説明

撮像装置及び電子機器

【課題】小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録可能な撮像装置、及びその撮像装置を用いる電子機器を提供すること。
【解決手段】行列状に配列される複数の受光素子101を備え、入射光Linを画像信号に変換する撮像素子111と、撮像素子111の入射側に設けられるローパスフィルタ110と、を有し、ローパスフィルタ110は、少なくとも屈折面を備えるプリズム素子からなるプリズム群を有し、屈折面は、入射光を所定方向へ屈折する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び電子機器の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置として、例えば、入射光を受光素子で電気信号に変換し、被写体の像をデジタルデータとして記憶するデジタルビデオカメラが普及している。デジタルビデオカメラ等の撮像装置に用いられる受光素子は、画素に対応して規則的に配列される。撮像装置における画素構造と、被写体の模様とが同程度の周期で重なり合う場合、撮像装置に記録された画像にモアレが発生する場合がある。モアレは、被写体の周期模様と、撮像装置における周期構造とに起因して撮像装置に記録される。モアレは、記録された画像と、その画像を再生する再生機器における周期構造とが重なり合うことで、画像の再生時に発生する場合もある。モアレは、本来の被写体に無い色彩や模様を出現させることにより画質の低下を引き起こす。従来、モアレを低減する技術としては、例えば、特許文献1及び2に提案されているものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−330799号公報
【特許文献2】特開平5−2151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2には、ローパスフィルタとして複屈折板又は回折格子を用いる構成が開示されている。ローパスフィルタは、入射光を分割することで画像の周期性を低減するものである。画像の周期性は、入射光の分割数を増加するに従って効果的に低減させることができる。これに対して、ローパスフィルタとして複屈折板を用いる場合、入射光の分割数を増加するに従って厚い複屈折板を設ける必要がある。厚い複屈折板が必要であると、撮像装置が大型で高コストな構成となってしまう。また、複屈折板と併せて偏光板が必要となる場合もある。従って、複屈折板を用いる撮像装置は、小型で低廉な構成においてモアレを有効に低減することが難しい。また、ローパスフィルタとして回折格子を用いる場合、高次回折光の発生により画像のコントラストを低下させる場合がある。
【0005】
このように、従来の技術では、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録することが困難であるため問題である。本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録可能な撮像装置、及びその撮像装置を用いる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、行列状に配列される複数の受光素子を備え、入射光を画像信号に変換する撮像素子と、撮像素子の入射側に設けられるローパスフィルタと、を有し、ローパスフィルタは、少なくとも屈折面を備えるプリズム素子からなるプリズム群を有し、屈折面は、入射光を所定方向へ屈折することを特徴とする撮像装置を提供することができる。
【0007】
被写体からの光は、プリズム群に入射した後、光路を所定方向へ折り曲げられる。例えばプリズム素子に複数の屈折面を設けると、被写体の像は、複数に分割して撮像素子に投影される。例えば被写体に周期的な模様がある場合に、被写体の像を複数に分割することで模様の周期性が弱められる。被写体の像の周期性が弱められることによって、受光素子が規則的に設けられていることによって生じる光の干渉効果が低減される。さらに、被写体の像の周期性が弱められることにより、画像の再生機器の周期構造によるモアレの発生も低減できる。プリズム群は、プリズム素子の屈折面の向き及び数に応じて入射光を分割する。異なる向きの屈折面の数を増やすことで、薄型のプリズム群であっても入射光の分割数を増加できる。例えば成型技術によりプリズム群を製造する場合、プリズム素子の屈折面の数を増やすことは容易である。このため、小型でかつ低廉な構成においてモアレを有効に低減することができる。さらに、ローパスフィルタとして回折格子を用いる場合のように、不要な高次回折光によって画像のコントラストが低下することも無い。これにより、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録可能な撮像装置を得られる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様としては、屈折面は、入射光がプリズム群を直進した場合の入射位置の受光素子に隣接する受光素子へ、入射光を導くような屈折面の向き、及び屈折面と光軸に対し略垂直方向に形成される基準面とのなす角度、を有することが望ましい。屈折面の向きによって、入射光の光路が折り曲げられる方向を制御できる。基準面に対する屈折面の角度によって、入射光を屈折させる度合い(屈折角)を制御できる。屈折面は、所定の向き及び所定の角度で設けることにより、プリズム群で屈折せず進行する入射光が入射する受光素子に隣接する受光素子へ入射光を導く。この結果、被写体の像の周期性を弱めることができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、プリズム群は、第1の方向における断面形状が略台形形状であり、第1の方向に略直交する第2の方向に長手方向を有する2組のプリズム素子からなり、2組のプリズム素子は、それぞれ長手方向どうしが略直交するように設けられ、台形形状の斜面は屈折面に対応することが望ましい。プリズム素子の第1の方向における断面形状は略台形形状である。台形形状の斜面は、屈折面として作用する。このため、斜面で屈折した光による像を、プリズム素子の長手方向に対して直交する方向へ形成することができる。本態様では、さらに2組のプリズム素子の長手方向どうしが略直交するように構成されている。これにより、被写体の像の周期性を弱めることができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、プリズム素子は、少なくとも4つの屈折面を有し、前記4つの屈折面は、それぞれ異なる向きを有することが望ましい。例えば4つの屈折面を有するプリズム素子は、入射光を4方向へ分岐できる。入射光を少なくとも4方向へ分岐することで、有効にモアレを低減することができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、プリズム群は、第1の形状を有する第1のプリズム素子と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する第2のプリズム素子と、を少なくとも有することが望ましい。例えば、プリズム群は、入射光を上下左右の4方向に屈折させる第1のプリズム素子と、入射光を右上、右下、左上、左下の4方向に屈折させる第2のプリズム素子とを有する構成とすることができる。第1のプリズム素子と第2のプリズム素子とは、入射光を屈折させる方向を異ならせるほか、屈折面の大きさを異ならせることとしても良い。このように、異なる形状のプリズム素子を設けることで、プリズム群にプリズム素子を設けることによる周期性を弱めることとし、透過光が干渉し合うことを防止できる。これにより、画像のコントラストの低下を低減できる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、入射光を撮像素子へ導く撮像レンズを有し、プリズム群は、撮像レンズと撮像素子との間の光路中に設けられることが望ましい。撮像レンズと撮像素子との間の光路中にプリズム素子を設けることにより、被写体の像を複数に分割することができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、入射光を撮像素子へ導く撮像レンズを有し、プリズム群は、撮像レンズの瞳位置、瞳位置に共役な位置、瞳位置の近傍、又は瞳位置に共役な位置の近傍に設けられることが望ましい。撮像レンズの瞳位置は、光線密度が最も大きくなる。換言すると、瞳位置では、光束径が最も小さくなる。従って、プリズム群を瞳位置近傍に配置すると、プリズム群の寸法を小さくできる。このため、プリズム群を備える撮像レンズ自体も小型にできる。また、プリズム群は、高い加工精度で、容易に製造、加工できる。これにより、小型で低廉な撮像装置を得られる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する、略円形形状の領域内において、略円形形状の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジの数が50以下であることが望ましい。単位面積の円形形状の直径に沿う直線に対して略垂直なプリズム素子の境界のエッジの数を50以下とすることにより、プリズム群の周期構造に起因する回折の影響を抑制し、回折光によるコントラストの低下を低減することができる。さらに、撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する、略円形形状の領域内において、略円形形状の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジの数が30以下であることが望ましい。これにより、さらに、プリズム群の周期構造に起因する回折の影響を抑制し、回折光によるコントラストの低下を低減することができる。さらに好ましくは、撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する、略円形形状の領域内において、略円形形状の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジの数が15以下であることが望ましい。これにより、さらに高品質な画像を記録可能な撮像装置を得られる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様としては、撮像素子とプリズム群とを固定することにより、撮像素子の位置に対してプリズム群を所定の位置に保持する保持部を有することが望ましい。屈折面で屈折させた入射光を、プリズム群で直進した場合に入射する受光素子に隣接する受光素子へ正確に入射させるためには、撮像素子とプリズム群とを位置決めする必要がある。保持部を設けることにより、屈折面で屈折させた入射光を、正確に隣の受光素子を入射させることができる。これにより、モアレを有効に低減できる。
【0016】
さらに、本発明によれば、撮像装置を有することを特徴とする電子機器を提供することができる。上記の撮像装置を有することから、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、プリズム群の周期性に起因する回折現象の発生を低減することができる。これにより、コントラストの低下を回避し、高品質な画像を記録可能な電子機器を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る撮像装置100の概略構成を示す。撮像装置100は、入射光Linを受光素子101で電気信号に変換し、被写体の像をデジタルデータとして記憶する。撮像装置100は、複数の受光素子101を備え、入射光Linを画像信号に変換する撮像素子111を有する。撮像素子111は、光軸AXに略垂直な平面上に受光素子101を配置する。各受光素子101は、光軸AXに略垂直な平面上において、略直交する2方向に行列状に配置されている。受光素子101としては、例えばCCDやCMOSセンサを用いることができる。
【0019】
遮光部103は、受光素子101どうしの間の領域に対応して、撮像素子111の入射側に設けられている。遮光部103は、入射光Linのうち受光素子101どうしの間の位置へ進行する光を遮断することで、受光素子101のノイズの原因となる迷光の発生を防ぐ。遮光部103が設けられる層の入射側には、カラーフィルタ層105が設けられている。カラーフィルタ層105は、受光素子101に対応してカラーフィルタ104を設けている。カラーフィルタ104には、R光を透過させるR光透過カラーフィルタと、G光を透過させるG光透過カラーフィルタと、B光を透過させるB光透過カラーフィルタとがある。入射光Linは、各カラーフィルタ104を透過することによって、R光、G光、B光に分けられる。
【0020】
カラーフィルタ層105の入射側には、マイクロレンズアレイ106が設けられている。マイクロレンズアレイ106は、入射光Linを各受光素子101へ集光させる。マイクロレンズアレイ106の入射側には、赤外線カットフィルタ107、プリズム群110、撮像レンズ120が順次設けられている。赤外線カットフィルタ107は、入射光Linのうちの赤外光を遮断する。
【0021】
図2は、プリズム群110の斜視構成を示す。プリズム群110は、硝子又は透明樹脂からなる透明プレートの射出側表面に形成されている。プリズム群110は、撮像素子111の入射側に設けられるローパスフィルタである。プリズム群110は、屈折面と平坦面を備える複数のプリズム素子201から構成されている。
【0022】
図1に戻って、撮像装置100は、撮像レンズ120と撮像素子111との間光路中にプリズム群110を設けている。撮像レンズ120は、入射光Linを撮像素子111へ導く。撮像素子111及びプリズム群110は、保持部112によって固定されている。保持部112は、撮像素子111の位置に対してプリズム群110を所定の位置に保持している。撮像素子111は、保持部112の固定面114に固定されている。プリズム群110は、保持部112の固定面113に固定されている。プリズム群110と撮像素子111との位置関係については後述する。
【0023】
被写体からの入射光Linは、撮像レンズ120によって撮像素子111の方向へ導かれる。撮像レンズ120を透過した入射光Linは、プリズム群110、赤外線カットフィルタ107を透過して、マイクロレンズアレイ106に入射する。マイクロレンズアレイ106に入射した入射光Linは、マイクロレンズ素子によって各受光素子101へ集光する向きに屈折する。マイクロレンズアレイ106を透過した入射光Linは、カラーフィルタ層105でR光、G光、B光に分けられる。カラーフィルタ層105は、画像信号に色情報を与える役割を有する。
【0024】
各色光に分けられた入射光Linは、各受光素子101に入射する。入射光Linは、被写体上の位置に対応する位置の受光素子101に入射する。各受光素子101は、光電変換によって入射光Linを画像信号に変換する。撮像素子111の各受光素子で得られた画像信号は、不図示のメモリや記録媒体に記録される。撮像装置100は、このようにして被写体の像をデジタルデータとして記憶する。
【0025】
図3は、被写体OBJから結像面SIまでにおける入射光Linの振舞いを説明するものである。ここでは説明に必要な構成のみを図示するものとする。結像面SIは、例えば撮像素子111の表面である。例えば、被写体OBJの物点Qの像を結像面SIで結像させる場合を考える。被写体OBJと結像面SIとは、互いの共役関係にある。被写体OBJの物点Qからの入射光Linは、物点Qから角度θ1で拡散し、撮像レンズ120に入射する。撮像レンズ120は、拡散する入射光Linを受光素子101、図3では結像面SI上の一点P0に集光するように、入射光Linの角度を変換する。
【0026】
図3に示すプリズム群110は、光軸を含む平面でプリズム群110を切断したときの断面構成である。かかる断面構成において、プリズム素子201は、2つの屈折面SA、SBと、屈折面SA及びSBの間の平坦部SCとで表すことができる。入射光Linのうち平坦部SCに入射した光は、屈折せずそのままの進行方向へ進行する。平坦部SCを通過した光は、結像面SIの像点P0を焦点として集光する。
【0027】
FナンバーがFである撮像レンズ120を用いる場合に、撮像レンズ120で取り込み可能な光Linの角度θ1は、以下の条件式で表せる。
θ1=asin{1/(2F)}
物点Qから角度θ1で広がる光は、複数のプリズム素子201からなるプリズム群110上の領域Mを通過し、角度θ1で像点P0に入射する。
【0028】
ここで、図3に示す物点Qから結像面SIに向かう光線Linは、光路中に設けられたプリズム群110を透過する。物点Qからの光線が透過するプリズム群110上の領域Mの面積を、単位面積とする。領域Mは、略円形形状の領域である。物点Qから撮像素子111へ向かう光Linは、領域Mにおける屈折面の向きにより定められた屈折方向へ進行する。また、光Linは、プリズム群110を透過した後、単位面積のうち同じ向きの屈折面が占める割合に応じた強度の光量で、それぞれの屈折方向にある受光素子に入射する。
【0029】
屈折面SA、SBは、入射光を所定方向へ屈折する。入射光Linのうち屈折面SAに入射した光は、屈折面SAで屈折作用を受ける。屈折面SAを通過した光は、光路が折り曲げられて、結像面SIの像点P1を焦点として集光する。入射光Linのうち屈折面SBに入射した光は、屈折面SBで屈折作用を受ける。屈折面SBを通過した光は、光路が折り曲げられて、結像面SIの像点P2を焦点として集光する。
【0030】
図4、図5は、プリズム群110の構成を示す平面図である。各プリズム素子201は、図5に示すように、略正方形形状をしている。各受光素子101が光軸AXに略垂直な平面において、互いに略直交する2方向に行列状に配列されているのに対し、各プリズム素子201は、各プリズム素子201の辺部211aが、受光素子101を配列する2方向に対して略45°をなすように構成されている。図3に示すプリズム群110は、各プリズム素子201の略中心を通過し、かつ辺部211aに沿う面で切断したときの断面を示している。
【0031】
図6は、プリズム群110近傍を拡大して示す図である。プリズム群110と撮像素子111との間の媒質(例えば空気)は屈折率n1、プリズム群110を構成する部材は屈折率n2を有する場合を考える。また、屈折面212は、平坦部213を延長した基準面213aに対して角度θとなるように形成されている。以下、角度θを、屈折面212の傾斜角度という。
【0032】
簡単のため、被写体OBJからの光Linのうちの平行光について説明する。平坦部213に入射する光線は、平坦部213に対して垂直に入射する。このため、平坦部213で屈折作用を受けることなく、そのまま直進して受光素子101に入射する。これに対して、屈折面212に入射した光は、以下に示す条件式を満足するように屈折する。
n1・sinβ=n2・sinα
ここで、角度αは屈折面212の法線Nを基準とする入射角度、角度βは射出角度であ
る。
【0033】
また、プリズム群110と距離Lだけ離れた撮像素子111において、直進した光の位置と屈折された光の位置と距離Sは、次式で表される。
S=L×tanΔβ
Δβ=β−α
このように、屈折面212の傾斜角度θを制御することで、距離Sを任意に設定することができる。距離Sは、撮像素子111における被写体OBJの像の移動量である。さらに、図6から明らかなように、光線LL2が屈折する方向は屈折面212の向きに依存している。換言すると、屈折面212の向きを制御することで、撮像素子111において像を形成する方向を任意に設定できる。
【0034】
図5に戻って、正方形のプリズム素子201の一辺は長さLa、平坦部213の一辺は長さLbを有するものとする。プリズム群110のうち一のプリズム素子201が占める面積La×Laを単位面積とする。平坦部213は面積FS=Lb×Lbを有する。また、4つの屈折面212a、212b、212c、212dは各々面積P1、P2、P3、P4を有する。
【0035】
ここで、平坦部213を透過して直進した光の光量は、単位面積に占める平坦部213の面積FSに対応する。同様に、4つの屈折面212a、212b、212c、212dで屈折される光の総光量は、単位面積に占める屈折面212a、212b、212c、212dの総面積P1+P2+P3+P4に対応する。ここで、4つの屈折面212a、212b、212c、212dの面積P1、P2、P3、P4はそれぞれ略等しい大きさとすると、総面積P1+P2+P3+P4=4×P1となる。換言すると、平坦部213又は屈折面212の面積を制御することで、撮像素子111においてプリズム素子201を直進又は屈折した光の光量を任意に設定できる。
【0036】
撮像素子111での光量を考慮すると、平坦部213を透過して直進した光の光量と、屈折面212で屈折された光の光量とが等しいことが望ましい。例えば、長さLa=1.0、長さLb=0.707とすると、プリズム素子201の単位面積は1.0(=1.0×1.0)、平坦部213の面積FSは0.5(=0.707×0.707)となる。また、それぞれ等しい面積を有する4つの屈折面212a、212b、212c、212dを合計した総面積(4×P1)は0.5(=1.0−0.5)である。このようして、平坦部213を透過して直進した光の光量と、4つの屈折面212a、212b、212c、212dで屈折した光の総光量とを等しくすることができる。
【0037】
図7は、結像面SI上の点P0に集光する光を示す。複数のプリズム素子201からなるプリズム群110上の領域Mは、半径がL×tanθ1の円である。領域Mを通過した光のうち平坦部213を透過した光は、角度θ1で点P0に入射する。点P0に入射する光の光量は、領域Mに占める平坦部213の面積によって設定できる。また、領域Mに設けられたプリズム素子201の屈折面212の向きによって、像をシフトさせる方向が決まる。領域Mのうち、同じ向きの面を透過した光は、結像面SIにおいて同じ点に入射する。従って、領域Mを透過した光は、領域Mのうち同じ向きの面が占める割合に応じた強度の光量で、それぞれの屈折方向にある受光素子に入射する。
【0038】
図8は、プリズム群110上の点Nを通過する光を示す。点Nを通過する光は、被写体OBJから角度θ1で入射する。被写体OBJ上の面SOにおける点Q1からの光は、結像面SI上の点PQ1に入射する。被写体OBJ上の面SOにおける点Q2からの光は、結像面SI上の点PQ2に入射する。被写体OBJ上の面SOにおける点Q0からの光は、結像面SI上の点PQ0に入射する。
【0039】
図9は、撮像素子111における受光素子101の配置を示す。図9に示すR、G、Bは、それぞれの受光素子101に対応してR光透過カラーフィルタ、G光透過カラーフィルタ、B光透過カラーフィルタが設けられていることを示す。図10は、撮像素子111に形成される像を説明するものである。例えば、プリズム素子201の平坦部213に略垂直入射した光が直進することにより、受光素子101Rの位置に像PI1を形成したとする。
【0040】
プリズム素子201の屈折面212a(図5参照)に入射した光は、屈折面212aの向き、傾斜角度θ、面積P1にそれぞれ対応した屈折方向、屈折量、屈折光量でもって屈折作用を受ける。屈折面212aで屈折された光は、受光素子101Rに対して右斜め上にある受光素子101Baの位置に進行する。屈折面212aによって、像PI1から右斜め上方向に距離Sだけ離れた位置に像PI2を形成する。なお、以下全ての説明において簡単のために、撮像レンズ120の結像作用による像の上下左右の反転は無いものとする。
【0041】
屈折面212bで屈折された光は、受光素子101Rに対して左斜め上にある受光素子101Bbの位置に進行する。屈折面212bによって、像PI1から左斜め上方向に距離Sだけ離れた位置に像PI3を形成する。屈折面212cで屈折された光は、受光素子101Rに対して左斜め下にある受光素子101Bcの位置に進行する。屈折面212cによって、像PI1から左斜め下方向に距離Sだけ離れた位置に像PI4を形成する。
【0042】
屈折面212dで屈折された光は、受光素子101Rに対して右斜め下にある受光素子101Bdの位置に進行する。屈折面212dによって、像PI1から右斜め下方向に距離Sだけ離れた位置に像PI4を形成する。プリズム素子201の4つの屈折面212a、212b、212c、212dは、それぞれ異なる方向へ光を屈折するために異なる向きで設けられている。
【0043】
このように、屈折面212は、入射光がプリズム群110を直進した場合の入射位置の受光素子101Rに隣接する受光素子101Ba、101Bb、101Bc、101Bdへ、入射光を導く。プリズム素子201の屈折面212a、212b、212c、212dは、受光素子101Ba、101Bb、101Bc、101Bdへ入射光を導くような向き及び角度を有する。
【0044】
例えば被写体OBJに周期的な模様がある場合に、被写体OBJの像を複数に分割することで模様の周期性が弱められる。被写体OBJの像の周期性が弱められることによって、受光素子101が規則的に設けられていることによって生じる光の干渉効果が低減される。さらに、被写体OBJの像の周期性が弱められることにより、画像の再生機器の周期構造によるモアレの発生も低減できる。
【0045】
プリズム群110は、プリズム素子201の屈折面212の向き及び数に応じて入射光を分割する。異なる向きの屈折面212の数を増やすことで、薄型のプリズム群110であっても入射光の分割数を増加できる。例えば成型技術によりプリズム群110を製造する場合、プリズム素子201の屈折面212の数を増やすことは容易である。また、例えば射出成型による複製技術を用いれば、プリズム素子201を安価に製造することが可能である。このため、小型でかつ低廉な構成においてモアレを有効に低減することができる。さらに、ローパスフィルタとして回折格子を用いる場合のように、不要な高次回折光によって画像のコントラストが低下することも無い。これにより、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録できるという効果を得られる。
【0046】
ここで、図23−1、図23−2を参照して、回折光の影響を低減可能なプリズム群の構成について説明する。例えば、図23−1に示す上面構成を有するプリズムに群2310のように、撮像レンズ120のFナンバーにより定められる領域M内に、第1の形状を有する第1のプリズム素子2311と、第1の形状とは異なる第2の形状を有する第2のプリズム素子2312とを設ける構成を考える。第1のプリズム素子2311が有する第1の形状は、4つの屈折面によって、図23−1に示す上、下、左、右の4方向へ入射光を屈折可能な形状である。第2のプリズム素子2312が有する第2の形状は、いずれも第1のプリズム素子2311とは異なる向きの4つの屈折面によって、図23−1に示す右上、右下、左上、左下の4方向へ入射光を屈折可能な形状である。第1のプリズム素子2311及び第2のプリズム素子2312は、領域M内に所定の割合で配置されている。このように異なる形状の複数のプリズム素子2311、2312をプリズム群2310に設けることによって、入射光を所定の比率かつ所定の方向で屈折させることができる。
【0047】
このように、異なる形状のプリズム素子を設けることでプリズム群の周期性を弱めることとし、透過光が干渉し合うことを防止できる。これにより、画像のコントラストの低下を低減できる。なお、第1のプリズム素子と第2のプリズム素子とは、入射光を屈折させる方向を異ならせるほか、屈折面の大きさを異ならせることとしても良い。また、プリズム素子の形状は2種類とする場合に限らず、2以上の種類としても良い。
【0048】
直線MSに対して略垂直な、プリズム素子の境界のエッジの数が多いと、透過光の回折を引き起こす場合がある。プリズム群2310は、いずれの位置に領域Mを取っても、領域Mの直径上の直線MSに2つのプリズム素子が接するように構成されている。この場合、直線MS上のプリズム素子2311の境界のエッジ2313の数は4である。図23−2の断面構成A、上面構成Bを有するプリズム群2320は、領域M内の直線MS上に4つのプリズム素子2321を有する。言い換えると、プリズム素子2321は、領域M内の直線MSにおいて周波数が4になるように設けられている。また、直線MS上のプリズム素子2321の境界のエッジ2323の数は、11である。
【0049】
このように、プリズム群は、撮像レンズ120のFナンバーにより決定される単位面積の領域内において、任意の直径に沿った直線上に、プリズム素子が少なくとも1個(周期)以上配置されることが望ましい。これにより、受光素子に入射する光線の均一化が図れ、モアレを有効に低減することができる。また、単位面積を有する領域M内の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジ数は、50以下であることが望ましい。領域M内の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジ数を50以下とすることにより、プリズム群が有する周期構造に起因する回折の影響を抑制し、回折光によるコントラストの低下を低減することができる。
【0050】
さらに、撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する領域M内の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジの数を30以下とすることが望ましい。これにより、さらにプリズム群が有する周期構造に起因する回折の影響を抑制し、回折光によるコントラストの低下を低減することができる。さらに好ましくは、撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する領域M内の直径に沿う直線に略垂直なプリズム素子の境界のエッジ数を15以下とすることが望ましい。これにより、さらに高品質な画像を記録可能な撮像装置100を得られる。
【0051】
屈折面212で屈折した光を隣接する受光素子101へ正確に入射させるためには、プリズム素子201の屈折面212の向きや角度を制御するほか、撮像素子111とプリズム群110との位置合わせをする必要がある。保持部112は、撮像素子111とプリズム群110とをいずれも光軸AXに対して略垂直になるように保持する。また、保持部112は、撮像素子111とプリズム群110との間の距離Lを固定する。このようにして保持部112を設けることにより、屈折面212で屈折させた入射光Linを、正確に隣の受光素子101を入射させることができる。これにより、モアレを有効に低減できるという効果を奏する。なお、プリズム群110と撮像素子111とは、保持部112により位置決めする構成に限らず、例えばモ−ルド樹脂を用いてプリズム群110と撮像素子111とをモールドすることで位置決めしても良い。
【0052】
モアレは、撮像装置100における構造と、被写体OBJの模様とが同程度の周期で重なり合う場合に発生し易い。モアレは、特に画素数が少ない撮像装置100において幅広く発生することが考えられる。ローパスフィルタであるプリズム群110は、特に画素数が少ない撮像装置100に用いると、モアレの低減に対して効果的である。
【0053】
ローパスフィルタであるプリズム群110は、図11に示すように、撮像レンズ1120の瞳位置に設けても良い。瞳位置は、撮像レンズ1120の絞りの共役位置である。撮像レンズ1120の瞳位置は、光線密度が最も大きくなる。換言すると、瞳位置では、光束径が最も小さくなる。従って、プリズム群110を瞳位置に配置すると、プリズム群110の寸法を小さくできる。プリズム群110の寸法を小さくできると、各プリズム素子に対して多くの光を通過させることで光を有効に均一化でき、さらにモアレを有効に解消できる。
【0054】
また、プリズム群110を小さくできると、プリズム群110を備える撮像レンズ1120自体も小型にできる。プリズム群110は、高い加工精度で、容易に製造、加工することも可能である。これにより、撮像装置100を小型で低廉な構成にできる。なお、プリズム群110は、瞳位置に限らず、瞳位置の近傍、瞳位置に共役な位置及びその近傍の位置に設けても良い。
【0055】
次に、プリズム群110を例として、プリズム群の製造方法を説明する。プリズム群110は、透明プレートに一体的に形成されている。透明プレートは、透明な平行平板硝子である。平行平板硝子の一方の面にプリズム群110をフォトリソグラフィ技術により形成する。具体的には、フォトレジスト層を平行平板硝子上に、グレースケール法を用いて所望のプリズム形状、例えば四角錐形状となるようにパターニングしてマスクを形成する。そして、CHF3等のフッ素系ガスを用いたRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法によりプリズム群110を形成する。また、プリズム群110は、フッ酸を用いるウェットエッチング法によっても形成することができる。かかる工程を経ることで、プリズム素子201の平坦部と屈折部とを精度良く形成できる。
【0056】
さらにプリズム群110を製造する別の方法について説明する。プリズム群110は屈折面角度がおよそ0.02deg〜4.95degであり、プリズム素子201の高さはおよそ0.01〜2.5μmとなる。機械加工によって、微細構造を有するプリズム群110を作成するためには、プリズム素子201の高さ、屈折面の角度のいずれも高精度な加工が要求される。高精度な加工を施す場合、切削部により第1の平坦部を形成する第1平坦部形成工程と、切削部により、第1の平坦部を所定深さだけ切削し、第1平坦部に対し所定の角度を形成する第2の屈折面加工工程を用いることができる。この時、引き続き第2の平坦部形成工程を施すことで、平坦部を複数の高さ位置に形成することができる。
【0057】
また、第1の平坦部と異なる試し加工領域において、加工データに基づいて切削部により所定形状を形成する試し加工工程と試し加工工程で形成された所定形状を測定する形状測定工程と、形状測定工程で得られた測定データと加工データとの差分を加工データへフィードバックして加工データを補正するフィードバック工程と補正された加工データに基づいて第1平坦部形成工程と第2の屈折面形成工程により、所望の形状形成が可能となる。さらに、第3の加工工程により平坦部や屈折面を形成しても良い。
【0058】
これらの加工をする際において、バイトの再取り付け、加工対象物の再チャキングは行わず、一連の加工中の加工バイト、加工対象物、加工機の相対関係は一定に保つことが望ましい。また、この加工対象物で得られたものを金型として用い、PMMA、ゼオネックス、アートン、PCなどの樹脂を用いて整形することで安価に大量に製造できる。また、金型を電鋳メッキにより金型を複成することによりさらに安価に作成できる。
【0059】
さらに、プリズム群110の他の製造方法を説明する。平行平板硝子の一方の面に光学エポキシ樹脂を塗布する。次に、所望のプリズム形状とは凹凸が反転しているパターンを有する金型を準備する。そして、この金型をエポキシ樹脂に押圧することで型転写する。最後に、紫外線を光学エポキシ樹脂に照射して硬化させて、プリズム群110を形成する。また、型転写する場合に他の方法を採用することもできる。平行平板硝子を加熱して型
転写に必要な程度に軟化させる。そして、軟化した平行平板硝子の一方の表面に、上述の
金型を押圧させて型転写する。これによっても、平行平板硝子にプリズム群110を形成
できる。
【0060】
なお、プリズム群110は、透明プレートに一体的に形成する場合に限られない。例えば、所望のプリズム形状のプリズム群110をホットプレス法で別途パターンシートとして製造しておく。そして、パターンシートを必要な大きさに裁断する。次に、裁断されたパターンシートを平行平板硝子の射出面側に光学的に透明な接着剤を用いて貼付する。これによっても、平行平板硝子にプリズム群110を形成できる。
【0061】
さらに好ましくは、プリズム群110の表面に塵等が付着することを防止することが望ましい。このために、プリズム群110の射出側面に対して低屈折率の透明樹脂等からなるコーティング層を形成する。例えば、プリズム群110は、屈折率n=1.56の光学エポキシ高屈折率樹脂で形成する。コーティング層は、例えば屈折率n=1.38の光学エポキシ低屈折率樹脂で形成する。また、プリズム群110を構成する部材の屈折率と、コーティング層の屈折率とを略一致させることもできる。これにより、屈折面212の製造誤差のばらつき等に起因して、屈折された光が撮像素子111上で位置ずれが起きることを低減できる。
【0062】
図12−1〜12−6は、プリズム素子の形状の様々なバリエーションの例を示す。例えば、図12−1は、屈折面1210aと平坦部1210bとを有する台形形状のプリズム素子が所定の間隔で設けられたプリズム群1210を示す。図12−2は、屈折面1220aと平坦部1220bとを有し、台形形状のプリズム素子が隙間無く設けられたプリズム群1220を示す。図12−3は、屈折面1230aと平坦部1230bとを有し、三角形形状のプリズム素子が所定の間隔で設けられたプリズム群1230を示す。図12−4は、屈折面1240aのみからなるブレーズ型のプリズム群1240を示す。
【0063】
図12−5は、屈折面1205aと平坦部1250bとを有し、屈折面1205aの位置、及び平坦部1250bの高さがランダムなプリズム群1250を示す。図12−6は、屈折面1206aと平坦部1250bとを有し、屈折面1206aの位置がランダム、かつ平坦部1250bの高さが略一定のプリズム群1260を示す。プリズム群1250、1260はいずれも非周期的な構成を有することから、回折の発生を低減し、記録画像を高コントラストにできる。このように、屈折面の向き、傾斜角度、面積をパラメータとして様々なバリエーションをとることができる。
【0064】
さらに、回折の発生を低減可能な構成を有するプリズム群としては、図12−5及び図12−6に示す非周期的な構成に限らず、異なる形状を有する複数のプリズム素子を組み合わせ、その組合せを繰り返して形成しても良い。撮像装置100は、回折の発生を低減可能な構成のプリズム群を用いることで、高コントラストな画像を記録できる。
【0065】
図13は、プリズム素子の変形例を示す。図13に示すプリズム素子1311は、略正方形形状をしている。プリズム素子1311は、四角錐形状の屈折面1312a、1312、1312c、1312dを有する。また、屈折面1312a、1312b、1312c、1312dの周囲には、平坦部1313が設けられている。平坦部1313を透過した光は、直接透過像を形成する。そして、各屈折面1312a、1312b、1312c、1312dにより、斜め方向の位置に像が形成される。このようにして新たな像を形成することで、擬似的に見かけ上の解像度を1.25倍に向上できる。
【0066】
プリズム素子1311は単位面積Tを有する。そして、各屈折面1312a、1312b、1312c、1312dは、それぞれ面積T/8を、平坦部1313は面積4T/8を有する。この場合、撮像素子111において、直接透過像の光量は4T/8=T/2に比例する。さらに、新しい像を形成する光の光量は4×(T/8)=T/2に比例する。このように、プリズム素子1311の各面の面積を制御することで、各像の明るさを任意に、例えば略同一にすることができる。これにより、被写体OBJの像の周期性を低減することができる。なお、プリズム素子に設けるのは四角錐形状の屈折面に限らず、分割する像の数に応じて他の多角錐形状の屈折面を設けても良い。
【0067】
図14は、プリズム素子の他の変形例を示す。図14に示すプリズム素子1411は、略正方形形状をしている。プリズム素子1411は、四角錐形状の屈折面1412a、1412b、1412c、1412dを有する。なお、図13に示すプリズム素子1311とは異なり、平坦部は形成されていない。平坦部を設けないことにより、プリズム素子1411は、直接透過する光による像を形成しない。各屈折面1412a、1412b、1412c、1412dにより、4つの像が形成される。4つの像はいずれも重畳することなく形成される。
【0068】
プリズム素子1411は単位面積Tを有する。そして、各屈折面1412a、1412b、1412c、1412dは、それぞれ面積T/4を有する。この場合、撮像素子111において、各像をそれぞれ等しく、面積T/4に比例する光量とすることができる。これにより、さらに被写体OBJの像の周期性を低減することができる。なお、プリズム素子に設けるのは四角錐形状の屈折面に限らず、分割する像の数に応じて他の多角錐形状の屈折面を設けても良い。
【0069】
図15は、変形例に係るプリズム群の一部を拡大した概略構成を示す。プリズム群1500は、四角錐形状の第1のプリズム素子1510と、四角錐形状の第2のプリズム素子1520とから構成されている。第1のプリズム素子1510は、その一辺が受光素子101を配列する2方向に対して略45°をなすように形成されている。第2のプリズム素子1520は、辺が受光素子101を配列する2方向のいずれにも略平行となるように形成されている。さらに、第1のプリズム素子1510と、第2のプリズム素子1520との周囲には平坦部1530が設けられている。
【0070】
このように、プリズム素子をランダムに配置することで回折効果を抑制し、高コントラストな記録画像を得ることが可能となる。また、プリズム素子の形状は四角錐形状に限定されず、所望の方向に屈折面を持つ形状であれば良い。例えば、6角錐、8角錐等の多角錐形状や、多角錐形状を切断して得られる台形形状であっても良い。また、光学素子の突起方向はプリズム素子の外形形状に対し、凸形、凹形のいずれであっても同様な効果が得られる。
【0071】
プリズム群1500は、平坦部1530を直接透過した光により像を形成する。第1のプリズム素子1510は、屈折面1511により、受光素子101を配列する2方向に対して45°の方向へ像を形成する。第2のプリズム素子1520は、屈折面1521により、受光素子101を配列する2方向へ像を形成する。本変形例と同様の屈折作用を生じさせるプリズム群の形状は様々な変形をとることができる。例えば、図16に示すような屈折面1610と平坦部1620とを有するプリズム群1600を用いることもできる。
【0072】
図17は、プリズム群1500、1600によって撮像素子111上に形成される像を説明するものである。プリズム群1500、1600は、平坦部を透過する光により、1つの受光素子101上に像を形成する。また、プリズム群1500、1600は、屈折面を透過する光により8つの像を形成する。8つの像は、平坦部を透過した光が入射する受光素子101に隣接する8つの受光素子101上にそれぞれ形成される。プリズム群1500、1600は、このようにして被写体OBJの像を9つの像PI1〜9に分割する。
【0073】
プリズム群1500、1600は、各プリズム素子1510、1520を透過した光により隣接する受光素子101上に像を形成するように、屈折面の向き及び傾斜角度を設定する。例えばプリズム群1500において屈折面の面積比は、単位面積Tに対して、屈折面1511の面積T/16、屈折面1521の面積2T/16、平坦部1530の面積4T/16とそれぞれ設定する。これにより、それぞれ略等しい光量で像を形成できる。
【0074】
プリズム群は、被写体OBJの像をさらに多くの像に分割するように構成しても良い。例えば、図18に示すように、被写体OBJの像を13個の像PI1〜13に分割しても良い。これにより、さらに被写体OBJの像の周期性を低減し、モアレの発生を低減することができる。このように、異なる向きの屈折面の数を増加することで、容易に高品質な画像を記録することができる。
【実施例2】
【0075】
図19は、本発明の実施例2に係るローパスフィルタであるプリズム群1900の概略斜視構成を示す。プリズム群1900は、上記実施例1の撮像装置100に適用することができる。上記実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。プリズム群1900は、2組のプリズム素子1910a、1910bとから構成されている。
【0076】
プリズム素子1910aは、第1の方向であるy軸方向における断面形状が略台形形状である。また、プリズム素子1910aは、第1の方向であるy軸方向に略直交する第2の方向であるx軸方向に長手方向を有している。プリズム素子1910aのy軸方向における断面形状の台形形状のうち、2つの斜面Y1、Y2は屈折面として機能する。また、プリズム素子1910aのy軸方向における断面形状のうち、上面Y0は平坦部として機能する。このため、斜面Y1又は斜面Y2に入射した光は、斜面の角度に対応する方向へ屈折する。屈折した光により屈折透過像が形成される。また、上面Y0に入射した光は、そのまま透過する。そのまま透過した光により直接透過像が形成される。
【0077】
プリズム素子1910bは、プリズム素子1910aと同様の構成である。プリズム素子1910bのx軸方向における断面形状のうち、2つの斜面X1、X2は屈折面として機能する。また、プリズム素子1910bのx軸方向における断面形状のうち、上面X0は平坦部として機能する。そして、2組のプリズム素子1910a、1910bは、それぞれの長手方向どうしが略直交するように設けられている。
【0078】
さらに、本実施例では、プリズム素子1910aの平面側と、プリズム素子1910bの平面側とを向かい合わせて固着している。しかし、これに限られず、以下の(1)〜(3)のいずれかの構成でも良い。
(1)プリズム素子1910aの斜面Y1、Y2等が形成されている面と、プリズム素子1910bの斜面X1、X2等が形成されている面とを向かい合わせて固着する構成。
(2)プリズム素子1910aの斜面Y1、Y2等が形成されている面と、プリズム素子1910bの平面側とを向かい合わせて固着する構成。
(3)プリズム素子1910aの平面側と、プリズム素子1910bの斜面X1、X2等が形成されている面とを向かい合わせて固着する構成。
なお、図19ではプリズム面が接する構成を示しているが、両面が空気と接する構成でもよい。
【0079】
図20は、プリズム群1900による入射光の分岐を示す。図20において、向かって左側から右側へ向かって入射光XYが進行する。なお、図20の一部では、説明の便宜上、斜面Y0、Y1、Y2の符号を用いて光線を特定する。入射光XYは、点線で示すプリズム素子1910aにより、斜面で屈折する光線Y1、Y2と、上面をそのまま透過する光線Y0との3つの光線に分岐される。分岐された3つの光線Y0、Y1、Y2は、さらにプリズム素子1910bにより、それぞれ3つの光線に分岐される。入射光XYは、9つの光線Y1X1、Y1X0、Y1X2、Y0X1、Y0X0、Y0X2、Y2X1、Y2X0、Y2X2に分岐される。
【0080】
プリズム群1900は、入射光を9つの光線に分岐することにより、上記のプリズム群1500、1600の場合と同様に、図17に示すように9つの像を形成できる。プリズム群1900は、各プリズム素子1910a、1910bの斜面を透過した光により隣接する受光素子101上に像を形成するように、斜面の向き及び傾斜角度を設定する。これにより、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減し、高品質な画像を記録できるという効果を得られる。また、プリズム群1900は、上記実施例1のプリズム群110と同様に成型技術等を用いて形成した各プリズム素子1910a、1910bを貼り合わせることで容易に製造することができる。
【実施例3】
【0081】
図21は、本発明の実施例3に係る電子機器であるカメラ付き携帯電話機2100の概略構成を示す。カメラ付き携帯電話機2100は、撮像装置であるカメラ部2120を有する。カメラ付き携帯電話機2100は、カメラ部2120の撮像レンズを被写体に向けてシャッタを切ることによって、被写体の像を記憶する。上記の撮像装置は、小型な構成でモアレを低減可能である特徴がある。また、比較的画素数が少ない撮像装置は、幅広くモアレが発生し易いという性質がある。カメラ付き携帯電話機2100は、小型かつ薄型で軽量な構成が求められる上、カメラ部2120の画素数は比較的少ない。従って、上記実施例の撮像装置は、カメラ付き携帯電話機2100への適用に適している。カメラ部2120として上記実施例の撮像装置を用いることにより、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減できる。なお、カメラ付き携帯電話機2100は、静止画を撮影可能なもの、静止画の他に動画も撮影可能なもの、のいずれであっても良い。
【0082】
図22は、実施例3の他の電子機器であるデジタルビデオカメラ2200の概略斜視構成を示す。デジタルビデオカメラ2200は、撮像装置であるカメラ部2220を有する。デジタルビデオカメラ2200は、録画状態とすることで、カメラ部2220の撮像レンズを向けられた被写体の像を時系列的に記憶する。デジタルビデオカメラ2200は、比較的モアレが発生し易い周期の画素数を持つものが多い。また、デジタルビデオカメラ2200においても、小型かつ軽量な構成が求められている。従って、上記実施例の撮像装置は、デジタルビデオカメラ2200への適用に適している。カメラ部2220として上記実施例の撮像装置を用いることにより、小型かつ低廉な構成でモアレを有効に低減できる。
【0083】
本発明の撮像装置は、カメラ付き携帯電話機2100やデジタルビデオカメラ2200に限らず、撮影機能を有する電子機器、例えばPDAやパーソナルコンピュータ等の他の携帯型情報機器、デジタルスチルカメラ、テレビ電話等に幅広く利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明に係る撮像装置は、静止画や動画を記憶する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1に係る撮像装置の概略構成図。
【図2】プリズム群の斜視構成図。
【図3】入射光の振舞いの説明図。
【図4】プリズム群の平面図。
【図5】プリズム群の平面図。
【図6】プリズム群近傍の拡大図。
【図7】結像面上の一点に集光する光の説明図。
【図8】プリズム群上の一点を通過する光の説明図。
【図9】受光素子の配置図。
【図10】撮像素子に形成される像の説明図。
【図11】瞳位置にプリズム群を配置した撮像レンズの概略構成図。
【図12−1】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図12−2】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図12−3】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図12−4】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図12−5】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図12−6】プリズム群のバリエーションの断面構成図。
【図13】変形例に係るプリズム素子の上面図。
【図14】変形例に係るプリズム素子の上面図。
【図15】変形例に係るプリズム群の一部上面図。
【図16】変形例に係るプリズム群の一部上面図。
【図17】撮像素子上に形成される像の説明図。
【図18】撮像素子上に形成される像の説明図。
【図19】本発明の実施例2に係るプリズム群の概略斜視構成図。
【図20】プリズム群による入射光の分岐の説明図。
【図21】本発明の実施例3に係る電子機器の概略構成図。
【図22】本発明の実施例3に係る他の電子機器の概略構成図。
【図23−1】回折光の影響を低減可能なプリズム群の構成例を示す図。
【図23−2】回折光の影響を低減可能なプリズム群の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0086】
100 撮像装置、101 受光素子、103 遮光部、104 カラーフィルタ、105 カラーフィルタ層、106 マイクロレンズアレイ、107 赤外線カットフィルタ、110 プリズム群、111 撮像素子、112 保持部、113、114 固定面、120 撮像レンズ、201 プリズム素子、OBJ 被写体、SA、SB 屈折面、SC 平坦部、211a 辺部、212、212a、212b、212c、212d 屈折面、213 平坦部、213a 基準面、PI1〜5 像、1120 撮像レンズ、1210、1220、1230、1240、1250、1260 プリズム群、1210a、1220a、1230a、1240a、1250a、1260a 屈折面、1210b、1220b、1230b、1250b、1260b 平坦部、1311 プリズム素子、1312a、1312b、1312c、1312d 屈折面、1313 平坦部、1411 プリズム素子、1412a、1412b、1412c、1412d 屈折面、1500 プリズム群、1510、1520 プリズム素子、1511、1521 屈折面、1530 平坦部、1600 プリズム群、1610 屈折面、1620 平坦部、PI1〜9、PI1〜13 像、1900 プリズム群、1910a、1910b プリズム素子、2100 カメラ付き携帯電話機、2120 カメラ部、2200 デジタルビデオカメラ、2220 カメラ部、2310 プリズム群、2311 第1のプリズム素子、2312 第2のプリズム素子、2313 エッジ、2320 プリズム群、2321 プリズム素子、2323 エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配列される複数の受光素子を備え、入射光を画像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子の入射側に設けられるローパスフィルタと、を有し、
前記ローパスフィルタは、少なくとも屈折面を備えるプリズム素子からなるプリズム群を有し、
前記屈折面は、前記入射光を所定方向へ屈折することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記屈折面は、前記入射光が前記プリズム群を直進した場合の入射位置の前記受光素子に隣接する前記受光素子へ、前記入射光を導くような向き、及び前記屈折面と光軸に対し略垂直方向に形成される基準面とのなす角度、を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記プリズム群は、第1の方向における断面形状が略台形形状であり、前記第1の方向に略直交する第2の方向に長手方向を有する2組のプリズム素子からなり、
前記2組のプリズム素子は、それぞれ前記長手方向どうしが略直交するように設けられ、
前記台形形状の斜面は前記屈折面に対応することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記プリズム素子は、少なくとも4つの前記屈折面を有し、
前記屈折面は、それぞれ異なる向きを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記プリズム群は、第1の形状を有する第1のプリズム素子と、前記第1の形状とは異なる第2の形状を有する第2のプリズム素子と、を少なくとも有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記入射光を前記撮像素子へ導く撮像レンズを有し、
前記プリズム群は、前記撮像レンズと前記撮像素子との間の光路中に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記入射光を前記撮像素子へ導く撮像レンズを有し、
前記プリズム群は、前記撮像レンズの瞳位置、前記瞳位置に共役な位置、前記瞳位置の近傍、又は前記共役な位置の近傍に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像レンズのFナンバーにより定められる単位面積を有する、略円形形状の領域内において、前記略円形形状の直径に沿う直線に略垂直な前記プリズム素子の境界のエッジの数が50以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子と前記プリズム群とを固定することにより、前記撮像素子の位置に対し前記プリズム群を所定の位置に保持する保持部を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の撮像装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【公開番号】特開2006−30723(P2006−30723A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211097(P2004−211097)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】