撮像装置及び撮像装置の動作方法
【課題】化学反応の時間的なずれに対応可能な生体高分子分析チップ及び生体高分子分析チップの動作方法を提供する。
【解決手段】複数の光電変換素子20と、各光電変換素子20の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部87と、光電変換素子20を駆動して各光電変換素子20の出力値を一次記録部87に書き込むとともに、一次記録部87に記録された値が二次記録部87に記録された値よりも大きい場合に、二次記録部87に記録された値を一次記録部87に記録された値に書き換える制御部86と、を備える撮像装置80である。
【解決手段】複数の光電変換素子20と、各光電変換素子20の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部87と、光電変換素子20を駆動して各光電変換素子20の出力値を一次記録部87に書き込むとともに、一次記録部87に記録された値が二次記録部87に記録された値よりも大きい場合に、二次記録部87に記録された値を一次記録部87に記録された値に書き換える制御部86と、を備える撮像装置80である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子分析チップ等に用いる撮像装置及び撮像装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な生物種の遺伝子の発現解析を行うためにDNAチップや抗体チップ等の生体高分子分析チップやその読取装置が開発されている。生体高分子分析チップは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAや抗体をスライドガラス等の固体担体上にマトリクス状に整列固定させたものである。例えば、DNAチップ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0003】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAチップを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、標識物質で標識したものを用意する(以下、標識DNAという)。ここで、標識物質には化学発光基質を発光させる酵素等を用いることができる。
次に、標識DNAをDNAチップ上に添加すると、標識DNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAチップ上に固定される。
【0004】
次いで、DNAチップを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、DNAチップに対して二次元的に移動する集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAチップを走査する標識物質により発した光を集光レンズで集光させ、光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAチップの面内の光強度分布を計測し、これにより、DNAチップ上の光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有した標識DNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって検体で発現しているmRNAを同定することができる。
【0005】
また、複数の撮像素子を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイスの受光面にDNAや抗体等のプローブ分子をスポットした生体高分子分析チップが開発されている。このような生体高分子分析チップでは、スポットに付着した標識DNA等の生体高分子を標識する標識物質により発生する光を各光電変換素子により計測する。固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しており、受光面に付着された生体高分子と光電変換素子との間の距離が近いために標識物質から発した光があまり減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射するため、僅かな光量でも計測が可能であるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−286643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような生体高分子分析チップにおいては、二次元アレイ状に配列した複数の撮像素子でほぼ同時に光量を測定する。しかし、標識物質に化学発光物質を基質とする酵素を用いた場合、化学反応の時間的なずれに対応するのが困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決し、化学反応の時間的なずれに対応可能な生体高分子分析チップ及び生体高分子分析チップの動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部と、前記光電変換素子の出力値が一定時間ごとに記録される二次記録部と、記録前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する制御部と、を備えることを特徴とする撮像装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記制御部は、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了する。
好ましくは、前記光電変換素子の受光面側に設けられ、特定の生体高分子と結合するプローブを備える。
好ましくは、前記プローブが備えられた前記光電変換素子の受光面側のスポット固定層に密着して流路が設けられる。
好ましくは、前記プローブは既知の塩基配列を有する一本鎖DNAである。
あるいは、好ましくは、前記プローブは特定の抗原と結合する抗体である。
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の二の態様によれば、光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部と、を備えた撮像装置の動作方法において、前記光電変換素子の出力値を一定時間ごとに前記二次記録部に記録する工程と、前記一次記録部に記録した値と、前記二次記録部に記録した値とを比較する工程と、前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する工程と、を含むことを特徴とする撮像装置の動作方法が提供される。
【0011】
好ましくは、前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了する。
好ましくは、前記光電変換素子の受光面側に、特定の生体高分子と結合するプローブを設ける。
好ましくは、前記撮像装置は、前記光電変換素子の受光面に流路を備え、前記光電変換素子の出力値を記録する工程の前に、前記流路を通って試料溶液が供給される工程と、前記流路を通って化学発光基質含有溶液が供給される工程と、を更に備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化学反応の時間的なずれに対応可能な生体高分子分析チップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る分析装置について説明する。
〔1〕分析装置
図1は分析装置80の構成を示すブロック図である。図1に示すように、分析装置80は、生体高分子分析チップ1と、生体高分子分析チップ1に接続され、生体高分子分析チップ1を制御するコンピュータ81と、コンピュータ81から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置82と、コンピュータ81により制御される励起光照射装置83と、温度調整部84と、を備える。
【0015】
コンピュータ81は、CPU86、RAM87、温度制御回路85、撮像素子制御回路88等を備える。CPU86は、生体高分子分析チップ1のトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73に固体撮像デバイス10の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コンピュータ81は入力した二次元の画像データに従った画像を出力装置82に出力させる機能を有する。
【0016】
撮像素子制御回路88は、アダプタ89により生体高分子分析チップ1と接続される。
温度制御回路85はCPU86により駆動され、温度調整部84を制御する。
【0017】
RAM87には、撮像素子制御回路88から出力された信号が二次元の画像データとして記録される。
バルブ制御回路83はCPU86により駆動され、流量制御バルブ54a,56aを制御する。
【0018】
撮像素子制御回路88は、生体高分子分析チップ1から入力された電気信号をA/D変換するA/Dコンバータを備え、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。
【0019】
出力装置82はプロッタ、プリンタ又はディスプレイであり、RAM87に記録された二次元の画像データを出力する。
励起光照射装置83は、後述する蛍光体を励起する励起光を生体高分子分析チップ1に照射する。
【0020】
〔2〕生体高分子分析チップ
生体高分子分析チップ1は、DNAを検出するDNAチップであり、固体撮像デバイス10と、固体撮像デバイス10を駆動するボトムゲートドライバ71、ドレインドライバ73、トップゲートドライバ74及びROM75と、固体撮像デバイス10の受光面上に点在した複数のスポット60,60,…と、固体撮像デバイス10の受光面側に設けられた流路構造体51と、を具備する。
【0021】
ここで、図2、図3を用いて、流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10について説明する。図2は、流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10の受光面側を示す概略平面図であり、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。図2、図3に示すように、固体撮像デバイス10は、基板17と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、スポット固定層35とを積層してなる。これらの層間に、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43、トップゲートライン44、及び、ダブルゲートトランジスタ20を形成するボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25,26、ソース電極27、ドレイン電極28、トップゲート電極31が適宜設けられている。
【0022】
基板17は、絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0023】
この固体撮像デバイス10においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が窒化シリコン(SiN)等の保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
なお、図1では8行×8列のマトリクス状の二次元アレイを示すが、さらに多くの行及び列を有していてもよい。
【0024】
図4はダブルゲートトランジスタ20を示す平面図であり、図5は図4のV−V矢視断面図である。図4、図5に示すように、ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、半導体膜23上に形成されたチャネル保護膜24と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極31と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜26に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号を出力するものである。
【0025】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに基板17上に形成されている。また、基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0026】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0027】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0028】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23にはキャリアとして正孔及び電子が発生する。
【0029】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部、チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部、チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0030】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0031】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0032】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極31がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極31は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0033】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜32によってまとめて被覆され、保護絶縁膜32は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0034】
保護絶縁膜32の上面には、スポット固定層35が設けられている。スポット固定層35は、スポット60となる後述するプローブと共有結合または静電結合することで、スポットを固定する。スポット固定層35が設けられた側の面が、固体撮像デバイスの受光面となる。
【0035】
以上のように構成された固体撮像デバイス10は、スポット固定層35の表面を受光面としており、遮光材37が設けられたものを除く各ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0036】
トップゲートドライバ74は、シフトレジスタである。つまり、図6に示すように、トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時にキャリアを蓄積するためのローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。
【0037】
ボトムゲートドライバ71は、シフトレジスタである。つまり、図6に示すように、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のオンレベル(ハイレベル)であり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のオフレベル(ローレベル)である。
【0038】
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後にキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ71が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ71が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0039】
図6に示すように、ドレインドライバ73は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ73は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧を増幅してコンピュータ71のA/Dコンバータに出力するようになっている。
【0040】
ROM75には、ピーク監視用タイマーの初期値となる値Tpmが格納されている。
【0041】
〔3〕スポット
図2、図3に示すように、固体撮像デバイス10の受光面にはスポット60が形成されている。各スポット60は、プローブDNA61となる既知の塩基配列のcDNAや抗体等の溶液をスポット固定層35上に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知の塩基配列のcDNAを用いた場合について説明する。
【0042】
1つのスポット60では同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNA61が多数集まった群集が固体撮像デバイス10の受光面に固定化され、スポット60ごとにプローブDNA61は異なる塩基配列となっている。プローブDNA61としては、既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。具体的には、例えば、後述する酵素標識DNAで用いるのと同じ細胞検体から作成したcDNAライブラリを用いることができる。
【0043】
1つのスポット60はダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されている。なお、1つのスポット60に重なったダブルゲートトランジスタ20の数は異なっていてもよい。また、図1では2×2個のスポット60が形成されているが、スポット60の数は固体撮像デバイス10の大きさに合わせた任意の数にすることができる。
【0044】
〔4〕酵素標識DNA
上記生体高分子分析チップ1で分析する試料としては、DNAを用いることができる。試料となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて得られたcDNAを用いることができる。また、ゲノムDNAや、ゲノムDNAの一部を、酵素を用いて増幅したものも用いることができる。cDNAは例えばアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼ等、後述する化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素で標識する。ゲノムDNAは、例えばアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼ等、後述する化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素が標識できるプライマを用いる。
【0045】
cDNAを酵素で標識するには、例えば、酵素で標識されたオリゴdTプライマや、標識されたdNTPミックスを用いてRT−PCR反応を実施すればよい。ゲノムDNAの一部を酵素で標識するには、例えばビオチン等が修飾されたプライマを用いてPCR反応を実施後に、アビジン等が修飾された化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素と反応させればよい。以下では、この標識されたcDNA、またはゲノムDNAを酵素標識DNAという。
【0046】
〔5〕流路構造体
流路構造体51はスポット固定層35上に密着され、固体撮像デバイス10の受光面に流路52、53を形成する。各流路52、53の両端部は、それぞれ流路構造体51に設けられた開口52a,52b,53a,53bにより外部と通じている。
流路構造体51は不透明であり、外部から入射された光が流路構造体51を透過して進入することを防ぐ。
【0047】
図7は流路構造体51への配管の接続例を示す模式図である。図7において、開口52aが流入パイプ54と接続されており、開口52bと開口53aとが接続パイプ55により接続されており、開口53bが流出パイプ56と接続されている。流入パイプ54及び流出パイプ56には、それぞれ流量制御バルブ54a,56aが設けられている。
【0048】
流量制御弁54a,56aを開くと、流入パイプ54から化学発光基質含有溶液が供給される。化学発光基質含有溶液は流入パイプ54から流入し、流路52、接続パイプ55、流路53を通過し、流出パイプ56より排出される。
【0049】
〔6〕化学発光基質
酵素標識DNAを検出するのに用いる化学発光基質について説明する。化学発光基質としては、酵素標識DNAの標識に用いられた酵素を触媒として利用した化学反応により励起状態の蛍光物質を生成するものを用いることができる。
具体的には、例えばアルカリホスファターゼの基質となるジオキセタン系の誘導体や、ペルオキシダーゼの基質となるルミノール系の化合物を用いることができる。
【0050】
ジオキセタン系の誘導体として、化学式1に示すアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体(C18H19Cl2O7PNa2)を例に挙げて説明する。アダマンチルジオキセタン塩素化誘導体はリン酸基を有し、アルカリホスファターゼの基質となる。
【化1】
【0051】
アルカリホスファターゼはアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体のリン酸基を加水分解し、化学式2に示す不安定な中間体を形成する。
【化2】
【0052】
中間体は自然開裂し、化学式3に示すアダマンタノンと蛍光体とに分解される。この蛍光体は励起状態であり、蛍光体が基底状態に遷移するときのエネルギーが光として放出される。
【化3】
【0053】
〔7〕ハイブリダイゼーション
以下、酵素標識DNAをプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法について説明する。まず、図8に示すように、作業者が、酵素64で標識した酵素標識DNA62を含有した溶液(以下、酵素標識DNA溶液という)を流路52,53内に注入する。なお、酵素標識DNA溶液を流路52,53内のスポット60,60,…に順次又は同時に滴下してもよい。このとき、酵素標識DNA62及びプローブDNA61が一本鎖となるように酵素標識DNA溶液は加熱されている。
【0054】
次いで、プローブDNA61と酵素標識DNA62とがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ1の流路52を所定の温度に冷却する。すると、図9に示すように、流路52内に注入された酵素標識DNA溶液内の酵素標識DNA62のうち、スポット60のプローブDNA61と相補的なものは、プローブDNA61とハイブリダイズする。一方、プローブDNA61と相補的ではない酵素標識DNA62は、そのスポット60には結合しない。
その後、流路52、53内の酵素標識DNA溶液を洗浄用バッファー溶液で洗い流し、酵素標識DNA62のうちプローブDNA61とハイブリダイズしなかったものを流路52内から除去する。
【0055】
〔8〕サンプルの検出
次に、酵素標識DNA62の検出方法について説明する。
上記処理を行った生体高分子分析チップ1を分析装置80にセッティングし、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をCPU71に接続し、CPU71を起動する。
【0056】
次に、図7の流量制御弁54a,56aを開き、各ウェル40に化学発光基質91を含む溶液を注入する。化学発光基質91を含む溶液を注入する前に各ウェル40内に化学発光基質91が泳動するためのバッファー溶液が入れられていてもよく、化学発光基質91を含む溶液自体が泳動用のバッファー溶液を兼ねていてもよい。
【0057】
スポット60のプローブDNA61に酵素標識DNA62がハイブリダイズしたウェル40では、酵素標識DNA62を標識する酵素63により化学発光基質91が加水分解され、不安定な中間体を経て励起状態の蛍光体92が生成される。励起状態の蛍光体92が基底状態に遷移するときに蛍光(主に可視光波長域)が放出され、蛍光を発するスポット60に対応するフォトセンサ20に蛍光が入射して電子−正孔対が発生する。
この間、CPU86による撮像動作が行われる。
【0058】
〔9〕撮像動作
ここで、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73による固体撮像デバイス10の通常の撮像動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から最終行目(図2の場合は8行目)のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ71がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ73が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0059】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。図6に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極30の電圧により反発して吐出される。
【0060】
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了して、半導体膜23に蛍光が入射することによって半導体膜23内に生成された電子−正孔対のうちの正孔を電気的に捕捉するためのするため負電位(−20〔V〕をトップゲートライン44に出力する。つまり、i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0061】
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ73が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極30に印加されている電位が−20〔V〕であり、この負電界によって半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔による電界は、必然的に負電界を完全に相殺して半導体膜23のチャネル領域にnチャネルを形成する程度の正電界には成り得ず、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、ドレイン電極28とソース電極27との間にプリチャージパルスの電位差が生じても半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0062】
次に、ドレインドライバ73がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ71がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ71がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0063】
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極30の負電界を緩和するように働くため、入射される光量が十分あってキャリアの量が十分あれば、ボトムゲート電極21の正電界とあわせて半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0064】
ここで、キャリア蓄積期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の減少傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。
【0065】
そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ73を介して、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧を検出し、A/Dコンバータが蛍光の輝度階調0〜255の値にA/D変換する。なお、ドレインライン43の電圧がプリチャージパルスと同じ+5〔V〕であればA/Dコンバータの出力は階調0であり、0〔V〕であれば階調255である。これにより、光の強度が0〜255の値に換算される。
【0066】
なお、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ73を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。また、図5では、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、ボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスが立ち下がってからであるが、これに限らず、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、トップゲートドライバ74のi行目のリセットパルスの立ち下がり直後からボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスの立ち下がりまでの間であってもよい。ただし、(i+1)行目のダブルゲートトランジスタ20のためにドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスの出力は、ボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスの立ち下がり以降になるように設定されている。
【0067】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返されることにより、生体高分子分析チップ1上の光の強度分布がRAM87のメモリーセルに記録される。
【0068】
ところで、化学発光は酵素による化学発光基質の分解により行われる。このため、図10に示すように、発光量がピークとなる反応時間は化学発光基質の濃度によって異なる。このとき、反応時間とは、化学発光基質91を含む溶液を各ウェル40内に注入してからの時間である。
また、図11に示すように、実際に計測される発光強度には揺らぎがあるため、発光量がピークとなる反応時間を正確に捉えることが困難である。
そこで、本実施形態においては、以下に示す方法により、発光量のピークとなる値を保存する。
【0069】
RAM87のメモリーセルには、図12(a)に示すように、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれに1対1で対応するリード用メモリーセル(二次記録部)と、図12(b)に示すピーク保存用メモリーセル(一次記録部)とが設けられる。撮像動作では、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値は、対応する各リード用メモリーセルA1〜H8に保存される。また、RAM87には、図12(c)に示すように、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTが設けられる。
【0070】
本実施形態においては、上記の撮像動作を一定時間ごとに行い、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録する。以下、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録するCPU86の動作について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
まず、CPU86は、ピーク保存用メモリーセルの初期化(全てを0にする)を行う(ステップS1)。次に、CPU86は、ピーク監視用タイマーの初期値となる値TpmをROM75から読み出し、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTに書き込む(ステップS2)。
【0072】
次に、CPU86は、一定時間ごとに撮像動作を行い、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値を対応する各リード用メモリーセルに保存する(ステップS3)。
次に、CPU86は、各リード用メモリーセルの値と、対応するピーク保存用メモリーセルの値とを比較する。ピーク保存用メモリーセルの値よりもリード用メモリーセルの値が大きいときは、ピーク保存用メモリーセルの値をリード用メモリーセルの値に置き換える(ステップS4)。
【0073】
次に、CPU86は、ピーク保存メモリーセルの書き換えがあったか否かを判断する(ステップS5)。ピーク保存用メモリーセルの書き換えがあった場合(ステップS5→Yes)には、ステップS2に戻る。ピーク保存用メモリーセルの書き換えがなかった場合(ステップS5→No)には、CPU86は、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTの値を1減らした値に書き換える(ステップS6)。
【0074】
次に、CPU86は、Tの値が0以下となったか否かを判断し(ステップS7)、Tが0よりも大きければ(ステップS7→No)ステップS3〜S7の動作を繰り返す。Tが0以下であれば(ステップS7→Yes)ピーク値の記録動作を終了する。
すなわち、最後にピーク値を記録した後、ステップS3〜S7にかかる時間にTpmを乗じた時間を経過したときに、記録動作を終了する。
その後、CPU86は、ピーク保存用メモリーセルに記録された値を光強度分布とする画像を出力装置82に出力する。得られる画像には、A1〜H8までの各ダブルゲートトランジスタ20,20,…の最大出力値が反映される。
【0075】
作業者は、出力装置82に出力された画像により、各スポット60,60,…におけるハイブリダイゼーションの有無を確認することができる。ハイブリダイゼーションが起きていれば、そのスポット60のプローブDNA61と相補的な塩基配列のmRNAが細胞検体内で生成されていることがわかる。このため、化学発光が検出されたスポット60のプローブDNA61の種類により、検体内でどのような遺伝子が発現しているかを直接確認することができる。
【0076】
<変形例>
次に、本実施の形態の変形例に係る生体高分子分析チップ101について説明する。この生体高分子分析チップ101は、抗原タンパクを検出する抗体チップである。
本実施の形態に係る生体高分子チップ101には、スポット160にプローブ抗体161が用いられている点を除き、固体撮像デバイス110、分析装置180等の構成については生体高分子分析チップ1と同様であり、同様の構成については下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0077】
抗体チップでは、プローブとして、検出する既知のタンパク質や糖鎖等の抗原と結合する抗体(以下、プローブ抗体という)を用いる。
具体的には、図14に示すように、固体撮像デバイス110の流路152,153にプローブ抗体161を含む溶液を滴下し、乾燥してスポット160を形成する。なお、流路52,53に滴下されるプローブ抗体161はそれぞれ異なるタンパク質を抗原とし、同じスポット160を形成するプローブ抗体161は同一の抗原決定基を認識する。プローブ抗体161となる抗体としては、モノクローナル抗体を用いることができる。
【0078】
次に、サンプルとなる抗原162を含む溶液(以下、サンプル溶液という)を流路52,53内に注入する。
プローブ抗体161にサンプル溶液中の抗原162が結合するのに充分な時間が経過した後、流路152,153内のサンプル溶液をバッファー溶液で洗い流し、サンプル溶液とともに抗原162のうちプローブ抗体161と結合しなかったものを流路152,153内から除去する。
【0079】
次に、流路152,153内に、プローブ抗体161が認識するのと同じ抗原162の異なる抗原決定基を認識する抗体を酵素164で標識したもの(以下、酵素標識抗体163という)の溶液(以下、蛍光標識抗体溶液という)を注入する。
プローブ抗体161に結合した抗原162と酵素標識抗体163とが結合するのに充分な時間が経過した後、流路52内の蛍光標識抗体溶液をバッファー溶液で洗い流し、蛍光標識抗体溶液中の酵素標識抗体163のうち抗原162と結合しなかったものを流路152,153内から除去する。
以後、第1実施形態の〔8〕サンプルの検出、〔9〕撮像動作 と同様にして、分析装置180による固体撮像デバイス110の冷却及び光量データの計測動作を行う。
【0080】
作業者は、出力装置182に出力された画像により、各スポット160,160,…における抗原162の有無を確認することができる。このため、化学発光が検出されたスポット160のプローブ抗体161の種類により、検体内でどのようなタンパク質(抗原162)が生成されているかを直接確認することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0082】
例えば、上記実施形態では、プローブとして既知の塩基配列の一本鎖DNAや抗体を用いたが、その他の既知の生体高分子や低分子等を用いてもよい。例えば、抗原となるペプチドやタンパク、糖鎖、低分子リガンド、既知の細胞等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る分析装置80の構成を示すブロック図である。
【図2】流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10の受光面側を示す概略平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】ダブルゲートトランジスタ20を示す平面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】固体撮像デバイス10に出力される電気信号のレベルの推移を示したタイミングチャートである。
【図7】流路構造体51への配管の接続例を示す模式図である。
【図8】酵素標識DNA62をプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法についての説明図である。
【図9】酵素標識DNA62をプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法についての説明図である。
【図10】化学発光基質の濃度を変えたときの発光量と反応時間との関係を示すグラフである。
【図11】図10の低濃度におけるピーク部分の拡大図である。
【図12】(a)はリード用メモリーセル、(b)はピーク保存用メモリーセル、(c)はピーク監視用タイマー用のメモリーセルTを示す模式図である。
【図13】ダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録するCPU86の動作を示すフローチャートである。
【図14】流路構造体151及びスポット160が形成された固体撮像デバイス110を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,101 生体高分子分析チップ
10,110 固体撮像デバイス(撮像装置)
20,120 ダブルゲートトランジスタ
60,160 スポット
61 プローブDNA
62 酵素標識DNA
64,164 酵素
165 抗原
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子分析チップ等に用いる撮像装置及び撮像装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な生物種の遺伝子の発現解析を行うためにDNAチップや抗体チップ等の生体高分子分析チップやその読取装置が開発されている。生体高分子分析チップは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAや抗体をスライドガラス等の固体担体上にマトリクス状に整列固定させたものである。例えば、DNAチップ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0003】
まず、既知の塩基配列を有した複数種類のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAチップを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、標識物質で標識したものを用意する(以下、標識DNAという)。ここで、標識物質には化学発光基質を発光させる酵素等を用いることができる。
次に、標識DNAをDNAチップ上に添加すると、標識DNAが相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAチップ上に固定される。
【0004】
次いで、DNAチップを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、DNAチップに対して二次元的に移動する集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAチップを走査する標識物質により発した光を集光レンズで集光させ、光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAチップの面内の光強度分布を計測し、これにより、DNAチップ上の光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有した標識DNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって検体で発現しているmRNAを同定することができる。
【0005】
また、複数の撮像素子を二次元アレイ状に配列してなる固体撮像デバイスの受光面にDNAや抗体等のプローブ分子をスポットした生体高分子分析チップが開発されている。このような生体高分子分析チップでは、スポットに付着した標識DNA等の生体高分子を標識する標識物質により発生する光を各光電変換素子により計測する。固体撮像デバイスの受光面にスポットが点在しており、受光面に付着された生体高分子と光電変換素子との間の距離が近いために標識物質から発した光があまり減衰せずに固体撮像デバイスの受光面に入射するため、僅かな光量でも計測が可能であるという利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−286643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような生体高分子分析チップにおいては、二次元アレイ状に配列した複数の撮像素子でほぼ同時に光量を測定する。しかし、標識物質に化学発光物質を基質とする酵素を用いた場合、化学反応の時間的なずれに対応するのが困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決し、化学反応の時間的なずれに対応可能な生体高分子分析チップ及び生体高分子分析チップの動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部と、前記光電変換素子の出力値が一定時間ごとに記録される二次記録部と、記録前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する制御部と、を備えることを特徴とする撮像装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記制御部は、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了する。
好ましくは、前記光電変換素子の受光面側に設けられ、特定の生体高分子と結合するプローブを備える。
好ましくは、前記プローブが備えられた前記光電変換素子の受光面側のスポット固定層に密着して流路が設けられる。
好ましくは、前記プローブは既知の塩基配列を有する一本鎖DNAである。
あるいは、好ましくは、前記プローブは特定の抗原と結合する抗体である。
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の二の態様によれば、光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部と、を備えた撮像装置の動作方法において、前記光電変換素子の出力値を一定時間ごとに前記二次記録部に記録する工程と、前記一次記録部に記録した値と、前記二次記録部に記録した値とを比較する工程と、前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する工程と、を含むことを特徴とする撮像装置の動作方法が提供される。
【0011】
好ましくは、前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了する。
好ましくは、前記光電変換素子の受光面側に、特定の生体高分子と結合するプローブを設ける。
好ましくは、前記撮像装置は、前記光電変換素子の受光面に流路を備え、前記光電変換素子の出力値を記録する工程の前に、前記流路を通って試料溶液が供給される工程と、前記流路を通って化学発光基質含有溶液が供給される工程と、を更に備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化学反応の時間的なずれに対応可能な生体高分子分析チップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る分析装置について説明する。
〔1〕分析装置
図1は分析装置80の構成を示すブロック図である。図1に示すように、分析装置80は、生体高分子分析チップ1と、生体高分子分析チップ1に接続され、生体高分子分析チップ1を制御するコンピュータ81と、コンピュータ81から出力された信号により出力(表示又はプリント)を行う出力装置82と、コンピュータ81により制御される励起光照射装置83と、温度調整部84と、を備える。
【0015】
コンピュータ81は、CPU86、RAM87、温度制御回路85、撮像素子制御回路88等を備える。CPU86は、生体高分子分析チップ1のトップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73に固体撮像デバイス10の駆動動作を行わせる機能を有する。また、コンピュータ81は入力した二次元の画像データに従った画像を出力装置82に出力させる機能を有する。
【0016】
撮像素子制御回路88は、アダプタ89により生体高分子分析チップ1と接続される。
温度制御回路85はCPU86により駆動され、温度調整部84を制御する。
【0017】
RAM87には、撮像素子制御回路88から出力された信号が二次元の画像データとして記録される。
バルブ制御回路83はCPU86により駆動され、流量制御バルブ54a,56aを制御する。
【0018】
撮像素子制御回路88は、生体高分子分析チップ1から入力された電気信号をA/D変換するA/Dコンバータを備え、固体撮像デバイス10の受光面に沿った光強度分布を二次元の画像データとして取得する機能を有する。
【0019】
出力装置82はプロッタ、プリンタ又はディスプレイであり、RAM87に記録された二次元の画像データを出力する。
励起光照射装置83は、後述する蛍光体を励起する励起光を生体高分子分析チップ1に照射する。
【0020】
〔2〕生体高分子分析チップ
生体高分子分析チップ1は、DNAを検出するDNAチップであり、固体撮像デバイス10と、固体撮像デバイス10を駆動するボトムゲートドライバ71、ドレインドライバ73、トップゲートドライバ74及びROM75と、固体撮像デバイス10の受光面上に点在した複数のスポット60,60,…と、固体撮像デバイス10の受光面側に設けられた流路構造体51と、を具備する。
【0021】
ここで、図2、図3を用いて、流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10について説明する。図2は、流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10の受光面側を示す概略平面図であり、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。図2、図3に示すように、固体撮像デバイス10は、基板17と、ボトムゲート絶縁膜22と、トップゲート絶縁膜29と、保護絶縁膜32と、スポット固定層35とを積層してなる。これらの層間に、複数のボトムゲートライン41、ソースライン42、ドレインライン43、トップゲートライン44、及び、ダブルゲートトランジスタ20を形成するボトムゲート電極21、半導体膜23、チャネル保護膜24、不純物半導体膜25,26、ソース電極27、ドレイン電極28、トップゲート電極31が適宜設けられている。
【0022】
基板17は、絶縁性を有し、石英ガラス等といったガラス基板又はポリカーボネート、PMMA等といったプラスチック基板である。
【0023】
この固体撮像デバイス10においては、光電変換素子としてダブルゲート型電界効果トランジスタ(以下、ダブルゲートトランジスタという。)20が利用され、複数のダブルゲートトランジスタ20,20,…が基板17上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列され、これらダブルゲートトランジスタ20,20,…が窒化シリコン(SiN)等の保護絶縁膜32によってまとめて被覆されている。
なお、図1では8行×8列のマトリクス状の二次元アレイを示すが、さらに多くの行及び列を有していてもよい。
【0024】
図4はダブルゲートトランジスタ20を示す平面図であり、図5は図4のV−V矢視断面図である。図4、図5に示すように、ダブルゲートトランジスタ20,20,…は何れも、受光部である半導体膜23と、半導体膜23上に形成されたチャネル保護膜24と、ボトムゲート絶縁膜22を挟んで半導体膜23の下に形成されたボトムゲート電極21と、トップゲート絶縁膜29を挟んで半導体膜23の上に形成されたトップゲート電極31と、半導体膜23の一部に重なるよう形成された不純物半導体膜25と、半導体膜23の別の部分に重なるよう形成された不純物半導体膜26と、不純物半導体膜25に重なったソース電極27と、不純物半導体膜26に重なったドレイン電極28と、を備え、半導体膜23において受光した光量に従ったレベルの電気信号を出力するものである。
【0025】
ボトムゲート電極21は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに基板17上に形成されている。また、基板17上には横方向に延在する複数本のボトムゲートライン41,41,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれのボトムゲート電極21が共通のボトムゲートライン41と一体となって形成されている。ボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41は、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0026】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のボトムゲート電極21及びボトムゲートライン41,41,…はボトムゲート絶縁膜22によってまとめて被覆されている。すなわち、ボトムゲート絶縁膜22は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。ボトムゲート絶縁膜22は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる。
【0027】
ボトムゲート絶縁膜22上には、複数の半導体膜23がマトリクス状に配列するよう形成されている。半導体膜23は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立して形成されており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20においてボトムゲート電極21に対して対向配置され、ボトムゲート電極21との間にボトムゲート絶縁膜22を挟んでいる。半導体膜23は、平面視して略矩形状を呈しており、受光した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対を生成するアモルファスシリコン又はポリシリコンで形成された層である。
【0028】
半導体膜23上には、チャネル保護膜24が形成されている。チャネル保護膜24は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされており、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23の中央部上に形成されている。チャネル保護膜24は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜24は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜23の界面を保護するものである。半導体膜23に光が入射すると、入射した光量に従った量の電子−正孔対がチャネル保護膜24と半導体膜23との界面付近を中心に発生するようになっている。この場合、半導体膜23にはキャリアとして正孔及び電子が発生する。
【0029】
半導体膜23の一端部上には、不純物半導体膜25が一部、チャネル保護膜24に重なるようにして形成されており、半導体膜23の他端部上には、不純物半導体膜26が一部、チャネル保護膜24に重なるようにして形成されている。不純物半導体膜25,26は、ダブルゲートトランジスタ20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜25,26は、n型の不純物イオンを含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0030】
不純物半導体膜25上には、ソース電極27が形成され、不純物半導体膜26上には、ドレイン電極28が形成されている。ソース電極27及びドレイン電極28はダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。縦方向に延在する複数本のソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…がボトムゲート絶縁膜22上に形成されている。縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27は共通のソースライン42と一体に形成されており、縦方向に配列された同一の列のダブルゲートトランジスタ20,20,…のドレイン電極28は共通のドレインライン43と一体に形成されている。ソース電極27、ドレイン電極28、ソースライン42及びドレインライン43は、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0031】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のソース電極27及びドレイン電極28並びにソースライン42,42,…及びドレインライン43,43,…は、トップゲート絶縁膜29によってまとめて被覆されている。トップゲート絶縁膜29は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。トップゲート絶縁膜29は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0032】
トップゲート絶縁膜29上には、複数のトップゲート電極31がダブルゲートトランジスタ20ごとに形成されている。トップゲート電極31は、それぞれのダブルゲートトランジスタ20において半導体膜23に対して対向配置され、半導体膜23との間にトップゲート絶縁膜29及びチャネル保護膜24を挟んでいる。また、トップゲート絶縁膜29上には横方向に延在する複数本のトップゲートライン44,44,…が形成されており、横方向に配列された同一の行のダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31が共通のトップゲートライン44と一体に形成されている。トップゲート電極31及びトップゲートライン44は、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
【0033】
ダブルゲートトランジスタ20,20,…のトップゲート電極31及びトップゲートライン44,44,…は保護絶縁膜32によってまとめて被覆され、保護絶縁膜32は全てのダブルゲートトランジスタ20,20,…に共通して形成された膜である。保護絶縁膜32は、絶縁性及び光透過性を有し、窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0034】
保護絶縁膜32の上面には、スポット固定層35が設けられている。スポット固定層35は、スポット60となる後述するプローブと共有結合または静電結合することで、スポットを固定する。スポット固定層35が設けられた側の面が、固体撮像デバイスの受光面となる。
【0035】
以上のように構成された固体撮像デバイス10は、スポット固定層35の表面を受光面としており、遮光材37が設けられたものを除く各ダブルゲートトランジスタ20の半導体膜23において受光した光量を電気信号に変換するように設けられている。
【0036】
トップゲートドライバ74は、シフトレジスタである。つまり、図6に示すように、トップゲートドライバ74はトップゲートライン44,44,…にリセットパルスを順次出力するようになっている。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時にキャリアを蓄積するためのローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン44に印加するようになっている。
【0037】
ボトムゲートドライバ71は、シフトレジスタである。つまり、図6に示すように、ボトムゲートライン41,41,…にリードパルスを順次出力するようになっている。リードパルスのレベルは+10〔V〕のオンレベル(ハイレベル)であり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のオフレベル(ローレベル)である。
【0038】
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン44にリセットパルスを出力した後にキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ71が同じ行のボトムゲートライン41にリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ71が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン44へのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン41へのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0039】
図6に示すように、ドレインドライバ73は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ73は、プリチャージパルスの出力後にドレインライン43,43,…の電圧を増幅してコンピュータ71のA/Dコンバータに出力するようになっている。
【0040】
ROM75には、ピーク監視用タイマーの初期値となる値Tpmが格納されている。
【0041】
〔3〕スポット
図2、図3に示すように、固体撮像デバイス10の受光面にはスポット60が形成されている。各スポット60は、プローブDNA61となる既知の塩基配列のcDNAや抗体等の溶液をスポット固定層35上に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知の塩基配列のcDNAを用いた場合について説明する。
【0042】
1つのスポット60では同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNA61が多数集まった群集が固体撮像デバイス10の受光面に固定化され、スポット60ごとにプローブDNA61は異なる塩基配列となっている。プローブDNA61としては、既知のmRNAの塩基配列、またはその一部と同一の、あるいは相補的な塩基配列のDNAが用いられる。具体的には、例えば、後述する酵素標識DNAで用いるのと同じ細胞検体から作成したcDNAライブラリを用いることができる。
【0043】
1つのスポット60はダブルゲートトランジスタ20上に重なるように形成されている。なお、1つのスポット60に重なったダブルゲートトランジスタ20の数は異なっていてもよい。また、図1では2×2個のスポット60が形成されているが、スポット60の数は固体撮像デバイス10の大きさに合わせた任意の数にすることができる。
【0044】
〔4〕酵素標識DNA
上記生体高分子分析チップ1で分析する試料としては、DNAを用いることができる。試料となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて得られたcDNAを用いることができる。また、ゲノムDNAや、ゲノムDNAの一部を、酵素を用いて増幅したものも用いることができる。cDNAは例えばアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼ等、後述する化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素で標識する。ゲノムDNAは、例えばアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼ等、後述する化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素が標識できるプライマを用いる。
【0045】
cDNAを酵素で標識するには、例えば、酵素で標識されたオリゴdTプライマや、標識されたdNTPミックスを用いてRT−PCR反応を実施すればよい。ゲノムDNAの一部を酵素で標識するには、例えばビオチン等が修飾されたプライマを用いてPCR反応を実施後に、アビジン等が修飾された化学発光基質の反応の触媒として機能する酵素と反応させればよい。以下では、この標識されたcDNA、またはゲノムDNAを酵素標識DNAという。
【0046】
〔5〕流路構造体
流路構造体51はスポット固定層35上に密着され、固体撮像デバイス10の受光面に流路52、53を形成する。各流路52、53の両端部は、それぞれ流路構造体51に設けられた開口52a,52b,53a,53bにより外部と通じている。
流路構造体51は不透明であり、外部から入射された光が流路構造体51を透過して進入することを防ぐ。
【0047】
図7は流路構造体51への配管の接続例を示す模式図である。図7において、開口52aが流入パイプ54と接続されており、開口52bと開口53aとが接続パイプ55により接続されており、開口53bが流出パイプ56と接続されている。流入パイプ54及び流出パイプ56には、それぞれ流量制御バルブ54a,56aが設けられている。
【0048】
流量制御弁54a,56aを開くと、流入パイプ54から化学発光基質含有溶液が供給される。化学発光基質含有溶液は流入パイプ54から流入し、流路52、接続パイプ55、流路53を通過し、流出パイプ56より排出される。
【0049】
〔6〕化学発光基質
酵素標識DNAを検出するのに用いる化学発光基質について説明する。化学発光基質としては、酵素標識DNAの標識に用いられた酵素を触媒として利用した化学反応により励起状態の蛍光物質を生成するものを用いることができる。
具体的には、例えばアルカリホスファターゼの基質となるジオキセタン系の誘導体や、ペルオキシダーゼの基質となるルミノール系の化合物を用いることができる。
【0050】
ジオキセタン系の誘導体として、化学式1に示すアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体(C18H19Cl2O7PNa2)を例に挙げて説明する。アダマンチルジオキセタン塩素化誘導体はリン酸基を有し、アルカリホスファターゼの基質となる。
【化1】
【0051】
アルカリホスファターゼはアダマンチルジオキセタン塩素化誘導体のリン酸基を加水分解し、化学式2に示す不安定な中間体を形成する。
【化2】
【0052】
中間体は自然開裂し、化学式3に示すアダマンタノンと蛍光体とに分解される。この蛍光体は励起状態であり、蛍光体が基底状態に遷移するときのエネルギーが光として放出される。
【化3】
【0053】
〔7〕ハイブリダイゼーション
以下、酵素標識DNAをプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法について説明する。まず、図8に示すように、作業者が、酵素64で標識した酵素標識DNA62を含有した溶液(以下、酵素標識DNA溶液という)を流路52,53内に注入する。なお、酵素標識DNA溶液を流路52,53内のスポット60,60,…に順次又は同時に滴下してもよい。このとき、酵素標識DNA62及びプローブDNA61が一本鎖となるように酵素標識DNA溶液は加熱されている。
【0054】
次いで、プローブDNA61と酵素標識DNA62とがハイブリダイゼーションを引き起こすように、生体高分子分析チップ1の流路52を所定の温度に冷却する。すると、図9に示すように、流路52内に注入された酵素標識DNA溶液内の酵素標識DNA62のうち、スポット60のプローブDNA61と相補的なものは、プローブDNA61とハイブリダイズする。一方、プローブDNA61と相補的ではない酵素標識DNA62は、そのスポット60には結合しない。
その後、流路52、53内の酵素標識DNA溶液を洗浄用バッファー溶液で洗い流し、酵素標識DNA62のうちプローブDNA61とハイブリダイズしなかったものを流路52内から除去する。
【0055】
〔8〕サンプルの検出
次に、酵素標識DNA62の検出方法について説明する。
上記処理を行った生体高分子分析チップ1を分析装置80にセッティングし、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をCPU71に接続し、CPU71を起動する。
【0056】
次に、図7の流量制御弁54a,56aを開き、各ウェル40に化学発光基質91を含む溶液を注入する。化学発光基質91を含む溶液を注入する前に各ウェル40内に化学発光基質91が泳動するためのバッファー溶液が入れられていてもよく、化学発光基質91を含む溶液自体が泳動用のバッファー溶液を兼ねていてもよい。
【0057】
スポット60のプローブDNA61に酵素標識DNA62がハイブリダイズしたウェル40では、酵素標識DNA62を標識する酵素63により化学発光基質91が加水分解され、不安定な中間体を経て励起状態の蛍光体92が生成される。励起状態の蛍光体92が基底状態に遷移するときに蛍光(主に可視光波長域)が放出され、蛍光を発するスポット60に対応するフォトセンサ20に蛍光が入射して電子−正孔対が発生する。
この間、CPU86による撮像動作が行われる。
【0058】
〔9〕撮像動作
ここで、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ71及びドレインドライバ73による固体撮像デバイス10の通常の撮像動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン44から最終行目(図2の場合は8行目)のトップゲートライン44へと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ71がボトムゲートライン41,41,41,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ73が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン43,43,…に出力する。
【0059】
i行目の各ダブルゲートトランジスタ20の動作について詳細に説明する。図6に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン44がハイレベルになる。i行目のトップゲートライン44がハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20では、半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極30の電圧により反発して吐出される。
【0060】
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン44にリセットパルスを出力することを終了して、半導体膜23に蛍光が入射することによって半導体膜23内に生成された電子−正孔対のうちの正孔を電気的に捕捉するためのするため負電位(−20〔V〕をトップゲートライン44に出力する。つまり、i行目のトップゲートライン44のリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜23内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極30の電界により半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積される。
【0061】
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ73が全てのドレインライン43,43,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20においては、トップゲート電極30に印加されている電位が−20〔V〕であり、この負電界によって半導体膜23内や半導体膜23とチャネル保護膜24との界面近傍に蓄積された正孔による電界は、必然的に負電界を完全に相殺して半導体膜23のチャネル領域にnチャネルを形成する程度の正電界には成り得ず、ボトムゲート電極21に印加されている電位が±0〔V〕であるため、ドレイン電極28とソース電極27との間にプリチャージパルスの電位差が生じても半導体膜23にはチャネルが形成されず、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極28とソース電極27との間に電流が流れないため、ドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各ダブルゲートトランジスタ20のドレイン電極28に電荷がチャージされる。
【0062】
次に、ドレインドライバ73がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ71がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ71がi行目のボトムゲートライン41にリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20のボトムゲート電極21に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各ダブルゲートトランジスタ20がオン状態になる。
【0063】
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極30の負電界を緩和するように働くため、入射される光量が十分あってキャリアの量が十分あれば、ボトムゲート電極21の正電界とあわせて半導体膜23にnチャネルが形成されて、ドレイン電極28からソース電極27に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン43,43,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0064】
ここで、キャリア蓄積期間において半導体膜23に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極28からソース電極27に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン43,43,…の電圧の減少傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜23に入射した光量に深く関連する。
【0065】
そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ73を介して、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン43,43,…の電圧を検出し、A/Dコンバータが蛍光の輝度階調0〜255の値にA/D変換する。なお、ドレインライン43の電圧がプリチャージパルスと同じ+5〔V〕であればA/Dコンバータの出力は階調0であり、0〔V〕であれば階調255である。これにより、光の強度が0〜255の値に換算される。
【0066】
なお、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、ドレインドライバ73を介して、所定の閾値電圧に至るまでの時間を検出しても良い。この場合でも、光の強度に換算される。また、図5では、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、ボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスが立ち下がってからであるが、これに限らず、トップゲートドライバ74の(i+1)行目のリセットパルスの立ち上がり時期は、トップゲートドライバ74のi行目のリセットパルスの立ち下がり直後からボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスの立ち下がりまでの間であってもよい。ただし、(i+1)行目のダブルゲートトランジスタ20のためにドレインライン43,43,…に出力されたプリチャージパルスの出力は、ボトムゲートドライバ71のi行目のリードパルスの立ち下がり以降になるように設定されている。
【0067】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各ダブルゲートトランジスタ20にも同等の処理手順を繰り返されることにより、生体高分子分析チップ1上の光の強度分布がRAM87のメモリーセルに記録される。
【0068】
ところで、化学発光は酵素による化学発光基質の分解により行われる。このため、図10に示すように、発光量がピークとなる反応時間は化学発光基質の濃度によって異なる。このとき、反応時間とは、化学発光基質91を含む溶液を各ウェル40内に注入してからの時間である。
また、図11に示すように、実際に計測される発光強度には揺らぎがあるため、発光量がピークとなる反応時間を正確に捉えることが困難である。
そこで、本実施形態においては、以下に示す方法により、発光量のピークとなる値を保存する。
【0069】
RAM87のメモリーセルには、図12(a)に示すように、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…のそれぞれに1対1で対応するリード用メモリーセル(二次記録部)と、図12(b)に示すピーク保存用メモリーセル(一次記録部)とが設けられる。撮像動作では、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値は、対応する各リード用メモリーセルA1〜H8に保存される。また、RAM87には、図12(c)に示すように、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTが設けられる。
【0070】
本実施形態においては、上記の撮像動作を一定時間ごとに行い、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録する。以下、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録するCPU86の動作について、図13のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
まず、CPU86は、ピーク保存用メモリーセルの初期化(全てを0にする)を行う(ステップS1)。次に、CPU86は、ピーク監視用タイマーの初期値となる値TpmをROM75から読み出し、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTに書き込む(ステップS2)。
【0072】
次に、CPU86は、一定時間ごとに撮像動作を行い、A1〜H8までのダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値を対応する各リード用メモリーセルに保存する(ステップS3)。
次に、CPU86は、各リード用メモリーセルの値と、対応するピーク保存用メモリーセルの値とを比較する。ピーク保存用メモリーセルの値よりもリード用メモリーセルの値が大きいときは、ピーク保存用メモリーセルの値をリード用メモリーセルの値に置き換える(ステップS4)。
【0073】
次に、CPU86は、ピーク保存メモリーセルの書き換えがあったか否かを判断する(ステップS5)。ピーク保存用メモリーセルの書き換えがあった場合(ステップS5→Yes)には、ステップS2に戻る。ピーク保存用メモリーセルの書き換えがなかった場合(ステップS5→No)には、CPU86は、ピーク監視用タイマー用のメモリーセルTの値を1減らした値に書き換える(ステップS6)。
【0074】
次に、CPU86は、Tの値が0以下となったか否かを判断し(ステップS7)、Tが0よりも大きければ(ステップS7→No)ステップS3〜S7の動作を繰り返す。Tが0以下であれば(ステップS7→Yes)ピーク値の記録動作を終了する。
すなわち、最後にピーク値を記録した後、ステップS3〜S7にかかる時間にTpmを乗じた時間を経過したときに、記録動作を終了する。
その後、CPU86は、ピーク保存用メモリーセルに記録された値を光強度分布とする画像を出力装置82に出力する。得られる画像には、A1〜H8までの各ダブルゲートトランジスタ20,20,…の最大出力値が反映される。
【0075】
作業者は、出力装置82に出力された画像により、各スポット60,60,…におけるハイブリダイゼーションの有無を確認することができる。ハイブリダイゼーションが起きていれば、そのスポット60のプローブDNA61と相補的な塩基配列のmRNAが細胞検体内で生成されていることがわかる。このため、化学発光が検出されたスポット60のプローブDNA61の種類により、検体内でどのような遺伝子が発現しているかを直接確認することができる。
【0076】
<変形例>
次に、本実施の形態の変形例に係る生体高分子分析チップ101について説明する。この生体高分子分析チップ101は、抗原タンパクを検出する抗体チップである。
本実施の形態に係る生体高分子チップ101には、スポット160にプローブ抗体161が用いられている点を除き、固体撮像デバイス110、分析装置180等の構成については生体高分子分析チップ1と同様であり、同様の構成については下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0077】
抗体チップでは、プローブとして、検出する既知のタンパク質や糖鎖等の抗原と結合する抗体(以下、プローブ抗体という)を用いる。
具体的には、図14に示すように、固体撮像デバイス110の流路152,153にプローブ抗体161を含む溶液を滴下し、乾燥してスポット160を形成する。なお、流路52,53に滴下されるプローブ抗体161はそれぞれ異なるタンパク質を抗原とし、同じスポット160を形成するプローブ抗体161は同一の抗原決定基を認識する。プローブ抗体161となる抗体としては、モノクローナル抗体を用いることができる。
【0078】
次に、サンプルとなる抗原162を含む溶液(以下、サンプル溶液という)を流路52,53内に注入する。
プローブ抗体161にサンプル溶液中の抗原162が結合するのに充分な時間が経過した後、流路152,153内のサンプル溶液をバッファー溶液で洗い流し、サンプル溶液とともに抗原162のうちプローブ抗体161と結合しなかったものを流路152,153内から除去する。
【0079】
次に、流路152,153内に、プローブ抗体161が認識するのと同じ抗原162の異なる抗原決定基を認識する抗体を酵素164で標識したもの(以下、酵素標識抗体163という)の溶液(以下、蛍光標識抗体溶液という)を注入する。
プローブ抗体161に結合した抗原162と酵素標識抗体163とが結合するのに充分な時間が経過した後、流路52内の蛍光標識抗体溶液をバッファー溶液で洗い流し、蛍光標識抗体溶液中の酵素標識抗体163のうち抗原162と結合しなかったものを流路152,153内から除去する。
以後、第1実施形態の〔8〕サンプルの検出、〔9〕撮像動作 と同様にして、分析装置180による固体撮像デバイス110の冷却及び光量データの計測動作を行う。
【0080】
作業者は、出力装置182に出力された画像により、各スポット160,160,…における抗原162の有無を確認することができる。このため、化学発光が検出されたスポット160のプローブ抗体161の種類により、検体内でどのようなタンパク質(抗原162)が生成されているかを直接確認することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0082】
例えば、上記実施形態では、プローブとして既知の塩基配列の一本鎖DNAや抗体を用いたが、その他の既知の生体高分子や低分子等を用いてもよい。例えば、抗原となるペプチドやタンパク、糖鎖、低分子リガンド、既知の細胞等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る分析装置80の構成を示すブロック図である。
【図2】流路構造体51及びスポット60が形成された固体撮像デバイス10の受光面側を示す概略平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】ダブルゲートトランジスタ20を示す平面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】固体撮像デバイス10に出力される電気信号のレベルの推移を示したタイミングチャートである。
【図7】流路構造体51への配管の接続例を示す模式図である。
【図8】酵素標識DNA62をプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法についての説明図である。
【図9】酵素標識DNA62をプローブDNA61とハイブリダイゼーションさせる方法についての説明図である。
【図10】化学発光基質の濃度を変えたときの発光量と反応時間との関係を示すグラフである。
【図11】図10の低濃度におけるピーク部分の拡大図である。
【図12】(a)はリード用メモリーセル、(b)はピーク保存用メモリーセル、(c)はピーク監視用タイマー用のメモリーセルTを示す模式図である。
【図13】ダブルゲートトランジスタ20,20,…の出力値のピークを記録するCPU86の動作を示すフローチャートである。
【図14】流路構造体151及びスポット160が形成された固体撮像デバイス110を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,101 生体高分子分析チップ
10,110 固体撮像デバイス(撮像装置)
20,120 ダブルゲートトランジスタ
60,160 スポット
61 プローブDNA
62 酵素標識DNA
64,164 酵素
165 抗原
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部と、
前記光電変換素子の出力値が一定時間ごとに記録される二次記録部と、
記録前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する制御部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光電変換素子の受光面側に設けられ、特定の生体高分子と結合するプローブを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記プローブが備えられた前記光電変換素子の受光面側のスポット固定層に密着して流路が設けられることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記プローブは既知の塩基配列を有する一本鎖DNAであることを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記プローブは特定の抗原と結合する抗体であることを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項7】
光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部と、を備えた撮像装置の動作方法において、
前記光電変換素子の出力値を一定時間ごとに前記二次記録部に記録する工程と、
前記一次記録部に記録した値と、前記二次記録部に記録した値とを比較する工程と、
前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する工程と、
を含むことを特徴とする撮像装置の動作方法。
【請求項8】
前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置の動作方法。
【請求項9】
前記光電変換素子の受光面側に、特定の生体高分子と結合するプローブを設けることを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像装置の動作方法。
【請求項10】
前記撮像装置は、前記光電変換素子の受光面に流路を備え、
前記光電変換素子の出力値を記録する工程の前に、前記流路を通って試料溶液が供給される工程と、
前記流路を通って化学発光基質含有溶液が供給される工程と、
を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置の動作方法。
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部と、
前記光電変換素子の出力値が一定時間ごとに記録される二次記録部と、
記録前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する制御部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光電変換素子の受光面側に設けられ、特定の生体高分子と結合するプローブを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記プローブが備えられた前記光電変換素子の受光面側のスポット固定層に密着して流路が設けられることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記プローブは既知の塩基配列を有する一本鎖DNAであることを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記プローブは特定の抗原と結合する抗体であることを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項7】
光電変換素子と、前記光電変換素子の出力値が記録される一次記録部及び二次記録部と、を備えた撮像装置の動作方法において、
前記光電変換素子の出力値を一定時間ごとに前記二次記録部に記録する工程と、
前記一次記録部に記録した値と、前記二次記録部に記録した値とを比較する工程と、
前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも小さい場合に、前記二次記録部に記録された値を前記一次記録部に記録する工程と、
を含むことを特徴とする撮像装置の動作方法。
【請求項8】
前記比較する工程の後、前記一次記録部に記録された値が前記二次記録部に記録された値よりも大きい場合に、記録動作を終了することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置の動作方法。
【請求項9】
前記光電変換素子の受光面側に、特定の生体高分子と結合するプローブを設けることを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像装置の動作方法。
【請求項10】
前記撮像装置は、前記光電変換素子の受光面に流路を備え、
前記光電変換素子の出力値を記録する工程の前に、前記流路を通って試料溶液が供給される工程と、
前記流路を通って化学発光基質含有溶液が供給される工程と、
を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置の動作方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−85106(P2010−85106A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251301(P2008−251301)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
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