説明

撮像装置及び撮像方法並びに映像信号処理プログラム

【課題】撮影現場においてポストプロダクション処理をシミュレーションする。
【解決手段】通常時には、パラメータ設定手段1bが選択する出力用補正パラメータに基づいて映像信号のガンマ補正処理が行われている。ポストプロダクション処理のシミュレーションが選択されると、パラメータ設定手段1bは、シミュレーション用ガンマ補正パラメータを選択し、ガンマ補正パラメータとして設定する。ガンマ補正処理手段1cは、シミュレーション用ガンマ補正パラメータに基づいて映像信号にガンマ補正を施す。シミュレーション用ガンマ補正パラメータによって補正された補正後映像信号は、表示用信号変換手段1dによって表示用信号に変換される。これを表示装置に表示させることにより、ポストプロダクション処理が施された映像を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置及び撮像方法並びに映像信号処理プログラムに関し、特に撮像素子に取り込まれた映像信号に所定の映像信号処理を施して記録用や表示用に変換する撮像装置及び撮像方法、並びにその撮像装置及び撮像方法に用いられる映像信号処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影された映像素材を含む様々な映像シーンが連結して構成される映像コンテンツの作成工程では、コンテンツを構成するシーンを撮影するための撮影計画、各シーンの撮影、コンテンツの編集という作業が順次行われる。これらの作業を効率的に行うため、コンテンツ作成を支援するシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のコンテンツ作成システムによれば、撮影計画工程では、撮影支援情報を作成して外部記録媒体に出力し、撮影実行時に参照できるようにしておく。撮影時は、撮像装置によって撮影支援情報に従って映像を撮影する。そして、編集工程では、撮影された映像を様々に編集し、編集後映像を作成する。ここで行われる撮影後の処理をポストプロダクション処理(または、後処理)と呼ぶ。この編集後映像は、撮影支援情報、撮影映像、及び編集に用いた補正パラメータを含む編集情報とともに、データベースに蓄積して管理する。データベースに蓄積されている編集情報は、次回以降のコンテンツ作成時に利用することができる。ポストプロダクション処理では、撮影時に設定されるカメラ設定値と、映像を調整する効果補正値との2種類の補正パラメータが用いられる。カメラ設定値は、撮影時における設定値で、たとえば、露出、ホワイトバランス、ガンマ補正、カラー調整など、カメラの各機能を設定する値を含む。一方、効果補正値は、所望の画質を得るために撮影後の映像の補正に用いられる設定値である。たとえば、露出、ホワイトバランス、ガンマ補正、3D効果、トリミング、ズームなど、映像の効果に関する属性を調整する値を含む。ポストプロダクション処理時には、ユーザが操作入力部を介して設定した補正パラメータ値や、データベースに蓄積されている過去の編集情報に設定されている補正パラメータ値などが使われる。
【特許文献1】特開2007−43373号公報(段落番号〔0076〕〜〔0113〕、図14〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンテンツ作成の工程では、効果補正のための補正パラメータは、撮影後のポストプロダクション処理において設定されるため、撮影時には、処理が施された映像を確認できないという問題点があった。上記の特許文献1のコンテンツ作成装置でも、補正パラメータは、編集を行う情報処理装置が管理しており、撮像装置には通知されない。
【0005】
しかし、従来から、ポストプロダクション処理が施された映像を撮影時にシミュレーションしたいという要望があった。たとえば、補正パラメータのひとつであるガンマ補正パラメータは、映像のコントラストを調整するトーン加工処理に用いられる。パラメータ値に応じて映像の質感が変化し、撮影後のポストプロダクション処理においてユーザが求める映像表現を決める上での重要な要素となっている。従って、映画撮影の現場などでは、撮影時にポストプロダクション処理によってガンマ補正が施された後の映像を確認しておきたいという要望は強かった。
【0006】
そこで、撮像装置に接続し、撮影された映像にガンマ補正を施して表示させる外部機器があった。しかしながら、撮影機材に加えてこのような外部機器を撮影現場に持ち込まなければならず、不便であった。さらに、このとき設定された補正パラメータを保存・利用することが容易ではなかった。補正パラメータを外部機器から外部記録媒体に出力できたとしても、別装置である撮像装置が生成する映像信号との関連付けは、人が手作業で行わなければならなかった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、撮影現場においてポストプロダクション処理をシミュレーションし、その映像効果を確認することが可能な撮像装置及び撮像方法、並びに映像信号処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記課題を解決するために、ガンマ補正用のパラメータを記憶するパラメータ記憶手段、ガンマ補正パラメータの設定制御を行うパラメータ設定手段、ガンマ補正処理を行うガンマ補正処理手段、及び表示用信号変換手段を有し、撮像素子に取り込まれた映像信号に所定の映像信号処理を施して記録用や表示用に変換する撮像装置が提供される。パラメータ記憶手段は、撮影時の映像信号を外部へ出力するときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後の後処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータとを記憶する。パラメータ設定手段は、外部からの指示入力に基づいて、シミュレーションが設定されたときはシミュレーション用補正パラメータを選択し、シミュレーションが解除されたときは出力用補正パラメータを選択してパラメータ記憶手段から読み出し、シミュレーション時と、それ以外のときのガンマ補正パラメータを切り替えて設定する。ガンマ補正処理手段は、パラメータ設定手段によって設定された出力用補正パラメータまたはシミュレーション用補正パラメータに基づいて、入力された映像信号に対してガンマ補正処理を行う。表示用信号変換手段は、シミュレーションが設定されたときに、シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正が施された映像信号を、表示用信号に変換する。
【0009】
このような撮像装置によれば、シミュレーションが解除されている通常時、パラメータ設定手段は、パラメータ記憶手段に記憶される出力用補正パラメータを選択し、ガンマ補正パラメータに設定している。このとき、ガンマ補正処理手段は、出力用補正パラメータに基づいて、映像信号にガンマ補正を施す。ガンマ補正後の映像信号は、通常、映像記録メディアに記録されて、外部に出力される。ここで、外部からの指示入力によって撮影後の後処理のシミュレーションが設定されると、パラメータ設定手段によってパラメータ記憶手段に記憶されるシミュレーション用補正パラメータが選択され、ガンマ補正パラメータに設定される。ガンマ補正処理手段は、パラメータ設定手段が選択したシミュレーション用補正パラメータに基づいて、映像信号にガンマ補正を施す。シミュレーション用補正パラメータによって補正された補正後映像信号は、表示用信号変換手段によって表示用に変換され、表示用映像信号として外部に出力される。これを表示装置に表示させれば、撮影後の後処理をシミュレーションした映像をモニタすることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、撮像素子に取り込まれた映像信号を所定の映像信号処理を施して記録用や表示用に変換する撮像方法において、パラメータ設定手段が、撮影された映像信号を外部へ出力するときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後の後処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータとを記憶するパラメータ記憶手段から、外部からの指示入力に基づいてシミュレーションが設定されたときはシミュレーション用補正パラメータを選択し、シミュレーションが解除されたときは出力用補正パラメータを選択して読み出し、シミュレーション時と、それ以外のときのガンマ補正パラメータを切り替えて設定するステップと、ガンマ補正処理手段が、パラメータ設定手段によって設定された出力用補正パラメータまたはシミュレーション用補正パラメータに基づいて、入力された映像信号に対しガンマ補正処理を行うステップと、表示用信号変換手段が、シミュレーションが設定されたときに、シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正が施された映像信号を、表示用信号に変換するステップと、を実行することを特徴とする撮像方法、が提供される。
【0011】
このような撮像方法によれば、撮影後の後処理のシミュレーションが設定されると、パラメータ設定手段は、ガンマ補正手段に設定されるガンマ補正パラメータを、通常時の出力用補正パラメータから、シミュレーション用のシミュレーション用補正パラメータに切り替える。ガンマ補正手段は、シミュレーション用補正パラメータに基づいて映像信号の補正処理を行う。補正された映像信号は、表示用信号変換手段によって表示用信号に変換される。この表示用信号を表示装置に表示すれば、シミュレーションによって模擬された映像をモニタすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、通常時の補正に適用される出力用補正パラメータとともに、後処理(ポストプロダクション処理)に適用されるシミュレーション用補正パラメータを記憶しておき、外部からの指示入力に応じて適用するガンマ補正パラメータを切り替える。ポストプロダクション処理のシミュレーションが設定されれば、シミュレーション用補正パラメータに基づいて、映像信号にガンマ補正を施した後、表示用信号に変換する。変換された表示用信号を表示装置に出力させれば、ポストプロダクション処理が施された映像を模擬するシミュレーション映像を撮影時に確認することができる。なお、シミュレーションが指示されないときは、出力用補正パラメータに切り替えられ、映像信号に通常時のガンマ補正が施される。
【0013】
このように、シミュレーションを設定すれば、ガンマ補正パラメータが適宜切り替えられ、ポストプロダクション処理のシミュレーションができる。このとき、シミュレーションのために別途ガンマ補正処理回路を設けたり、ガンマ補正処理を行う装置を用いたりする必要もない。これにより、撮影現場で、簡単にポストプロダクション処理の効果を確認することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に適用される発明の概念図である。本発明に係る撮像装置は、ガンマ補正パラメータを記憶するパラメータ記憶手段1a、処理に適用するガンマ補正パラメータを設定するパラメータ設定手段1b、映像信号にガンマ補正を施すガンマ補正処理手段1c、補正後の映像信号を表示用に変換する表示用信号変換手段1d、映像記録メディア2aに映像信号などを記録する映像データ記録手段1e、及びメタデータ記録メディア2bにメタデータを記録するメタデータ記録手段1fを有する。なお、入力される映像信号は、前段の処理においてデジタル変換されたデジタルデータである。また、上記の各処理手段は、コンピュータが映像信号処理プログラムを実行することにより、その処理機能が実現される。
【0015】
パラメータ記憶手段1aは、通常時、撮影された映像信号を記録メディアに記録したり、出力端子を介して外部へ出力したりするときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後のポストプロダクション処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータと、を記憶する。出力用補正パラメータには、主として画像のダイナミックレンジを確保するためパラメータ値が設定される。一方、シミュレーション用補正パラメータには、ポストプロダクション処理で行われるトーン加工用の補正パラメータの値が設定される。トーン加工では、質感など、所望の映像を得るため、ガンマカーブなどが調整される。シミュレーション用補正パラメータには、主としてガンマカーブを調整するための補正値が設定される。
【0016】
パラメータ設定手段1bは、ポストプロダクション処理のシミュレーションが設定されているか、解除されたかに応じて、ガンマ補正処理手段1cに適用されるガンマ補正パラメータを切り替えて設定する。通常時、すなわち、シミュレーションが解除されているときは、パラメータ記憶手段1aに記憶される出力用補正パラメータを選択し、ガンマ補正処理手段1cに設定する。ポストプロダクション処理のシミュレーションが設定されるときは、パラメータ記憶手段1aに記憶されるシミュレーション用補正パラメータを選択し、ガンマ補正処理手段1cに設定する。なお、通常のポストプロダクション処理は、出力用補正パラメータに基づいてガンマ補正がなされた後に実行される。従って、パラメータ記憶手段1aに記憶されているシミュレーション用補正パラメータは、出力用補正パラメータに加える重畳分が設定されている。そこで、パラメータ設定手段1bでは、撮影時の映像信号が処理対象であれば、出力用補正パラメータにシミュレーション用補正パラメータを重畳して設定する。また、パラメータ記憶手段1aに予め出力用補正パラメータにシミュレーション用補正パラメータを重畳したパラメータを設定しておいてもよい。さらに、ガンマ補正処理手段1cが、重畳分が設定されるシミュレーション用補正パラメータを受け取り、出力用補正パラメータに重畳させるとしてもよい。
【0017】
また、シミュレーション時に、外部から補正パラメータの変更指示が入力されたときは、変更指示に従って、シミュレーション用補正パラメータを更新し、ガンマ補正パラメータに反映する。変更されたシミュレーション用補正パラメータは、書き込み指示があれば、パラメータ記憶手段1aに保存する。このとき、保存するシミュレーション用補正パラメータを特定可能にするため、そのシミュレーション用補正パラメータにIDを付与する。
【0018】
ガンマ補正処理手段1cは、パラメータ設定手段1bが設定したガンマ補正パラメータに基づいて、入力された映像信号にガンマ補正を施し、補正後映像信号を出力する。映像信号として、撮像素子によって撮影された映像信号や、映像記録メディア2aに記録され、再生された映像信号が入力される。出力である補正後映像信号は、表示用信号変換手段1dと、映像データ記録手段1eとに出力される。シミュレーションの状態に合わせて、補正後映像信号の出力先を切り替え、シミュレーション時には表示用信号変換手段1d、通常時には映像データ記録手段1eに出力するようにしてもよい。
【0019】
表示用信号変換手段1dは、ガンマ補正処理手段1cがガンマ補正を行った補正後映像信号を入力し、これを表示用信号に変換する。表示用信号は、DVoutを介して外部に接続する表示装置などに送られ、表示用信号に基づく画像がこの表示装置に表示される。なお、表示用信号変換手段1dは、入力される補正後映像信号から常に表示用信号を生成するとしてもよいし、シミュレーション時など、指定されたときのみ表示信号を生成するとしてもよい。
【0020】
映像データ記録手段1eは、ガンマ補正処理手段1cから出力用ガンマ補正パラメータに基づく補正が行われた映像信号を取得し、必要であれば圧縮処理などを施した後、メタデータとともに映像記録メディア2aへ書き込む。メタデータは、ガンマ補正処理手段1cでどのような処理が行われたのかを示す処理情報であり、適用された出力用補正パラメータなどである。さらに、ポストプロダクション処理のシミュレーションで適用されたシミュレーション用ガンマ補正パラメータを、次のポストプロダクション処理で利用する場合には、指定されたシミュレーション用ガンマ補正パラメータ、あるいは、シミュレーション用ガンマ補正パラメータを特定可能にする特定情報を、メタデータとして記録する。以下、映像信号のデータとともに映像記録メディア2aに記録されるメタデータを、記録用メタデータと表記する。
【0021】
メタデータ記録手段1fは、パラメータ設定手段1bを介して取得したシミュレーション用補正パラメータと、シミュレーション用補正パラメータに付与されたIDとを、映像信号に関するメタデータとして、メタデータ記録メディア2bへ記録する。以下、記録用メタデータと区別するため、メタデータ記録メディア2bへ記録されるシミュレーション用補正パラメータを含むメタデータを、ポスプロ用メタデータと表記する。なお、シミュレーション用補正パラメータに付与されたIDは、ポスプロ用メタデータのIDも兼ねる。また、映像データと同様、ポスプロ用メタデータは、通信手段などを介して外部へ出力してもよい。
【0022】
このような構成の撮像装置の動作及び撮像方法について説明する。また、以下の説明では、シミュレーションが設定されている状態をシミュレーションモード、解除されている状態を記録モードとする。
【0023】
パラメータ記憶手段1aには、記録モードで適用される出力用補正パラメータ、及びシミュレーションモードで適用されるシミュレーション用補正パラメータが記憶されている。記憶されている情報は、外部から変更指示に応じて、パラメータ設定手段1bが適宜書き換えを行う。
【0024】
通常時、すなわち、記録モード時には、撮影された映像信号は、ダイナミックレンジを確保するためのガンマ補正処理が施された後、映像記録メディア2aに記録される。また、補正後の映像信号は、通信手段などを介して外部に出力するとしてもよい。
【0025】
記録モード時、パラメータ設定手段1bは、パラメータ記憶手段1aから出力用補正パラメータを読み出し、ガンマ補正処理手段1cに設定する。ガンマ補正処理手段1cは、入力した映像信号に出力用補正パラメータに基づくガンマ補正を施し、補正後映像信号を出力する。映像データ記録手段1eは、必要に応じて補正後映像信号を圧縮処理し、パラメータ設定手段1bを介して取得した記録用メタデータとともに、映像記録メディア2aに書き込む。また、通信手段を介して外部に映像信号を出力する場合も、記録用メタデータを付加して出力する。
【0026】
こうして、映像記録メディア2aには、撮影された映像信号に対しダイナミックレンジを確保するためのガンマ補正が施された映像信号と、適用された出力用補正パラメータ及びポストプロダクション処理で参照されるシミュレーション用補正パラメータまたはそのIDと、が記録される。なお、このときガンマ補正パラメータ以外の補正処理も行われれば、適用された補正パラメータのメタデータも映像記録メディア2aに記録される。
【0027】
シミュレーションモードになると、パラメータ設定手段1bは、ガンマ補正処理手段1cに適用するガンマ補正パラメータをシミュレーション用補正パラメータに切り替える。なお、シミュレーション用補正パラメータに設定されている値が、出力用補正パラメータに重畳する補正値分であれば、出力用補正パラメータに、読み出したシミュレーション用補正パラメータを重畳した補正値を算出した後、ガンマ補正処理手段1cに設定する。ガンマ補正処理手段1cは、パラメータ設定手段1bが設定したシミュレーション用補正パラメータに基づいて映像信号にガンマ補正を施す。補正された補正後映像信号は、表示用信号変換手段1dと、映像データ記録手段1eとに出力される。映像データ記録手段1eは、シミュレーション設定されているので、記録処理は行わない。なお、補正後映像信号を表示用信号変換手段1dのみに出力するとしてもよい。表示用信号変換手段1dは、シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正された映像信号、すなわち、ポストプロダクション処理を模擬した映像信号を取得し、表示用信号に変換した後、DVoutを介して外部の表示装置へ出力する。この表示用信号を表示装置に表示すれば、ポストプロダクション処理が施された後の映像を実際に見て確認することができる。なお、表示装置は、撮像装置に備わっていてもよい。また、このとき、変更指示によってガンマ補正処理手段1cに適用されているシミュレーション用補正パラメータを変更すれば、変更されたシミュレーション補正パラメータがガンマ補正処理手段1cに適用され、パラメータ変更後の映像を表示装置に表示することができる。こうして調整を行い、最終的に得られたシミュレーション用補正パラメータは、パラメータ設定手段1bを介して、新たなシミュレーション用補正パラメータとしてパラメータ記憶手段1aに記憶させることもできる。このとき、新たに登録されるシミュレーション用補正パラメータには、IDが付与される。このシミュレーション補正パラメータは、記録要求があれば、メタデータ記録手段1fによってメタデータ記録メディア2bに記録することができる。このとき、メタデータ記録メディア2bには、メタデータとしてシミュレーション用補正パラメータと、そのIDとが記録される。
【0028】
このように、モードに応じてガンマ補正パラメータを切り替えられ、記録モードでは出力用ガンマ補正パラメータ、シミュレーションモードではシミュレーション用ガンマ補正パラメータが選択される。シミュレーションモードでは、シミュレーション用ガンマ補正パラメータによってガンマ補正が処理された映像信号が表示用に変換されるので、表示して映像を確認することができる。また、記録モードでは、出力用ガンマ補正パラメータによってガンマ処理がされた映像信号を映像データ記録メディアに記録するときに、メタデータとして選択したシミュレーション用ガンマ補正パラメータまたはそのIDを記録することができる。これにより、撮影現場において、新たな機器などを接続することなく、ポストプロダクション処理のシミュレーションを行って映像を確認することが可能となる。さらに、設定されたシミュレーション用ガンマ補正パラメータを記録用の映像信号とともに次工程のポストプロダクション処理に伝達することが可能となる。この結果、撮影工程及びポストプロダクション処理工程の効率を上げることができる。
【0029】
以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、実施の形態の撮像装置のハードウェア構成例を示したブロック図である。
撮像装置100は、CPU(Central Processing Unit)101によって装置全体が制御されている。CPU101には、バス110を介してRAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、フラッシュメモリ104、撮像部105、表示部106、操作部107、記録再生部108、外部インタフェース(I/F)109が接続されている。
【0030】
RAM102には、CPU101に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM102には、CPU101による処理に必要な各種データが格納される。ROM103には、OSやアプリケーションのプログラムが格納される。フラッシュメモリ104には、各種パラメータなど、電源断時にも保持しておきたいデータを格納する。撮像部105は、撮像素子や撮像素子を駆動する駆動回路、撮影されたアナログ信号をデジタルに変換するA/D変換回路などを有し、被写体の撮影信号を生成する。表示部106は、CPU101からの命令に従って、ガンマ補正パラメータなどの登録情報を表示する。操作部107は、たとえば、キーボード、釦、スイッチなどを介して入力され操作入力信号を、バス110を介してCPU101に送信する。記録再生部108は、映像記録メディア2aやメタデータ記録メディア2bなどの外部記録メディアに、CPU101の指示に従ってデータを書き込むとともに、外部記録メディアから読み出したデータをバス110経由でCPU101に伝える。外部I/F109は、表示装置などの周辺機器に接続し、CPU101に従って周辺機器との間のデータ交換を処理する。
【0031】
このようなハードウェア構成によって、本実施の形態の処理機能を実現することができる。
図3は、撮像装置の処理機能を示した機能ブロック図である。
【0032】
撮像装置は、撮像素子121、映像信号処理部122、補正処理部(ガンマ補正)123、圧縮処理部124、データ記録部125、パラメータ記憶部131、パラメータ設定部132、表示用映像信号変換部133、メタデータ記録部134、操作入力部135、表示処理部136、及びメタデータ読込部137を有する。各部で行われる処理手順は、CPU101がROM103に格納された映像信号処理プログラムを実行することによって実行される。
【0033】
撮像部105を構成する撮像素子121は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Devices)などであり、被写体を撮影した映像信号を生成する。映像信号処理部122は、アナログの映像信号を受け取り、ノイズの除去や、デジタル信号への変換処理などを行う。補正処理部123は、映像信号処理部122によってデジタル変換された映像信号を入力し、色調調整、被線形処理、輪郭補償など、映像信号を補正する補正処理を行う。非線形処理のひとつであるガンマ補正では、通常状態において設定される出力用補正パラメータに基づいて、撮影された映像信号を適切なダイナミックレンジに圧縮する補正が行われる。また、ポストプロダクション処理のシミュレーションが設定されたときは、パラメータ設定部132が設定するシミュレーション用補正パラメータに基づいて、ポストプロダクション処理を模擬したガンマ補正が実行される。補正後の補正後映像信号は、圧縮処理部124と、表示用映像信号変換部133とに出力される。なお、シミュレーション時には表示用映像信号変換部133に補正後映像信号を出力し、シミュレーション以外のときは圧縮処理部124に補正後映像信号を出力するように出力切り替えが行われてもよい。圧縮処理部124は、入力されたデジタルの映像信号のデータ量を削減するため、映像信号に圧縮処理を施す。データ記録部125は、圧縮処理部124によって圧縮された映像信号及び記録用メタデータを映像データ記録メディア201に記録する。
【0034】
パラメータ記憶部131は、ダイナミックレンジを確保するための出力用補正パラメータと、映像を効果的に補正するためのシミュレーション用補正パラメータと、を記憶する。パラメータ記憶部131は、たとえば、フラッシュメモリ104に設けられる。また、パラメータ記憶部131に記憶されるパラメータは、操作入力部135から入力される指示に従って、パラメータ設定部132が書き換えを行う。パラメータ設定部132は、モードに応じて、補正処理部123のガンマ補正で使用するガンマ補正パラメータを設定する。シミュレーションモードのときは、シミュレーション用補正パラメータを選択し、パラメータ記憶部131から読み出して設定する。記録モードのときは、出力用補正パラメータを選択し、パラメータ記憶部131から読み出して設定する。また、記録モード時は、記録用メタデータをデータ記録部125へ出力する。表示用映像信号変換部133は、シミュレーションモード時、補正処理部123がシミュレーション用補正パラメータに基づいて補正処理を行った映像信号を取得し、表示用の映像信号に変換した後、DVoutを介して外部へ出力する。メタデータ記録部134は、要求のあったとき、シミュレーション用ガンマ補正パラメータに関するポスプロ用メタデータをメタデータ記録メディア202に記録する。なお、ポスプロ用メタデータは、パラメータ設定部132から取得してもよいし、メタデータ記録部134が直接パラメータ記憶部131から読み出してもよい。操作入力部135は、ユーザが操作部107を操作して指示した内容を情報に変換し、パラメータ設定部132に伝達する。パラメータ設定部132に伝達される情報には、シミュレーションが設定されたか否か、ガンマ補正パラメータの値変更などがある。表示処理部136は、パラメータ設定部132の指示に従って、現在設定されている補正パラメータやメタデータ、変更操作状態などの情報を表示する。メタデータ読込部137は、記録再生部108を制御して、ポストプロダクション装置などで予め設定され、メタデータ記録メディア202に記録されたメタデータを読み込む。メタデータは、自装置が前回処理以前にメタデータ記録メディア202に書き込んでおいたものでもよい。この場合のメタデータは、主としてポスプロ用メタデータを指す。
【0035】
このような撮像装置では、記録モード時、パラメータ設定部132は、ダイナミックレンジの確保を目的とした出力用補正パラメータを選択し、ガンマ補正処理を行う補正処理部123に設定する。また、適用された出力用補正パラメータと、撮影後のポストプロダクション処理に適用したいシミュレーション用補正パラメータ、またはそのIDとを含む記録用メタデータも、データ記録部125に出力される。撮像素子121が撮影し、映像信号処理部122によってデジタルに変換された映像信号が補正処理部123に入力される。補正処理部123は、入力された映像信号を出力用補正パラメータに基づいてガンマ補正し、同時に設定されるそのほかの補正処理を行った補正後映像信号を圧縮処理部124へ出力する。圧縮処理部124では、補正後映像信号を圧縮処理し、データ記録部125へ出力する。データ記録部125は、圧縮された映像信号と、記録用メタデータとを映像データ記録メディア201に記録する。こうして映像データ記録メディア201には、撮影された映像信号と、記録用メタデータとが記録される。
【0036】
シミュレーションモード時は、パラメータ設定部132は、パラメータ記憶部131からシミュレーション用補正パラメータを読み出し、補正処理部123に設定する。このとき、それぞれ設定値が異なる複数のシミュレーション用補正パラメータの組があれば、操作入力部135によって選択されたシミュレーション用ガンマ補正パラメータの組が選択され、補正処理部123に設定される。また、シミュレーション実行時に、操作入力部135からパラメータの変更指示があれば、変更指示に基づいてシミュレーション用補正パラメータを変更し、補正処理部123の設定に反映させる。このとき、パラメータ記憶部131に記憶される当該シミュレーション用補正パラメータは、変更指示に応じて更新されてもよいし、最終的に指示された時点で更新するとしてもよい。補正処理部123は、設定されたシミュレーション用補正パラメータを用いて映像信号にガンマ補正を施し、補正映像信号を表示用映像信号変換部133と、圧縮処理部124とに出力する。表示用映像信号変換部133は、補正後映像信号を表示用信号に変換し、DVoutから出力する。圧縮処理部124は、特に処理は行わない。DVoutを介して接続する表示装置は、ポストプロダクション処理のシミュレーション用のシミュレーション用補正パラメータによって補正された映像信号に基づく表示を行うことができる。また、このとき適用されたシミュレーション用補正パラメータに関するポスプロ用メタデータは、メタデータ記録部134によってメタデータ記録メディア202に適宜記録される。
【0037】
以上のように、実施の形態では、1台の撮像装置においてモードを切り替えることにより、出力用補正パラメータを適用した映像信号の記録と、シミュレーション用補正パラメータを適用した映像信号の表示とを切り替えて実行することができる。これにより、撮影時に、大規模な装置を用いることなく、ポストプロダクション処理のシミュレーションを行って、ポストプロダクション処理の映像効果を確認し、適用するガンマ補正パラメータの値を予め決めておくことができる。さらに、記録モードでは、通常の出力用補正パラメータを用いてガンマ補正が行われた映像信号とともに、シミュレーションで決定されたシミュレーション用補正パラメータ、またはそのIDを映像データ記録メディアに記録しておく。なお、IDが記録されるときは、対応するポスプロ用メタデータをメタデータ記録メディアに記録しておく必要がある。
【0038】
ポストプロダクション装置では、映像データ記録メディアから、映像信号とともにポスプロ用メタデータを取得し、ポスプロ用メタデータに設定されるシミュレーション用補正パラメータによって映像信号の補正を行う。
【0039】
ここで、ガンマ補正パラメータの設定について説明する。
図4は、ガンマカーブを調整する補正パラメータの一例を示した図である。(A)はゲイン係数(GAIN)、(B)はリフト係数(LIFT)、(C)は、パワー係数(POWER)を示した図である。
【0040】
以下、元のガンマカーブをガンマ値=1としたときの補正処理について説明する。ガンマ値=1のとき、ガンマカーブは直線となり、入力xと出力yの関係を、y=xと表すことができる。
【0041】
(A)ゲイン係数(GAIN)は、ガンマカーブの傾きを変えるパラメータである。ゲイン係数をaとすると、ガンマカーブを補正する補正関数f(x)は、
y=f(x)=ax ・・・(1)
と表すことができる。パラメータaは、−9.99から9.99の範囲の値をとれることとする。
【0042】
(B)リフト係数(LIFT)は、ガンマカーブにオフセットを与えるパラメータである。リフト係数をbとすると、ガンマカーブを補正する補正関数g(x)は、
y=g(x)=x+b ・・・(2)
と表すことができる。パラメータbは、−9.99から9.99の範囲の値をとれることとする。
【0043】
(C)パワー係数(POWER)は、ガンマカーブの指数を変え、ガンマ値を補正するパラメータである。パラメータをcとすると、ガンマカーブを補正する補正関数h(x)は、
y=h(x)=xc ・・・(3)
と表すことができる。パラメータcは、−9.99から9.99の範囲の値をとれることとする。
【0044】
このように、補正関数の係数をパラメータとして設定することにより、所望の映像表現を再現するガンマカーブが得られる。さらに、実施の形態では、補正関数の処理順を任意に設定することができる。
【0045】
図5は、従来の補正処理と実施の形態の補正処理とを示した図である。(A)は、ハードウェアで構成された従来のガンマ補正処理回路であり、(B)は、ソフトウェアで構成された実施の形態のガンマ補正処理部である。
【0046】
(A)は、ハードウェア構成の例であり、補正処理の順序が固定である。すなわち、図の例では、f(x)補正回路301、g(x)補正回路302、及びh(x)補正回路303の順に接続が固定化されている。f(x),g(x),h(x)は、図4と同じとする。この場合、各補正関数の係数は、ユーザが任意に調整することができるが、入力信号xに対して補正関数f(x)の処理が行われ、その出力x’に対して補正関数g(x)の処理が行われ、最後にその出力x”に対して補正関数h(x)の処理が行われるという順序を変更することはできない。
【0047】
これに対し、(B)に示した実施の形態のソフトウェア構成では、補正関数を合成し、ガンマ補正処理部に反映させることができる。(A)と同様の構成を実現する場合には、ガンマ補正処理部310にて、補正関数h(g(f(x)))による処理が行われる。
【0048】
ここで、式(1)で表された補正関数f(x)と式(2)で表された補正関数g(x)とを実行する場合には、(A)の構成で行われる補正では、ガンマカーブは、常に、y=ax+bになる。これに対し、(B)の構成では、演算順を補正関数f(x)、補正関数g(x)にすれば、(A)と同様に、ガンマカーブは、y=ax+bによって補正される。しかし、補正処理順を補正関数g(x)、補正関数f(x)とすれば、ガンマカーブは、y=a(x+b)によって補正される。補正関数h(x)を組み合わせることにより、さらに、多彩な補正を行うことが可能となる。また、各補正関数の係数を任意に設定できることは当然である。
【0049】
以上のガンマ補正処理を実現するため、本実施の形態では、シミュレーション用補正パラメータに関するポスプロ用メタデータとして、補正関数f(x)調整用のパラメータa、補正関数g(x)調整用のパラメータb、補正関数h(x)調整用のパラメータc、及び補正関数f(x),g(x),h(x)の処理順序を設定する。
【0050】
なお、実際の撮像装置では、ガンマ補正は、赤(R)、緑(G)、青(B)の色ごとに調整される。また、ガンマカーブ自体の補正もガンマカーブ全体を補正する場合のほか、あるガンマカーブのある範囲の補正のみを行う場合がある。上記の説明の本実施の形態のガンマ補正処理が、各色、あるいは、ガンマカーブの所定の範囲について適用できることは当然である。
【0051】
また、上記の説明は、ガンマカーブの理論式に対する補正処理を示している。実際の処理では、たとえば、理論式を近似した折れ線近似による補正あるいは、ルックアップテーブルと呼ばれる補正テーブルを用いた補正を行う。このような処理は公知であり、本実施の形態では、上記のようにして算出された理論式に基づいて、折れ線あるいはルックアップテーブルを用いた処理が適宜実行されることとし、詳細な説明は省略する。
【0052】
次に、ユーザがシミュレーション用補正パラメータのメタデータを変更し、シミュレーション用補正パラメータを調整するときの処理について説明する。図6は、表示部に表示されるメニュー画面の一例を示した図である。
【0053】
パラメータ設定部132は、操作入力部135を介してメタデータ変更指示が入力されると、表示処理部136に指示し、表示部106にメニュー画面400を表示させる。
メニュー画面400には、ページタイトル401とともに、ページ番号402と、シミュレーション用補正パラメータであるGAIN403、LIFT404、POWER405、及びORDER406の現在の設定値が表示される。
【0054】
ページタイトル401は、ページの内容を示す情報で、任意に登録することができる。ページ番号402は、ページに対応するシミュレーション用補正パラメータを特定する特定情報であり、シミュレーション用補正パラメータ(ポスプロ用メタデータ)のIDである。また、「製品型番、製造番号、パラメータ作成日時・時刻」や、SMPTEで規定されグローバルユニーク(世界中で唯一)なIDであるUMID(Unique Material Identifier)を用いてもよい。これにより、複数のカメラで撮影した映像素材をポストプロダクション処理において同時に扱うことができる。なお、UMIDはSMPTE 330Mで規定されている。撮像装置では、予め、それぞれ異なる映像表現が再現されるシミュレーション用補正パラメータのメタデータ(GAIN、LIFT、POWER、ORDER)の組が、ページに対応付けられて複数管理されている。ユーザは、パラメータを個々に調整して設定することもできるし、所望の映像が得られるパラメータ値が設定されたページを選択して設定することもできる。もちろん、新たにページを設定することもできる。
【0055】
ここで、GAIN403はゲイン係数を決めるパラメータ、LIFT404はリフト係数を決めるパラメータ、及びPOWER405はパワー係数を決めるパラメータを表し行に表示されている数値はその値である。値は、操作入力部135を介して入力された指示に基づいて適宜更新される。ORDER406は、補正関数の演算順序を表す項目で、補正関数に対応する文字列が表示される。図の例で、Gはゲイン係数を補正するf(x)、Lはリフト係数を補正するg(x)、及びPはパワー係数を補正するh(x)を表す。図のGLPは、f(x)、g(x)、h(x)の演算順で実行することを示す。また、GPLは、f(x)、h(x)、g(x)の演算順を示し、LGPはg(x)、f(x)、h(x)の演算順を示す。他の演算順も同様に設定することができる。
【0056】
ユーザは、操作部107を操作し、それぞれのパラメータ値、演算順を変更する。そして、ユーザが登録釦407を操作すると、パラメータ設定部132によって、パラメータ記憶部131の所定の領域に更新したメタデータ値が書き込まれる。パラメータ記憶部131には、ページに対応する領域が設けられており、パラメータ設定部132はページ番号402に対応する領域、図の例ではページ9に対応する領域のシミュレーション用補正パラメータを更新する。
【0057】
ここで、メタデータについて説明する。図7は、メタデータの例を示した図である。(A)は、メタデータをASCII形式で表記した一例であり、(B)は、バイナリ(Binary)形式で表記した一例である。
【0058】
(A)ASCII形式では、メニュー画面400に表示されるパラメータの項目名と、設定されたパラメータ値の文字一つずつをASCIIコード(2桁の16進数)に変換する。たとえば、図6に示した「GAIN:(+)0.95,LIFT:−1.55・・・」は、47H(G)、41H(A)、49H(I)、4EH(N)、3AH(:)、2BH(+)、30H(0)、2EH(.)、39H(9)、35H(5)、44H(,)、4CH(L)、・・・と変換される。この例では、数値と次のアイテムとの間は、カンマ(,)で区切られている。
【0059】
ASCII形式の場合、それぞれの文字がASCIIコードに変換されるので、後で項目の変更が生じたときにも対処しやすい。特に、別装置であるポストプロダクション装置とのデータ受け渡しの際は、メタデータの構造を通知する必要はなく、便利である。しかし、GAIN、LIFTがそれぞれ10文字、POWERが11文字、ORDERが9文字、カンマに3文字とあり、かつASCIIコードに変換するとバイト数は文字数の倍になるので、データ量が多くなる。
【0060】
(B)バイナリ形式では、メニュー画面400に表示されている項目に対応してバイト領域が設けられている。たとえば、GAINは、バイト0から3の4バイトを使って、パラメータ値を格納する。同様に、LIFTは、バイト4から7を使って、パラメータ値を格納する。ORDERの演算順序は、G,L,Pの順序6通りについて、0〜5のIDを振り、バイト番号Cに格納する。
【0061】
バイナリ形式の場合、メニュー画面400の情報が、0〜Cバイトの13バイトで表現することが可能であり、メタデータのサイズを小さくすることができる。しかし、項目の入れ替えなどの柔軟な対応はできない。
【0062】
以上のような形式で記述されるメタデータは、メタデータ記録メディア202、あるいは、映像データ記録メディア201に記録され、ポストプロダクション装置などに引き渡される。また、予め受け渡し先の装置が、同じ内容のメタデータを保持しているときには、メタデータ全体を送る必要はなく、ポスプロ用メタデータのIDのみが送付されればよい。
【0063】
たとえば、映像データ記録メディア201に、圧縮された映像信号と、記録用メタデータとして出力用補正パラメータとポスプロ用メタデータのIDとが記録されていたとする。ポストプロダクション装置には、メタデータ記録メディア202などを介して、このメタデータIDによって特定されるシミュレーション用補正パラメータの値を設定しておくとする。ポストプロダクション装置では、映像データ記録メディア201に記録されるメタデータIDを読み取り、自装置が保持するポスプロ用メタデータから、IDが一致するものを選択する。これにより、ポストプロダクション装置では、撮像装置によって指定されたガンマ補正パラメータで映像信号を処理することが可能となる。なお、映像データ記録メディア201の記録用メタデータに直接ポスプロ用メタデータが記録されている場合には、これを用いてポストプロダクション処理を行う。
【0064】
このような実施の形態の撮像装置によれば、撮像現場において、撮影された映像信号のポストプロダクション処理のシミュレーションを指示すると、パラメータ設定部132は、補正処理部123のガンマ補正パラメータを、シミュレーション用補正パラメータに切り替える。補正処理部123においてシミュレーション用補正パラメータで処理された映像信号は、表示用映像信号変換部133で表示用信号に変換され表示装置に表示される。ユーザは、表示装置に表示された映像を確認しながら、操作入力部135を操作してシミュレーション用補正パラメータを調整する。そして、所望の映像が得られた時点でシミュレーション用補正パラメータを決定し、設定されたシミュレーション用補正パラメータのポスプロ用メタデータは、IDとともにパラメータ記憶部131に記憶される。このポスプロ用メタデータは、要求があれば、IDとともにメタデータ記録部134によってメタデータ記録メディア202に記録される。シミュレーションが終了されると、パラメータ設定部132は、ガンマ補正パラメータを出力用補正パラメータに切り替える。なお、メタデータ記録メディア202への書き込みは、シミュレーションモードでなくてもできることとする。
【0065】
記録モード時、撮影された映像信号は、出力用補正パラメータによって補正された後、圧縮処理され映像データ記録メディア201に記録される。このとき、映像信号に付加して、記録用メタデータ(適用された出力用補正パラメータ、指定されたシミュレーション用補正パラメータのポスプロ用メタデータ、または、ポスプロ用メタデータのIDが、映像データ記録メディア201に記録される。
【0066】
ポストプロダクション装置では、映像データ記録メディア201に記録されたポスプロ用メタデータを解読し、再現されたガンマ補正パラメータを用いて映像データ記録メディア201に記録された映像信号のガンマ補正処理を行う。また、映像データ記録メディア201にメタデータのIDのみが記録されていたときは、メタデータ記録メディア202を読み込んで対応するメタデータを取得し、同様の処理を行う。なお、同一IDのメタデータが、装置内に保存されているときは、これを用いてもよい。
【0067】
以上のように、本実施の形態では、撮影現場で簡単にポストプロダクション処理をシミュレーションできるばかりでなく、シミュレーションの結果をプロダクション装置での処理に利用することができる。
【0068】
次に、本実施の形態の映像信号処理を、シミュレーションモードの場合と、記録モードの場合とについて説明する。
図8は、シミュレーションモードの場合の映像信号処理の手順を示したフローチャートである。
【0069】
[ステップS01] シミュレーションがモードであるかどうかを判定する。シミュレーションモードのときは、ステップS02へ処理を進める。記録モードのときは、図9に示した処理Aへ進む。
【0070】
[ステップS02] 補正処理部123に設定するガンマ補正パラメータの切り替えが必要であるかどうかを判定する。シミュレーションモードに切り替わった後の最初の処理であれば、切り替えが必要と判定する。切り替えが必要と判定されたときは、処理をステップS03へ進め、切り替えが必要と判定されなかったときは、処理をステップS06へ進める。
【0071】
[ステップS03] パラメータ記憶部131に格納されるシミュレーション用補正パラメータを読み出す。複数の組のシミュレーション用補正パラメータが設定されているときは、指定されたパラメータの組、または、最終に使用されたパラメータの組のデータを読み出す。
【0072】
[ステップS04] 現在設定されている出力用補正パラメータに、ステップS03で読み出したシミュレーション用補正パラメータを重畳し、ガンマ補正パラメータを算出する。
【0073】
[ステップS05] ステップS04で算出されたガンマ補正パラメータを補正処理部123に設定する。これにより、以降、補正処理部123は、設定されたガンマ補正パラメータに基づいて映像信号処理部122から入力される映像信号のガンマ補正処理を行う。
【0074】
[ステップS06] メタデータ記録メディアへの記録要求の有無を判定する。要求がないときは、処理を終了する。要求があったときは、処理をステップS07へ進める。
[ステップS07] メタデータ記録メディアへの記録が要求されたときは、要求されたポスプロ用メタデータをメタデータ記録メディア202へ書き込む。また、パラメータ記憶部131に記憶されるすべてのポスプロ用メタデータをメタデータ記録メディア202に書き込むとしてもよい。
【0075】
以上の処理手順が実行されることにより、シミュレーションモードになると、補正処理部123が適用するガンマ補正パラメータは、シミュレーション用補正パラメータに切り替えられる。シミュレーション用補正パラメータに基づいて補正処理が行われた映像信号は、表示用映像信号変換部133で表示用信号に変換され、表示装置に出力される。これにより、ユーザは、撮影現場で、ポストプロダクション処理をシミュレーションすることが可能となる。
【0076】
図9は、記録モードの場合の映像信号処理の手順を示したフローチャートである。
記録モードのとき、以下の処理が行われる。
[ステップS11] 補正処理部123に設定するガンマ補正パラメータの切り替えが必要であるかどうかを判定する。シミュレーションから記録モードに切り替わった後の最初の処理であれば、切り替えが必要と判定する。切り替えが必要と判定されたときは、処理をステップS12へ進め、切り替えが必要と判定されなかったときは、処理をステップS14へ進める。
【0077】
[ステップS12] 切り替えが必要と判定されたときは、パラメータ記憶部131から出力用補正パラメータを読み出す。複数の組の出力用補正パラメータが設定されているときは、指定されたパラメータの組、または、最終に使用されたパラメータの組のデータを読み出す。
【0078】
[ステップS14] 映像データ記録メディアへの記録要求の有無を判定する。要求がないときは、処理を終了する。要求があったときは、処理をステップS15へ進める。
[ステップS15] 対応させるポスプロ用メタデータを特定するIDを取得する。
【0079】
[ステップS16] 映像データ記録メディアに、圧縮処理を施した映像信号とともに、メタデータして、映像信号に施された出力用補正パラメータ及びポスプロ用メタデータIDとを記録する。また、メタデータに、直接ポスプロ用メタデータメを記録してもよい。
【0080】
以上の処理手順が実行されることにより、撮影された映像信号に対し、通常の記録用に用いられる出力用補正パラメータに基づくガンマ補正を施した映像信号が、ポストプロダクション処理で参照されるポスプロ用メタデータ、あるいはポスプロ用メタデータIDとともに映像データ記録メディア201に記録される。撮影後のポストプロダクション処理では、映像データ記録メディア201に記録されたポスプロ用メタデータまたはポスプロ用メタデータIDを参照し、映像信号に対するプロダクション処理を実行することができる。
【0081】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、撮像装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0082】
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0083】
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態に適用される発明の概念図である。
【図2】実施の形態の撮像装置のハードウェア構成例を示したブロック図である。
【図3】撮像装置の処理機能を示した機能ブロック図である。
【図4】ガンマカーブを調整する補正パラメータの一例を示した図である。
【図5】従来の補正処理と実施の形態の補正処理とを示した図である。
【図6】表示部に表示されるメニュー画面の一例を示した図である。
【図7】メタデータの例を示した図である。
【図8】シミュレーションモードの場合の映像信号処理の手順を示したフローチャートである。
【図9】記録モードの場合の映像信号処理の手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1a・・・パラメータ記憶手段、1b・・・パラメータ設定手段、1c・・・ガンマ補正処理手段、1d・・・表示用信号変換手段、1e・・・映像データ記録手段、1f・・・メタデータ記録手段、2a・・・映像記録メディア、2b・・・メタデータ記録メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に取り込まれた映像信号に所定の映像信号処理を施して記録用や表示用に変換する撮像装置において、
撮影された映像信号を外部へ出力するときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後の後処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータと、を記憶するパラメータ記憶手段と、
外部からの指示入力に基づいて前記シミュレーションが設定されたときは前記シミュレーション用補正パラメータを選択し、前記シミュレーションが解除されたときは前記出力用補正パラメータを選択して前記パラメータ記憶手段から読み出し、前記シミュレーション時と、それ以外のときのガンマ補正パラメータを切り替えて設定するパラメータ設定手段と、
前記パラメータ設定手段によって設定された前記出力用補正パラメータまたは前記シミュレーション用補正パラメータに基づいて、入力された前記映像信号に対しガンマ補正処理を行うガンマ補正処理手段と、
前記シミュレーションが設定されたときに、前記シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正が施された前記映像信号を、表示用信号に変換する表示用信号変換手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記シミュレーション用補正パラメータを、前記シミュレーション用補正パラメータを特定する特定情報とともに、他の装置から読み出し可能なメタデータ記録メディアに記録、または外部へ出力するメタデータ記録手段を、
さらに有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記シミュレーション解除時、前記出力用補正パラメータによって前記ガンマ補正が施された前記映像信号を他の装置から読み出し可能な映像記録メディアに記録、または外部へ出力するときに、前記映像信号に前記映像信号に対して選択された前記シミュレーション用補正パラメータを付加する映像データ記録手段を、
さらに、有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記シミュレーション用補正パラメータには、前記シミュレーション用補正パラメータを特定する特定情報が関連付けられており、
前記映像データ記録手段は、前記シミュレーション用補正パラメータの代わりに前記シミュレーション用補正パラメータの特定情報を前記映像信号に付加する、
ことを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記シミュレーション用補正パラメータは、前記ガンマ補正処理手段に適用されるガンマカーブの特性を変更する複数の補正関数の係数と、前記複数の補正関数によって行われる演算の順序と、を含み、
前記ガンマ補正処理手段は、前記シミュレーション用補正パラメータによって規定される前記複数の補正関数を合成し、合成された補正関数に基づいてガンマ補正処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子に取り込まれた映像信号を所定の映像信号処理を施して記録用や表示用に変換する撮像方法において、
パラメータ設定手段が、撮影された映像信号を外部へ出力するときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後の後処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータとを記憶するパラメータ記憶手段から、外部からの指示入力に基づいて前記シミュレーションが設定されたときは前記シミュレーション用補正パラメータを選択し、前記シミュレーションが解除されたときは前記出力用補正パラメータを選択して読み出し、前記シミュレーション時と、それ以外のときのガンマ補正パラメータを切り替えて設定するステップと、
ガンマ補正処理手段が、前記パラメータ設定手段によって設定された前記出力用補正パラメータまたは前記シミュレーション用補正パラメータに基づいて、入力された前記映像信号に対しガンマ補正処理を行うステップと、
表示用信号変換手段が、前記シミュレーションが設定されたときに、前記シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正が施された前記映像信号を、表示用信号に変換するステップと、
を実行することを特徴とする撮像方法。
【請求項7】
撮像素子に取り込まれた映像信号を所定の映像信号処理を施して補正する処理を行う映像信号処理プログラムにおいて、
コンピュータを、
撮影された映像信号を外部へ出力するときに適用される出力用補正パラメータと、撮影後の後処理のシミュレーションで適用されるシミュレーション用補正パラメータとを記憶するパラメータ記憶手段から、外部からの指示入力に基づいて前記シミュレーションが設定されたときは前記シミュレーション用補正パラメータを選択し、前記シミュレーションが解除されたときは前記出力用補正パラメータを選択して読み出し、前記シミュレーション時と、それ以外のときのガンマ補正パラメータを切り替えて設定するパラメータ設定手段、
前記パラメータ設定手段によって設定された前記出力用補正パラメータまたは前記シミュレーション用補正パラメータに基づいて、入力された前記映像信号に対しガンマ補正処理を行うガンマ補正処理手段、
前記シミュレーションが設定されたときに、前記シミュレーション用補正パラメータに基づいてガンマ補正が施された前記映像信号を、表示用信号に変換する表示用信号変換手段、
として機能させることを特徴とする映像信号処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−21827(P2009−21827A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182824(P2007−182824)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】