説明

撮像装置

【課題】コストやサイズの増大を招くことなく、オートフォーカスアクチュエータの漏洩磁界がシャッタの動作に与える影響を低減でき、シャッタの性能低下を防止できる撮像装置を提供する。
【解決手段】この撮像装置によれば、メカシャッタ17の駆動源である磁気回路50がオートフォーカスアクチュエータの駆動源である磁気回路40から径方向に離間している。これにより、磁気回路40の漏洩磁界が磁気回路50に与える影響を低減でき、コスト増大を招くことなく、オートフォーカスアクチュエータからの漏洩磁界がメカシャッタ17の動作に与える影響を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オートフォーカスアクチュエータとシャッタ部がマグネット,コイル,ヨークから構成される磁気回路を有する撮像装置に関し、具体的一例として、携帯電子機器に搭載される撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器に内蔵されるカメラは高画質化が図られており、撮像素子の高画素化が進んでいる。そして、画質向上のために必要なオートフォーカス機能を撮像機器に搭載する傾向が多く見受けられる。オートフォーカスを行うためには、一般的には内部の光学部材を含む光学系を移動させる必要がある。ここで、光学系を駆動させるためのアクチュエータとして、マグネットとコイルを用いた磁気回路を利用し、この磁気回路の電磁誘導現象を利用して、コイル、もしくはマグネットを駆動するボイスコイル方式が広く用いられている。
【0003】
一方で、従来から採用されているIT(インターライントランスファー)方式の撮像素子では、画素数を増やすことにより、全画素の読み出し速度が低下し、撮影した画素の転送処理中に入る光線の影響で、スミア等の現象が発生し、画質が低下する問題が発生する。この問題を防ぐためには、撮影が終了した後、画素の転送処理を行なっている間は撮像素子に入る光を機械的に遮断するメカシャッタが必要となる。
【0004】
このように、オートフォーカス機構とメカシャッタを搭載した際の配置について、従来は、特許文献1(特開2005−156649号公報)に記載されているように、撮像レンズを光軸方向に移動可能に支持しているアクチュエータとメカシャッタの配置が提案されている。
【0005】
ところで、オートフォーカスアクチュエータとメカシャッタがそれぞれマグネットとコイルを含む磁気回路を有し、この磁気回路の電磁誘導現象を利用したボイスコイル型のアクチュエータを使用した撮像装置に発生する問題を以下に説明する。
【0006】
図9に、携帯機器のオートフォーカスに一般的に用いるボイスコイル型のアクチュエータの要部断面形状を示す。このボイスコイル型のアクチュエータは、円筒形のヨーク110を有し、この円筒形のヨーク110の内側に円筒型のマグネット111とコイル112が配置されている。このコイル112は、光学部材121を保持している光学部材ホルダ120に固定されている。そして、コイル112に電流を流すことで、マグネット111とコイル112との間に電磁誘導現象が発生し、図9の矢印方向Z(光軸方向)に光学部材ホルダ120が移動する。ここで、コイル112と光学部材ホルダ120が比較的質量の大きい光学部材121を高速に移動させる必要があるので、この電磁誘導現象による推力を大きくする必要がある。その結果として、ヨーク110、マグネット111、コイル112から構成される磁気回路を大きくする必要が生じる。
【0007】
その結果、この磁気回路の周辺に磁束が漏れるものの、オートフォーカスアクチュエータの磁気回路の周辺に別のアクチュエータを設ける必要がない場合には、上述の磁束の漏れが問題になることはなかった。一方、オートフォーカスアクチュエータの磁気回路の周辺に別のアクチュエータの磁気回路として、例えばメカシャッタの磁気回路を設ける場合には、上述の磁束の漏れが問題になる。
【0008】
このメカシャッタの磁気回路は、図8に示すように、略コの字型のヨーク210とヨーク210の周囲に巻き回されたコイル212と、このヨーク210に挟まれた状態の円筒形状のマグネット211とを有する。このマグネット211は中心部をなす回転軸230を有する。そして、このマグネット211から伸びた腕部231がシャッタ羽280に連結されている。
【0009】
ここで、コイル212に通電することにより略コの字型のヨーク210の先端部に極性が発生し、これによりマグネット211が回転する。これに伴い、腕部231が回転軸230を中心に回転する。すると、シャッタ羽280がシャッタ羽280の回転軸281を中心に、図8に破線で描かれた位置まで回転して、シャッタ羽280がメカシャッタホルダ(図示せず)の開口部282を遮蔽する。このシャッタ羽280,腕部231は樹脂製であり、マグネット211,コイル212,ヨーク210が構成するシャッタ用磁気回路は、図9に示すオートフォーカス用の磁気回路と比較して小さく、このシャッタ用磁気回路の発生推力もオートフォーカス用の磁気回路に比べて小さいものとなっている。
【0010】
したがって、図9のオートフォーカスアクチュエータと図8のメカシャッタの両方を撮像装置に配置した場合、図9のオートフォーカスアクチュエータの漏洩磁束が、図8のメカシャッタのマグネット211に影響することで、メカシャッタの閉じ時間が増加するという問題や、場合によってはメカシャッタが動作しなくなるという問題が発生することが懸念される。
【0011】
一方で、漏洩磁界を低減するために、メカシャッタの磁気回路とオートフォーカスアクチュエータの磁気回路との間に、パーマロイ等の軟磁性材からなるシールド部材を挿入する場合は、撮像装置のコスト増大につながる。このことは、撮像装置を携帯電話等に搭載することを前提とした場合には大きな問題となる。
【特許文献1】特開2005−156649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の課題は、コストやサイズの増大を招くことなく、オートフォーカスアクチュエータの漏洩磁界がシャッタの動作に与える影響を低減でき、シャッタの性能低下を防止できる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の撮像装置は、撮像素子と、光学部材と、
上記光学部材を光軸方向に移動させると共にマグネット,ヨーク,コイルを含む第1の磁気回路を駆動源とするオートフォーカスアクチュエータと、
上記光学部材よりも被写体側に配置されていると共にマグネット,ヨーク,コイルを含む第2の磁気回路を駆動源とするシャッタ部とを備え、
上記第2の磁気回路は、上記第1の磁気回路から、上記光学部材の光軸方向と上記光軸方向に直交する径方向とのうちの少なくとも上記径方向に離間していることを特徴としている。
【0014】
この発明の撮像装置によれば、シャッタ部の駆動源である第2の磁気回路がオートフォーカスアクチュエータの駆動源である第1の磁気回路から径方向に離間している。これにより、第1の磁気回路の漏洩磁界が第2の磁気回路に与える影響を低減でき、コスト増大を招くことなく、オートフォーカスアクチュエータからの漏洩磁界がシャッタ部の動作に与える影響を低減できる。
【0015】
したがって、オートフォーカスアクチュエータ,シャッタ部の各駆動源の性能を十分に発揮できる。特に、シャッタ部の磁気回路の性能を十分に発揮できるので、シャッタ部の閉じ時間の増大を抑制でき、シャッタ部の磁気回路の寸法を抑えることができる。その結果、撮像装置全体の小型化に貢献することが可能となる。
【0016】
また、一実施形態の撮像装置では、上記第1の磁気回路は、上記光学部材の光軸を中心軸とする環状であり、上記第2の磁気回路は、上記第1の磁気回路に対して、径方向外方に離間しており、上記第1の磁気回路と第2の磁気回路との間の径方向の距離が2mm乃至3mmである。
【0017】
この実施形態によれば、オートフォーカスアクチュエータからの漏洩磁界がシャッタ部の動作に与える影響を低減しつつ、小型化を図れる。すなわち、図6に示されるように、上記径方向の距離が2mm未満になると、第1の磁気回路が第2の磁気回路に与える漏洩磁界の影響が急増する。一方、上記径方向の距離が3mmを越えると、第1の磁気回路の漏洩磁界の減少率が飽和してくる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の撮像装置によれば、シャッタ部の駆動源である第2の磁気回路がオートフォーカスアクチュエータの駆動源である第1の磁気回路から径方向に離間しているので、第1の磁気回路の漏洩磁界が第2の磁気回路に与える影響を低減でき、コスト増大を招くことなく、オートフォーカスアクチュエータからの漏洩磁界がシャッタ部の動作に与える影響を低減でき、シャッタ部の性能低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0020】
図1はこの発明の撮像装置の実施形態の要部の構成を示す斜視図であり、図2はこの実施形態の要部分解斜視図である。また、この実施形態の要部断面を図3に示す。
【0021】
図1〜図3に示すように、この実施形態の撮像装置は、光学部材21A,21B,21Cと、この光学部材21A〜21Cを保持する光学部材ホルダ20と、オートフォーカスアクチュエータホルダ14とを備える。光学部材ホルダ20は内側部材20Aと外側部材20Bを有する。図3に示すように、オートフォーカスアクチュエータホルダ14と光学部材ホルダ20の外側部材20Bとの間には板バネ13Aが配置され、この板バネ13Aとで光学部材ホルダ20を光軸方向Zの両側から挟むように、板バネ13Bが配置されている。そして、この板バネ13Aと13Bは、オートフォーカスアクチュエータホルダ14に固定されている。これにより、板バネ13Aと13Bは、光学部材ホルダ20を光軸方向Zに移動可能に支持している。
【0022】
また、上記オートフォーカスアクチュエータホルダ14の内周面には断面略コ字状で円筒形状のヨーク10が固定されている。このヨーク10内でヨーク10に円筒形状のマグネット11が接着剤で固定されている。また、ヨーク10とマグネット11との間の間隙にはコイル12が配置され、このコイル12は光学部材ホルダ20に固定されている。
【0023】
上記ヨーク10,マグネット11,コイル12が第1の磁気回路40を構成している。また、この第1の磁気回路40とオートフォーカスアクチュエータホルダ14と板バネ13A,13Bと光学部材ホルダ20がオートフォーカスアクチュエータを構成している。ヨーク10,板バネ13A,13Bなどからなるオートフォーカス構成部品はオートフォーカスアクチュエータホルダ14に固定されている。
【0024】
また、この撮像装置は、光学部材21A〜21Cを透過した光線の近赤外域成分をカットする赤外線カットフィルタをなすIRカットガラス60と、光学部材21により結像された画像を電気信号に変換する撮像素子70とを備える。この撮像素子70は、撮像素子70が受光した映像信号を処理するための撮像素子基板16上に配置され、この撮像素子70上にIRカットガラス60が配置されている。このIRカットガラス60は、撮像素子カバー15に形成された貫通孔内で撮像素子カバー15に固定されている。この撮像素子カバー15上に上記オートフォーカスアクチュエータホルダ14が配置されている。撮像素子カバー15は、撮像素子基板16を覆うように配置され、IRカットガラス60とオートフォーカスアクチュエータホルダ14を撮像素子70に対して位置決め固定している。
【0025】
さらに、この実施形態の撮像装置は、撮影終了後に、撮像素子70が画像信号を転送している期間に、光学部材21A〜21Cに光線が入らないように遮光するシャッタ部としてメカシャッタ17を備えている。このメカシャッタ17は、メカシャッタホルダ18と第2の磁気回路である磁気回路50を有する。メカシャッタホルダ18は、光軸方向Zに貫通する開口部18Aを有する。なお、このメカシャッタ17の磁気回路50は、図8に示した略コの字型のヨーク210,コイル212,円筒形状のマグネット211と同様のヨーク,コイル,マグネットを有している。また、このメカシャッタ17は、図8に示したのと同様のシャッタ羽280,回転軸281,腕部231,回転軸230を有している。したがって、このメカシャッタ17は、図8を参照して前述したのと同様の動作を行う。
【0026】
図3に示すように、このメカシャッタ17の磁気回路50は、オートフォーカスアクチュエータの磁気回路40から径方向に離間している。また、この実施形態では、磁気回路50が発生する磁界は、磁気回路40が発生する磁界に比べて小さい。また、この実施形態では、磁気回路40は光学部材21A〜21Cの光軸Jを中心軸とする環状であり、磁気回路50は磁気回路40に対して径方向外方に離間している。
【0027】
この実施形態では、磁気回路40のマグネット11の着磁方向は、図3に示す矢印Xの方向である。つまり、磁気回路40のマグネット11は、光学部材20A〜20Cの光軸Jに直交する径方向の磁界を発生する。そして、コイル12に電流を流すことによって、電磁誘導によってコイル12は光軸方向の力を受けるので、コイル12が固定されている光学部材ホルダ20を光軸方向に移動させる推力が発生する。この電磁誘導による推力と板バネ13A,13Bによる弾性力との釣り合いによって、光学部材ホルダ20の光軸方向の位置が保持される。したがって、光学部材ホルダ20の光軸方向の移動量はコイル12に流す電流値に比例する。
【0028】
次に、図4〜図7を参照して、オートフォーカスアクチュエータの駆動源である磁気回路40の漏洩磁束について説明する。
【0029】
図4は図3の断面図に対応する断面図であり、図4では光軸JをZ軸としており、光軸Jと直交すると共にヨーク10の上端(光軸方向の端)を通る軸をX軸として記載している。このX軸とZ軸との交点を原点Oとしている。そして、Z軸上のA点,B点,C点は、それぞれ、原点Oから1mm,2mm,3mmの位置を表している。ここで、原点Oは、光軸Jと直交する径方向における磁気回路40の中心である。また、図4において、直線LA,LB,LCはそれぞれA点,B点,C点からX軸と平行な方向に延びる直線である。
【0030】
図6に、図4のZ軸上のA点,B点,C点の各位置からX軸方向への磁気回路40の漏洩磁束の分布を示す。図6において、縦軸は漏洩磁束の磁束密度(T)を表しており、横軸はX軸座標(光軸Jから径方向への距離(mm))を表している。図6において、特性K1はA点からX軸と平行な方向に延びる直線LA上の磁束密度分布を表し、特性K2はB点からX軸と平行な方向に延びる直線LB上の磁束密度分布を表し、特性K3はC点からX軸と平行な方向に延びる直線LC上の磁束密度分布を表している。また、図6において、破線L1はヨーク10の径方向外端の位置を表している。
【0031】
図6に示すように、特性K1、K2、K3の順に漏洩磁束密度が低下しており、ヨーク10の上端から光軸方向へ離れるほど、漏洩磁束密度が低下している。また、各特性K1、K2、K3の漏洩磁束密度のピークは、ヨーク10の径方向外端の位置L1よりも径方向内方に存在していて、ピークの大きさは特性K3、K2、K1の順に大きくなっている。また、各ピーク波形は特性K3よりも特性K2が鋭く、特性K2よりも特性K1が鋭くなっており、ヨーク10の上端に近づくほど漏洩磁束密度のピーク波形が鋭くなっている。
【0032】
一方、図5では、光軸Jと平行でヨーク10の径方向外端を通る直線をZ1軸とし、このZ1軸と直交すると共にヨーク10の下端を通る直線をX1軸としている。また、Z1軸とX1軸とが交差する点を原点O1としている。また、X1軸上のE点,F点,G点は、それぞれ、原点O1から1mm,2mm,3mmの位置を表している。ここで、原点O1は、ヨーク10の径方向外端かつ下端の位置を表している。また、図5において、直線LE,LB,LCはそれぞれE点,F点,G点からZ1軸と平行な方向に延びる直線である。また、破線L11はヨーク10の上端からX1軸と平行に延びている。
【0033】
図7に、図5のX1軸上のE点,F点,G点の各位置から光軸と平行な方向への磁気回路40の漏洩磁束の分布を示す。図7において、縦軸は漏洩磁束の磁束密度(T)を表しており、横軸はX1軸座標(Z1軸から径方向への距離(mm))を表している。図7において、特性K11はE点からZ1軸と平行な方向に延びる直線LE上の磁束密度分布を表し、特性K12はF点からZ1軸と平行な方向へ延びる直線LF上の磁束密度分布を表し、特性K13はG点からZ1軸と平行な方向へ延びる直線LG上の磁束密度分布を表している。また、図7において、破線L11はヨーク10の上端の位置を表している。
【0034】
図7に示すように、特性K11、K12、K13の順に漏洩磁束密度が低下しており、ヨーク10の径方向外端から径方向に離れるほど、漏洩磁束密度が低下している。また、各特性K11、K12、K13は、ヨーク10の下端(Z1座標が0(mm))からヨーク10の上端(Z1座標が3.5(mm))までの範囲でピークを持たない。
【0035】
図6を参照すれば、ヨーク10の上端から光軸方向に1mmだけ離れた位置での特性K1に示されるように、ヨーク10の径方向外端から光軸に向かって約1mm内方の位置で漏洩磁束が最大値(約0.082(T))になっている。一方、図7の特性K11に示されるように、ヨーク10の径方向外端から径方向外方に1mmだけ離れた位置では、漏洩磁束の最大値は約0.046(T)になっている。
【0036】
また、図6の特性K2に示されるように、ヨーク10の上端から光軸方向に2mmだけ離れた位置では、ヨーク10の径方向外端から光軸に向かって約1.5mm内方の位置で漏洩磁束が最大値(約0.04(T))になっている。一方、図7の特性K12に示されるように、ヨーク10の径方向外端から径方向外方に2mmだけ離れた位置では、漏洩磁束の最大値は約0.025(T)になっている。
【0037】
また、図6の特性K3に示されるように、ヨーク10の上端から光軸方向に3mmだけ離れた位置では、ヨーク10の径方向外端から光軸に向かって約2.2mm内方の位置で漏洩磁束が最大値(約0.025(T))になっている。一方、図7の特性K13に示されるように、ヨーク10の径方向外端から径方向外方に3mmだけ離れた位置では、漏洩磁束の最大値は約0.013(T)になっている。
【0038】
すなわち、図6、図7の特性図から、オートフォーカスアクチュエータの磁気回路40からの漏洩磁束の影響を低減させるには、磁気回路40に対して磁気回路50を軸方向に離間させるよりも径方向に離間させることが有利であることが分る。
【0039】
例えば、図6の特性K2を参照すれば、磁気回路40からZ軸方向に2mm離間していても、磁気回路40から径方向(X方向)に離間していない範囲(Xが6.8mm以下)では漏洩磁束密度を0.03(T)以下にするには、光軸Jから3mm以内に磁気回路50を配置することが必要になって、配置上の困難が発生します。これに対し、図7の特性K12を参照すれば、磁気回路50が磁気回路40から径方向(X1軸方向)に2mm離間していれば、光軸方向のどのような位置でも、漏洩磁束密度を0.03(T)以下にすることができます。
【0040】
したがって、この実施形態のように、メカシャッタ17の磁気回路50をオートフォーカスアクチュエータの磁気回路40に対して径方向に離間させることによって、少ない離間寸法でもって、パーマロイなどの軟磁性材料からなる磁気シールド材を挿入することなく、磁気回路40からの漏洩磁束の影響を低減できる。よって、この実施形態によれば、撮像装置の寸法やコストの増大,構造の複雑化を抑えつつ、メカシャッタ17の磁気回路50による駆動性能を十分に発揮でき、メカシャッタ17のシャッタ閉じ時間の増大による性能低下や誤動作を防止することができる。
【0041】
尚、図6の特性K1、K2を参照すれば、磁気回路40からの磁気回路50の径方向の離間寸法が2mm未満になると、磁気回路40と磁気回路50との間の光軸方向の距離が1mm〜2mmの場合において、磁気回路40が磁気回路50に与える漏洩磁界の影響が急増する。一方、上記径方向の離間寸法が3mmを越えると、磁気回路40の漏洩磁界の減少率が飽和してくる。したがって、オートフォーカスアクチュエータからの漏洩磁界がメカシャッタ17の動作に与える影響を低減しつつ、小型化を図るには、磁気回路40から径方向外方への磁気回路50の離間寸法を2mm乃至3mmとすることがより望ましい。なお、メカシャッタ17の磁気回路50をオートフォーカスアクチュエータの磁気回路40に対して光軸方向と径方向の両方に離間させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明の撮像装置は、携帯機器に搭載されるカメラ等の装置全般に適用することが可能であり、オートフォーカスアクチュエータの漏洩磁界の影響によってメカシャッタの性能が低下することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の撮像装置の実施形態の要部の構成を示す斜視図である。
【図2】上記実施形態の要部分解斜視図である。
【図3】上記実施形態の要部断面図である。
【図4】図3に示した磁気回路40の直上の漏洩磁界分布測定位置を説明する模式図である。
【図5】図3に示した磁気回路40の側方の漏洩磁界分布測定位置を説明する模式図である。
【図6】図4に示した測定位置における漏洩磁界分布の測定結果を示す図である。
【図7】図5に示した測定位置における漏洩磁界分布の測定結果を示す図である。
【図8】メカシャッタの磁気回路の要部の構成を示す図である。
【図9】従来のオートフォーカスアクチュエータの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 ヨーク
11 マグネット
12 コイル
13A,13B 板バネ
14 オートフォーカスアクチュエータホルダ
15 撮像素子カバー
16 撮像素子基板
17 メカシャッタ
20 光学部材ホルダ
21A〜21C 光学部材
40 第1の磁気回路
50 メカシャッタ17の磁気回路
60 IRカットガラス
70 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
光学部材と、
上記光学部材を光軸方向に移動させると共にマグネット,ヨーク,コイルを含む第1の磁気回路を駆動源とするオートフォーカスアクチュエータと、
上記光学部材よりも被写体側に配置されていると共にマグネット,ヨーク,コイルを含む第2の磁気回路を駆動源とするシャッタ部とを備え、
上記第2の磁気回路は、上記第1の磁気回路から、上記光学部材の光軸方向と上記光軸方向に直交する径方向とのうちの少なくとも上記径方向に離間していることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
上記第1の磁気回路は、上記光学部材の光軸を中心軸とする環状であり、
上記第2の磁気回路は、上記第1の磁気回路に対して、径方向外方に離間しており、
上記第1の磁気回路と第2の磁気回路との間の径方向の距離が2mm乃至3mmであることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−134300(P2008−134300A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318498(P2006−318498)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】