説明

撮像装置及び画像生成方法

【課題】データ量を削減した動画データから、簡素な処理で高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供すること。
【解決手段】撮像装置は、画像取得部、フレーム間加算画像生成部、フレーム間差分画像生成部フレーム間加算画像再生部、フレーム間推定演算部、画像出力部を含む。画像取得部は、撮像画像f〜fを取得する。フレーム間加算画像生成部は、f,fの画素値を重み付け加算してフレーム間加算画像Bを生成し、f,fの画素値を重み付け加算してフレーム間加算画像Bを生成する。フレーム間差分画像生成部は、B、Bの差分をフレーム間差分画像DTとして生成する。フレーム間加算画像再生部は、B、DTに基づいてBを再生する。フレーム間推定演算部は、B、Bに基づいてf〜fを推定する。画像出力部は、推定画像に基づく高解像画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び画像生成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のデジタルカメラやビデオカメラには、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替えて使用できるものがある。例えば、動画撮影中にユーザーがボタン操作をすることで、動画よりも高解像の静止画を撮影できるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124621号公報
【特許文献2】特開2008−243037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、静止画撮影モードと動画撮影モードを切り替える手法では、ユーザーがシャッターチャンスに気付いたときには既に決定的瞬間を逃していることが多いという課題がある。
【0005】
本発明者は、この決定的瞬間の撮影を実現するために、データ量を削減した動画データから任意タイミングの高解像静止画を生成することを考えている。例えば、特許文献1、2には、画素シフトにより取得された低解像画像から高解像画像を合成する手法が開示されている。しかしながら、この手法では、画素シフトによる撮像が必要となるためカメラの構成が複雑となってしまう。また、高解像化処理の負荷が大きいことや、画素値の推定が困難な場合があるという課題がある。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、データ量を削減した動画データから、簡素な処理で高解像画像を取得できる撮像装置及び画像生成方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1〜第3のフレームにおける第1〜第3の撮像画像を取得する画像取得部と、前記第1の撮像画像の画素値と前記第2の撮像画像の画素値を重み付け加算して第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2の撮像画像の画素値と前記第3の撮像画像の画素値を重み付け加算して第2のフレーム間加算画像を生成するフレーム間加算画像生成部と、前記第1のフレーム間加算画像と前記第2のフレーム間加算画像の差分を、フレーム間差分画像として生成するフレーム間差分画像生成部と、前記第1のフレーム間加算画像と前記フレーム間差分画像に基づいて、前記第2のフレーム間加算画像を再生するフレーム間加算画像再生部と、前記第1のフレーム間加算画像と、再生された前記第2のフレーム間加算画像とに基づいて、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定するフレーム間推定演算部と、前記フレーム間推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力する画像出力部と、を含む撮像装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1〜第3の撮像画像が取得され、フレーム間における画素値の重み付け加算により第1、第2のフレーム間加算画像が生成され、その差分であるフレーム間差分画像が生成される。そして、第1のフレーム間加算画像とフレーム間差分画像から第2のフレーム間加算画像が再生され、第1、第2のフレーム間加算画像から第1〜第3の撮像画像が推定され、推定された撮像画像に基づく高解像画像が出力される。
【0009】
これにより、例えば後述する推定処理を適用することで、簡素な処理でフレーム間加算画像から撮像画像を復元可能になる。動画撮影と静止画撮影を切り換えないため、動画データから任意タイミングの高解像静止画を取得できる。また、フレーム間加算画像を求めることで、高圧縮率で画像データを圧縮可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記フレーム間推定演算部は、前記第1のフレーム間加算画像の画素値と、前記第2のフレーム間加算画像の画素値との差分値を求め、前記第1の撮像画像の画素値と、前記第3の撮像画像の画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、前記関係式を用いて前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定してもよい。
【0011】
また本発明の一態様では、前記フレーム間推定演算部は、前記第1〜第3の撮像画像の画素値間の関係式を、前記第1、第2のフレーム間加算画像の画素値を用いて表し、前記関係式で表された前記第1〜第3の撮像画像の画素値と、前記第1、第2のフレーム間加算画像の画素値とを比較して類似性を評価し、前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定してもよい。
【0012】
このようにすれば、撮像画像の画素値の関係式を、フレーム間において重畳加算された画素値を用いて表し、その関係式に基づいて撮像画像の画素値を復元できる。これにより、フレーム間加算画像に対する復元推定処理を簡素化できる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記第1のフレーム間加算画像又は前記フレーム間差分画像を入力画像として受けて、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記入力画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位を順次画素シフトさせながら前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して第1〜第nのフレーム内加算画像を生成するフレーム内加算画像生成部と、前記第1〜第nのフレーム内加算画像の平均画像を生成する平均画像生成部と、前記第1〜第nのフレーム内加算画像のうちの第mのフレーム内加算画像(mはn以下の自然数)と、前記平均画像との差分を、第mのフレーム内差分画像として生成するフレーム内差分画像生成部と、前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像を圧縮するデータ圧縮部と、圧縮された前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像を伸張する圧縮データ伸張部と、伸張された前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像に基づいて、前記第1〜第nのフレーム内加算画像を再生するフレーム内加算画像再生部と、再生された前記第1〜第nのフレーム内加算画像に基づいて、前記入力画像の画素値を推定するフレーム内推定演算部と、を含んでもよい。
【0014】
このようにすれば、フレーム間の加算を行った後にフレーム内の加算を行い、フレーム内加算画像から平均画像とフレーム内差分画像を生成して圧縮できる。これにより、更に圧縮率を向上できる。即ち、フレーム内差分画像は、平均画像とフレーム内加算画像の差分であるため画素値のエントロピーを入力画像よりも小さくできる。そのため、フレーム内差分画像を例えばエントロピー符号化することで高圧縮率で圧縮できる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記フレーム内加算画像生成部は、前記加算単位を、水平又は垂直に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第nのポジションに設定し、前記第1〜第nのポジションにおいてそれぞれ前記第1〜第nのフレーム内加算画像を取得し、前記第1〜第nのポジションのうちの第mのポジションと第m+1のポジションの前記加算単位は、共通の画素を含んでもよい。
【0016】
このようにすれば、共通の画素を含みながら加算単位を順次画素シフトして加算画素値を求め、その加算画素値により第1〜第nのフレーム内加算画像を構成できる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記データ圧縮部は、前記第1〜第nのフレーム内差分画像をエントロピー符号化により可逆圧縮してもよい。
【0018】
このようにすれば、上述のように入力画像よりもエントロピーが小さくなったフレーム内差分画像をエントロピー符号化することで高圧縮率で圧縮できる。
【0019】
また本発明の一態様では、第1のポジションに設定された前記加算単位と、前記第1のポジションの次の第2のポジションに設定された前記加算単位が重畳する場合に、前記推定演算部は、前記第1のポジションの加算画素値と、前記第2のポジションの加算画素値の差分値を求め、前記第1のポジションの加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めてもよい。
【0020】
このようにすれば、加算単位が重畳しながら順次画素シフトされた第1〜第nのフレーム内加算画像から中間画素値を推定し、推定した中間画素値から最終的な推定画素値を求めることができる。これにより、フレーム内加算画像に対する復元推定処理を簡素化できる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記推定演算部は、前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記加算画素値を用いて表し、前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記加算画素値とを比較して類似性を評価し、前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定してもよい。
【0022】
このようにすれば、加算単位が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定により求めることができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記第1〜第3の撮像画像のうちの第xの撮像画像(xは3以下の自然数)を受けて、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記第xの撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位を順次画素シフトさせながら前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して第1〜第nのフレーム内加算画像を生成するフレーム内加算画像生成部と、前記第1〜第nのフレーム内加算画像の平均画像を生成する平均画像生成部と、前記第1〜第nのフレーム内加算画像のうちの第mのフレーム内加算画像と、前記平均画像との差分を、第mのフレーム内差分画像として生成するフレーム内差分画像生成部と、を含み、前記フレーム間加算画像生成部は、前記第mのフレーム内差分画像又は前記平均画像を、第1〜第3の入力画像のうちの第xの入力画像として受けて、前記第1、第2の入力画像に基づく前記第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2、第3の入力画像に基づく前記第2のフレーム間加算画像を生成してもよい。
【0024】
このようにすれば、フレーム内の加算を行った後にフレーム間の加算を行い、平均画像とフレーム内差分画像それぞれについてのフレーム間差分画像を生成して圧縮できる。このような処理順序によっても、フレーム内差分画像によるエントロピー低減効果、フレーム間加算画像による画素値の変化を小さくする効果、フレーム間差分画像によるエントロピー低減効果を得ることができる。
【0025】
また本発明の他の態様は、第1〜第3のフレームにおける第1〜第3の撮像画像を取得し、前記第1の撮像画像の画素値と前記第2の撮像画像の画素値を重み付け加算して第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2の撮像画像の画素値と前記第3の撮像画像の画素値を重み付け加算して第2のフレーム間加算画像を生成し、前記第1のフレーム間加算画像と前記第2のフレーム間加算画像の差分を、フレーム間差分画像として生成し、前記第1のフレーム間加算画像と前記フレーム間差分画像に基づいて、前記第2のフレーム間加算画像を再生し、前記第1のフレーム間加算画像と、再生された前記第2のフレーム間加算画像とに基づいて、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定し、前記フレーム間推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力する画像生成方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1のデータ圧縮手法についての説明図。
【図2】撮像装置の第1の構成例。
【図3】第2のデータ圧縮手法についての説明図。
【図4】ハフマン符号テーブルの例。
【図5】撮像装置の第2の構成例。
【図6】撮像装置の第2の構成例におけるデータ構成例。
【図7】撮像装置の第2の構成例におけるデータ構成例。
【図8】撮像装置の第3の構成例。
【図9】第4のデータ圧縮手法についての説明図。
【図10】データ圧縮手法の第1の変形例についての説明図。
【図11】データ圧縮手法の第1の変形例についての説明図。
【図12】データ圧縮手法の第2の変形例についての説明図。
【図13】データ圧縮手法の第2の変形例についての説明図。
【図14】フレーム間加算画像の画素値についての説明図。
【図15】復元推定処理についての説明図。
【図16】復元推定処理についての説明図。
【図17】復元推定処理についての説明図。
【図18】図18(A)、図18(B)は、フレーム内加算画像の画素値と、中間画素値についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
1.本実施形態の概要
デジタルカメラやビデオカメラの製品には、静止画撮影を主とするデジタルカメラに動画撮影機能をもたせたものや、動画撮影を主とするビデオカメラに静止画撮影機能をもたせたものがある。このような機器を使えば、静止画と動画の撮影を一つの機器でまかなえるという利便さがある。
【0029】
しかしながら、この手法では、多くの人が求めるシャッターチャンスを逃さず高品位な静止画を得ることが難しいという課題がある。例えば、動画撮影中に高品位静止画を撮影するモードに瞬時に切り替える方法では、動画が途切れたり、ユーザーが気づいたときには既に決定的瞬間を逃していたりするという課題がある。
【0030】
決定的瞬間の静止画を得るために、高フレームレートの高解像動画を取得し、その高解像動画から任意タイミングの静止画を抜き出す手法が考えられる。しかしながら、この手法では、高解像動画を撮影するためデータ量が増大するという課題がある。
【0031】
そこで本実施形態では、図1に示すように、撮像画像f〜fをフレーム間で画素加算して加算画像B〜Bを取得し、その加算画像B〜Bをフレーム間で差分をとって差分画像DT、DTを取得する。加算画像B〜Bは、フレーム間で加算されているため、撮像画像f〜fよりもフレーム間での画素値の変化が小さくなっている。そのため、差分画像DT、DTは、撮像画像f〜fの差分をとるよりも、画素値がゼロ付近により偏在していると考えられる。これにより、画像B、DT、DTを、例えばエントロピー符号化することで圧縮率を向上できる。
【0032】
さて、時間軸方向に画素値を加算した画像から高解像画像を得る手法として、空間方向に画素値を加算した画像から高解像画像を得る手法を応用することが考えられる。例えば、画素シフトにより撮影した低解像画像に対していわゆる超解像処理を行う手法が考えられる。この手法では、順次位置ずらししながら加算読み出しを行い、その複数の位置ずれ画像に基づいて高精細化画像を一旦仮定する。そして、仮定した画像を劣化させて低解像画像を生成し、元の低解像画像と比較し、その差異が最小になるように高精細画像を推定する。この超解像処理として、ML(Maximum-Likelihood)法、MAP(Maximum A Posterior)法、POCS(Projection Onto Convex Set)法、IBP(Iterative Back Projection)法等が知られている。
【0033】
例えば上述の特許文献1には、動画撮影時に画素シフトさせた低解像画像を時系列的に順次撮影し、その複数の低解像画像を合成することにより高解像画像を仮定し、その高解像画像に対して上記の超解像処理を施し、尤度の高い高解像画像を推定する手法が開示されている。
【0034】
しかしながら、この手法では、2次元フィルターを多用する繰り返し演算により推定精度を上げていく一般的な超解像処理を用いている。そのため、非常に処理の規模が大きくなったり、処理時間が増大したりしてしまい、例えばデジタルカメラのような処理能力やコストの制限がある機器への適用は困難であるという課題がある。
【0035】
また上述の特許文献2には、画素シフトさせた複数の低解像画像を撮像し、求めたい高解像画像を構成する仮の画素を副画素とおき、その副画素の平均値が、撮影された低解像画像の画素値と一致するように副画素の画素値を推定する手法が開示されている。この手法では、複数の副画素の初期値を設定し、算出したい副画素を除く副画素の画素値を低解像画像の画素値から差し引いて画素値を求め、それを順次隣接する画素に対して適用する。
【0036】
しかしながら、この手法では、初期値の特定が上手くいかないと推定誤差が非常に大きくなるという課題がある。この手法では、初期値を設定するために、所定の条件を満たす領域を画像から見つけ出している。そのため、適当な領域が撮影画像から見つけられないと、初期値の推定が困難になってしまう。また、初期値の設定に適当な領域を探索する処理が必要になってしまう。
【0037】
この点、本実施形態では、図1で後述するように、画像B、DT、DTから加算画像B〜Bを再生し、その加算画像B〜Bから撮像画像f〜fを復元する。この加算画像B〜Bの画素値vij(1)’〜 vij(3)’は、重畳加算されたものであり、隣接フレームの画素値は共通の撮像画像の画素を含んでいる。図14〜図17で後述するように、この重畳加算された画素値を用いることで、撮像画像f〜fを簡素な処理で復元できる。また、圧縮データから撮像画像f〜fを復元できるため、元の撮像画像と同等の時間分解能が得られる。
【0038】
2.第1のデータ圧縮手法
次に、本実施形態について詳細に説明する。まず、加算画像の生成手法と撮像画像の復元手法について説明する。なお以下では撮像素子がRGBベイヤー配列である場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、例えば補色フィルターの撮像素子等であってもよい。また以下では2フレーム間での加算を行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、他のフレーム数での加算を行ってもよい。
【0039】
ここで、フレームとは、例えば撮像素子により画像が撮像されるタイミングや、画像処理において1つの撮像画像が処理されるタイミングである。あるいは、画像データにおける加算画像や差分画像等の1つの画像も適宜フレームと呼ぶ。
【0040】
図1に示すように、フレームf(Tは自然数)において、全画素読み出しによりRGBベイヤー配列の撮像画像(以下、撮影フレーム画像と呼ぶ)を取得する。この撮像画像fの連続2フレームの同一位置の画素値を、撮像画像の1フレームが重畳するように重み付け加算し、加算画像Bを生成する。なお以下では、撮影フレーム画像{f,f,f}を例にとり説明する。
【0041】
撮影フレーム画像{f,f,f}の任意の画素値を、それぞれ{vij(1),vij(2),vij(3)}とする。フレーム間加算画像{B,B}のそれぞれの画素値{vij(1)’,vij(2)’}は、下式(1)により求められる。
ij(1)’=1・vij(1)+(1/r)・vij(2)
ij(2)’=1・vij(2)+(1/r)・vij(3) (1)
【0042】
ここで、rは重み付けの係数であり、1≦|r|を満たす。vij(T)は、撮影フレーム画像fのアドレス(i,j)の画素値を表す。
【0043】
上記のように、フレーム間で重み付け加算されて記録された加算画像データに対して、図14〜図17で後述する復元推定処理を適用することにより、元の加算前の撮像画像を推定により復元できる。
【0044】
次に、上記の加算画像と復元推定処理をベースに、フレーム間差分によりデータを削減する手法について説明する。
【0045】
図1に示すように、加算画像B、Bの差分画像DTを求める。具体的には下式(2)に示すように、加算画像B、Bの任意の同一位置における画素値{vij(1)’,vij(2)’}の差分画素値dtij(2)を求める。そして、加算画像Bと差分画像DTを記録する。
dtij(2)=vij(1)’−vij(2)’ (2)
【0046】
撮影フレーム画像を復元するときは、記録された加算画像Bの画素値vij(1)’と差分画像DTの画素値dtij(2)から、上式(2)により加算画像Bの画素値vij(2)’を求める。そして、加算画像B、Bの画素値vij(1)’、vij(2)’から撮像画像f〜fの画素値vij(1)〜 vij(3)を復元する。
【0047】
さて、時間的に隣接するフレーム間では、結像される被写体の動きが小さい場合には相互の相関性が高く、動きが大きい場合には相互の相関性が低くなる。従って、フレーム間の差分画素値は、被写体の動きに大きく左右されるので、差分値による安定したデータ削減が難しい。
【0048】
この点、本実施形態によれば、フレーム間における同一位置の画素に対して重み付け加算を施す。これにより、一種の加算フィルター効果が得られ、差分値の変化を緩やかにする作用が生まれる。差分値の変化が緩やかになることで、撮像画像を直接圧縮するよりも安定したデータ削減を行うことができる。
【0049】
次に、加算画像から撮影フレーム画像を復元する点について考える。一般的に、単に加算をして得られた値から元の加算前の値に戻すには、初期値が定まれば、方程式を順次解いていけばよい。しかしながら、差分値に何らかの劣化が発生すると、誤差の波及が発生してしまうので望ましくない。
【0050】
この点、本実施形態によれば、1回の復元処理において、2フレームの加算画像から3フレームの撮像画像を推定する。各回の復元処理は、他の回の復元処理の結果を用いないため、誤差が波及しない。即ち、重み付け加算の復元推定処理の方が、誤差の影響は部分的フレーム間に留めることができるので、画像としての劣化も小さく抑えることができる。
【0051】
なお、上記ではフレーム{f,f,f}を例にとり説明したが、任意のフレームfに拡張できることは言うまでもない。即ち、加算画像Bの画素値vij(T)’は下式(3)により表され、差分画像DTT+1の画素値dtij(T+1)は下式(4)により表される。
ij(T)’=1・vij(T)+(1/r)・vij(T+1) (3)
dtij(T+1)=vij(T)’−vij(T+1)’ (4)
【0052】
1回の復元推定処理では、画素値{vij(T),vij(T+1),vij(T+2)}が求められる。そのため、処理対象とするフレーム画像をシフトさせていくと、同一画素の画素値が複数回得られることになる。そのため、1回の復元処理において1つの値(例えばf〜fT+2の復元において画素値vij(T)のみを、復元推定データとして採用しても構わない。
【0053】
ここで、上記では隣接2フレームの重み付け加算を例にとり説明したが、本実施形態ではこれに限定されない。例えば、隣接2フレームの重み付け加算値を2個更に重み付け加算し、見かけ上隣接4フレームの加算値を得てもよい。この隣接4フレームの加算値の差分値によりデータ化することも、本方式の応用として容易であることは言うまでもない。
【0054】
3.撮像装置
図2に、上記圧縮を行う場合の構成例として、撮像装置の第1の構成例を示す。撮像装置は、撮像とデータ圧縮処理を行う撮像部10と、高精細画像の復元処理を行う画像処理部20を含む。画像処理部20は、カメラ本体に内蔵されてもよいし、PC等の外部の情報処理装置により構成されてもよい。
【0055】
具体的には、撮像部10は、レンズ110、撮像素子120(撮像センサー)、フレーム間加算画像生成部122、フレーム間差分画像生成部124、データ記録部155を含む。
【0056】
レンズ110は、被写体100を結像させる。撮像素子120は、結像された被写体像を撮像する。撮像により得られたアナログ信号は、図示しないA/D変換部によりデジタル信号に変換される。
【0057】
フレーム間加算画像生成部122は、上述のように、撮影フレーム画像f〜fの画素値をフレーム間で重み付け加算し、フレーム間加算画像{B、B}を生成する。フレーム間差分画像生成部124は、フレーム間加算画像Bを基準画像とし、基準画像Bとフレーム間加算画像Bの差分をとり、フレーム間差分画像DTを生成する。データ記録部155は、基準画像Bとフレーム間差分画像DTを記録する。
【0058】
画像処理部20は、フレーム間加算画像再生部214、フレーム間推定演算部234、高精細静止画生成部240、高精細動画生成部250、標準動画生成部260、画像出力部290、画像選択部295を含む。
【0059】
フレーム間加算画像再生部214は、記録された基準画像Bとフレーム間差分画像DTからフレーム間加算画像{B、B}を再生する。フレーム間推定演算部234は、フレーム間加算画像{B、B}に基づいて撮影フレーム画像f〜fを推定により復元する。復元された画像は、ベイヤー配列のRAW画像である。この推定演算については、図14等において後述する。
【0060】
高精細静止画生成部240は、ベイヤー配列の復元画像をデモザイキング処理し、その画像に対して例えば階調補正処理等の画像処理を行い、高精細静止画を生成する。このとき、画像選択部295により選択されたタイミングの静止画が生成される。タイミングは、ユーザーの指示により選択され、ユーザーは、例えば画像出力部290の出力動画を見てタイミングを選択する。
【0061】
高精細動画生成部250は、ベイヤー配列の復元動画画像をデモザイキング処理し、その動画画像に対して例えば階調補正処理等の画像処理を行い、高精細動画を生成する。標準動画生成部260は、高精細動画をダウンサンプリングし、例えばハイビジョン画素数の動画を標準動画として生成する。
【0062】
画像出力部290は、高精細静止画、高精細動画、標準動画を、例えば表示装置やプリンターに出力する。
【0063】
以上の実施形態によれば、図2に示すように、撮像装置は、画像取得部(例えば撮像素子120)とフレーム間加算画像生成部122とフレーム間差分画像生成部124とフレーム間加算画像再生部214とフレーム間推定演算部234と画像出力部290を含む。
【0064】
図1に示すように、画像取得部は、第1〜第3のフレームにおける第1〜第3の撮像画像f〜fを取得する。フレーム間加算画像生成部122は、第1の撮像画像fの画素値vij(1)と第2の撮像画像fの画素値vij(2)を重み付け加算して第1のフレーム間加算画像Bを生成し、第2の撮像画像fの画素値vij(2)と第3の撮像画像fの画素値vij(3)を重み付け加算して第2のフレーム間加算画像Bを生成する。フレーム間差分画像生成部124は、第1のフレーム間加算画像Bと第2のフレーム間加算画像Bの差分を、フレーム間差分画像DTとして生成する。
【0065】
図2に示すように、フレーム間加算画像再生部214は、第1のフレーム間加算画像Bとフレーム間差分画像DTに基づいて、第2のフレーム間加算画像Bを再生する。フレーム間推定演算部234は、第1のフレーム間加算画像Bと、再生された第2のフレーム間加算画像Bとに基づいて、第1〜第3の撮像画像f〜fの画素値vij(1)〜vij(3)を推定する。画像出力部290は、推定された画素値vij(1)〜vij(3)に基づく高解像画像を出力する。
【0066】
このようにすれば、撮像画像fを効率よく圧縮することが可能になる。即ち、撮像画像の画素値をフレーム間で加算することで、画素値の時間的な変化を緩やかにできる。これにより、上述のように、フレーム間差分画像のエントロピーを下げることができ、例えばエントロピー符号化により高圧縮率を実現できる。
【0067】
また、例えば後述する復元推定処理を適用することで、簡素な処理で撮像画像fを再生可能である。これにより、フレーム間で加算する前の画像が再性されるため、動体でもブレが少ない時間分解能が高い復元画像を得られる。また、高圧縮率の画像データから撮像画像fを復元して任意タイミングの高精細静止画を取り出すことができる。
【0068】
4.第2のデータ圧縮手法
次に、上述の基準画像Bと差分画像DT(T=2,3,・・・)を更にフレーム内(画像内)で画素加算し、データ削減する手法について説明する。なお以下では、任意の差分画像DTに対する処理を例にとり説明するが、基準画像Bについても同様である。また、4画素加算を行う場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、他の画素数の加算を行ってもよい。以下では、フレーム番号を表す(T)を画素値vij(T)、dtij(T)、aij(T)から省略し、vij、dtij、aijと表記する。
【0069】
図3に示すように、差分画像DTに4画素で構成される加算単位(加算される画素群)を設定し、その加算単位の画素値に対して重み付けを行って加算する。このとき、加算単位を1画素分重畳させながら水平又は垂直にシフトさせ、4枚の画素加算画像A〜Aを生成する。この処理は、差分画像1枚毎に行われる。
【0070】
4画素加算値aijは下式(5)で表わされる。画素加算画像A〜Aを構成する加算画素値はそれぞれ{aij、a(i+1)j、a(i+1)(j+1)、ai(j+1)}である。
ij=dtij+(1/r)dt(i+1)j
(1/r)dti(j+1)+(1/r)dt(i+1)(j+1)
(5)
【0071】
ここで、rは重み付けのパラメータであり、1≦rである。またdtijは差分画像DTにおけるアドレス(i,j)の画素値である。
【0072】
次に、生成した画素加算画像A〜Aの加算位置の整合を行い、4枚の画素加算画像を重ね合わせた上で同一位置の値の加算平均をとることにより平均画像Mを生成する。即ち、画素加算画像A〜Aの4画素加算値をそれぞれ{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}とすると、平均画像Mの画素値aijは下式(6)で表される。
ij=[a(1)ij+a(2)(i+1)j
(3)i(j+1)+a(4)(i+1)(j+1)]/4 (6)
【0073】
生成した平均画像Mを基準とし、その平均画像Mと画素加算画像A〜Aとの差分(方向ベクトル(1,−1)への射影)をそれぞれ差分画像D〜Dとする。差分画像D〜Dと平均画像Mを合わせて融合画像データF(M,D〜D)とする。差分画像D〜Dを構成する4画素加算差分値を{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}とすれば、下式(7)のように表わせる。
D1ij=aij−a(1)ij
D2ij=aij−a(2)(i+1)j
D3ij=aij−a(3)(i+1)(j+1)
D4ij=aij−a(4)i(j+1) (7)
【0074】
このようにして、静止画と動画を融合させた融合画像データF(M,D〜D)を生成し、それを記録しておき、その記録されたF(M,D〜D)を後段において解凍処理することにより、「高精細静止画データ」又は「動画データ」を適宜生成することが可能となる。
【0075】
なお、この例では差分(即ち方向ベクトル(1,−1)への射影)をとったが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、平均画像Mの画素値と画素加算画像A〜Aの画素値の相関分布に応じて、その主成分軸(分散が最も大きくなる直線)を求め、主成分軸に直交する軸に対して射影した値を用いた方が、より一層データの圧縮が可能となることは言うまでもない。
【0076】
5.エントロピー符号化
次に、上述した平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dを圧縮する手法について説明する。
【0077】
平均画像M及びフレーム内差分画像D〜Dの画素値データは、発生頻度分布の偏りが顕著になるため、エントロピー符号化(例えばハフマン符号,LZH等)がデータ圧縮として効果的である。エントロピー符号化とは、画素値の発生確率を求め、発生確率の高いものから短い符号長を割当てる圧縮手法である。
【0078】
例えば、平均画像Mの画素値データの平均値に対して最も短い符号長を割り当て、その平均値から離れる値ほど符号長を長くして行く符号化が適当である。即ち、フレーム内差分画像D〜Dの画素値データは各々の平均がゼロであり、ゼロの発生確率をピークとして分布しているので、ゼロ値に最も短い符号を割当てるようにすればよい。また、平均画像M及びフレーム内差分画像D〜Dの画素値データは、確率密度に応じて非線形量子化を行うことも有効である。
【0079】
一方、平均画像Mでは、確かに加算平均した画素値データなので発生頻度分布の偏りは顕著になるが、画素加算値の取りうる範囲は、フレーム内差分画像D〜Dの画素値データと比較すると、かなり大きくなる。そのため、一般的に高圧縮率が期待できる非可逆圧縮法(JPEG,MPEG等)の適用がデータの圧縮としては効果的である。
【0080】
従って、平均画像Mにおいては画素数を削減して非可逆高圧縮を適用し、フレーム内差分画像D〜Dにおいては、同様な発生分布の偏りを呈する特性を利用した高速エントロピー符号化を適用することが考えられる。
【0081】
次に、最も単純なハフマン符号を適用する場合の例を示す。多数の画像の画素値分布に基づいて一つのハフマン符号テーブルを生成すると、適用範囲が広くなり、圧縮効果は画像依存になってしまう。しかしながら、画像毎又は画像範囲毎にハフマンテーブルを毎回生成するのは効果的ではない。
【0082】
そこで、上記の平均画像Mに適用する場合、所定の画像領域毎に平均値αijを下式(8)により求め、その平均値αijと各加算平均値{aij}の差分値{a’ij}を下式(9)により求める。そして、その差分値{a’ij}を改めて平均画像Mのデータとし、ハフマン符号化を適用すればよい。このことにより、差分値{a’ij}は、普遍的にゼロを中心とした値の生起分布を形成できる。融合画像データF(M,D〜D)の中のMは、M={αij,a’ij}に置き換えて考えられる。
【数1】

a’ij=aij−αij (9)
【0083】
ここで、(h0,v0)は、平均値αijを算出する領域の始点であり、(h,v)は、平均値αijを算出する領域の終点である。即ち上式(8)においてh0≦i≦h,v0≦j≦vを満たす。例えば、平均値αijを算出する領域は、平均画像Mの全体である。平均値αijを算出する領域や、平均値αijの算出に用いる平均値aijの数は、データの圧縮率とのバランスを評価して決めればよい。
【0084】
上記の差分値{a’ij}と4画素加算差分値{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}は、それら自体が平均ゼロの値から成っているので、図4に示す符号割り当てが考えられる。このようにすれば、ハフマン符号テーブルは固定的な一種類で済ますことができる。
【0085】
なお、上述の平均値αijとして、下式(10)に示す固定値mAVRを適用し、変動データとして扱わずに先見情報として扱ってもよい。この場合、平均値mAVRはデータとして記録する必要はない。融合画像データF(M,D〜D)の中のMは、M={mAVR,a’ij}と置き換えて考えられる。下式(10)は、上式(5)で定義される重み付け4画素加算値の場合への適用であり、加算画素数や重み付けの掛け方によって適宜適正な値が設定されることに注意が必要である。
AVR=vmax・{1+(1/r)+(1/r)+(1/r)}/2
(10)
【0086】
ここで、rは重み付けのパラメータであり、1≦rである。vmaxは、画素値を規定する最大値である。
【0087】
6.高精細静止画の再生手法
上述のF(M,D〜D)からフレーム間差分画像DT(又は基準画像B)を復元推定する手法について説明する。
【0088】
上式(7)を変形すると、下式(11)が得られる。下式(11)に示すように、平均画像Mを構成する4画素加算値{aij}と、フレーム内差分画像D〜Dを構成する4画素加算値{aD1ij,aD2ij,aD3ij,aD4ij}から、画素加算画像A〜Aのそれぞれの4画素加算値{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}が得られる。
(1)ij=aij−aD1ij
(2)(i+1)j=aij−aD2ij
(3)(i+1)(j+1)=aij−aD3ij
(4)i(j+1)=aij−aD4ij (11)
【0089】
求められた4画素加算値{a(1)ij,a(2)(i+1)j,a(3)(i+1)(j+1),a(4)i(j+1)}は、1枚の高精細画像を水平又は垂直に1画素ずつ重畳シフトした4画素加算値により構成されている画像データである。この4画素加算値を、図18(A)等で後述する復元推定処理に適用することにより、元の基準画像B又は差分画像DTの画素値が求められる。
【0090】
次に、復元された基準画像Bとフレーム間差分画像DTを用いてフレーム間加算画像Bを再生する。具体的には下式(12)に示すように、基準画像Bの画素値vij(1)’を基準値とし、加算画像Bの画素値vij(2)’を求める。
ij(2)’=vij(1)’−dtij(2) (12)
【0091】
このようにして得られたフレーム間加算画像{B,B}の画素値{vij(1)’,vij(2)’}に対して、図14等で後述する復元推定処理を適用し、フレーム間加算前の撮影フレーム画像{f,f,f}の画素値{vij(1),vij(2),vij(3)}を推定する。なお、上記の実施形態では、扱うフレーム画像を画像フレーム{f,f,f}に限って説明したが、次々と後段のフレームに拡張し、この考え方を適用できることは言うまでもない。
【0092】
7.撮像装置の第2の構成例
図5に、上述のように基準画像Bとフレーム間差分画像DTを生成し、更に平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dを生成する場合の構成例として、撮像装置の第2の構成例を示す。撮像装置は、撮像部10、画像処理部20を含む。なお以下では、図2等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0093】
撮像部10は、レンズ110、撮像素子120、フレーム間加算画像生成部122(第1の加算画像生成部)、フレーム間差分画像生成部124(第1の差分画像生成部)、フレーム内加算画像生成部130(第2の加算画像生成部)、フレーム内差分画像生成部141(第2の差分画像生成部)、平均画像生成部142、エントロピー符号化部143、圧縮データ記録部150を含む。
【0094】
フレーム内加算画像生成部130は、上述のように、画素シフトさせつつ基準画像B又はフレーム間差分画像DTの画素値を加算し、フレーム内加算画像A〜Aを生成する。平均画像生成部142は、フレーム内加算画像A〜Aから平均画像Mを生成する。フレーム内差分画像生成部141は、フレーム内加算画像A〜Aと平均画像Mからフレーム内差分画像D〜Dを生成する。エントロピー符号化部143は、上述のエントロピー符号化等の可逆圧縮により差分画像D〜Dを圧縮する。データ圧縮部144は、例えばM−JPEGやJPEG−XR等の非可逆圧縮により平均画像Mを圧縮する。圧縮データ記録部150は、圧縮された平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dのデータを記録する。
【0095】
画像処理部20は、圧縮データ伸張部200、フレーム内加算画像再生部210(第2の加算画像再生部)、フレーム間加算画像再生部214(第1の加算画像再生部)、フレーム内推定演算部230(第2の推定演算部)、フレーム間推定演算部234(第1の推定演算部)、高精細静止画生成部240、高精細動画生成部250、標準動画生成部260、画像出力部290、画像選択部295を含む。
【0096】
圧縮データ伸張部200は、圧縮された平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dを伸張する処理を行う。フレーム内加算画像再生部210は、平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dからフレーム内加算画像A〜Aを再生する処理を行う。フレーム内推定演算部230は、フレーム内加算画像A〜Aに基づいて、基準画像Bとフレーム間差分画像DTを推定により復元する。復元された画像は、ベイヤー配列のRAW画像である。
【0097】
図6、図7に、上記第2の構成例におけるデータ構成例を示す。図6に示すように、撮像画像fは、P×Q画素(P、Qは自然数)の画素値v00(T)〜vPQ(T)で構成される。フレーム間差分画像DTも、P×Q画素の画素値dt00(T)〜dtPQ(T)で構成される。基準画像Bも同様である。
【0098】
図7に示すように、フレーム内加算画像A(DT)〜A(DT)は、それぞれp×q画素の画素値a00(T)〜apq(T)で構成される。ここで、p=P/2、q=Q/2である。フレーム内加算画像A(B)〜A(B)も同様である。平均画像M(DT)、フレーム内差分画像D(DT)〜D(DT)も、それぞれp×q画素の画素値で構成される。平均画像M(B)、フレーム内差分画像D(B)〜D(B)も同様である。
【0099】
上記の実施形態によれば、図5に示すように、撮像装置は、フレーム内加算画像生成部130と平均画像生成部142とフレーム内差分画像生成部141とデータ圧縮部(例えばエントロピー符号化部143)と圧縮データ伸張部200とフレーム内加算画像再生部210とフレーム内推定演算部230を含む。
【0100】
図3に示すように、フレーム内加算画像生成部130は、第1のフレーム間加算画像B又はフレーム間差分画像DTを入力画像として受けて、加算画素値aijを取得する単位である加算単位を入力画像の複数の画素毎(例えば4画素毎)に設定し、その加算単位を順次画素シフトさせながら加算単位に含まれる画素値dtijを重み付け加算(上式(5))して第1〜第4(広義には第1〜第n)のフレーム内加算画像A〜Aを生成する。上式(6)で説明したように、平均画像生成部142は、フレーム内加算画像A〜Aの平均画像Mを生成する。上式(7)で説明したように、フレーム内差分画像生成部141は、第mのフレーム内加算画像A(mはn以下の自然数)と平均画像Mとの差分を、第mのフレーム内差分画像Dとして生成する。データ圧縮部は、平均画像Mとフレーム内差分画像Dを圧縮する。
【0101】
図5に示すように、圧縮データ記録部150は、圧縮された平均画像Mとフレーム内差分画像Dを伸張する。フレーム内加算画像再生部210は、伸張された平均画像Mとフレーム内差分画像Dに基づいて、フレーム内加算画像A〜Aを再生する。フレーム内推定演算部230は、再生されたフレーム内加算画像A〜Aに基づいて、入力画像の画素値を推定する。
【0102】
このようにすれば、フレーム間加算画像Bとフレーム間差分画像DTに対して更にフレーム内加算を行い、そのフレーム内加算画像A〜Aの平均画像Mとフレーム内差分画像D〜Dを生成して圧縮できる。これにより、更に圧縮率を向上できる。即ち、入力画像B(又はDT)と4枚の加算画像A〜Aは画素数としては同一になるが、差分画像Dの画素値のエントロピーを入力画像よりも小さくできるため、圧縮率を向上できる。
【0103】
また本実施形態によれば、簡素な処理で圧縮データから入力画像を再生可能である。即ち、フレーム内加算画像A〜Aは、重畳シフト加算により得られた画像データであり、後述する復元推定処理を適用可能である。この復元推定処理は、低解像画像から高解像画像を推定する処理を、上述の特許文献1、2に比べて簡素化することができる。また、復元された入力画像から更に撮像画像fを復元できるため、高圧縮率の画像データから任意タイミングの高精細静止画を取り出すことが可能になる。
【0104】
また本実施形態では、図3に示すように、フレーム内加算画像生成部130は、加算単位を、水平又は垂直(i軸方向又はj軸方向)に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第4のポジション(例えば座標(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1))に設定し、その第1〜第4のポジションにおいてそれぞれフレーム内加算画像A〜Aを取得する。第mのポジションと第m+1のポジション(例えば(0,0)、(1,0))の加算単位は、共通の画素(v10、v11)を含む。
【0105】
このようにすれば、共通の画素を含みながら加算単位を順次画素シフトして加算画素値を求める重畳シフト加算を行うことができる。
【0106】
また本実施形態では、上式(6)に示すように、平均画像生成部142は、第1〜第4のポジションの加算画素値の平均値aijを、平均画像の画素値として求める。上式(7)に示すように、フレーム内差分画像生成部141は、平均画像の画素値aijと、第mのポジションの加算画素値(例えばa(1)ij)の差分値(aD1ij)を、第mの差分画像の画素値(aD1ij)として求める。
【0107】
また本実施形態では、図3等で説明したように、データ圧縮部は、第mのフレーム内差分画像Dをエントロピー符号化により可逆圧縮する。
【0108】
このようにすれば、上述のようにエントロピーが小さくなったフレーム内差分画像Dを高圧縮率で圧縮することができるため、画像データの圧縮率を向上できる。これにより、圧縮データを記録するストレージの容量を削減したり、データ通信における通信負荷を軽減できる。
【0109】
8.第3のデータ圧縮手法
上記の実施形態では、フレーム間の加算を行った後にフレーム内の加算を行ったが、フレーム内の加算を行った後にフレーム間の加算を行ってもよい。図8に、このような場合の構成例として、撮像装置の第3の構成例を示す。
【0110】
撮像装置は、撮像部10、画像処理部20を含む。なお以下では、図2等で上述した構成要素と同一の構成要件については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0111】
撮像部10は、レンズ110、撮像素子120、フレーム間加算画像生成部122、フレーム間差分画像生成部124、フレーム内加算画像生成部130、フレーム内差分画像生成部141、平均画像生成部142、エントロピー符号化部143、圧縮データ記録部150を含む。画像処理部20の構成要素は、図5の画像処理部20と同様である。
【0112】
フレーム内加算画像生成部130は、連続して得られる撮像画像f(Tは自然数)のフレーム一つ一つにおいてフレーム内の重畳シフト重み付け加算を行い、フレーム内加算画像{A(T),A(T),A(T),A(T)}を生成する。平均画像生成部142は、フレーム内加算画像の平均画像M(T)を求める。フレーム内差分画像生成部141は、フレーム内加算画像と平均画像の差分であるフレーム内差分画像{D(T),D(T),D(T),D(T)}を求める。
【0113】
フレーム間加算画像生成部122は、平均画像M(T)とフレーム内差分画像{D(T),D(T),D(T),D(T)}のそれぞれについてフレーム間の重畳シフト重み付け加算を行い、フレーム間加算画像{B}を生成する。即ち、画像単位にて表記すると、重み付け加算は下式(13)で表される。
(M)=1・M(T)+(1/r)・M(T+1),
(D)=1・D(T)+(1/r)・D(T+1) (13)
【0114】
ここで、rは重み付け係数である。mは4以下の自然数である。
【0115】
フレーム間差分画像生成部124は、下式(14)に示すように、フレーム間加算画像{B}を基準とし、{B}を順次差し引きして差分画像DTを求める。
=(基準値),
DTT+1=B−BT+1 (14)
【0116】
エントロピー符号化部143は、加算画像{B}と差分画像DTに対してそれぞれエントロピー符号化(可逆圧縮)を行い、記録データを生成する。
【0117】
圧縮データ伸張部200は、圧縮された加算画像{B}と差分画像DTを伸張する処理を行う。フレーム間加算画像再生部214は、伸張された基準画像Bと差分画像DTから加算画像{B、B}を再生する。フレーム間推定演算部234は、加算画像{B、B}に基づいて、平均画像M(T)と差分画像D(T)〜D(T)を推定により復元する。
【0118】
フレーム内加算画像再生部210は、平均画像M(T)と差分画像D(T)〜D(T)から加算画像A〜Aを再生する処理を行う。フレーム内推定演算部230は、加算画像A〜Aに基づいて、撮像画像fを推定により復元する。復元された画像は、ベイヤー配列のRAW画像である。
【0119】
以上の実施形態によれば、フレーム内加算画像生成部130は、第xの撮像画像f(xは3以下の自然数)を受けて、加算画素値を取得する単位である加算単位を撮像画像fの複数の画素毎に設定し、加算単位を順次画素シフトさせながら加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して第1〜第nのフレーム内加算画像A(x)〜A(x)を生成する。平均画像生成部142は、フレーム内加算画像A(x)〜A(x)の平均画像M(x)を生成する。フレーム内差分画像生成部141は、第mのフレーム内加算画像A(x)と平均画像M(x)との差分を、第mのフレーム内差分画像D(x)として生成する。
【0120】
フレーム間加算画像生成部122は、フレーム内差分画像D(x)又は平均画像M(x)を第xの入力画像として受けて、第1、第2の入力画像(例えばD(1)、D(2))に基づく第1のフレーム間加算画像Bを生成し、第2、第3の入力画像(D(2)、D(3))に基づく第2のフレーム間加算画像Bを生成する。
【0121】
このようにすれば、撮像画像に対してフレーム内加算を行った後にフレーム内加算を行ってデータ圧縮を行うことができる。このような処理順序によっても、フレーム内差分画像によるエントロピー低減効果、フレーム間加算画像による画素値の変化を小さくする効果、フレーム間差分画像によるエントロピー低減効果を得ることができる。また、復元推定処理により撮像画像を復元して、任意タイミングの高精細静止画を得ることができる。
【0122】
9.第4のデータ圧縮手法
上記の実施形態では、2フレーム間の差分によりフレーム間差分画像を生成したが、基準フレームと前後フレームの差分によりフレーム間差分画像を生成してもよい。図9を用いて、基準フレームと前後フレームの差分によりデータ圧縮を行う手法について説明する。
【0123】
図9に示すように、まず、上述の手法と同様にしてフレーム間加算画像B(Tは自然数)を生成する。このフレーム間加算画像Bにおいて、例えば基準画像をB3k+2(kは0以上の整数)とする。そして、基準画像B3k+2と、その前後のフレーム間加算画像B3k+1,B3k+3の差分をとり、差分画像DT3k+1,DT3k+3を得る。画像の差分は、同一位置の画素値の差分値を求めることにより行う。
【0124】
次に、基準画像と差分画像の組合せデータ{B3k+2,DT3k+1,DT3k+3}をデータ単位とし、それぞれに可逆圧縮符号化(例えばエントロピー符号化)を施し、順次融合圧縮データとして記録する。
【0125】
元の画像fを再生するには、上記とは逆のプロセスを行えばよい。即ち、記録された融合圧縮データに対して可逆圧縮符号の復号を行い、組合せデータ{B3k+2,DT3k+1,DT3k+3}を生成する。そして、組み合わせデータからフレーム間加算画像Bを再生する。フレーム間加算画像Bに対して画像復元推定法を適用し、撮像フレーム画像fを得る。
【0126】
10.データ圧縮手法の第1の変形例
次に、データ圧縮手法の第1の変形例について説明する。図10に示すように、まず、撮影フレーム画像f(Tは自然数)の各フレーム内において、図3等で上述の重畳シフト4画素加算を行い、フレーム内加算画像f’={A〜A}を生成する。
【0127】
次に、フレーム内加算画像f’の時間軸方向において、図1等で上述のフレーム間差分処理を行う。即ち、基準画像をB=f’とし、隣接フレームの差分によりフレーム間差分画像DTを生成する。なお、図10では簡単のために基準画像Bやフレーム間差分画像DTをそれぞれ1枚の画像で表しているが、実際には下式(15)に示すように、それぞれ4枚の画像で構成される。
’(T)=A(T)−A(T+1) (15)
【0128】
ここで、上式(15)の差分は、同一位置の画素値の減算により行われる。kは4以下の自然数である。
【0129】
上式(15)は、図1で上述のフレーム間加算において、重み付け係数をr=−1とすることに対応する。
【0130】
次に、図11に示すように、基準画像Bやフレーム間差分画像DTを構成する4枚の画像A’(T)〜A’(T)の平均画像Mを生成し、その平均画像Mと4枚の画像A’(T)〜A’(T)の差分画像D〜Dを生成する。この平均画像Mと差分画像D〜Dの生成は、図3で上述の手法と同様に行う。そして、平均画像Mと差分画像D〜Dを可逆圧縮処理し、データ圧縮された記録データを生成する。
【0131】
記録データから撮影フレーム画像fを復元するときには、まず圧縮された記録データに対して伸張処理を行い、平均画像Mと差分画像D〜Dを再生する。次に、平均画像Mと差分画像D〜Dから基準画像Bとフレーム間差分画像DTを求める。次に、基準画像Bと差分画像DTからフレーム内加算画像f’={A〜A}を再生する。このフレーム内加算画像f’は、水平又は垂直に重畳シフトされた加算画素値であり、その加算画素値に対して図18(A)等で後述する復元推定処理を適用することにより、元の撮影フレーム画像fを再生する。
【0132】
11.データ圧縮手法の第2の変形例
上記の変形例では、フレーム間差分をとってから平均画像Mと差分画像D〜Dを生成したが、平均画像Mと差分画像D〜Dを生成してからフレーム間差分をとってもよい。図12、図13を用いて、このような第2の変形例について説明する。
【0133】
図12に示すように、まず、撮影フレーム画像f(Tは自然数)の各フレーム内において、図3等で上述の重畳シフト4画素加算を行い、フレーム内加算画像f’={A〜A}を生成する。
【0134】
次に、フレーム内加算画像f’={A〜A}の平均画像M(T)を生成し、その平均画像M(T)とフレーム内加算画像{A〜A}の差分をとり、フレーム内差分画像{D(T)〜D(T)}を生成する。図12では、フレーム内差分画像をD(T)(mは4以下の自然数)で表す。
【0135】
次に、図13に示すように、平均画像M(1)を基準画像とし、平均画像M(T)のフレーム間の差分画像DM(T)=M(T+1)−M(T)を生成する。また、フレーム内差分画像D(1)を基準画像とし、フレーム内差分画像D(T)のフレーム間の差分画像DT(T)=D(T+1)−D(T)を生成する。
【0136】
次に、平均画像の基準画像M(1)と差分画像DM(T)、及びフレーム内差分画像の基準画像D(1)と差分画像DT(T)に対して可逆圧縮処理を行い、記録データを生成する。
【0137】
記録データから撮影フレーム画像fを復元するときには、まず、圧縮された記録データに対して伸張処理を行い、基準画像M(1)、差分画像DM(T)、基準画像D(1)、差分画像DT(T)を再生する。次に、基準画像M(1)と差分画像DM(T)から平均画像M(T)を再生し、基準画像D(1)と差分画像DT(T)からフレーム内差分画像D(T)を再生する。次に、平均画像M(T)とフレーム内差分画像D(T)からフレーム内加算画像{A〜A}を再生する。次に、フレーム内加算画像{A〜A}に対して、図18(A)等で後述する復元推定処理を適用し、元の撮影フレーム画像fを復元する。
【0138】
12.フレーム間加算画像に対する復元推定処理
次に、図1等で上述したフレーム間加算画像Bに基づいて、加算前の撮影フレーム画像fの画素値vij(T)を推定する手法について説明する。
【0139】
なお以下では、フレームf〜fの画素値{vij(1),vij(2),vij(3)}(i,jは0以上の整数)を復元する場合を例に説明するが、他のフレームの画素値についても同様である。また、2フレームの画素値を重み付け加算する場合を例に説明するが、これに限定されず、3以上のフレームの画素値を重み付け加算してもよい。
【0140】
図14に示す加算画素値{bij(1)、bij(2)}は、図1で説明したフレーム間加算画像B、Bの画素値{vij(1)’,vij(2)’}に対応する。推定処理では、この加算画素値{bij(1)、bij(2)}を用いて、最終的な推定画素値vij(1)〜vij(3)を推定する。
【0141】
説明を簡単にするために、例えば重み係数r=2とすると、加算画素値{bij(1)、bij(2)}は下式(16)で表される。
ij(1)=vij(1)+(1/2)・vij(2)
ij(2)=vij(2)+(1/2)・vij(3) (16)
【0142】
図15に示すように、上式(16)において、{bij(1)、bij(2)}に所定の重み係数を掛けて差分δiを取ると、下式(17)が成り立つ。
δi=bij(2)−2bij(1)
=(1/2)vij(3)−2vij(1) (17)
【0143】
なお、図15〜図17では、簡単のため画素値のサフィックスijを省略する。
【0144】
ij(1)を未知数(初期変数)とすると、下式(18)に示すように、画素値{vij(2),vij(3)}をvij(1)の関数として求めることができる。このようにして、vij(1)を未知数として、フレーム加算されていない画素値{vij(1),vij(2),vij(3)}の組合せパターンが求められる。
ij(1)=(未知数),
ij(2)=2(bij(1)−vij(1)),
ij(3)=4vij(1)+2δi
=4vij(1)+2(bij(2)−2bij(1))
(18)
【0145】
次に、未知数vij(1)を求める手法について説明する。図16に示すように、加算画素値のパターン{bij(1)、bij(2)}と推定画素値のパターン{vij(1),vij(2),vij(3)}を比較する。そして、その誤差Eが最小になる未知数vij(1)を導出し、推定画素値vij(1)として設定する。
【0146】
具体的には、加算画素値{bij(T)}と推定画素値{vij(T),vij(T+1)}には、下式(19)の関係が成り立つ。この下式(19)による重み付けを考慮すると、下式(20)に示す評価関数Eが求められる。そして、この評価関数Eにより、パターン{bij(1)、bij(2)}とパターン{vij(1),vij(2),vij(3)}の類似性評価を行う。
ij(T)=vij(T)+(1/2)vij(T+1) (19)
【数2】

【0147】
図17に示すように、評価関数Eを最小にする未知数vij(1)(=α)を求め、vij(1)の値を決定できる。そして、推定したvij(1)の値を上式(18)に代入し、{vij(2),vij(3)}が求められる。
【0148】
上記の実施形態によれば、上式(17)に示すように、フレーム間推定演算部234は、第1のフレーム間加算画像の画素値bij(1)と第2のフレーム間加算画像の画素値bij(2)との差分値δiを求める。上式(18)に示すように、第1の撮像画像の画素値vij(1)と第3の撮像画像の画素値vij(3)との関係式を、差分値δiを用いて表す。そして、その関係式を用いて第1〜第3の撮像画像の画素値vij(1)〜vij(3)を推定する。
【0149】
より具体的には、上式(18)に示すように、フレーム間推定演算部234は、撮像画像の画素値vij(1)〜vij(3)の間の関係式を、フレーム間加算画像の画素値{bij(1)、bij(2)}を用いて表す。図16で説明したように、その関係式で表された撮像画像の画素値vij(1)〜vij(3)と、フレーム間加算画像の画素値{bij(1)、bij(2)}とを比較して類似性を評価する。図17で説明したように、その類似性の評価結果に基づいて、類似性が最も高くなるように、撮像画像の画素値vij(1)〜vij(3)を推定する。
【0150】
このようにすれば、撮像画像の画素値の関係式を、フレーム間において重畳加算された画素値を用いて表し、その関係式に基づいて撮像画像の画素値を復元できる。これにより、時間軸方向における復元推定処理を簡素化できる。例えば、2次元フィルターの繰り返し演算(特許文献1)や、初期値の設定に適当な部分を探索(特許文献2)する等の複雑な処理が不要となる。
【0151】
13.フレーム内加算画像に対する復元推定処理
次に、図3等で上述したフレーム内加算画像A〜Aに基づいて、加算前の基準画像Bの画素値vij(1)’又はフレーム間差分画像DTの画素値dtij(T)を推定する手法について説明する。
【0152】
図18(A)、図18(B)に、推定画素値と中間画素値の説明図を示す。図18(A)に示す加算画素値{a00、a10、a11、a01}は、図3で説明した加算画像A〜Aの加算画素値{a(1)00,a(2)10,a(3)11,a(4)01}に対応する。推定処理では、この加算画素値を用いて、最終的な推定画素値v00〜v22を推定する。推定画素値vijは、図3で説明した基準画像Bの画素値vij(1)’又はフレーム間差分画像DTの画素値dtij(T)に対応する。
【0153】
図18(B)に示すように、まず加算画素値a00〜a11から中間画素値b00〜b21を推定する。中間画素値は2画素加算値に対応し、例えばb00は画素値v00とv01の加算値に対応する。これらの中間画素値b00〜b21から最終的な画素値v00〜v22を推定する。
【0154】
中間画素値b00〜b21は、上述の推定処理と同様に求めることができる。即ち、上式(16)を下式(21)に置き換えれば、以降の処理は同様である。
00=b00+(1/2)b10
10=b10+(1/2)b20 (21)
【0155】
求めた中間画素値b00〜b21から推定画素値v00〜v22を推定する処理も、上述の推定処理と同様に行うことができる。即ち、上式(16)を下式(22)に置き換えれば、以降の処理は同様である。
00=v00+(1/2)v01
01=v01+(1/2)v02 (22)
【0156】
上記の実施形態によれば、図18(A)に示すように、第1のポジションに設定された加算単位(例えばa00)と、第1のポジションの次の第2のポジションに設定された加算単位(例えばa10)は重畳する。上式(17)と同様にして、フレーム内推定演算部230は、第1、第2のポジションの加算画素値a00、a10の差分値δiを求める。図18(B)に示すように、第1の中間画素値b00は、加算単位a00から重畳領域(v10、v11)を除いた第1の領域(v00、v01)の加算画素値である。第2の中間画素値b20は、加算単位a10から重畳領域(v10、v11)を除いた第2の領域(v20、v21)の加算画素値である。上式(18)と同様にして、第1、第2の中間画素値b00、b20の関係式を、差分値δiを用いて表す。そして、その関係式を用いて第1、第2の中間画素値b00、b20を推定する。推定した第1の中間画素値b00を用いて加算単位に含まれる各画素の画素値(v00、v10、v11、v01)を求める。
【0157】
このようにすれば、フレーム内において重畳シフトされた加算画素値から中間画素値を一旦推定し、その重畳シフトされた中間画素値から推定画素値を求めることで、高解像画像の推定処理を簡素化できる。例えば、2次元フィルターの繰り返し演算(特許文献1)や、初期値の設定に適当な部分を探索(特許文献2)する等の複雑な処理が不要となる。
【0158】
ここで、重畳するとは、加算単位と加算単位が重なった領域を有することであり、例えば図18(A)に示すように、加算単位a00と加算単位a10が、2つの推定画素v10、v11を共有することである。
【0159】
また、加算単位のポジションとは、撮像画像における加算単位の位置や座標のことであり、あるいは、推定処理における推定画素値データ(画像データ)上での加算単位の位置や座標のことである。また、次のポジションとは、元のポジションから画素シフトされたポジションであり、元のポジションと位置や座標が一致しないポジションのことである。
【0160】
また本実施形態では、第1、第2の中間画素値(例えばb00、b20)を含む連続する中間画素値を中間画素値パターン({b00、b10、b20})とする。上式(18)と同様にして、フレーム内推定演算部230は、中間画素値パターンに含まれる中間画素値の間の関係式を加算画素値a00、a10を用いて表す。図17で説明した手法と同様にして、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターンと加算画素値とを比較して類似性を評価する。その類似性の評価結果に基づいて、類似性が最も高くなるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値b00、b10、b20を決定する。
【0161】
このようにすれば、加算単位が重畳されながら画素シフトされることで取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定できる。
【0162】
ここで、中間画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の中間画素値のデータ列(データの組み)である。また、加算画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の加算画素値のデータ列である。
【0163】
また本実施形態では、上式(20)と同様にして、フレーム内推定演算部230は、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターン({b00、b10、b20})と加算画素値(a00、a10)との誤差を表す評価関数Eを求める。評価関数Eの値が最小となるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値b00、b10、b20を決定する。
【0164】
このようにすれば、誤差を評価関数で表し、その評価関数の極小値に対応する中間画素値を求めることで、中間画素値の値を推定できる。例えば、上述のように最小二乗法を用いて未知数を求めることで、簡素な処理で中間画素推定の初期値を設定できる。例えば、初期値設定に適当な画像部分の探索(特許文献2)が不要である。
【0165】
また本実施形態では、上式(5)に示すように、加算単位の各画素値(例えば、v00、v10、v01、v11)が重み付け加算された加算画素値(a00)を取得する。取得された加算単位の加算画素値(a00、a10)に基づいて、加算単位の各画素の画素値(v00、v10、v01、v11)を推定する。
【0166】
このようにすれば、加算単位の各画素値を重み付け加算してフレーム内加算画像を取得し、取得したフレーム内加算画像から高解像画像の画素値を推定できる。これにより、推定処理において、被写体の持つ高周波成分の再現性を向上できる。すなわち、加算単位の画素値を単純加算した場合には、矩形の窓関数を結像にコンボリューションすることになる。一方、加算単位の画素値を重み付け加算した場合には、矩形よりも高周波成分を多く含む窓関数を結像にコンボリューションすることになる。そのため、被写体の持つ高周波成分をより多く含む加算画像を取得でき、推定画像での高周波成分の再現性を向上できる。
【0167】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また撮像部、画像処理部、撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0168】
10 撮像部、20 画像処理部、100 被写体、110 レンズ、
120 撮像素子、122 フレーム間加算画像生成部、
124 フレーム間差分画像生成部、130 フレーム内加算画像生成部、
141 フレーム内差分画像生成部、142 平均画像生成部、
143 エントロピー符号化部、144 データ圧縮部、
150 圧縮データ記録部、155 データ記録部、200 圧縮データ伸張部、
210 フレーム内加算画像再生部、214 フレーム間加算画像再生部、
230 フレーム内推定演算部、234 フレーム間推定演算部、
240 高精細静止画生成部、250 高精細動画生成部、
260 標準動画生成部、290 画像出力部、295 画像選択部、
〜A フレーム内加算画像、B〜B フレーム間加算画像、
〜D フレーム内差分画像、DT,DT フレーム間差分画像、
E 評価関数、aij 加算画素値、bij 中間画素値、dtij 差分画素値、
〜f 撮影フレーム画像、mAVR 平均値、r 重み付け係数、
ij 画素値、vij(1) 未知数、αij 平均値、δi 差分値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第3のフレームにおける第1〜第3の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記第1の撮像画像の画素値と前記第2の撮像画像の画素値を重み付け加算して第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2の撮像画像の画素値と前記第3の撮像画像の画素値を重み付け加算して第2のフレーム間加算画像を生成するフレーム間加算画像生成部と、
前記第1のフレーム間加算画像と前記第2のフレーム間加算画像の差分を、フレーム間差分画像として生成するフレーム間差分画像生成部と、
前記第1のフレーム間加算画像と前記フレーム間差分画像に基づいて、前記第2のフレーム間加算画像を再生するフレーム間加算画像再生部と、
前記第1のフレーム間加算画像と、再生された前記第2のフレーム間加算画像とに基づいて、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定するフレーム間推定演算部と、
前記フレーム間推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力する画像出力部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フレーム間推定演算部は、
前記第1のフレーム間加算画像の画素値と、前記第2のフレーム間加算画像の画素値との差分値を求め、
前記第1の撮像画像の画素値と、前記第3の撮像画像の画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、
前記関係式を用いて前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記フレーム間推定演算部は、
前記第1〜第3の撮像画像の画素値間の関係式を、前記第1、第2のフレーム間加算画像の画素値を用いて表し、
前記関係式で表された前記第1〜第3の撮像画像の画素値と、前記第1、第2のフレーム間加算画像の画素値とを比較して類似性を評価し、
前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1のフレーム間加算画像又は前記フレーム間差分画像を入力画像として受けて、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記入力画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位を順次画素シフトさせながら前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して第1〜第nのフレーム内加算画像を生成するフレーム内加算画像生成部と、
前記第1〜第nのフレーム内加算画像の平均画像を生成する平均画像生成部と、
前記第1〜第nのフレーム内加算画像のうちの第mのフレーム内加算画像(mはn以下の自然数)と、前記平均画像との差分を、第mのフレーム内差分画像として生成するフレーム内差分画像生成部と、
前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像を圧縮するデータ圧縮部と、
圧縮された前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像を伸張する圧縮データ伸張部と、
伸張された前記平均画像と前記第mのフレーム内差分画像に基づいて、前記第1〜第nのフレーム内加算画像を再生するフレーム内加算画像再生部と、
再生された前記第1〜第nのフレーム内加算画像に基づいて、前記入力画像の画素値を推定するフレーム内推定演算部と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記フレーム内加算画像生成部は、
前記加算単位を、水平又は垂直に1画素ずつ順次シフトさせて第1〜第nのポジションに設定し、前記第1〜第nのポジションにおいてそれぞれ前記第1〜第nのフレーム内加算画像を取得し、
前記第1〜第nのポジションのうちの第mのポジションと第m+1のポジションの前記加算単位は、共通の画素を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記データ圧縮部は、
前記第1〜第nのフレーム内差分画像をエントロピー符号化により可逆圧縮することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかにおいて、
第1のポジションに設定された前記加算単位と、前記第1のポジションの次の第2のポジションに設定された前記加算単位が重畳する場合に、
前記推定演算部は、
前記第1のポジションの加算画素値と、前記第2のポジションの加算画素値の差分値を求め、
前記第1のポジションの加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2のポジションの加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、
前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記推定演算部は、
前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記加算画素値を用いて表し、
前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記加算画素値とを比較して類似性を評価し、
前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1〜第3の撮像画像のうちの第xの撮像画像(xは3以下の自然数)を受けて、加算画素値を取得する単位である加算単位を前記第xの撮像画像の複数の画素毎に設定し、前記加算単位を順次画素シフトさせながら前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して第1〜第nのフレーム内加算画像を生成するフレーム内加算画像生成部と、
前記第1〜第nのフレーム内加算画像の平均画像を生成する平均画像生成部と、
前記第1〜第nのフレーム内加算画像のうちの第mのフレーム内加算画像と、前記平均画像との差分を、第mのフレーム内差分画像として生成するフレーム内差分画像生成部と、
を含み、
前記フレーム間加算画像生成部は、
前記第mのフレーム内差分画像又は前記平均画像を、第1〜第3の入力画像のうちの第xの入力画像として受けて、前記第1、第2の入力画像に基づく前記第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2、第3の入力画像に基づく前記第2のフレーム間加算画像を生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
第1〜第3のフレームにおける第1〜第3の撮像画像を取得し、
前記第1の撮像画像の画素値と前記第2の撮像画像の画素値を重み付け加算して第1のフレーム間加算画像を生成し、前記第2の撮像画像の画素値と前記第3の撮像画像の画素値を重み付け加算して第2のフレーム間加算画像を生成し、
前記第1のフレーム間加算画像と前記第2のフレーム間加算画像の差分を、フレーム間差分画像として生成し、
前記第1のフレーム間加算画像と前記フレーム間差分画像に基づいて、前記第2のフレーム間加算画像を再生し、
前記第1のフレーム間加算画像と、再生された前記第2のフレーム間加算画像とに基づいて、前記第1〜第3の撮像画像の画素値を推定し、
前記フレーム間推定演算部により推定された画素値に基づく高解像画像を出力することを特徴とする画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−231379(P2012−231379A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99267(P2011−99267)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】