撮像装置3を監視カメラの用途に使用する場合には、侵入者によって監視カメラの存在を察知されにくいというメリットを享受することができる。
【0056】
また、照射部13Aを使用した場合における撮像部12での受光強度が所定値未満となったこと、撮像部12による撮像画像に基づいて降雨が検出されたこと、湿度計18を用いた計測結果に基づいて、監視装置3が設置されている環境での湿度が所定値以上となったこと、及び、雨量計19を用いた計測結果に基づいて、監視装置3が設置されている環境で降雨が検出されたこと、の少なくとも一つを、照射部13Aから照射部13Bへの切り換えの条件(第1条件)とする。第1条件をこのように設定することにより、照射部13Aよりも照射部13Bを使用した方が望ましい状況に天候が変化した場合(例えば雨が降り始めた場合)等に、補助光の光源として使用する照射部を照射部13Aから照射部13Bに適切に切り換えることが可能となる。
【0057】
また、制御部14は、照射部13Bを使用している場合において、所定の第2条件を満たした場合に照射部13Aを使用する。従って例えば、降雨によって照射部13Aから照射部13Bに切り換えられ、その後に雨が止んだ場合に、再び照射部13Aに切り換えることが可能となる。
【0058】
また、照射部13Aを使用した場合における撮像部12での受光強度が所定値以上となったこと、照射部13Bを使用した場合における撮像部12での受光強度が所定値以上となったこと、撮像部12による撮像画像に基づいて降雨が検出されないこと、湿度計18を用いた計測結果に基づいて、監視装置3が設置されている環境での湿度が所定値未満となったこと、及び、雨量計19を用いた計測結果に基づいて、監視装置3が設置されている環境で降雨が検出されないこと、の少なくとも一つを、照射部13Bから照射部13Aへの切り換えの条件(第2条件)とする。第2条件をこのように設定することにより、照射部13Bよりも照射部13Aを使用した方が望ましい状況に天候が変化した場合(例えば雨が止んだ場合)等に、補助光の光源として使用する照射部を照射部13Bから照射部13Aに適切に切り換えることが可能となる。
【0059】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
3 監視装置
10 監視システム
12 撮像部
13A,13B 照射部
14 制御部
18 湿度計
19 雨量計
22 撮像装置
23A,23B 照射装置
24 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
前記撮像部による撮像のための補助光を照射する照射部と、
前記照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記照射部は、
第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、
前記第1の波長帯より大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子と、
を有し、
前記制御部は、前記補助光を得るための発光素子として、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子を選択的に使用する、撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の発光素子を使用し、所定の第1条件を満たした場合に前記第2の発光素子に切り換える、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1条件は、
前記第1の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値未満となったこと、
前記撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が検出されたこと、
湿度計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値以上となったこと、及び、
雨量計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境で降雨が検出されたこと、
の少なくとも一つを含む、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の発光素子を使用している場合において、所定の第2条件を満たした場合に前記第1の発光素子に切り換える、請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2条件は、
前記第1の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、
前記第2の発光素子を使用した場合における前記撮像部での受光強度が所定値以上となったこと、
前記撮像部による撮像画像に基づいて、降雨が検出されないこと、
湿度計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境での湿度が所定値未満となったこと、及び、
雨量計を用いた計測結果に基づいて、前記撮像装置が設置されている環境で降雨が検出されないこと、
の少なくとも一つを含む、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像装置と、
前記撮像装置による撮像のための補助光を照射する照射装置と、
前記照射装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記照射装置は、
第1の波長帯の赤外光を発光する第1の発光素子と、
前記第1の波長帯より大気中の水分によって吸収されにくい第2の波長帯の赤外光を発光する第2の発光素子と、
を有し、
前記制御装置は、前記補助光を得るための発光素子として、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子を選択的に使用する、撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109768(P2012−109768A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256590(P2010−256590)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】